説明

車両のサイドメンバ構造

【課題】本発明は、サイドメンバの剛性を確保しつつ、車体の軽量化を図ると共に、残材の有効利用を図ることができるサイドメンバ構造を提供する。
【解決手段】車両のサイドメンバ構造1では、従来のサイドアウタパネルピラー部及びピラーリーンフォースメントに代えて、サイドアウタパネル2の板厚より厚くリーンフォースメントの機能を兼ねるピラーアウタパネル11がセンタピラー10の外面を構成するため、サイドアウタパネルピラー部が無くされ、所望の剛性を確保しつつ、車体の軽量化を図ることができる。さらに、従来のサイドアウタパネルと異なり、サイドアウタパネル2がセンタピラー10を構成せず、フロントドア開口部4とリアドア開口部5とを繋げて開口したサイドアウタパネル開口部3を有するため、サイドアウタパネル2の成形時に、サイドアウタパネル開口部3に応じた大型の残材を得ることができ、残材の有効利用を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサイドメンバ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のサイドメンバ構造として、枠状のサイドアウタパネルとインナサイドパネルとの間に、リーンフォースメントを設けることで、サイドメンバの剛性を高めるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、このサイドメンバ構造では、カウルサイド部、フロントピラー部、ルーフサイドレール部、ロッカ部、及びフロントドア開口部とリアドア開口部とを隔てるセンタピラー部において、サイドアウタパネルとインナサイドパネルとが形成する閉断面内にリーンフォースメントがそれぞれ設けられている。そして、サイドアウタパネル、インナサイドパネル、及びリーンフォースメントの板厚を適切に選択することで、サイドメンバの剛性を確保しつつ、その軽量化が図られるとされている。
【特許文献1】特開平10−310082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年のサイドメンバ構造では、設計上の制約などによりピラー部におけるサイドアウタパネルの板厚を薄く成形することが多い。この場合、上記特許文献1に記載のサイドメンバ構造のように、フロントドア開口部とリアドア開口部とを隔てるセンタピラー部をサイドアウタパネル、インナサイドパネル、及びピラーリーンフォースメントの3つの部材から構成しても、板厚の薄いサイドアウタパネルは、サイドメンバの剛性の向上にほとんど寄与しない。従って、このように板厚の薄いサイドアウタパネルがセンタピラー部に設けられていると、剛性がほとんど向上せずにセンタピラー部の重量が増え、車体重量が増加してしまうという問題があった。また、材料の歩留まり向上の観点から、サイドメンバの成形時に生じる残材の有効利用が望まれている。
【0004】
そこで、本発明は、サイドメンバの剛性を確保しつつ、車体の軽量化を図ると共に、残材の有効利用を図ることができるサイドメンバ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両のフロントドアが配置されるフロントドア開口部と車両のリアドアが配置されるリアドア開口部とを繋げて開口した開口部を有し、枠状に構成されたサイドアウタパネルと、車両の上下方向に延在し、開口部に配置されると共に、サイドアウタパネルに両端が結合されることにより、開口部を二つに分けてフロントドア開口部とリアドア開口部とを形成するピラーアウタパネルとを備え、ピラーアウタパネルは、その板厚がサイドアウタパネルの板厚より厚くされると共にリーンフォースメントの機能を兼ねることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る車両のサイドメンバ構造によれば、従来のピラー部のサイドアウタパネル及びピラーリーンフォースメントに代えて、サイドアウタパネルの板厚より厚くリーンフォースメントの機能を兼ねるピラーアウタパネルがピラー部を構成するため、車枠の必要耐力確保に対する寄与度の小さい、ピラー部のサイドアウタパネルが無くされ、所望の剛性を確保しつつ、車体の軽量化を図ることができる。また、リーンフォースメントの機能を兼ねるピラーアウタパネルが、従来のサイドアウタパネルの位置に設けられることで、従来のピラーリーンフォースメントと比べて、ピラーアウタパネルの変形の許容量を大きくとることができ、側面衝突などに対するピラー部の耐力の向上を図ることができる。さらに、従来のサイドアウタパネルと異なり、サイドアウタパネルがピラー部を構成せず、フロントドア開口部とリアドア開口部とを繋げて開口した開口部を有するため、サイドアウタパネルの成形時に、開口部に応じた大型の残材を得ることができる。