説明

車両のシャシフレーム構造

【課題】トランスミッションの脱着作業をスタビライザブラケット等によって邪魔されることなく行なうことができる車両のシャシフレーム構造を提供する。
【解決手段】シャシフレーム20は、一対のサイドレール21,22と、車両の幅方向に延びるアウトリガー部材40を有している。アウトリガー部材40は、サイドレール21,22の上側に固定されている。アウトリガー部材40の下方でサイドレール21,22の車両幅方向の内側に、それぞれスタビライザブラケット80,81が着脱可能に取付けられている。スタビライザブラケット80,81は補強用ビード部92を有している。一方のスタビライザブラケット80の補強用ビード部92にクロスメンバ85の一端85aが着脱可能に締結されている。他方のスタビライザブラケット81の補強用ビード部92にクロスメンバ85の他端85bが着脱可能に締結されている。クロスメンバ85の上部85cがアウトリガー部材40に着脱可能に締結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤエンジンバス等の車両の後部のシャシフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リヤエンジンバス等の車両では、エンジンルーム内への搭載装置の増大あるいはリターダ装置等の付属設備の追加などに伴い、トランスミッションの全長が大きくなってきている。そのような車両において、例えばトランスミッションの整備を行なう場合、作業量をなるべく少なくするために、エンジンをシャシフレームに搭載したままトランスミッションのみをシャシフレームから降ろすことが望まれている。
【0003】
前記シャシフレームには、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドレールや、車両の幅方向に延びるクロスメンバなどが含まれている。またクロスメンバの下側には、スタビライザを取付けるためのスタビライザブラケットなどが溶接されている。(例えば下記特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−63335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したようにクロスメンバの下側にスタビライザブラケットが設けられている車両において、シャシフレームにエンジンを搭載したままトランスミッションのみをシャシフレームから降ろそうとすると、車種によっては、例えばトランスミッションに付属しているリターダ装置がスタビライザブラケットやクロスメンバと干渉し、トランスミッションを降ろす作業を困難なものにしている。また別の問題として、走行中にスタビライザからスタビライザブラケットに入力する荷重が、スタビライザブラケットとクロスメンバとの溶接部に集中する可能性があるため、この溶接部に格別な配慮が必要であった。
【0005】
従って本発明の目的は、トランスミッションをシャシフレームから降ろす作業を容易に行なうことができ、かつ、スタビライザブラケットに入力する荷重をシャシフレーム側に分散させて支持することができる車両のシャシフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシャシフレーム構造は、車両の前後方向に延在し該車両の幅方向に間隔を有して配置された左右一対のサイドレールと、前記サイドレールに対し車両の幅方向に延び前記一対のサイドレールの上側に固定されて車体を支持するアウトリガー部材と、前記アウトリガー部材の下方で前記一対のサイドレールの車両幅方向の内側に配設されかつ上下方向に延びる補強用ビード部を有する左右一対のスタビライザブラケットと、前記左右一対のスタビライザブラケットの前記それぞれの補強用ビード部に両端が着脱可能に締結され、上部が前記アウトリガー部材の下部に着脱可能に締結されたクロスメンバとを具備している。
【0007】
