車両のカバーのための操作機構及びロック機構
【課題】車両、特に自動車のカバーをリンク機構によって可動に駆動することであり、リンク機構はカバーを少なくとも1つの位置で確実にロックし、リンク機構を少ない部材で簡単かつ廉価に製造可能にすることである。
【解決手段】リンク機構(16)の1つのリンク(20,21,22)がトグルレバー(22)として構成されており、介在リンク(21)は一方の端部によってトグルレバー(22)の屈曲領域において旋回可能に固定されており、かつ、介在リンク(21)は他方の端部によって、主支承部(3)に支承されているリンク(20)に旋回可能に結合されているようにした。
【解決手段】リンク機構(16)の1つのリンク(20,21,22)がトグルレバー(22)として構成されており、介在リンク(21)は一方の端部によってトグルレバー(22)の屈曲領域において旋回可能に固定されており、かつ、介在リンク(21)は他方の端部によって、主支承部(3)に支承されているリンク(20)に旋回可能に結合されているようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構であって、カバーは連結ロッドを介して開放位置及び閉鎖位置間を運動可能であり、連結ロッドはホルダを介してカバーの下側部分に旋回可能に取り付けられており、連結ロッドの他の端部がリンク機構に旋回可能に固定されており、リンク機構は少なくとも2つのリンクから成っており、少なくとも2つのリンクは、カバーの閉鎖時に死点ロック(Totpunktverriegelung)の位置(死点においてロックする位置)を互いに占め、リンクは液圧的なシリンダによって駆動される、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるカバーを開放するために、カバーを駆動装置によって操作機構を介して閉鎖された位置から開放された位置へ動かすことが公知になっている。さらに、カバーを旋回ジョイントを介して車両の上部構造又は車両の他の構成部材に取り付けることができる。カバーの旋回は旋回軸線を中心に行われるか、又はトグル機構によってスペース内の曲線軌道に沿って行われる。操作機構及び操作機構の駆動装置は車両の上部構造にもカバーにも取り付けることもできる。別の慣用の構成においては、操作機構の駆動装置と操作機構とは互いに離して位置決めされていて、結合部材、いわゆる連結装置を介して互いに結合されている。
【0003】
カバーの終了位置からのカバーの運動のために著しく大きな駆動力が必要となることがあるので、液圧式の駆動装置が頻繁に使用される。電気的な駆動装置は適切な減速伝動装置を必要とする。しかし減速伝動装置は著しく長い操作時間を必要とし、操作に必要な力に応じて大きく寸法設定されていてかつ大きな組込みスペースを必要とする伝動装置を使用する。上記伝動装置は大きな固有重量を有しており、カバーに直に取り付けた場合、カバーの操作を付加的に阻害する。
【0004】
操作機構のために、一般的にはトグル機構が使用される。トグル機構は種々異なるリンクから構成されている。これらのリンクは重畳して互いに平行な状態にもたらすことができるので、小さな組込みスペースを可能にする。トグル機構を比較的簡単かつ廉価に製造することもできる。回り込み可能なピン又はフックとして形成することができる付加的なロック部材との協働において、トグル機構の運動をロックすることができる。その結果、特にコンパクトな構造において複数の機能をまとめることができる。
【0005】
このような駆動装置及び付加的なロック機構を備えたトグル機構は、例えばフードケースカバー(Verdeckkastendeckel)、トランクカバーといった可動なカバーのために使用されるか、又は可動なフードのためにも使用される。当然、駆動装置及び付加的なロック機構を備えたトグル機構は、車両における他のカバー又はフラップに適切な形状で用いてもよい。
【0006】
特許文献1に記載のフードケースカバーは、自動車の上部構造において車両フードのための収納室として働くフードボックスを覆っている。四節リンク機構(Viergelenkkinematik)のリンク部材を介して、フードケースカバーはリンクシステムの第1及び第2のリンクと結合されている。第1ンのリンクは伝達レバーに枢着されている。第2のリンクは制御レバーに枢着されている。制御レバーには作動装置のピストンロッドが作用する。四節リンク機構及びリンクシステムは、フードケースカバーの閉鎖された位置において死点を超えた位置を占めるように形成されている。
【0007】
特許文献2は、乗用車の可動なリヤシェルフ(カバー部材4)に関するものである。リヤシェルフは作動機構を介して運動可能及び固定可能である。作動機構はルーフ機構とブロック機構とを有している。ルーフ機構は第1のロックレバーと、第2のロックレバーとを有している。第1のロックレバーは連結リンクの介在下でブロック機構の死点リンクと結合されている。死点リンクは乗用車の上部構造のコンソールにジョイント式に支承されている。死点リンクには介在リンクが作用し、介在リンクは上部構造に支承された死点を超えたリンクに枢着されている。上記死点を超えたリンクはアクチュエータを介して制御可能である。ルーフエレメントの終了位置では、ブロック機構はそれぞれ死点を超えた状態にある。
【0008】
特許文献3において、フードケースカバーのための駆動装置が公知になっている。フードケースカバーは閉鎖位置と開放位置との間を移動可能である。フードケースカバーは閉鎖位置において、駆動装置と連結された閉鎖機構を介してロックされるか、若しくはロック解除することができる。このために駆動装置は駆動部を介して操作される四節リンク機構を有している。四節リンク機構のうち1つのリンクは、結合部材を介してフードケースカバーのための閉鎖機構を操作するスイングアーム(Schlepphebel)を制御する。フードケースカバーが閉鎖されてロックされている場合、スイングアームは、リンクにより機械的に戻り回動しない位置にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第19960905号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10156011号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許第19801853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、車両、特に自動車のカバーをリンク機構によって可動に駆動することであり、リンク機構はカバーを少なくとも1つの位置で確実にロックする。リンク機構は少ない部材で簡単かつ廉価に製造可能であることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構であって、カバーは連結ロッドを介して開放位置及び閉鎖位置間を運動可能であり、連結ロッドはホルダを介してカバーの下側部分に旋回可能に取り付けられており、連結ロッドの他の端部がリンク機構に旋回可能に固定されており、リンク機構は少なくとも2つのリンクから成っており、少なくとも2つのリンクは、カバーの閉鎖時に死点ロックの位置を互いに占め、リンクは液圧的なシリンダによって駆動される、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構において、リンク機構の1つのリンクがトグルレバーとして構成されており、介在リンクは一方の端部によってトグルレバーの屈曲領域において旋回可能に固定されており、かつ、介在リンクは他方の端部によって、主支承部に支承されているリンクに旋回可能に結合されていることにより達成される。
