説明

車両のタイヤ外れ状態検出装置

【課題】締め付けボルトが弛んでタイヤが外れるか否かの状態を事前に検知し、タイヤ外れの前兆が判定されたときにタイヤ外れの前兆の警報を発するとともに、ブレーキを作動させるブレーキ作動制御手段を備えた車両のタイヤ外れ状態検出装置を提供する。
【解決手段】車両のタイヤ外れ状態検出装置において、ドラムブレーキ101のブレーキドラム3に取り付けられて、該ブレーキドラムの振動周波数を検出する振動センサ10と、振動センサからの振動周波数の検出値が入力され、振動周波数のスペクトル解析によってブレーキドラムの締め付けボルトの緩みによって生じる特定の振動周波数のスペクトル強度を設定閾値と比較して、該閾値以上に上昇した場合にタイヤ外れの前兆と判定するタイヤ外れ判定装置20と、該タイヤ外れ判定装置20でタイヤ外れの前兆が判定されたときに、タイヤ外れの前兆の警報を発する警報装置16、17を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスなどの車両に適用され、ドラムブレーキを備えた車両であって、該車両のタイヤが外れるか否かの状態を検知確認する車両のタイヤ外れ状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バスなどの車両に搭載され、タイヤが外れる状態を検知し、自車ドライバーに警報を発する技術としては、ホイールナットの弛みを検出するものがある。
【0003】
その1つである特許文献1(実開平4−104003号公報)においては、ホイールナットの弛みを検出するもので、環状のホイール弛み検出部材と、該ホイール弛み検出部材を付勢するばねと、マイクロスウィッチと、前記ホイール弛み検出部材の当接によりつれ周りし、前記マイクロスウィッチをオンにするつれ周り部材とを備えている。
【0004】
【特許文献1】実開平4−104003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の技術は、ホイールナットの弛みを検出して、該弛みが発生した場合に警報を出すように構成されているが、ホイールナットの弛みを検出した後の処理にかかるもので、ホイールナットの弛みを事前に検知して警告等を行うものではない。
従って、現在はホイールナットが弛んで、タイヤが外れるか否かの状態のときを検知確認する技術の、提供が臨まれている。
【0006】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、締め付けボルトが弛んでタイヤが外れるか否かの状態を事前に検知し、タイヤ外れの前兆が判定されたときにタイヤ外れの前兆の警報を発するとともに、ブレーキを作動させるブレーキ作動制御手段を備えた車両のタイヤ外れ状態検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる目的を達成するもので、ドラムブレーキを備えた車両であって、該車両のタイヤが外れるか否かの状態を検知確認する車両のタイヤ外れ状態検出装置において、
前記ドラムブレーキのブレーキドラムに取り付けられて該ブレーキドラムの振動周波数を検出する振動センサと、
該振動センサからの振動周波数の検出値が入力され、振動周波数のスペクトル解析によってブレーキドラムの締め付けボルトの緩みによって生じる特定の振動周波数のスペクトル強度を設定閾値と比較して、該閾値以上に上昇した場合にタイヤ外れの前兆と判定するタイヤ外れ判定装置と、
該タイヤ外れ判定装置でタイヤ外れの前兆が判定されたときにタイヤ外れの前兆の警報を発する警報装置を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、好ましくは、前記タイヤ外れ判定装置でタイヤ外れの前兆が判定されたときに前記ドラムブレーキを作動させるブレーキ作動制御手段を備える。
【0009】
また、本発明は、好ましくは、前記タイヤ外れ判定装置にてタイヤ外れの前兆が判定され且つ前記ブレーキ作動制御手段が作動しないときに、前記タイヤ外れ判定装置からのタイヤ外れ状態の判定信号及びブレーキ作動制御手段からのブレーキ不作動の判定信号を双方を受けたとき、該タイヤ外れ状態にあってブレーキ不作動であると判定し、かかる判定に基づく警報を発する第2の警報装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型バス等の車両において、該車両のブレーキドラムに取り付けられて該ブレーキドラムの振動周波数を検出する振動センサによる振動信号のスペクトル解析によって、ブレーキドラムの締め付けボルトの緩みによって生じる特定の振動周波数のスペクトル強度を閾値と比較して、該閾値以上に上昇した場合にタイヤ外れの前兆と判定するタイヤ外れ判定装置を備えるので、前記タイヤ外れ判定装置によって、特定の周数数の振動スペクトルのゲインが閾値を超えたときには、タイヤ外れの前兆であるものと判定し、タイヤ外れの前兆が判定されたときに、タイヤ外れの前兆があるものと判定して、タイヤ外れの前兆の警報を発する警報装置に伝達し、該警報装置は警報を発する。
【0011】
