説明

車両のバッテリ搭載構造

【課題】より軽量でありながら、車両衝突時に車体骨格部材に入力される荷重を効率よく分散させてエネルギ吸収性を高める車両のバッテリ搭載構造を得る。
【解決手段】バッテリフレーム17は、一対の車幅方向に沿って延びる部分と一対の車両前後方向に沿って延びる部分とで矩形状を成す外枠部材18を含んでおり、車両の前後方向中央部の車幅方向両側で前後方向に沿って延設される一対のサイドメンバ4と、車両前部の車幅方向両側で前後方向に沿って延設される一対のフロントサイドメンバ14と、前記フロントサイドメンバ14と前記サイドメンバ4との間に設けられるエクステンションサイドメンバ15とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリ搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のバッテリをバッテリフレームを用いて搭載するようにした車両のバッテリ搭載構造が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、グリッド状に縦横に延びる部材によって9個の小室が形成され、この小室の各々に小型のバッテリを収容して搭載してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−272400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構造では、縦横に延びる部材の数が多い分、バッテリフレームが重くなるという問題に加え、車両衝突時の荷重の伝達経路については検討されていなかったため、車両衝突時に車体骨格部材に入力された荷重を効率よく分散させることができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、より軽量でありながら、車両衝突時に車体骨格部材に入力される荷重を効率よく分散させてエネルギ吸収性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にあっては、前記バッテリフレームは、一対の車幅方向に沿って延びる部分と一対の車両前後方向に沿って延びる部分とで矩形状を成す外枠部材を含み、車両の前後方向中央部の車幅方向両側で前後方向に沿って延設される一対のサイドメンバと、車両前部の車幅方向両側で前後方向に沿って延設される一対のフロントサイドメンバと、前記フロントサイドメンバと前記サイドメンバとの間に設けられるエクステンションサイドメンバと、を備え、前記外枠部材は、車両前後方向前端部で車幅方向に沿って延びる前端部材と、車幅方向両端部で車両前後方向に沿って延びてそれぞれ前記サイドメンバに取り付けられる一対の側端部材と、を含み、前記エクステンションサイドメンバは、前記フロントサイドメンバの後部から前記前端部材の車幅方向中央位置に向けて延びる内側部材と、当該内側部材より車幅方向外側で前記フロントサイドメンバの後部から前記側端部材の前端位置に向けて延びる外側部材と、を含むことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来構造に比べてバッテリフレームをより軽量に構成できる上、車両衝突時に車体骨格部材に入力される荷重を効率よく分散させてエネルギ吸収性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造を上方から見た平面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造に含まれるバッテリフレームおよびバッテリの分解斜視図である。
【図4】図2のIV−IV断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造における後面衝突時における荷重伝達経路を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造における側面衝突時における荷重伝達経路を示す平面図である。
【図7】本発明の別の実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造を上方から見た平面図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造に含まれるパネルの変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造に含まれるパネルの別の変形例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造に含まれるバッテリフレームの変形例を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造に含まれるバッテリフレームの別の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる車両のバッテリ搭載構造の側面図、図2は、車両のバッテリ搭載構造を上方から見た平面図、図3は、バッテリフレームおよびバッテリの分解斜視図、図4は、図2のIV−IV断面図である。なお、各図中、FRは車両前後方向前方、UPは車両上方、WDは車幅方向を示すものとする。
