車両のトノボード装置
【課題】トノボードの前端部と後端部とを所謂両持ち支持し、トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避し、低剛性のボード構造と成すことができると共に、荷物の出し入れ時に乗員の頭部がトノボードに当ることもない車両のトノボード装置の提供を目的とする。
【解決手段】車室10内の後部に配設された荷室フロア2を覆うトノボード22を備えた車両のトノボード装置であって、
トノボード22は、前端部が連結部材23を介して該トノボード22より上方に位置する車両部材16に支持され、後端部が後面ドア18に回動自在に支持されたことを特徴とする。
【解決手段】車室10内の後部に配設された荷室フロア2を覆うトノボード22を備えた車両のトノボード装置であって、
トノボード22は、前端部が連結部材23を介して該トノボード22より上方に位置する車両部材16に支持され、後端部が後面ドア18に回動自在に支持されたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内の後部に配設された荷室フロアを覆うトノボードを備えたような車両のトノボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、荷室フロア上の荷室に積み込んだ荷物が車室内または車外側から見えないようにするために、布状のトノカバーや板状のトノボードが用いられている。
【0003】
車室内の後部に配設された荷室フロアを覆う板状のトノボードを備えた車両のトノボード装置としては、例えば、特許文献1および特許文献2に開示された構造がある。
【0004】
特許文献1に開示された車両のトノボード装置は、トノボードの後端を、蝶番を介してリフトゲートに回動可能に支持する一方、リフトゲートにはスルーアンカを取付けて、このスルーアンカに挿通させた紐部材の一端をリヤピラーに固定し、紐部材の他端をトノボードの前後方向中間部に取付けたものである。
【0005】
この特許文献1に開示された従来構造においては、トノボードの前後方向中間部と後端とが紐部材と蝶番とで支持された所謂片持ち構造であるから、紐部材が連結されたトノボードの中間部に集中荷重がかかり、このため高剛性のボードが必要となる問題点があった。
また、トノボードの中間部に紐部材が連結されている関係上、次のような問題点があった。
すなわち、開放したリフトゲートを閉じる時、トノボードは前低後高状に傾斜した状態で荷室内に移動し、この荷室内に移動するトノボードは、該トノボードの受け部材(サイドトリムなど)に当接する。このトノボードの受け部材に当接する位置(当接位置)が後方寄りとなり、トノボードを受ける受け部材の前後長が大きくなり、この分、荷室スペースが狭くなるという問題点があった。
【0006】
一方、特許文献2に開示された車両のトノボード装置は、トノボードに相当するリヤシェルフの前端が車体に回動可能に枢支され、リヤシェルフの後端が吊ひもを介してリフトゲートに連結された構成であって、リフトゲートの開放時には上記リヤシェルフの後端側が上方に持ち上げられる。
このように、リフトゲートの開放時にリヤシェルフの後端側が上方に持ち上げられると、このリヤシェルフで光が遮られ、荷室内が暗くなる。乗員が荷室内に対し荷室の出し入れを行なう際、乗員の姿勢は前屈みとなり、乗員の頭部がリヤシェルフ後端に当る問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−165844号公報
【特許文献2】特開2007−131145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、トノボードの前端部を連結部材を介して該トノボードよりも上方に位置する車両部材に支持し、トノボードの後端部を後面ドアに回動自在に支持することで、トノボードの前端部と後端部とを所謂両持ち支持し、トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避し、低剛性のボード構造と成すことができると共に、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボードに当ることもない車両のトノボード装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両のトノボード装置は、車室内の後部に配設された荷室フロアを覆うトノボードを備えた車両のトノボード装置であって、上記トノボードは、前端部が連結部材を介して該トノボードより上方に位置する車両部材に支持され、後端部が後面ドアに回動自在に支持されたものである。
【0010】
上述の連結部材としては、紐やワイヤなどを用いてもよく、トノボードより上方に位置する車両部材としてはルーフヘッダやリヤピラー上部またはトリム部材に設定してもよい。
上記構成によれば、トノボードの前端部を連結部材を介して上記車両部材に支持し、トノボードの後端部を後面ドアに回動自在に支持させたので、トノボードはその前端部と後端部とで両持ち支持され、該トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避して、低剛性のボード構造と成すことができる。
また、後面ドアの開放時には、トノボード後端部は該後面ドアと共に上方に移動し、トノボード前端部は連結部材を介して上記車両部材に支持されているので、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボードに当るのを防止することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記トノボードの前端部が、直接上記連結部材を介して上記トノボードより上方に位置する車両部材に支持されたものである。
上記構成によれば、スルーアンカ等が不要となるので構成の簡略化を図ることができる。またトノボードの前端部が、直接連結部材を介して上記車両部材に支持されているので、トノボードの当接位置が前方寄りとなり、トノボードを受ける受け部材の前後長短縮が可能となって、この分、荷室スペースの拡大を図ることも可能となる。
