説明

車両のドア開口部構造

【課題】雨水がシールリップ部を越えてウエザストリップ内に浸入しても、雨水が溜まり加減になるドア開口の下方領域で車室側に溢れ出ることがなく、凹凸形状部とシールリップ部との間の水抜き空間から円滑に排水でき、また、凹凸形状部によりウエザストリップが大きく膨らむことがなく、見栄えの悪化も抑止する車両のドア開口部構造を提供する。
【解決手段】アウタパネル17の接合フランジ部18におけるドア開口の下方領域に、該接合フランジ部沿い方向の外側から内側に向かってインナパネル15側に一旦窪んだ後にアウタパネル17側に突出する凹凸形状部30を形成し、ウエザストリップの内向きシールリップ部19cが凹凸形状部30の外側を横断して配設され、内向きシールリップ部19cと凹凸形状部30との間に水抜き空間31が形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のドア開口部構造に関し、詳しくは、車体におけるドア開口縁を形成するインナパネルとアウタパネルとの接合フランジ部にウエザストリップの内向きシールリップ部を嵌め、ドア開口を覆うドアの内面に該ウエザストリップの主シール部を圧接するような車両のドア開口部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両のドア開口部構造としては、図12に示すような構造が知られている。
すなわち、車体のドア開口縁を形成するインナパネルの接合フランジ部91と、アウタパネルの接合フランジ部92とを接合し、これら両接合フランジ部91,92にウエザストリップ93のそれぞれの内向きシールリップ部94,95,96,97を嵌着し、該ウエザストリップ93の主シール部98を、ドア開口を覆うリフトゲート等のドア(図示せず)内面に圧接して、該ウエザストリップ93でボディとドアとの間をシールすべく構成したものである。
【0003】
図12に示すように、上述のウエザストリップ93はその上側と下側とに2本づつのシールリップ部94〜97を有すると共に、主シール部98を備えたものであって、ドア開口、例えば、ハッチバック型車両の後部開口に対応して、その開口部全周に閉ループ状に配設される。
【0004】
リフトゲートとウエザストリップ93との間に入った雨水などの浸入水(以下単に雨水と略記する)は、該ウエザストリップ93でシールされるので、本来ならば該ウエザストリップ93に沿って下方に流れ出て、車外側に排出されるようになっている。
しかしながら、ウエザストリップ93の接合フランジ部91,92に対する装着時においてシールリップ部の向きの部分的な不具合など(装着ミス)に起因して、内向きシールリップ部97を越えてウエザストリップ93内に雨水が浸入する場合がある。
【0005】
このような雨水の浸入が、ドア開口部の上方領域の部位で発生すると、雨水はシールリップ部97,96間を伝って下方に流れ、図12に示すウエザストリップ93の下方領域に雨水が溜り、雨水の量に相当して水圧が高まると、同図に矢印で示すように雨水が車室側に溢れ出る問題点があった。
【0006】
ところで、特許文献1には、トランク開口の外板フランジにウエザストリップを嵌着し、このウエザストリップでトランクリッドとボディとの間をシールすべく構成し、さらに上述の外板フランジの基部に沿って凹形状の水抜き溝を設けると共に、この水抜き溝の最下降部には、該水抜き溝と連続する排出ビードを形成した排水構造が開示されている。
この特許文献1に開示された従来構造は、ウエザストリップの外回りに沿って雨水を流し、排出ビードから排出するものに過ぎず、ウエザストリップの内向きシールリップ部内に入ってきた雨水を抜くものではありえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−32216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に、その接合フランジ部沿い方向の外側から内側に向かってインナパネル側に一旦窪んだ後にアウタパネル側に突出する凹凸形状部を形成し、ウエザストリップの内向きシールリップ部が該凹凸形状部の外側を横断して配設され、内向きシールリップ部と凹凸形状部との間に水抜き空間を形成することで、万一雨水がシールリップ部を越えてウエザストリップ内に浸入しても、該雨水が溜まり加減になるドア開口の下方領域で車室側に溢れ出ることがなく、凹凸形状部とシールリップ部との間の水抜き空間から円滑に排水でき、また、凹凸形状部によりウエザストリップが大きく膨らむことがなく、見栄えの悪化