説明

車両のカウル部構造

【課題】カウル部内に侵入した雨水等が上記カウルフロントパネルを乗り越えてエンジンルーム内に侵入するのを簡単な構成で効果的に防止する。
【解決手段】フロントウインドガラス1の下端部に沿って車幅方向に延びるようにカウル部2が設置されるとともに、このカウル部2の前部には、エンジンルーム内に配設された車両用補機の設置部を回避するように形成された浅底部41を有するカウルフロントパネル5が設置され、かつカウルフロントパネル5の浅底部41に対応するカウル部2の部位に排水経路が設けられた車両のカウル部構造であって、上記カウル部2に形成された排水経路の下方位置に、この排水経路からカウル部内に侵入した雨水等を排水導出部に案内することによりエンジンルームに対する雨水等の侵入を防止する侵入防止手段31が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントウインドガラスの下端部に沿って車幅方向に延びるように設置された車両のカウル部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、ワイパーモータと、このワイパーモータにより駆動されるクランクアームと、上記ワイパーモータからクランクアームに入力された駆動力を左右のピボット部に伝達するコネクタロッドおよびリンクロッド等からなるリンク機構と、上記ピボット部に支持されたワイパーアームとを備えたワイパー装置を、フロントウインドガラスの下端部に沿って設置されたカウル部内に配設するとともに、上記ワイパーモータの被水を防止する被水防止手段を設けることにより、ワイパーモータおよびピボットシャフト等が被水することに起因して錆びが生じるのを防止することが行われている。
【特許文献1】特開2006−315511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記ワイパーモータ等を備えたワイパーユニットは、特許文献1に開示されているように、フロントウインドガラス(ウインドシールドガラス)の下端部に沿って設置されたカウル部(凹部)内に配設されている。このカウル部内に侵入した雨水等は、カウル部の底壁に沿って流れることにより、最深部に案内されて排水される。
【0004】
近年では、ボンネットの上に歩行者等が跳ね上げられる等の人身事故が発生した場合等に、ボンネットを充分に変形させて歩行者等を保護するために、カウル部の前端部に設けられたカウルフロントパネルの上方への突出量を小さくすることにより、その上方に配設されたボンネットの後端部とカウルフロントパネルとの間隔を充分に確保することが行われている。また、上記カウルフロントパネルの前方側にブレーキブースタまたは車載バッテリ等からなる車両用補機が配設されている場合には、これらとの干渉を回避するために上記カウルフロントパネルに浅底部を設けること行われている。
【0005】
上記のようにカウルフロントパネルの上方への突出量が小さく形成されるとともに、カウルフロントパネルに浅底部が設けられた車両等では、上記カウルフロントパネルの上下寸法が短くなる傾向があるため、上記カウル部の上面を覆うカウルトップガーニッシュに形成された開口部からカウル部内に侵入した雨水等が、上記カウルフロントパネルを乗り越えてエンジンルーム内に侵入し易いという問題がある。例えば、車両が下り坂を走行する際に上記カウル部の底壁が前下がり状態となると、カウル部内の雨水が車体の前方側に移動してカウルフロントパネルを乗り越え易く、エンジンルーム内の電装品のレイアウトに制限を受けたり、上記車両用機器が被水して錆が生じ易くなったりする等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、カウル部内に侵入した雨水等が上記カウルフロントパネルを乗り越えてエンジンルーム内に侵入するのを簡単な構成で効果的に防止できる車両のカウル部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、フロントウインドガラスの下端部に沿って車幅方向に延びるようにカウル部が設置されるとともに、このカウル部の前部には、エンジンルーム内に配設された車両用補機の設置部を回避するように形成された浅底部を有するカウルフロントパネルが設置され、かつカウルフロントパネルの浅底部に対応するカウル部の部位に排水経路が設けられた車両のカウル部構造であって、上記カウル部に形成された排水経路の下方位置に、この排水経路からカウル部内に侵入した雨水等を排水導出部に案内することによりエンジンルームに対する雨水等の侵入を防止