つまり、開放した後面ドアを閉じる時、トノボードは前低後高状に傾斜した状態で荷室内に移動し、この荷室内に移動するトノボードは、該トノボード受け部材に当接するが、ノーマル時(後面ドア全閉時)のトノボードの水平状態をその前端部に設けた連結部材を介して上記車両部材に支持させているので、ノーマル時のトノボードの水平状態を中間部に設けた連結部材で支持する従来構造と異なり、後面ドア閉時において、トノボードの受け部材に当接する位置(当接位置)が前方寄りとなって、トノボードを受ける受け部材の前後長を小さくして、この分、荷室スペースの拡大を図ることが可能となる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記後面ドアの全開時に、上記連結部材が車両後部において車幅方向に延在するルーフヘッダ、またはリヤピラー上部に当接するよう該連結部材の上記車両部材への支持部が設定されたものである。
上述の連結部材の車両部材への支持部とは、連結部材を車両部材に支持させた固定支持点を意味する。
上記構成によれば、後面ドアの全開時に連結部材がルーフヘッダまたはリヤピラー上部に当接するので、該後面ドアの全開時にトノボードが垂れ下がるのを抑制することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記後面ドアの全閉時に、上記トノボードの前端部の上下方向の動きを規制する規制手段を備えたものである。
上記構成によれば、後面ドアの全閉時に、上記規制手段でトノボードの前端部の上下方向の動きを規制するので、車両走行時のトノボードのがたつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によればトノボードの前端部を連結部材を介して該トノボードよりも上方に位置する車両部材に支持し、トノボードの後端部を後面ドアに回動自在に支持したので、トノボードの前端部と後端部とを所謂両持ち支持し、トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避し、低剛性のボード構造と成すことができると共に、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボードに当るのを防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の車両のトノボード装置を示す側面図
【図2】図1の要部の部分拡大側面図
【図3】トノボード装置を示す斜視図
【図4】規制手段の斜視図
【図5】規制手段の側面図
【図6】規制手段による規制時の側面図
【図7】後面ドア開閉中間位置を示す側面図
【図8】後面ドア全開時の側面図
【図9】連結部材の取付け構造の他の実施例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
トノボードの前端部と後端部とを所謂両持ち支持し、トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避し、低剛性のボード構造と成すことができると共に、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボードに当るのを防止するという目的を、車室内の後部に配設された荷室フロアを覆うトノボードを備えた車両のトノボード装置において、上記トノボードは、前端部が連結部材を介して該トノボードより上方に位置する車両部材に支持され、後端部が後面ドアに回動自在に支持されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0017】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のトノボード装置を示し、側面図で示す図1において、フロアパネル1の後部には荷室フロア2を一体的に連結し、この荷室フロア2の車幅方向の中央部には、下方に段下げ形成されたスペアタイヤパン3を一体または一体的に形成している。
上述のフロアパネル1の後部と、荷室フロア2の前部との間の下部には、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ4を接合固定し、各要素1,2とリヤクロスメンバ4との間には、車幅方向に延びる閉断面5を形成して、下部車体剛性の向上を図っている。
上述の荷室フロア2の後部には、上下方向に延びるリヤエンドパネル6を立設固定すると共に、このリヤエンドパネル6のリヤ側にはリヤエンドメンバ7を接合固定し、該リヤエンドメンバ7と上述のリヤエンドパネル6との間には、車幅方向に延びるリヤエンド閉断面8を形成して、後部車体剛性の向上を図っている。
また、上述のリヤエンドパネル6の上部には、後述するリフトゲート18側のラッチ(図示せず)を係合するストライカ9を取付けている。
上述のフロアパネル1の上部を車室10に設定し、荷室フロア2の上部を荷室11に設定している。そして、車室10には、シートクッション12Cと、シートバック12Bと、ヘッドレスト12Hとを備えたリヤシート12を配設している。
【0018】
一方、上述の車室10の天井部を形成するルーフパネル13を設け、このルーフパネル13の後端部下面には、車幅方向に延びるリヤヘッダ14を接着固定して、ルーフパネル13とリヤヘッダ14との間には車幅方向に延びるヘッダ閉断面15を形成して、ルーフ強度の向上を図っている。
【0019】
ここで、上述のルーフパネル13およびリヤヘッダ14の車室10側はトップシーリング16で車室内から覆われている。
上述のルーフパネル13の後端部には、後部荷室開口17(図7,図8参照)を開閉可能に覆う後面ドアとしてのリフトゲート18を設けている。
このリフトゲート18は、インナパネル19と、アウタパネル20と、バックウインド21とを備えており、ルーフパネル13の後端部にリフトゲートヒンジ(図示せず)を介して開閉可能に連結され、また、リフトゲート18下部のインナパネル19には、上述のストライカ9と係合するラッチ(図示せず)が取付けられている。
さらに、車室10内の後部に配設された荷室フロア2を覆う板状のトノボード22を設けている。
