説明

車両のパワートレイン配設構造

【課題】パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させることができるとともに、排気系補機を適正にレイアウトできるようにする。
【解決手段】車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3に設けられた車体の後方側に凹入する凹入部5内に、車輪を駆動するパワートレイン11の一部が配設された車両において、上記パワートレイン11は、エンジンルーム2内に縦置き式に配設されるエンジン本体12とトランスミッション13とを備え、上記エンジン本体12の前方にはエンジン冷却用の熱交換器18が配設され、この熱交換器18とエンジン本体12との間にはエンジン本体12から車体の前方側に延びる排気管22が配設されるとともに、この排気管22に設けられた排気系補機26が上記エンジン本体12の前部下方に近接した位置に配設され、上記排気系補機26の熱によってエンジン本体12が暖機可能に構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両のパワートレイン配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車室と、その前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、上記エンジンルーム内に配設されたエンジン本体等を有するパワートレインにより後輪が駆動されるように構成された後輪駆動車両において、エンジン本体の排気管をエンジンの前方を経由して後方に延びるように設置し、この排気管の上流部に排気ガス浄化用の上流側キャタライザー(キャタリスト)を設けて上記パワートレインの前方側に配設するとともに、その前方側にラジエータと冷却ファンとを有するエンジン冷却用の熱交換器(クーリングユニット)を配設し、かつ車室フロアのトンネル部内に導入された排気管の下流部に排気ガス浄化用の下流側キャタライザーを配設することが行われている。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、エンジン本体の排気管に設けられた排気ガス浄化用の上流側キャタライザーからなる排気系補機を、パワートレインの前方側において車幅方向に延びるように配設した場合には、パワートレインの後方側に上記上流側キャタライザーを配設した場合に比べ、パワートレインを車体の後方側に位置させることができるため、車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを低減して操縦安定性を向上させることが可能である。しかし、上記特許文献1に開示された車両のエンジン配設構造では、図6および図7に示すように、排気ガス浄化用の下流側キャタライザーαが車室内の中央底部に設けられたトンネル部6内に配設されているため、この下流側キャタライザーαにおいて発生した反応熱により乗員の足元部に及ぶのを防止するための遮熱板を設け、あるいは乗員用シート7を上方に配設して上記下流側キャタライザーαから離間させる等の手段を講じる必要がある。したがって、車体の構造が複雑になって製造コストがアップし、あるいは車高が高くなって車体デザインの自由度が制限される等の問題がある。
【0004】
なお、エンジンルーム内に配設された排気ガス浄化用の上流側キャタライザーを大型化することにより、上記トンネル部内に配設される下流側キャタライザーαを小型化し、あるいはこの下流側キャタライザーαを省略することも考えられるが、この場合には、エンジンルーム内の限られたスペースに上記排気ガス浄化用の上流側キャタライザーからなる大型の排気系補機26を適正にレイアウトすることが困難であるとともに、上記排気系補機26において発生した反応熱が車室内に及ぶのを防止するように構成しなければならない等の問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させることができるとともに、排気系補機を適正にレイアウトすることができる車両のパワートレイン配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに、車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に、車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記パワートレインは、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備え、上記エンジン本体の前方にはエンジン冷却用の熱交換器が配設され、この熱交換器とエンジン本体との間にはエンジン本体から車体の前方側に延びる排気管とが配設されるとともに、この排気管に設けられた排気系補機が上記エンジン本体の前部下方に近接した位置に配設され、このエンジン本体が排気系補機の熱によって暖機可能に構成されたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機が、エンジン本体の底部に設けられたオイルパンの前端部に近接した位置に配設されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機が、エンジン本体のシリンダブロックの下部前面に近接した位置に配設されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記熱交換器に、熱交換器本体とこの熱交換器本体に冷却風を供給する冷却ファンとが設けられ、少なくともエンジンの暖機終了後に上記排気系補機が冷却ファンにより冷却可能に構成されたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機と冷却ファンとが正面視で互いに重合するように配設されたものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機が排気ガス浄化用のキャタライザーからなるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機をエンジン本体の前方側に配設するとともに、上記パワートレインの一部をダッシュパネル凹入部内に配設することにより、エンジンルーム内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体およびトランスミッションを、可及的に車両の後方側に位置させることができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。