【0012】
有利な構成が従属請求項の対象である。
【0013】
好ましくは、トグルレバーはほぼ90°の角度を有している。
【0014】
好ましくは、支承部が四節リンク機構を形成する。
【0015】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、リンク及び介在リンクは液圧式のシリンダの方向にV字形に互いに屈曲している位置を占め、リンクの前記位置は死点ロック位置である。
【0016】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、トグルレバーの脚部が走行方向に対してほぼ鉛直方向に配向されている。
【0017】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、リンクとU字形ヘッドとの間の支承部は、支承部間の結合線上に位置する。
【0018】
好ましくは、支承部と支承部とのてこ比がほぼ同じである。
【0019】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、支承部の結合線は連結ロッドに対してほぼ直交する方向に配向されている。
【0020】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、支承部は支承部を通る鉛直な線と、支承部を通る水平な線とのほぼ交点に位置する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、開閉したいカバーを備えた車両においてこのカバーを操作機構を介して動かすという一般的な思想に基づく。本発明において、カバーは、カバーと車両の上部構造との間の旋回軸線を中心に旋回し、機械的な装置を介して閉鎖された位置から開放された位置へと移動する。機械的な装置はボーデンケーブルにより形成されていてよいか、又は複数のレバーから成るリンク機構を介して成っていてよい。このようなリンク機構は通常、結合部材によりカバーと結合されており、カバーに連結している結合部材により直に上方に開放旋回できるか若しくは押し上げられ、同様の結合部材を介して再び閉鎖できるか又は引き閉められる、という利点を有している。
【0022】
本発明において、結合部材は、カバーを動かすために、作動装置、例えば液圧式のシリンダ又は電気的な操作ユニットにより直接駆動される。動かそうとするカバーは大きくかつ重く構成されていることがよくあり、さらに予め規定された部分的に変化する速度によって動かす必要があるので、適切な増速又は減速伝動装置を使用することが有利である。これに加えて、これらの伝動装置は操作システム内に挿入され、さらに、カバー又は車両の上部構造に配置されていてよい。
【0023】
増速又は減速伝動装置として歯車列、スライダ駆動装置を備えた伝動装置又はリンク機構を使用することができる。歯車列、特に歯車伝動装置は製造において極めて手間がかかり、高価でかつ比較的大きな組込みスペースを必要とするものの、利点としてセルフロック機構という可能性を有している。セルフロック機構の場合、カバーは歯車伝動装置の意図しない操作により、例えば歯車伝動装置に作用するカバーの重量負荷により動かされることはない。歯車伝動装置はカバーのロックのためにカバーの終了位置において使用することができるので、カバーはセルフロック機構により位置(終了位置)に関して非可動に保持される。本発明において付加的なロック機構を省くことができる。
【0024】
本発明の目的は、上記効果をリンク機構の終了位置において、リンク及びレバーの特に有効なアッセンブリにより達成することである。しかし同時に、リンク及びレバーをカバーの運動のための駆動装置として使用することが望まれる。このことは2つのリンクがカバーの終了位置に到達した際に、相前後して配置された延ばされた状態に達し、小さな力で延ばされた状態を超えることができることにより達成される。超えるとは、旋回運動がリンク/レバーの通常の完全な旋回領域(引っ掛かりのない及びブロックされない旋回領域)の範囲から、リンク/レバーの自由な運動を止めるような領域へ実施され、押し込まれることと理解される。自由な運動を止めるような領域からは、外部からリンク機構へ作用する力(例えばカバーの重量、カバーの引上げ及び押開け)による通常の旋回領域への自然な戻り旋回はもはや可能ではない。しかしレバーをこの位置から再び戻し旋回できるように、2つのリンクのうちの少なくとも1つが駆動装置により延ばされた状態を超えて運動される必要がある。こうしてようやく「自由な」旋回工程を実施することができる。
【0025】
主支承部における予め組付け可能なユニットとして、リンク機構、液圧式のシリンダ、及び連結ロッドの枢着部(トグルレバー)の特にコンパクトなアッセンブリが特に有利である。このユニットは車両への組込みから完全に独立して予め組み立てられて調節することができる。このことはサービス作業においても大きな利点がある。主支承部は完全なユニットとして取り外され、例えば交換ユニットと交換されるので、サービス時間を最小限に抑えることができる。
【0026】
本発明のさらに重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、図面に基づく説明から明らかになる。
【0027】
上記及び下記特徴は、本発明の権利範囲から逸脱することのない範囲で、夫々説明した組合せだけでなく、他の組合せ又は単独でも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】主支承部に組み付けられたリンク機構と連結ロッドとを備えた、閉鎖された状態にあるカバーの側面図である。
【図2】操作位置にある、連結ロッドとリンク機構とを備えた開放されたカバーの側面図である。
【図3】2つのリンクの死点超えロック機構を備えたリンク機構の拡大図である。
【図4】閉鎖されたカバーにおける連結ロッドを備えたリンク機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。同一又は類似の構成部材、又は機能に関して同一の構成部材には同じ符号を付す。
【0030】
図1は、主支承部3に組み付けられたリンク機構16と連結ロッド15とを備えた、閉鎖された状態にあるカバー2の側面図である。カバー2の、走行方向1に見て後方の端部は、支承部4を介して車両の上部構造に運動可能に支承されている。閉鎖された状態において、カバー2の前方の端部は、ロックピン6を介して収容部7に収容されて案内される。本実施の形態において、ロックピン6はホルダ5の端部に固定されており、ホルダ5自体はカバー2の下側部分に取り付けられている。収容部7は車両の上部構造に、例えば複数のねじを介して固定されており、通常、これらのねじを介して収容部7の位置を調整することができる。
