説明

車両のエンジン制御装置

【課題】車両のエンジン制御装置において、実際のクラッチ締結状態に応じたエンジントルク制御を可能にする。
【解決手段】クラッチ制御装置を備えるエンジンと、油圧制御による断接を行うクラッチとを備えた車両のエンジン制御装置において、スロットルグリップの操作量を検出して、アクチェータによってスロットルバルブを操作するスロットル開度制御手段を備えており、クラッチ油圧から実際に発生しているクラッチ容量を算出し、目標クラッチ容量Ctと実クラッチ容量Caとの差からエンジントルク補正量を算出し、このエンジントルク補正量、エンジン回転数、及び、通常時の目標とするスロットル開度を演算で求めた基本目標スロットル開度Ttを基に補正目標スロットル開度Tcを算出しエンジントルク制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御のクラッチ制御装置を備えるエンジンを備えた車両のエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機の制御装置において、アイドルストップ後のエンジン再始動から発進までの間にクラッチ制御油の遅れが生じたとしても、アクセル開度に基づいて発進クラッチの目標締結時間及び目標締結トルクを演算し、目標締結トルクに基づいてエンジントルク制御を行うことで、違和感のない発進を可能にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−219084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のエンジン制御装置では、クラッチへのオイルの充填量を推定してエンジントルク制御を行うため、実際のクラッチ締結状態に応じたトルク制御にはならず、推定値と実際の油圧との差異の分だけ精度が悪くなる。また、粘度違いのオイルが使用された場合は、オイルの充填量の推測が困難となり、実際のクラッチ締結状態に応じたトルク制御を行うことが難しくなる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両のエンジン制御装置において、実際のクラッチ締結状態に応じたエンジントルク制御を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、クラッチ制御装置(18)を備えるエンジン(E)と、油圧制御による断接を行うクラッチ(11)とを備えた車両のエンジン制御装置において、スロットルグリップの操作量を検出して、アクチェータ(12A)によってスロットルバルブを操作するスロットル開度制御手段(12)を備えており、クラッチ油圧から実際に発生しているクラッチ容量を算出し、目標クラッチ容量(Ct)と実クラッチ容量(Ca)との差からエンジントルク補正量(S)を算出し、このエンジントルク補正量(S)、エンジン回転数、及び、通常時の目標とするスロットル開度を演算で求めた基本目標スロットル開度(Tt)を基に補正目標スロットル開度(Tc)を算出しエンジントルク制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、スロットル開度制御手段を備えており、スロットルグリップの操作量を検出して、アクチェータによってスロットルバルブを操作し、クラッチ油圧から実際に発生しているクラッチ容量を算出し、目標クラッチ容量と実クラッチ容量との差からエンジントルク補正量を算出し、このエンジントルク補正量、エンジン回転数、及び、通常時の目標とするスロットル開度を演算で求めた基本目標スロットル開度を基に補正目標スロットル開度を算出してエンジントルク制御を行い、クラッチ容量の立ち上がりの遅れに合わせてエンジントルクを補正して制御できるため、クラッチの制御油の粘度等の影響でクラッチの作動に遅れが生じた場合であっても、実際のクラッチ締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。このため、車両の発進時にエンジン回転数が過度に吹け上がることを防止でき、スムーズに発進することができる。また、既存のクラッチ制御及びスロットル開度制御を大幅に変更しなくとも良く、簡単な構成で上記エンジントルク制御を実現できる。
【0006】
また、上記構成において、基本目標スロットル開度(Tt)とエンジン回転数とから求められる目標クラッチ容量(Ct)により目標クラッチ油圧(P)を算出し、クラッチ制御用アクチュエータ(35)を介して、この目標クラッチ油圧(P)によるクラッチ油圧制御を行い、この時の実クラッチ油圧を測定することから実クラッチ容量(Ca)を算出し、エンジントルク補正演算部(65)で目標クラッチ容量(Ct)と実クラッチ容量(Ca)との差を求めてエンジントルク補正量(S)を算出し、目標クラッチ容量(Ct)と実クラッチ容量(Ca)との間に所定値に該当しない差が生じる場合にエンジントルク補正要求が出力され、前記エンジントルク補正量(S)に基づいて補正された前記補正目標スロットル開度(Tc)でエンジントルク制御が行われる構成としても良い。
