説明

車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造

【課題】 カーテンエアバッグ装置が装備された車両において、窓に装着された遮蔽部材によってエアバッグの展開が妨げられるのを防止することを課題とする。
【解決手段】 カーテンエアバッグ装置20の作動時において、エアバッグ21がウインドガラス12aに沿って下方に展開し、窓12に装着されたカーテン14の上部に当接したときに、該カーテン14が下方に移動するように、前記窓12の側端部近傍の車体部材に、該窓12の少なくとも上部においてカーテン14を上下方向に移動可能に支持するレール部材16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓に設けられるカーテン状遮蔽部材の取付け構造に関し、車両の内装技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、前方からの衝撃荷重から乗員を保護するためのエアバッグ装置に加えて、側方からの衝撃荷重からも乗員を保護するためのカーテンエアバッグ装置が備えられることがある。このカーテンエアバッグ装置は、車体側面を構成する窓やピラーの上方に車両前後方向にわたってエアバックを収納しておき、側方からの衝撃荷重の作用時に、該エアバッグをインフレータからのガス圧で膨張させて、例えばルーフパネルを車室内側から覆うトップシーリングを変形させ或いは破断して、ウインドガラスやピラー内面に沿って下方へ展開させる構成である。
【0003】
一方、車室内のプライバシーを確保し或いは居住性の向上等を目的として、車体の後部座席の側面や後面の窓に車外からの視線を遮るカーテンやブラインド等の遮蔽部材をオプション用品等として装着することがある。特許文献1には、この種の遮蔽部材として、上記のようなカーテンエアバッグ機能を備えたものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−48902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カーテンエアバッグ装置の作動時に、エアバッグの膨張によりトップシーリングを下方に変形させ、その変形によって該トップシーリングの側端部近傍に生じた間隙から、車体側面の窓に配設されたウインドガラスに沿ってエアバッグを下方へ展開させる構造の場合、前記窓にカーテンやブラインド等の遮蔽部材を装着すると、次のような問題が発生することが考えられる。
【0006】
つまり、窓に遮蔽部材が装着されており、この遮蔽部材が窓の上部に位置していると、カーテンエアバッグ装置が作動し、エアバッグがトップシーリングを下方へ変形させることにより生じた間隙からウインドガラスに沿って下方へ展開しようとしたときに、該エアバッグが窓の上部で前記遮蔽部材に当接することになる。そのため、該エアバッグのスムーズな展開が妨げられ、乗員保護の機能を十分発揮できないおそれが生じる。したがって、前記のようなカーテンエアバッグ装置が装備されている場合、車体側面の窓にカーテンやブラインド等の遮蔽部材を装着することが困難となるのである。
【0007】
このことは、車体後面の上方、例えばバックドアの上部にカーテンエアバッグ装置が装備され、エアバッグが車体後面の窓のウインドガラスに沿って下方へ展開するように構成されている場合において、該窓にカーテン等の遮蔽部材が装着される場合も同様である。
【0008】
そこで、本発明は、カーテンエアバッグ装置が装備されている車両において、窓に遮蔽部材が装着されている場合にも、該遮蔽部材によってエアバッグの展開が妨げられることを防止し、この種の車両への遮蔽部材の装着を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体に設けられた窓の上部近傍にカーテンエアバッグ装置が配備され、かつ、ルーフパネルを車室内側から覆い、側端部が前記窓に配設されたウインドガラスの上縁部近傍を指向する軟質のトップシーリングと、前記ウインドガラスの少なくとも上部を車室内側から覆うカーテン状の遮蔽部材とが設けられていると共に、前記カーテンエアバッグ装置は、非作動状態では前記ウインドガラスの上縁部に沿って収納されており、インフレータからのガス圧を受けて膨張すると、前記トップリーシングを下方へ変形させつつ、該トップシーリング側端部のウインドガラス側に生じる間隙から下方へ展開するエアバッグを有する車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造であって、前記ウインドガラスが配設された窓の側端部近傍の車体部材に前記遮蔽部材を支持する支持部材が設けられており、該支持部材は、前記窓の少なくとも上部において前記遮蔽部材を上下方向に移動可能に支持することを特徴とする。
【0011】