【0031】
カバー2の下側部分の中央から少し後方にホルダ10が固定されている。ホルダ10における後方端部は、連結ロッド15のカバー側の支承のための旋回支承部を形成する。ホルダ10の走行方向1に見て前方の端部において、ホルダ10は側方に突出している延長部を有しており、延長部にはエラストマから製造されたストッパ緩衝器36が固定されている。ストッパ緩衝器36は、例えば収納されたフードのための上側のストッパとして働き、収納位置にあるフードが車両の鉛直方向の振動時にカバーの下面に衝突しないようにする。当然ながら、ストッパ緩衝器36はカバー2と車両との間の鉛直方向ストッパとして設計されていてよい。フードの位置固定及び確実な保持のために、フードは、例えばルーフリンク又はルーフステーと共に支持部12に収容することができる。このために支持部12は付加的な構成部材として主支承部3に取り付けられている。支持部12は、主支承部3に対する結合部を介して、固定ねじによって位置調節して、固定することができる。また、支持部12は主支承部3に一体に形成することもできる。
【0032】
連結ロッド15は支承部11においてカバー1の下側部分に旋回可能に取り付けられており、連結ロッド15の他方の端部は、トグルレバー22の脚部23の、鉛直方向下方を向いている一方の端部と旋回可能に結合されている。トグルレバー22はほぼ直角に構成されており、トグルレバー22の、走行方向1に見てほぼ水平方向で後方を向いている他方の脚部24は、その端部において主支承部3に旋回可能に取り付けられている。直角の屈曲部の領域において、介在リンク21が支承部26を介してトグルレバー22に旋回可能に支承されている。介在リンク21の自由端部は、また支承部28を介してリンク20の自由端部に旋回可能に結合されている。リンク20は支承部30を介して主支承部3に可動に保持されている。カバー2の閉鎖時に、並んで配置されているリンク20,21は、液圧式のシリンダ13の方に少し折り曲げられた状態で設けられている。
【0033】
リンク機構16は実質的にリンク20,21、トグルレバー22及び連結ロッド15により形成される。リンク機構16の操作のためにリンク20はほぼ真ん中の位置において、支承部31におけるU字形ヘッド(Gabelkopf)17を介して液圧式のシリンダ13のピストンロッド14に旋回可能に結合されている。液圧式のシリンダ13の端部は、主支承部3において旋回可能にほぼ水平な状態で主支承部3に組み込まれている。液圧式のシリンダ13とリンク機構16とは、カバー2が閉鎖されている場合、主支承部3の寸法から突出しないので、特に小型の構成ユニットがもたらされる。この構成ユニットは車両への組付け前にほぼ完全に組み合わされて調節することがでるので、取扱いは容易であり、また、サービス作業及びこの作業に付随するコストも著しく減じられる。
【0034】
例えばフードの開放又は閉鎖のために、まずカバー2をフード運動のために限界でない位置に動かす必要がある。このことは図2のカバー2の開放位置において示されている。さらに、カバー2は支承部4を介してほぼ鉛直方向の位置に旋回する。支承部4は旋回運動の他に付加的に並進的な鉛直及び水平方向の移動を可能にする。カバー2の開放のために、ピストンロッド14が液圧式のシリンダ13から進出する。U字形ヘッド17を介してピストンロッド14と結合されたリンク20は、走行方向1に対向して旋回する。介在リンク21はリンク20に対する旋回可能な結合部を介して連行されて旋回する。介在リンク21はトグルレバー22を旋回させ、静止位置においてトグルレバー22の鉛直方向下方を向いている脚部23は、カバー2に対して斜め上方を向いている位置へ動かされる。トグルレバー22の脚部23はほぼ連結ロッド15に向かって延びる状態に配向されている位置を占める。同様に、介在リンク21と、主支承部3に旋回可能に結合された、トグルレバー22の脚部24とはほぼ延ばされた状態を有している。
【0035】
カバー2が閉鎖されている場合、リンク21は脚部端部の結合直線に対する仮想線に対して鈍角を有している。連結ロッド15と連結ロッド15に配設された脚部23との間の角度も45°の角度よりも大きい。液圧式のシリンダ13の作用線とリンク20との間には、カバー2が閉鎖されている場合、約45°の角度が調節されている。リンク機構16の操作時に液圧式のシリンダ13により円滑な動作による操作が行われ、リンク機構16内部の力がほぼ最小限に抑えられているように、上記全ての大きな鈍角が選択されている。カバー2が開放されている場合、リンク20,21及びトグルレバー22の延び状態及び配置は、カバー2の閉鎖時に閉鎖工程がカバー2の自重によりほぼ完全に実行することができるように規定されている。
【0036】
図3にはカバー2が閉鎖された状態における、主支承部3と、液圧式のシリンダ13と、連結ロッド15とを備えたリンク機構16の拡大図が図1に対応して示されている。図3においては、ピストンロッド14は液圧式のシリンダ13内に進入しており、ピストンロッド14の自由端部におけるU字形ヘッド17を介して、リンク20は支承部30を中心に液圧式のシリンダ13寄りの終了位置へと旋回されている。リンク20の支承部30とは反対側の端部において、介在リンク21は支承部28を介して旋回可能にリンク20に取り付けられている一方で、介在リンク21の他の端部で支承部26を介してトグルレバー22の屈曲領域に結合されている。
【0037】
カバー2の開放時には、トグルレバー22の終了位置にある鉛直方向に向けられているトグルレバー22の脚部23がリンク20の方向に運動するように、主支承部側の支承部27を中心にトグルレバー22は旋回する。終了位置において、2つのリンク20,21の共通の支承部28は、液圧式のシリンダ13の方向にV字形に小さく屈曲されている。V字形の屈曲は、ほぼ平行に移動される結合線VBLlに対する結合線VBL(支承部26と30との間の結合線)の間隔35に相当する。
【0038】
支承部28、ひいてはリンク20,21は、トグルレバー22の終了位置から出発する独自の及び突発的な運動を防ぐ死点ロック状態(Totpunktverriegelung)にある。したがって、2つのリンク20,21はリンク機構16の内側にロックされており、その状態に位置固定されている。このようなロックにより、フック及び/又はロック操作部のような付加的なロック部材を完全に省くことができる。内側のロックにより、カバー2を外部から開放しようとする場合、連結ロッド15が伝達部材としてカバー2とリンク機構16との間に配置されているトグルレバー22を、トグルレバー22に対する伝達部材の結合部を介して動かすことはできない。連結ロッド15の理論的に唯一の運動方向はカバー2のさらなる閉鎖運動に一致し、トグルレバー22の鉛直方向の脚部23はさらに走行方向1に旋回することになる。支承部26が反時計回りに回動するように介在リンク21の結合部を介して、支承部28が最大で結合線VBLにまで動くので上記運動は考えられる。さらなる運動は2つのリンク20,21の一方の伸びが必要となるので、上記位置からのさらなる旋回は2つのリンク20,21の延ばされた状態により防がれる。カバー2の開放のためには、リンク20,21の旋回がカバー2の方向に向かって行われなければならないが、このことは、開放に必要な運動方向に対向したV字形の屈曲により防がれる。リンク20,21のV字形の屈曲により、2つのリンク20,21の「自発旋回」はV字方向へと向けられる。