する侵入防止手段が設けられたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のカウル部構造において、上記カウルフロントパネルに形成された浅底部に対応する位置にあるカウル部の上面部にウォッシャーノズルの台座部が設けられるとともに、その側方部近傍に排水経路となる開口部が形成され、かつこの開口部の下方に上記侵入防止手段が配設されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両のカウル部構造において、上記カウル部内には、ワイパーモータを有するワイパーユニットがカウルフロントパネルに形成された浅底部に対応する位置に配設されるとともに、このワイパーユニットに上記侵入防止手段が取り付けられたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のカウル部構造において、上記カウル部内には、ワイパーモータを有するワイパーユニットがカウルフロントパネルに形成された浅底部に対応する位置に配設されるとともに、このワイパーユニットのピボット部を覆うように設置された被水防止手段に、上記カウルフロントパネルに形成された浅底部に沿って車幅方向に延びる延設部が設けられ、この被水防止手段の延設部により、カウル部内に侵入した雨水等が排水導出部に案内されるように構成されたのである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、カウルフロントパネルの上下寸法が短く設定されている場合において車両が下り坂を走行する際等に、カウル部内に侵入した雨水等がカウルフロントパネルを乗り越えてエンジンルーム内に侵入するのを上記侵入防止手段により防止し、エンジンルーム内の電装品のレイアウトに制限を受けたり、エンジンルーム内に配設された車両用機器が被水することに起因して錆が生じたりするのを効果的に防止できるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、カウルフロントパネルに形成された浅底部に対応する位置にあるカウル部の上面部にウォッシャーノズルの台座部が設けられるとともに、その側方部近傍に排水経路となる開口部が形成された車両において、この開口部の下方に上記侵入防止手段を配設したため、上記カウル部の上面部上を流動する雨水等が上記台座部により堰き止められて上記開口部からカウル部内に侵入した場合に、この雨水等を上記侵入防止手段により確実に排水導出口の設置部に向けて案内することにより、エンジンルーム内に配設された車両用機器が被水すること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、カウル部内の上記浅底部に対応する位置に、ワイパーモータを有するワイパーユニットを配設するとともに、このワイパーユニットに上記侵入防止手段を取り付けるように構成したため、上記カウル部内のスペースが限られている場合においても、上記ワイパーユニットおよび侵入防止手段をコンパクト化して適正位置に配設することができるとともに、カウル部内に侵入した雨水等がエンジンルーム内に侵入するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、カウル部内の上記浅底部に対応する位置に上記ワイパーモータを有するワイパーユニットをカウルフロントパネルに形成された配設するとともに、このワイパーユニットのピボット部を覆うように設置された被水防止手段に、上記浅底部に沿って車幅方向に延びる延設部を設け、この被水防止手段の延設部により、カウル部内に侵入した雨水等を排水導出部に案内するように構成したため、上記カウル部内のワイパーユニットの設置部に流入した雨水等を、上記被水防止手段の延設部からなる侵入防止手段により確実に排水導出口の設置部に向けて案内し、エンジンルーム内に配設された車両用機器が被水すること等を効果的に防止できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2は、本発明に係る車両のカウル部構造の実施形態を示している。この車両には、フロントウインドガラス1の下端部に沿ってカウル部2が車幅方向に延びるように設置されている。このカウル部2は、エンジンルームと車室とを区画するダッシュパネル3の上端部に沿って車幅方向に延びるダッシュアッパパネル4と、その前端部に設けられたカウルフロントパネル5とによりボックス状の断面形状を有している。上記カウル部2の上面には、フロントウインドガラス1の下端部を支持するカウルトップパネル6が設置されるとともに、その前方には合成樹脂製のカウルトップガーニッシュ7が設置され、このカウルトップガーニッシュ7の前端部上方には、ボンネット8の後端部が配設されている。
