説明

車両のシート装置

【課題】シート装置の不使用時などに、シート装置のシートをコンパクトな収納状態にするための作業が容易にできるようにする。
【解決手段】車両のシート装置は、着座可能な通常姿勢から上方に向かって往、復回動A,B可能となるよう車体2に枢支されるシート11の着座部12と、着座部12に回動C,D可能に枢支され、回動端部が車体2に当接して着座部12を通常姿勢に保つよう支持する脚部16と、往回動Aにより起立姿勢にした着座部12を車体2に係脱可能に係止する係止具30とを備える。係止具30が、車体2に形成される係止部31と、脚部16に形成される被係止部32とを備える。起立姿勢にした着座部12に沿うよう脚部16を下方回動Eさせたとき、脚部16と共に回動する被係止部32が係止部31に係止されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座可能な通常姿勢のシートの着座部を起立姿勢にさせて、このシートをコンパクトな収納状態にできるようにした車両のシート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両のシート装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両のシート装置は、着座可能な通常姿勢から上方に向かって往、復回動可能となるよう車体に枢支されるシートの着座部と、この着座部に回動可能に枢支され、その回動端部が車体に当接して上記着座部を上記通常姿勢に保つよう支持する脚部と、上記往回動により起立姿勢にした着座部を車体に係脱可能に係止する係止具とを備えている。
【0003】
そして、上記シートの不使用時などに、このシートをコンパクトな収納状態にさせようとする時には、まず、上記着座部を往回動させて起立姿勢にし、かつ、このように起立姿勢にさせた着座部に沿うよう上記脚部を下方回動させる。次に、上記起立姿勢にした着座部を上記係止具により車体に係止させて車体に支持させる。すると、不使用時のシートをコンパクトな収納状態にさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−100629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の技術における係止具は、上記着座部や脚部とは別個に設けられたバンドで構成されている。このため、シートを収納状態にさせる時には、前記したように、まず、着座部を往回動させると共に上記脚部を下方回動させる、という回動作業に加えて、上記往回動により起立姿勢にした着座部を上記バンドにより車体に係止する、という係止作業も必要とされる。よって、上記シートの収納作業は煩雑となりがちである。
【0006】
一方、上記シートの通常使用時には、不要となる上記バンドは車体に掛吊されて収納されるが、このバンドは、車両の走行により揺れ動きがちとなる。このため、このバンドが乗員の邪魔になるおそれがあり、また、揺れ動くバンドにより、車両の外観上の見栄えが低下したり、揺れ動くバンドが車体に衝突することにより、無用な騒音が発生したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、シート装置の不使用時などに、このシート装置のシートをコンパクトな収納状態にするための作業が容易にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、シート装置の構成部品が乗員の邪魔にならないようにし、かつ、車体の見栄えが良好に保たれると共に、無用な騒音の発生が防止されるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、着座可能な通常姿勢から上方に向かって往、復回動A,B可能となるよう車体2に枢支されるシート11の着座部12と、この着座部12に回動C,D可能に枢支され、その回動端部が車体2に当接して上記着座部12を上記通常姿勢に保つよう支持する脚部16と、上記往回動Aにより起立姿勢にした着座部12を車体2に係脱可能に係止する係止具30とを備えた車両のシート装置において、
上記係止具30が、車体2に形成される係止部31と、上記脚部16に形成される被係止部32とを備え、上記起立姿勢にした着座部12に沿うよう上記脚部16を下方回動Eさせたとき、この脚部16と共に回動Fする上記被係止部32が上記係止部31に係止されるようにしたことを特徴とする車両のシート装置である。
【0009】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果は、次の如くである。
【0011】
請求項1の発明は、着座可能な通常姿勢から上方に向かって往、復回動可能となるよう車体に枢支されるシートの着座部と、この着座部に回動可能に枢支され、その回動端部が車体に当接して上記着座部を上記通常姿勢に保つよう支持する脚部と、上記往回動により起立姿勢にした着座部を車体に係脱可能に係止する係止具とを備えた車両のシート装置において、
上記係止具が、車体に形成される係止部と、上記脚部に形成される被係止部とを備え、上記起立姿勢にした着座部に沿うよう上記脚部を下方回動させたとき、この脚部と共に回動する上記被係止部が上記係止部に係止されるようにしている。
【0012】
