説明

車両のシャシフレーム構造

【課題】エンジンルーム内の比較的低い位置に、より多くの機器類を配置することができ、かつ、剛性が高いシャシフレーム構造を提供する。
【解決手段】シャシフレーム20は、左右一対のサイドレール21,22と、サイドレール21,22の後端部に設けられたオフセットフレーム35,36と、リヤバンパに対応するリヤエンドメンバ37と、車両幅方向に延びるクロスメンバ95とを備えている。オフセットフレーム35,36は、車両幅方向の外側に向かって屈曲する屈曲部80,81と、屈曲部80,81に連続して車両後方に延びる延出部82,83とを有している。クロスメンバ95の両端95a,95bがそれぞれボルトによってサイドレール21,22側のブラケット部材102,103に着脱可能に固定されている。このシャシフレーム20は、オフセットフレーム35,36とリヤエンドメンバ37とクロスメンバ95とによって囲まれる機器収容空間110を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤエンジンバス等の車両のシャシフレーム構造に係り、特に車両後部のエンジンマウント部を含むシャシフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リヤエンジンバス等の車両では、例えば下記特許文献1に開示されているように、車両の前後方向に延びる互いに略平行な左右一対のサイドレールを有し、該サイドレールの後端部に車両の幅方向に延びるクロスメンバを固定し、これらサイドレールやクロスメンバを利用してエンジンや補機類を搭載するようにしている。
【0003】
またリヤエンジン車のように車両後部にエンジンルームを有する車両では、排出ガス浄化対策等のためにエンジンルームに搭載する機器類が増大しているため、これらの機器類を限られた広さのエンジンルーム内にうまく配置することが望まれている。しかしエンジンルーム内に配置される機器類は、高温等の温度条件に対して格別な配慮が必要なものがあり、しかもこれら機器類の取付強度や剛性等に関する要求も満足する必要があるため、エンジンルーム内に前記機器類を無理なく配置することがさらに困難になってきている。
【特許文献1】実公平4−28823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のリヤエンジン車では、一対のサイドレールが互いに平行に車両後端まで延在している。このためサイドレールを利用してエンジンや機器類を搭載しようとすると、サイドレールの幅に制約があるためにこれらの機器類の一部をエンジンルームの上部に配置せざるを得ない。このエンジンルームの上部に配置された機器類によって、エンジンルーム内の冷却用空気が流れにくくなり、高温に弱い機器類の耐熱性が問題になることがあった。
【0005】
また前記一対のサイドレールが、車両後端のリヤバンパまで平行に延在しているシャシフレーム構造では、車両後方からのオフセット衝突を想定した場合に、リヤバンパの端部付近に入力する衝突荷重に対して、リヤバンパの端部側が車両内側に比較的大きく変形することが考えられる。
【0006】
従って本発明の目的は、エンジンルーム内の低い位置に、より多くの機器類を配置することができ、かつ、エンジン荷重や後方からのオフセット衝突等に対して好ましい剛性を発揮できるシャシフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャシフレーム構造は、車両の前後方向に延在し、該車両の幅方向に間隔を有して略平行に配置された左右一対のサイドレールと、前記一対のサイドレールの車両前後方向の後端部に設けられ、車両幅方向の外側に向かって屈曲する屈曲部および該屈曲部に連続して車両後方に延びる延出部を有する左右一対のオフセットフレームと、前記一対の屈曲部間に架設されて車両幅方向に延び、両端がそれぞれ締結部材(例えばボルトとナット)によって前記一対のサイドレールに固着されるクロスメンバと、前記一対のオフセットフレームの後端に固定され車両幅方向に延びるリヤエンドメンバとを有し、車両の上方から見て前記オフセットフレームと前記クロスメンバと前記リヤエンドメンバとによって囲まれる機器収容空間を有している。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記一対のサイドレールのそれぞれの後端部にエンジンを支持するマウント部材が設けられ、これら一対のマウント部材の下方に前記クロスメンバの両端が前記締結部材によって着脱可能に結合されている。