このトノボード22は、図2,図3にも示すように、その前端部22aが連結部材としての紐部材23を介して該トノボード22よりも上方に位置する車両部材の一例としてトップシーリング16に支持部23Aにて支持されており、トノボード22の後端部22bは、後面ドアとしてのリフトゲート18におけるバックウインド下端内面側のインナパネル19に回動自在に支持されている。
【0020】
図1に示すように、トノボード22の後端部22bは、トノボード22側のヒンジピン24と、インナパネル19側のヒンジブラケット25とを介して、リフトゲート18に回動自在に支持されたものである。
【0021】
トノボード22の前端部22aを車両部材としてのトップシーリング16に直接支持する紐部材23は、図3に示すように、左右一対設けられている。
また、図2に示すように、上述のトノボード22の前端部22aには、該トノボード22を上下方向に貫通する孔部22cを形成する一方で、この孔部22cよりも上方に位置するトップシーリング16には、上述の紐部材23の一端を支持部23Aにて接合固定している。
そして、トップシーリング16から垂れ下がる紐部材23の他端側を、トノボード22の孔部22cに貫通させた後に、孔部22cから下方へ突出する紐部材23に板止め用の結び目を形成して、この結び目でストッパ26を構成している。
このストッパ26の形成により図1に側面図で示すように、リフトゲート18の全閉時には、トノボード22が荷室11上に水平または略水平に配設されるように構成している。
【0022】
リフトゲート18全閉時におけるトノボード22の上下位置は、この実施例においては、リヤシート12のシートバック12B上端部分と対応するが、このトノボード22の上下位置は図示の高さに限定されるものではない。
上述のリフトゲート18は、図1に示す全閉状態から、図7に示す中途状態を経て、図8に示す全開状態となる。
この図8に示すリフトゲート18の全開時に、上述の紐部材23が車両後部において車幅方向に延在するリヤヘッダ14に当接するように、該紐部材23のトップシーリング16への支持部23Aが設定されている。
【0023】
リヤヘッダ14の車室側には、内装部材としてのトップシーリング16が配設されるので、リフトゲート18の全開時には上述の紐部材がリヤヘッダ14対応位置のトップシーリング16に当接するように、上記支持部23Aの位置が設定されたものである。
【0024】
図3に示すように、水平位置または略水平位置のトノボード22の左右両端部下面は、受け部材としての左右のサイドトリム27,27で受け止められるようになっている。
該サイドトリム27には、リフトゲート18の全閉時に、トノボード22の前端部22aの上下方向の動きを規制する規制手段としての規制部材30が取付けられている。
この規制部材30は、リフトゲート18全閉時におけるトノボード22の前端部22aに対応して左右両側にそれぞれ設けられ、左側の規制部材30と、右側の規制部材30とは左右対称に構成されているので、以下、図4,図5,図6を参照して、左側の規制部材30の構造について説明する。
【0025】
図4,図5,図6に示すように、上述の規制部材30は左側のサイドトリム27に固定されて、該サイドトリム27から車幅方向内方に延びる固定軸31と、この固定軸31に回動可能に装着された可動筒32と、この可動筒32の外周に一体的に形成されて該可動筒32から放射状に延びる下片33および上片34と、固定軸31の外周一部に凹設形成された凹溝35と、この凹溝35の前端に一体形成されたストッパ36と、可動筒32の内周部に一体形成されて上記凹溝35内を移動可能に構成された突部37と、上述の上片34および下片33を常時、図5に示す非規制位置へバネ付勢するスプリング38と、を備えている。
【0026】
而して、リフトゲート18を全開位置(図8参照)から全閉位置(図1参照)にクローズさせるとき、トノボード22が図5に示すように、規制部材30の下片33に当接し、図5の状態から図6に示すように、トノボード22の前端部22aがさらに前進すると、可動筒32を介して上片34が下方へ回動して、該上片34の規制部34Aがトノボード22の上面に当接するので、車両走行時のトノボード22のがたつきを抑制することができる。
【0027】
逆に、リフトゲート18の開放に際して、トノボード22が図6の状態から図5に示すように、その前端部22aが後退すると、スプリング38の付勢力により可動筒32の突部37が固定軸31のストッパ36に当接する位置まで可動筒32が回転するので、上片34の規制部34Aはトノボード22から遠ざかる方向に回動し、該トノボード22の前端部22aの後退を阻害しない。
なお、図中、矢印Fは車両の前方を示す。
【0028】
このように構成した車両のトノボード装置の作用を、以下に説明する。
図1に示すリフトゲート18の全閉時には、トノボード22は水平状態または略水平状態で受け部材としてのサイドトリム27上に上載されると共に、トノボード22の前端部22aの上下方向の動きが規制部材30で規制されているので、車両走行時におけるトノボード22のがたつきを抑制することができる。
【0029】
リフトゲート18を図1に示す全閉状態から図7に示す中途状態を経て、図8に示す全開状態に開放する時、ヒンジピン24とヒンジブラケット25とから成るヒンジ部が上方へ移動するので、トノボード22はその前端部22aが紐部材23で吊り下げられた状態で、図1の水平状態または略水平状態から図7に示す前低後高状のスラント状態を経て、図8に示すように、さらに急勾配の前低後高状態となる。
【0030】
図8に示すリフトゲート18の全開時には、紐部材23は車両後部において車幅方向に延びるリヤヘッダ対応位置のトップシーリング16に当接し、紐部材23に弛みが生じないので、該全開時においてトノボード22が図8に示す状態から垂れ下がることはない。
【0031】
このように、図1〜図8で示した実施例の車両のトノボード装置は、車室10内の後部に配設された荷室フロア2を覆うトノボード22を備えた車両のトノボード装置であって、上記トノボード22は、前端部22aが連結部材(紐部材23参照)を介して該トノボード22より上方に位置する車両部材(トップシーリング16参照)に支持され、後端部22bが後面ドア(リフトゲート18参照)に回動自在に支持されたものである(図1参照)。
【0032】