従って、残材の有効利用を図ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両のサイドメンバ構造によれば、サイドメンバの剛性を確保しつつ、車体の軽量化を図ると共に、残材の有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る車両のサイドメンバ構造の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る車両のサイドメンバ構造を示す正面図、図2は、図1中のサイドアウタパネル単体の正面図、図3は、図1中のピラーアウタパネル及びその近傍の斜面図、図4は、図1のIV−IVに沿った矢視図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両のサイドメンバ構造1は、車両(図示せず)の側部を構成するサイドメンバの構造であり、車両の左右両側に配置されるサイドアウタパネル2と、車両の上下方向に延在するピラーアウタパネル11を有するセンタピラー10とを備えている。
【0010】
図1及び図2に示すように、サイドアウタパネル2は、サイドメンバの外面を構成する枠状の部材であり、図1に示すように、車両のフロントドア(図示せず)が配置されるフロントドア開口部4と、車両のリアドア(図示せず)が配置されるリアドア開口部5とを繋げて、図2に示すように、開口したサイドアウタパネル開口部(開口部)3を有している。
【0011】
図2及び図3に示すように、サイドアウタパネル2は、フロントドア開口部4とリアドア開口部5とを仕切る位置に対応して、その開口周縁に、サイドアウタパネル開口部3内に向かって突出する一対のピラー結合部2a,2bを有し、これらのピラー結合部2a,2bは、車両の上下方向に沿って互いに向き合うように配置されている。
【0012】
ピラーアウタパネル11は、図1及び図4に示すように、サイドメンバの外面を構成し、外側に凸となるように断面略コ字状とされ、その板厚は、従来のサイドアウタパネルピラー部50a(図6参照)より厚くされている。
【0013】
そして、図1及び図2に示すように、ピラーアウタパネル11は、その上端がピラー結合部2aに、その下端がピラー結合部2bに各々結合されている。これによって、サイドアウタパネル開口部3がピラーアウタパネル11を挟んで前後方向に二つに分けられ、サイドアウタパネル2内にフロントドア開口部4とリアドア開口部5とが形成される。
【0014】
これらのピラーアウタパネル11及びサイドアウタパネル2では、ピラーアウタパネル11の板厚が、薄板のサイドアウタパネル2の板厚より厚くなるように成形されている。
【0015】
図1及び図4に示すように、センタピラー10は、車両の左右両側に配置されると共に車両の上下方向に延在する長尺の部材であり、前述したピラーアウタパネル11に、内側に凸となるように断面略コ字状とされたピラーインナパネル12を向かい合わせて溶接することによって閉断面に構成されている。このピラーインナパネル12は、従来と同様であり、その板厚は、ピラーアウタパネル11の板厚に比して薄くされている。
【0016】
次に、このように構成された車両のサイドメンバ構造1の作用・効果について、図面を参照して説明する。図5は、従来の車両のサイドメンバ構造に係るサイドアウタパネルの正面図、図6は、従来の車両のサイドメンバ構造に係るピラーの横断面図である。
【0017】
図5及び図6に示すように、従来の車両のサイドメンバ構造に係るサイドアウタパネル50は、フロントドア開口部51とリアドア開口部52とを隔てるサイドアウタパネルピラー部50aを一体に有する薄板の部材であり、1枚の鋼板からプレス加工などにより成形される。このとき、図5に示すように、サイドアウタパネルのフロントドア開口部51及びリアドア開口部52にあたる部分は、鋼板から切り離され、切り離し位置より内側の部位が残材M,Nとして再利用されるが、これらの残材M,Nは小型の残材であるため、残材の利用範囲が限られてしまう。
【0018】
また、従来のサイドメンバ構造に係るセンタピラー60は、サイドアウタパネルピラー部50aと、これとほぼ同じ板厚のピラーインナパネル61と、センタピラー60の剛性を確保する厚板のピラーリーンフォースメント62とから構成されている。図6に示すように、このピラーリーンフォースメント62は、サイドアウタパネルピラー部50aとピラーインナパネル61との間に配置され外側に凸となる断面略コ字状の部材である。
【0019】
ここで、サイドアウタパネルピラー部50aは、板厚が薄く、車枠の必要耐力確保に対する寄与度が小さいため、実質的には、ピラーリーンフォースメント62の凸高さHが、車枠の必要耐力確保に寄与する。すなわち、凸高さHの値が大きいほど、車両の側面衝突時などにおいてピラーリーンフォースメント62の凹み変形する領域が拡大するため、より大きな衝撃を吸収することが可能となる。しかしながら、センタピラー60は、車両走行時にはフロントドアによって外面が覆われる部材であり、車室内の空間確保の必要性からもセンタピラーの厚みが制限されるため、これ以上凸高さHを確保することができない。