このため、上記シートを着座可能な状態からコンパクトな収納状態にしようとするときには、まず、上記着座部と脚部とのうち、少なくとも脚部を把持して、これら着座部と脚部とを全体的に往回動させる。そして、上記着座部を起立姿勢にしたとき、この着座部に沿うよう上記脚部を下方回動させれば、上記被係止部が係止部に自動的に係止されて上記脚部を介し着座部が車体に支持される。また、この際、上記脚部はその自重により上記のように下方回動した状態が維持されるため、上記係止具の係止部への被係止部の係止状態が維持される。つまり、上記着座部は起立姿勢で車体に支持されると共に、この支持が維持されて、上記シートはコンパクトな収納状態とされる。
【0013】
よって、シート装置の不使用時などに、このシート装置のシートをコンパクトな収納状態にさせることは、上記シートの着座部と脚部とを全体的に往回動させて上記着座部を起立姿勢にすることと、脚部の下方回動とにより達成されることから、上記シートをコンパクトな収納状態にするための作業は、容易かつ迅速にできる。
【0014】
また、上記したシートの収納作業を容易にさせる上記係止具は、車体に形成される係止部と、シートの脚部に形成される被係止部とを構成要素とするものであって、これら係止部と被係止部とはいずれもコンパクトに形成でき、かつ、ある程度以上の剛性を有するものであることから、上記のようにシートの収納作業を容易にした場合でも、上記係止具が乗員の邪魔になったり、上記係止具により車体の見栄えが低下したり、また、係止具の揺れ動きなどにより無用な騒音が発生したりすることは、それぞれ防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】側面図である。
【図2】シートが着座可能な通常姿勢である場合の斜視図である。
【図3】シートを起立姿勢とした場合の斜視図である。
【図4】係止具の係止状態の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の車両のシート装置に関し、シート装置の不使用時などに、このシート装置のシートをコンパクトな収納状態にするための作業が容易にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、シート装置の構成部品が乗員の邪魔にならないようにし、かつ、車体の見栄えが良好に保たれると共に、無用な騒音の発生が防止されるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0017】
即ち、車両のシート装置は、着座可能な通常姿勢から上方に向かって往、復回動可能となるよう車体に枢支されるシートの着座部と、この着座部に回動可能に枢支され、その回動端部が車体に当接して上記着座部を上記通常姿勢に保つよう支持する脚部と、上記往回動により起立姿勢にした着座部を車体に係脱可能に係止する係止具とを備える。上記係止具は、車体に形成される係止部と、上記脚部に形成される被係止部とを備える。上記起立姿勢にした着座部に沿うよう上記脚部を下方回動させたとき、この脚部と共に回動する上記被係止部が上記係止部に係止されるようにする。
【実施例】
【0018】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0019】
図1,2において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0020】
上記車両1の車体2の内部が車室3とされている。上記車体2は、上記車室3の下面を形成する板金製フロアパネル6と、上記車室3の後面を形成する板金製の後壁部7とを備えている。
【0021】
上記車室3には、乗員用のシート装置10が設けられ、このシート装置10は、乗員を前向きの姿勢で着座可能とさせるシート11を備えている。このシート11は、乗員を着座させる着座部12と、この着座部12に着座した乗員を背もたれさせる背もたれ部13とを備えている。
【0022】
上記着座部12は、ほぼ水平に延びて着座可能とされる通常姿勢(図1,2)から、後上方に向かって往、復回動A,B可能となるよう車体2の後壁部7に左右一対の枢支具14,14により枢支されている。一方、上記背もたれ部13は、上記着座部12よりも上方かつ後方に配置されて、上記車体2の後壁部7の上部に取り付けられている。
【0023】
車体2の側面視(図1)で、上記着座部12の前後方向の中途部から前下方に向かって延び、上記着座部12を上記通常姿勢に保つようこの着座部12を車体2のフロアパネル6上に支持する脚部16が設けられている。この脚部16は、上記姿勢から前方に向かって往、復回動C,D可能となるよう上記着座部12に左右一対の他の枢支具17,17により枢支されている。
【0024】
具体的には、上記脚部16は、一本のパイプ材を屈曲させることにより、車体2の正面視でU字形状となるよう形成されている。そして、上記脚部16の左右各上端部が上記各他の枢支具17により上記着座部12の左右各側部に枢支されている。
【0025】
上記脚部16の左右各上端部からそれぞれ後方に向かって突出する突出体20が設けられる。これら各突出体20は上記着座部12の左右各外側方近傍に配置されている。上記各突出体20は車体2の幅方向で互いに離れて対面する内、外側板21,22と、これら内、外側板21,22の各上端縁部同士を一体的に結合する上面板23とを備えて、前後方向の各部横断面が倒立U字形状とされている。
【0026】
上記各突出体20の内側板21の下端縁部にそれぞれ切り欠き26が形成され、一方、上記着座部12の左右各外側面にそれぞれストッパ突起27が突設され、上記各切り欠き26が各ストッパ突起27にそれぞれ係合している。この係合により、上記突出体20の下方回動が阻止されて、上記脚部16は、それ以上の往回動Cが阻止されている。そして、このように往回動Cが阻止された脚部16の回動端部(下端部)が上記車体2のフロアパネル6に当接することにより、上記着座部12は上記通常姿勢を保つよう上記脚部16に支持されている。