ここで、前記ウインドガラスは、車体側面の窓に設けられたものの他、バックドアの窓等、車体後面の窓に設けられたものを含む。したがって、カーテンエアバッグ装置も、車体側部に装備される場合と後部に装備される場合とがある。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造において、前記車体部材は、車体側面において前記窓を挟んで隣接する二つのピラーであり、前記支持部材は、これらのピラーに取り付けられたレール部材であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造において、前記レール部材の上部に前記遮蔽部材を保持する保持部が設けられており、該保持部は、エアバッグの展開時において該エアバッグが遮蔽部材の上部に当接したときに、該遮蔽部材に対する保持が解除されるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造において、前記遮蔽部材は、下方へ付勢されていることを特徴とする。ここで、前記付勢のための手段としては、遮蔽部材自体に弾性力を付与する方法や、遮蔽部材と車体部材との間に弾性部材を設ける方法などがある。
【0015】
そして、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造において、前記遮蔽部材は、上部を上方へ移動させることにより窓を遮蔽するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成したことにより、各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0017】
まず、請求項1に記載の発明によれば、車体に設けられた窓の上部近傍にカーテンエアバッグ装置が配備され、かつ、前記窓に遮蔽部材が装着された車両において、衝撃荷重の作用により前記カーテンエアバッグ装置が作動してエアバッグが膨張したとき、該エアバッグはトップリーシングを下方に変形させつつ、該トップシーリング側端部のウインドガラス側に生じる間隙から該ウインドガラスに沿って下方へ展開することになる。
【0018】
このとき、前記窓に装着された遮蔽部材の一部または全部が該窓の上部に位置していると、前記エアバッグが遮蔽部材の上部に当接することになるが、該遮蔽部材は、窓の側部近傍の車体部材に設けられた支持部材により、該窓の少なくとも上部において上下方向に移動可能に支持されているので、エアバッグが当接したときに、その当接力によって容易に下方へ移動することになる。したがって、エアバッグは、遮蔽部材に妨げられることなく、下方から車室内側へスムーズに展開し、所期の機能を発揮する。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記窓が車体側面において隣接する二つのピラーの間に設けられている場合に、前記支持部材がこれらのピラーに取り付けられたレール部材によって構成されているので、車体側に支持部材を備えるための構造を新たに設けることなく、エアバッグの当接時に、遮蔽部材を確実に下方へ移動させることが可能となる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記レール部材の上部に遮蔽部材を保持する保持部が設けられているので、例えば遮蔽部材が上部を上方へ移動させることにより窓を遮蔽するタイプの場合には、窓を遮蔽した状態でその上部が保持され、下部を下方へ移動させることにより窓を遮蔽するタイプの場合には、窓を遮蔽した状態で上部が保持され或いは窓を開放した状態で全体が保持されることになる。
【0021】
そして、これらの場合において、窓の上部に遮蔽部材の一部または全部が保持されている状態で、カーテンエアバッグ装置が作動し、エアバッグが遮蔽部材に当接したときには、前記保持部による保持が解除されるように構成されているので、遮蔽部材は確実に下方に移動し、エアバックの展開を妨げることがない。
【0022】
したがって、通常は遮蔽部材による窓の遮蔽、開放が良好に行われ、カーテンエアバッグ装置の作動時には、エアバッグが良好に展開することになる。
【0023】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、前記遮蔽部材が下方へ付勢されているので、その一部または全部が窓の上部に位置している状態でカーテンエアバッグ装置が作動し、エアバックが当接したときに、該遮蔽部材の下方への移動が助勢されることになる。したがって、エアバックの展開に対して遮蔽部材が速やかに退避し、該エアバッグが一層良好に展開することになる。
【0024】
そして、請求項5に記載の発明によれば、遮蔽部材が上部を上方へ移動させることにより窓を遮蔽するタイプの場合に、窓を遮蔽している状態で前記各発明の効果が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