この場合、基本目標スロットル開度とエンジン回転数とから求められる目標クラッチ容量により目標クラッチ油圧を算出し、クラッチ制御用アクチュエータを介して、この目標クラッチ油圧によるクラッチ油圧制御を行い、この時の実クラッチ油圧を測定することから実クラッチ容量を算出し、エンジントルク補正演算部で目標クラッチ容量と実クラッチ容量との差を求めてエンジントルク補正量を算出するため、実際のクラッチ締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。また、目標クラッチ容量と実クラッチ容量との間に所定値に該当しない差が生じる場合にエンジントルク補正要求が出力され、補正目標スロットル開度でエンジントルク制御が行われるため、補正されたエンジントルク制御を必要に応じて行うことができる。
【0007】
前記スロットル開度制御手段(12)の目標スロットル開度を決定する目標スロットル開度決定部(53)を有し、該目標スロットル開度決定部(53)は、前記基本目標スロットル開度(Tt)、及び、前記補正目標スロットル開度(Tc)を受信し、前記エンジントルク補正要求に応じて目標スロットル開度を切り替える構成としても良い。
この場合、目標スロットル開度決定部を有し、目標スロットル開度決定部は、基本目標スロットル開度、及び、補正目標スロットル開度を受信し、エンジントルク補正要求に応じて目標スロットル開度を切り替えるため、基本目標スロットル開度と補正目標スロットル開度とを迅速に切り替えでき、実際のクラッチ締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。
また、前記補正目標スロットル開度(Tc)でエンジントルク制御が行われている期間に前記クラッチ(11)が接続されて車両(100)が発進されても良い。
この場合、補正目標スロットル開度でエンジントルク制御が行われている期間にクラッチが接続されて車両が発進されるため、クラッチの接続の際にエンジン回転数が過度に吹け上がることを防止でき、スムーズに発進することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両のエンジン制御装置では、クラッチ油圧から実際に発生しているクラッチ容量を算出し、目標クラッチ容量と実クラッチ容量との差からエンジントルク補正量を算出し、このエンジントルク補正量、エンジン回転数、及び、基本目標スロットル開度を基に補正目標スロットル開度を算出してエンジントルク制御を行い、クラッチ容量の立ち上がりの遅れに合わせてエンジントルクを補正して制御できるため、クラッチの制御油の粘度等の影響でクラッチの作動に遅れが生じた場合であっても、実際のクラッチ締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。このため、車両の発進時にエンジン回転数が過度に吹け上がることを防止でき、スムーズに発進することができる。また、既存のクラッチ制御及びスロットル開度制御を大幅に変更しなくとも良く、簡単な構成で上記エンジントルク制御を実現できる。
【0009】
また、基本目標スロットル開度とエンジン回転数とから求められる目標クラッチ容量により目標クラッチ油圧を算出し、目標クラッチ油圧によるクラッチ油圧制御を行い、この時の実クラッチ油圧を測定することから実クラッチ容量を算出し、エンジントルク補正演算部で目標クラッチ容量と実クラッチ容量との差を求めてエンジントルク補正量を算出するため、実際のクラッチ締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。また、目標クラッチ容量と実クラッチ容量との間に所定値に該当しない差が生じる場合にエンジントルク補正要求が出力され、補正目標スロットル開度でエンジントルク制御が行われるため、補正されたエンジントルク制御を必要に応じて行うことができる。
【0010】
また、目標スロットル開度決定部は、基本目標スロットル開度、及び、補正目標スロットル開度を受信し、エンジントルク補正要求に応じて目標スロットル開度を切り替えるため、基本目標スロットル開度と補正目標スロットル開度とを迅速に切り替えでき、実際のクラッチ締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。
さらに、補正目標スロットル開度でエンジントルク制御が行われている期間にクラッチが接続されて車両が発進されるため、クラッチの接続の際にエンジン回転数が過度に吹け上がることを防止でき、スムーズに発進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動二輪車を示す左側面図である。
【図2】エンジンの自動変速機構及びその周辺装置のシステム構成図である。
【図3】AMT制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】AMT制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図5】エンジントルク補正演算部の処理を示すフローチャートである。
【図6】補正目標スロットル開度演算部の構成を示すブロック図である。