また前記機器収容空間に、前記エンジンによって駆動される機器が配置され、前記エンジンルーム内には該エンジンルームの上壁と前記エンジンの上部との間に、冷却用空気を流すことのできる空間部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るシャシフレーム構造によれば、左右一対のサイドレールの後端部に車両幅方向の外側に広がるオフセットフレームが結合されていることにより、エンジンルーム下部の機器収容空間を車両幅方向に拡大することができ、例えばエンジンによって駆動される機器をこの機器収容空間に配置することができる。この機器収容空間は、サイドレールの後端部に結合されたオフセットフレームとクロスメンバおよびリヤエンドメンバによって囲まれ、上方から見て略矩形状をなしているため剛性が高く、エンジンルームに収容する機器類を十分な強度で支持することができる。また車両後方から荷重が入力するオフセット衝突に対し、リヤバンパやリヤエンドメンバの端部側が変形することを抑制する上で有利である。
【0010】
請求項2によれば、エンジンマウント部の一対のマウント部材間に前記クロスメンバが設けられていることにより、エンジンマウント部付近の剛性をさらに大きくすることができる。しかもクロスメンバが着脱可能であるため、エンジン下部の例えばオイルパン等をエンジン車載状態で取外す作業を容易に行なうことができる。請求項3によれば、前記オフセットフレームによって形成される車両幅方向に延びる機器収容空間に機器の一部を配置したことにより、エンジン上部に配置される機器の数を減らすことができ、エンジンの上部に形成されるべき冷却空気流通用の空間部を広げることができるため、エンジンルーム内の温度を下げることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態に係るシャシフレーム構造について、図1から図7を参照して説明する。
図1は車両10の一例としてのリヤエンジンバスの後部を示している。この車両10の車体11の後部、すなわち後輪12の後側に形成されたオーバーハング部13に、エンジンルーム14が設けられている。車体11の後面下部に、車両10の幅方向に延びるリヤバンパ15が設けられている。
【0012】
図2と図3は、前記車両10の後部に設けられたシャシフレーム20を示している。図2において矢印Xが車両の前後方向を示し、矢印Yが車両の幅方向、矢印Zが上下方向を示している。シャシフレーム20は、車両10の前後方向に延在する左右一対のサイドレール21,22を有している。サイドレール21,22は車両10の幅方向に間隔を有して配置されている。
【0013】
図2と図3に示すように、サイドレール21,22の長手方向の途中に、後輪12の前側に位置する第1の仕切壁31と、後輪12の後側に位置する第2の仕切壁32と、エンジンルーム14の前壁を構成する第3の仕切壁33などが設けられている。これらの仕切壁31,32,33はそれぞれ車両10の幅方向に延びている。サイドレール21,22の後端に、後に詳しく説明するオフセットフレーム35,36を介して、リヤエンドメンバ37が設けられている。リヤエンドメンバ37はリヤバンパ15に対応する骨格部材であり、車両幅方向に延びている。
【0014】
第2の仕切壁32は車両幅方向に延びるクロスメンバ40を含んでいる。第2の仕切壁32の前側にもクロスメンバ41が設けられている。これらクロスメンバ40,41は、サイドレール21,22間に配置され、それぞれサイドレール21,22に溶接されている。
【0015】
エンジンルーム14の前壁を構成する第3の仕切壁33は、車両幅方向に延在するアウトリガー部材50を含んでいる。アウトリガー部材50はサイドレール21,22の上側に位置する上枠部50aと、一方のサイドレール21の車両外側に位置する側枠部50bと、他方のサイドレール22の車両外側に位置する側枠部50cと、仕切板50dなどを有し、サイドレール21,22に固定されている。側枠部50b,50cは、それぞれサイドレール21,22の車両外側に延びている。
【0016】
図3に示すように、エンジンルーム14にエンジン55や補機類等が収容されている。第2の仕切壁32と第3の仕切壁33との間にトランスミッション56が配置されている。トランスミッション56はエンジン55に結合されている。トランスミッション56の出力軸は、例えばリターダ装置やプロペラシャフトを介して後輪12用の差動機(いずれも図示せず)に接続されている。
【0017】
図4は、エンジンルーム14の内部を車両外側から見た側面図である。前記第3の仕切壁33によって、エンジンルーム14の前壁が構成されている。エンジンルーム14の上壁14aをなすパネル部材によって、エンジンルーム14と車室内空間60とが仕切られている。エンジンルーム14の側壁近傍にラジエータ61が配置されている。エンジン55の上部55aとエンジンルーム14の上壁14aとの間に、冷却用空気を流すことができる空間部62が形成されている。エンジンルーム14の下部には、エンジン55のオイルパン63の下面が臨んでいる。
【0018】