【0039】
カバー2の開放時に、液圧式のシリンダ13を介してリンク20はカバー2の方向に旋回させられて、支承部28,26,27の押込みが行われ、ひいては支承部28は結合線VBLを超えてカバー2の方向に運動する。2つのリンク20,21はさらなる旋回中に互いに屈曲し続ける。さらなる旋回は、リンク機構16が引っ掛かりなしで完全に旋回することを可能にする。上記工程は開放されたカバー2が終了位置に達することにより初めて制限される。連結ロッド15とトグルレバー22とが線状に延ばされた状態にある場合に、開放されたカバー2の終了位置が達成されている。支承部11,25,27は1つの共通の結合線上に位置するように配置されている。
【0040】
図4はカバー2が閉鎖された状態における、連結ロッド15を備えたリンク機構16の斜視図である。図4において、構成部材(リンク20,21、液圧式のシリンダ13、トグルレバー22、連結ロッド15)の重なり合いを見て取ることができる。トグルレバー22は主支承部3の鉛直方向に向けられている壁に対して密に離間されて、鉛直方向に向けられた壁に旋回可能に支承されている。トグルレバー22の脚部23と、液圧式のシリンダ13との間において、脚部23の端部に連結ロッドが可動に取り付けられている。ほぼ同じ平面において、連結ロッド15の上側にリンク20と結合されている介在リンク21が設けられている。リンク20は液圧式のシリンダ13と同じ平面に位置している。支持部12は何重にも折り曲げられ金属薄板ホルダとして設計されており、支承部30の領域において適切な固定手段によって主支承部3に取り付けられている。連結ロッド15のカバー側の支承部11はホルダ10により示される。ホルダ10も支持部12と同様に何重にも曲げられた金属薄板から製造された構成部材である。この構成部材においては、ホルダ10と一体に結合された延長部が側方に突出している。ストッパ緩衝器36が延長部に主支承部3の側から調整可能に螺設されている。
【符号の説明】
【0041】
1 走行方向、 2 カバー、フードケースカバー(VDKD)、 3 主支承部、 4 支承部、 5 ホルダ、 6 ロックピン、 7 収容部、 10 ホルダ、 11 支承部、旋回支承部、 12 支持部、 13 液圧式のシリンダ、 14 ピストンロッド、 15 連結ロッド、 16 リンク機構、 17 U字形ヘッド、 20 リンク、 21 介在リンク、 22 トグル機構、トグルレバー、 23 脚部、鉛直方向の脚部、 24 脚部、水平方向の脚部、 25,26,27,28,30,31 支承部、 35 間隔、平行な間隔、 36 ストッパ緩衝器、 VBL 結合線、 VBLl 平行な結合線
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構であって、カバーは連結ロッドを介して開放位置及び閉鎖位置間を運動可能であり、連結ロッドはホルダを介してカバーの下側部分に旋回可能に取り付けられており、連結ロッドの他の端部がリンク機構に旋回可能に固定されており、リンク機構は少なくとも2つのリンクから成っており、少なくとも2つのリンクは、カバーの閉鎖時に死点ロック(Totpunktverriegelung)の位置(死点においてロックする位置)を互いに占め、リンクは液圧的なシリンダによって駆動される、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるカバーを開放するために、カバーを駆動装置によって操作機構を介して閉鎖された位置から開放された位置へ動かすことが公知になっている。さらに、カバーを旋回ジョイントを介して車両の上部構造又は車両の他の構成部材に取り付けることができる。カバーの旋回は旋回軸線を中心に行われるか、又はトグル機構によってスペース内の曲線軌道に沿って行われる。操作機構及び操作機構の駆動装置は車両の上部構造にもカバーにも取り付けることもできる。別の慣用の構成においては、操作機構の駆動装置と操作機構とは互いに離して位置決めされていて、結合部材、いわゆる連結装置を介して互いに結合されている。
【0003】
カバーの終了位置からのカバーの運動のために著しく大きな駆動力が必要となることがあるので、液圧式の駆動装置が頻繁に使用される。電気的な駆動装置は適切な減速伝動装置を必要とする。しかし減速伝動装置は著しく長い操作時間を必要とし、操作に必要な力に応じて大きく寸法設定されていてかつ大きな組込みスペースを必要とする伝動装置を使用する。上記伝動装置は大きな固有重量を有しており、カバーに直に取り付けた場合、カバーの操作を付加的に阻害する。
【0004】
操作機構のために、一般的にはトグル機構が使用される。トグル機構は種々異なるリンクから構成されている。これらのリンクは重畳して互いに平行な状態にもたらすことができるので、小さな組込みスペースを可能にする。トグル機構を比較的簡単かつ廉価に製造することもできる。回り込み可能なピン又はフックとして形成することができる付加的なロック部材との協働において、トグル機構の運動をロックすることができる。その結果、特にコンパクトな構造において複数の機能をまとめることができる。
【0005】
このような駆動装置及び付加的なロック機構を備えたトグル機構は、例えばフードケースカバー(Verdeckkastendeckel)、トランクカバーといった可動なカバーのために使用されるか、又は可動なフードのためにも使用される。当然、駆動装置及び付加的なロック機構を備えたトグル機構は、車両における他のカバー又はフラップに適切な形状で用いてもよい。
【0006】
特許文献1に記載のフードケースカバーは、自動車の上部構造において車両フードのための収納室として働くフードボックスを覆っている。四節リンク機構(Viergelenkkinematik)のリンク部材を介して、フードケースカバーはリンクシステムの第1及び第2のリンクと結合されている。第1ンのリンクは伝達レバーに枢着されている。第2のリンクは制御レバーに枢着されている。制御レバーには作動装置のピストンロッドが作用する。四節リンク機構及びリンクシステムは、フードケースカバーの閉鎖された位置において死点を超えた位置を占めるように形成されている。
【0007】
