説明

車両のステアリングギヤボックス取付構造

【課題】ステアリングギヤボックスとスタビライザの取付剛性を共に高めて高い操縦安定性と乗心地とを確保することができる車両のステアリングギヤボックス取付構造を提供すること。
【解決手段】サスペンションフレーム2にボルト9によって取り付けられるステアリングギヤボックス4と、前記サスペンションフレーム2にスタビライザブラケット11を用いて取り付けられるスタビライザ5を備える車両の前記ステアリングギヤボックス4の取付構造として、一端が前記ステアリングギヤボックス4とこれを固定するボルト9の頭部9aとの間に挟み込まれた状態で共締めによってステアリングギヤボックス4に固定され、他端が前記スタビライザブラケット11に固定された連結部材10を設け、該連結部材10によって前記ステアリングギヤボックス4を固定するボルト9と前記スタビライザブラケット11とを連結する構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵系を構成するステアリングギヤボックスのサスペンションフレームへの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両前部のエンジンルームの下方に配置されるサスペンションフレームは、左右のサスペンションアームを上下に揺動可能に支持するとともに、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のエプロンサイドメンバを連結して車体の剛性を高めるための部材であるが、このサスペンションフレームには操舵系を構成するステアリングギヤボックスと車体のローリングを抑制するためのスタビライザが取り付けられている。ここで、ステアリングギヤボックスとスタビライザのサスペンションフレームへの取り付け構造の従来例を図9に示す。
【0003】
即ち、図9はステアリングギヤボックスとスタビライザの従来の取付構造を示すフロントサスペンションの部分斜視図であり、同図に示すように、車幅方向に配されたステアリングギヤボックス104の左右の2箇所(図9には右側の1箇所のみ図示)は、これに形成された円筒状のボス108に上方から挿通するボルト109によってサスペンションフレーム102上に固定されている。
【0004】
又、上記ステアリングギヤボックス104と平行に車幅方向に配されたスタビライザ105の左右の2箇所(図9には右側の1箇所のみ図示)は、各2本のボルト115によってサスペンションフレーム102に取り付けられたスタビライザブラケット111によってサスペンションフレーム102上に固定されている。
【0005】
ところで、特許文献1には、エンジンをマウントするロールマウントブラケットとステアリングギヤボックスとを共締めすることによって、ドライバがステアリングホイールを操舵したときのステアリングギヤボックスの固定ボルトの倒れを抑制する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−203327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図9に示す従来の取付構造では、ステアリングギヤボックス104とスタビライザ105はボルト109とスタビライザブラケット111によってサスペンションフレーム102にそれぞれ独立に固定されていた。このため、それらの取付剛性が十分でない場合、ドライバによるステアリングホイールの操舵操作によって発生する操舵輪からの反力を受けるボルト109に倒れが発生する可能性があった。このようにボルト109に倒れが発生すると、ステアリングホイールの切り始めの反応(応答)が鈍くなり、ステアリングホイールの回動量(操舵量)に対する操舵輪の転舵量が不足し、車両の操縦性能が向上できないという問題が発生する。
【0008】
又、スタビライザ105の取付剛性が不足する場合には、該スタビライザ105の本来の機能が十分発揮されず、車両のロール方向の動きを抑制して高い乗心地と操縦安定性を達成することができないという問題が発生する。
【0009】
更に、特許文献1において提案された構成では、ステアリングギヤボックスを固定するボルトの倒れは抑制されるものの、ステアリングギヤボックスとスタビライザの取付剛性を共に高めることができないという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ステアリングギヤボックスとスタビライザの取付剛性を共に高めて高い操縦安定性と乗心地とを確保することができる車両のステアリングギヤボックス取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、サスペンションフレームにボルトによって取り付けられるステアリングギヤボックスと、前記サスペンションフレームにスタビライザブラケットを用いて取り付けられるスタビライザを備える車両の前記ステアリングギヤボックスの取付構造として、一端が前記ステアリングギヤボックスとこれを固定するボルトの頭部との間に挟み込まれた状態で共締めによってステアリングギヤボックスに固定され、他端が前記スタビライザブラケットに固定された連結部材を設け、該連結部材によって前記ステアリングギヤボックスを固定するボルトと前記スタビライザブラケットとを連結する構成を採用したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ステアリングギヤボックスと前記スタビライザを前記サスペンションフレームに車幅方向に沿って略平行に固定し、前記スタビライザブラケットの上部に前記連結部材との連結部を形成し、該連結部を前記スタビライザの軸中心に対して前記ステアリングギヤボックス側にオフセットさせたことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記スタビライザブラケットの上面を前記連結部材の取付面とし、該取付面にスタッドボルトを前記ステアリングギヤボックスを固定するボルトと平行に立設して前記連結部を構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記ステアリングギヤボックスの固定部の上面と前記スタビライザブラケットの取付面を高さの異なる平行な面としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、ステアリングギヤボックスをサスペンションフレームに固定するボルトの頭部を連結部材によってスタビライザブラケットと連結したため、ボルトの倒れが抑制され、ステアリングギヤボックスの取付剛性が高められ、操舵時のステアリングギヤボックスの逃げ(操舵時のラック軸やタイロッドの動き方向と反対方向の動き)が減少して車両の操縦性能の向上が図られる。又、スタビライザブラケットが連結部材によってステアリングギヤボックスと連結されるため、該スタビライザブラケットによってサスペンションフレームに取り付けられるスタビライザの取付剛性も高められ、該スタビライザの機能が十分発揮されて車両のロール方向の動きが効果的に抑制され、車両に高い乗心地と操縦安定性が確保される。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、スタビライザブラケットの上部に形成された連結部材との連結部をスタビライザの軸中心に対してステアリングギヤボックス側にオフセットさせたため、連結部材のスタビライザブラケットとの連結部をステアリングギヤボックスに近接配置することができ、ステアリングギヤボックスの取付剛性を連結部材によって容易に高めることができる。又、連結部材の長さを短くすることができるため、ステアリングギヤボックスを固定するボルトの倒れを連結部材によって効果的に抑制することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、スタビライザブラケットの上面を連結部材の取付面とし、該取付面にスタッドボルトを立設して連結部を構成したため、連結部材のステアリングギヤボックスとスタビライザブラケットへの取付方向が同方向となり、連結部材の取付作業性が高められる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、ステアリングギヤボックスの固定部の上面とスタビライザブラケットの取付面を高さの異なる平行な面としたため、スタビライザブラケットの取付面に発生する連結部材のボルトの倒れ方向の移動に対抗する力が大きくなり、この力によってボルトの倒れを一層効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るステアリングギヤボックス固定構造を示す車両のフロントサスペンションの斜視図である。
【図2】本発明に係るステアリングギヤボックス固定構造を示す部分平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】(a),(b)はスタビライザブラケットの斜視図である。
【図5】連結部材の斜視図である。
【図6】連結部材の平面図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】図6のC−C線断面図である。
【図9】ステアリングギヤボックスとスタビライザの従来の取付構造を示すフロントサスペンションの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明に係るステアリングギヤボックス固定構造を示す車両のフロントサスペンションの斜視図、図2は同ステアリングギヤボックス固定構造を示す部分平面図、図3は図2のA−A線断面図、図4(a),(b)はスタビライザブラケットの斜視図、図5は連結部材の斜視図、図6は同連結部材の平面図、図7は図6のB−B線断面図、図8は図6のC−C線断面図である。
【0022】
図1に示す車両のフロントサスペンション1は、エンジンルーム(不図示)の下方に配置されるサスペンションフレーム2を備えている。このサスペンションフレーム2は、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のエプロンサイドメンバ(不図示)を連結して車体の剛性を高めるための部材であって、その左右両端部にはサスペンションアーム(不図示)が上下揺動可能に支持されている。