本発明の1つの形態では、前記クロスメンバは、車両の幅方向と上下方向に延びる板状の部材であり、該クロスメンバの上部が前記アウトリガー部材の縦壁の下部にボルトとナットによって着脱可能に締結されている。また前記補強用ビード部が前記アウトリガー部材の前記縦壁に対して車両前後方向に同位相に位置し、前記クロスメンバの両端がそれぞれ前記一対のスタビライザブラケットの前記補強用ビード部にボルトとナットによって車両の前後方向に締結され、かつ、前記クロスメンバの上部が前記アウトリガー部材の前記縦壁の下部にボルトとナットによって車両の前後方向に締結されている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係るシャシフレーム構造によれば、トランスミッションをシャシフレームから降ろす際に、着脱可能な前記クロスメンバを前記一対のスタビライザブラケットと前記アウトリガー部材から切離し、また前記一対のスタビライザブラケットのうち少なくとも一方をサイドレールから取外す。こうすることにより、トランスミッションの脱着に必要なスペースがサイドレールの下方でトランスミッションの前方に確保され、トランスミッションの脱着作業を容易に行なうことができる。また走行中にスタビライザから前記スタビライザブラケットに入力する荷重を、前記シャシフレームとクロスメンバおよびアウトリガー部材に分散させて支持することができる。
【0009】
請求項2によれば、形状な簡単な板状のクロスメンバを採用したことにより、クロスメンバの製作が容易となり、しかもクロスメンバの軽量化を図ることができる。請求項3によれば、平板状の前記クロスメンバを、ボルトとナットによって前記スタビライザブラケットと前記アウトリガー部材に着脱可能に結合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態に係るシャシフレーム構造を備えた車両について、図1から図7を参照して説明する。
図1は、車両10の一例としてのリヤエンジンバスの後部を示している。この車両10の車体11の後部すなわち後輪12の後側に形成されたオーバーハング部13に、エンジンルーム14が設けられている。
【0011】
図2は前記車両10の後部に設けられたシャシフレーム20を示している。シャシフレーム20は、車両10の前後方向に延びる左右一対のサイドレール21,22を有している。サイドレール21,22は車両10の幅方向に間隔を有して配置されている。
【0012】
サイドレール21,22の長手方向の途中に、後輪12の前側に位置する第1の仕切壁31と、後輪12の後側に位置する第2の仕切壁32と、エンジンルーム14の前壁を構成する第3の仕切壁33などが設けられている。これらの仕切壁31,32,33はそれぞれ車両10の幅方向に延びている。図2において矢印Xが車両の前後方向を示し、矢印Yが車両の幅方向、矢印Zが上下方向を示している。サイドレール21,22の後端にリヤバンパに対応する骨格部材35が設けられている。
【0013】
図3に示すように第2の仕切壁32はアウトリガー部材40を含んでいる。アウトリガー部材40はサイドレール21,22の上側に固定され、車両の幅方向に延びている。第2の仕切壁32の前側には、サイドレール21,22間にわたるクロスメンバ41がサイドレール21,22に溶接されている。サイドレール21,22の下面には、補強部材として機能するガセット42が溶接されている。
【0014】
第2の仕切壁32の後側にトランスミッション50(図3に示す)が配置されている。トランスミッション50は、エンジン51に連結されている。トランスミッション50の前部に電磁式のリターダ装置52が設けられている。リターダ装置52は、図示しないプロペラシャフトを介して後輪12用の差動機(図示せず)に接続されている。トランスミッション50を整備する場合などには、必要に応じてトランスミッション50をエンジン51から切離すことができる。
【0015】
図4は、シャシフレーム20の一部を車両の後下方から見た斜視図である。図4に示すようにサイドレール21,22の下方にエアサスペンション装置60が設けられている。エアサスペンション装置60は、サイドレール21,22の下方に設けられたエアスプリング61,62と、ショックアブソーバ63,64と、スタビライザ65などを含んでいる。
【0016】
スタビライザ65は、車両の幅方向に延びるトーション部66と、車両の前後方向に延びる左右一対のアーム部67,68とを備えている。トーション部66は、ゴムブッシュを備えた保持部70,71を介して、スタビライザ支持部材72,73によって支持されている。アーム部67,68の先端は、それぞれアクスル側の部材75,76に接続されている。
【0017】
スタビライザ支持部材72,73の上側の取付部72a,73aは、それぞれ、スタビライザブラケット80,81を介してサイドレール21,22に固定されている。スタビライザブラケット80,81は、車両の幅方向に延びる板状の脱着可能なクロスメンバ85によって互いに連結されている。
【0018】
