説明

車両のシフト誤操作検出装置

【課題】後退レンジへのシフト誤操作を検出するシフト誤操作検出装置において、車両が停止状態から段差を乗り越えて後退させる場合等のように、運転者の意思で後退レンジに切り換えてアクセルを大きく踏み込んで車両を後退させる場合に、後退レンジへのシフト誤操作と間違って判定されることを防止できるようにする。
【解決手段】Rレンジへの切り換え後に、アクセルセンサ14の検出値に基づいてアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動を学習すると共に、Rレンジへの切り換え後にアクセルセンサ14の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動をそれぞれ学習値と比較して、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作であるか否かを判定する。その結果、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作と判定されれば、Rレンジへのシフト誤操作と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者がシフトレンジを間違えて後退レンジ(Rレンジ)に切り換えたことを検出する車両のシフト誤操作検出装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
運転者がシフトレンジをDレンジに切り換えるつもりで間違えてRレンジに切り換えてしまった場合、それに気付かずにアクセルを踏み込んでしまったときに、車両が運転者の意図しない方向に急発進して後方の車両や障害物に衝突してしまう可能性がある。
【0003】
この対策として、特許文献1(特開平6−276603号公報)では、シフトレンジがRレンジに切り換えられた後に、アクセル踏み込み量が予め設定された所定値を越えた場合に、シフト誤操作と判断して、車両の駆動力を制限することで、シフト誤操作により車両が後退方向に急発進することを防止するようにしている。
【0004】
また、特許文献2(特開平6−299880号公報)では、(1) ブレーキの踏み込み操作を解除してから第1の所定時間が経過し、(2) シフトチェンジを行ってから第2の所定時間が経過せず、且つ、(3) アクセル踏み込み量又は踏み込み速度が所定値以上であるときに、アクセルの誤操作と判断して、車両が走行不能となるように内燃機関の運転を制御するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−276603号公報
【特許文献2】特開平6−299880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、シフトレンジがRレンジに切り換えられた後に、アクセル踏み込み量が所定値を越えた場合に、シフト誤操作と判断するようにしているが、この方法では、車両が停止状態から段差を乗り越えて後退させる場合等のように、運転者の意思でRレンジに切り換えてアクセルを大きく踏み込んで車両駆動トルクを増大させて車両を後退させる場合に、シフト誤操作ではないにもかかわらず、アクセル踏み込み量が所定値を越えたときに、シフト誤操作と判定されて車両駆動トルクが制限されてしまう欠点がある。
また、特許文献2では、運転者がブレーキと間違ってアクセルを踏み込むアクセルの誤操作を検出できるだけであり、シフト誤操作は検出できない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、後退レンジへのシフト誤操作を検出する車両のシフト誤操作検出装置において、車両が停止状態から段差を乗り越えて後退させる場合等のように、運転者の意思で後退レンジに切り換えてアクセルを大きく踏み込んで車両を後退させる場合に、後退レンジへのシフト誤操作と間違って判定されることを防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、運転者によるアクセル踏み込み量を検出するアクセル踏み込み量検出手段と、運転者のシフト操作により選択されたシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、前記シフトレンジ検出手段の検出結果に基づいて運転者がシフトレンジを後退レンジに切り換えたことを検出した後に運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて所定値以上の急なアクセル戻し操作を検出した場合に後退レンジへのシフト誤操作と判定するシフト誤操作検出手段とを備えた構成としたものである。ここで、「所定値以上の急なアクセル戻し操作」とは、後退レンジへのシフト誤操作ではない通常の車両後退時に運転者が行うアクセル戻し操作の挙動より急なアクセル戻し操作を意味する。
【0009】
一般に、運転者がシフトレンジをDレンジに切り換えるつもりで間違えて後退レンジに切り換えてしまった場合、運転者がそれに気付かずにアクセルを踏み込んで車両が運転者の意思に反して後退し始めると、運転者がシフト誤操作に気付いて慌てて急なアクセル戻し操作を行って急ブレーキをかけることになる。
【0010】
本発明は、このような後退レンジへのシフト誤操作時に運転者が慌てて行う特徴的な操作である急なアクセル戻し操作を検出したときに、後退レンジへのシフト誤操作と判定するものである。このようにすれば、急なアクセル戻し操作によって後退レンジへのシフト誤操作を検出できると共に、車両が停止状態から段差を乗り越えて後退させる場合等のように、運転者の意思で後退レンジに切り換えてアクセルを大きく踏み込んで車両を後退させる場合に、車両が後退し始めても、運転者が急なアクセル戻し操作を行わないため、後退レンジへのシフト誤操作と間違って判定されることを防止できる。
