説明

車両のバンパー装置

【課題】車両の外側からバンパーフェイスに荷重が入力されたときに、バンパーフェイスに設けた灯体が車体に衝突するのを防ぎ、灯体を保護する車両のバンパー装置を提供する。
【解決手段】車両のバンパー装置12は、バンパーフェイス27と骨格部材28を備える。バンパーフェイス27は、上下に分割し上をなすバンパーフェイスアッパ35と、下をなすバンパーフェイスロア36とを備える。バンパーフェイスアッパ35は灯体31と、灯体31と骨格部材28との間に設けられたアブソーバー部41とを備える。バンパーフェイスロア36は、灯体31を固定している灯体固定部43の近傍を必要に応じて離脱するバンパーロア離脱機構45で支持している。バンパーロア離脱機構45は、係合孔61を開けた係合部62と、係合部62に係止するためにバンパーフェイスアッパ35に設けた係止段部65を形成している係止爪66と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯体を設けている車両のバンパー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のバンパー装置には、意匠を形成しているバンパーフェイスを上部・下部に分割したものがある。
このバンパーフェイスは、上部をなすアッパーバンパーと下部をなすロアバンパーとを凹凸係合部で結合している。凹凸係合部は、アッパーバンパーの係止孔にロアバンパーの係止爪を車体前後方向に嵌合するので、位置決めされ、部品数や組付け工数を削減することができるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上部をなす第1のバンパー部材の正面部分に下部をなす第2のバンパー部材の正面部分を水平方向に動かすことで嵌合し、正面部に連なる互いの側部分を上下方向に動かすことで嵌合するので、作業性が向上するというものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、車体の支持部材にバンパーフェイスおよび灯体を取付けたものがある。この支持部材はバンパーフェイスへの衝突時に押し込まれると、灯体から係合爪が離脱するので、支持部材から灯体に衝突荷重が伝達されることがないというものである(例えば、特許文献3参照)。
また、車体とバンパーフェイスとの間に衝撃緩衝材を配置したものが見られる(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
一方、バンパーフェイスに取付け可能な灯体がある。
この灯体は車体に取り付けられ、取り外し時に側面方向へ移動させた際に車体に当接しないようにソケット保護リブが設けられているので、灯体を保護することができる(例えば、特許文献5参照)。
【0006】
しかし、従来技術(特許文献1、2)では、灯体を取付けていないが、灯体を取付けなければならない場合があり、バンパーフェイスにフォグランプなどの灯体を取付けたとすると、衝突時に灯体が押し込まれて破壊することが考えられる。
【0007】
特許文献3は、車体の支持部材に灯体を取付けているが、デザインや法律の規制などの条件によってバンパーフェイスに灯体を取付ける場合には採用できない。
バンパーフェイスに灯体を取付けたとすると、衝突時にバンパーフェイスとともに灯体が押し込まれるので、車体に当たり破壊することが考えられ、保護するための別部材が必要となる。
【0008】
特許文献4は、バンパーフェイスに灯体を取付けたとすると、衝突時に灯体が押し込まれて破壊されないよう専用の衝撃緩衝材が必要になる。専用の衝撃緩衝材、例えば、発泡スチロールを設けると、製造が複雑になる。
すなわち、発泡スチロール製の衝撃緩衝材を製造する樹脂成形用金型が必要になり、部品数が増加し、また発泡スチロール製の衝撃緩衝材の管理が発生し、さらに発泡スチロール製の衝撃緩衝材を組み付ける工程を設ける必要がある。つまり、製造が複雑になる。
【0009】
特許文献5では、車体に灯体を取付けているが、このソケット保護リブを設けた灯体をバンパーフェイスに取付けたとすると、バンパーフェイスに入力された衝突荷重によって側面方向(車幅方向の外方)へ移動したときにはソケット保護リブによって保護できるが、車体前後方向へ向け押し込まれたときに保護する保護リブが無く、灯体に車体前後方向への荷重に対応するものを取付ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−315553号公報
【特許文献2】特開平8−258646号公報
【特許文献3】特開2008−049859号公報
【特許文献4】特開2009−255858号公報