図5は、シャシフレーム20の一部とスタビライザブラケット80,81とクロスメンバ85を、車両の前下側から見た斜視図である。図6はスタビライザブラケット80,81とクロスメンバ85のみを示している。スタビライザブラケット80,81は互いに対称形であり、基本的な構成は共通であるため、以下に一方のスタビライザブラケット80を代表して説明する。
【0019】
スタビライザブラケット80は、水平方向に延びる基部90と、基部90の上方に延びる縦壁部91と、縦壁部91の車両内側の面に設けられた一対の補強用ビード部92,93などを備えている。クロスメンバ85が固定される補強用ビード部92の前面は、アウトリガー部材40の縦壁40aに対し、車両前後方向に関して同位相(同一垂直面上)に位置するように設けられている。
【0020】
スタビライザブラケット80の縦壁部91の上端には、車両内側を向く折曲部95が形成されている。基部90の下面側に支持壁96が設けられている。この支持壁96にスタビライザ支持部材72の上端がボルト97(図4に示す)によって固定されている。支持壁96には、ボルト97を通すための孔98(図5と図6に示す)が形成されている。
【0021】
スタビライザブラケット80の基部90は、ボルト100とナット101によって、サイドレール21の下面に対して着脱可能に締結されている。スタビライザブラケット80の縦壁部91は、ボルト105とナット106によって、サイドレール21の矩形閉断面形状の車両内側の面(縦壁)に着脱可能に締結されている。
【0022】
一方のスタビライザブラケット80の補強用ビード部92に、プレート形の前記クロスメンバ85の一端85aがボルト110とナット111によって着脱可能に締結されている。他方のスタビライザブラケット81の補強用ビード部92に、クロスメンバ85の他端85bがボルト112とナット113によって着脱可能に締結されている。クロスメンバ85の上部85cは、ボルト115とナット116によって、アウトリガー部材40の縦壁40aの下部に着脱可能に締結されている。
【0023】
すなわち、平板状のクロスメンバ85の両端が、一対のスタビライザブラケット80,81のそれぞれの補強用ビード部92にボルト110,112とナット111,113によって車両の前後方向に締結され、かつ、クロスメンバ85の上部85cがアウトリガー部材40の縦壁40aの下部にボルト115とナット116によって車両の前後方向に締結されている。
【0024】
以下に前記シャシフレーム構造を備えた車両10の作用について説明する。
車両10がカーブを走行する際などに、スタビライザ65のトーション部66とアーム部67,68が弾性的に撓むことによるばね作用により、車両10のローリングが抑制される。スタビライザ65からスタビライザブラケット80,81に入力した荷重は、スタビライザブラケット80,81の基部90や縦壁部91および補強用ビード部92,93を介して、サイドレール21,22に伝達されるとともに、補強用ビード部92からクロスメンバ85に伝達され、さらにクロスメンバ85からアウトリガー部材40に伝わる。
【0025】
すなわち走行中にスタビライザ65からスタビライザブラケット80,81に入力した負荷を、サイドレール21,22とアウトリガー部材40に分散して支持することができる。このためスタビライザ65の支持部に応力が集中することが回避され、耐久性を高める上で有利である。
【0026】
また本実施形態では、車両の幅方向と上下方向に延びる板状のクロスメンバ85の両端85a,85bをそれぞれスタビライザブラケット80,81の補強用ビード部92に結合し、かつ、クロスメンバ85の上部85cを、補強用ビード部92と同位相に位置するアウトリガー部材40の縦壁40aに結合している。このため簡単な形状(平板形)のクロスメンバ85を採用することが可能となり、クロスメンバ85を容易に製作することができ、かつ軽量に構成することができた。
【0027】
トランスミッション50(図3に示す)をシャシフレーム20から降ろす場合、スタビライザ支持部材72,73をスタビライザブラケット80,81から取外す。またスタビライザブラケット80,81とクロスメンバ85とを締結しているボルト110,112とナット101.113を取外すことにより、クロスメンバ85をスタビライザブラケット80,81から切離す。また、アウトリガー部材40とクロスメンバ85とを締結しているボルト115とナット116を取外すことにより、クロスメンバ85をアウトリガー部材40から取外す。
【0028】