【図7】発進時におけるAMTの制御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、以下の説明で、上下、前後、左右の方向は、車両の運転者から見た方向をいう。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車を示す左側面図である。
自動二輪車100(車両)の車体フレーム111は、車体前部に位置するヘッドパイプ112と、このヘッドパイプ112から車体中央まで後方に延びる左右一対のメインフレーム114と、メインフレーム114の後端部から下方に延びる左右一対のピボットプレート115と、メインフレーム114の後端部から車両後部まで延びるリヤフレーム(不図示)とを備えている。
ヘッドパイプ112には、フロントフォーク116が回動自在に取り付けられ、このフロントフォーク116の下端に前輪117が回転自在に支持されている。また、ヘッドパイプ112の上部には、操舵用ハンドル118が取り付けられ、操舵用ハンドル118には、運転者が回動操作するスロットルグリップ(不図示)が設けられている。
【0013】
メインフレーム114、及びピボットプレート115には、パワーユニットUが懸架、搭載され、パワーユニットUから出力される回転動力は、車体前後に延びるドライブシャフト123を介して後輪131へと伝達される。
パワーユニットUは、前後V型4気筒のエンジンEを備え、該エンジンEは、左右のメインフレーム114内に配置されている。該エンジンEは、クランクシャフト2(図1参照)を左右水平方向に指向し横置き配置であって、OHC型の水冷式で、クランクケース3を備え、該クランクケース3から2気筒ずつ前後に傾いたフロントバンクBfと、リヤバンクBrとがV型に構成され、互いのバンク角が90度よりも小さい狭角V型エンジンである。
【0014】
フロントバンクBfの排気口には、図1に示すように、左右一対の排気パイプ119の一端が接続され、排気口から下側に延びた後に、車体後方に向かって引き回され、リヤバンクBrの排気口から延びる左右一対の排気パイプ120に接続されて集合され、一本の排気管(不図示)を介して、エンジンEの後方に設けられたマフラー(不図示)に連結されている。
【0015】
パワーユニットUの後方には、ピボット軸121が設けられ、このピボット軸121には、スイングアーム122がピボット軸121を中心に上下方向に揺動自在に取り付けられている。スイングアーム122の後端部には、後輪131が回転自在に支持されている。後輪131とパワーユニットUとは、上述したように、スイングアーム122内に設けられたドライブシャフト123によって連結されている。
また、スイングアーム122と車体フレーム111との間には、リヤクッション124が掛け渡されている。
メインフレーム114の上部には、パワーユニットUの上方を覆うようにして燃料タンク141が搭載されている。この燃料タンク141の後方には、乗員用のシート142が設けられている。
【0016】
シート142の後方には、テールランプ143が配置されており、テールランプ143の下方には、後輪131の上方を覆うリヤフェンダ144が配置されている。自動二輪車100は、車体を覆う樹脂製の車体カバー150を有し、該車体カバー150は、車体フレーム111の前方からパワーユニットUの前部までを連続的に覆うフロントカバー151と、シート142の下方を覆うリヤカバー152とを備え、フロントカバー151の上部には、左右一対のミラー153が取り付けられている。フロントフォーク116には、前輪117の上方を覆うフロントフェンダ146が取り付けられている。
【0017】
図2は、エンジンEの自動変速機構及びその周辺装置のシステム構成図である。
エンジンEは、運転者の変速操作に応じたクラッチ操作が自動化されたマニュアルトランスミッション(以下、AMTと呼ぶ)を備え、このAMT10(エンジン制御装置)では、クラッチ11の切替え及び変速段の切替えが自動で行われる。
また、エンジンEは、スロットルボディ12(スロットル開度制御手段)を有し、このスロットルボディ12には、スロットルボディ12のスロットルの開閉用のモーター12A(アクチュエータ)が備えられている。
【0018】
AMT10は、前進6段の変速機Tと、クランクシャフト2と変速機Tとの間の接続を切り替えるクラッチ11と、クラッチ11を油圧で駆動するクラッチ制御装置18と、回転することで変速機Tを変速するシフトドラム13と、シフトドラム13を回転させるシフト制御モーター14と、クラッチ制御装置18及びシフト制御モーター14を含むAMT10の各部を制御するAMT制御ユニット15とを有している。AMT制御ユニット15は、自動二輪車100を制御するECU(不図示)の一部として設けられる。
上記スロットルボディ12は、運転者により操作されるスロットルグリップの開度として入力される運転者の加速意思に応じてAMT制御ユニット15による電子制御で駆動されるモーター12Aにより開閉動作する、いわゆるTBW(スロットル・バイ・ワイヤ)式のスロットル開度制御手段である。
【0019】