この構成によれば、トノボード22の前端部22aを連結部材(紐部材23)を介して上記車両部材(トップシーリング16)に支持し、トノボード22の後端部22bを後面ドア(リフトゲート18)に回動自在に支持させたので、トノボード22はその前端部22aと後端部22bとで両持ち支持され、該トノボード22の前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避して、低剛性のボード構造と成すことができる。
また、後面ドア(リフトゲート18)の開放時には、トノボード22後端部は該後面ドア(リフトゲート18)と共に上方に移動し、トノボード22前端部は連結部材(紐部材23)を介して上記車両部材(トップシーリング16)に支持されているので、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボード22に当るのを防止することができる。
さらに、上記トノボード22の前端部22aが、直接上記連結部材(紐部材23参照)を介して上記トノボード22より上方に位置する車両部材(トップシーリング16参照)に支持されたものである(図1参照)。
【0033】
この構成によれば、スルーアンカ等が不要となるので構成の簡略化を図ることができる。またトノボード22の前端部22aが、直接連結部材(紐部材23)を介して上記車両部材(トップシーリング16)に支持されているので、トノボード22の当接位置が前方寄りとなり、トノボード22を受ける受け部材(サイドトリム27)の前後長短縮が可能となって、この分、荷室スペースの拡大を図ることも可能となる。
つまり、開放した後面ドア(リフトゲート18)を閉じる時、トノボード22は前低後高状に傾斜した状態で荷室11内に移動し、この荷室11内に移動するトノボード22は、該トノボード22の受け部材(サイドトリム27)に当接するが、ノーマル時(後面ドア全閉時)のトノボード22の水平状態(または略水平状態)をその前端部22aに設けた連結部材(紐部材23)を介して上記車両部材(トップシーリング16)に支持させているので、ノーマル時のトノボードの水平状態を中間部に設けた連結部材で支持する従来構造と異なり、後面ドア(リフトゲート18)閉時において、トノボード22の受け部材(サイドトリム27)に当接する位置(当接位置)が前方寄りとなって、トノボード22を受ける受け部材(サイドトリム27)の前後長を小さくして、この分、荷室スペースの拡大を図ることが可能となる。
しかも、上記後面ドア(リフトゲート18参照)の全開時に、上記連結部材(紐部材23参照)が車両後部において車幅方向に延在するルーフヘッダ(リヤヘッダ14参照)、またはリヤピラー上部(この実施例では、リヤヘッダ14対応部のトップシーリング16参照)に当接するよう該連結部材(紐部材23)の上記車両部材への支持部23Aが設定されたものである(図8参照)。
【0034】
この構成によれば、後面ドア(リフトゲート18)の全開時に連結部材(紐部材23)がルーフヘッダまたはリヤピラー上部(リヤヘッダ14対応部のトップシーリング16)に当接するので、該後面ドア(リフトゲート18)の全開時にトノボード22が垂れ下がるのを抑制することができる。
加えて、上記後面ドア(リフトゲート18)の全閉時に、上記トノボード22の前端部22aの上下方向の動きを規制する規制手段(規制部材30参照)を備えたものである(図3参照)。
【0035】
この構成によれば、後面ドア(リフトゲート18)の全閉時に、上記規制手段(規制部材30)でトノボード22の前端部22aの上下方向の動きを規制するので、車両走行時のトノボード22のがたつきを抑制することができる。
【0036】
図9は連結部材としての紐部材23の取付け構造の他の実施例を示す側面図であって、ヘッダ閉断面15下部のリヤヘッダ14の車室側の面つまり下面にフック28を溶接固定する一方、このフック28と上下方向に対向するトップシーリング16には、紐部材23を貫通させる孔部29を開口形成し、紐部材23の上部を、孔部29を挿通させて上方に導出し、この導出した部分を上述のフック28に係合させたものである。
このように構成すると、紐部材23の上端部が、フック28を介して直接リヤヘッダ14に固定されるので、紐部材23の支持剛性の向上を図ることができる。
【0037】
図9に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例と同様であるから、図9において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0038】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車両部材は、実施例のトップシーリング16に対応し、
以下同様に、
ルーフヘッダは、リヤヘッダ14に対応し、
後面ドアは、リフトゲート18に対応し、
連結部材は、紐部材23に対応し、
規制手段は、規制部材30に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記連結部材は、紐部材に代えてワイヤを用いてもよく、後面ドアの全開時(図8参照)に、連結部材がリヤピラーの上部またはリヤピラートリムの上部に当接するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
2…荷室フロア
10…車室
14…リヤヘッダ(ルーフヘッダ)
16…トップシーリング(車両部材)
18…リフトゲート(後面ドア)
22…トノボード
23…紐部材(連結部材)
23A…支持部
30…規制部材(規制手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内の後部に配設された荷室フロアを覆うトノボードを備えたような車両のトノボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、荷室フロア上の荷室に積み込んだ荷物が車室内または車外側から見えないようにするために、布状のトノカバーや板状のトノボードが用いられている。
【0003】
車室内の後部に配設された荷室フロアを覆う板状のトノボードを備えた車両のトノボード装置としては、例えば、特許文献1および特許文献2に開示された構造がある。
【0004】