【0011】
本発明は、「所定値以上の急なアクセル戻し操作」を検出するために、例えば、予め標準的な運転者による通常の車両後退時のアクセル戻し操作の挙動を想定して判定しきい値(所定値)を設定しておき、後退レンジへの切り換え後にアクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル戻し操作の挙動を上記判定しきい値と比較して、通常の車両後退時より急なアクセル戻し操作であるか否かを判定するようにしても良い。
【0012】
しかし、運転者毎にアクセル戻し操作の挙動が異なる傾向があるため、予め判定しきい値(所定値)を一律に設定しておくと、運転者によるアクセル戻し操作の挙動のばらつきによって、急なアクセル戻し操作を誤判定する可能性がある。
【0013】
この対策として、請求項2のように、後退レンジへの切り換え後にアクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいてアクセル戻し操作の挙動を学習する学習手段を備え、シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後にアクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル戻し操作の挙動を前記学習手段の学習値と比較して急なアクセル戻し操作であるか否かを判定するようにすると良い。上述したように、運転者毎にアクセル戻し操作の挙動が異なる傾向があるため、後退レンジへの切り換え後のアクセル戻し操作の挙動を学習しておけば、通常の車両後退時のアクセル戻し操作の挙動を学習して、シフト誤操作時に運転者が慌てて行う急なアクセル戻し操作を通常の車両後退時のアクセル戻し操作の挙動の学習値と対比して精度良く検出することができる。
【0014】
具体的には、請求項3のように、学習手段は、アクセル戻し操作の挙動として、アクセル戻し速度の最速値を学習し、シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後にアクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル戻し速度が前記学習手段の学習値より速いときに急なアクセル戻し操作であると判定するようにすれば良い。これにより、シフト誤操作時に運転者が慌てて行う急なアクセル戻し操作を簡単に且つ精度良く検出することができる。
【0015】
一般に、車両を停止状態から前進方向に発進させる場合は、車両を後退させる場合と比較して、運転者のアクセル踏み込み量やアクセル踏み込み速度が大きくなる傾向があるため、後退レンジへのシフト誤操作時には、運転者は、車両を前進方向に発進させるつもりでアクセルを通常の車両後退時より大きく踏み込んでしまう。このため、後退レンジへのシフト誤操作時には、運転者のアクセル踏み込み操作が通常の車両後退時より急になる傾向がある。
【0016】
このようなシフト誤操作時のアクセル踏み込み操作の挙動を考慮して、請求項4のように、シフト誤操作検出手段は、運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて所定値以上の急なアクセル踏み込み操作及び所定値以上の急なアクセル戻し操作を検出した場合に後退レンジへのシフト誤操作と判定するようにしても良い。このようにすれば、後退レンジへのシフト誤操作の検出精度を高めることができる。
【0017】
この場合、請求項5のように、後退レンジへの切り換え後にアクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいてアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動を学習する学習手段を備え、シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後に前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動をそれぞれ前記学習手段の学習値と比較して前記急なアクセル踏み込み操作及び前記急なアクセル戻し操作であるか否かを判定するようにすると良い。運転者毎にアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動が異なる傾向があるため、後退レンジへの切り換え後のアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の両方の挙動を学習しておけば、通常の車両後退時のアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の傾向を学習して、シフト誤操作時の急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作を通常の車両後退時のアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作と対比して精度良く検出することができる。
【0018】
具体的には、請求項6のように、学習手段は、アクセル踏み込み操作の挙動として、アクセル踏み込み速度の最速値とアクセル踏み込み量の最大値を学習すると共に、アクセル戻し操作の挙動として、アクセル戻し速度の最速値を学習するようにすると良い。これにより、運転者のアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の傾向を簡単に学習することができる。
【0019】
更に、請求項7のように、シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後にアクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み量が学習手段のアクセル踏み込み量学習値よりも大きく、且つ、検出したアクセル踏み込み速度が前記学習手段のアクセル踏み込み速度学習値よりも速い場合に、急なアクセル踏み込み操作であると判定するようにすれば良い。これにより、シフト誤操作時の急なアクセル踏み込み操作を簡単に且つ精度良く検出することができる。