【0011】
図1に示すように、本実施形態にかかる車両1では、車室2の床下に複数(本実施形態では三つ)のバッテリ3を搭載してある。なお、車両1は、複数のバッテリ3を搭載するものであればよく、車輪駆動用のモータを有する電気自動車や、車輪駆動用のモータとエンジンとを有するハイブリッド自動車、燃料電池を有する電気自動車等として構成することができる。
【0012】
図1,図2に示すように、車両1の前後方向中央部で車室2の下方となる部分には、車体骨格部材として、車幅方向両側で車両前後方向に沿って延設される一対のサイドメンバ4,4と、これら一対のサイドメンバ4,4の前端部とフロアトンネル部30との間で車幅方向に沿って架設されるクロスメンバ5R,5Rと、を設けてある。また、サイドメンバ4とサイドシル6(図2,図4にはサイドシルインナのみ図示)との間には、車両前後方向に沿って複数箇所(本実施形態では三箇所)にアウトリガー7が配置されている。本実施形態では、サイドメンバ4、クロスメンバ5R、およびサイドシル6は、いずれも閉断面を有する中空部材として構成してある。
【0013】
サイドメンバ4,4の後端部には、それぞれ車両1の後部の車幅方向両側で車両前後方向に沿って延在するリヤサイドメンバ8,8が接続されている。本実施形態では、リヤサイドメンバ8は、略矩形の閉断面を有する部材として構成してある。
【0014】
一対のリヤサイドメンバ8,8間には、二つのリヤクロスメンバ9F,9Rが車幅方向に沿って架設してある。本実施形態では、前側のリヤクロスメンバ9Fは、略矩形の閉断面を有する部材として構成してある一方、後側のリヤクロスメンバ9Rは、略円形断面の二本のパイプ状部材9Ra,9Rbを接合して構成してある。
【0015】
リヤサイドメンバ8,8は、それぞれ後輪32を覆うホイールハウス10,10の車幅方向内側部分に接続されている。そして、左右一対のホイールハウス10,10(図2,図4にはホイールハウスインナのみ図示)の上部同士の間にはクロスバー11を架設してある。本実施形態では、クロスバー11は、略円形断面のパイプ状部材によって構成してある。
【0016】
後側のリヤクロスメンバ9Rとクロスバー11との間には、パネル12を架設してある。図2に示すように、本実施形態では、クロスバー11および後側のリヤクロスメンバ9Rをなす一方のパイプ状部材9Raは、車幅方向中央部で当該車幅方向に沿って延びる中間部11m,9mと、当該区間の両側で車幅方向に向かうにつれて車両前後方向後方に向けて延びる斜行部11c,9cとを有しており、上下に対向する斜行部11c,9c間にパネル12,12が架設されている。また、後側のリヤクロスメンバ9Rを成すもう一方のパイプ状部材9Rbは車幅方向に沿って直線状に形成されており、車幅方向中間部では、このパイプ状部材9Rbとクロスバー11との間にパネル12が架設されている。
【0017】
車両1の前部にはフロントコンパートメント13が形成されている。フロントコンパートメント13内には、電気機器としての駆動モータ40、チャージャ41、インバータ42等が配置されている。
【0018】
フロントコンパートメント13の車幅方向両側には、車両前後方向に沿って延びる一対のフロントサイドメンバ14,14が設けられている。フロントサイドメンバ14は、左右とも、図1に示すように、フロントコンパートメント13の後端部近傍で下方かつ後方に向けて屈曲している。そしてフロントサイドメンバ14の屈曲点より後側の部分としての斜行部14iとサイドメンバ4との間に、フロアパネル26の上にハット型断面の部材を伏せた状態で接合して形成された閉断面を有するエクステンションサイドメンバ15が設けられている。
【0019】
このエクステンションサイドメンバ15は、左右のそれぞれについて、平面視で略V字状を呈して二股に分岐されており、フロントサイドメンバ14の後端部からフロントクロスメンバ5の車幅方向中央位置に向けて延びる内側部材15iと、当該内側部材15iより車幅方向外側でフロントサイドメンバ14の後端部からサイドメンバ4の前端位置に向けて延びる外側部材15oとを含んでいる。なお、エクステンションサイドメンバ15の後端部に設けられるクロスメンバ5Rには、左右の前輪34用のサスペンションメンバ16,16が取り付けられている。
【0020】
バッテリフレーム17は、矩形枠状の外枠部材18と、外枠部材18内に取り付けられたT字部材19とを含んでいる。
【0021】
このうち、外枠部材18は、車両前後方向前端部で車幅方向に沿って延びる前端部材18f、車両前後方向後端部で車幅方向に沿って延びる後端部材18r、および車幅方向両端部で車両前後方向に沿って延びる一対の側端部材18s,18sを含んでいる。