変速機Tを構成する複数のギヤ列19は、クランクシャフト2と平行に延びる主軸20、カウンタ軸21及び出力軸22にそれぞれ結合または遊嵌されている。詳細には、ギヤ列19は、各変速段に対応する駆動ギヤm1〜m6と従動ギヤn1〜n6とが常に噛み合った常時噛み合い式である。駆動ギヤm1〜m6及び従動ギヤn1〜n6の内の一部のギヤは、軸方向に移動可能なスライドギヤとなっており、スライドギヤを移動させることで、主軸20及びカウンタ軸21間で1速〜6速の何れかの変速ギヤ対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
各スライドギヤの一端には、シフトドラム13へ接続されるシフトフォーク23が接続される。各シフトフォーク23の他端はシフトドラム13に形成された複数のガイド溝にそれぞれ係合される。
クラッチ11は主軸20に設けられている。
【0020】
クランクシャフト2には、プライマリ駆動ギヤ24が結合されており、プライマリ駆動ギヤ24は、主軸20のプライマリ従動ギヤ25に噛み合わされている。プライマリ従動ギヤ25は、クラッチ11を介して主軸20に連結される。
カウンタ軸21に結合されたカウンタ軸出力ギヤ26は、出力軸22の出力側従動ギヤ27に噛み合わされており、出力軸22の出力ギヤ28にはドライブシャフト123が連結されている。出力軸22には、出力軸22に作用するトルク変動の一部を吸収するトルクダンパ(不図示)が設けられる。
【0021】
変速機T内には、プライマリ従動ギヤ25の外周に対向配置されるエンジン回転数センサ29と、シフトドラム13の回転位置に基づいて現在の変速段を検出するギヤポジションセンサ30とが設けられている。上記スロットルグリップにはスロットルグリップの開度を検出するスロットル開度センサ(不図示)が接続され、スロットルボディ12には、スロットルボディ12の開度信号を出力するスロットルセンサ31が設けられている。上記スロットル開度センサで検出されたスロットルグリップの開度は、AMT制御ユニット15で処理され、AMT制御ユニット15は、スロットルグリップの開度に基づいてモーター12Aを駆動し、スロットルボディ12の開度を調整することでエンジン回転数を制御する。また、自動二輪車100には、自動二輪車100の車速を検出する車速センサ(不図示)が設けられている。
【0022】
クラッチ制御装置18は、オイルタンク32と、オイルタンク32とクラッチ11とを繋ぐ管路33とを備え、管路33上には、オイルをクラッチ11に送るポンプ34、及び、クラッチ11へのオイルの供給を切り替えるバルブ35(クラッチ制御用アクチュエータ)が設けられている。ポンプ34の下流側には、管路33の油圧の上限を規定するレギュレータ36が設けられ、レギュレータ36を流れるオイルは戻り管路33Aを通ってオイルタンク32に戻る。また、バルブ35にもオイルの戻り管路33Bが設けられている。
さらに、クラッチ制御装置18は、クラッチ11に作用する実際の油圧である実クラッチ油圧を測定するクラッチ油圧検出部(不図示)を有している。
【0023】
AMT制御ユニット15の指示によってバルブ35が開かれると、クラッチ11に油圧が供給されてクラッチ11が接続状態となり、プライマリ従動ギヤ25がクラッチ11を介して主軸20に結合され、クランクシャフト2の回転が主軸20に伝達されるようになる。また、バルブ35が閉じられると、クラッチ11に油圧が供給されなくなり、クラッチ11は、クラッチ11に内蔵されている戻りばね(不図示)によって、クラッチ11と主軸20との結合が切断される方向に移動させられ、切断状態となる。また、クラッチ11では、クラッチ11に供給する油圧を調整することで半クラッチ状態を作り出すことができる。クラッチ11は湿式の多板クラッチである。
【0024】
シフト制御モーター14は、AMT制御ユニット15の指示によってシフトドラム13を回転させる。シフトドラム13が回転すると、シフトドラム13の外周に形成されたガイド溝の形状に従ってシフトフォーク23がシフトドラム13の軸方向に変位することで、主軸20及びカウンタ軸21のスライドギヤの噛み合い状態が変化し、変速機Tがシフトアップまたはシフトダウンされる。
【0025】
AMT制御ユニット15には、自動変速(AT)モードと手動変速(MT)モードとの切り替えを行うモードスイッチ40と、シフトアップ(UP)またはシフトダウン(DN)を指示するシフトセレクトスイッチ41とが接続されている。AMT10は、AMT制御ユニット15の制御により、上記各センサやモードスイッチ40及びシフトセレクトスイッチ41の出力信号に応じてバルブ35及びシフト制御モーター14を制御し、変速機Tの変速段を自動的または半自動的に切り換えることができるように構成されている。
【0026】
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてバルブ35及びシフト制御モーター14の制御が行われ、変速機Tが自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチ41が運転者によって操作されることで変速が行われ、シフトセレクトスイッチ41が操作されると、AMT制御ユニット15は、まず、バルブ35を切り替えてクラッチ11を切断状態にし、次いで、シフト制御モーター14を駆動して変速を行い、その後、バルブ35を駆動してクラッチ11を接続状態にする。