【0020】
また、請求項8のように、シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後にアクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み量が学習手段のアクセル踏み込み量学習値よりも小さく、且つ、検出したアクセル戻し速度が前記学習手段のアクセル戻し速度学習値よりも速い場合に、急なアクセル戻し操作であると判定するようにすれば良い。これにより、シフト誤操作時の急なアクセル戻し操作を簡単に且つ精度良く検出することができる。
【0021】
ところで、後退レンジへのシフト誤操作が行われた場合、車両が後退し始めると、すぐに運転者がシフト誤操作に気付いて慌てて急なアクセル戻し操作を行うため、後退レンジへのシフト誤操作に起因する急なアクセル戻し操作は、車両が後退し始めた直後に行われる。従って、車両が後退し始めてから暫く時間が経過した後(シフト誤操作時に運転者がシフト誤操作に気付いて急なアクセル戻し操作を行う可能性のある時間が経過した後)に急なアクセル戻し操作が行われても、その急なアクセル戻し操作は、運転者がシフト誤操作を気付いたことによる急なアクセル戻し操作ではない。
【0022】
この点を考慮して、請求項9のように、シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換えから所定時間経過するまでの期間又は後退レンジへの切り換え後の最初のアクセル踏み込み開始から所定時間経過するまでの期間又は車両の後退開始から所定時間経過するまでの期間に、後退レンジへのシフト誤操作の有無を判定するようにすると良い。ここで、「所定時間」は、後退レンジへのシフト誤操作時に運転者がそのシフト誤操作に気付いて急なアクセル戻し操作を行う可能性のある時間を考慮して設定すれば良い。このようにすれば、シフト誤操作時に運転者がシフト誤操作に気付いて急なアクセル戻し操作を行う可能性のある時間が経過した後に急なアクセル戻し操作が行われても、シフト誤操作と間違って判定されることを防止できる。
【0023】
上述した請求項1〜9に係る発明を実施する場合は、請求項10のように、後退レンジへのシフト誤操作と判定したときに車両の駆動力を制限又は遮断するようにすると良い。このようにすれば、後退レンジへのシフト誤操作時に車両の後退速度の上昇を抑えることができて、後退レンジへのシフト誤操作時の安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の一実施例の車両制御システムの構成を概略的に説明するブロック図である。
【図2】図2はRレンジ時アクセル操作挙動学習ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3はRレンジへの切り換え後のアクセル開度最大値、アクセル開度変化速度最大値、アクセル開度変化速度最小値の学習方法を説明するタイムチャートである。
【図4】図4はシフト誤操作検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5はRレンジ切換後カウンタルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6はシフト誤操作検出方法を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいて車両制御システム全体の構成を説明する。
車両を駆動する駆動源11は、エンジン(内燃機関)でも良いし、モータでも良く、勿論、エンジンとモータの両方を動力源として併用するものであっても良い。駆動源11の出力は、自動変速機12を介して駆動軸(図示せず)に伝達され、車輪(図示せず)が回転駆動される。
【0026】
駆動源11と自動変速機12を制御する制御装置13は、1個又は複数個のECU(マイクロコンピュータ)により構成され、運転者によるアクセル踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ14、運転者によるブレーキ操作(ブレーキペダルの踏み込み)を検出するブレーキスイッチ15(ブレーキ操作検出手段)、運転者のシフト操作により選択されたシフトレンジを検出するシフトレンジ検出装置16(シフトレンジ検出手段)、車速を検出する車速センサ17等の各種センサやスイッチ類が接続されている。
【0027】
制御装置13は、後述する図2、図4、図5の各ルーチンを実行することで、シフトレンジ検出装置16の検出結果に基づいて運転者がシフトレンジを後退レンジ(以下「Rレンジ」と表記する)に切り換えたことを検出した後に運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、アクセルセンサ14の検出値に基づいて所定値以上の急なアクセル踏み込み操作及び所定値以上の急なアクセル戻し操作を検出した場合に、Rレンジへのシフト誤操作と判定するシフト誤操作検出手段として機能する。
【0028】
ここで、「所定値以上の急なアクセル踏み込み操作」とは、Rレンジへのシフト誤操作ではない通常の車両後退時に運転者が行うアクセル踏み込み操作の挙動より急なアクセル踏み込み操作を意味し、「所定値以上の急なアクセル戻し操作」とは、通常の車両後退時に運転者が行うアクセル戻し操作の挙動より急なアクセル戻し操作を意味する。
【0029】