【0016】
上記カウルトップガーニッシュ7には、図3および図4に示すように、ワイパーアーム9,10の駆動部となる左右一対のピボット部11,12が設置されるとともに、上記フロントウインドガラス1に向けて洗浄液を噴射するウォッシャーノズルの台座部13が設置され、かつこの台座部13の側方部近傍には、上記フロントウインドガラス1に沿ってカウルトップガーニッシュ7上に流下した雨水等を、カウル部2内に流入させる開口部14からなる排水経路が形成されている。また、上記カウルトップガーニッシュ7の前方部には、空調用エアをカウル部2内に導入するための開口部15が形成されている(図2参照)。
【0017】
上記カウル部2内には、上記ワイパーアーム9,10を駆動するワイパーユニット16が車幅方向の左側部位に配設されている。このワイパーユニット16は、図5に示すように、支持部材17に取り付けられたワイパーモータ18と、このワイパーモータ18により駆動されるクランクアーム19と、上記ワイパーモータ18からクランクアーム19に入力された駆動力を上記左右のピボット部11,12に伝達するリンク機構20とを備えている。
【0018】
上記支持部材17は、車幅方向に延びるように設置されて左右のピボット部11,12を連結する連結部21と、この連結部21から下方側に延びるように設置された左右一対の垂下部を有する前壁部22と、この前壁部22の下端部から後方側に延びるように設置された平板状の支持部23とを有している。この支持部23の下面にワイパーモータ18が固定されることにより、上記両ピボット部11,12の間において上記連結部21と平面視で略平行にワイパーモータ18が配設されている。
【0019】
上記ワイパーモータ18の先端部には、その駆動力を増大するとともにその出力方向を直角に変換して上方に向ける減速機24が固定され、この減速機24の出力軸25が上記支持部23を貫通してその上方側に突設されている(図2参照)。そして、この出力軸25の上端部に上記クランクアーム19が固定されることにより、このクランクアーム19が上記支持部材17の支持部23に回動可能に支持されている。また、上記クランクアーム19の先端部には、リンク機構20を構成する第1リンクロッド26の基端部が枢支されている。
【0020】
上記支持部材17の前壁部22には、クランクアーム19の回動変位時に、このクランクアーム19の先端部や、これに連結された上記第1リンクロッド26の基端部等が干渉するのを防止するための開口部27が、上方の連結部21と下方の支持部23との間に形成されている。なお、図5において、符号28は、上記支持部材17の支持部23を車体側に固定するための固定ブラケット、符号29,30は、後述する侵入防止手段31の取付部である。
【0021】
また、車体の右側に配設されるピボット部11には、一方のワイパーアーム10の駆動軸となる第1ピボットシャフト32が回転自在に支持されるとともに、車体に取り付けられる取付ブラケット33が突設されている。また、車体の左側に配設されるピボット部12には、他方のワイパーアーム9の駆動軸となる第2ピボットシャフト34が回転自在に支持されるとともに、車体に取り付けられる取付ブラケット35が突設されている。
【0022】
上記第1ピボットシャフト32の下端部には、第1駆動アーム36が固着され、この第1駆動アーム36の下面および上面には、リンク機構20を構成する上記第1リンクロッド26の先端部と第2リンクロッド37の基端部とがそれぞれ枢支されている。また、上記第2ピボットシャフト34の下端部には、第2駆動アーム38が固定され、この第2駆動アーム38の先端部に上記第2リンクロッド37の先端部が枢支されている。
【0023】
そして、上記第1,第2リンクロッド26,37と、第1,第2駆動アーム36,38とにより、上記ワイパーモータ18からクランクアーム19に入力された駆動力を、左右のピボット部11,12、具体的にはピボット部11,12に支持された第1,第2ピボットシャフト32,34に伝達して、これを回転駆動するリンク機構20が構成されている。
【0024】