【0027】
図3及び図4は、AMT制御ユニット15の構成を示すブロック図である。
AMT10は、クラッチ11の実際の実クラッチ容量Ca(図4)を算出し、目標クラッチ容量Ct(図4)と実クラッチ容量Caとの差からエンジントルク補正量S(図4)を算出し、このエンジントルク補正量Sに基づいてエンジントルク制御を行うことによって、オイルの粘度によらずスムーズに発進できるように構成されている。
【0028】
AMT制御ユニット15は、基本目標スロットル開度Ttやエンジントルク補正量Sに基づいて目標スロットル開度を決定し、スロットルボディ12を駆動するスロットル制御部50と、実クラッチ容量Caに基づいてエンジントルク補正量Sを算出するクラッチ制御部60とを有している。
【0029】
スロットル制御部50は、基本となる目標スロットル開度を演算する基本目標スロットル開度演算部51と、補正目標スロットル開度Tcを演算する補正目標スロットル開度演算部52と、目標スロットル開度を決定する目標スロットル開度決定部53と、スロットルアクチュエータとしてのモーター12Aに駆動信号を送るスロットル開度制御部54とを備えている。
【0030】
基本目標スロットル開度演算部51は、スロットル開度センサからのスロットルグリップ開度及びエンジン回転数センサ29からのエンジン回転数に基づいて基本目標スロットル開度Ttのマップを算出し、この基本目標スロットル開度Ttのマップは、補正目標スロットル開度演算部52、目標スロットル開度決定部53、及び、クラッチ制御部60(図4の記号A参照)に送信される。基本目標スロットル開度Ttは、クラッチ11の制御油の応答性が通常の範囲内にある通常時に、スロットル開度の制御の目標値として設定されるスロットル開度である。
【0031】
補正目標スロットル開度演算部52は、エンジン回転数、クラッチ制御部60(図4の記号B参照)からのエンジントルク補正量S、及び、基本目標スロットル開度Ttに基づいて補正目標スロットル開度Tcのマップを演算して目標スロットル開度決定部53に送信する。補正目標スロットル開度Tcは、クラッチ11の制御油の応答性が通常の範囲外の場合に用いられる補正された目標スロットル開度である。
ここで、基本目標スロットル開度Ttは、大気圧や吸気温等も考慮して算出されても良い。
【0032】
目標スロットル開度決定部53には、基本目標スロットル開度Tt、補正目標スロットル開度Tc、及び、クラッチ制御部60(図3の記号C参照)からのエンジントルク補正要求が入力される。目標スロットル開度決定部53は、エンジントルク補正要求の有無に応じて目標スロットル開度を切り替えて出力し、エンジントルク補正要求が無い場合は基本目標スロットル開度Ttをスロットル開度制御部54に出力し、エンジントルク補正要求が有る場合は補正目標スロットル開度Tcをスロットル開度制御部54に出力する。
スロットル開度制御部54は、目標スロットル開度決定部53から受信した目標スロットル開度を駆動信号としてモーター12Aに出力する。スロットルボディ12のスロットルバルブの実際の開度はモーター12Aからスロットル開度制御部54にフィードバックされる。
【0033】
クラッチ制御部60は、自動二輪車100の発進時の目標クラッチ容量Ctを演算する発進時目標クラッチ容量演算部61と、発進時の目標クラッチ容量Ctが得られる油圧である目標クラッチ油圧Pを算出する目標クラッチ油圧演算部62と、目標クラッチ油圧Pが得られるようにクラッチアクチュエータとしてのバルブ35に駆動信号を出力するとともに、バルブ35を駆動した際にクラッチ11で発生した実際の油圧である実クラッチ油圧を検出するクラッチ油圧制御部63と、実クラッチ油圧からクラッチ11の実際の容量である実クラッチ容量Caを算出する実クラッチ容量演算部64と、実クラッチ容量Ca及び目標クラッチ容量Ctに基づいて、エンジントルク補正量S及びエンジントルク補正要求を出力するエンジントルク補正演算部65とを有している。
【0034】
発進時目標クラッチ容量演算部61は、エンジン回転数及び基本目標スロットル開度演算部51で算出された基本目標スロットル開度Ttに基づいて、発進時の目標クラッチ容量Ctを予め用意されたマップから演算する。
目標クラッチ油圧演算部62は、発進時の目標クラッチ容量Ctが得られる目標クラッチ油圧Pを、例えば以下の式(1)によって算出する。
P=(Ct/μ・2n・R−(Fε−Fs))/A…(1)
ここで、Ctは目標クラッチ容量、μはクラッチ板の摩擦係数、nはクラッチ板の枚数、Rはクラッチ板の摩擦面の平均有効半径、Fεはクラッチ潤滑油の遠心力により発生する荷重、Fsはクラッチ11の戻りばねの荷重、Aはクラッチピストンの受圧面積である。なお、目標クラッチ容量Ctは、車速やギヤポジション等の情報を加味して算出しても良い。
【0035】