一般に、車両を停止状態から前進方向に発進させる場合は、車両を後退させる場合と比較して、運転者のアクセル踏み込み量や踏み込み速度が大きくなる傾向があるため、Rレンジへのシフト誤操作時には、運転者は、車両を前進方向に発進させるつもりでアクセルを通常の車両後退時より大きく踏み込んでしまう。このため、Rレンジへのシフト誤操作時には、運転者のアクセル踏み込み操作が通常の車両後退時より急になる傾向がある。また、Rレンジへのシフト誤操作時に、運転者がそれに気付かずにアクセルを踏み込んで車両が運転者の意思に反して後退し始めると、運転者がシフト誤操作に気付いて慌てて急なアクセル戻し操作を行って急ブレーキをかけることになる。
【0030】
このようなRレンジへのシフト誤操作時のアクセル踏み込み操作やアクセル戻し操作の挙動を考慮して、本実施例では、運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作を検出した場合に、Rレンジへのシフト誤操作と判定するものである。
【0031】
ところで、「通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作」や「通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作」を検出するために、例えば、予め標準的な運転者による通常の車両後退時のアクセル踏み込み操作やアクセル戻し操作の挙動を想定して判定しきい値を設定しておき、後退レンジへの切り換え後にアクセルセンサ14の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動をそれぞれ上記判定しきい値と比較して、通常の車両後退時より急なアクセル戻し操作及び急なアクセル戻し操作であるか否かを判定するようにしても良い。
【0032】
しかし、運転者毎にアクセル踏み込み操作やアクセル戻し操作の挙動が異なる傾向があるため、予め判定しきい値を一律に設定しておくと、運転者によるアクセル戻し操作の挙動のばらつきによって、急なアクセル戻し操作や急なアクセル戻し操作を誤判定する可能性がある。
【0033】
この対策として、本実施例では、制御装置13によって後述する図2のアクセル操作挙動学習ルーチンを実行することで、Rレンジへの切り換え後にアクセルセンサ14の検出値に基づいて、通常の車両後退時のアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動を学習するようにしている。具体的には、アクセル踏み込み操作の挙動として、アクセル踏み込み速度の最速値とアクセル踏み込み量の最大値を学習すると共に、アクセル戻し操作の挙動として、アクセル戻し速度の最速値を学習し、これらの学習値を、制御装置13の電源オフ時でも記憶データを保持できるバックアップRAM等の書き換え可能な不揮発性メモリに更新記憶する。
【0034】
本実施例では、アクセル踏み込み量の情報として、アクセルセンサ14で検出したアクセル開度を使用し、アクセル踏み込み量の学習値1として、アクセル開度の最大値を学習する。また、アクセル踏み込み速度とアクセル戻し速度の情報として、アクセル開度変化速度(単位時間当たりのアクセル開度変化量)を使用し、プラス値(正値)のアクセル開度変化速度がアクセル踏み込み速度となり、マイナス値(負値)のアクセル開度変化速度がアクセル戻し速度となる。アクセル踏み込み速度の学習値2として、アクセル開度変化速度の最大値(プラス値)を学習し、アクセル戻し速度の学習値3として、アクセル開度変化速度の最小値(マイナス値)を学習する。
【0035】
Rレンジへの切り換え後に、アクセルセンサ14により検出したアクセル開度(アクセル踏み込み量)が学習値1よりも大きく(アクセル開度>学習値1)、且つ、検出したプラス値のアクセル開度変化速度(アクセル踏み込み速度)が学習値2よりも速い場合(アクセル開度変化速度>学習値2)に、急なアクセル踏み込み操作であると判定する。
【0036】
また、Rレンジへの切り換え後に、アクセルセンサ14により検出したアクセル開度(アクセル踏み込み量)が学習値1よりも小さく(アクセル開度<学習値1)、且つ、検出したマイナス値のアクセル開度変化速度(アクセル戻し速度)が学習値3よりも速い場合(アクセル開度変化速度<学習値3)に、急なアクセル戻し操作であると判定する。
【0037】
ところで、Rレンジへのシフト誤操作が行われた場合、車両が後退し始めると、直ちに運転者がシフト誤操作に気付いて慌てて急なアクセル戻し操作を行うため、Rレンジへのシフト誤操作に起因する急なアクセル戻し操作は、車両が後退し始めた直後に行われる。従って、車両が後退し始めてから暫く時間が経過した後(シフト誤操作時に運転者がシフト誤操作に気付いて急なアクセル戻し操作を行う可能性のある時間が経過した後)に急なアクセル戻し操作が行われても、その急なアクセル戻し操作は、運転者がシフト誤操作を気付いたことによる急なアクセル戻し操作ではない。
【0038】
この点を考慮して、本実施例では、Rレンジへの切り換えから所定時間経過するまでの期間に、シフト誤操作の有無を判定するようにしている。ここで、「所定時間」は、Rレンジへのシフト誤操作時に運転者がそのシフト誤操作に気付いて急なアクセル戻し操作を行う可能性のある時間を考慮して設定すれば良い。このようにすれば、シフト誤操作時に運転者がシフト誤操作に気付いて急なアクセル戻し操作を行う可能性のある時間が経過した後に急なアクセル戻し操作が行われても、シフト誤操作と間違って判定されることを防止できる。
【0039】
尚、Rレンジへのシフト誤操作の有無を判定する期間は、Rレンジへの切り換えから所定時間経過するまでの期間に限定されず、例えば、Rレンジへの切り換え後の最初のアクセル踏み込み開始から所定時間経過するまでの期間、又は、車両の後退開始から所定時間経過するまでの期間としても良い。
【0040】
更に、本実施例では、制御装置13は、Rレンジへのシフト誤操作と判定したときに、要求駆動力(要求トルク)を制限して車両駆動力(車両駆動トルク)を制限するようにしている。これにより、Rレンジへのシフト誤操作時に車両の後退速度の上昇を抑えて、Rレンジへのシフト誤操作時の安全性を向上させることができる。