すなわち、上記ワイパーモータ18が作動状態となると、減速機24の出力軸25が回転駆動されて上記クランクアーム19の先端部が円形の軌跡を描くように旋回し、その駆動力が上記第1リンクロッド26を介して第1駆動アーム36に伝達されることにより、この第1駆動アーム36の先端部が円弧状の軌跡を描くように揺動変位する。また、上記第1駆動アーム36の駆動力が上記第2リンクロッド37を介して第2駆動アーム38に伝達され、この第2駆動アーム38の先端部が円弧状の軌跡を描くように揺動変位する。そして、第1,第2駆動アーム36,38の揺動変位に対応して第1,第2ピボットシャフト32,34およびワイパーアーム9,10が駆動されることにより、このワイパーアーム9,10に取り付けられたワイパーブレードが揺動変位し、フロントウインドガラス1の所定範囲が払拭されるようになっている。
【0025】
上記のように構成されたワイパーユニット16は、図1に示すように、カウル部2内の所定部位、この実施形態では、車幅方向の中央部から左側端部に至る範囲に配設される。そして、上記支持部材17の固定ブラケット28およびピボット部11,12の取付ブラケット33,35が固定ボルトを介して車体側部材に固着されることにより、上記カウル部2内の後部下方に、ワイパーモータ18が配設されるとともに、上記カウル部2内の前部上方に上記支持部材17の連結部21が車幅方向に沿って配設され、かつ、上記ワイパーモータ18およびリンク機構20のリンクロッド26,37と、上記連結部21とが車幅方向に沿って略平行に配設された状態で車体に取り付けられる。
【0026】
上記カウル部2の左側前方、つまり上記ワイパーユニット16の設置部前方側には、図6に示すように、エンジンルーム内の後端部上方に位置するブレーキブースタ39または車載バッテリ40等からなる車両用補機が配設されるとともに、上記カウルフロントパネル5に上記車両用補機の設置部を回避するように浅底部41が設けられている。このカウルフロントパネル5の浅底部41に対応するカウル部2の部位、具体的には上記カウルトップガーニッシュ7の中央部よりも車幅方向のやや左側に位置する部分に、上記開口部14からなる排水経路が設けられている。そして、図2に示すように、上記減速機24の出力軸25の軸心Aが前傾状態で上記カウル部2内に設置されることにより、上記支持部材17の前壁部22がカウルフロントパネル5の浅底部41に沿って配設されるように構成されている。
【0027】
また、図4および図7に示すように、上記カウル部2のカウルトップガーニッシュ7に形成された開口部14の下方位置には、この開口部14からカウル部2内に侵入した雨水等を収容して排水導出部、つまりカウル部2の後方部に位置する最深部の所定位置に形成された排水導出口(図示せず)の設置部に案内することにより、エンジンルームに対する雨水等の侵入を防止する合成樹脂製の侵入防止手段31が取り付けられている。
【0028】
上記侵入防止手段31は、カウル部2の前端部近傍から上方に起立する前壁部42と、上記カウルフロントパネル5に形成された浅底部41の傾斜角度よりも急角度で後下がりに傾斜した状態で上記浅底部41の上方側に配設された底壁部43と、その左右両端部に設けられた側壁部44とを有する所定幅の皿状部材からなっている。上記侵入防止手段31の左右両端部には、上記支持部材17に設けられた取付部29,30(図5参照)に取り付けられる取付ブラケット45,46が設けられるとともに、上記底壁部43の上面略中央には、支持部材17の連結部21に設けられた被係止部に係合される係合用突部47が設けられている。
【0029】
上記構成において、図4の矢印Bに示すように、フロントウインドガラス1の下端部とカウルトップガーニッシュ7の後端部との間隙および上記開口部14からカウル部2内の車幅方向の中央部近傍に流入した雨水等は、上記侵入防止手段31の底壁部43上に流下した後、上記前壁部42および側壁部44によって車体の前方側または車幅方向に流動することが規制されつつ、上記カウル部2の後方側に案内され、カウル部2の後方部に形成された排水導出口からカウル部2外に導出されることになる。
【0030】
また、上記ワイパーユニット16のピボット部11,12には、このピボット部11,12を覆うことにより上記第1,第2ピボットシャフト32,34等が被水するのを防止する合成樹脂製の第1,第2被水防止手段49,50が設けられている。そして、車体の左側に位置するピボット12を覆う第2被水防止手段50には、上記カウルフロントパネル5に形成された浅底部41に沿って車幅方向の中央部側に延びる断面U字状のガイド溝部51からなる延設部が形成され、カウル部2内に侵入した雨水等を排水導出部に案内してエンジンルームに対する雨水等の侵入を防止する侵入防止手段が上記ガイド溝部51により構成されている。
【0031】