クラッチ油圧制御部63は、目標クラッチ油圧Pに基づいてバルブ35を駆動するとともに、上記クラッチ油圧検出部によって実クラッチ油圧を検出する。ここで、実クラッチ油圧は、クラッチ11の制御油の粘度に影響され、制御油の温度や種類によっては、油圧が目標クラッチ油圧Pに達しない場合がある。例えば、エンジンEの始動直後の冷間時には、制御油の粘度が高いため油圧の立ち上がりに遅れが生じ、実クラッチ油圧は、目標クラッチ油圧Pに対して遅れて立ち上がることになる。
【0036】
実クラッチ容量演算部64は、上記実クラッチ油圧から実クラッチ容量Caを算出する。具体的には、上記式(1)を変形するとともに実クラッチ油圧を目標クラッチ油圧Pに替えて演算することで実クラッチ容量Caを算出することができる。
エンジントルク補正演算部65は、下記式(2)によって、目標クラッチ容量Ctと実クラッチ容量Caとの差からエンジントルク補正量Sを算出する。
S=(Ct−Ca)/プライマリレシオ…(2)
ここで、プライマリレシオは、クランクシャフト2とクラッチ11との間の減速比である。
【0037】
図5は、エンジントルク補正演算部65の処理を示すフローチャートである。
図3〜図5に示すように、エンジントルク補正演算部65は、エンジントルク補正量Sを算出して補正目標スロットル開度演算部52に出力し(ステップS1)、エンジントルク補正量Sが所定値以上であるか否かを判別する(ステップS2)。ステップS1では、エンジントルク補正量Sの算出処理は、逐次入力される目標クラッチ容量Ct及び実クラッチ容量Caに基づいて所定の時間間隔で繰り返し行われる。ここで、ステップS2でエンジントルク補正量Sが所定値以上になるのは、上記式(2)から分かるように、目標クラッチ容量Ctと実クラッチ容量Caとの間に、ある所定値に該当しない差がある場合である。なお、エンジントルク補正量Sの上記所定値は、ここでは固定値であるが、エンジン回転数や車速等に応じて可変としても良い。
【0038】
エンジントルク補正量Sが所定値以上であると判別された場合(ステップS2:Yes)、エンジントルク補正演算部65は、エンジントルク補正要求を「要求有り」に切り替え(ステップS3)、その後、エンジントルク補正量Sが所定値未満になったか否かを判別する(ステップS4)。ここで、エンジントルク補正要求は、通常は「要求無し」で出力されており、エンジントルク補正量Sが所定値以上であると判別された場合に「要求有り」となる。
エンジントルク補正量Sが所定値未満になっていないと判別された場合(ステップS4:No)、エンジントルク補正演算部65は、エンジントルク補正要求の「要求有り」の出力を継続する。
エンジントルク補正量Sが所定値未満になったと判別された場合(ステップS4:Yes)、エンジントルク補正演算部65は、エンジントルク補正要求を「要求無し」に切り替える。
【0039】
すなわち、目標スロットル開度決定部53には、基本目標スロットル開度Tt及び補正目標スロットル開度Tcの両方が入力されており、エンジントルク補正量Sが所定値以上となった場合にエンジントルク補正要求が「要求有り」に切り替えられ、目標スロットル開度決定部53によって補正目標スロットル開度Tcの制御に切り替えられ、補正された小さい開度となるようにスロットルボディ12が制御される。目標クラッチ容量Ctと実クラッチ容量Caとの差が小さくなり、エンジントルク補正要求が「要求無し」に切り替えられた場合は、基本目標スロットル開度Ttの制御に切り替えられ、通常の開度でスロットルボディ12が制御される。
ステップS2及びステップS4の判定では、処理のハンチングを防ぐために、エンジントルク補正量Sの所定値にヒステリシスを設けても良い。
【0040】
エンジントルク補正量Sが所定値未満であると判別された場合(ステップS2:No)、エンジントルク補正演算部65は、エンジントルク補正要求を「要求無し」に維持する。ステップS2においてエンジントルク補正量Sが所定値未満である場合は、基本目標スロットル開度Ttで運転が行われる。
【0041】
図6は、補正目標スロットル開度演算部52の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、補正目標スロットル開度演算部52は、エンジントルクを算出するエンジントルク演算部52Aと、エンジントルク補正演算部65からのエンジントルク補正量Sが入力されるトルク補正部52Bと、補正されたスロットル開度である補正目標スロットル開度Tcを算出する補正スロットル開度演算部52Cとを有している。
【0042】
エンジントルク演算部52Aでは、補正目標スロットル開度演算部52に格納されているマップに基づいて、基本目標スロットル開度Tt及びエンジン回転数からエンジントルクが算出される。
トルク補正部52Bでは、エンジントルク演算部52Aで算出されたエンジントルクから、エンジントルク補正演算部65で算出されたエンジントルク補正量Sを差し引くことで、補正エンジントルクが算出される。
補正スロットル開度演算部52Cでは、補正目標スロットル開度演算部52に格納されているマップに基づいて、現在のエンジン回転数で上記補正エンジントルクが得られるスロットルボディ12の開度を算出し、補正目標スロットル開度Tcとして目標スロットル開度決定部53に出力する。
【0043】
