説明

車両のバッテリ搭載構造

【課題】本発明は、バッテリボックスがフォークリフトによる直接の吊り下げで台座に載せられるだけでなく、当該フォークリフトで吊り下げる構造を活用してバッテリボックスの車両前後方向の位置決める作業まで行える車両のバッテリ搭載構造を提供する。
【解決手段】本発明は、バッテリボックス10の上面に、車体フレーム1の車幅方向に沿って、フォークリフト30のフォーク31が挿入可能なガイド部材20を設け、かつガイド部材の車体フレーム側の端部にバッテリボックスの側面よりも外側へ突き出る突出部26を形成し、車体フレーム側に、突出部26と嵌り、バッテリボックス10の車両前後方向を位置決める凹部27を設けた。同構造により、フォークリフトで吊り下げたバッテリボックスは、突出部と凹部により位置決められながら、台座の所定位置に載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体フレームの側部にバッテリボックスを搭載させる車両のバッテリ搭載構造の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータを動力源としたハイブリッド電気トラック(車両)では、ベース車両の変更をできるだけ抑えながらハイブリッド化するために、車体フレームの側部の限られた部分を利用して、リチウムイオンバッテリなどバッテリを収めたバッテリボックスを搭載することが行われている。
多くは、特許文献1に開示されているように車体フレームの車幅方向外側の側部に台座を設け、この台座上にバッテリボックスを載置し、このバッテリボックスをベルト部材などの締結部材で台座に締結して、車体フレームの外側部にバッテリボックスを横付けことが行われている。
【0003】
ところで、バッテリボックスは高重量の部品である。このため、工場などではバッテリボックスの搭載には、スリングベルトを用い、フォークリフトで吊り下げて台座に搭載するという作業が行われている。具体的には、バッテリボックスの下部両側に一対のスリングベルトを掛け渡し、バッテリボックスの上方のスリングベルト端をフォークリフトのフォークに係合させて、バッテリボックスを吊り下げ、台座まで運び、同台座上に載置させていた。
【0004】
こうしたスリングベルトを用いる作業は、かなり面倒である。そこで、特許文献2に示されるようなバッテリを収容する収容ケースの両側に、フォークリフトのフォークが挿通可能な吊支持アームを設けて、直接、フォークリフトのフォーク作業で、バッテリボックスの吊下げを行い、台座に載せることも考えられている。
【0005】
ところで、高重量のバッテリボックスは、可搬性が求められるだけでなく、台座上の車両前後方向の定位置に位置決めることも求められる。そのため、バッテリボックスでは、上述のスリングベルトを用いたバッテリボックスの搭載の仕方、上述の吊支持具を用いたバッテリボックスを用いた搭載構造に関わらず、バッテリボックスに別途、専用の位置決め具を設けて、バッテリボックスの車両前後方向を位置決める措置が講じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−230459号公報
【特許文献2】実公平 5−42939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昨今、バッテリボックスも、他機器と同様、搭載作業が容易になるだけでなく、できるだけ簡単な構造で、当該搭載作業が行えるかまで問われるようになってきた。
確かにフォークリフトで直接、吊下げが行える構造は、安全な作業、容易な作業でバッテリボックスを台座に載せたり降ろしたりできる。しかし、台座上におけるバッテリボックスの位置決めは、全く異なる専用部品を用いて行うために、バッテリボックスの部品点数は多くなりやすく、バッテリボックスを簡単な構造にするまでには至らない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、バッテリボックスがフォークリフトによる直接の吊り下げで台座に載せられるだけでなく、当該フォークリフトで吊り下げる構造を活用してバッテリボックスの車両前後方向の位置決める作業までも行える車両のバッテリ搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、バッテリボックスの上面に、フォークリフトでバッテリボックスを吊り下げるべく、車体フレームの車幅方向に沿って、フォークリフトのフォークが挿入可能なガイド部材を設け、かつガイド部材の車体フレーム側の端部に、バッテリボックスの側面よりも外側へ突き出る突出部を形成し、車体フレーム側に、突出部と嵌り、バッテリボックスの車両前後方向を位置決める凹部を設け、フォークリフトで吊り下げたバッテリボックスが、突出部と凹部との嵌り合いにより位置決められながら、台座の所定位置に載置されるようにした。
【0010】
