説明

車両のニーボルスター

【課題】取付位置周りの部品の構造や見栄えの制約を受けず、外力によって加わるエネルギーを吸収することができる、車両のニーボルスターを提供する。
【解決手段】ニーボルスターパッド11の先端部11aにニーボルスターカバー12を装着して、ニーボルスターパッドの胴体部11gを露出するように、車両のニーボルスターを構成する。インスツルメントパネル15がパネル本体15bの下端にロアパネル15cを締結してなり、ニーボルスターカバー12をニーボルスターパッド11に装着した状態で、ニーボルスターパッド11及びニーボルスターカバー12には窪んだ受け部が設けられており、その受け部によってパネル本体15bとロアパネル15cとの締結部15aが支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のインスツルメントパネルの内側で着座者の膝に対向するように設けられる車両のニーボルスターに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の急激な加速度の変化や衝突の際に、乗員を保護するために各種の衝撃吸収構造体が車両に取り付けられている。側面衝突における乗員の保護として、特許文献1には、側面衝突の際に固定部材の弱体化を図りつつ通常時における衝撃吸収材の脱落を防止することを目的とした、車両用衝撃吸収材の取付構造が開示されている。特許文献2には、サイドインパクトビームに対向して配置されるパッドにプレートを設けることにより、側面衝突によってパッドが局部的に潰れないようにした、車両用衝突吸収構造について開示されている。
【0003】
また、車両の急減速や前面衝突の際、乗員の膝がインスツルメントパネルの下部に衝突したとき乗員の膝を受け止めるブロック状のニーボルスターが用いられている。
【0004】
ニーボルスターは、インスツルメントパネルの内側で着座者の膝に対向するように配置されている。図3は、従来のニーボルスターを模式的に示し、(a)は衝突前の状態を、(b)は衝突後の状態を示す図である。図3(a)に示すように、サポートメンバー51がインスツルメントパネル52の内側に車幅方向に延びるように設けられ、ニーボルスター53がサポートメンバー51にブラケット54を介在して取り付けられている。
【0005】
前面衝突により着座者の膝がインスツルメントパネル52側に移動すると、図3(b)に示すように、インスツルメントパネル52がゆがみ、ロアパネル52aがニーボルスター53に当接して膝Nからの力が加わりニーボルスター53の先端部が潰れて変形する。このように、衝突によって膝Nからの急激な衝撃エネルギーをニーボルスター53の先端部が吸収し、着座者の腰部が前方へ移動することを制止している。
【0006】
ここで、ニーボルスター53は硬質発泡材を成形して作製されており、ニーボルスター53が衝撃の吸収により安定して潰れるため、ニーボルスター53の取付周りの部品と干渉しないようそれらの部品の取付位置や形状等を設定しなければならない。
【0007】
そのため、例えば、インスツルメントパネル52において、パネル本体52bの下端にロアパネル52aが取り付けられており、パネル本体52bとロアパネツ52aとの締結部52cは、ニーボルスター53よりも高い位置に設定されている。
【0008】
このようなニーボルスターについて、特許文献3では、ニーボルスターが圧縮変形するときにウレタン材が破砕する起点となるニーボルスターの側部周面に、シート状の被覆部材を貼着することにより、ニーボルスターの破砕を防止することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-280319号公報
【特許文献2】特開2011-121485号公報
【特許文献3】特開2007-176268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図3に示すように、ニーボルスター53が安定して潰れるために、インスツルメントパネル52におけるパネル本体52bとロアパネル52aとの締結部52cがニーボルスター53よりも高い位置となるようにしなければならない。すると、ロアパネル52aとパネル本体52bとの締結状態を弱めることになる。また、見切りを変更する必要があるため、見栄えが悪くなるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明では、ニーボルスターの取付位置周りの部品の構造や見栄えを制約することなく、外力によって加わるエネルギーを十分吸収することができる、車両のニーボルスターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、車両のインスツルメントパネルの内側で乗員の膝に対向するように設けられる車両のニーボルスターにおいて、ニーボルスターカバーがニーボルスターパッドの先端部に装着されており、ニーボルスターパッドにおける先端部以外の胴体部にはニーボルスターカバーが被さっておらず露出していることを特徴とする。