図7は、発進時におけるAMT10の制御を示すグラフである。
図7には、横軸に時間が示されており、縦軸には、スロットルグリップ開度、エンジントルク補正要求、目標スロットル開度、エンジン回転数、クラッチ容量、クラッチ油圧、及び、車速が示されている。
ここで、図3、図4及び図7を参照し、発進時におけるAMT10の制御を説明する。
自動二輪車100の発進前の停車時には、スロットルグリップの開度は0とされ、エンジン回転数は、アイドリング回転数に保たれており、変速段は1速が選択され、クラッチ11は切断状態にある。
【0044】
スロットルグリップ開度の増加によって運転者の発進の意思を検知すると、基本目標スロットル開度演算部51によって基本目標スロットル開度Ttが算出され、基本目標スロットル開度Ttに基づいてスロットルグリップの開度に応じてエンジン回転数は増加し、AMT10は発進制御を開始する。
発進制御では、発進時目標クラッチ容量演算部61によって目標クラッチ容量Ctが算出され、目標クラッチ油圧演算部62によって目標クラッチ容量Ctから目標クラッチ油圧Pが算出され、この目標クラッチ油圧Pに基づいてクラッチ油圧制御部63がバルブ35を駆動し、クラッチ11の接続が制御されるとともに、実クラッチ油圧がクラッチ油圧制御部63によって検出される。
【0045】
実クラッチ油圧は実クラッチ容量演算部64によって実クラッチ容量Caに変換され、エンジントルク補正演算部65は、目標クラッチ容量Ctと実クラッチ容量Caとの差からエンジントルク補正量Sを算出して目標スロットル開度決定部53に出力し、エンジントルク補正量Sが所定値以上になると、エンジントルク補正要求を「要求有り」として目標スロットル開度決定部53に出力する。エンジントルク補正要求が「要求有り」となると、目標スロットル開度決定部53によって、目標スロットル開度が補正目標スロットル開度Tcに切り替えられ、図7に破線で示すように、目標スロットル開度は、基本目標スロットル開度Ttよりも小さい開度になる。これにより、エンジントルク補正要求が「要求有り」とされている状態では、エンジン回転数は、エンジントルク補正要求が「要求無し」とされている通常の場合よりも小さくなる。
補正目標スロットル開度Tcは、クラッチ容量の不足によって過剰となるエンジントルクに見合った分だけエンジントルクを減少させる開度に設定される。
【0046】
図7では、実クラッチ容量Caは、制御油の粘度が高いことによって目標クラッチ容量Ctに対して立ち上がりが遅れており、発進制御の開始時期から時間が経過した時期t1において目標クラッチ容量Ctに略一致している。このため、エンジントルク補正要求は、実クラッチ容量Caと目標クラッチCtとが略一致するまでの期間に亘って「要求有り」とされており、補正目標スロットル開度Tcによるエンジントルク制御は、時期t1まで継続される。実クラッチ容量Caと目標クラッチ容量Ctとの差が小さくなり実クラッチ容量Caと目標クラッチ容量Ctとが略一致した後には、エンジントルク補正要求は「要求無し」に切り替えられ、基本目標スロットル開度Ttに基づいてエンジントルク制御が行われる。
【0047】
クラッチ油圧制御部63は、補正目標スロットル開度Tcでエンジントルク制御が行われている期間にバルブ35を駆動してクラッチ11の接続を開始し、これにより、車速の増加が開始され、その後、クラッチ11が完全に締結されることで発進制御は終了する。
本実施の形態では、制御油の粘度等の影響でクラッチ11の作動に遅れが生じた場合であっても、実際のクラッチ締結状態に対応してエンジン回転数を低くしてトルクを減少させるエンジントルク制御を行うため、車両の発進時にエンジン回転数が過度に吹け上がることを防止でき、スムーズに発進することができる。また、制御油の粘度に応じてエンジントルク制御が行われるため、粘度特性の異なる種々の制御油に対応できる。
【0048】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、TBW式のスロットルボディ12を備えており、スロットルグリップの操作量を検出して、モーター12Aによってスロットルボディ12のスロットルバルブを操作し、クラッチ11の油圧から実際に発生している実クラッチ容量Caを算出し、目標クラッチ容量Ctと実クラッチ容量Caの差からエンジントルク補正量Sを算出し、このエンジントルク補正量S、エンジン回転数、及び、通常時の目標とするスロットル開度を演算で求めた基本目標スロットル開度Ttを基に補正目標スロットル開度Tcを算出してエンジントルク制御を行い、クラッチ容量の立ち上がりの遅れに合わせてエンジントルクを補正して制御できるため、クラッチ11の制御油の粘度等の影響でクラッチ11の作動に遅れが生じた場合であっても、実際のクラッチ11の締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。このため、自動二輪車100の発進時にエンジン回転数が過度に吹け上がることを防止でき、スムーズに発進することができる。また、既存のクラッチ制御及びスロットル開度制御を大幅に変更しなくとも良く、簡単な構成で上記エンジントルク制御を実現できる。
【0049】