特許文献1に開示された車両のトノボード装置は、トノボードの後端を、蝶番を介してリフトゲートに回動可能に支持する一方、リフトゲートにはスルーアンカを取付けて、このスルーアンカに挿通させた紐部材の一端をリヤピラーに固定し、紐部材の他端をトノボードの前後方向中間部に取付けたものである。
【0005】
この特許文献1に開示された従来構造においては、トノボードの前後方向中間部と後端とが紐部材と蝶番とで支持された所謂片持ち構造であるから、紐部材が連結されたトノボードの中間部に集中荷重がかかり、このため高剛性のボードが必要となる問題点があった。
また、トノボードの中間部に紐部材が連結されている関係上、次のような問題点があった。
すなわち、開放したリフトゲートを閉じる時、トノボードは前低後高状に傾斜した状態で荷室内に移動し、この荷室内に移動するトノボードは、該トノボードの受け部材(サイドトリムなど)に当接する。このトノボードの受け部材に当接する位置(当接位置)が後方寄りとなり、トノボードを受ける受け部材の前後長が大きくなり、この分、荷室スペースが狭くなるという問題点があった。
【0006】
一方、特許文献2に開示された車両のトノボード装置は、トノボードに相当するリヤシェルフの前端が車体に回動可能に枢支され、リヤシェルフの後端が吊ひもを介してリフトゲートに連結された構成であって、リフトゲートの開放時には上記リヤシェルフの後端側が上方に持ち上げられる。
このように、リフトゲートの開放時にリヤシェルフの後端側が上方に持ち上げられると、このリヤシェルフで光が遮られ、荷室内が暗くなる。乗員が荷室内に対し荷室の出し入れを行なう際、乗員の姿勢は前屈みとなり、乗員の頭部がリヤシェルフ後端に当る問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−165844号公報
【特許文献2】特開2007−131145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、トノボードの前端部を連結部材を介して該トノボードよりも上方に位置する車両部材に支持し、トノボードの後端部を後面ドアに回動自在に支持することで、トノボードの前端部と後端部とを所謂両持ち支持し、トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避し、低剛性のボード構造と成すことができると共に、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボードに当ることもない車両のトノボード装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両のトノボード装置は、車室内の後部に配設された荷室フロアを覆うトノボードを備えた車両のトノボード装置であって、上記トノボードは、前端部が連結部材を介して該トノボードより上方に位置する車両部材に支持され、後端部が後面ドアに回動自在に支持されたものである。
【0010】
上述の連結部材としては、紐やワイヤなどを用いてもよく、トノボードより上方に位置する車両部材としてはルーフヘッダやリヤピラー上部またはトリム部材に設定してもよい。
上記構成によれば、トノボードの前端部を連結部材を介して上記車両部材に支持し、トノボードの後端部を後面ドアに回動自在に支持させたので、トノボードはその前端部と後端部とで両持ち支持され、該トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避して、低剛性のボード構造と成すことができる。
また、後面ドアの開放時には、トノボード後端部は該後面ドアと共に上方に移動し、トノボード前端部は連結部材を介して上記車両部材に支持されているので、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボードに当るのを防止することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記トノボードの前端部が、直接上記連結部材を介して上記トノボードより上方に位置する車両部材に支持されたものである。
上記構成によれば、スルーアンカ等が不要となるので構成の簡略化を図ることができる。またトノボードの前端部が、直接連結部材を介して上記車両部材に支持されているので、トノボードの当接位置が前方寄りとなり、トノボードを受ける受け部材の前後長短縮が可能となって、この分、荷室スペースの拡大を図ることも可能となる。
つまり、開放した後面ドアを閉じる時、トノボードは前低後高状に傾斜した状態で荷室内に移動し、この荷室内に移動するトノボードは、該トノボード受け部材に当接するが、ノーマル時(後面ドア全閉時)のトノボードの水平状態をその前端部に設けた連結部材を介して上記車両部材に支持させているので、ノーマル時のトノボードの水平状態を中間部に設けた連結部材で支持する従来構造と異なり、後面ドア閉時において、トノボードの受け部材に当接する位置(当接位置)が前方寄りとなって、トノボードを受ける受け部材の前後長を小さくして、この分、荷室スペースの拡大を図ることが可能となる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記後面ドアの全開時に、上記連結部材が車両後部において車幅方向に延在するルーフヘッダ、またはリヤピラー上部に当接するよう該連結部材の上記車両部材への支持部が設定されたものである。
上述の連結部材の車両部材への支持部とは、連結部材を車両部材に支持させた固定支持点を意味する。
上記構成によれば、後面ドアの全開時に連結部材がルーフヘッダまたはリヤピラー上部に当接するので、該後面ドアの全開時にトノボードが垂れ下がるのを抑制することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記後面ドアの全閉時に、上記トノボードの前端部の上下方向の動きを規制する規制手段を備えたものである。