【0023】
上記サスペンションフレーム2は、板金のプレス成形品であって、その上面の左右には取付座2aがそれぞれ形成されており、これらの取付座2aには操舵系を構成するステアリングギヤボックス4と車体のローリングを抑制するためのスタビライザ5がそれぞれ取り付けられている。取付座2aには、ステアリングギヤボックス4を固定する不図示のボルト挿通孔とボルト挿通孔部分の下面に溶着されたナット21(図3参照)及びスタビライザ5を固定する取付座2aの前後に形成されたボルト挿通孔16(図3参照)とボルト挿通孔16部分の下面に溶着されたナット17(図3参照)が配置されている。そして、取付座2aのステアリングギヤボックス4の固定部とスタビライザ5の固定部は、ステアリングギヤボックス4の固定部を前にした状態で前後に配置されるとともに、これら固定部は、取付座2aにおいて略同一面として形成されている。
【0024】
上記ステアリングギヤボックス4は、サスペンションフレーム2の上部に車幅方向に配されており、そのピニオン軸6には不図示のユニバーサルジョイントによってステアリングシャフトが連結されており、ステアリングシャフトの上端には不図示のステアリングホイールが結着されている。そして、ステアリングギヤボックス4の内部にはピニオン軸6に噛合するラック軸7(図3参照)が内蔵されており、ドライバがステアリングホイールを転舵操作すると、その回転はステアリングシャフトとユニバーサルジョイントを介してピニオン軸6に伝達され、該ピニオン軸6が回転する。すると、このピニオン軸6の回転によってラック軸7が左右方向に移動し、このラック軸7の移動がタイロッドを介してナックルアーム(不図示)に伝達されることによって操舵輪である前輪の向きが変更される。
【0025】
而して、ステアリングギヤボックス4の左右の2箇所(サスペンションフレーム2の左右の取付座2aに対応する2箇所)にはブッシュが圧入保持された円筒状のボス8が垂直に形成されており、ステアリングギヤボックス4は、円筒状のボス8(ブッシュ)がボルト9による連結部材10との共締めによって左右の2箇所がサスペンションフレーム2の取付座2aに連結部材10と共に固定される。尚、連結部材10の詳細については後述する。
【0026】
又、前記スタビライザ5は、金属棒の左右両端部を折り曲げることによって構成され、その中間部が前記ステアリングギヤボックス4と平行となるようサスペンションフレーム2上を車幅方向に配されている。そして、このスタビライザ5の左右両端は、不図示のサスペンションアーム等に取り付けられており、中間の左右2箇所(サスペンションフレーム2の左右の取付座2aに対応する2箇所)は、スタビライザブラケット11によってサスペンションフレーム2の取付座2aに固定されている。
【0027】
ここで、スタビライザブラケット11の構成の詳細を図4(a),(b)に基づいて以下に説明する。尚、スタビライザブラケット11の構成は左右で同じである。
【0028】
左右の各スタビライザブラケット11は、板金のプレス成形品である2部材11A,11Bを溶接によって接合一体化して構成されており、一方の部材11Aは、中央に前記スタビライザ5が挿通するための半円筒部11aを有する鞍型状に成形され、半円筒部11aの両側から半円筒部11aの反対側に水平に延びて取付座2aに重ねられるフランジ11bが形成されている。各フランジ11bには円孔状のボルト挿通孔12がそれぞれ形成されている。
【0029】
又、他方の部材11Bは、下方が開口する逆チャンネル状に成形されており、垂直に起立する左右の側壁11cの上端同士を連結する上壁11dは水平な取付面を形成しており、この取付面11dにはスタッドボルト(溶接固定されたボルト)13が垂直に立設されている。そして、左右の側壁11cの後端部(サスペンションフレーム2への取付状態において車両後方に位置する部分)には、上壁11dを有さず後方に向かって下がるよう斜めにカットされた斜面部11c−1が形成されている。尚、スタビライザブラケット11の取付面11dとこれに立設されたスタッドボルト13は、前記連結部材10を連結するための連結部を構成している。
【0030】
左右の各スタビライザブラケット11は、板金のプレス成形品である2部材11A,11Bを溶接によって接合一体化して構成されているが、上壁11dは部材11Aの半円筒部11aよりも上方に配置されている。左右の側壁11cにはそれぞれ半円筒部11aが入り込む切欠きが形成され、左右の側壁11cは半円筒部11aが延びる方向に並んで半円筒部11aが延びる方向に垂直な状態で配置され、それぞれ切欠き部分で半円筒部11aに溶接されている。又、斜面部11c−1の下端は、車両の後方側となるフランジ11bのボルト挿通孔12よりも車両の後方まで延設されており、当該フランジ11bに溶接されている。
【0031】