また、エンジンの始動時に、上記排気系補機の反応熱に応じて上記エンジン本体を加熱することにより、エンジンの始動性を安定させつつ、エンジンの暖機性を効果的に向上させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、エンジンの始動時に、上記排気系補機の反応熱に応じてエンジン本体の下端部に設けられたオイルパンを加熱することにより、その内部に収容されてているために加熱することが困難な潤滑油の温度を早期に上昇させることができるため、エンジン各部の潤滑機能を充分に発揮させてエンジンの始動性を安定させつつ、エンジンの暖機性を効果的に向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、エンジンの始動時に、上記排気系補機の反応熱に応じて上記エンジン本体のシリンダブロックを加熱することにより、エンジンの始動性を安定させつつ、エンジンの暖機性を効果的に向上させることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、エンジンの暖機後に、上記冷却ファンを作動させることにより熱交換器における熱交換機能を充分に発揮させることができるとともに、上記冷却ファンから供給される冷却風により排気系補機を効率よく冷却してその熱劣化を効果的に防止できる等の利点がある。
【0016】
請求項5に係る発明では、必要時に冷却ファンの冷却風を排気系補機の設置部に対して充分に供給してこの排気系補機をより効果的に冷却することができる。
【0017】
請求項6に係る発明では、エンジンの始動時に温度が早期に上昇する上記排気ガス浄化用のキャタライザーをエンジン本体の前部下方に配設することにより、その熱をエンジン本体の暖機に効率よく利用できるとともに、上記キャタライザーの熱影響が車室内等に及ぶのを効果的に防止できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図4は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第1実施形態を示している。上記車両には、車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3が設けられるとともに、このダッシュパネル3の下端部にフロアパネル4の前端部が接続されている。上記ダッシュパネル3の車幅方向中央部には、車体の後方側に凹入する凹入部5が形成されるとともに、上記フロアパネル4の車幅方向中央部には、上方に向けて膨出するトンネル部6が形成され、かつその左右には、運転席および助手席等からなる乗員用シート7が配設されている。
【0019】
上記エンジンルーム2の上面部には、ボンネット8が開閉可能に設置されている。このボンネット8の前端部下方には、走行風取入用の開口部を有するフロントグリル9が配設されている。このフロントグリル9の上部後方には、バンパレインフォースメント10が車幅方向に延びるように設置され、その左右両端部には、左右一対のフロントサイドフレーム20が車体の後方側に延びるように配設されている。また、上記エンジンルーム2の後方部には、図外の後部車輪を駆動するパワートレイン11が配設されている。このパワートレイン11は、縦置き式に配設されたロータリエンジン等からなるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを有している。
【0020】
そして、上記エンジン本体12の後部が、ダッシュパネル3に形成された凹入部5内に配設されるとともに、上記トランスミッション13およびこれに接続されたプロペラシャフト14と、パワープラントフレーム15とが上記トンネル部6内に配設されている。また、上記エンジンルーム2の前方部には、ラジエータ等からなる熱交換器本体16と、その後方側に位置する冷却ファン17等とを備えたエンジン冷却用の熱交換器18が、上記エンジン本体12の前方位置において所定角度の後傾姿勢で設置されている。
【0021】
上記エンジン本体12の一側面部には、排気ポートに連通する排気管22が接続されている。この排気管22は、エンジン本体12の一側面部から車体の前方側に延びる前方延長部23と、その前端部からエンジン本体12の下部前面に沿って車幅方向に延びる側方延長部24と、その側端部から車体の後方側に延びる後方延長部25とを有し、この後方延長部25の後部が上記トンネル部6内に導入されている。
【0022】
上記排気管22の側方延長部24には、排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26が、上記エンジン本体12の前部下方に近接した位置、具体的には、エンジン本体12の底部に設けられたオイルパン27の前端部に近接した位置において車幅方向に延びるように配設されている。また、正面視で上記排気系補機26と熱交換器18の冷却ファン17とが互いに重合した状態となるように、それぞれの設置高さが設定されている。なお、図1において、符号28は、上記冷却ファン17に作動指令信号を出力する冷却ファン制御手段であり、図3において、符号29は、前輪用のサスペンションーアーム等が取り付けられるサスペンションクロスメンバである。
【0023】
上記構成において、エンジン温度を検出するエンジン温度センサ30の検出信号に応じてエンジン始動後の暖機運転状態にあることが、上記冷却ファン制御手段28において確認された場合には、エンジンの冷却水温度が低いために熱交換器18の冷却ファン17を作動停止状態とする制御が実行される。この状態で、エンジンの燃焼室から排気管22に導出された高温の排気ガスが、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26の設置部に供給され、この排気系補機26において排気ガスが浄化処理されるとともに、その反応熱により上記排気系補機26の温度が上昇する。また、この排気系補機の26の反応熱に応じてオイルパン27が加熱されることにより、その内部に収容された潤滑油の温度が早期に上昇する。
【0024】
そして、車両の走行状態を検出する車輪速センサ31および上記エンジン温度センサ30の検出信号に応じて暖機終了後に車両が停止状態、または低速走行状態にあることが、上記冷却ファ制御手段28において確認された場合には、上記冷却ファン17に作動指令信号が出力されて冷却ファン17が作動状態となることにより、その吸引力に応じて上記フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に冷却風が導入され、この冷却風が上記熱交換器18の設置部に供給されてエンジン冷却水の熱交換が積極的に行われるとともに、上記排気系補機26の設置部に供給されてこの排気系補機26の冷却が行われる。