も抑止することができる車両のドア開口部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両のドア開口部構造は、車体におけるドア開口縁を形成するインナパネルとアウタパネルとの接合フランジ部に、ウエザストリップの内向きシールリップ部を嵌め、ドア開口を覆うドアの内面に該ウエザストリップの主シール部を圧接する車両のドア開口部構造であって、上記アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に、該接合フランジ部沿い方向の外側から内側に向かってインナパネル側に一旦窪んだ後にアウタパネル側に突出する凹凸形状部を形成し、上記ウエザストリップの内向きシールリップ部が該凹凸形状部の外側を横断して配設され、上記内向きシールリップ部と凹凸形状部との間に水抜き空間が形成されたものである。
上記構成によれば、内向きシールリップ部と凹凸形状部との間に水抜き空間を形成したので、万一雨水がシールリップ部を越えてウエザストリップ内に侵入しても、該雨水が溜まり加減になるドア開口の下方領域で車室側に溢れ出ることがなく、上述の凹凸形状部とシールリップ部との間の水抜き空間から円滑に排水することができる。
【0010】
また、上述の凹凸形状部は、接合フランジ部沿い方向の外側から内側に向かってインナパネル側に一旦窪んだ後にアウタパネル側に突出するものであるから、ウエザストリップが大きく膨らむことがなく、見栄えの悪化も抑止することができる。
因に、アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に内方にのみ突出する形状部を形成した場合、または、アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に外方にのみ突出する形状部を形成した場合の何れにおいても、水抜き空間を形成することができるが、このような場合には、該形状部に対応して、ウエザストリップが部分的に大きく膨出して、見栄えの悪化を招くのみならず、接合フランジ部に対するウエザストリップの装着性、組付け性が悪化するので望ましくはない。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記ドアがリフトゲートであり、上記アウタパネルがリヤエンドパネルであり、該リヤエンドパネルには、上記凹凸形状部に連なる排水凹部が形成され、該排水凹部がリヤバンパの上縁部で覆われたものである。
上記構成によれば、特に、ドア開口縁が複数のパネル部材から構成され、シールリップ部によるシール性が厳しいリフトゲートにおいて、そのシール機能のバックアップを良好に行なうことができ、また上述の排水凹部をリヤバンパで覆うので、排水凹部形成部位の見栄えに対する悪影響もなくなる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記凹凸形状部がドア開口の下方領域の左右にそれぞれ設けられたものである。
上記構成によれば、ドア開口の下方領域の左右に上記凹凸形状部を設けたので、左右両側で確実に雨水(侵入水)を排除することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に、その該接合フランジ部沿い方向の外側から内側に向かってインナパネル側に一旦窪んだ後にアウタパネル側に突出する凹凸形状部を形成し、ウエザストリップの内向きシールリップ部が該凹凸形状部の外側を横断して配設され、内向きシールリップ部と凹凸形状部との間に水抜き空間を形成したので、万一雨水がシールリップ部を越えてウエザストリップ内に浸入しても、該雨水が溜まり加減になるドア開口の下方領域で車室側に溢れ出ることがなく、凹凸形状部とシールリップ部との間の水抜き空間から円滑に排水でき、また、凹凸形状部によりウエザストリップが大きく膨らむことがなく、見栄えの悪化も抑止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のドア開口部構造を備えた車両の斜視図
【図2】ドア開口部の構造を車両リヤ側から見た状態で示す背面図
【図3】ウエザストリップを嵌着した状態の図2の要部拡大図
【図4】ウエザストリップを取外した状態の要部拡大図
【図5】凹凸形状部が形成された部位の斜視図
【図6】図5の矢印Z方向から見た状態の説明図
【図7】図6のA−A線矢視断面図
【図8】図6のB−B線矢視断面図
【図9】図6のC−C線矢視断面図
【図10】図6のD−D線矢視断面図
【図11】凹凸形状部を示す拡大図