【0022】
また、T字部材19は、前端部材18fと後端部材18rとの間で車幅方向に沿って延びる中間横部材19wと、中間横部材19wの車幅方向中央位置と前端部材18fの車幅方向中央位置との間で車両前後方向に沿って延びる中間縦部材19lとを含んでいる。
【0023】
このバッテリフレーム17では、外枠部材18によって形成される矩形領域20が、T字部材19によって、三つの分割矩形領域21に区分されている。本実施形態では、三つの分割矩形領域21は、全て略同一形状で、平面視で長辺が短辺の2倍となる長方形状に形成されている。そして、車両前後方向に長くなる姿勢で二つの分割矩形領域21を車幅方向に沿って並べて配置し、それら二つの分割矩形領域21の後方に車幅方向に長くなる姿勢で一つの分割矩形領域21を配置してある。
【0024】
また、三つの分割矩形領域21のそれぞれについて、車両下方に開口する開口部22が形成してある。この開口部22は、略正方形状に形成されているが、長方形状や円形状等の他の形状とすることができる。
【0025】
そして、図3,図4に示すように、本実施形態では、外枠部材18およびT字部材19を構成する骨格部材(前端部材18f、後端部材18r、側端部材18s、中間横部材19w、中間縦部材19l)は、いずれも、閉断面構造を有しており、上下方向に伸びる縦壁部23と、縦壁部23の下部から枠内側(すなわち分割矩形領域21の中心側)に向けて張り出す内向きフランジ部24とを備えている。
【0026】
また、このバッテリフレーム17は、車体骨格部材に固定される。本実施形態では、側端部材18s,18sがサイドメンバ4に沿って配置されてこのサイドメンバ4に固定され、前端部材18fがクロスメンバ5Rに沿って配置されてこのクロスメンバ5Rに固定され、後端部材18rが前側のリヤクロスメンバ9Fに沿って配置されてこのリヤクロスメンバ9Fに固定される。この場合、車体骨格部材とバッテリフレーム17の各部とは、ボルトおよびナットによって締結してもよいし、スポット溶接してもよい。
【0027】
バッテリフレーム17を用いて車両1に搭載されるバッテリ3は、ケーシング3a内に単位バッテリ(図示せず)を複数収容するバッテリパックであり、上下方向に薄い扁平な直方体状に構成されている。ケーシング3aは、内部に収容される単位バッテリの被水や小石等の衝突を防ぐ防護壁として機能する。
【0028】
本実施形態では、三つのバッテリ3をいずれも同一形状としてある。具体的には、バッテリ3の水平断面における長辺の寸法を短辺の寸法の約2倍に設定するとともに、バッテリ3の底部ではそれぞれ分割矩形領域21の縦横寸法よりわずかに小さくし、バッテリフレーム17の三つの分割矩形領域21内にバッテリ3を一つずつ収容してある。
【0029】
また、図4に示すように、バッテリ3は、周囲(前後左右)四方の縦壁部23との間に微小な隙間25を有する状態で、それら縦壁部23から張り出す内向きフランジ部24上に載置され、上方のフロアパネル26との間に発泡ウレタン等の緩衝部材27を介在させた状態で、当該フロアパネル26と内向きフランジ部24との間に挟装される。
【0030】
このとき、上述したように、各分割矩形領域21には開口部22を形成してある。このため、バッテリ3のケーシング3aの底部は、この開口部22から下方に露出することになる。
【0031】
また、バッテリ3は、バッテリフレーム17に対して、少なくとも車両前後方向および車幅方向について位置決めしてある。この位置決めは、ピンと穴、長穴、切欠等(いずれも図示せず)とで行うようにしてもよいし、適宜ボルトやナット(図示せず)によって締結してもよい。また、位置決め部や締結部には適宜に合成ゴム等の緩衝部材(図示せず)を介在させてもよい。
【0032】
そして、本実施形態では、各バッテリ3に繋がるハーネス28を、バッテリフレーム17のT字部材19に沿って、当該T字部材19上で配索してある。そして、本実施形態では、三つのバッテリ3とハーネス28を介して接続される電気機器としてのジャンクションボックス29を、後方のバッテリ3上で、T字部材19の中間縦部材19lと中間横部材19wとの交差点に臨むように配置し、ジャンクションボックス29と各バッテリ3との間のハーネス28の長さを短くできるようにしてある。また、本実施形態のバッテリフレーム17のレイアウトによれば、各バッテリ3若しくはジャンクションボックス29と車両1の前部のフロントコンパートメント13内の電気機器(例えばモータやコントロールボックス等)とを繋ぐハーネス28を、フロントコンパートメント13の後部で車幅方向中央位置に形成されるフロアトンネル部30とこのフロアトンネル部30の後方に位置する中間縦部材19lに沿って配索することができる。よって、このハーネス28を、車両前後方向に沿って略直線状に、比較的短い距離でかつ容易に配索することができる。
【0033】
このハーネス28は、図2〜図4に示すブラケット31によって、T字部材19上に固定してある。本実施形態では、ハーネス28は、ブラケット31とT字部材19との間に挟持されている。
【0034】
また、図4を参照すれば、本実施形態では、ジャンクションボックス29の後方を、クロスバー11、後側のリヤクロスメンバ9R、ならびにパネル12によって覆った状態となっていることが理解できるであろう。
【0035】
以上のように、本実施形態では、車体骨格部材にバッテリフレーム17を取り付けたことで、車両衝突時に車体骨格部材に印加される荷重をより効率良く分散して、エネルギ吸収性を高めることができる。図5は、後面衝突時における荷重の伝達経路を示す図、図6は、側面衝突時における荷重の伝達経路を示す図である。なお、これら各図中、入力をFi、抗力をFrで示している。
【0036】
後面衝突時には、図5中に黒い太線矢印で示すように、車体骨格部材としてのリヤサイドメンバ8や、リヤクロスメンバ9F,9R、サイドメンバ4、左右のクロスメンバ5R,5R、エクステンションサイドメンバ15、フロントサイドメンバ14等が荷重伝達経路になるとともに、バッテリフレーム17の外枠部材18およびT字部材19も荷重伝達経路となる。本実施形態では、エクステンションサイドメンバ15の内側部材15iがフロントサイドメンバ14(の斜行部14i)の後部からT字部材19の中間縦部材19lの前端部に向けて延設されている分、T字部材19における荷重伝達の効率が高められている。
【0037】
また、側面衝突時には、図6中に黒い太線矢印で示すように、車体骨格部材としてのサイドメンバ4、クロスメンバ5R、リヤクロスメンバ9F,9R、アウトリガー7等が荷重伝達経路になるとともに、バッテリフレーム17の外枠部材18およびT字部材19も荷重伝達経路となる。本実施形態では、T字部材19のうち特に中間横部材19wによって荷重伝達の効率が高められている。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、一対の車幅方向に沿って延びる部分(前端部材18fおよび後端部材18r)と一対の車両前後方向に沿って延びる部分(側端部材18s,18s)とで矩形状を成す外枠部材18と、当該外枠部材18の枠内で車幅方向に沿って延びる部分(中間横部材19w)と車両前後方向に沿って延びる部分(中間縦部材19l)とでT字状を成すT字部材19と、を含むバッテリフレーム17を設け、外枠部材18によって囲まれる矩形領域20を、T字部材19によって三つの分割矩形領域21に区分し、三つの分割矩形領域21のそれぞれにバッテリを搭載した。すなわち、外枠部材18内で縦横に配置する桟部材(本実施形態ではT字部材19)の数をより少なくできる分、バッテリフレーム17をより軽量に構成することができるとともに、バッテリ3を配置するスペースとしての分割矩形領域21を桟部材が多い場合に比べてより広く確保することができて、バッテリ3の容量をより大きく確保しやすくなる。また、T字部材19は、縦横に延びる部材(すなわち中間縦部材19lおよび中間横部材19w)をそれぞれ一つずつ含む構成となるため、車両前後方向ならびに車幅方向に入力された衝突荷重(前突、後突、側突時に入力される衝突荷重)の双方に対する剛性を効果的に高めることができる。
【0039】
また、本実施形態では、車両前後方向に長い二つの分割矩形領域21を車幅方向に沿って並べて配置し、当該二つの分割矩形領域21の後方に車幅方向に長い分割矩形領域21を配置した。かかるレイアウトでは、T字部材19の中間縦部材19lを、フロアトンネル部30の後方に延在させることができるため、バッテリ3あるいはバッテリ3付近(すなわち車両1の前後方向中間部)に配置される電気機器(本実施形態ではジャンクションボックス29等)とフロントコンパートメント13内の電気機器(駆動モータ40、チャージャ41、インバータ42等)とを繋ぐハーネス28を、フロアトンネル部30および中間縦部材19lに沿って、略直線状により短く配索することができる。
【0040】
また、本実施形態では、三つの分割矩形領域21を略同一形状(同じ大きさおよび形の長方形)とした。このため、分割矩形領域21に搭載するバッテリ3を同一形状(同一仕様)とすることができ、バッテリ3の仕様数を減らして当該バッテリ3の製造コストを低減することができる上、車両1への組み付けの手間を省くことができ、ひいては車両1の製造コストを低減することができる。
【0041】
また、本実施形態では、分割矩形領域21に、車両下方に開口する開口部22を設けた。このため、分割矩形領域21に配置したバッテリ3の底面を当該開口部22から車体下方に露出させることができ、バッテリ3の放熱性を高めて、過熱を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、外枠部材18およびT字部材19に、それぞれ、上下方向に伸びる縦壁部23と、当該縦壁部23から枠内側に向けて水平方向に張り出す内向きフランジ部24と、を設け、バッテリ3を縦壁部23との間に隙間25を有する状態で内向きフランジ部24上に載置した。このため、バッテリフレーム17の外枠部材18あるいはT字部材19にねじれが生じた場合にも、このねじれを隙間25で吸収してバッテリ3に伝わりにくくして、バッテリ3の保護性を高めることができる。