図2と図3に示すように、サイドレール21,22の車両内側の面に第1のエンジンマウント部70が設けられている。第1のエンジンマウント部70は、左右一対のマウント部材71,72を備えている。第1のエンジンマウント部70によって、エンジン55の一端側(車両前側)に位置するトランスミッション56が支持されている。第1のエンジンマウント部70の下方でトランスミッション56の下面から離れた位置に、車両幅方向に延びるサポート部材73がサイドレール21,22間に架け渡されている。このサポート部材73によって、一対のサイドレール21,22の下部どうしが互いに連結されている。
【0019】
サイドレール21,22の後端部21a,22aに、左右一対の前記オフセットフレーム35,36が結合されている。図5〜図7に、オフセットフレーム35,36を含むシャシフレーム20の後部が示されている。オフセットフレーム35,36は、屈曲部80,81と、延出部82,83とを有している。屈曲部80,81は、サイドレール21,22の後端部21a,22aから車両幅方向の外側に向かって屈曲する形状である。延出部82,83は、屈曲部80,81に連続して車両後方に延びている。一方のオフセットフレーム36には、機器取付用のブラケット84が設けられている。
【0020】
サイドレール21,22とオフセットフレーム35,36との連結部の上面側と下面側に、それぞれ補強部材(ガセット)85,86が設けられている。これら補強部材85,86は、サイドレール21,22とオフセットフレーム35,36にわたって溶接されている。
【0021】
サイドレール21,22の後端部21a,22a付近に、第2のエンジンマウント部90が設けられている。第2のエンジンマウント部90は、一方のサイドレール21に固定されたマウント部材91と、他方のサイドレール22に固定されたマウント部材92とを備えている。このエンジンマウント部90によって、エンジン55の他端側(車両後側の端部)が支持されている。
【0022】
オフセットフレーム35,36の屈曲部80,81間にクロスメンバ95が架設されている。クロスメンバ95は車両幅方向に延びている。クロスメンバ95の両端95a,95bは、マウント部材91,92の下方において、締結部材の一例であるボルト100とナット101(図7に示す)によって、サイドレール20,21側のブラケット部材102,103に着脱可能に固定されている。このクロスメンバ95によって、一対のサイドレール21,22の後端部21a,22aの下部どうしが互いに連結されている。
【0023】
オフセットフレーム35,36の後端にリヤエンドメンバ37が固定されている。リヤエンドメンバ37は車両幅方向に延び、リヤバンパ15(図1に示す)の内側に位置している。
【0024】
図3と図5に示すように、シャシフレーム20の後端部には、車両の上方から見て、オフセットフレーム35,36とリヤエンドメンバ37とクロスメンバ95とによって囲まれる略矩形状の機器収容空間110が形成されている。この機器収容空間110に、エンジン55によって駆動される機器111,112(図6に示す)が配置されている。機器111,112の一例はクーラ用ポンプであり、エンジン55によって回転するプーリ113等の動力伝達機構を介して駆動されるようになっている。図4に示すようにエンジンルーム14の上部には、エンジンルーム14の上壁14aとエンジン55の上部55aとの間に、冷却用空気を流すことのできる空間部62が形成されている。
【0025】
このように構成されたシャシフレーム20は、トランスミッション56を含むエンジン55の前側の部分が第1のエンジンマウント部70を介してサイドレール21,22に支持され、エンジン55の後側の部分が第2のエンジンマウント部90を介してサイドレール21,22に支持される。
【0026】
第1のエンジンマウント部70においては、マウント部材71,72の上方から加わる荷重によってサイドレール21,22をねじる方向の力が加わるが、本実施形態ではサイドレール21,22が変形することをサポート部材73によって抑制することができる。
【0027】
第2のエンジンマウント部90においては、第1のエンジンマウント部70よりも大きなエンジン荷重が加わり、しかもサイドレール21,22の後端部21a,22aに、幅の広いオフセットフレーム35,36が設けられているため、エンジン荷重が第2のエンジンマウント部90に負荷されると、サイドレール21,22の後端部21a,22aやオフセットフレーム35,36をねじる方向の力が加わり、変形の原因となる。
【0028】
しかし本実施形態では、マウント部材91,92に固定されたエンジン55を介してサイドレール21,22どうしが互いに結合され、しかもマウント部材91,92の下方に配置されたクロスメンバ95によってサイドレール21,22の下部どうしが互いに結合されているため、第2のエンジンマウント部90付近も曲げやねじりの荷重に対して大きな剛性を発揮することができる。また車両後方から入力するオフセット衝突に対して、リヤエンドメンバ37の端部側が変形することを抑制する上で有効である。