特許文献2は、乗用車の可動なリヤシェルフ(カバー部材4)に関するものである。リヤシェルフは作動機構を介して運動可能及び固定可能である。作動機構はルーフ機構とブロック機構とを有している。ルーフ機構は第1のロックレバーと、第2のロックレバーとを有している。第1のロックレバーは連結リンクの介在下でブロック機構の死点リンクと結合されている。死点リンクは乗用車の上部構造のコンソールにジョイント式に支承されている。死点リンクには介在リンクが作用し、介在リンクは上部構造に支承された死点を超えたリンクに枢着されている。上記死点を超えたリンクはアクチュエータを介して制御可能である。ルーフエレメントの終了位置では、ブロック機構はそれぞれ死点を超えた状態にある。
【0008】
特許文献3において、フードケースカバーのための駆動装置が公知になっている。フードケースカバーは閉鎖位置と開放位置との間を移動可能である。フードケースカバーは閉鎖位置において、駆動装置と連結された閉鎖機構を介してロックされるか、若しくはロック解除することができる。このために駆動装置は駆動部を介して操作される四節リンク機構を有している。四節リンク機構のうち1つのリンクは、結合部材を介してフードケースカバーのための閉鎖機構を操作するスイングアーム(Schlepphebel)を制御する。フードケースカバーが閉鎖されてロックされている場合、スイングアームは、リンクにより機械的に戻り回動しない位置にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第19960905号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10156011号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許第19801853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、車両、特に自動車のカバーをリンク機構によって可動に駆動することであり、リンク機構はカバーを少なくとも1つの位置で確実にロックする。リンク機構は少ない部材で簡単かつ廉価に製造可能であることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構であって、カバーは連結ロッドを介して開放位置及び閉鎖位置間を運動可能であり、連結ロッドはホルダを介してカバーの下側部分に旋回可能に取り付けられており、連結ロッドの他の端部がリンク機構に旋回可能に固定されており、リンク機構は少なくとも2つのリンクから成っており、少なくとも2つのリンクは、カバーの閉鎖時に死点ロックの位置を互いに占め、リンクは液圧的なシリンダによって駆動される、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構において、リンク機構の1つのリンクがトグルレバーとして構成されており、介在リンクは一方の端部によってトグルレバーの屈曲領域において旋回可能に固定されており、かつ、介在リンクは他方の端部によって、主支承部に支承されているリンクに旋回可能に結合されていることにより達成される。
【0012】
有利な構成が従属請求項の対象である。
【0013】
好ましくは、トグルレバーはほぼ90°の角度を有している。
【0014】
好ましくは、支承部が四節リンク機構を形成する。
【0015】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、リンク及び介在リンクは液圧式のシリンダの方向にV字形に互いに屈曲している位置を占め、リンクの前記位置は死点ロック位置である。
【0016】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、トグルレバーの脚部が走行方向に対してほぼ鉛直方向に配向されている。
【0017】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、リンクとU字形ヘッドとの間の支承部は、支承部間の結合線上に位置する。
【0018】
好ましくは、支承部と支承部とのてこ比がほぼ同じである。
【0019】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、支承部の結合線は連結ロッドに対してほぼ直交する方向に配向されている。
【0020】
好ましくは、カバーの閉鎖位置において、支承部は支承部を通る鉛直な線と、支承部を通る水平な線とのほぼ交点に位置する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、開閉したいカバーを備えた車両においてこのカバーを操作機構を介して動かすという一般的な思想に基づく。本発明において、カバーは、カバーと車両の上部構造との間の旋回軸線を中心に旋回し、機械的な装置を介して閉鎖された位置から開放された位置へと移動する。機械的な装置はボーデンケーブルにより形成されていてよいか、又は複数のレバーから成るリンク機構を介して成っていてよい。このようなリンク機構は通常、結合部材によりカバーと結合されており、カバーに連結している結合部材により直に上方に開放旋回できるか若しくは押し上げられ、同様の結合部材を介して再び閉鎖できるか又は引き閉められる、という利点を有している。
【0022】
本発明において、結合部材は、カバーを動かすために、作動装置、例えば液圧式のシリンダ又は電気的な操作ユニットにより直接駆動される。動かそうとするカバーは大きくかつ重く構成されていることがよくあり、さらに予め規定された部分的に変化する速度によって動かす必要があるので、適切な増速又は減速伝動装置を使用することが有利である。これに加えて、これらの伝動装置は操作システム内に挿入され、さらに、カバー又は車両の上部構造に配置されていてよい。
【0023】
増速又は減速伝動装置として歯車列、スライダ駆動装置を備えた伝動装置又はリンク機構を使用することができる。歯車列、特に歯車伝動装置は製造において極めて手間がかかり、高価でかつ比較的大きな組込みスペースを必要とするものの、利点としてセルフロック機構という可能性を有している。セルフロック機構の場合、カバーは歯車伝動装置の意図しない操作により、例えば歯車伝動装置に作用するカバーの重量負荷により動かされることはない。歯車伝動装置はカバーのロックのためにカバーの終了位置において使用することができるので、カバーはセルフロック機構により位置(終了位置)に関して非可動に保持される。本発明において付加的なロック機構を省くことができる。
【0024】
本発明の目的は、上記効果をリンク機構の終了位置において、リンク及びレバーの特に有効なアッセンブリにより達成することである。しかし同時に、リンク及びレバーをカバーの運動のための駆動装置として使用することが望まれる。このことは2つのリンクがカバーの終了位置に到達した際に、相前後して配置された延ばされた状態に達し、小さな力で延ばされた状態を超えることができることにより達成される。超えるとは、旋回運動がリンク/レバーの通常の完全な旋回領域(引っ掛かりのない及びブロックされない旋回領域)の範囲から、リンク/レバーの自由な運動を止めるような領域へ実施され、押し込まれることと理解される。自由な運動を止めるような領域からは、外部からリンク機構へ作用する力(例えばカバーの重量、カバーの引上げ及び押開け)による通常の旋回領域への自然な戻り旋回はもはや可能ではない。しかしレバーをこの位置から再び戻し旋回できるように、2つのリンクのうちの少なくとも1つが駆動装置により延ばされた状態を超えて運動される必要がある。こうしてようやく「自由な」旋回工程を実施することができる。
