説明

車両のバックドア開口肩部の補強構造

【課題】バックドア開口肩部の剛性や車体の捩じり剛性を向上させ、サイドボディアウタパネルとルーフパネルとの重ね合わせ部分の変形等を低減させ、サイドボディアウタパネルへの上下方向の荷重をクォータインナパナルなどに分散させる。
【解決手段】ルーフ組立部品Rと、サイドボディ組立部品Sとが接合された車体からなるバックドア開口肩部2の補強構造において、開口肩部2に位置するアウタパネル7の下方には、車両前後方向に延在し、開口肩部2の閉断面部を車両前方視で2分割するリンフォースパネル15が車両上下方向に沿って配置され、ルーフレール部で、リンフォースパネルの上端部とサアウタパネルとが接合され、ルーフ部材5,6とアウタパネルとが接合され、リンフォースパネルの上端部とルーフ部材6とが締結され、リンフォースパネルの下端部は、クォータインナパネル9に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、車体後方の上部にドアヒンジ部を有し、バックドアが上方へ開くタイプのハッチバック車両におけるバックドア開口肩部の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハッチバック車両のバックドア開口部は、積載能力を高めたり、あるいは荷物の積み降ろし作業性を向上させるために、車体後部において大きな面積を有するように設計されている。一方、バックドア開口部の面積を大きく形成した場合は、車両全体の剛性が減少するため、バックドア開口部周辺の剛性を増大させる必要がある。
【0003】
そこで、従来のハッチバック車両の中には、バックドア開口部の上側コーナ部などの肩部を構成するパネルなどの接合剛性を高めることによって、バックドア開口部を補強するようにした構造のものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−96758号公報
【特許文献2】特開2008−49760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のバックドア開口肩部の補強構造にあっては、バックドア開口肩部の閉断面部内にサイドボディアウタパネルとルーフパネルとを連結するような部品が設けられていないので、バックドア開口肩部の閉断面部の剛性を向上させることが難しく、バックドアの開閉操作時の荷重や走行時の荷重による車体の捩じれなどの外部荷重によって閉断面部が変形しやすくなり、サイドボディアウタパネルとルーフパネルとの重ね合わせ部分のスポット溶接部に応力が集中してしまうおそれがあった。
バックドア開口部の剛性は、バックドアの開閉操作時の荷重を支え、形状を保つことで開閉操作時の品質(しっくり感やドア閉め時のチャック音の品質など)を保持するものである。しかも、バックドア開口部の剛性は、車体後部の剛性に影響を及ぼすので、車体全体の捩じり剛性に寄与するとともに、車両の品質や操縦安定性の向上に寄与するものである。このため、バックドア開口肩部の剛性を確保する必要がある。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、バックドア開口肩部の剛性及び車体の捩じり剛性を向上させ、サイドボディアウタパネルとルーフパネルとの重ね合わせ部分の変形や応力集中を低減させるとともに、バックドアの開閉操作によるサイドボディアウタパネルへの上下方向の荷重をクォータインナパナルなどに効果的に分散させることが可能な車両のバックドア開口肩部の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車両側方に車両前後方向に沿って延在するルーフレール部が設けられているルーフ部材を備えたルーフ組立部品と、サイドボディアウタパネル及びクォータインナパネルを備えたサイドボディ組立部品とを有し、前記ルーフ組立部品と前記サイドボディ組立部品とが接合された車体から構成されている車両のバックドア開口肩部の補強構造において、前記バックドア開口肩部に位置する前記サイドボディアウタパネルの下方には、車両前後方向に延在し、前記バックドア開口肩部の閉断面部を車両前方視で2分割するリンフォースパネルが車両上下方向に沿って配置され、前記ルーフレール部で、前記リンフォースパネルの上端部と前記サイドボディアウタパネルとが接合され、前記ルーフ部材と前記サイドボディアウタパネルとが接合されているとともに、前記リンフォースパネルの上端部と前記ルーフ部材とが接合され、前記リンフォースパネルの下端部は、前記クォータインナパネルに接合されている。