上記構成によれば、後面ドアの全閉時に、上記規制手段でトノボードの前端部の上下方向の動きを規制するので、車両走行時のトノボードのがたつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によればトノボードの前端部を連結部材を介して該トノボードよりも上方に位置する車両部材に支持し、トノボードの後端部を後面ドアに回動自在に支持したので、トノボードの前端部と後端部とを所謂両持ち支持し、トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避し、低剛性のボード構造と成すことができると共に、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボードに当るのを防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の車両のトノボード装置を示す側面図
【図2】図1の要部の部分拡大側面図
【図3】トノボード装置を示す斜視図
【図4】規制手段の斜視図
【図5】規制手段の側面図
【図6】規制手段による規制時の側面図
【図7】後面ドア開閉中間位置を示す側面図
【図8】後面ドア全開時の側面図
【図9】連結部材の取付け構造の他の実施例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
トノボードの前端部と後端部とを所謂両持ち支持し、トノボードの前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避し、低剛性のボード構造と成すことができると共に、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボードに当るのを防止するという目的を、車室内の後部に配設された荷室フロアを覆うトノボードを備えた車両のトノボード装置において、上記トノボードは、前端部が連結部材を介して該トノボードより上方に位置する車両部材に支持され、後端部が後面ドアに回動自在に支持されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0017】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のトノボード装置を示し、側面図で示す図1において、フロアパネル1の後部には荷室フロア2を一体的に連結し、この荷室フロア2の車幅方向の中央部には、下方に段下げ形成されたスペアタイヤパン3を一体または一体的に形成している。
上述のフロアパネル1の後部と、荷室フロア2の前部との間の下部には、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ4を接合固定し、各要素1,2とリヤクロスメンバ4との間には、車幅方向に延びる閉断面5を形成して、下部車体剛性の向上を図っている。
上述の荷室フロア2の後部には、上下方向に延びるリヤエンドパネル6を立設固定すると共に、このリヤエンドパネル6のリヤ側にはリヤエンドメンバ7を接合固定し、該リヤエンドメンバ7と上述のリヤエンドパネル6との間には、車幅方向に延びるリヤエンド閉断面8を形成して、後部車体剛性の向上を図っている。
また、上述のリヤエンドパネル6の上部には、後述するリフトゲート18側のラッチ(図示せず)を係合するストライカ9を取付けている。
上述のフロアパネル1の上部を車室10に設定し、荷室フロア2の上部を荷室11に設定している。そして、車室10には、シートクッション12Cと、シートバック12Bと、ヘッドレスト12Hとを備えたリヤシート12を配設している。
【0018】
一方、上述の車室10の天井部を形成するルーフパネル13を設け、このルーフパネル13の後端部下面には、車幅方向に延びるリヤヘッダ14を接着固定して、ルーフパネル13とリヤヘッダ14との間には車幅方向に延びるヘッダ閉断面15を形成して、ルーフ強度の向上を図っている。
【0019】
ここで、上述のルーフパネル13およびリヤヘッダ14の車室10側はトップシーリング16で車室内から覆われている。
上述のルーフパネル13の後端部には、後部荷室開口17(図7,図8参照)を開閉可能に覆う後面ドアとしてのリフトゲート18を設けている。
このリフトゲート18は、インナパネル19と、アウタパネル20と、バックウインド21とを備えており、ルーフパネル13の後端部にリフトゲートヒンジ(図示せず)を介して開閉可能に連結され、また、リフトゲート18下部のインナパネル19には、上述のストライカ9と係合するラッチ(図示せず)が取付けられている。
さらに、車室10内の後部に配設された荷室フロア2を覆う板状のトノボード22を設けている。
このトノボード22は、図2,図3にも示すように、その前端部22aが連結部材としての紐部材23を介して該トノボード22よりも上方に位置する車両部材の一例としてトップシーリング16に支持部23Aにて支持されており、トノボード22の後端部22bは、後面ドアとしてのリフトゲート18におけるバックウインド下端内面側のインナパネル19に回動自在に支持されている。
【0020】
図1に示すように、トノボード22の後端部22bは、トノボード22側のヒンジピン24と、インナパネル19側のヒンジブラケット25とを介して、リフトゲート18に回動自在に支持されたものである。
【0021】
トノボード22の前端部22aを車両部材としてのトップシーリング16に直接支持する紐部材23は、図3に示すように、左右一対設けられている。
また、図2に示すように、上述のトノボード22の前端部22aには、該トノボード22を上下方向に貫通する孔部22cを形成する一方で、この孔部22cよりも上方に位置するトップシーリング16には、上述の紐部材23の一端を支持部23Aにて接合固定している。
そして、トップシーリング16から垂れ下がる紐部材23の他端側を、トノボード22の孔部22cに貫通させた後に、孔部22cから下方へ突出する紐部材23に板止め用の結び目を形成して、この結び目でストッパ26を構成している。
このストッパ26の形成により図1に側面図で示すように、リフトゲート18の全閉時には、トノボード22が荷室11上に水平または略水平に配設されるように構成している。
【0022】
リフトゲート18全閉時におけるトノボード22の上下位置は、この実施例においては、リヤシート12のシートバック12B上端部分と対応するが、このトノボード22の上下位置は図示の高さに限定されるものではない。
上述のリフトゲート18は、図1に示す全閉状態から、図7に示す中途状態を経て、図8に示す全開状態となる。