同構成によると、ガイド部材にフォークリフトのフォークを挿入させて吊下げ、台座まで運び、ガイド部材の端に形成されている突出部を車体フレーム側の凹部に嵌り合わせながら、バッテリボックスを台座に載せると、バッテリボックスは、車両前後方向が所定に位置決められつつ台座上に載せられる。つまり、バッテリボックスは、フォークリフトにより、直接、台座上に導かれるだけでなく、吊り下げるガイド部材を活用しながら、台座の所定位置に搭載される。
【0011】
請求項2の発明は、車体フレーム側が簡単な構造ですむよう、車体フレーム側の凹部は、車体フレームに前記台座を支持する支持部に形成され、支持部は、ガイド部材と車体フレームの車幅方向における位置に対応すると共に、台座から車体フレームとバッテリボックスとの間に沿って上側へ延びて前記車体フレームに支持されることとした。
請求項3の発明は、凹部も簡単な構造ですむよう、支持部は、バッテリボックス側に開口を配置した断面コ字形の構造部材で構成し、同構造部材の開口部で凹部を形成することとした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、バッテリボックスは、ガイド部材を用いた、フォークリフトによる直接の吊下げで、台座に載せられるだけでなく、ガイド部材端部の突出部にて、車両前後方向の位置決めまで行える。
したがって、バッテリボックスの搭載は、ガイド部材の活用で部品点数を抑えた位置決め構造により、台座の所定位置に位置決めるまで連続した作業で行える。それ故、バッテリの搭載は、容易なフォーク作業、さらには簡単な構造で果たすことができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、凹部は、台座を支持する構造を活用して、十分な強度が確保される。そのため、車体フレーム側は簡単な構造ですむ。
請求項3の発明によれば、断面コ字形の構造部材の開口部がそのまま凹部として活用されるので、凹部も簡単な構造ですむ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の要部となる車体フレームに横付けされたバッテリボックスを示す斜視図。
【図2】同バッテリボックスの搭載構造を説明する斜視図。
【図3】同バッテリボックスを位置決める位置決め構造を説明する図。
【図4】フォークリフトでバッテリボックスを車体フレームの台座まで運ぶ作業を説明する図。
【図5】同バッテリボックスを台座上の所定位置に位置決めながら載せるまでを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図1ないし図5に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、車体フレーム1にバッテリボックス10が搭載された車両、例えばハイブリッド電気トラックを示し、図2は同車体フレーム1からバッテリボックス10を外した状態を示している。
【0016】
バッテリボックス10の搭載構造を説明すると、車体フレーム1は、車両前後方向に延びる一対のサイドフレーム2(片側しか図示せず)の間に複数のクロスメンバ3(図1に一部だけ図示)を掛け渡したラダー状に構成される。この車体フレーム1のフロント側に、エンジン、トランスミッション、駆動モータ、キャブ、一対の操舵輪(いずれも図示しない)が設けられる。リヤ側に、エンジンや駆動モータからの動力を受けるデファレンシャル、同デファレンシャルから分配された駆動力で駆動される一対の駆動輪(いずれも図示しない)が設けられる。また車体フレーム1の上部には、図示はしないが荷台、冷凍庫、冷蔵庫などの架装物が搭載される。
【0017】
この車体フレーム1の車幅方向片側の側部、具体的には片側のサイドフレーム2の前後輪間となるサイドフレーム部分2aの車幅方向外側の側部には、バッテリ支持部材5を介して、バッテリボックス10や同バッテリボックス10に蓄えられた直流電流を交流電流に変換するインバータ20が据え付けてある。
【0018】
具体的にはバッテリ支持部材5は、図1および図2に示されるようにサイドフレーム2aに沿って並んだ上下方向に延びる複数本の支持脚6と、これら並んだ支持脚6の下端部に渡り取着された車両前後方向に延びる水平なバッテリ据付プレート7とを組み合わせたL形の構造物から構成される。各支持脚6の上部は、サイドフレーム2の外側部(車幅方向外側の側部)に支持され、バッテリボックス10を載せる台座となるバッテリ据付プレート7や同台座の支持部となる支持脚6を、車体フレーム1の外側部に組み付けている。特に支持脚6には、溝形開口を車幅方向外側に配置して、サイドフレーム2の外側部に支持(例えばボルトナットによる固定)させた断面コ字形の構造部材、例えばチャンネル部材6aが用いてある。またバッテリ据付プレート9には、車両前方側を後方側よりも高い位置に段差させた階段状のプレート部材が用いてある。
【0019】