【0008】
本発明において、前記リンフォースパネルの車両上下方向中間部分の下側は、車両外方に向かって突出するくの字状に屈曲形成され、該屈曲部の車両幅方向内側は、前記サイドボディアウタパネルの車両後方に位置するバックドアハーネスの挿通孔と車両前後方向で合わせて配置されている一方、前記リンフォースパネルの下端部の接合フランジは、車両前後方向で前記クォータインナパネルに沿って設けられている。
【0009】
また、本発明において、前記リンフォースパネルの上端部の前記ルーフ部材側への接合のうち、少なくとも1つは、前記ルーフレール部より車両幅方向内側の位置で締結され、前記リンフォースパネルの下端部の前記クォータインナパネル側への接合は、前記ルーフレール部より車両幅方向外側の位置で行われている。
【0010】
さらに、本発明において、前記リンフォースパネルの下端部との接合部分より車両幅方向内側の箇所の前記クォータインナパネルには、前記ルーフ部材側への締結に用いられる締結具の取り出し用の貫通孔が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
上述の如く、本発明に係る車両のバックドア開口肩部の補強構造は、車両側方に車両前後方向に沿って延在するルーフレール部が設けられているルーフ部材を備えたルーフ組立部品と、サイドボディアウタパネル及びクォータインナパネルを備えたサイドボディ組立部品とを有し、前記ルーフ組立部品と前記サイドボディ組立部品とが接合された車体から構成されているものであって、前記バックドア開口肩部に位置する前記サイドボディアウタパネルの下方には、車両前後方向に延在し、前記バックドア開口肩部の閉断面部を車両前方視で2分割するリンフォースパネルが車両上下方向に沿って配置され、前記ルーフレール部で、前記リンフォースパネルの上端部と前記サイドボディアウタパネルとが接合され、前記ルーフ部材と前記サイドボディアウタパネルとが接合されているとともに、前記リンフォースパネルの上端部と前記ルーフ部材とが接合され、前記リンフォースパネルの下端部は、前記クォータインナパネルに接合されている。
したがって、本発明の補強構造においては、バックドア開口肩部の車体を構成するアウタパネルとインナパネルとが車両上下方向に沿って配置したリンフォースパネルにより連結されることになるので、バックドア開口肩部の剛性と車体の捩じり剛性を向上させることができ、バックドア開閉操作時の品質を保持するとともに操縦安定性を向上させることができる。また、本発明の補強構造によれば、バックドアの開閉操作時におけるアウタパネルへの車両上下方向の荷重に対しても、リンフォースパネルが当該荷重をインナパネルに分散させ、車体全体で吸収することができる。しかも、本発明の補強構造においては、ルーフレール部を形成する凹部によって剛性が向上している部分で、リンフォースパネルがルーフ部材に接合されているので、ルーフ部材とサイドボディアウタパネルとの結合剛性を向上させることが可能となり、ルーフ部材とサイドボディアウタパネルとの重ね合わせ部分の変形や応力集中を低減できるとともに、バックドアの開閉操作によるサイドボディアウタパネルへの上下方向の荷重をクォータインナパナルなどに効果的に分散させて吸収することができる。
【0012】
また、本発明の補強構造において、前記リンフォースパネルの車両上下方向中間部分の下側は、車両外方に向かって突出するくの字状に屈曲形成されているので、外部からの過度の荷重に対してリンフォースパネルがくの字状屈曲部で変形することにより、インナパネルへの荷重分散をコントロールすることが可能となり、局所的な変形を低減させることができる。しかも、本発明の補強構造において、前記リンフォースパネルの屈曲部の車両幅方向内側は、前記サイドボディアウタパネルの車両後方に位置するバックドアハーネスの挿通孔と車両前後方向で合わせて配置されているので、バックドアへのハーネスの配索時に、リンフォースパネルがハーネスをガイドする役割を果たすことになるとともに、設置後はハーネスをパタ付かないように支持する役割を果たすことになり、ハーネスの配索作業性を向上させことができる上、走行中の異音発生を抑えることができる。