【図12】従来の車両のドア開口部構造を示す部分側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
万一雨水がシールリップ部を越えてウエザストリップ内に浸入しても、該雨水が溜まり加減になるドア開口の下方領域で車室側に溢れ出ることがなく、凹凸形状部とシールリップ部との間の水抜き空間から円滑に排水でき、また、凹凸形状部によりウエザストリップが大きく膨らむことがなく、見栄えの悪化も抑止することができるという目的を、車体におけるドア開口縁を形成するインナパネルとアウタパネルとの接合フランジ部に、ウエザストリップの内向きシールリップ部を嵌め、ドア開口を覆うドアの内面に該ウエザストリップの主シール部を圧接する車両のドア開口部構造において、上記アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に、該接合フランジ部沿い方向の外側から内側に向かってインナパネル側に一旦窪んだ後にアウタパネル側に突出する凹凸形状部を形成し、上記ウエザストリップの内向きシールリップ部が該凹凸形状部の外側を横断して配設され、上記内向きシールリップ部と凹凸形状部との間に水抜き空間を形成するという構成にて実現した。
【実施例】
【0016】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のドア開口部構造を示し、図1において、車両背面に形成されたドア開口1を覆うドアとしてのリフトゲート2を設けている。
【0017】
このリフトゲート2は、リフトゲートインナパネル3、リフトゲートアウタパネル4およびバックウインドガラス5を有し、該リフトゲート2の上端ヒンジ部を支点として開閉可能に構成されており、ボディとリフトゲート2との間に張架した左右一対のダンパ6,6で開閉をアシストするようになっている。
なお、図1において、7はリヤバンパ、8は左右のリヤコンビネーションランプ、9はフュエルリッド、10は左右の後輪である。
【0018】
図2はドア開口部の構造を車両リヤ側から見た状態で示す背面図、図3はウエザストリップを嵌着した状態の図2の要部拡大図、図4はウエザストリップを取外した状態の要部拡大図、図5は凹凸形状部が形成された部位を、斜め後方上方から目視した状態で示す斜視図である。
【0019】
図2において、ドア開口1の周縁部としてのドア開口縁11は、その上部においてはルーフパネル(アウタパネル)とリヤヘッダ(インナパネル)との接合フランジ部12で構成され、車両左側部においては同側のリヤサイドインナパネルとリヤサイドアウタパネルとの接合フランジ部13で構成され、車両右側部においては同側のリヤサイドインナパネルとリヤサイドアウタパネルとの接合フランジ部14で構成され、下部においては図5に示すインナパネル15の接合フランジ部16およびアウタパネル17の接合フランジ部18で構成されている。
【0020】
図2に示すように、上部(ルーフ側)において車幅方向に延びる接合フランジ部12と、左側リヤサイド部において略上下方向に延びる接合フランジ部13と、右側リヤサイド部において略上下方向に延びる接合フランジ部14と、下部において車幅方向に延びる接合フランジ部16,18(図5参照)とは、それぞれ別部材で形成されるが、これらの各接合フランジ部12,13,14,16,18を図2に示すように閉ループ状に連続させ、一体化されたドア開口縁11が構成されている。
また、ドア開口縁11を形成する各接合フランジ部12,13,14,16,18には、図1、図3に示すように、閉ループ状のウエザストリップ19を嵌め合わせている。なお、図3においてウエザストリップ19の嵌着時の上下方向の幅をaで示し、車幅方向の幅をbで示している。
【0021】
ここで、図3、図4、図5に示すアウタパネル17は車体下部外板パネルとしてのリヤエンドパネル20で構成されている。
上述のウエザストリップ19は、図7、図8、図9、図10に断面図で示すように、車室側から車外側に向けて延びる図示上側の2つの内向きシールリップ部19a,19bと、車外側から車室側に向けて延びる図示下側の2つの内向きシールリップ部19c,19dとを有しており、これらの各シールリップ部19a〜19dを上述の接合フランジ部12,13,14,16,18に嵌め合わせたものである。
【0022】
また、上述のウエザストリップ19は、図7〜図10に示すように、その内部を中空状と成した主シール部19eと、外向きおよび内向きシールリップ部19f,19gとを有し、主シール部19eを、リフトゲート2の閉時においてドア開口1を覆う該リフトゲート2の内面(荷室側の面)に圧接し、ボディとリフトゲート2との間をシールすべく構成している。