図1に示すように、この実施形態に係る車両1の車室内には、前方から、前席シート2、2列目シート3、及び3列目シート4が設置されている。また、この車両1の車体側面には、前方から、Aピラー5、Bピラー6、Cピラー7、及びDピラー8が配設されており、Aピラー5とBピラー6との間にフロントサイドドア9が、Bピラー6とCピラー7との間にリヤサイドドア10がそれぞれ設けられている。また、車体後面にはバックドア11が設けられている。
【0027】
前記サイドドア9、10及びバックドア11に設けられた窓には、ウインドガラス9a、10a、11aがそれぞれ装着され、サイドドア9、10のウインドガラス9a、10aは上下開閉式、バックドア11のウインドガラス11aは嵌め込み式とされている。また、前記Cピラー7とDピラー8との間にも後部窓12が設けられ、この後部窓12には嵌め込み式のウインドガラス12aが装着されている。そして、前記リヤサイドドア10、バックドア11及び後部窓12には、ウインドガラス10a、11a、12aを車室内側から覆うカーテン13、14、15がそれぞれ装着されている。
【0028】
一方、この車両1には、前方からの衝撃荷重から前席シート2の乗員を保護するためのエアバッグ装置(図示せず)に加えて、各シート2、3、4の乗員を側方からの衝撃荷重から保護するためのカーテンエアバッグ装置20が装備されている。
【0029】
このカーテンエアバッグ装置20は、後述するように、ルーフパネル31(図3参照)を車室内側から覆う軟質のトップシーリング(ルーフトリムとも言う)32の側端部上方において、収納状態で、前記フロントサイドドア9、リヤサイドドア10及び後部窓12のウインドガラス9a、10a、12aの上縁部に沿って車体前後方向に配設されたエアバッグ21と、該エアバッグ21に供給通路22を介して膨張、展開用のガス圧を供給するインフレータ23とで構成されている。
【0030】
そして、車体側方からの衝撃荷重の作用時或いはその予知時に、エアバッグ21が前記インフレータ23からのガス圧で膨張し、前記トップシーリング32の側端部を下方に変形させながら、その車体外側の間隙から鎖線で示すように各ウインドガラス9a、10a、12aに沿って下方に展開し、各シート2、3、4の乗員を保護するようになっている。
【0031】
その場合に、リヤドア10に装着されたカーテン13は、エアバッグ21が展開する前記間隙より車体外側に位置するので、その展開の妨げにならないが、後部窓12のカーテン14は、前記間隙のほぼ下方に位置し、該カーテン14が後部窓12の上部に位置するときは、エアバッグの展開の妨げとなるおそれがある。
【0032】
次に、この問題を解消するように構成された後部窓12の近傍におけるカーテン14の取付け構造を説明する。
【0033】
図2(a)、(b)はカーテン14により後部窓12を遮蔽した状態及び開放した状態をそれぞれ示すもので、このカーテン14は、水平方向の折れ線に沿って上下に伸縮可能とされていると共に、左右両側端部が、後部窓12の前方及び後方に位置するCピラー7及びDピラー8における該後部窓12の側端部近傍に取り付けられた上下方向に延びるレール部材16、16に支持されている。
【0034】
そして、下端部が固定された状態で上端部14aが上方へ移動することにより拡開されて後部窓12を遮蔽し、上端部14aが下方へ移動することにより収縮されて該窓12を開放するようになっている。ここで、該カーテン14の上端部14aは、形状を保持し或いは開閉時の操作性を考慮して、ワイヤ等で補強され或いは硬質の材料で形成されている。
【0035】
図3は、前記カーテン14が装着された後部窓12の周辺の構造を示すもので、車体後部の側部上方には、前記ルーフパネル31の側端部に連続させて、アウタパネル33aとインナパネル33bとで閉断面構造とされたルーフサイドレール33が車体前後方向に配設されている。
【0036】
そして、該ルーフパネル31及びルーフサイドレール33の下方に、これらを車室内側から覆う軟質のトップシーリング32が配設され、該トップシーリング32の側端部32aとルーフサイドレール33との間の空間に、前記カーテンエアバッグ装置20のエアバッグ21が折り畳まれた状態で収納され、その近傍にインフレータ23が配置されている。
【0037】
また、車体後部の側部下方には、アウタパネル34aとインナパネル34bとで閉断面構造とされたリヤフェンダ34が配設され、その車内側にリヤホイールハウストリム35が配設されている。そして、前記ルーフサイドレール33とリヤフェンダ34との間に前記Cピラー7及びDピラー8が上下方向に配設され、両ピラー7、8の間に前記後部窓12が設けられている。
【0038】
ここで、この後部窓12に嵌め込まれたウインドガラス12aは、前記ルーフサイドレール33のアウタパネル33a及びリヤフェンダ34のアウタパネル34aにそれぞれ設けられたフランジ33a′、34a′に取り付けられ、乗員による開閉操作が行われないようになっている。