そして、本発明の補強構造において、前記リンフォースパネルの下端部の接合フランジは、車両前後方向で前記クォータインナパネルに沿って設けられているので、車体外側のルーフサイドリンフォースと車体内側のクォータインナパネルとの間の閉空間におけるリンフォースパネルの上端部の締結作業で、ボルトなどの締結具を取り落とした際でも、落とした締結具はリンフォースパネルの「くの字状」の屈曲部で止まり、サイドボディ組立部品の中に入り込むことを防ぐことができるとともに、簡単に回収することもできる。なお、サイドボディ組立部品の中に異物である締結具が入り込んだ場合、サイドボディ組立部品の下方に取り出し用の孔等の性能には関係のない構造を設ける必要があり、その結果、車体剛性の低下や構造の複雑化を招くことが懸念されることになる。
【0013】
さらに、本発明の補強構造において、前記リンフォースパネルの上端部の前記ルーフ部材側への接合のうち、少なくとも1つは、前記ルーフレール部より車両幅方向内側の位置で締結され、前記リンフォースパネルの下端部の前記クォータインナパネル側への接合は、前記ルーフレール部より車両幅方向外側の位置で行われているので、リンフォースパネルの上下端部の取付けが剛性を有するルーフレール部を挟んで車両幅方向の内側と外側で行われることになり、車両外方に向かって「くの字」状に形成した屈曲部も協働して、車両幅方向に作用する車体捩じりの変形を小さくすることができる。
【0014】
そして、本発明の補強構造において、前記リンフォースパネルの下端部との接合部分より車両幅方向内側の箇所の前記クォータインナパネルには、前記ルーフ部材側への締結に用いられる締結具の取り出し用の貫通孔が設けられているので、バックドアハーネスや締結具等の取付時に、作業孔とは別にのぞき孔を確保できるとともに、閉断面部内に落下した締結具を貫通孔より容易に回収でき、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るバックドア開口肩部の補強構造が適用された車両の後部を斜め上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバックドア開口肩部の補強構造が適用された車両の室内側後部の要部を斜め下方から見た斜視図である。
【図3】図2におけるX部を拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るバックドア開口肩部の補強構造が適用された車両の室内側後部の要部を下方から見た拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るバックドア開口肩部の補強構造が適用された車両の後部を後方から見た拡大斜視図である。
【図6】図4におけるA−A線断面図である。
【図7】図4におけるB−B線断面図である。
【図8】図4におけるC−C線断面図である。
【図9】図4におけるD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図9は本発明の実施形態に係る車両のバックドア開口肩部の補強構造を示すものである。
【0017】
図1〜図5に示すように、本発明の実施形態に係る補強構造が適用される車両は、車体後方の上部にドアヒンジ部を有し、図示しないバックドアが上方へ開くタイプのハッチバック車両であり、車体後部には、バックドアによって開閉されるバックドア開口部1が設けられている。そのため、バックドア開口部1の車両上方に位置する左右両側コーナ部付近のバックドア開口肩部2には、バックドアを回動可能に支持するバックドアヒンジのヒンジ取付部3がそれぞれ設けられている。
なお、図1〜図9において、矢印F方向は車両前方側、矢印O方向は車両外方側、矢印U方向は車両上方側をそれぞれ示している。
【0018】
バックドア開口肩部2は、図1〜図9に示すように、車両側方に車両前後方向に沿って延在する凹部形状のルーフレール部(ルーフモールの溝)4が設けられ、ルーフ部材を構成するルーフパネル5及びルーフサイドリンフォース6を備えたルーフ組立部品Rと、サイドボディアウタパネル7、サイドボディアウタエクステンションパネル8、クォータインナパネル9及びクォータインナエクステンションパネル10を備えたサイドボディ組立部品Sとを有している。そして、バックドア開口肩部2は、ルーフ組立部品Rとサイドボディ組立部品Sとが接合された車体から構成されている。