【0025】
また、上記車輪速センサ31およびエンジン温度センサ30の検出信号に応じてエンジン始動後の暖機運転が終了し、かつ車両が停止状態、または低速走行状態にないことが、上記冷却ファン制御手段28において確認された場合には、冷却ファン17を作動停止状態とする制御が実行される。これによって暖機終了後における車両の走行時には、フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に走行風が導入されて上記排気系補機26の設置部に供給され、この走行風により排気系補機26が冷却されるとともに、エンジン本体12の底部を通ってトンネル部6内に上記走行風が導入された後、車体の後方側に導出されることになる。
【0026】
上記のように車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3に、車体の後方側に凹入する凹入部5が設けられるとともに、車輪を駆動するパワートレイン11の一部が上記凹入部5内に配設された車両において、上記パワートレイン11を構成するエンジン本体12の前方に、エンジン冷却用の熱交換器18と、エンジン本体12から車体の前方側に延びる排気管22とを配設するとともに、この排気管22に設けられた排気系補機26を上記エンジン本体12の前方に配設した場合には、パワートレイン11を車両の後方側に位置させて車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを効果的に低減できる等の利点がある。
【0027】
すなわち、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26をエンジン本体12の前方側に配設するとともに、上記パワートレイン11を構成するエンジン本体12の後部を上記凹入部5内に配設することにより、エンジンルーム2内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性および走行安定性を向上させることができる。
【0028】
また、上記パワートレイン11を車両の後方側に位置させることによりスペース的に余裕が生じたエンジンルーム2内において、大型のキャタライザーからなる排気系補機26を自由にレイアウトすることができるため、従来、車室フロアのトンネル部6内またはフロアパネル4の下方等に配設されていた下流側キャタライザーα(図6および図7参照)を小型化し、あるいは省略することができる。したがって、上記下流側キャタライザーαにおいて発生した熱の影響が車室1内に及ぶのを阻止するために断熱部材を設置する等の手段を講じることなく、上記下流側キャタライザーαの反応熱に応じて乗員の足元部分が加熱されること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0029】
しかも、従来例のように、車室フロアのトンネル部6内等に上記排気ガス浄化用の下流側キャタライザーαを配設した場合には、車室1内に配設された乗員用シート7を、ある程度上方に位置させることにより、上記下流側キャタライザーαとの干渉を避ける必要がある。これに対して上記下流側キャタライザーαを省略、または小型化した場合には、図4に示すように、乗員用シート7を従来よりも下方に位置させることができるとともに、これに対応して車高を低くすることが可能になる等の利点がある。
【0030】
そして、上記のように排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26をエンジン本体12の底部に設けられたオイルパン27の前端部に近接した位置に配設したため、エンジンの始動時に、上記排気系補機26の反応熱に応じて上記オイルパン27を加熱することにより、その内部に収容されているために加熱することが困難な潤滑油の温度を早期に上昇させることができる。したがって、エンジンの始動時に上記潤滑油によるエンジン各部の潤滑機能を充分に発揮させることにより、エンジンの始動性を安定させつつ、エンジンの暖機性を効果的に向上させることができる。
【0031】
しかも、暖機終了後の車両の走行時には、フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入された走行風を上記排気系補機26の設置部に供給してこの排気系補機26を冷却することができるため、上記排気系補機26がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化し、あるいは適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下したりするのを効果的に防止することができる。さらに、上記排気系補機26の設置部を通過した走行風は、エンジン本体12の底部に沿って車室中央のトンネル部6内に導入され、このトンネル部6を通って車外に導出されるため、上記排気系補機26において発生した反応熱がエンジンルーム2内の各機器に悪影響を与えたり、車室の乗員用シート7に着座した乗員の足元部が加熱されたりすることを効果的に防止できるという利点がある。
【0032】
また、上記のようにラジエータ等からなる熱交換器本体16と、この熱交換器本体16に冷却風を供給する冷却ファン17とを熱交換器18に設け、少なくともエンジンの暖機後に上記冷却ファン17を作動させて排気系補機26に冷却風を供給することにより、これを冷却するように構成したため、フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機26がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化することを効果的に防止できるという利点がある。
【0033】
すなわち、上記第1実施形態では、熱交換器18の冷却ファン17と、上記排気系補機18の冷却ファン17とを正面視で互いに重合するように配設し、暖機終了後に車両が停止状態となり、あるいは低速走行状態となったことが冷却ファン制御手段28において確認された場合に、上記冷却ファン17を作動状態とする作動指令信号を出力し、その吸引力に応じて上記フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に冷却風を導入し、この冷却風を上記熱交換器18の設置部に供給してエンジン冷却水の熱交換を積極的に行わせるとともに、上記排気系補機26の設置部に供給してこの排気系補機26を冷却するように構成したため、フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機26が早期に熱劣化すること等を効果的に防止することができる。
【0034】