【0039】
そして、この後部窓12の近傍では、前記トップシーリング32の側端部32aが、該窓12に配設されたウインドガラス12aの上縁部を指向するように配設され、このウインドガラス12aの近傍まで延びた側端部32aが、上方からの荷重により矢印Aで示すように、下方に変形するようになっている。
【0040】
前記Cピラー7及びDピラー8は、図4に示すように、アウタパネル7a、8aとインナパネル7b、8bとでなる閉断面構造を有し、その車室内側をピラートリム7c、8cで覆った構造とされている。そして、図3〜図5に示すように、前記カーテン14を支持するレール部材16、16が、ウインドガラス12aの近傍において、Cピラー7及びDピラー8のトリム7c、8cに互いに対向させて取り付けられている。なお、図3に示すように、レール部材16の上端部は、トップシーリング側端部32aのA方向の変形を妨げないように、上端部の位置がやや低くされている。
【0041】
このレール部材16はC型断面を有し、前記ピラートリム7c、8cにネジ17…17を用いてそれぞれ複数個所で固定されている。そして、各レール部材16に複数のカーテンフック18…18が上下にスライド可能に係合されていると共に、これらのカーテンフック18…18にカーテン14の側部の複数個所が止着され、これにより該カーテン14が左右の側部をレール部材16、16に案内されて上下に移動可能とされている。その場合に、カーテン14の下部が上方へ移動しないように、該カーテン14の下端部に止着されたカーテンフック18はレール部材16に固定されている。
【0042】
また、図5に示すように、レール部材16の上端部には、底面を切り起こすことによりカーテンフック18が通過する間隔を狭くして、該カーテンフック18をその上方位置で係止する保持部16aが設けられている。
【0043】
この保持部16aは切り越した部位がバネとして作用し、乗員がカーテン14の上部を昇降させる際には、その操作力によって沈み込んでカーテンフック18の通過を許容する共に、カーテンフック18が上方へ通過すれば、該カーテンフック18に係合してカーテン14の自重による下降を阻止するようになっている。
【0044】
そして、保持部16aにカーテンフック18が係合している状態で、カーテン14に上方から荷重が作用したときには、該保持部16aによるカーテンフック18の係止状態が解除され、該カーテンフック18ないしカーテン14が下方へ移動するようになっている。
【0045】
次に、この実施形態の作用を説明する。
【0046】
後部窓12に装着されたカーテン14は、乗員がその比較的固く形成された上端部14aを持って上下に移動させれば、カーテンフック18…18が左右のレール部材16、16内を上下に移動することにより、ウインドガラス12aの内面に沿って拡開、収縮し、図2(a)に示す後部窓12を遮蔽した状態、または図2(b)に示す後部窓12を開放した状態とすることができる。そして、遮蔽した状態では、図5に示すように、カーテン14の両側部の最上部に止着されたカーテンフック18、18がレール部材16、16の保持部16a,16aに係合されることにより、該カーテン14が遮蔽状態に保持される。
【0047】
一方、車体の側方から衝撃荷重が作用し或いはそれを予知することにより、カーテンエアバグ装置20が作動し、エアバッグ21がインフレータ23からのガス圧で膨張すると、図6に示すように、該エアバッグ21がその直下方に位置する軟質のトップシーリング32の側端部32aを下方に変形させると共に、この変形により該トップシーリング側端部32aのウインドガラス12a側に生じた間隙Bから該ウインドガラス12aに沿って下方に展開する。
【0048】
このとき、前記のように、カーテン14が遮蔽状態にあり、ウインドガラス12aを車内側から覆った状態にあると、下方に展開しようとするエアバッグ21が該カーテン14の上部に当接し、その展開を妨げることになる。
【0049】
しかし、該カーテン14の最上部に止着されたカーテンフック18、18に係合して該カーテン14を遮蔽状態に保持するレール部材16、16の保持部16a、16aは、カーテン14に上方から荷重が作用したときに該カーテンフック18、18に対する係止状態が解除されるようになっているから、前記エアバッグ21の当接によりその係止が解除され、カーテン14は自重及びエアバッグ21の展開圧力により下方へ移動する。
【0050】
このようにして、カーテン14は速やかに下方に退避し、エアバッグ21の下方への展開を妨げることがなくなる。その結果、図6に示すように、エアバッグ21は下方へスムーズに展開し、乗員保護の目的が達成される。
【0051】
次に、図7、図8に示す実施形態について説明すると、この実施形態では、カーテン114は、上端部が固定され、下端部114aを上下に移動させることにより後部窓12を開放し或いは遮蔽する構成とされている。