【0019】
ルーフサイドリンフォース6は、図6〜図9に示すように、ルーフパネル5を補強するため、当該ルーフパネル5の下方に沿って設けられており、ルーフレール部4が配設された外側端部において、ルーフパネル5及びサイドボディアウタパネル7と3枚重ねでスポット溶接により接合されている。しかも、ルーフレール部4と隣接するルーフサイドリンフォース6の箇所には、締結具の締付ボルト11を挿入するボルト孔12が穿設されており、ルーフサイドリンフォース6の上面には、締付ボルト11と螺合する溶接ナット13がボルト孔12の位置と対応して固着されている。
また、ヒンジ取付部3を含むルーフパネル5の下方であって、ルーフパネル6の車両後方側の辺部には、図2〜図4に示すように、ルーフ組立部品Rのルーフバックインナパネル14が設けられている。このルーフバックインナパネル14の車両幅方向の左右両端部は、サイドボディ組立部品Sのクォータインナパネル9にスポット溶接により接合されている。クォータインナパネル9には、接合箇所に対応してスポット溶接、ボルト締結及び作業状況を確認するための覗き窓を兼用する作業孔9aが車両幅方向へ延在すべく穿設され、同様に作業孔9bが穿設されている。この作業孔9a,9bには、スポット溶接を行う溶接ガン及びボルトなどの締結具を締め付ける工具が挿入されるようになっている。
【0020】
ルーフレール部4は、スポット溶接用の溝としても使用されるものであり、断面略L字状に折り曲げられたルーフパネル5の車両外方側の端部と、断面略L字状に折り曲げられたサイドボディアウタパネル7の車両内方側の端部とを重ね合わせてスポット溶接にて接合することにより、断面略U字状の凹部に形成されており、バックドア開口肩部2の箇所においては、後述のリンフォースパネル15の溶接用の作業孔15dを介して、ルーフパネル5及びルーフサイドリンフォース6の車両外方側の端部とサイドボディアウタパネル7とが3枚重ねの状態で、スポット溶接にて接合されている(図6参照)。
【0021】
本実施形態のバックドア開口肩部2に位置するサイドボディアウタパネル7の下方には、図2〜図9に示すように、当該バックドア開口肩部2を補強するリンフォースパネル15が設けられている。このリンフォースパネル15は、図3及び図6に示すように、車両前後方向に延在し、バックドア開口肩部2の閉断面部を車両前方視で左右に2分割する平面パネルであり、車両上下方向に沿って配置されている。そして、本実施形態の補強構造では、ルーフレール部4において、リンフォースパネル15の上端部15aとサイドボディアウタパネル7とがスポット溶接で接合され、ルーフ部材のルーフパネル5及びルーフサイドリンフォース6とサイドボディアウタパネル7とがスポット溶接で接合されているとともに、リンフォースパネル15の上端部15aとルーフ部材のルーフサイドリンフォース6とが締付ボルト11及び溶接ナット13による締結で接合され、リンフォースパネル15の下端部15bは、クォータインナパネル9にスポット溶接で接合されている。これにより、図6の矢印Y方向で示す車両上下方向の荷重に対して、リンフォースパネル15が、アウタパネル側のルーフパネル5、ルーフサイドリンフォース6及びサイドボディアウタパネル7や、インナパネル側のクォータインナパネル9に分散させ、車体全体で吸収するように構成されている。
【0022】
また、本実施形態の特徴部分であるリンフォースパネル15の車両上下方向中間部分の下側は、図3及び図6に示すように、車両外方に向かって突出するくの字状に屈曲形成されており、外部からの過度の荷重に対して当該屈曲部15cで変形するようになっている。しかも、屈曲部15cの車両幅方向内側は、図3及び図5に示すように、サイドボディアウタパネル7の車両後方に位置するバックドアハーネス(図示せず)の挿通孔16と車両前後方向で合わせて配置されており、リンフォースパネル15が、ハーネス配索時に当該ハーネスをガイドするとともに、ハーネス配置後に当該ハーネスを支持するような役割を果たすように構成されている。なお、バックドアハーネスの挿通孔16は、サイドボディアウタパネル7の車両後方に配置されるサイドボディアウタエクステンションパネル8の上端部に穿設されている。
【0023】