すなわち、図2の矢印Cに示すように、上記フロントウインドガラス1の下端部とカウルトップガーニッシュ7の後端部との間隙からカウル部2内の車幅方向左側部分に流入した雨水等は、上記第2被水防止手段50のガイド溝部51上に流下した後、このガイド溝部51に沿って車幅方向の中央側に案内されることにより、上記侵入防止手段31を介して上記カウル部2の後方側に案内され、このカウル部2の所定位置に設けられた排水導出口からカウル部2の外部に導出されるようになっている。
【0032】
上記のようにフロントウインドガラス1の下端部に沿って車幅方向に延びるようにカウル部2が設置されるとともに、このカウル部2の前部には、エンジンルーム内に配設された車両用補機の設置部を回避するように形成された浅底部41を有するカウルフロントパネル5が設置され、かつカウルフロントパネル5の浅底部41に対応するカウル部2の部位に開口部14等からなる排水経路が設けられた車両のカウル部構造において、上記カウル部2に形成された開口部14等からなる排水経路の下方位置に、この排水経路からカウル部2内に侵入した雨水等を排水導出部に案内することによりエンジンルームに対する雨水等の侵入を防止する侵入防止手段31を設けたため、カウル部2内に侵入した雨水等が上記カウルフロントパネル5を乗り越えてエンジンルーム内に侵入するのを簡単な構成で効果的に防止できるという利点がある。
【0033】
すなわち、人身事故の発生時等に上記ボンネット8を充分に変形させることができるように上記カウルフロントパネル5の上方への突出量が小さく形成されるとともに、カウルフロントパネル5に上記浅底部41が設けられることにより、このカウルフロントパネル5の上下寸法が短く設定された車両等においては、上記カウル部2内に侵入した雨水等がカウルフロントパネル5を乗り越えてエンジンルーム内に侵入し易く、特に車両が下り坂を走行する際に上記カウル部2の底壁(浅底部41)が前下がり状態となると、浅底部41上に位置する雨水等がエンジンルーム内に容易に移動し易い傾向がある。
【0034】
しかし、上記排水経路の下方位置に侵入防止手段31を設け、図4の矢印Bに示すように、フロントウインドガラス1の下端部とカウルトップガーニッシュ7の後端部との間隙および上記開口部14からカウル部2内に流入した雨水等を、上記侵入防止手段31に収容して排水導出口の設置部に案内することにより、上記カウル部2内に侵入した雨水等がカウルフロントパネル5を乗り越えてエンジンルーム内に侵入するのを防止するように構成すれば、カウルフロントパネル5の上下寸法が短く設定された車両が下り坂を走行する際等においても、上記カウル部2内に侵入した雨水等がカウルフロントパネル5を乗り越えてエンジンルーム内に侵入するのを防止することができるため、エンジンルーム内の電装品のレイアウトに制限を受けたり、車両用機器が被水することに起因して錆が生じたりするのを効果的に防止できるという利点がある。
【0035】
また、上記実施形態に示すように、カウルフロントパネル5に形成された浅底部41に対応する位置にあるカウルトップガーニッシュ7からなるカウル部2の上面部にウォッシャーノズルの台座部13が設けられるとともに、その側方部近傍に排水経路となる開口部14が形成された車両において、この開口部14の下方に上記侵入防止手段31を配設した場合には、上記カウルトップガーニッシュ7上を流動して上記台座部13により堰き止められて上記開口部14からカウル部2内に侵入した雨水等を、上記侵入防止手段31により確実に排水導出口の設置部に向けて案内することができるため、エンジンルーム内に配設された車両用機器が被水すること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0036】
上記実施形態では、カウル部2内の上記浅底部41に対応する位置に、ワイパーモータ18を有するワイパーユニット16を配設するとともに、このワイパーユニット16に上記侵入防止手段31を取り付けるように構成したため、上記カウル部2内のスペースが限られている場合においても、上記ワイパーユニット16および侵入防止手段31をコンパクト化して適正位置に配設することができるとともに、カウル部2内に侵入した雨水等がエンジンルーム内に侵入するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0037】