【0023】
図5、図6に示すように、ドア開口1の下方領域においては、インナパネル15とアウタパネル17との間に、後部車体剛性の向上を図るリヤエンドメンバ21を配設し、該リヤエンドメンバ21の後端部21aをインナパネル15の接合フランジ部16とアウタパネル17の接合フランジ部18との間に介設し、該リヤエンドメンバ21が介設される部分は、各要素16,21a,18を3枚重ねとしてスポット溶接が施されている。
【0024】
上述のリヤエンドメンバ21の後端部21aは、図5、図6に示すように、車幅方向の全幅にわたって介設されるものではなく、車幅方向の左端側および右端側においては各接合フランジ部16,18間にリヤエンドメンバ21の後端部21aが介設されない部分が存在し、このようにリヤエンドメンバ21の後端部21aが介設されない部分においては、2枚の接合フランジ部16,18を直接重ね合わせて、各要素16,18を2枚重ねとしてスポット溶接が施されている。
【0025】
図5、図6、図11に示すように、アウタパネル17の接合フランジ部18におけるドア開口1の下方領域には、該接合フランジ部18の肉厚中心部を基準として、該接合フランジ部18沿い、つまり、その車幅方向の外側から内側に向かってインナパネル15側に一旦窪んだ後にアウタパネル17側に突出する凹凸形状部30を形成している。
すなわち、この凹凸形状部30は、接合フランジ部18から一旦インナパネル15側へ窪む凹片30aと、この凹片30aの内端からアウタパネル17側に向けて突出する凸片30bとを有し、凹片30aと凸片30bとの折り返し部に相当する内端部30cは、接合フランジ部18の内面18aよりも内側(車室側)に位置し、凸片30bの突出端部30dは接合フランジ部18の外面18bよりも外側(車外側)に位置しており、凸片30bには突出斜面30eが形成されている。
【0026】
要するに、上述の凹凸形状部30は、車幅方向の外側から内側に向かってインナパネル15側(車室側)に一旦窪んだ後に、接合フランジ部18の外面18bを越えてアウタパネル17側(車外側)に突出しているため、図11に矢印xで示すように、雨水が流れてきても、その突出斜面30eにより雨水を確実に受け止めて次に述べる水抜き空間31(開放空間)に導くことができるという効果がある。
因に、上記凹凸形状部30に代えて、単に接合フランジ部18をインナパネル15側(車室側)に窪ませる構造を採用すると、上述の如き突出斜面30eが形成されないので、雨水が水抜き空間を越えて流れる可能性があるため、好ましくない。
【0027】
図5に示すように、上述の各接合フランジ部16,18は、内低外高状に傾斜、つまり、斜め後方かつ上方に向けて傾斜しており、上述の凹凸形状部30はアウタパネル17の接合フランジ部18にそのフランジ長さの全幅にわたって一体形成されたものである。
【0028】
図6、図9、図11に示すように、上述のウエザストリップ19の下側の2つの各内向きシールリップ部19c,19dは凹凸形状部30の外側を横断して配設されており、これらの内向きシールリップ部19c,19dと凹凸形状部30との間には、図5に示す矢印Z視において略三角形状の水抜き空間(いわゆる水抜きエリア)31が、接合フランジ部18のフランジ長さの全幅にわたって形成されている。
【0029】
ところで、図11に示すように、インナパネル15の接合フランジ部16とアウタパネル17の接合フランジ部18との間にリヤエンドメンバ21の後端部21aを介設する関係上、該リヤエンドメンバ21の後端部21aの車幅方向外端部21bと対応して、インナパネル15側の接合フランジ部16と、アウタパネル17側の接合フランジ部18とには、それぞれ傾斜部16a,18cを一体形成している。
【0030】
一方、アウタパネル17側の接合フランジ部18には、上述の凹凸形状部30の突出端部30dから車幅方向内方に向かって緩角度で傾斜するスラント部18dを一体形成している(図11参照)。
【0031】
なお、図11に示すように、インナパネル15の接合フランジ部16およびリヤエンドメンバ21の後端部21aは、凹凸形状部30の内端部30cと対向する部分が他部に対して車室側に位置するように形成されている。
上述したように、ドア開口1を開閉可能に覆うドアはリフトゲート2(図1参照)であり、また、上述のアウタパネル17はリヤエンドパネル20であって、図5、図6に示すように、該リヤエンドパネル20には、上述の凹凸形状部30に連なる排水凹部32が一体形成されている。