リンフォースパネル15の上端部15aは、ルーフサイドリンフォース6の下面に沿って平面状に延在しており、作業孔15dよりも先端側には、締付ボルト11を挿入する挿入孔17がルーフサイドリンフォース6のボルト孔12と対応して穿設されている。一方、リンフォースパネル15の下端部15bは、上端部15aと反対側に折り曲げた接合フランジとなっており、車両前後方向でクォータインナパネル9に沿って設けられている。
【0024】
また、リンフォースパネル15の上端部15aの少なくとも1つは、図6〜図8に示すように、ルーフレール部4より車両幅方向内側の位置で、締付ボルト11及び溶接ナット13によりルーフサイドリンフォース6に締結され、リンフォースパネル15の下端部15bは、ルーフレール部4より車両幅方向外側の位置で、スポット溶接によりクォータインナパネル9に接合されている。これによって、リンフォースパネル15の上下端部15a,15bの取付けが、高い剛性を有するルーフレール部4を挟んで車両幅方向の内側と外側の位置において行われることになり、くの字状の屈曲部15cと相俟って、図6の矢印Z方向で示す車両幅方向に作用する車体捩じりの変形を抑えるように構成されている。
【0025】
さらに、リンフォースパネル15の下端部15bとの接合部分より車両幅方向内側であって、近接する箇所のクォータインナパネル9には、図6に示すように、ルーフサイドリンフォース6への締結に用いられる締付ボルト11の取り出し用の貫通孔18が設けられている。この貫通孔18は、バックドアハーネス(図示せず)や締付ボルト11の取付時において、作業孔となり、かつリンフォースパネル15の剛性低下を招くことなく、閉断面部内に落とした締付ボルト11を回収することが可能な位置と大きさに形成されている。
なお、シートベルトアンカー締付部19は、図3及び図4に示すように、リンフォースパネル15のすぐ下方に配設されている。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る車両のバックドア開口肩部2の補強構造を得る1つの方法として、まず、溶接ガンなどのスポット溶接設備を用いて、ルーフパネル5、ルーフサイドリンフォース6及びルーフバックインナパネル14の所定箇所を接合することにより、ルーフ組立部品Rの部組みを行う。また、溶接ガンなどのスポット溶接設備を用いて、サイドボディアウタパネル7、サイドボディアウタエクステンションパネル8、クォータインナパネル9及びクォータインナエクステンションパネル10の所定箇所を接合し、かつ、クォータインナパネル9の所定箇所とリンフォースパネル15の下端部15bとを接合するとともに、ルーフレール部4において、サイドボディアウタパネル7とリンフォースパネル15の上端部15aとを接合することにより、サイドボディ組立部品Sの部組みを行う。
次いで、部組みしたルーフ組立部品R及びサイドボディ組立部品Sを図示しない搬送装置によって所定の位置まで搬送し、溶接ガンなどのスポット溶接設備を用いて、ルーフレール部4において、ルーフパネル5及びルーフサイドリンフォース6とサイドボディアウタパネル7とを接合するとともに、締付ボルト11を溶接ナット13に螺合させて締付固定することによりリンフォースパネル15の上端部15aをルーフサイドリンフォース6に締結すれば、補強されたバックドア開口肩部2の車体が得られることになる。
【0027】
このように、本発明の実施形態に係る車両のバックドア開口肩部2の補強構造では、車両前後方向に延在し、車両上下方向中間部分の下側が車両外方に向かって突出するくの字状の屈曲部15cを有し、バックドア開口肩部2の閉断面部を車両前方視で2分割するリンフォースパネル15が、バックドア開口肩部2のサイドボディアウタパネル7の下方において、車両上下方向に沿って配置されており、剛性を有する凹部のルーフレール部4において、リンフォースパネル15の上端部15aとサイドボディアウタパネル7とがスポット溶接により接合され、ルーフ部材のルーフパネル5及びルーフサイドリンフォース6とサイドボディアウタパネル7とがスポット溶接により接合され、かつ、リンフォースパネル15の上端部15aをルーフサイドリンフォース6とが締付ボルト11及び溶接ナット13により締結されている一方、リンフォースパネル15の下端部15bとクォータインナパネル9とがスポット溶接により接合されているため、バックドア開閉操作時の車両上下方向及び車両幅方向の荷重に対して、バックドア開口肩部2の剛性と捩じり剛性の向上を図ることが可能となり、バックドア開閉操作時の品質を高めることができるとともに、ルーフパネル5及びルーフサイドリンフォース6とサイドボディアウタパネル7との重ね合わせ部分の変形や応力集中を低減させ、車体の局所的な変形を抑えることができる。