従って、振動センサによる計測結果とタイヤ外れ判定装置における振動周波数スペクトルの解析から、タイヤ外れの前兆の有無を容易に、且つ簡単に検知できる。
これにより、大型バス等の車両において、タイヤ外れの前兆を振動周波数スペクトルの計測結果によって容易に且つ正確に検知できて、タイヤ外れによる重大事故の発生を回避できる。
【0012】
また、本発明は、前記車両において、前記タイヤ外れ判定装置でタイヤ外れの前兆が判定されたときに前記ドラムブレーキを作動させるブレーキ作動制御手段を備えているので、前記タイヤ外れ判定装置でタイヤ外れの前兆が判定されたときには、ブレーキ作動制御手段を作動させて、車両を制動することにより、タイヤ外れの前時期に車両を制動できて重大事故の発生を回避できる。
【0013】
また、本発明は、前記車両において、前記タイヤ外れ判定装置にてタイヤ外れの前兆が判定され且つ前記ブレーキ作動制御手段が作動しないときに、前記タイヤ外れ判定装置からのタイヤ外れ状態の判定信号及びブレーキ作動制御手段からのブレーキ不作動の判定信号の双方を受けたとき、該タイヤ外れ状態にあってブレーキ不作動であると判定し、かかる判定に基づく警報を発する第2の警報装置を備えたので、
タイヤ外れ判定装置にてタイヤ外れの前兆が判定され且つ前記ブレーキ作動制御手段が作動しないときには、該タイヤ外れ判定装置は、タイヤ外れ状態にあるのにブレーキが不作動であるものと判定して、第2の警報装置によって警報を出して、タイヤ外れによる2次的災害の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0015】
図1は、本発明の実施例にかかる車両(バス)のタイヤ外れ状態検出装置のドラムブレーキ周りの全体構成図、図2はタイヤ外れ状態検出装置の制御ブロック図、図3はタイヤ外れ状態検出装置の制御フローチャートである。図4は振動周波数スペクトルの解析結果の1例である。
図1において、100はドラムブレーキ101を備えた車両(例えばバス)で、タイヤ2の内側にブレーキドラム3が設けられ、該ブレーキドラム3の外周面を前記タイヤ2の内側に摺接することにより、車両101にブレーキ15をかけるようになっている。前記ドラムブレーキ101はアクスルハウジング1により車体側に支持され、内周に回転軸4が挿入されている。
前記ブレーキドラム3の締め付けボルト5は、本発明においては、かかる締め付けボルト5が弛んで、タイヤ2の外れ状態を保持しないようにすることを特徴としている。
【0016】
前記ブレーキドラム3の、凹部の内側には、該ブレーキドラム3の振動周波数スペクトルを検出する振動センサ10が固定されている。
該振動センサ10の回線11は、ブレーキドラム3が回転しているため、回転軸4にスリップリング12を介して、回線11から外部のタイヤ外れ判定装置20に接続されている。
該タイヤ外れ判定装置20は、前記ドラムブレーキ101を作動させるブレーキ作動制御手段21に連結され、また2つの警報装置16、17に接続されている。
【0017】
次に、図1、図2、図3、図4に基づき、かかる実施例の作用について説明する。
前記車両(バス)100において、該車両100のブレーキドラム3の内周に取り付けられて該ブレーキドラム3の振動周波数を検出する振動センサ10の検出結果は、タイヤ外れ判定装置20のスペクトル強度比較部21aに入力される。
図2において、タイヤ外れ周波数設定器22には、予め実験等で設定されたタイヤ外れの設定周波数スペクトルfおよびその強度dが記憶されている。
【0018】
該タイヤ外れ周波数設定器22には、図4に示すように、前記ドラムブレーキ101において計測した振動周波数を解析して、前記ブレーキドラム3の締め付けボルト5が弛み、ブレーキドラム3が脱落させた多くの実験例により、ブレーキドラム3の締め付けボルト5が弛みブレーキドラムに生じる振動を解析して、締め付けボルト5が弛んだときの特定の振動周波数スペクトルfが設定されており、さらにそのfにおけるスペクトル強度の閾値dが設定されている。
【0019】
図2において、スペクトル強度比較部21においては、前記振動センサ10によって検出した信号から周波数スペクトルの特定の周波数fにおける強度dと、前記あらかじめ設定された、fにおけるスペクトル強度の閾値dとを比較して、該閾値dを超えたときには、前記のように、ブレーキドラム3の締め付けボルト5が弛み、該締め付けボルト5による締め付け部材等の拘束が弛んだ兆候と判定する。
従って、かかる場合は、前記振動センサ10による振動周波数fのスペクトル強度dが設定値dを超えて上昇している場合には、緩みが生じていると判定する。
【0020】
振動判定部23では、図4のfにおける強度が、dを超えたときに、締め付けボルト5が弛み、タイヤ2外れの前兆であるものと判定する(図3のステップ(1))。
該振動判定部23の判定結果は、つまりタイヤ2外れの前兆であるものとの判定結果は、第1の警報装置17に伝達し、該第1の警報装置17は、タイヤ2外れの前兆であるとの警報を発する(図3のステップ(2))。
【0021】
従って、タイヤ外れ判定装置20における振動判定部23でのスペクトル強度の比較により、締め付けボルト5が弛み、タイヤ2外れの前兆の発生したことを容易に、且つ簡単に検知できる。