【0020】
また、前述したように、センタピラー60では、薄板のサイドアウタパネルピラー部50aがセンタピラー60の剛性の向上にほとんど寄与していないため、センタピラー60の剛性がほとんど向上せずにセンタピラー60の重量が増えてしまう。
【0021】
これに対して、本実施形態に係る車両のサイドメンバ構造1では、図1〜図4に示すように、従来のサイドアウタパネルピラー部50a及びピラーリーンフォースメント62に代えて、ピラーリーンフォースメントの機能を兼ねる厚板のピラーアウタパネル11がセンタピラー10を構成する。そして、このピラーアウタパネル11は、サイドアウタパネル2の板厚より厚く成形されて、センタピラー10における所望の剛性の確保を実現している。このような構造により、本実施形態に係る車両のサイドメンバ構造1では、従来のピラー60におけるサイドアウタパネルピラー部50aが無くされることになり、サイドメンバの剛性を十分に確保しつつ、車体の軽量化を図ることができる。
【0022】
さらに、本実施形態に係るセンタピラー10では、図4に示すように、ピラーリーンフォースメントの機能を兼ねるピラーアウタパネル11が、センタピラー10の外面を構成し、従来のサイドアウタパネルピラー部50aの位置に設けられているため、従来のピラーリーンフォースメント62における凸高さHよりも値の大きい凸高さHを有する断面形状を形成することができる。これによって、ピラーアウタパネル11は、より大きな衝撃を吸収することができるため、車両の側面衝突時などに対するセンタピラー10の耐力の向上を図ることができる。
【0023】
また、図2に示すように、本実施形態に係るサイドアウタパネル2は、センタピラー10を構成せず、フロントドア開口部4とリアドア開口部5とを繋いで開口したサイドパネル開口部3を有する構造であるため、従来のサイドアウタパネル60の成形時に生じる残材M,Nを含むそれ以上に大型の残材Sを得ることができる。従って、残材Sから大型の製品をリプレスしたり、大型のスクラップとして再利用したりすることが可能となり、サイドアウタパネル成形時における残材の有効利用を図ることができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ピラーアウタパネルは、その板厚が略均一でなくてもよく、差厚鋼板を成形したものであってもよい。また、ピラーインナパネルは、断面略コ字状ではなく平板状の部材でもよい。また、ピラーインナパネルは、サイドアウタパネルと対になるサイドインナパネル(図示せず)と一体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る車両のサイドメンバ構造を示す正面図である。
【図2】図1中のサイドアウタパネル単体の正面図である。
【図3】図1中のピラーアウタパネル及びその近傍の斜面図である。
【図4】図1のIV−IVに沿った矢視図である。
【図5】従来の車両のサイドメンバ構造に係るサイドアウタパネルの正面図である。
【図6】従来の車両のサイドメンバ構造に係るピラーの横断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…車両のサイドメンバ構造、2…サイドアウタパネル、2a,2b…ピラー結合部、3…サイドアウタパネル開口部(開口部)、4…フロントドア開口部、5…リアドア開口部、10…ピラー、11…ピラーアウタパネル、12…ピラーインナパネル、S…残材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントドアが配置されるフロントドア開口部と前記車両のリアドアが配置されるリアドア開口部とを繋げて開口した開口部を有し、枠状に構成されたサイドアウタパネルと、
前記車両の上下方向に延在し、前記開口部に配置されると共に、前記サイドアウタパネルに両端が結合されることにより、前記開口部を二つに分けて前記フロントドア開口部と前記リアドア開口部とを形成するピラーアウタパネルとを備え、
前記ピラーアウタパネルは、その板厚が前記サイドアウタパネルの板厚より厚くされると共にリーンフォースメントの機能を兼ねることを特徴とする車両のサイドメンバ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−248729(P2009−248729A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98499(P2008−98499)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】