【0027】
図1中二点鎖線と図3とで示すように、上記着座部12の往回動Aにより、この着座部12を起立姿勢にしたとき、この着座部12は前記背もたれ部13の前面に重なり合うこととされている。
【0028】
全図において、上記起立姿勢にした着座部12を車体2の後壁部7に係脱可能に係止する係止具30が設けられている。この係止具30は、上記背もたれ部13の左右各外側方近傍で車体2の後壁部7に形成される左右一対の係止部31,31と、上記脚部16の基部に形成される左右一対の被係止部32,32とを備えている。上記各係止部31は、上記後壁部7に締結具34により固着されるフック形状の係止突起35とされ、上記各被係止部32は、上記突出体20の上面板23に貫設される係止孔36とされる。
【0029】
図1中二点鎖線と図3中実線とで示すように、着座部12を往回動Aさせて起立姿勢にしたとき、この着座部12と共に往回動Aした上記脚部16を図1中一点鎖線と図3中一点鎖線とで示す位置から、上記起立姿勢にした着座部12の下端縁部に沿うよう下方回動E(前記復回動Dに相当)させたとき、図1中二点鎖線と図3中実線と図4とで示すように、この脚部16と共に回動Fする突出体20の被係止部32(係止孔36)が上記係止部31(係止突起35)に嵌合して係脱可能に係止される。また、この際、上記脚部16はその自重により上記のように下方回動Eした状態が維持される。
【0030】
そして、上記係止部31への被係止部32の係止とその維持とにより、上記着座部12は、上記背もたれ部13の前面に重ね合わされた起立姿勢のままに車体2に支持されて、上記シート11がコンパクトな収納状態とされる。なお、この収納状態から、上記脚部16と着座部12とを上記したのとは逆方向に順次回動させれば、上記シート11は、図1,2中実線で示すように、元の着座可能な状態に戻る。
【0031】
上記構成によれば、シート11を着座可能な状態からコンパクトな収納状態にしようとするときには、まず、上記着座部12と脚部16とのうち、少なくとも脚部16を把持して、これら着座部12と脚部16とを全体的に往回動A,Cさせる。そして、上記着座部12を起立姿勢にしたとき、この着座部12に沿うよう上記脚部16を下方回動Eさせれば、上記被係止部32が係止部31に自動的に係止されて上記脚部16を介し着座部12が車体2の後壁部7に支持される。また、この際、上記脚部16はその自重により上記のように下方回動Eした状態が維持されるため、上記係止具30の係止部31への被係止部32の係止状態が維持される。つまり、上記着座部12は起立姿勢で車体2に支持されると共に、この支持が維持されて、上記シート11はコンパクトな収納状態とされる。
【0032】
よって、シート装置10の不使用時などに、このシート装置10のシート11をコンパクトな収納状態にさせることは、上記シート11の着座部12と脚部16とを全体的に往回動A,Cさせて上記着座部12を起立姿勢にすることと、脚部16の下方回動Eとにより達成されることから、上記シート11をコンパクトな収納状態にするための作業は、容易かつ迅速にできる。
【0033】
また、上記したシート11の収納作業を容易にさせる上記係止具30は、車体2に形成される係止部31と、シート11の脚部16に形成される被係止部32とを構成要素とするものであって、これら係止部31と被係止部32とはいずれもコンパクトに形成でき、かつ、ある程度以上の剛性を有するものであることから、上記のようにシート11の収納作業を容易にした場合でも、上記係止具30が乗員の邪魔になったり、上記係止具30により車体2の見栄えが低下したり、また、係止具30の揺れ動きなどにより無用な騒音が発生したりすることは、それぞれ防止される。
【0034】
なお、以上は図示の例によるが、シート11の着座部12を枢支具14により枢支する車体2は、その側壁部であってもよい。また、上記突出体20およびストッパ突起27と、係止具30とは、上記着座部12と脚部16との左右一側部のみに設けてもよい。また、上記係止具30における係止部31の係止突起35と被係止部32の係止孔36とは、図例とは逆に設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 車両
2 車体
3 車室
6 フロアパネル
7 後壁部
10 シート装置
11 シート
12 着座部
13 背もたれ部
14 枢支具
16 脚部
17 枢支具
20 突出体
26 切り欠き
27 ストッパ突起
30 係止具
31 係止部
32 被係止部
A 往回動
B 復回動
C 往回動
D 復回動
E 下方回動
F 回動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座可能な通常姿勢から上方に向かって往、復回動可能となるよう車体に枢支されるシートの着座部と、この着座部に回動可能に枢支され、その回動端部が車体に当接して上記着座部を上記通常姿勢に保つよう支持する脚部と、上記往回動により起立姿勢にした着座部を車体に係脱可能に係止する係止具とを備えた車両のシート装置において、
上記係止具が、車体に形成される係止部と、上記脚部に形成される被係止部とを備え、上記起立姿勢にした着座部に沿うよう上記脚部を下方回動させたとき、この脚部と共に回動する上記被係止部が上記係止部に係止されるようにしたことを特徴とする車両のシート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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