この図8に示すリフトゲート18の全開時に、上述の紐部材23が車両後部において車幅方向に延在するリヤヘッダ14に当接するように、該紐部材23のトップシーリング16への支持部23Aが設定されている。
【0023】
リヤヘッダ14の車室側には、内装部材としてのトップシーリング16が配設されるので、リフトゲート18の全開時には上述の紐部材がリヤヘッダ14対応位置のトップシーリング16に当接するように、上記支持部23Aの位置が設定されたものである。
【0024】
図3に示すように、水平位置または略水平位置のトノボード22の左右両端部下面は、受け部材としての左右のサイドトリム27,27で受け止められるようになっている。
該サイドトリム27には、リフトゲート18の全閉時に、トノボード22の前端部22aの上下方向の動きを規制する規制手段としての規制部材30が取付けられている。
この規制部材30は、リフトゲート18全閉時におけるトノボード22の前端部22aに対応して左右両側にそれぞれ設けられ、左側の規制部材30と、右側の規制部材30とは左右対称に構成されているので、以下、図4,図5,図6を参照して、左側の規制部材30の構造について説明する。
【0025】
図4,図5,図6に示すように、上述の規制部材30は左側のサイドトリム27に固定されて、該サイドトリム27から車幅方向内方に延びる固定軸31と、この固定軸31に回動可能に装着された可動筒32と、この可動筒32の外周に一体的に形成されて該可動筒32から放射状に延びる下片33および上片34と、固定軸31の外周一部に凹設形成された凹溝35と、この凹溝35の前端に一体形成されたストッパ36と、可動筒32の内周部に一体形成されて上記凹溝35内を移動可能に構成された突部37と、上述の上片34および下片33を常時、図5に示す非規制位置へバネ付勢するスプリング38と、を備えている。
【0026】
而して、リフトゲート18を全開位置(図8参照)から全閉位置(図1参照)にクローズさせるとき、トノボード22が図5に示すように、規制部材30の下片33に当接し、図5の状態から図6に示すように、トノボード22の前端部22aがさらに前進すると、可動筒32を介して上片34が下方へ回動して、該上片34の規制部34Aがトノボード22の上面に当接するので、車両走行時のトノボード22のがたつきを抑制することができる。
【0027】
逆に、リフトゲート18の開放に際して、トノボード22が図6の状態から図5に示すように、その前端部22aが後退すると、スプリング38の付勢力により可動筒32の突部37が固定軸31のストッパ36に当接する位置まで可動筒32が回転するので、上片34の規制部34Aはトノボード22から遠ざかる方向に回動し、該トノボード22の前端部22aの後退を阻害しない。
なお、図中、矢印Fは車両の前方を示す。
【0028】
このように構成した車両のトノボード装置の作用を、以下に説明する。
図1に示すリフトゲート18の全閉時には、トノボード22は水平状態または略水平状態で受け部材としてのサイドトリム27上に上載されると共に、トノボード22の前端部22aの上下方向の動きが規制部材30で規制されているので、車両走行時におけるトノボード22のがたつきを抑制することができる。
【0029】
リフトゲート18を図1に示す全閉状態から図7に示す中途状態を経て、図8に示す全開状態に開放する時、ヒンジピン24とヒンジブラケット25とから成るヒンジ部が上方へ移動するので、トノボード22はその前端部22aが紐部材23で吊り下げられた状態で、図1の水平状態または略水平状態から図7に示す前低後高状のスラント状態を経て、図8に示すように、さらに急勾配の前低後高状態となる。
【0030】
図8に示すリフトゲート18の全開時には、紐部材23は車両後部において車幅方向に延びるリヤヘッダ対応位置のトップシーリング16に当接し、紐部材23に弛みが生じないので、該全開時においてトノボード22が図8に示す状態から垂れ下がることはない。
【0031】
このように、図1〜図8で示した実施例の車両のトノボード装置は、車室10内の後部に配設された荷室フロア2を覆うトノボード22を備えた車両のトノボード装置であって、上記トノボード22は、前端部22aが連結部材(紐部材23参照)を介して該トノボード22より上方に位置する車両部材(トップシーリング16参照)に支持され、後端部22bが後面ドア(リフトゲート18参照)に回動自在に支持されたものである(図1参照)。
【0032】
この構成によれば、トノボード22の前端部22aを連結部材(紐部材23)を介して上記車両部材(トップシーリング16)に支持し、トノボード22の後端部22bを後面ドア(リフトゲート18)に回動自在に支持させたので、トノボード22はその前端部22aと後端部22bとで両持ち支持され、該トノボード22の前後方向中間部に集中荷重が付勢されることを回避して、低剛性のボード構造と成すことができる。
また、後面ドア(リフトゲート18)の開放時には、トノボード22後端部は該後面ドア(リフトゲート18)と共に上方に移動し、トノボード22前端部は連結部材(紐部材23)を介して上記車両部材(トップシーリング16)に支持されているので、荷物の出し入れ時(荷物の積み下ろし時)に乗員の頭部がトノボード22に当るのを防止することができる。
さらに、上記トノボード22の前端部22aが、直接上記連結部材(紐部材23参照)を介して上記トノボード22より上方に位置する車両部材(トップシーリング16参照)に支持されたものである(図1参照)。
【0033】
この構成によれば、スルーアンカ等が不要となるので構成の簡略化を図ることができる。またトノボード22の前端部22aが、直接連結部材(紐部材23)を介して上記車両部材(トップシーリング16)に支持されているので、トノボード22の当接位置が前方寄りとなり、トノボード22を受ける受け部材(サイドトリム27)の前後長短縮が可能となって、この分、荷室スペースの拡大を図ることも可能となる。