【0032】
図5の斜視図から明らかなように、上述の排水凹部32はフロント側に窪むもので、凹凸形状部30による水抜き空間31(開放空間)と連通しており、該水抜き空間31に流入した雨水を、排水凹部32から車外側に流出するようになっている。
【0033】
図5、図6に示すように、この実施例では、上述の排水凹部32は、接合フランジ部18の車幅方向内側のスラント部18dから車幅方向外側の傾斜部18cにわたって所定の車幅方向の幅を有するように形成されているが、該排水凹部32は水抜き空間31に連通しておればよく、車幅方向の幅は図示の構成に限定されるものではない。
【0034】
さらに、図8、図9、図10に示すように、上述の排水凹部32はリヤバンパ7の上縁部で車外側(リヤ側)から覆われると共に、ウエザストリップ19の外向きシールリップ部19fは、該リヤバンパ7の上縁部外面にその車外側から当接しており、この構成により、排水凹部32が形成された部位の見栄えを確保している。
【0035】
図3〜図11においては、ドア開口1の下方領域における右側部の構造について説明したが、上述の凹凸形状部30、水抜き空間31、排水凹部32は、ドア開口の下方領域における左側部にも設けられている(図2参照)。
【0036】
車両右側部の凹凸形状部30、水抜き空間31、排水凹部32と、車両左側部の凹凸形状部30、水抜き空間31、排水凹部32とは、左右対称または左右略対称に形成されるものである。つまり、図2に示すように、これらの各要素30,31,32はドア開口1の下方領域の左右にそれぞれ設けられたものである。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向内方を示し、矢印OUTは車幅方向外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0037】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
図2に示すドア開口縁11を形成する接合フランジ部12,13,14,16,18に対するウエザストリップ19の装着時において、シールリップ部の向きの部分的な不具合など(装着ミス)に起因して、内向きシールリップ部19cを越えてウエザストリップ19内に雨水が浸入する場合がある。
【0038】
このような雨水の浸入が、ドア開口1の上方領域、つまりルーフ側の接合フランジ部12またはリヤサイド側の接合フランジ部13,14の上側過半部対応位置で発生すると、雨水はシールリップ部19c,19d間を伝って下方に流れ、図7、図8、図9、図10に示すウエザストリップ19の下方領域において、シールリップ部19c,19d間に雨水が溜り加減になる。
このシールリップ部19c,19d間の雨水の量が増加すると、該雨水はシールリップ部19cをオーバフローして水抜き空間31に流出し、この水抜き空間31の雨水は図9に矢印yで示すように、排水凹部32を通って車外に排出される。
【0039】
このように、上記実施例の車両のドア開口部構造は、車体におけるドア開口縁11を形成するインナパネル15とアウタパネル17との接合フランジ部16,18に、ウエザストリップ19の内向きシールリップ部19a,19b,19c,19dを嵌め、ドア開口1を覆うドア(リフトゲート2参照)の内面に該ウエザストリップ19の主シール部19eを圧接する車両のドア開口部構造であって、上記アウタパネル17の接合フランジ部18におけるドア開口1の下方領域に、その車幅方向の外側から内側に向かってインナパネル15側に一旦窪んだ後にアウタパネル17側に突出する凹凸形状部30を形成し、上記ウエザストリップ19の内向きシールリップ部19c,19dが該凹凸形状部30の外側を横断して配設され、上記内向きシールリップ部19c,19dと凹凸形状部30との間に水抜き空間31が形成されたものである(図1、図2、図6、図9、図11参照)。
【0040】
この構成によれば、内向きシールリップ部19c,19dと凹凸形状部30との間に水抜き空間31を形成したので、万一雨水がシールリップ部19cを越えてウエザストリップ19内に侵入しても、該雨水が溜まり加減になるドア開口1の下方領域で車室側に溢れ出ることがなく、上述の凹凸形状部30とシールリップ部19cとの間の水抜き空間31から円滑に排水することができる。
【0041】
また、上述の凹凸形状部30は、車幅方向の外側から内側に向かってインナパネル15側に一旦窪んだ後にアウタパネル17側に突出するものであるから、ウエザストリップ19が大きく膨らむことがなく、該ウエザストリップ19の装着性確保と、見栄えの悪化防止との両立を図ることができる。