【0043】
また、本実施形態では、バッテリ3を、バッテリフレーム17と当該バッテリフレーム17上方のフロアパネル26との間に挟装した。このため、バッテリ3を上下方向に容易に固定することができる。
【0044】
また、本実施形態では、バッテリ3とフロアパネル26との間に緩衝部材27を配置した。このため、バッテリ3のがたつきや振動を抑制することができるとともに、バッテリ3に対する荷重入力を軽減して、バッテリ3の保護性を高めることができる。なお、緩衝部材27は、バッテリ3とバッテリフレーム17との間に介在させることもできる。
【0045】
また、本実施形態では、フロントサイドメンバ14とサイドメンバ4との間にエクステンションサイドメンバ15を設け、このエクステンションサイドメンバ15を、フロントサイドメンバ14(の斜行部14i)の後部からバッテリフレーム17の前端部材18fの車幅方向中央位置に向けて延びる内側部材15iと、当該内側部材15iより車幅方向外側でフロントサイドメンバ14(の斜行部14i)の後部からバッテリフレーム17の側端部材18sの前端位置に向けて延びる外側部材15oとを、含むように構成した。このため、エクステンションサイドメンバ15により、フロントサイドメンバ14とバッテリフレーム17との間で、車両前後方向の荷重を効率良く伝達することができる。特に、本実施形態のレイアウトでは、エクステンションサイドメンバ15の後端部とバッテリフレーム17の中間縦部材19lの前端部とが近接して配置されるため、この中間縦部材19lを利用してより効率の高い荷重の伝達や衝撃吸収が可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、一対のリヤサイドメンバ8間で車幅方向に沿って架設される後側のリヤクロスメンバ9Rと、車幅方向両側の後輪32をそれぞれ覆うホイールハウス10の上部間で架設されるクロスバー11と、後側のリヤクロスメンバ9Rとクロスバー11との間に架設されるパネル12と、を設けた。本実施形態の場合、バッテリフレーム17を設けた分、車両前後方向中央部で車体剛性が向上するため、車両後面衝突時等に車両後方からリヤサイドメンバ8,8に衝突荷重が入力された場合には、これらリヤサイドメンバ8,8同士が外開きしやすくなる(前端部に比べて後端部の間隔が拡がりやすくなる)虞がある。この点、本実施形態では、一対のリヤサイドメンバ8,8間に、後側のリヤクロスメンバ9Rとクロスバー11とを架設し、さらにこれらの間にパネル12を架設したため、リヤサイドメンバ8,8のこうした外開きを抑制することができる。また、これら後側のリヤクロスメンバ9R、クロスバー11、およびパネル12により、車両後面衝突時等に、それより前方に配置される電気機器(本実施形態ではジャンクションボックス29)の保護性を高めることができるという利点もある。
【0047】
また、本実施形態では、クロスバー11の車幅方向端部を、車幅方向外側に向かうにつれて車両前後方向後方に向かうように形成した。かかる構成によれば、クロスバー11に前方に向かう荷重が入力された場合に、当該荷重を、ホイールハウス10の上部を内側に向かわせる方向に作用させることができるため、上記外開きをより一層確実に抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、T字部材19に沿ってバッテリ3に繋がるハーネス28を配索した。このため、複数のバッテリ3間、あるいはバッテリ3とジャンクションボックス29等の電気機器とを繋ぐハーネス28をより短くすることが可能となる上、特定の配索経路を確保できる分、ハーネス28の配索作業をより容易に行うことが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、T字部材19の上にハーネス28を配索した。これにより、バッテリ3を収容する分割矩形領域21内にハーネス28を配索する空間を確保する必要が無くなり、その分、より大きなバッテリ3を搭載して、バッテリ3の容量を増大することが可能となる。なお、T字部材19の下(あるいはT字部材が中空の場合にはその内部等)にハーネス28を配索した場合にも同様の効果が得られる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、T字部材19および分割矩形領域21のレイアウトを前後逆にして、車幅方向に沿って長い(横長の)分割矩形領域21の後方に、車両前後方向に沿って長い(縦長の)二つの分割矩形領域21を設けることができる。
【0052】
また、図7に示すように、後側のリヤクロスメンバ9RA、クロスバー11A、およびパネル12Aを車幅方向に沿って略直線状に設けることができる。こうすれば、これらリヤクロスメンバ9RA、クロスバー11Aおよびパネル12Aをより軽量に構成することができる。