【0041】
尚、Rレンジへのシフト誤操作と判定したときに、車両の駆動力を遮断するようにしても良く、この場合でも、Rレンジへのシフト誤操作時に車両の後退速度の上昇を抑えて、Rレンジへのシフト誤操作時の安全性を向上させることができる。ここで、車両の駆動力の遮断は、駆動源11がモータの場合は、モータへの電源供給を停止(OFF)すれば良く、駆動源11がエンジンの場合は、燃料カットすれば良い。その他、動力伝達系のクラッチを解放しても良い。
【0042】
以上説明した本実施例のシフト誤操作の検出とフェールセーフは、制御装置13によって図2、図4、図5の各ルーチンに従って実行される。以下、これら各ルーチンの処理内容を説明する。
【0043】
[Rレンジ時アクセル操作挙動学習ルーチン]
図2のRレンジ時アクセル操作挙動学習ルーチンは、制御装置13の電源オン中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう学習手段としての役割を果たす。
【0044】
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、シフトレンジ検出装置16で検出した今回のシフトレンジがRレンジであるか否かを判定し、Rレンジであれば、ステップ102〜107の処理を実行して、Rレンジへの切り換え後のアクセル開度最大値、アクセル開度変化速度最大値(プラス値)とアクセル開度変化速度最小値(マイナス値)を制御装置13のRAM等のメモリに更新記憶する。
【0045】
具体的には、まず、ステップ102で、アクセルセンサ14で検出した今回のアクセル開度(アクセル踏み込み量)がメモリに記憶されているアクセル開度最大値よりも大きいか否かを判定して、今回のアクセル開度がアクセル開度最大値の記憶値よりも大きいと判定されれば、ステップ103に進み、今回のアクセル開度をアクセル開度最大値として更新記憶して、ステップ104に進む。このような処理を所定周期で繰り返すことで、Rレンジへの切り換え後のアクセル開度最大値(アクセル踏み込み量最大値)を更新記憶する。尚、上記ステップ102で「No」と判定された場合は、アクセル開度最大値の記憶値を更新せずに、ステップ104に進む。
【0046】
このステップ104では、アクセル開度変化速度がプラス値(アクセル踏み込み操作)で、且つ、今回のアクセル開度変化速度(アクセル踏み込み速度)がアクセル開度変化速度最大値の記憶値よりも大きいか否かを判定し、「Yes」と判定されれば、ステップ105に進み、今回のアクセル開度変化速度をアクセル開度変化速度最大値として更新記憶してステップ106に進む。このような処理を所定周期で繰り返すことで、Rレンジへの切り換え後のアクセル開度変化速度最大値(アクセル踏み込み速度最速値)を更新記憶する。尚、上記ステップ104で「No」と判定された場合は、アクセル開度変化速度最大値の記憶値を更新せずに、ステップ106に進む。
【0047】
このステップ106では、アクセル開度変化速度がマイナス値(アクセル戻し操作)で、且つ、今回のアクセル開度変化速度(アクセル戻し速度)がアクセル開度変化速度最小値の記憶値よりも小さいか否かを判定し、「Yes」と判定されれば、ステップ107に進み、今回のアクセル開度変化速度をアクセル開度変化速度最小値として更新記憶して本ルーチンを終了する。このような処理を所定周期で繰り返すことで、Rレンジへの切り換え後のアクセル開度変化速度最小値(アクセル戻し速度最速値)を更新記憶する。尚、上記ステップ106で「No」と判定された場合は、アクセル開度変化速度最小値の記憶値を更新せずに、本ルーチンを終了する。
【0048】
一方、前述したステップ101で、Rレンジではないと判定されれば、ステップ108に進み、前回の本ルーチン実行時のシフトレンジがRレンジである否か(つまりRレンジから他のレンジに切り換えた直後の最初の本ルーチン実行時であるか否か)を判定し、「Yes」と判定されれば、ステップ109に進み、アクセル開度最大値(アクセル踏み込み量最大値)の学習値1とアクセル開度変化速度最大値(アクセル踏み込み速度最速値)の学習値2とアクセル開度変化速度最小値(アクセル戻し速度最速値)の学習値3をそれぞれ次式により算出して更新記憶して、本ルーチンを終了する。
【0049】
学習値1=α×アクセル開度最大値(今回記憶値)
+(1−α)×学習値1(前回値)
学習値2=α×アクセル開度変化速度最大値(今回記憶値)
+(1−α)×学習値2(前回値)
学習値3=α×アクセル開度変化速度最小値(今回記憶値)
+(1−α)×学習値3(前回値)
【0050】
上式において、αは、今回記憶値を学習値1〜3に反映させる割合を決める重み付け係数(なまし係数)であり、0<α<1の範囲内に設定されている。尚、各学習値1〜3の演算に用いる重み付け係数αを各学習値毎に異なる値に設定しても良い。各学習値1〜3は、制御装置13の電源オフ時でも記憶データを保持できるバックアップRAM等の書き換え可能な不揮発性メモリに更新記憶され、過去の運転中に学習した学習値1〜3を用いて、今回の運転中に学習する学習値1〜3を更新できるようになっている。
尚、上記ステップ108で「No」と判定されれば、各学習値1〜3を更新せずに、本ルーチンを終了する。
【0051】
以上説明した図2のRレンジ時アクセル操作挙動学習ルーチンを所定周期で繰り返し実行することで、図3に示すように、Rレンジへの切り換え後のアクセル開度最大値、アクセル開度変化速度最大値、アクセル開度変化速度最小値を更新記憶して、それらの記憶値を用いて各学習値1〜3を更新する。
【0052】
[シフト誤操作検出ルーチン]
図4のシフト誤操作検出ルーチンは、制御装置13の電源オン中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいうシフト誤操作検出手段としての役割を果たす。