これにより、車両(大型バス等)100において、タイヤ2外れの前兆を振動周波数スペクトルの解析結果によって容易に且つ正確に検知できて、タイヤ2の外れによる重大事故の発生を回避できる。
【0022】
また、かかる実施例において、前記タイヤ外れ判定装置20の振動判定部23で、締め付けボルト5が弛み、タイヤ2外れの前兆が判定されたときには、その判定信号を前記ドラムブレーキ101を作動させるブレーキ作動制御手段21に入力する。
従って前記タイヤ外れ判定装置20の振動判定部23で、タイヤ2外れの前兆が判定されたときには、ブレーキ作動制御手段21を介してブレーキ15を作動させて、車両100を制動する(図3のステップ(3))。
従って、車両100を制動することにより、タイヤ2外れの前時期に車両100を制動できて、重大事故の発生を回避できる。
【0023】
また、かかる実施例において、前記タイヤ外れ判定装置20の振動判定部23で、締め付けボルト5が弛みタイヤ2外れの前兆が判定されたにも拘わらず、タイヤ外れ検知部24で、締め付けボルト5が弛みタイヤ2外れ状態にあるのを検知し、さらに前記ブレーキ作動制御手段21が作動していないとき、即ち前記双方の信号を受けたときには、該タイヤ2外れ状態にあってブレーキ15が不作動であると判定する(図3のステップ(4))。
そして、かかる判定に基づく警報を、第2の警報装置16から発信する(図3のステップ(5))。
【0024】
従って、タイヤ外れ判定装置20の振動判定部23で、タイヤ2外れの前兆が判定され且つ前記ブレーキ作動制御手段21が作動しないときには、該タイヤ外れ判定装置20は、タイヤ2外れ状態にあるのにブレーキ15が不作動であるものと判定して、第2の警報装置16によって警報を出すことにより、タイヤ外れによる2次的災害の発生を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、締め付けボルトが弛んでタイヤが外れるか否かの状態を事前に検知し、タイヤ外れの前兆が判定されたときにタイヤ外れの前兆の警報を発するとともに、ブレーキを作動させるブレーキ作動制御手段を備えた車両のタイヤ外れ状態検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例にかかる車両(バス)のタイヤ外れ状態検出装置のドラムブレーキ周りの全体構成図である。
【図2】前記実施例におけるタイヤ外れ状態検出装置の制御ブロック図である。
【図3】前記実施例におけるタイヤ外れ状態検出の制御フローチャートである。
【図4】振動周波数のスペクトル解析結果の1例である。
【符号の説明】
【0027】
1 アクスルハウジング
2 タイヤ
3 ブレーキドラム
4 回転軸
5 締め付けボルト
10 振動センサ
12 スリップリング
15 ブレーキ
20 タイヤ外れ判定装置
21 ブレーキ作動制御手段
21a スペクトル強度比較部
22 タイヤ外れスペクトル強度設定器
23 振動判定部
100 車両(バス)
101 ドラムブレーキ
設定周波数
設定スペクトル強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムブレーキを備えた車両であって、該車両のタイヤが外れるか否かの状態を検知確認する車両のタイヤ外れ状態検出装置において、
前記ドラムブレーキのブレーキドラムに取り付けられて該ブレーキドラムの振動周波数を検出する振動センサと、
該振動センサからの振動周波数の検出値が入力され、振動周波数のスペクトル解析によってブレーキドラムの締め付けボルトの緩みによって生じる特定の振動周波数のスペクトル強度を設定閾値と比較して、該閾値以上に上昇した場合にタイヤ外れの前兆と判定するタイヤ外れ判定装置と、
該タイヤ外れ判定装置でタイヤ外れの前兆が判定されたときに、タイヤ外れの前兆の警報を発する警報装置を備えたことを特徴とする車両のタイヤ外れ状態検出装置。
【請求項2】
前記タイヤ外れ判定装置でタイヤ外れの前兆が判定されたときに、前記ドラムブレーキを作動させるブレーキ作動制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両のタイヤ外れ状態検出装置。
【請求項3】
前記タイヤ外れ判定装置にてタイヤ外れの前兆が判定され且つ前記ブレーキ作動制御手段が作動しないときに、前記タイヤ外れ判定装置からのタイヤ外れ状態の判定信号及びブレーキ作動制御手段からのブレーキ不作動の判定信号の双方を受けたとき、該タイヤ外れ状態にあってブレーキ不作動であると判定し、かかる判定に基づく警報を発する第2の警報装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両のタイヤ外れ状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156616(P2010−156616A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335241(P2008−335241)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】