【0025】
主支承部における予め組付け可能なユニットとして、リンク機構、液圧式のシリンダ、及び連結ロッドの枢着部(トグルレバー)の特にコンパクトなアッセンブリが特に有利である。このユニットは車両への組込みから完全に独立して予め組み立てられて調節することができる。このことはサービス作業においても大きな利点がある。主支承部は完全なユニットとして取り外され、例えば交換ユニットと交換されるので、サービス時間を最小限に抑えることができる。
【0026】
本発明のさらに重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、図面に基づく説明から明らかになる。
【0027】
上記及び下記特徴は、本発明の権利範囲から逸脱することのない範囲で、夫々説明した組合せだけでなく、他の組合せ又は単独でも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】主支承部に組み付けられたリンク機構と連結ロッドとを備えた、閉鎖された状態にあるカバーの側面図である。
【図2】操作位置にある、連結ロッドとリンク機構とを備えた開放されたカバーの側面図である。
【図3】2つのリンクの死点超えロック機構を備えたリンク機構の拡大図である。
【図4】閉鎖されたカバーにおける連結ロッドを備えたリンク機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。同一又は類似の構成部材、又は機能に関して同一の構成部材には同じ符号を付す。
【0030】
図1は、主支承部3に組み付けられたリンク機構16と連結ロッド15とを備えた、閉鎖された状態にあるカバー2の側面図である。カバー2の、走行方向1に見て後方の端部は、支承部4を介して車両の上部構造に運動可能に支承されている。閉鎖された状態において、カバー2の前方の端部は、ロックピン6を介して収容部7に収容されて案内される。本実施の形態において、ロックピン6はホルダ5の端部に固定されており、ホルダ5自体はカバー2の下側部分に取り付けられている。収容部7は車両の上部構造に、例えば複数のねじを介して固定されており、通常、これらのねじを介して収容部7の位置を調整することができる。
【0031】
カバー2の下側部分の中央から少し後方にホルダ10が固定されている。ホルダ10における後方端部は、連結ロッド15のカバー側の支承のための旋回支承部を形成する。ホルダ10の走行方向1に見て前方の端部において、ホルダ10は側方に突出している延長部を有しており、延長部にはエラストマから製造されたストッパ緩衝器36が固定されている。ストッパ緩衝器36は、例えば収納されたフードのための上側のストッパとして働き、収納位置にあるフードが車両の鉛直方向の振動時にカバーの下面に衝突しないようにする。当然ながら、ストッパ緩衝器36はカバー2と車両との間の鉛直方向ストッパとして設計されていてよい。フードの位置固定及び確実な保持のために、フードは、例えばルーフリンク又はルーフステーと共に支持部12に収容することができる。このために支持部12は付加的な構成部材として主支承部3に取り付けられている。支持部12は、主支承部3に対する結合部を介して、固定ねじによって位置調節して、固定することができる。また、支持部12は主支承部3に一体に形成することもできる。
【0032】
連結ロッド15は支承部11においてカバー1の下側部分に旋回可能に取り付けられており、連結ロッド15の他方の端部は、トグルレバー22の脚部23の、鉛直方向下方を向いている一方の端部と旋回可能に結合されている。トグルレバー22はほぼ直角に構成されており、トグルレバー22の、走行方向1に見てほぼ水平方向で後方を向いている他方の脚部24は、その端部において主支承部3に旋回可能に取り付けられている。直角の屈曲部の領域において、介在リンク21が支承部26を介してトグルレバー22に旋回可能に支承されている。介在リンク21の自由端部は、また支承部28を介してリンク20の自由端部に旋回可能に結合されている。リンク20は支承部30を介して主支承部3に可動に保持されている。カバー2の閉鎖時に、並んで配置されているリンク20,21は、液圧式のシリンダ13の方に少し折り曲げられた状態で設けられている。
【0033】
リンク機構16は実質的にリンク20,21、トグルレバー22及び連結ロッド15により形成される。リンク機構16の操作のためにリンク20はほぼ真ん中の位置において、支承部31におけるU字形ヘッド(Gabelkopf)17を介して液圧式のシリンダ13のピストンロッド14に旋回可能に結合されている。液圧式のシリンダ13の端部は、主支承部3において旋回可能にほぼ水平な状態で主支承部3に組み込まれている。液圧式のシリンダ13とリンク機構16とは、カバー2が閉鎖されている場合、主支承部3の寸法から突出しないので、特に小型の構成ユニットがもたらされる。この構成ユニットは車両への組付け前にほぼ完全に組み合わされて調節することがでるので、取扱いは容易であり、また、サービス作業及びこの作業に付随するコストも著しく減じられる。
【0034】
例えばフードの開放又は閉鎖のために、まずカバー2をフード運動のために限界でない位置に動かす必要がある。このことは図2のカバー2の開放位置において示されている。さらに、カバー2は支承部4を介してほぼ鉛直方向の位置に旋回する。支承部4は旋回運動の他に付加的に並進的な鉛直及び水平方向の移動を可能にする。カバー2の開放のために、ピストンロッド14が液圧式のシリンダ13から進出する。U字形ヘッド17を介してピストンロッド14と結合されたリンク20は、走行方向1に対向して旋回する。介在リンク21はリンク20に対する旋回可能な結合部を介して連行されて旋回する。介在リンク21はトグルレバー22を旋回させ、静止位置においてトグルレバー22の鉛直方向下方を向いている脚部23は、カバー2に対して斜め上方を向いている位置へ動かされる。トグルレバー22の脚部23はほぼ連結ロッド15に向かって延びる状態に配向されている位置を占める。同様に、介在リンク21と、主支承部3に旋回可能に結合された、トグルレバー22の脚部24とはほぼ延ばされた状態を有している。
【0035】
カバー2が閉鎖されている場合、リンク21は脚部端部の結合直線に対する仮想線に対して鈍角を有している。連結ロッド15と連結ロッド15に配設された脚部23との間の角度も45°の角度よりも大きい。液圧式のシリンダ13の作用線とリンク20との間には、カバー2が閉鎖されている場合、約45°の角度が調節されている。リンク機構16の操作時に液圧式のシリンダ13により円滑な動作による操作が行われ、リンク機構16内部の力がほぼ最小限に抑えられているように、上記全ての大きな鈍角が選択されている。カバー2が開放されている場合、リンク20,21及びトグルレバー22の延び状態及び配置は、カバー2の閉鎖時に閉鎖工程がカバー2の自重によりほぼ完全に実行することができるように規定されている。