【0029】
しかも、オフセットフレーム35,36がサイドレール21,22の後端部21a,22aから車両幅方向の外側に広がる形状となっているため、マウント部材91,92間の距離(スパン)を大きくすることなく前記機器111,112等をサイドレール21,22の車両幅方向の外側に配置することができる。またオフセットフレーム36に設けられたブラケット84を利用して機器の一部を搭載することもできる。このような理由から、エンジンルーム14の上部に配置される機器の数を減らすことができ、エンジンルーム14の上部に比較的広い冷却空気流通用の空間部62を形成することができ、エンジンルーム14内の温度を下げることができる。
【0030】
また図7に示すように、締結部材として機能するボルト100を取外すことにより、クロスメンバ95をサイドレール21,22側のブラケット部材102,103から外すことができるため、エンジン55の下面側の部品、例えばオイルパン63を脱着する作業などを、クロスメンバ95によって邪魔されることなく行なうことができる。
【0031】
なお本発明を実施するに当たって、サイドレールやオフセットフレーム等のシャシフレームを構成する骨格部材をはじめとして、クロスメンバやリヤエンドメンバなどの発明の構成要素を、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変形して実施できることは言うまでもない。また本発明のシャシフレーム構造は、リヤエンジンバス以外の車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るシャシフレームを備えた車両の後部の斜視図。
【図2】図1に示された車両の後部のシャシフレームの斜視図。
【図3】図2に示されたシャシフレームの平面図。
【図4】図1に示された車両の後部のエンジンルームの内部を示す側面図。
【図5】図2に示されたシャシフレームの後部を上方から見た斜視図。
【図6】図5に示されたシャシフレームの後部を下方から見た斜視図。
【図7】図6に示されたシャシフレームのクロスメンバを取外した状態で下方から見た斜視図。
【符号の説明】
【0033】
10…車両
11…車体
14…エンジンルーム
15…リヤバンパ
20…シャシフレーム
21,22…サイドレール
35,36…オフセットフレーム
37…リヤエンドメンバ
80,81…屈曲部
82,83…延出部
90…エンジンマウント部
91,92…マウント部材
95…クロスメンバ
100…ボルト(締結部材)
110…機器収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延在し、該車両の幅方向に間隔を有して略平行に配置された左右一対のサイドレールと、
前記一対のサイドレールの車両前後方向の後端部に設けられ、車両幅方向の外側に向かって屈曲する屈曲部および該屈曲部に連続して車両後方に延びる延出部を有する左右一対のオフセットフレームと、
前記一対の屈曲部間に架設されて車両幅方向に延び、両端がそれぞれ締結部材によって前記一対のサイドレールに固着されるクロスメンバと、
前記一対のオフセットフレームの後端に固定され車両幅方向に延びるリヤエンドメンバとを有し、
車両の上方から見て前記オフセットフレームと前記クロスメンバと前記リヤエンドメンバとによって囲まれる機器収容空間を有していることを特徴とする車両のシャシフレーム構造。
【請求項2】
前記一対のサイドレールのそれぞれの後端部にエンジンを支持するマウント部材が設けられ、これら一対のマウント部材の下方に前記クロスメンバの両端が前記締結部材によって着脱可能に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のシャシフレーム構造。
【請求項3】
前記機器収容空間に、前記エンジンによって駆動される機器が配置され、前記エンジンルーム内には該エンジンルームの上壁と前記エンジンの上部との間に、冷却用空気を流すことのできる空間部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両のシャシフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149752(P2010−149752A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331216(P2008−331216)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】