【0053】
また、パネル12,12Aには、図8に示すように、上下に伸びる折れ線43で前後方向に屈曲する屈曲部を設けたり、上下に伸びるビード(凹溝)を設けたりすることで、衝突時等に屈曲させるようにして、衝撃吸収性を高めることができる。
【0054】
また、パネル12,12Aには、図9に示すように、適宜に貫通孔44を形成して軽量化を図ることができる。
【0055】
また、図10や図11に示すように、バッテリフレーム17A,17Bの分割矩形領域21の長手方向中間部に、短手方向に沿って伸びて外枠部材18およびT字部材19より低背で扁平なサブメンバ33,33rを設けることができる。かかるサブメンバ33,33rを設けることで、バッテリフレーム17A,17Bの剛性ひいては車体剛性を高めて、衝突時における荷重の伝達効率をより一層高めることが可能となる。また、図11に示すように、各分割矩形領域21のそれぞれにサブメンバ33を設けた場合には、全ての分割矩形領域21のそれぞれに、平面視で正方形状の二個のバッテリ(図示せず)を、このサブメンバ33,33rに底部の周縁部の一部を載置させた状態で収容することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
3 バッテリ
4 サイドメンバ
8 リヤサイドメンバ
9R,9RA リヤクロスメンバ
10 ホイールハウス
11,11A クロスバー
12,12A パネル
14 フロントサイドメンバ
15 エクステンションサイドメンバ
15i 内側部材
15o 外側部材
17,17A,17B バッテリフレーム
18 外枠部材
18f 前端部材
18r 後端部材
18s 側端部材
19 T字部材
19l 中間縦部材
19w 中間横部材
20 矩形領域
21 分割矩形領域
22 開口部
23 縦壁部
24 内向きフランジ部
25 隙間
26 フロアパネル
27 緩衝部材
28 ハーネス
29 ジャンクションボックス
32 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリを車体下部に取り付けるためのバッテリフレームを備えた車両のバッテリ搭載構造において、
前記バッテリフレームは、一対の車幅方向に沿って延びる部分と一対の車両前後方向に沿って延びる部分とで矩形状を成す外枠部材を含み、
車両の前後方向中央部の車幅方向両側で前後方向に沿って延設される一対のサイドメンバと、
車両前部の車幅方向両側で前後方向に沿って延設される一対のフロントサイドメンバと、
前記フロントサイドメンバと前記サイドメンバとの間に設けられるエクステンションサイドメンバと、
を備え、
前記外枠部材は、車両前後方向前端部で車幅方向に沿って延びる前端部材と、車幅方向両端部で車両前後方向に沿って延びてそれぞれ前記サイドメンバに取り付けられる一対の側端部材と、を含み、
前記エクステンションサイドメンバは、前記フロントサイドメンバの後部から前記前端部材の車幅方向中央位置に向けて延びる内側部材と、当該内側部材より車幅方向外側で前記フロントサイドメンバの後部から前記側端部材の前端位置に向けて延びる外側部材と、を含むことを特徴とする車両のバッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記サイドメンバの後端部に接続され車両後部の車幅方向両側で車両前後方向に沿って延設される一対のリヤサイドメンバと、
前記一対のリヤサイドメンバ間で車幅方向に沿って架設されるリヤクロスメンバと、
車幅方向両側の後輪をそれぞれ覆うホイールハウスの上部間で架設されるクロスバーと、
前記リヤクロスメンバと前記クロスバーとの間に架設されるパネルと、
を備え、
前記外枠部材は、車両前後方向の後端部で車幅方向に沿って延設されると共に、前記リヤクロスメンバに取り付けられる後端部材を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両のバッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記外枠部材の枠内に、前記前端部材から後方に向けて延びる中間縦部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のバッテリ搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−176751(P2012−176751A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92795(P2012−92795)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2008−36564(P2008−36564)の分割
【原出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】