因に、アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に内方にのみ突出する形状部を形成した場合、または、アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に外方にのみ突出する形状部を形成した場合の何れにおいても、水抜き空間を形成することができるが、このような場合には、該形状部に対応して、ウエザストリップが部分的に大きく膨出して、見栄えの悪化を招くのみならず、接合フランジ部に対するウエザストリップの装着性、組付け性が悪化するので望ましくはない。
【0042】
また、上記ドアがリフトゲート2であり、上記アウタパネル17がリヤエンドパネル20であり、該リヤエンドパネル20には、上記凹凸形状部30に連なる排水凹部32が形成され、該排水凹部32がリヤバンパ7の上縁部で覆われたものである(図1、図6、図9参照)。
この構成によれば、特に、ドア開口縁11が複数のパネル部材から構成され、シールリップ部によるシール性が厳しいリフトゲート2において、そのシール機能のバックアップを良好に行なうことができ、また上述の排水凹部32をリヤバンパ7で覆うので、排水凹部形成部位の見栄えに対する悪影響もなくなる。
【0043】
さらに、上記凹凸形状部30がドア開口1の下方領域の左右にそれぞれ設けられたものである(図2参照)。
この構成によれば、ドア開口1の下方領域の左右に上記凹凸形状部30,30を設けたので、左右両側で確実に雨水(侵入水)を排除することができる。
【0044】
また、実施例で開示したように、上記凹凸形状部30を、車幅方向の外側から内側に向かってインナパネル15側(車室側)に一旦窪んだ後に、接合フランジ部18の外面18bを越えてアウタパネル17側(車外側)に突出するように構成すると、雨水が流れてきても、その突出斜面30eにより雨水を確実に止めて水抜き空間31に導くことができる効果がある。
【0045】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のドアは、実施例のリフトゲート2に対応するも
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、トランクリッドやサイドドアであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…ドア開口
2…リフトゲート(ドア)
11…ドア開口縁
15…インナパネル
16,18…接合フランジ部
17…アウタパネル
19…ウエザストリップ
19a,19b,19c,19d…内向きシールリップ部
19e…主シール部
20…リヤエンドパネル
30…凹凸形状部
31…水抜き空間
32…排水凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体におけるドア開口縁を形成するインナパネルとアウタパネルとの接合フランジ部に、ウエザストリップの内向きシールリップ部を嵌め、
ドア開口を覆うドアの内面に該ウエザストリップの主シール部を圧接する
車両のドア開口部構造であって、
上記アウタパネルの接合フランジ部におけるドア開口の下方領域に、該接合フランジ部沿い方向の外側から内側に向かってインナパネル側に一旦窪んだ後にアウタパネル側に突出する凹凸形状部を形成し、
上記ウエザストリップの内向きシールリップ部が該凹凸形状部の外側を横断して配設され、
上記内向きシールリップ部と凹凸形状部との間に水抜き空間が形成された
車両のドア開口部構造。
【請求項2】
上記ドアがリフトゲートであり、
上記アウタパネルがリヤエンドパネルであり、
該リヤエンドパネルには、上記凹凸形状部に連なる排水凹部が形成され、
該排水凹部がリヤバンパの上縁部で覆われた
請求項1記載の車両のドア開口部構造。
【請求項3】
上記凹凸形状部がドア開口の下方領域の左右にそれぞれ設けられた
請求項2記載の車両のドア開口部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−158275(P2012−158275A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20358(P2011−20358)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】