つまり、開放した後面ドア(リフトゲート18)を閉じる時、トノボード22は前低後高状に傾斜した状態で荷室11内に移動し、この荷室11内に移動するトノボード22は、該トノボード22の受け部材(サイドトリム27)に当接するが、ノーマル時(後面ドア全閉時)のトノボード22の水平状態(または略水平状態)をその前端部22aに設けた連結部材(紐部材23)を介して上記車両部材(トップシーリング16)に支持させているので、ノーマル時のトノボードの水平状態を中間部に設けた連結部材で支持する従来構造と異なり、後面ドア(リフトゲート18)閉時において、トノボード22の受け部材(サイドトリム27)に当接する位置(当接位置)が前方寄りとなって、トノボード22を受ける受け部材(サイドトリム27)の前後長を小さくして、この分、荷室スペースの拡大を図ることが可能となる。
しかも、上記後面ドア(リフトゲート18参照)の全開時に、上記連結部材(紐部材23参照)が車両後部において車幅方向に延在するルーフヘッダ(リヤヘッダ14参照)、またはリヤピラー上部(この実施例では、リヤヘッダ14対応部のトップシーリング16参照)に当接するよう該連結部材(紐部材23)の上記車両部材への支持部23Aが設定されたものである(図8参照)。
【0034】
この構成によれば、後面ドア(リフトゲート18)の全開時に連結部材(紐部材23)がルーフヘッダまたはリヤピラー上部(リヤヘッダ14対応部のトップシーリング16)に当接するので、該後面ドア(リフトゲート18)の全開時にトノボード22が垂れ下がるのを抑制することができる。
加えて、上記後面ドア(リフトゲート18)の全閉時に、上記トノボード22の前端部22aの上下方向の動きを規制する規制手段(規制部材30参照)を備えたものである(図3参照)。
【0035】
この構成によれば、後面ドア(リフトゲート18)の全閉時に、上記規制手段(規制部材30)でトノボード22の前端部22aの上下方向の動きを規制するので、車両走行時のトノボード22のがたつきを抑制することができる。
【0036】
図9は連結部材としての紐部材23の取付け構造の他の実施例を示す側面図であって、ヘッダ閉断面15下部のリヤヘッダ14の車室側の面つまり下面にフック28を溶接固定する一方、このフック28と上下方向に対向するトップシーリング16には、紐部材23を貫通させる孔部29を開口形成し、紐部材23の上部を、孔部29を挿通させて上方に導出し、この導出した部分を上述のフック28に係合させたものである。
このように構成すると、紐部材23の上端部が、フック28を介して直接リヤヘッダ14に固定されるので、紐部材23の支持剛性の向上を図ることができる。
【0037】
図9に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例と同様であるから、図9において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0038】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車両部材は、実施例のトップシーリング16に対応し、
以下同様に、
ルーフヘッダは、リヤヘッダ14に対応し、
後面ドアは、リフトゲート18に対応し、
連結部材は、紐部材23に対応し、
規制手段は、規制部材30に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記連結部材は、紐部材に代えてワイヤを用いてもよく、後面ドアの全開時(図8参照)に、連結部材がリヤピラーの上部またはリヤピラートリムの上部に当接するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
2…荷室フロア
10…車室
14…リヤヘッダ(ルーフヘッダ)
16…トップシーリング(車両部材)
18…リフトゲート(後面ドア)
22…トノボード
23…紐部材(連結部材)
23A…支持部
30…規制部材(規制手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の後部に配設された荷室フロアを覆うトノボードを備えた車両のトノボード装置であって、
上記トノボードは、前端部が連結部材を介して該トノボードより上方に位置する車両部材に支持され、後端部が後面ドアに回動自在に支持されたことを特徴とする
車両のトノボード装置。
【請求項2】
上記トノボードの前端部が、直接上記連結部材を介して上記トノボードより上方に位置する車両部材に支持された
請求項1記載の車両のトノボード装置。
【請求項3】
上記後面ドアの全開時に、上記連結部材が車両後部において車幅方向に延在するルーフヘッダ、またはリヤピラー上部に当接するよう該連結部材の上記車両部材への支持部が設定された
請求項1または2記載の車両のトノボード装置。
【請求項4】
上記後面ドアの全閉時に、上記トノボードの前端部の上下方向の動きを規制する規制手段を備えた
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両のトノボード装置。
【請求項1】
車室内の後部に配設された荷室フロアを覆うトノボードを備えた車両のトノボード装置であって、
上記トノボードは、前端部が連結部材を介して該トノボードより上方に位置する車両部材に支持され、後端部が後面ドアに回動自在に支持されたことを特徴とする
車両のトノボード装置。
【請求項2】
上記トノボードの前端部が、直接上記連結部材を介して上記トノボードより上方に位置する車両部材に支持された
請求項1記載の車両のトノボード装置。
【請求項3】
上記後面ドアの全開時に、上記連結部材が車両後部において車幅方向に延在するルーフヘッダ、またはリヤピラー上部に当接するよう該連結部材の上記車両部材への支持部が設定された
請求項1または2記載の車両のトノボード装置。
【請求項4】
上記後面ドアの全閉時に、上記トノボードの前端部の上下方向の動きを規制する規制手段を備えた
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両のトノボード装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−35380(P2013−35380A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172490(P2011−172490)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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