而して、左右の各スタビライザブラケット11は、部材11Aの半円筒部11aにスタビライザ5の中間部をブッシュ14(図3参照)を介して通した状態(スタビライザ5を上から押さえ込んだ状態)で、サスペンションフレーム2の左右の取付座2a(図1参照)に載せ、フランジ11bに形成されたボルト挿通孔12に上方から挿通するボルト15をサスペンションフレーム2の取付座2aの前後に形成されたボルト挿通孔16(図3参照)に通し、サスペンションフレーム2の下面のボルト挿通孔16の周りに溶着されたナット17(図3参照)にボルト15をねじ込むことによってサスペンションフレーム2の取付座2aに固定され、このスタライザブラケット11によってスタビライザ5の中間部の左右2箇所が図1に示すようにサスペンションフレーム2上に固定される。
【0032】
次に、前記連結部材10の構成の詳細を図5〜図8に基づいて以下に説明する。
【0033】
連結部材10は、板金のプレス成形品であって、上部材10Aと下部材10Bを溶接によって接合一体化して構成されている。ここで、上部材10Aは、その後端部(サスペンションフレーム2への取付状態において車両後方となる部分)が下方に向かって折り曲げられたカバー部10aを構成しており、このカバー部10aは、前記スタビライザブラケット11の左右の側壁11cに形成された斜面部11c−1の上端縁の傾斜と同角度で折り曲げられている。
【0034】
又、上部材10Aの前端部(サスペンションフレーム2への取付状態において車両前方となる部分)には水平な取付面10bが形成されており、この水平な取付面10bには前後に長孔状のボルト挿通孔18が形成されている。上部材10Aの前端部とその後端部との間は、取付面10bよりもやや上方に隆起して膨出部が形成されており、この隆起した部分に周縁が下方に折り曲げられた円孔19が形成されている。そして、上部材10Aの幅方向両端縁10cは下方に向かって直角に折り曲げられており、上部材10Aの内幅寸法(幅方向両端縁10c間の内寸法)はスタビライザブラケット11の幅寸法(詳細には、左右の側壁11c同士の外寸法)よりも若干大きく設定されている。
【0035】
他方、下部材10Bは、上部材10Aの前記円孔19を下方から覆うように上部材10Aの幅方向両端縁10c間の下面に溶接によって結着されて、取付面10bと平行でスタビライザブラケット11への取付面を構成しており、その一部には上部材10Aの円孔19の中心に開口する小径のボルト挿通孔20が形成されている。
【0036】
而して、連結部材10は、その長手方向を車両の前後方向となるように配置され、その前端部がステアリングギヤボックス2のボス8の上面に当てられ、この先端部に形成されたボルト挿通孔18とボス8に組み込まれた不図示のブッシュに上方から挿通するボルト9をサスペンションフレーム2の取付座2aに形成された不図示のボルト挿通孔に通し、サスペンションフレーム2の下面に溶着されたナット21(図3参照)にボルト9をねじ込むことによって、図2及び図3に示すようにステアリングギヤボックス4との共締めによってサスペンションフレーム2に固定される。即ち、連結部材10の前端部は、図3に示すようにステアリングギヤボックス4のボス8とこれを固定するボルト9の頭部9aとの間に挟み込まれた状態でボルト9による共締めによってステアリングギヤボックス4のボス8に固定される。
【0037】
又、連結部材10は、その後端部がスタビライザブラケット11に上方から嵌め込まれて被せられる。すると、スタビライザブラケット11に立設されたスタッドボルト13が連結部材10の下部材10Bに形成されたボルト挿通孔20に挿通され(図3参照)、該スタッドボルト13に螺合するナット22を締め付けることによって、連結部材10がスタビライザブラケット11に取り付けられる。ここで、図3に示すように、スタビライザブラケット11の連結部を構成するスタッドボルト13は、スタビライザ5の中間部の軸中心に対してステアリングギヤボックス4側(車両前方)に図示のeだけオフセットされている。又、スタビライザブラケット11の取付面11dは、半円筒部11a高い位置でサスペンションフレーム2の取付座2aと平行な面に形成されている。そして、ステアリングギヤボックス4のボス8の上面(取付面)とスタビライザブラケット11の取付面11dとは高さの異なる平行な面として構成されており、ボス8の取付面の方がスタビライザブラケット11の取付面11dよりも図3に示すhだけ高く設定されている。
【0038】
尚、連結部材10がスタビライザブラケット11に取り付けられると、連結部材10の後端部に形成されたカバー部10aがスタビライザブラケット11の後部(詳細には、斜面部11c−1の上端縁)を上方から覆い隠すため、後方に配置された不図示のダッシュパネルのエンジンルーム側の面に沿って配索された不図示の配管やハーネスがスタビライザブラケット11の角部に接触して損傷する等の不具合の発生が防がれる。又、連結部材10は上部材10Aと下部材10Bとで二重構造として構成されているため、下部材10Bのボルト挿通孔20に挿通するスタッドボルト13やこれに螺着されるナット22の周囲が上部材10A(詳細には膨出部)によって覆い隠され、これらが外部に突出することがない。
【0039】