【0053】
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、Rレンジ切換後カウンタのカウント値が所定値Ts より小さいか否かを判定する。このRレンジ切換後カウンタは、後述する図5のRレンジ切換後カウンタルーチンによってRレンジへの切り換え後にカウント動作を開始してRレンジへの切り換え後の経過時間をカウントする。ここで、所定値Ts は、Rレンジへのシフト誤操作時に運転者がそのシフト誤操作に気付いて急なアクセル戻し操作を行う可能性のある時間を考慮して設定されている。
【0054】
このステップ201で、Rレンジ切換後カウンタのカウント値が所定値Ts より小さい(つまりRレンジへの切り換え後の経過時間が所定時間以下)と判定されれば、ステップ202に進み、シフト誤操作判定期間フラグを、シフト誤操作の有無を判定する期間であることを意味する「ON」にセットする。
【0055】
この後、ステップ203に進み、アクセル開度前回値が学習値1より小さく、且つ、アクセル開度今回値が学習値1より大きく、且つ、アクセル開度変化速度が学習値2より大きいか否かを判定し、「Yes」と判定されれば、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作と判断して、ステップ204に進み、アクセル急ONフラグをONして、ステップ205に進む。尚、上記ステップ203で、アクセル開度前回値が学習値1より小さく、且つ、アクセル開度今回値が学習値1より大きいという条件を判定する理由は、アクセルセンサ14で検出したアクセル開度が学習値1を越えるときのアクセル開度変化速度が学習値2より大きいか否かで、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作であるか否かを判定するものである。上記ステップ203で「No」と判定されれば、ステップ204の処理を飛び越してステップ205に進む。
【0056】
このステップ205では、アクセル開度前回値が学習値1より大きく、且つ、アクセル開度今回値が学習値1より小さく、且つ、アクセル開度変化速度が学習値3より小さいか否かを判定し、「Yes」と判定されれば、通常の車両後退時より急なアクセル戻し操作と判断して、ステップ206に進み、アクセル急OFFフラグをONして、ステップ207に進む。尚、上記ステップ205で、アクセル開度前回値が学習値1より大きく、且つ、アクセル開度今回値が学習値1より小さいという条件を判定する理由は、アクセルセンサ14で検出したアクセル開度が学習値1を下回るときのアクセル開度変化速度が学習値3より小さいか否かで、通常の車両後退時より急なアクセル戻し操作であるか否かを判定するものである。上記ステップ205で「No」と判定されれば、ステップ206の処理を飛び越してステップ207に進む。
【0057】
このステップ207で、アクセル急ONフラグがONで、且つアクセル急OFFフラグがONであるか否かで、Rレンジへの切り換え後に通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作が行われたか否かを判定する。その結果、「Yes」と判定されれば、Rレンジへのシフト誤操作と判断して、ステップ208に進み、駆動力制限フラグをONして、ステップ209に進み、要求駆動力(要求トルク)を制限して車両駆動力(車両駆動トルク)を制限する。これにより、Rレンジへのシフト誤操作時に車両の後退速度の上昇を抑えて、Rレンジへのシフト誤操作時の安全性を向上させる。尚、上記ステップ207で「No」と判定されれば、Rレンジへのシフト誤操作ではないと判断して、そのまま本ルーチンを終了する。
【0058】
一方、前記ステップ201で、Rレンジ切換後カウンタのカウント値が所定値Ts 以上になったと判定されれば、シフト誤操作の有無を判定する期間を終了したと判断して、ステップ210に進み、アクセル急ONフラグ、アクセル急OFFフラグ、駆動力制限フラグ及びシフト誤操作判定期間フラグを全てOFFにリセットし(又はリセット状態を維持し)、本ルーチンを終了する。
【0059】
[Rレンジ切換後カウンタルーチン]
図5のRレンジ切換後カウンタルーチンは、制御装置13の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、前回のシフトレンジがRレンジ以外で、且つ、今回のシフトレンジがRレンジであるか否か(つまりRレンジ以外からRレンジに切り換えられた直後であるか否か)を判定し、「Yes」と判定されれば、ステップ302に進み、Rレンジ切換後カウンタのカウント値を「0」にリセットして、ステップ303に進み、Rレンジ切換後カウンタのカウント値をカウントアップして本ルーチンを終了する。
【0060】
これに対し、上記ステップ301で「No」と判定された場合、つまりRレンジへの切り換え直後でない場合は、ステップ302のRレンジ切換後カウンタのリセット処理を行わずに、ステップ303に進み、Rレンジ切換後カウンタのカウント値をカウントアップして本ルーチンを終了する。これにより、Rレンジ切換後カウンタは、Rレンジへの切り換え毎にリセットスタートされ、Rレンジへの切り換え後の経過時間をカウントする処理を所定周期で繰り返す。尚、Rレンジ切換後カウンタのカウント値が所定値Ts を越えて上限値に達した後は、Rレンジ切換後カウンタのカウント値が上限値に維持される。
【0061】
以上説明した本実施例のシフト誤操作検出方法を図6のタイムチャートを用いて説明する。
図6の例では、時刻t1 で、運転者がシフトレンジをNレンジからRレンジに切り換える。これにより、Rレンジ切換後カウンタのカウント値がリセットされて、Rレンジへの切り換え後の経過時間のカウント動作が開始されると共に、シフト誤操作判定期間フラグがONされて、シフト誤操作の有無を判定する処理が開始される。