【0036】
図3にはカバー2が閉鎖された状態における、主支承部3と、液圧式のシリンダ13と、連結ロッド15とを備えたリンク機構16の拡大図が図1に対応して示されている。図3においては、ピストンロッド14は液圧式のシリンダ13内に進入しており、ピストンロッド14の自由端部におけるU字形ヘッド17を介して、リンク20は支承部30を中心に液圧式のシリンダ13寄りの終了位置へと旋回されている。リンク20の支承部30とは反対側の端部において、介在リンク21は支承部28を介して旋回可能にリンク20に取り付けられている一方で、介在リンク21の他の端部で支承部26を介してトグルレバー22の屈曲領域に結合されている。
【0037】
カバー2の開放時には、トグルレバー22の終了位置にある鉛直方向に向けられているトグルレバー22の脚部23がリンク20の方向に運動するように、主支承部側の支承部27を中心にトグルレバー22は旋回する。終了位置において、2つのリンク20,21の共通の支承部28は、液圧式のシリンダ13の方向にV字形に小さく屈曲されている。V字形の屈曲は、ほぼ平行に移動される結合線VBLlに対する結合線VBL(支承部26と30との間の結合線)の間隔35に相当する。
【0038】
支承部28、ひいてはリンク20,21は、トグルレバー22の終了位置から出発する独自の及び突発的な運動を防ぐ死点ロック状態(Totpunktverriegelung)にある。したがって、2つのリンク20,21はリンク機構16の内側にロックされており、その状態に位置固定されている。このようなロックにより、フック及び/又はロック操作部のような付加的なロック部材を完全に省くことができる。内側のロックにより、カバー2を外部から開放しようとする場合、連結ロッド15が伝達部材としてカバー2とリンク機構16との間に配置されているトグルレバー22を、トグルレバー22に対する伝達部材の結合部を介して動かすことはできない。連結ロッド15の理論的に唯一の運動方向はカバー2のさらなる閉鎖運動に一致し、トグルレバー22の鉛直方向の脚部23はさらに走行方向1に旋回することになる。支承部26が反時計回りに回動するように介在リンク21の結合部を介して、支承部28が最大で結合線VBLにまで動くので上記運動は考えられる。さらなる運動は2つのリンク20,21の一方の伸びが必要となるので、上記位置からのさらなる旋回は2つのリンク20,21の延ばされた状態により防がれる。カバー2の開放のためには、リンク20,21の旋回がカバー2の方向に向かって行われなければならないが、このことは、開放に必要な運動方向に対向したV字形の屈曲により防がれる。リンク20,21のV字形の屈曲により、2つのリンク20,21の「自発旋回」はV字方向へと向けられる。
【0039】
カバー2の開放時に、液圧式のシリンダ13を介してリンク20はカバー2の方向に旋回させられて、支承部28,26,27の押込みが行われ、ひいては支承部28は結合線VBLを超えてカバー2の方向に運動する。2つのリンク20,21はさらなる旋回中に互いに屈曲し続ける。さらなる旋回は、リンク機構16が引っ掛かりなしで完全に旋回することを可能にする。上記工程は開放されたカバー2が終了位置に達することにより初めて制限される。連結ロッド15とトグルレバー22とが線状に延ばされた状態にある場合に、開放されたカバー2の終了位置が達成されている。支承部11,25,27は1つの共通の結合線上に位置するように配置されている。
【0040】
図4はカバー2が閉鎖された状態における、連結ロッド15を備えたリンク機構16の斜視図である。図4において、構成部材(リンク20,21、液圧式のシリンダ13、トグルレバー22、連結ロッド15)の重なり合いを見て取ることができる。トグルレバー22は主支承部3の鉛直方向に向けられている壁に対して密に離間されて、鉛直方向に向けられた壁に旋回可能に支承されている。トグルレバー22の脚部23と、液圧式のシリンダ13との間において、脚部23の端部に連結ロッドが可動に取り付けられている。ほぼ同じ平面において、連結ロッド15の上側にリンク20と結合されている介在リンク21が設けられている。リンク20は液圧式のシリンダ13と同じ平面に位置している。支持部12は何重にも折り曲げられ金属薄板ホルダとして設計されており、支承部30の領域において適切な固定手段によって主支承部3に取り付けられている。連結ロッド15のカバー側の支承部11はホルダ10により示される。ホルダ10も支持部12と同様に何重にも曲げられた金属薄板から製造された構成部材である。この構成部材においては、ホルダ10と一体に結合された延長部が側方に突出している。ストッパ緩衝器36が延長部に主支承部3の側から調整可能に螺設されている。
【符号の説明】
【0041】
1 走行方向、 2 カバー、フードケースカバー(VDKD)、 3 主支承部、 4 支承部、 5 ホルダ、 6 ロックピン、 7 収容部、 10 ホルダ、 11 支承部、旋回支承部、 12 支持部、 13 液圧式のシリンダ、 14 ピストンロッド、 15 連結ロッド、 16 リンク機構、 17 U字形ヘッド、 20 リンク、 21 介在リンク、 22 トグル機構、トグルレバー、 23 脚部、鉛直方向の脚部、 24 脚部、水平方向の脚部、 25,26,27,28,30,31 支承部、 35 間隔、平行な間隔、 36 ストッパ緩衝器、 VBL 結合線、 VBLl 平行な結合線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に自動車のカバー(2)のための操作機構及びロック機構であって、
−カバー(2)は連結ロッド(15)を介して開放位置及び閉鎖位置間を運動可能であり、
−連結ロッド(15)はホルダ(10)を介してカバー(2)の下側部分に旋回可能に取り付けられており、連結ロッド(15)の他の端部がリンク機構(16)に旋回可能に固定されており、
−リンク機構(16)は少なくとも2つのリンク(20,21,22)から成っており、
−該少なくとも2つのリンク(20,21,22)は、カバー(2)の閉鎖時に死点ロックの位置を互いに占め、
−1つのリンク(20,21,22)が液圧的なシリンダ(13)によって駆動される、
車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構において、
−リンク機構(16)の1つのリンク(20,21,22)はトグルレバー(22)として構成されており、介在リンク(21)は一方の端部によってトグルレバー(22)の屈曲領域において旋回可能に固定されており、かつ、介在リンク(21)は他方の端部によって、主支承部(3)に支承されているリンク(20)に旋回可能に結合されていることを特徴とする、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項2】
トグルレバー(22)はほぼ90°の角度を有していることを特徴とする、請求項1記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項3】