バッテリボックス10は、上部が開口した箱形の本体ケース11と同本体ケース11の開口部を塞ぐカバー12(蓋部)とで形成される収容ケース13を有する。本体ケース11とカバー12とは、フランジ13aによる締結で連結される。この収容ケース13内に、バッテリ14、バッテリ冷却用のブロア15、コンタクタなどのヒューズ類16(いずれも図1だけに図示)などが収められ、バッテリボックス10を構成している。本体ケース11の底面は、バッテリ据付プレート7の形状に合わせて階段状にしてある。
【0020】
このバッテリボックス10が、階段形状と合うよう、図1に示されるようにバッテリ据付プレート7の上面に載置され、車体フレーム1の外側部にバッテリボックス10を横付けさせている。このバッテリボックス10は、締結具、例えば締付けベルト17の巻き付けによって、バッテリ据付プレート7に締結され、バッテリボックス10を車体フレーム1の外側部に搭載させている。
インバータ20は、バッテリ据付プレート7の下部の段差で形成される車両前部側の空間を利用して、バッテリボックス10の直下に設置してある。
【0021】
このバッテリボックス10の搭載構造には、フォークリフト30(図4に図示)により、バッテリボックス10が直接、吊下げられる吊下げ構造、同吊下げ構造を流用してバッテリボックス10をバッテリ据付プレート7の所定位置に位置決める位置決め構造が採用されている。
【0022】
このうち吊下げ構造は、バッテリボックス10の上面となるカバー12の上面に、フォークリフト30のフォーク31(爪部)が挿入可能な一対のガイド部材22を車両前後方向沿いに平行に設けた構造が用いられている。一対のガイド部材22は、例えば断面がコ字形の細長いチャンネル部材22aで形成される。具体的には、チャンネル部材22aは、カバー12上面の支持脚6の位置と対応した部分に、開口をふせた状態で取着されていて(例えば溶接など)、収容ケース13の上部に、片側の端をフォーク入口24aとしたフォーク差込路24を形成している。これで、フォークリフト30のフォーク31にて、バッテリボックス10が吊下げられるようにしている。
【0023】
この吊下げ構造により、バッテリボックス10のバッテリ据付プレート7への載置は、別途、スリングベルトなどを用いず、直接、フォークリフト30の運搬作業だけで行える。すなわち、図4に示されるように、例えば矢印イのようにフォークリフト30のフォーク31を、工場のフロアなどに置いて有るバッテリボックス10の上部のチャンネル部材22a内に所定に差し込み、矢印ロのようにフォーク31でバッテリボックス10を持ち上げる。これでバッテリボックス10は吊下げられる。この吊り下げたバッテリボックス10を、矢印ハ、ニに示されるようにバッテリ据付プレート7へ運び、バッテリ据付プレート7の上面に配置すると、バッテリボックス10がバッテリ据付プレート7の上面に載せられる。
【0024】
位置決め構造は、図2〜図4に示されるように車体フレーム1と隣接する側となるガイド部材22の左端部に、前方に突き出る突出部26を形成し、車体フレーム1側に、同突出部26と嵌挿可能な凹部27を形成する構造が用いられている。具体的には、突出部26は、ガイド部材22を形成するチャンネル部材22aの左端部を、収容ケース13の左側面やフランジ13よりも、外側に突き出させてなる。また凹部27は、車体フレーム1とバッテリボックス10との間に配置される支持脚6のうち、ガイド部材22端と向き合う上部分に形成されている。具体的には支持脚6をなすチャンネル部材6aの上部は、バッテリボックス10の最上位となるチャンネル部材22aよりも上方に張り出ていて、突出部26と向き合う上方の延出したチャンネル部分の溝形開口をそのまま凹部27として流用する構造にしてある。
【0025】
この位置決め構造により、突出部26と凹部27とを嵌め合わせながら、吊り下げたバッテリボックス10をバッテリ据付プレート7に載せるだけで、車体フレーム1の外側部の所定位置にバッテリボックス10が横付けされるようにしている。
すなわち、図4の左側に示されるようにフォークリフト30で吊り下げたバッテリボックス10をバッテリ据付プレート7に載せる際、例えば図4中の矢印ホのように各ガイド部材22の先端に有る突出部26を各支持脚6の凹部27へ差し込む。ついで、図4中の矢印ヘのようにバッテリボックス10を、支持脚6の溝形開口にならい、バッテリ据付プレート7上に導くと、バッテリボックス10は、図3(a),(b)に示されるように突出部26と凹部27との嵌め合いにより、車両幅方向が所定に位置決められながら、バッテリ据付プレート7に載置される。
【0026】
これにより、車体フレーム1の外側部の定位置にバッテリボックス10が横付けされる。この載置作業が終えたら、図5中の矢印トのようにフォークリフト30のフォーク31をガイド部材22から抜き出し、締付けベルト17などの締結具などで、バッテリボックス10をバッテリ据付プレート7に締結すれば、バッテリボックス10の搭載作業を終える。なお、バッテリボックス10をバッテリ据付プレート7から降ろすときは逆の作業を行えばよい。