【特許文献5】実開平6−065090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、製造が簡単で、車両の外側からバンパーフェイスに荷重が入力されたときに、バンパーフェイスに設けた灯体がバンパーフェイスとともに押し込まれて車体に衝突するのを防ぎ、灯体を保護する車両のバンパー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の前端部又は後端部のいずれかに設けられた車両のバンパー装置であって、車両の車幅方向に延びるバンパーフェイスと、バンパーフェイスの内方に配置した骨格部材を備え、バンパーフェイスは、上下に分割して配設され、上をなすバンパーフェイスアッパと、下をなすバンパーフェイスロアと、バンパーフェイスロアにバンパーフェイスアッパを接合することで形成される境界線と、を備え、バンパーフェイスアッパは、境界線の上方に沿って設けられた灯体と、灯体と骨格部材との間に設けられたアブソーバー部と、を備え、灯体を固定している灯体固定部近傍からバンパーフェイスロアを必要に応じて離脱するバンパーロア離脱機構を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明では、灯体固定部は、バンパーフェイスアッパに複数設けられ、アブソーバー部は、複数の灯体固定部間に、灯体の下方をカバーするように延出しているアブソーバー本体部と、アブソーバー本体部のうち、骨格部材へ向いている縁に立設している縦壁部と、からなることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明では、縦壁部は、波型形状をなしていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明では、灯体は、灯体本体部と、灯体本体部の内部に設けられているバルブと、バルブの光を車両の外側へ透過するレンズ部と、からなり、縦壁部は、灯体本体部およびバルブから所望の距離だけ離して形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明では、バンパーロア離脱機構は、バンパーフェイスロアに立設されて係合孔を開けた係合部と、係合部に車両の外方から係止するためにバンパーフェイスアッパに連なり車体へ向かって突出した先端から車両下方へ膨出した係止段部を形成している係止爪と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、バンパーフェイスと、骨格部材を備え、バンパーフェイスは、バンパーフェイスアッパと、バンパーフェイスロアと、境界線と、を備え、バンパーフェイスアッパは、境界線の上方に沿って設けられた灯体と、灯体と骨格部材との間に設けられたアブソーバー部と、を備え、灯体を固定している灯体固定部近傍からバンパーフェイスロアを必要に応じて離脱するバンパーロア離脱機構を有しているので、バンパーフェイスロアに衝突荷重が入力された際に、バンパーフェイスロアが車体へ向かって押し込まれて衝突荷重を吸収するとともに、押し込まれるバンパーフェイスアッパと一体的に移動する灯体の損傷を防ぐことができる。
【0018】
具体的には、バンパーフェイスロアに衝突荷重が入力されると、バンパーフェイスアッパも追従して移動しようとし、バンパーロア離脱機構を支点として車両側斜め上方へモーメントが発生する。一方、移動する灯体が骨格部材に近づくと、骨格部材にアブソーバー部が当接して衝突荷重を吸収しつつ介在するので、灯体固定部の移動は抑制され、骨格部材に灯体が衝突せず、灯体の損傷を防ぐことができる。
そして、バンパーロア離脱機構では、移動を規制されたバンパーフェイスアッパに対し、移動し続けるバンパーフェイスロアがバンパーフェイスアッパから外れて離れるので、これ以上バンパーフェイスアッパが追従することはなく、灯体がそれ以上骨格部材に近づくことがなくなり、接触を防ぐことができ、灯体を保護することができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、灯体固定部は、バンパーフェイスアッパに複数設けられ、アブソーバー部は、複数の灯体固定部間に、灯体の下方をカバーするように延出しているアブソーバー本体部と、アブソーバー本体部のうち、骨格部材へ向いている縁に立設している縦壁部と、からなるので、衝突荷重によって骨格部材にアブソーバー部が当接すると、アブソーバー本体部および縦壁部が弾性変形することによって、車体側への灯体の移動を適切(灯体の機能を確保すること)に規制することができる。
【0020】