なお、上記熱交換器18の冷却ファン17と排気系補機26とを正面視で互いに重合するように配設した上記第1実施形態に代え、上記冷却ファン17と排気系補機26とを正面視で上下にオフセットさせて配設するとともに、上記冷却ファン17の送風方向が排気系補機26の設置部を向くように、冷却ファン17の傾斜角度を設定し、少なくともエンジンの暖機後に上記冷却ファン17を作動させる作動指令信号を出力することにより排気系補機26を冷却可能に構成してもよい。
【0035】
図5は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第2実施形態を示している。この第2実施形態は、上記排気系補機26を、エンジン本体12のシリンダブロック、具体的にはロータハウジングとサイドハウジングとにより構成されたロータリエンジンの本体部分の下部前面に近接した位置に配設したものである。このように構成した場合においても、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26をエンジン本体12の前方側に配設することにより、エンジンルーム2内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設できるという上記効果を損なうことなく、エンジンの始動時に、上記排気系補機26の反応熱に応じて上記エンジン本体12を加熱することにより、エンジンの始動性を安定させつつ、エンジンの暖機性を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0036】
また、上記第2実施形態において、排気系補機26と冷却ファン17とを正面視で互いに重合するように配設する等により、少なくともエンジンの暖機後に上記冷却ファン17を作動状態とし、その吸引力に応じて排気系補機26を冷却するように構成すれば、上記フロントグリル9の開口部からエンジンルーム2内に導入される走行風量が少ない場合においても、上記排気系補機26を効率よく冷却してその熱劣化および浄化性能の低下を効果的に防止できるという利点がある。
【0037】
なお、上記排気系補機26としては排気ガス浄化用のキャタライザー以外に、排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させるサーマルリアクタ、またはターボチャージャー用の排気タービン等が考えられる。しかし、上記排気ガス浄化用のキャタライザーは、その反応熱により早期に活性化して高温状態となるとともに、比較的大型であるためにこれをエンジン本体12の後方側に配設すると、エンジンルーム2内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設することが困難になるとともに、エンジン始動時に上記排気ガス浄化用のキャタライザーによりエンジン本体12を効果的に加熱することが困難である。
【0038】
したがって、上記第1,第2実施形態に示すように、エンジン本体12の下部前方に近接した位置に、上記排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機26を配設することにより、エンジンルーム2内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設し得るようにするとともに、エンジン始動時に上記排気ガス浄化用のキャタライザーによりエンジン本体12を効果的に加熱できるように構成することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記パワートレイン配設構造の第1実施形態を示す平面断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第2実施形態を示す側面断面図である。
【図6】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の従来例を示す側面断面図である。
【図7】図6のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 車室
2 エンジンルーム
11 パワートレイン
12 エンジン本体
13 トランスミッション
16 熱交換器本体
17 冷却ファン
18 熱交換器
26 排気系補機
27 オイルパン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに、車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に、車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記パワートレインは、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備え、上記エンジン本体の前方にはエンジン冷却用の熱交換器が配設され、この熱交換器とエンジン本体との間にはエンジン本体から車体の前方側に延びる排気管が配設されるとともに、この排気管に設けられた排気系補機が上記エンジン本体の前部下方に近接した位置に配設され、このエンジン本体が排気系補機の熱によって暖機可能に構成されたことを特徴とする車両のパワートレイン配設構造。
【請求項2】
上記排気系補機が、エンジン本体の底部に設けられたオイルパンの前端部に近接した位置に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項3】
上記排気系補機が、エンジン本体のシリンダブロックの下部前面に近接した位置に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項4】
上記熱交換器に、熱交換器本体とこの熱交換器本体に冷却風を供給する冷却ファンとが設けられ、少なくともエンジンの暖機終了後に上記排気系補機が冷却ファンにより冷却可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項5】
上記排気系補機と冷却ファンとが正面視で互いに重合するように配設されたことを特徴とする請求項4に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項6】
上記排気系補機が排気ガス浄化用のキャタライザーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−40182(P2009−40182A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206626(P2007−206626)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】