図7は、シャシフレーム20からスタビライザブラケット80,81とクロスメンバ85が取外された状態を車両の前上方から見た斜視図である。サイドレール21,22の縦壁面に前記ボルト105を通すための孔120が形成されている。ガセット42には前記ボルト100を通すための孔121が形成されている。またアウトリガー部材40の縦壁40aには前記ボルト115を通すための孔122が形成されている。
【0029】
このようにシャシフレーム20からスタビライザブラケット80,81とクロスメンバ85が取外されると、シャシフレーム20の下面側にトランスミッション50を車両前方に移動させることができるスペースが確保される。このため、エンジン51から切離されたトランスミッション50を車両前側に移動させてシャシフレーム20から降ろすことができる。なおトランスミッション50によっては、スタビライザブラケット80,81のうちの一方と、クロスメンバ85を取外すことにより、トランスミッション50を降ろすことが可能な場合もある。
【0030】
なお本発明を実施するに当たって、サイドレールやアウトリガー部材等のシャシフレームを構成する骨格部材をはじめとして、スタビライザブラケットや着脱可能なクロスメンバなどの発明の構成要素を、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変形して実施できることは言うまでもない。また本発明のシャシフレーム構造は、リヤエンジンバス以外の車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るシャシフレームを備えた車両の後部の斜視図。
【図2】図1に示された車両の後部のシャシフレームの斜視図。
【図3】図1に示された車両の後部のシャシフレームの一部とトランスミッション等を車両の前上方から見た斜視図。
【図4】図1に示された車両のシャシフレームの一部とエアサスペンション装置等を車両の後下方から見た斜視図。
【図5】図1に示された車両のシャシフレームの一部とスタビライザブラケット等を車両の前下方から見た斜視図。
【図6】図5に示されたスタビライザブラケットとクロスメンバの斜視図。
【図7】図1に示された車両の後部のシャシフレームの一部を車両の前上方から見た斜視図。
【符号の説明】
【0032】
10…車両
11…車体
20…シャシフレーム
21,22…サイドレール
40…アウトリガー部材
50…トランスミッション
65…スタビライザ
80,81…スタビライザブラケット
85…クロスメンバ
92…補強用ビード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延在し該車両の幅方向に間隔を有して配置された左右一対のサイドレールと、
前記サイドレールに対し車両の幅方向に延び前記一対のサイドレールの上側に固定されて車体を支持するアウトリガー部材と、
前記アウトリガー部材の下方で前記一対のサイドレールの車両幅方向の内側に配設されかつ上下方向に延びる補強用ビード部を有する左右一対のスタビライザブラケットと、
前記左右一対のスタビライザブラケットの前記それぞれの補強用ビード部に両端が着脱可能に締結され、上部が前記アウトリガー部材の下部に着脱可能に締結されたクロスメンバと、
を具備したことを特徴とする車両のシャシフレーム構造。
【請求項2】
前記クロスメンバは、車両の幅方向と上下方向に延びる板状の部材であり、該クロスメンバの上部が前記アウトリガー部材の縦壁の下部にボルトとナットによって着脱可能に締結されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のシャシフレーム構造。
【請求項3】
前記補強用ビード部が前記アウトリガー部材の前記縦壁に対して車両前後方向に同位相に位置し、前記クロスメンバの両端がそれぞれ前記一対のスタビライザブラケットの前記補強用ビード部にボルトとナットによって車両の前後方向に締結され、かつ、前記クロスメンバの上部が前記アウトリガー部材の前記縦壁の下部にボルトとナットによって車両の前後方向に締結されたことを特徴とする請求項2に記載の車両のシャシフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149750(P2010−149750A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331214(P2008−331214)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】