また、バンパーフェイス(バンパーフェイスアッパとバンパーフェイスロアを接合した状態)を搬送するときの保護部材を兼ねることができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、縦壁部は、波型形状をなしているので、衝突荷重によって骨格部材にアブソーバー部が当接すると、波型形状の凹凸が延びるように変形することによって衝撃を吸収することができ、車体側への灯体の移動を適切(灯体の機能を確保すること)に規制することができる。
【0022】
また、バンパーフェイス(バンパーフェイスアッパとバンパーフェイスロアを接合した状態)を搬送するときの保護部材を兼ねることができる。
【0023】
請求項4に係る発明では、灯体は、灯体本体部と、灯体本体部の内部に設けられているバルブと、バルブの光を車両の外側へ透過するレンズ部と、からなり、縦壁部は、灯体本体部およびバルブから所望の距離だけ離して形成されているので、車両の外側からの衝突荷重によってアブソーバー部が骨格部材に接触しても、縦壁部で荷重を吸収する適切なストローク量(設定した所望の距離)を確保することができ、灯体に衝突荷重が伝わらないため、より確実に灯体を保護することができる。
【0024】
請求項5に係る発明では、バンパーロア離脱機構は、バンパーフェイスロアに立設されて係合孔を開けた係合部と、係合部に車両の外方から係止するためにバンパーフェイスアッパに連なり車体へ向かって突出した先端から車両下方へ膨出した係止段部を形成している係止爪と、からなるので、バンパーフェイスロアを支持して走行振動時のバンパーフェイスロアの振動を防ぐ機能、衝突荷重を入力されたときにモーメントを発生させる機能を維持できる強度を確保しつつ、アブソーバー部が骨格部材に接触した後は、バンパーフェイスアッパとバンパーフェイスロアの係合を適切(灯体が損傷する前)に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係るバンパー装置を採用した車両の後部の斜視図である。
【図2】車両の後部を示す斜視図で、(a)は車体の後部の斜視部、(b)はバンパー装置の斜視図である。
【図3】図2(b)の3−3線断面図である。
【図4】図3の4部詳細図である。
【図5】実施例に係るバンパーフェイスの分解図である。
【図6】図5の6矢視図であり、(a)は斜視図、(b)は図6(a)のb部詳細図である。
【図7】図5の7矢視図である。
【図8】実施例に係るバンパーロア離脱機構の斜視図である。
【図9】実施例に係るバンパー装置の灯体を保護する機構を説明する作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
車両11は、図1に示すように、実施例に係るバンパー装置12を採用している。このバンパー装置12は車両11の後に採用されたリヤバンパー装置である。
【0028】
車両11は、図1、図2に示すように、後輪13、車体14のサイドボデー15と、リヤボデー16と、テールゲート17と、尾灯18と、バンパー装置12と、を備える。
サイドボデー15は、図1、図2に示すサイドアウタパネル21を有する。
リヤボデー16は、リヤパネル23と、テールゲート開口部24と、を有する。
リヤパネル23およびサイドアウタパネル21には(図2(a)参照)バンパー装置12が取り付けられる。
【0029】
バンパー装置12(リヤバンパー装置)は、図1〜図5に示す通り、リヤパネル23の下部およびサイドアウタパネル21の後下部の面を覆うバンパーフェイス27と、リヤボデー16に含まれる骨格部材28と、灯体31(例えば、リヤフォグランプ)と、を備える。そして、車両11の車幅方向(X軸方向)の中心Cを基準に左右がほぼ対象である。
【0030】
次に、車両11のバンパー装置12の主要構成を図1〜図8で説明する。
車両11のバンパー装置12は、車両11の前端部(図に示していない)又は後端部33のいずれかに設けられたものである。
【0031】
そして、車両11の車幅方向(X軸方向)に延びるバンパーフェイス27と、バンパーフェイス27の内方(図2(b)、図3の矢印a1の方向)に配置した骨格部材28を備える。
なお、車両11の前端部に設けたものをフロントバンパー装置とする。
【0032】
バンパーフェイス27は、上下に分割して配設され、上をなすバンパーフェイスアッパ35と、下をなすバンパーフェイスロア36と、バンパーフェイスロア36にバンパーフェイスアッパ35を接合することで形成される境界線37と、を備える。
【0033】
バンパーフェイスアッパ35は、境界線37の上方に沿って設けられた灯体31(左リヤフォグランプ、右リヤフォグランプ)と、灯体31と骨格部材28との間に設けられたアブソーバー部41と、を備える。