【0027】
このようにバッテリボックス10の上面に、フォークリフト30のフォーク31が挿入可能で、さらには車体フレーム側の端部に突出部26をもつガイド部材22を設ける構造を採用すると、バッテリボックス10は、フォークリフト30で、直接、バッテリ据付プレート7(台座)に載せられるだけでなく、専用の位置決め部品を必要とせずに、バッテリボックス10の車両前後方向を位置決める作業までも果たせる。
【0028】
それ故、バッテリボックス10は、ガイド部材22を用いたフォークリフト30によるバッテリボックス10の載置作業と、ガイド部材22を活用した位置決め構造とにより、容易な作業、さらには部品点数を抑えつつ、バッテリ据付プレート7の所定位置に搭載できる。しかも、このときの突出部26と凹部27との嵌め合いは、車両衝突時におけるバッテリボックス10の脱落を抑えるストッパーとしても機能する利点もある。
【0029】
特に凹部27は、車体フレーム1とバッテリボックス10との間に配置される支持脚6に形成する構造なので、凹部27の強度は、支持脚6で十分に確保され、車体フレーム1側は簡単な構造ですむ。そのうえ支持脚6に、車体フレーム1の外側(バッテリボックス10側)に開口するチャンネル部材22aを用いると、凹部27もチャンネル部材22aそのものを活用して形成されるので、凹部27は簡単な構造ですむ。
【0030】
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば一実施形態では、チャンネル部材を用いて、フォークリフトのフォークが挿入可能なガイド部材としたが、これに限らず、他の部材を用いた構造でも構わない。また一実施形態では、本発明をエンジンとモータを動力源とするハイブリッド電気トラックに本発明を適用したが、これに限らず、モータを動力源とする電気トラックなど、車体フレームの外側部にバッテリボックスを横付けする車両に適用してもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 車体フレーム
6 支持脚(支持部)
7 バッテリ据付プレート(台座)
10 バッテリボックス
13 収容ケース
14 バッテリ
22 ガイド部材
26 突出部
27 凹部
30 フォークリフト
31 フォーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを収容するバッテリボックスと、
車両の車体フレームの車幅方向外側の側部に配置された台座を有し、
前記台座に前記バッテリボックスを載置して、前記車体フレームの外側部に前記バッテリボックスを横付けさせてなる車両のバッテリ搭載構造であって、
前記バッテリボックスの上面には、フォークリフトで当該バッテリボックスを吊り下げるべく、前記車体フレームの車幅方向に沿って、前記フォークリフトのフォークが挿入可能なガイド部材が設けられ、
かつ前記ガイド部材の前記車体フレーム側の端部には、前記バッテリボックスの側面よりも外側へ突き出る突出部が形成され、
前記車体フレーム側には、前記突出部と嵌り、前記バッテリボックスの車両前後方向を位置決める凹部が設けられ、
前記フォークリフトで吊り下げた前記バッテリボックスが、前記突出部と前記凹部との嵌り合いにより位置決められながら、前記台座の所定位置に載置されるようにした
ことを特徴とする車両のバッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記凹部は、前記車体フレームに前記台座を支持する支持部に形成され、
前記支持部は、前記ガイド部材と前記車体フレームの車幅方向における位置に対応すると共に、前記台座から該車体フレームと前記バッテリボックスとの間に沿って上側へ延びて前記車体フレームに支持される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のバッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記支持部は、バッテリボックス側に開口を配置した断面コ字形の構造部材で構成され、
前記凹部は、前記構造部材の開口部で形成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のバッテリ搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−131826(P2011−131826A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294775(P2009−294775)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】