支承部(26,27,28,30)が四節リンク機構を形成することを特徴とする、請求項1記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項4】
カバー(2)の閉鎖位置において、リンク(20)及び介在リンク(21)は液圧式のシリンダ(13)の方向にV字形に互いに屈曲している位置を占め、リンク(20,21)の前記位置は死点ロック位置であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項5】
カバー(2)の閉鎖位置において、トグルレバー(22)の脚部(23)が走行方向(1)に対してほぼ鉛直方向に配向されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項6】
カバー(2)の閉鎖位置において、リンク(20)とU字形ヘッド(17)との間の支承部(31)は、支承部(26,30)間の結合線(VBL)上に位置することを特徴とする、請求項1又は3記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項7】
支承部(30,31)と支承部(26,28)とのてこ比がほぼ同じであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項8】
カバー(2)の閉鎖位置において、支承部(26,30)の結合線(VBL)は連結ロッド(15)に対してほぼ直交する方向に配向されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項9】
カバー(2)の閉鎖位置において、支承部(25)は支承部(26)を通る鉛直な線と、支承部(31)を通る水平な線とのほぼ交点に位置することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項1】
車両、特に自動車のカバー(2)のための操作機構及びロック機構であって、
−カバー(2)は連結ロッド(15)を介して開放位置及び閉鎖位置間を運動可能であり、
−連結ロッド(15)はホルダ(10)を介してカバー(2)の下側部分に旋回可能に取り付けられており、連結ロッド(15)の他の端部がリンク機構(16)に旋回可能に固定されており、
−リンク機構(16)は少なくとも2つのリンク(20,21,22)から成っており、
−該少なくとも2つのリンク(20,21,22)は、カバー(2)の閉鎖時に死点ロックの位置を互いに占め、
−1つのリンク(20,21,22)が液圧的なシリンダ(13)によって駆動される、
車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構において、
−リンク機構(16)の1つのリンク(20,21,22)はトグルレバー(22)として構成されており、介在リンク(21)は一方の端部によってトグルレバー(22)の屈曲領域において旋回可能に固定されており、かつ、介在リンク(21)は他方の端部によって、主支承部(3)に支承されているリンク(20)に旋回可能に結合されていることを特徴とする、車両、特に自動車のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項2】
トグルレバー(22)はほぼ90°の角度を有していることを特徴とする、請求項1記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項3】
支承部(26,27,28,30)が四節リンク機構を形成することを特徴とする、請求項1記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項4】
カバー(2)の閉鎖位置において、リンク(20)及び介在リンク(21)は液圧式のシリンダ(13)の方向にV字形に互いに屈曲している位置を占め、リンク(20,21)の前記位置は死点ロック位置であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項5】
カバー(2)の閉鎖位置において、トグルレバー(22)の脚部(23)が走行方向(1)に対してほぼ鉛直方向に配向されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項6】
カバー(2)の閉鎖位置において、リンク(20)とU字形ヘッド(17)との間の支承部(31)は、支承部(26,30)間の結合線(VBL)上に位置することを特徴とする、請求項1又は3記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項7】
支承部(30,31)と支承部(26,28)とのてこ比がほぼ同じであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項8】
カバー(2)の閉鎖位置において、支承部(26,30)の結合線(VBL)は連結ロッド(15)に対してほぼ直交する方向に配向されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【請求項9】
カバー(2)の閉鎖位置において、支承部(25)は支承部(26)を通る鉛直な線と、支承部(31)を通る水平な線とのほぼ交点に位置することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項記載のカバーのための操作機構及びロック機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−126526(P2011−126526A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283413(P2010−283413)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(506292985)マグナ カー トップ システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (31)
【氏名又は名称原語表記】Magna Car Top Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Stuttgarter Strasse 59, D−74321 Bietigheim−Bissingen, Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(506292985)マグナ カー トップ システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (31)
【氏名又は名称原語表記】Magna Car Top Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Stuttgarter Strasse 59, D−74321 Bietigheim−Bissingen, Germany
【Fターム(参考)】
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