【0034】
バンパー装置12は、灯体31を固定している灯体固定部43の近傍からバンパーフェイスロア36を必要に応じて離脱するバンパーロア離脱機構45を有している。
【0035】
灯体固定部43は、バンパーフェイスアッパ35に複数設けられている。
「複数設けられている」とは、一端(左)に設けた第1灯体固定部43a、他端(右)に設けた第2灯体固定部43bの合計2個である。
【0036】
アブソーバー部41は、図5、図6に示す通り、複数の灯体固定部43間、具体的には左の第1灯体固定部43a、右の第2灯体固定部43b間に、灯体31の下方をカバーするように延出しているアブソーバー本体部46と、アブソーバー本体部46のうち、骨格部材28へ向いている(矢印a2の方向)縁47に立設している縦壁部51と、からなる。
【0037】
縦壁部51は、波型形状をなしている。言い換えると、縦壁部51は、車両前後方向(Y軸方向)に山52、谷53を形成している。なお、山52の数、谷53の数は任意である。
【0038】
灯体31は、図3に示す通り、灯体本体部55と、灯体本体部55の内部に設けられているバルブ56と、バルブ56の光を車両11の外側へ透過するレンズ部57と、からなる。
【0039】
縦壁部51は、灯体本体部55から所望の距離だけ離して形成され、バルブ56(の端子部58)から所望の距離Sだけ離して形成されている。
「所望の距離」とは、例えば、所望の車速(例えば、15km/h)で後面衝突したときに、車体14や骨格部材28に灯体本体部55やバルブ56の端子部58が接触しない距離である。
【0040】
なお、距離Sは、バルブ56の端子部58からの距離であり、端子部58からの距離以外の距離は、灯体本体部55を滑らかに連続させる半径や縦壁部51の波型形状によって変化している。
【0041】
バンパーロア離脱機構45は、図4、図5に示す通り、バンパーフェイスロア36に立設されて係合孔61を開けた係合部62と、係合部62に車両11の外方から(矢印a3の方向)係止するためにバンパーフェイスアッパ35に連なり車体14へ向かって突出した先端64から車両11下方へ膨出した係止段部65を形成している係止爪66と、からなる。
【0042】
次に、バンパーフェイスアッパ35、バンパーフェイスロア36、バンパーロア離脱機構45を詳しく説明していく。
バンパーフェイスアッパ35は、樹脂製で、テールゲート17の下縁71に近接して車両11の車幅方向に延ばしたバンパーアッパゲート部72が形成され、バンパーアッパゲート部72に連なりバンパーアッパコーナ部73が形成されている。このバンパーアッパコーナ部73(図5)に灯体固定部43が一体に、バンパーフェイスアッパ35の厚さより厚い厚さで射出成形機を用いて形成されている。
【0043】
灯体固定部43は、図3、図5、図6に示す通り、車体14(の骨格部材28)へ向かってほぼ水平に板状の張出し天部74が形成され、この張出し天部74の先端に連ねて車両11下方へ向かってほぼ垂直に板状の壁部75が形成されている。そして、壁部75の下縁に連ねて底部(アブソーバー本体部46)がほぼ水平、且つ張出し天部74に対しほぼ並行に形成されている。
【0044】
張出し天部74および壁部75は、図6に示す通り、両端(灯体固定部43)に比べ、中央(天中央部76、壁中央部(縦壁部51))がより大きく突出している。そして、中央(天中央部76、壁中央部51)に灯取付け開口部77が灯体31(図3)を貫通させる大きさで形成されている。なお、壁中央部が縦壁部51である。
【0045】
壁部75は、両端(一方、他方)が灯体固定部43であり、灯体固定部43に灯体31を係止するための係止角穴78を開けている。
灯体固定部43の下縁に連ねて車体14(の骨格部材28)へ向かって突出させた係止爪66(一方の第1係止爪66a、他方の第2係止爪66b)が形成されている。
【0046】
係止爪66は、既に説明した係止段部65、先端64を形成している。また、図6(b)に示す通り、灯体固定部43の下縁から張出し本体部81が所望の幅Wで張り出している。
そして、張出し本体部81に連続して端部82が張出し本体部81の幅Wより狭い幅W1で形成されているので、ストッパ部83が形成されている。端部82は係止段部65、先端64を含む。
【0047】
次にバンパーフェイスロア36を説明する。
バンパーフェイスロア36は、樹脂製で、図5、図7に示すバンパーフェイスロア36の上縁86をバンパーフェイスアッパ35の下縁87に接続している(図2(b))。そして、バンパーフェイスアッパ35のバンパーアッパゲート部72に接続しているバンパーロア本体部91が形成され、バンパーアッパコーナ部73に接続しているバンパーロアコーナ部92が形成されている。