以上のように、本実施の形態では、ステアリングギヤボックス4をサスペンションフレーム2に固定するボルト9の頭部9aが連結部材10によってスタビライザブラケット11に連結されるため、ボルト9がサスペンションフレーム2と連結部材10によって所謂両持ち状態で支持されることとなり、その結果、該ボルト9の倒れが抑制され、ステアリングギヤボックス4の取付剛性が高められて車両の操舵性能の向上が図られる。特に、本実施の形態では、スタビライザブラケット11の上部に形成された連結部材10との連結部を構成するスタッドボルト13をスタビライザ5の中間部の軸中心に対してステアリングギヤボックス4側(車両前方)に図3に示すeだけオフセットさせたため、連結部材10のスタビライザブラケット11との連結部をステアリングギヤボックス4に近接配置することができ、ステアリングギヤボックス4の取付剛性を連結部材10によって容易に高めることができる。又、連結部材10の長さを短くすることができるため、ステアリングギヤボックス4を固定するボルト9の倒れを連結部材10によって効果的に抑制することができる。
【0040】
そして、スタビライザブラケット11が連結部材10によってステアリングギヤボックス4と連結されるため、該スタビライザブラケット11によってサスペンションフレーム2に取り付けられるスタビライザ5の取付剛性も高められ、該スタビライザ5の機能が十分発揮されて車両のロール方向の動きが効果的に抑制され、高い乗心地と操縦安定性が確保される。
【0041】
又、本実施の形態では、スタビライザブラケット11の上面を連結部材10の取付面11dとし、該取付面11dにスタッドボルト13を立設して連結部を構成したため、連結部材10のステアリングギヤボックス4とスタビライザブラケット11への取付方向が同方向となり、連結部材10の取付作業性が高められる。
【0042】
更に、本実施の形態では、ステアリングギヤボックス4のボス8の上面とスタビライザブラケット11の取付面11dを図3に示すhだけ高さの異なる平行な面としたため、スタビライザブラケット11の取付面11dに発生する連結部材10のボルト9の倒れ方向の移動に対抗する力が大きくなり、この力によってボルト9の倒れを一層効果的に抑制することができるという効果が得られる。
【0043】
尚、以上の実施の形態では、連結部材10をスタビライザブラケット11とは独立した部材として構成したが、両者を一体に形成しても良い。この場合、連結部材10は、先端部にボルト挿通孔18を有する突出部としてスタビライザブラケット11に一体に形成される。
【符号の説明】
【0044】
1 フロントサスペンション
2 サスペンションフレーム
4 ステアリングギヤボックス
5 スタビライザ
8 ボス
9 ボルト
9a ボルトの頭部
10 連結部材
11 スタビライザブラケット
11d スタビライザブラケットの取付面
13 スタッドボルト
18 連結部材のボルト挿通孔
19 連結部材の円孔
20 連結部材のボルト挿通孔
22 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションフレームにボルトによって取り付けられるステアリングギヤボックスと、前記サスペンションフレームにスタビライザブラケットを用いて取り付けられるスタビライザを備える車両の前記ステアリングギヤボックスの取付構造であって、
一端が前記ステアリングギヤボックスとこれを固定するボルトの頭部との間に挟み込まれた状態で共締めによってステアリングギヤボックスに固定され、他端が前記スタビライザブラケットに固定された連結部材を設け、該連結部材によって前記ステアリングギヤボックスを固定するボルトと前記スタビライザブラケットとを連結したことを特徴とする車両のステアリングギヤボックス取付構造。
【請求項2】
前記ステアリングギヤボックスと前記スタビライザを前記サスペンションフレームに車幅方向に沿って略平行に固定し、前記スタビライザブラケットの上部に前記連結部材との連結部を形成し、該連結部を前記スタビライザの軸中心に対して前記ステアリングギヤボックス側にオフセットさせたことを特徴とする請求項1記載の車両のステアリングギヤボックス取付構造。
【請求項3】
前記スタビライザブラケットの上面を前記連結部材の取付面とし、該取付面にスタッドボルトを前記ステアリングギヤボックスを固定するボルトと平行に立設して前記連結部を構成したことを特徴とする請求項2記載の車両のステアリングギヤボックス取付構造。
【請求項4】
前記ステアリングギヤボックスの固定部の上面と前記スタビライザブラケットの取付面を高さの異なる平行な面としたことを特徴とする請求項3記載の車両のステアリングギヤボックス取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236532(P2012−236532A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107415(P2011−107415)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】