【0013】
上記構成において、インスツルメントパネルがパネル本体の下端にロアパネルを締結してなり、ニーボルスターカバーがニーボルスターパッドの先端部に装着された状態で、ニーボルスターパッド及びニーボルスターカバーに窪んだ受け部が設けられており、この受け部でパネル本体とロアパネルとの締結部を支持する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ニーボルスターパッドの先端部にニーボルスターカバーが装着されているため、ニーボルスターパッドの取付位置周りの部品により割れたり粉砕したりし難く、衝撃エネルギーをニーボルスターパッドの先端部以外の胴体部に伝え、胴体部に衝撃が加わることで胴体部が潰れ、衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。これにより、ニーボルスターの取付位置周りの部品の構造や見栄えの制約が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のニーボルスターを示し、(a)は衝突前の状態を、(b)は衝突後の状態を示す図である。
【図2】図1に示す車両のニーボルスターの概略分解図である。
【図3】従来のニーボルスターを模式的に示し、(a)は衝突前の状態を、(b)は衝突後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る車両のニーボルスターを示しており、(a)は衝突前の状態を、(b)は衝突後の状態を示す図である。図2は図1に示す車両のニーボルスターの概略分解図である。
【0017】
本発明の実施形態に係る車両のニーボルスター10は、図2に示すように、ニーボルスターパッド11の先端部11aにニーボルスターカバー12を装着したものである。
【0018】
ニーボルスター10は、図1に示すように、着座者の膝に対向するようにインスツルメントパネル15の内側に左右で対となるように配置される。図1では左右対の一方だけを示している。ニーボルスターパッド11は、着座者の膝から受ける衝撃エネルギーを吸収するのに必要な寸法を有しており、ウレタン材などのクッション材でブロック状に成形されている。
【0019】
ニーボルスターパッド11は、図1に示すように、着座者の膝Nに対向するように斜めに取り付けられた取付ブラケット13に取り付けられ、取付ブラケット13との接触面11bから膝Nに対向するように膨出して先端部11aを備えている。ニーボルスターパッド11は、図2に示すように、接触面11bとなる底面から車幅方向に垂直な断面が略台形状となるように膨出して、車幅方向両側面11c,11dが左右外方向に対向するように斜めに傾斜して、先端部11aが車幅方向に狭くなっている。
【0020】
ニーボルスターパッド11の先端部11aはインスツルメントパネルとの対向面に窪んだ受け部11eを備えている。窪んだ受け部11eは、ニーボルスターパッド11の先端部11aにニーボルスターカバー12が装着された状態で、窪んだ受け部11eがパネル本体15bとロアパネル15cとの締結部15aを支持する。窪んだ受け部11eはニーボルスターパッド11の先端部11aにおいて図示では向かって左側に形成され、向かって右側には凹面部11fが形成されている。凹面部11fは、インスツルメントパネルの内側に収容される各部品との干渉を避けるためのものである。本発明を適用するに際して、凹み受け部11eと凹面部11fとは、図示した場合と異なり、左右が逆に設けられていてもよい。
【0021】
ニーボルスターカバー12は、ニーボルスターパッド11の先端部11aに装着されるものである。ニーボルスターカバー12は、ニーボルスターパッド11の先端部11aに沿った内周面を有しており、ニーボルスターカバー12は、窪んだ受け部11e及び凹面部11fに対応するように窪んだ受け部12e及び凹面部12fを備え、開口縁部12aの末端が外に開いている。ニーボルスターカバー12は、ニーボルスターパッド11よりも変形しにくい例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂で成形されている。
【0022】
図1(a)に示すように、インスツルメントパネル15内にサポートメンバー16が車幅方向に延びて設けられ、取付ブラケット13が着座者の膝Nと対向するように斜め上に向けて設けられ、ニーボルスターパッド11が取付ブラケット13から膝Nに向けて膨出するように設けられている。ニーボルスターパッド11の先端部11aにはニーボルスターカバー12が装着される。その際、ニーボルスターパッド11の先端部11aにおける窪んだ受け部11eがニーボルスターカバー12の受け部12eで覆われ、先端部11aにおける凹面部11fがニーボルスターカバー12の凹面部12fにより覆われている。その装着状態において、ニーボルスターパッド11の先端部11a以外の胴体部11gがニーボルスターカバー12に覆われることなく露出している。そのようなニーボルスター10の着座者側には、インスツルメントパネル15におけるパネル本体15bとその下端に設けられたロアパネル15cとが締結されており、その締結部15aが窪んだ受け部11e,12eによって支持されている。