【0048】
バンパーロア本体部91を車両11の車幅方向に延ばし、バンパーロア本体部91に連なりバンパーロアコーナ部92が形成されている。このバンパーロアコーナ部92にバンパーロア離脱機構45のロア連結部93を形成した(図3〜図5、図7、図8)。
【0049】
ロア連結部93は、バンパーフェイスロア36に一体に射出成形機を用いて形成され、バンパーロアコーナ部92の上縁86に連なりロアベース部95が車体14(の骨格部材28)へ向かってほぼ水平に板状に形成されている。このロアベース部95の先端96に連ねて車両11下方上方へ向かってほぼ垂直に係合部62が形成されている。
【0050】
係合部62は、係合孔61の幅Whを係止爪66の端部82(先端64と、係止段部65とからなる)の幅W1(図6(b))に対し、わずかな隙間を形成する大きさで形成している。そして、係合孔61に係止爪66を嵌めると、係合孔61の幅Whより大きい張出し本体部81(のストッパ部83)が係合部62の面に当接するので、バンパーフェイスアッパ35およびバンパーフェイスロア36の位置決めを行うことができる。
【0051】
係合部62はまた、図4に示す通り、係止爪66を嵌めた状態で、係止爪66の上面98との隙間を係止段部65に荷重が矢印a4のように加わったときに、係合部62が矢印a5、矢印a6のように移動できるだけの隙間に設定している。つまり、係合部62は係止爪66から離脱可能に形成され、組み付けられている。
【0052】
次に、バンパー装置12の組み付け要領を簡単に説明する。
まず、バンパーフェイスアッパ35の左右の灯体固定部43にそれぞれ左右の灯体31を取付ける。図5に示すように、灯取付け開口部77へ斜め下方から矢印a7のように挿入する。
続けて、図8に示すように、灯体固定部43(一端(左)の第1灯体固定部43a、他端(右)の第2灯体固定部43b)の係止角穴78に灯体爪101を掛ける。
【0053】
その次に、バンパーフェイスアッパ35にバンパーフェイスロア36をバンパーロア離脱機構45で接合し、且つ互いの縁(上縁86、下縁87)を図に示していない接合部で接合する。
【0054】
その際、バンパーロア離脱機構45では、図5、図7に示す通り、係合孔61に係止爪66を矢印a8のように嵌め込む(図8も参照)。嵌め込むと、係合孔61の縁(先端96)に係止爪66の係止段部65が掛かる。これでバンパーフェイス27が完成する。
最後に、図2(a)に示すリヤボデー16にバンパーフェイス27を組み付ける。
左右のバンパー取付け部およびバンパービームに取付ける。
【0055】
次に、車両11のバンパー装置12の作用を説明する。バンパー装置12の灯体31を保護する機構を図3、図9で説明する。図9(a)は断面図で図3に相当し、図9(b)は図9(a)のb部詳細図である。
【0056】
バンパー装置(リヤバンパー装置)12では、車両11が後面衝突すると、バンパーフェイス27が上下に離れるので、残ったバンパーフェイスアッパ35および灯体31は後面衝突による圧縮荷重が伝達され難く、灯体31を保護することができる。
【0057】
具体的には、図3、図9(a)に示すバンパーフェイスロア36に物104(例えば、他の車両や障害物)が衝突して、衝突荷重が矢印b1のように加わると、バンパーフェイス27は二点鎖線で示す位置から実線で示すように車体14へ向かって矢印b2のように押し込まれる。
【0058】
すなわち、バンパーフェイスアッパ35にバンパーフェイスロア36の複数の箇所を接合(上縁86、下縁87)しているため、バンパーフェイスアッパ35も追従して移動しようとし、バンパーロア離脱機構45をほぼ中心とする斜め前上方(矢印a5の方向)への力(モーメント)が発生する(図4も参照)。この力によって係止爪66が外れやすくなる。
【0059】
図9(a)に示すように、押し込まれるバンパーフェイスアッパ35のアブソーバー部41が車体14(の骨格部材28)に当接すると、バンパーフェイスアッパ35は車体14へ向かう(矢印b2の方向)移動を規制される。
【0060】
バンパーフェイスアッパ35が移動を規制された後も、バンパーフェイスロア36は引き続き車体14へ向かって矢印b2のように押し込まれるので、図9(b)に示す通り、係止爪66の係止段部65から係合部62の係合孔61が外れる。
その際、係止爪66は車両11上方へ向け弾性変形してたわんでいるので、係合部62は外れやすくなる。
【0061】