【0052】
この場合、上端部における固定がエアバッグ21の展開を妨げないように、この実施形態では、図8に示すように、カーテン114の側部を支持するレール部材116の上部に、該カーテン114の上端部に止着されたカーテンフック118aに係合する第1保持部116aと、該カーテン114の下端部114aを上方へ移動させた状態(後部窓12を開放した状態)で、該カーテン114の最下部に止着されたカーテンフック118bに係合する第2保持部116bとが設けられている。
【0053】
これらの保持部116a、116bは、通常はカーテンフック118a、118bに係合して、後部窓12を遮蔽した状態または開放した状態にカーテン114を保持するが、該カーテン114に上方から荷重が作用したときには、第1保持部116aは、最上部のカーテンフック118aに対する係合が解除され、第2保持部116bは、最下部のカーテンフック118bに対する係合が解除されると共に、その上方のカーテンフック118c、118aを下方に通過させる。
【0054】
したがって、カーテンエアバッグ装置20が作動し、エアバッグ21が展開してカーテン114の上部に当接したときには、各カーテンフック118a、118b、118cがレール部材116、116内を下方にスライドし、カーテン114が下方に移動する。これにより、エアバッグ21がカーテン114に妨げられることなく良好に展開することになる。
【0055】
なお、以上の実施形態において、図9に示すように、カーテンフック218をカーテン214の側端に止着するようにしてもよい。
【0056】
また、図10、図11に示す実施形態は、カーテン314を支持する支持部材として、レール部材に変えてスナップ部材を用いたもので、この実施形態では、カーテン314は両側部の下端が固着部材317、317によってCピラートリム7cの後縁部7c′、及びDピラートリム8cの前縁部8c′にそれぞれ固着されていると共に、前記トリム7cの後縁部7c′及びトリム8cの前縁部8c′におけるカーテン314の固着部の上方に、それぞれ上下に並べて複数個のトリム側スナップ部材316a…316aが取り付けられており、また、カーテン314の両側部には、これらと対をなすカーテン側スナップ部材316b…316bが対応位置させて取り付けられている。
【0057】
この実施形態によれば、両側部の下端がトリム7c、8cに固定されたカーテン314を上方に拡開し、各カーテン側スナップ部材316b…316bを対応位置するトリム側スナップ部材316a…316aに結合すれば、該カーテン314によって後部窓12が遮蔽されることになる。また、カーテン314を収縮させて最上部のカーテン側スナップ部材316b、316bを中間高さのトリム側スナップ部材316a、316aに結合すれば、後部窓12がその結合位置に応じて開放されることになり、このようにして、該カーテン314が後部窓12を遮蔽、開放可能に支持される。
【0058】
そして、このカーテン314の支持状態は、外力の作用でトリム側スナップ部材316aとカーテン側スナップ部材316bとが分離されることにより解除されるので、カーテン314が後部窓12を遮蔽している状態で、カーテンエアバッグ装置20が作動し、エアバッグ21が該カーテン314の上部に当接すれば、その遮蔽状態での支持が解除されることになる。これにより、前記各実施形態と同様に、カーテン314の少なくとも上部が下方に移動し、エアバッグ314が良好に展開することになる。
【0059】
なお、この実施形態において、カーテン314の両側部の下端を固着部材317、317で固定する構成に代え、下端部もスナップ部材で着脱可能とすれば、該カーテン314の下端部を上方へ移動させることにより後部窓12を開放する構成とすることもでき、この場合も、エアバッグ21の展開により、各スナップ部材の結合が解除されて、該カーテン314の上部または全部が下方へ移動することになる。
【0060】
さらに、以上の実施形態において、カーテンの上部にエアバッグ21が当接したときに、該カーテンの下方への移動を助勢するために、該カーテンを下方へ付勢する付勢手段を設けてもよい。
【0061】
この付勢手段としては、例えば、カーテンにゴムを仕込み或いはカーテン自体の材質により、拡開状態から収縮状態に復元する力が働くように構成したもの、カーテンと車体との間にゴムやばね等の弾性部材を装着して該カーテンの上部に下方への不勢力を付与したものなどがあり、これらにより、エアバッグが当接したときに、カーテンの下方へ移動が助成されて速やかに退避することになり、エアバッグが一層良好に展開することになる。
【0062】
なお、以上の実施形態は、車体側面の後部窓12に装着されたカーテンに関するものであるが、カーテンエアバッグ装置が車体後面のバックドア11の上部に装備されている場合は、該バックドア11の窓に装着されるカーテン15について、後部窓12のカーテンと同様の取付け構造を採用することにより、該バックドアのカーテンエアバッグ装置についてもエアバッグが良好に展開することになる。