また、上記実施形態では、カウル部2内に配設された上記ワイパーユニット16のピボット部12を覆うように被水防止手段50を設置するとともに、この被水防止手段50に上記カウルフロントパネル5に形成された浅底部41に沿って車幅方向に延びるガイド溝部51からなる延設部を設け、この被水防止手段50の延設部により、カウル部2内に侵入した雨水等を排水導出部に案内するように構成したため、図2の矢印Cに示すように、上記フロントウインドガラス1の下端部とカウルトップガーニッシュ7の後端部との間隙からカウル部2内のワイパーユニット16の設置部に流入した雨水等を、上記被水防止手段50の延設部からなる侵入防止手段により確実に排水導出口の設置部に向けて案内し、エンジンルーム内に配設された車両用機器が被水すること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0038】
なお、上記実施形態では、第2被水防止手段50のガイド溝部51上に流下した雨水等を、このガイド溝部51に沿って車幅方向の中央側に案内した後、上記侵入防止手段31を介して上記カウル部2の後方側に案内するように構成した例について説明したが、上記侵入防止手段31を省略し、上記カウル部2内のワイパーユニット16の設置部に流入した雨水等を、上記第2被水防止手段50のガイド溝部51からなる侵入防止手段により排水導出口の設置部へ直接、案内するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る車両のカウル部構造の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】カウル部の上部構造を示す平面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】ワイパーユニットの具体的構成を示す側面断面図である。
【図6】カウル部を車体の前面側から見た状態を示す斜視図である。
【図7】カウル部の内部構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 フロントウインドガラス
2 カウル部
5 カウルフロントパネル
13 台座部
14 開口部
16 ワイパーユニット
18 ワイパーモータ
31 侵入防止手段
41 浅底部
50 被水防止手段
51 ガイド溝部(延設部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウインドガラスの下端部に沿って車幅方向に延びるようにカウル部が設置されるとともに、このカウル部の前部には、エンジンルーム内に配設された車両用補機の設置部を回避するように形成された浅底部を有するカウルフロントパネルが設置され、かつカウルフロントパネルの浅底部に対応するカウル部の部位に排水経路が設けられた車両のカウル部構造であって、上記カウル部に形成された排水経路の下方位置に、この排水経路からカウル部内に侵入した雨水等を排水導出部に案内することによりエンジンルームに対する雨水等の侵入を防止する侵入防止手段が設けられたことを特徴とする車両のカウル部構造。
【請求項2】
上記カウルフロントパネルに形成された浅底部に対応する位置にあるカウル部の上面部にウォッシャーノズルの台座部が設けられるとともに、その側方部近傍に排水経路となる開口部が形成され、かつこの開口部の下方に上記侵入防止手段が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のカウル部構造。
【請求項3】
上記カウル部内には、ワイパーモータを有するワイパーユニットがカウルフロントパネルに形成された浅底部に対応する位置に配設されるとともに、このワイパーユニットに上記侵入防止手段が取り付けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のカウル部構造。
【請求項4】
上記カウル部内には、ワイパーモータを有するワイパーユニットがカウルフロントパネルに形成された浅底部に対応する位置に配設されるとともに、このワイパーユニットのピボット部を覆うように設置された被水防止手段に、上記カウルフロントパネルに形成された浅底部に沿って車幅方向に延びる延設部が設けられ、この被水防止手段の延設部により、カウル部内に侵入した雨水等が排水導出部に案内されるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のカウル部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−126188(P2009−126188A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299688(P2007−299688)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】