そして、係止爪66から係合部62が離脱して、係合部62は自由状態となるため、これ以上、バンパーフェイスアッパ35がバンパーフェイスロア36に追従することはなくなり、灯体31が車体14(の骨格部材28)との間に、距離S(図3)からアブソーバー部41の圧縮したストローク量As(図に示していない)を減算した距離Sa(Sa=S−As)を確保することができ、灯体31が車体14(の骨格部材28)に衝突することがなくなる。
【0062】
アブソーバー部41は、図9に示す通り、後面衝突したときに、車体14(の骨格部材28)に当接すると、アブソーバー本体部46が圧縮変形し、縦壁部51がたわんで延びることによって所望のストローク量だけ変形するので、衝突荷重を吸収することができ、灯体31の機能を確保することができる。
【0063】
バンパーロア離脱機構45では、バンパーフェイスアッパ35にアブソーバー本体部46および係止爪66を同時に一体に成形し、バンパーフェイスロア36に係合部62を同時に一体に成形しているので、樹脂成形用金型が増加しない、部品数が増加しない、アブソーバー本体部46、係止爪66、係合部62を個別に管理したり、組み付ける必要がないという利点がある。つまり、製造が簡単になる。
【0064】
尚、本発明の車両のバンパー装置は、実施の形態では車両11の後端部33に採用されているが、車両11の前端部に採用してフロントバンパー装置とすることも可能である。フロントバンパー装置では、正面衝突したときに、同様の効果を発揮する。当然、バンパーフェイスの意匠を変える。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の車両11のバンパー装置12は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0066】
11…車両、12…バンパー装置、27…バンパーフェイス、28…骨格部材、31…灯体、33…後端部、35…バンパーフェイスアッパ、36…バンパーフェイスロア、37…境界線、41…アブソーバー部、43…灯体固定部、45…バンパーロア離脱機構、46…アブソーバー本体部、47…アブソーバー本体部の縁、51…縦壁部、55…灯体本体部、56…バルブ、57…レンズ部、61…係合孔、62…係合部、64…先端、65…係止段部、66…係止爪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端部又は後端部のいずれかに設けられた車両のバンパー装置であって、
前記車両の車幅方向に延びるバンパーフェイスと、該バンパーフェイスの内方に配置した骨格部材を備え、
前記バンパーフェイスは、上下に分割して配設され、上をなすバンパーフェイスアッパと、下をなすバンパーフェイスロアと、該バンパーフェイスロアに前記バンパーフェイスアッパを接合することで形成される境界線と、を備え、
前記バンパーフェイスアッパは、前記境界線の上方に沿って設けられた灯体と、該灯体と前記骨格部材との間に設けられたアブソーバー部と、を備え、
前記灯体を固定している灯体固定部近傍から前記バンパーフェイスロアを必要に応じて離脱するバンパーロア離脱機構を有していることを特徴とする車両のバンパー装置。
【請求項2】
前記灯体固定部は、前記バンパーフェイスアッパに複数設けられ、
前記アブソーバー部は、前記複数の灯体固定部間に、前記灯体の下方をカバーするように延出しているアブソーバー本体部と、該アブソーバー本体部のうち、前記骨格部材へ向いている縁に立設している縦壁部と、からなることを特徴とする請求項1記載の車両のバンパー装置。
【請求項3】
前記縦壁部は、波型形状をなしていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両のバンパー装置。
【請求項4】
前記灯体は、灯体本体部と、該灯体本体部の内部に設けられているバルブと、前記バルブの光を車両の外側へ透過するレンズ部と、からなり、
前記縦壁部は、前記灯体本体部および前記バルブから所望の距離だけ離して形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車両のバンパー装置。
【請求項5】
前記バンパーロア離脱機構は、前記バンパーフェイスロアに立設されて係合孔を開けた係合部と、該係合部に車両の外方から係止するために前記バンパーフェイスアッパに連なり車体へ向かって突出した先端から車両下方へ膨出した係止段部を形成している係止爪と、からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両のバンパー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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