また、本実施形態のバックドア開口肩部2の補強構造では、シートベルトアンカー締付部19がリンフォースパネル15の下端部15bの直下に配設されているため、リンフォースパネル15の存在によって、シートベルトアンカー締付部19の強度を確保することができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 バックドア開口部
2 バックドア開口肩部
3 ヒンジ取付部
4 ルーフレール部
5 ルーフパネル
6 ルーフサイドリンフォース
7 サイドボディアウタパネル
8 サイドボディアウタエクステンションパネル
9 クォータインナパネル
9a,9b 作業孔
10 クォータインナエクステンションパネル
11 バックドアヒンジリンフォース
10b ボルト孔
11 締付ボルト
12 ボルト
13 溶接ナット
15 リンフォースパネル
15a 上端部
15b 下端部
15c 屈曲部
15d 作業孔
16 挿通孔
17 挿入孔
18 貫通孔
R ルーフ組立部品
S サイドボディ組立部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側方に車両前後方向に沿って延在するルーフレール部が設けられているルーフ部材を備えたルーフ組立部品と、サイドボディアウタパネル及びクォータインナパネルを備えたサイドボディ組立部品とを有し、前記ルーフ組立部品と前記サイドボディ組立部品とが接合された車体から構成されている車両のバックドア開口肩部の補強構造において、
前記バックドア開口肩部に位置する前記サイドボディアウタパネルの下方には、車両前後方向に延在し、前記バックドア開口肩部の閉断面部を車両前方視で2分割するリンフォースパネルが車両上下方向に沿って配置され、前記ルーフレール部で、前記リンフォースパネルの上端部と前記サイドボディアウタパネルとが接合され、前記ルーフ部材と前記サイドボディアウタパネルとが接合されているとともに、前記リンフォースパネルの上端部と前記ルーフ部材とが接合され、
前記リンフォースパネルの下端部は、前記クォータインナパネルに接合されていることを特徴とする車両のバックドア開口肩部の補強構造。
【請求項2】
前記リンフォースパネルの車両上下方向中間部分の下側は、車両外方に向かって突出するくの字状に屈曲形成され、該屈曲部の車両幅方向内側は、前記サイドボディアウタパネルの車両後方に位置するバックドアハーネスの挿通孔と車両前後方向で合わせて配置されている一方、前記リンフォースパネルの下端部の接合フランジは、車両前後方向で前記クォータインナパネルに沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両のバックドア開口肩部の補強構造。
【請求項3】
前記リンフォースパネルの上端部の前記ルーフ部材側への接合のうち、少なくとも1つは、前記ルーフレール部より車両幅方向内側の位置で締結され、前記リンフォースパネルの下端部の前記クォータインナパネル側への接合は、前記ルーフレール部より車両幅方向外側の位置で行われていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のバックドア開口肩部の補強構造。
【請求項4】
前記リンフォースパネルの下端部との接合部分より車両幅方向内側の箇所の前記クォータインナパネルには、前記ルーフ部材側への締結に用いられる締結具の取り出し用の貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両のバックドア開口肩部の補強構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236551(P2012−236551A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107988(P2011−107988)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】