【0062】
その後、アクセルセンサ14で検出したアクセル開度が学習値1を越えた時点t2 で、アクセル開度変化速度が学習値2より大きいため、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作であると判断されて、アクセル急ONフラグがONされる。
【0063】
その後、アクセルセンサ14で検出したアクセル開度が学習値1を下回った時点t3 で、アクセル開度変化速度が学習値3より小さいため、通常の車両後退時より急なアクセル戻し操作であると判断されて、アクセル急OFFフラグがONされる。これにより、アクセル急ONフラグとアクセル急OFFフラグの両方がON状態となるため、Rレンジへの切り換え後に通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作が行われたと判断され、Rレンジへのシフト誤操作と判定される。これにより、駆動力制限フラグがONされて、要求駆動力(要求トルク)が制限されて車両駆動力(車両駆動トルク)が制限され、車両の後退速度の上昇が抑えられる。
【0064】
この後、Rレンジ切換後カウンタのカウント値が所定値Ts に達した時点t4 で、シフト誤操作判定期間フラグ、アクセル急ONフラグ、アクセル急OFFフラグ及び駆動力制限フラグが全てOFFにリセットされ、要求駆動力の制限が解除される。
【0065】
以上説明した本実施例では、シフトレンジ検出装置16の検出結果に基づいて運転者がシフトレンジをRレンジに切り換えたことを検出した後に運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、アクセルセンサ14の検出値に基づいて通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作を検出した場合に、Rレンジへのシフト誤操作と判定するようにしたので、Rレンジへのシフト誤操作を検出できると共に、車両が停止状態から段差を乗り越えて後退させる場合等のように、運転者の意思でRレンジに切り換えてアクセルを大きく踏み込んで車両を後退させる場合に、車両が後退し始めても、運転者が急なアクセル戻し操作を行わないため、Rレンジへのシフト誤操作と間違って判定されることを防止できる。
【0066】
しかも、本実施例では、Rレンジへの切り換え後にアクセルセンサ14の検出値に基づいてアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動を学習すると共に、Rレンジへの切り換え後にアクセルセンサ14の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動をそれぞれ学習値と比較して、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作であるか否かを判定するようにしたので、通常の車両後退時のアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の傾向を学習して、シフト誤操作時の急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作を通常の車両後退時のアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作と比較して精度良く検出することができる。
【0067】
尚、本実施例では、Rレンジへの切り換え後に運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作及び急なアクセル戻し操作を検出した場合に、通常の車両後退時よりRレンジへのシフト誤操作と判定するようにしたが、Rレンジへの切り換え後に運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、アクセルセンサ14の検出値に基づいて、通常の車両後退時より急なアクセル戻し操作を検出した場合に、Rレンジへのシフト誤操作と判定するようにしても良い。この場合も、通常の車両後退時より急なアクセル戻し操作の判定方法は、本実施例と同様の方法を用いれば良い。
【0068】
また、本発明は、シフト誤操作の検出(シフト誤操作検出時の車両駆動力の制限)を行うか否かを選択する選択機能を設けて、運転者が選択機能を操作することで、シフト誤操作の検出(シフト誤操作検出時の車両駆動力の制限)を行うモードと、シフト誤操作を検出しないモードとを手動で切り換えることができるようにしても良い。
また、シフト誤操作の有無を判定する期間(所定時間)を運転者が任意に設定する機能を追加しても良い。
【0069】
その他、本発明は、自動変速機12を搭載していないマニュアルミッション車に適用したり、アクセル踏み込み操作やアクセル戻し操作の挙動の学習方法を変更したり、通常の車両後退時より急なアクセル踏み込み操作や急なアクセル戻し操作の判定方法を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
11…駆動源(エンジン,モータ)、12…自動変速機、13…制御装置(学習手段,シフト誤操作検出手段)、14…アクセルセンサ(アクセル踏み込み量検出手段)、15…ブレーキスイッチ、16…シフトレンジ検出装置(シフトレンジ検出手段)、17…車速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるアクセル踏み込み量を検出するアクセル踏み込み量検出手段と、
運転者のシフト操作により選択されたシフトレンジを検出するシフトレンジ検出手段と、