【0023】
ニーボルスターカバー12が比較的変形しにくいポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂で成形されているので、締結部15aが当接しても粉砕されにくい。つまり、ニーボルスター10の配置領域の周りの部品の取付爪や突起部がニーボルスター10に当接してもニーボルスターパッド11が割れ難く粉砕され難い。
【0024】
車両の前後方向の衝突や急停止等により着座者の膝Nがインスツルメントパネル15に相対的に前方へ移動すると、図1(b)に示すように、着座者の膝Nがインスツルメントパネル15に衝突しインスツルメントパネル15が前方に押圧される。すると、締結部15aを経由してニーボルスター10に衝撃を加えることになる。ニーボルスターパッド11の先端部11a以外の胴体部11gにはニーボルスターカバー11が被さっていないため、ニーボルスターパッド11の胴体部11gが押圧によって前後方向に潰れてストロークし、衝撃エネルギーを効率よく吸収する。そのため、胴体部11gをストローク分だけ露出するようにしておけばよい。
【0025】
ニーボルスターパッド11の先端部11aにニーボルスターカバー12を装着していない場合には、ニーボルスターパッド11が砕けて衝撃エネルギーを効率よく吸収できないことになるが、本発明の実施形態ではそのようなことが生じず衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。
【0026】
本発明の実施形態では、ニーボルスターパッド11にニーボルスターカバー12を装着していることにより、ニーボルスター10の周りに取り付けられた各種部品の取付爪や突起部や各種部品がニーボルスターパッド11と干渉することで、ニーボルスターパッド11が割れたり破損したりすることを防止することができる。
【0027】
しかも、ニーボルスターパッド11全体をニーボルスターカバー12で覆うことなく、ニーボルスターパッド11の根元部分となる胴体部11gを露出しており、車両の急停止や前後方向の衝突により着座者の膝Nがインスツルメントパネル15に衝突しても、ニーボルスターパッド11の胴体部11gがその衝突エネルギーにより潰れて衝撃エネルギーを吸収する。このように、ニーボルスターパッド11の潰れる分、つまりストローク分露出しているため、衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。
【0028】
また、ニーボルスターカバー12の開口縁部12aが広がっていることにより、ニーボルスターカバー12をニーボルスターパッド11に装着し易く、衝撃が加わってもニーボルスターカバー12の開口縁部12aのエッジによりニーボルスターパッド11が削られることないため、衝撃エネルギーの吸収機能が弱められない。
【0029】
なお、図示した実施形態に限らず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
10:ニーボルスター
11:ニーボルスターパッド
11a:ニーボルスターパッドの先端部
11b:接触面
11c,11d:ニーボルスターパッドの側面
11e:ニーボルスターパッドの受け部
11f:凹面部
11g:胴体部
12:ニーボルスターカバー
12a:開口縁部
12e:受け部
12f:凹面部
13:取付ブラケット
15:インスツルメントパネル
15a:締結部
15b:パネル本体
15c:ロアパネル
16:サポートメンバー
N:着座者の膝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインスツルメントパネルの内側で乗員の膝に対向するように設けられる車両のニーボルスターにおいて、
ニーボルスターカバーがニーボルスターパッドの先端部に装着されており、上記ニーボルスターパッドにおける先端部以外の胴体部には上記ニーボルスターカバーが被さっておらず露出していることを特徴とする、車両のニーボルスター。
【請求項2】
前記インスツルメントパネルがパネル本体の下端にロアパネルを締結してなり、
前記ニーボルスターカバーが前記ニーボルスターパッドの先端部に装着された状態で、前記ニーボルスターパッド及び前記ニーボルスターカバーには窪んだ受け部が設けられており、
上記受け部が上記パネル本体と上記ロアパネルとの締結部を支持する、請求項1に記載の車両のニーボルスター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−112177(P2013−112177A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260451(P2011−260451)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)