また、基本目標スロットル開度Ttとエンジン回転数とから求められる目標クラッチ容量Ctにより目標クラッチ油圧Pを算出し、クラッチ制御装置18のバルブ35を介して、この目標クラッチ油圧Pによるクラッチ油圧制御を行い、この時の実クラッチ油圧を測定することから実クラッチ容量Caを算出し、エンジントルク補正演算部65で目標クラッチ容量Ctと実クラッチ容量Caとの差を求めてエンジントルク補正量Sを算出するため、クラッチ11の実際の締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。また、目標クラッチ容量Ctと実クラッチ容量Caとの間に所定値に該当しない差が生じる場合にエンジントルク補正要求が「要求有り」に切り替えられ、補正目標スロットル開度Tcでエンジントルク制御が行われるため、補正されたエンジントルク制御を必要に応じて行うことができる。
【0050】
また、目標スロットル開度決定部53を有し、目標スロットル開度決定部53は、基本目標スロットル開度Tt、及び、補正目標スロットル開度Tcの両方を受信し、エンジントルク補正要求に応じて目標スロットル開度を切り替えるため、基本目標スロットル開度Ttと補正目標スロットル開度Tcとを迅速に切り替えでき、クラッチ11の実際の締結状態に応じて精度の高いエンジントルク制御を行うことができる。
さらに、補正目標スロットル開度Tcでエンジントルク制御が行われている期間にクラッチ11が接続されて自動二輪車100が発進されるため、クラッチ11の接続の際にエンジン回転数が過度に吹け上がることを防止でき、スムーズに発進することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 AMT(エンジン制御装置)
11 クラッチ
12 スロットルボディ(スロットル開度制御手段)
12A モーター(アクチュエータ)
18 クラッチ制御装置
35 バルブ(クラッチ制御用アクチュエータ)
53 目標スロットル開度決定部
65 エンジントルク補正演算部
100 自動二輪車(車両)
Ca 実クラッチ容量
Ct 目標クラッチ容量
E エンジン
P 目標クラッチ油圧
S エンジントルク補正量
Tc 補正目標スロットル開度
Tt 基本目標スロットル開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ制御装置(18)を備えるエンジン(E)と、油圧制御による断接を行うクラッチ(11)とを備えた車両のエンジン制御装置において、
スロットルグリップの操作量を検出して、アクチェータ(12A)によってスロットルバルブを操作するスロットル開度制御手段(12)を備えており、クラッチ油圧から実際に発生しているクラッチ容量を算出し、目標クラッチ容量(Ct)と実クラッチ容量(Ca)との差からエンジントルク補正量(S)を算出し、このエンジントルク補正量(S)、エンジン回転数、及び、通常時の目標とするスロットル開度を演算で求めた基本目標スロットル開度(Tt)を基に補正目標スロットル開度(Tc)を算出しエンジントルク制御を行うことを特徴とする車両のエンジン制御装置。
【請求項2】
基本目標スロットル開度(Tt)とエンジン回転数とから求められる目標クラッチ容量(Ct)により目標クラッチ油圧(P)を算出し、クラッチ制御用アクチュエータ(35)を介して、この目標クラッチ油圧(P)によるクラッチ油圧制御を行い、この時の実クラッチ油圧を測定することから実クラッチ容量(Ca)を算出し、エンジントルク補正演算部(65)で目標クラッチ容量(Ct)と実クラッチ容量(Ca)との差を求めてエンジントルク補正量(S)を算出し、目標クラッチ容量(Ct)と実クラッチ容量(Ca)との間に所定値に該当しない差が生じる場合にエンジントルク補正要求が出力され、前記エンジントルク補正量(S)に基づいて補正された前記補正目標スロットル開度(Tc)でエンジントルク制御が行われることを特徴とする請求項1記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記スロットル開度制御手段(12)の目標スロットル開度を決定する目標スロットル開度決定部(53)を有し、該目標スロットル開度決定部(53)は、前記基本目標スロットル開度(Tt)、及び、前記補正目標スロットル開度(Tc)を受信し、前記エンジントルク補正要求に応じて目標スロットル開度を切り替えることを特徴とする請求項2記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記補正目標スロットル開度(Tc)でエンジントルク制御が行われている期間に前記クラッチ(11)が接続されて車両(100)が発進されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−236461(P2012−236461A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105571(P2011−105571)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】