前記シフトレンジ検出手段の検出結果に基づいて運転者がシフトレンジを後退レンジに切り換えたことを検出した後に運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて所定値以上の急なアクセル戻し操作を検出した場合に後退レンジへのシフト誤操作と判定するシフト誤操作検出手段と
を備えていることを特徴とする車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項2】
後退レンジへの切り換え後に前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいてアクセル戻し操作の挙動を学習する学習手段を備え、
前記シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後に前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル戻し操作の挙動を前記学習手段の学習値と比較して前記急なアクセル戻し操作であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項3】
前記学習手段は、前記アクセル戻し操作の挙動として、アクセル戻し速度の最速値を学習し、
前記シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後に前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル戻し速度が前記学習手段の学習値より速いときに前記急なアクセル戻し操作であると判定することを特徴とする請求項2に記載の車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項4】
前記シフト誤操作検出手段は、運転者のアクセル踏み込み操作により車両が後退し始めたときに、前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて所定値以上の急なアクセル踏み込み操作及び所定値以上の急なアクセル戻し操作を検出した場合に後退レンジへのシフト誤操作と判定することを特徴とする請求項1に記載の車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項5】
後退レンジへの切り換え後に前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいてアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動を学習する学習手段を備え、
前記シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後に前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み操作及びアクセル戻し操作の挙動をそれぞれ前記学習手段の学習値と比較して前記急なアクセル踏み込み操作及び前記急なアクセル戻し操作であるか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項6】
前記学習手段は、前記アクセル踏み込み操作の挙動として、アクセル踏み込み速度の最速値とアクセル踏み込み量の最大値を学習すると共に、前記アクセル戻し操作の挙動として、アクセル戻し速度の最速値を学習することを特徴とする請求項5に記載の車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項7】
前記シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後に前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み量が前記学習手段のアクセル踏み込み量学習値よりも大きく、且つ、検出したアクセル踏み込み速度が前記学習手段のアクセル踏み込み速度学習値よりも速い場合に、前記急なアクセル踏み込み操作であると判定することを特徴とする請求項6に記載の車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項8】
前記シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換え後に前記アクセル踏み込み量検出手段の検出値に基づいて検出したアクセル踏み込み量が前記学習手段のアクセル踏み込み量学習値よりも小さく、且つ、検出したアクセル戻し速度が前記学習手段のアクセル戻し速度学習値よりも速い場合に、前記急なアクセル戻し操作であると判定することを特徴とする請求項6又は7に記載の車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項9】
前記シフト誤操作検出手段は、後退レンジへの切り換えから所定時間経過するまでの期間又は後退レンジへの切り換え後の最初のアクセル踏み込み開始から所定時間経過するまでの期間又は車両の後退開始から所定時間経過するまでの期間に、後退レンジへのシフト誤操作の有無を判定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両のシフト誤操作検出装置。
【請求項10】
前記シフト誤操作検出手段は、後退レンジへのシフト誤操作と判定したときに車両の駆動力を制限又は遮断することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の車両のシフト誤操作検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−6510(P2013−6510A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140384(P2011−140384)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】