【0063】
また、カーテンとしては、図示のようなアコーデオン式のものに限らず、柔軟な布製のもの、さらにはブラインドタイプのものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように本発明によれば、カーテンエアバッグ装置が装備されている車両において、窓に装着されたカーテンがエアバッグの展開の妨げとなることが防止されるから、この種の車両におけるカーテンの装着が可能となる。したがって、本発明は車両の製造産業において好適に利用される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明が実施された車両の概略車室内側面図である。
【図2】第1の実施形態のカーテンの遮蔽状態及び開放状態を示す後部窓の正面図である。
【図3】図2(a)のX−X線による拡大断面図である。
【図4】図2(a)のY−Y線による拡大断面図である。
【図5】図4のZ−Z線による拡大断面図である。
【図6】エアバッグの展開状態を示す図3相当の断面図である。
【図7】第2の実施形態における後部窓の正面図である。
【図8】同実施形態におけるレール部材上部の拡大縦断面図である。
【図9】第3の実施形態におけるカーテンの拡大横断面図である。
【図10】第4の実施形態における後部窓の正面図である。
【図11】同実施形態におけるカーテンの拡大横断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1:車両
7c、8c:ピラートリム(車体部材)
12:後部窓(窓)
12a:ウインドガラス
14、114、214、314:カーテン(遮蔽部材)
16、116:レール部材(支持部材)
16a、116a、116b:保持部
316a、316b:スナップ部材(支持部材)
20:カーテンエアバッグ装置
21:エアバッグ
31:ルーフパネル
32:トップシーリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた窓の上部近傍にカーテンエアバッグ装置が配備され、かつ、
ルーフパネルを車室内側から覆い、側端部が前記窓に配設されたウインドガラスの上縁部近傍を指向する軟質のトップシーリングと、
前記ウインドガラスの少なくとも上部を車室内側から覆うカーテン状の遮蔽部材とが設けられていると共に、
前記カーテンエアバッグ装置は、非作動状態では前記ウインドガラスの上縁部に沿って収納されており、インフレータからのガス圧を受けて膨張すると、前記トップリーシングを下方へ変形させつつ、該トップシーリング側端部のウインドガラス側に生じる間隙から下方へ展開するエアバッグを有する車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造であって、
前記ウインドガラスが配設された窓の側端部近傍の車体部材に前記遮蔽部材を支持する支持部材が設けられており、
該支持部材は、前記窓の少なくとも上部において前記遮蔽部材を上下方向に移動可能に支持することを特徴とする車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造において、
前記車体部材は、車体側面において前記窓を挟んで隣接する二つのピラーであり、
前記支持部材は、これらのピラーに取り付けられたレール部材であることを特徴とする車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載の車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造において、
前記レール部材の上部に前記遮蔽部材を保持する保持部が設けられており、
該保持部は、エアバッグの展開時において該エアバッグが遮蔽部材の上部に当接したときに、該遮蔽部材に対する保持が解除されるように構成されていることを特徴とする車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造において、
前記遮蔽部材は、下方へ付勢されていることを特徴とする車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造において、
前記遮蔽部材は、上部を上方へ移動させることにより窓を遮蔽するように構成されていることを特徴とする車両のカーテン状遮蔽部材の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−64674(P2010−64674A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234580(P2008−234580)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】