説明

車両のパワートレイン配設構造

【課題】パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させることができるとともに、排気系補機の温度を適正に制御できるようにする。
【解決手段】車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3に、車体の後方側に凹入する凹入部5が設けられるとともに、この凹入部5内に、車輪を駆動するパワートレイン11の一部が配設された車両において、上記パワートレイン11の前方にはパワートレイン冷却用の熱交換器18が配設され、この熱交換器1とパワートレイン11との間には、パワートレイン11から車体の前方側に延びる排気管22が配設されてこの排気管22に排気系補機26が設けられるとともに、上記熱交換器18が熱交換器本体16とこの熱交換器本体16に冷却風を供給する冷却ファン17とを有し、この冷却ファン17の冷却風により上記排気系補機26が冷却可能に構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両のパワートレイン配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車室と、その前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、上記エンジンルーム内に配設されたエンジン本体等を有するパワートレインにより後輪が駆動されるように構成された後輪駆動車両において、エンジン本体の排気管をエンジンの前方を経由して後方に延びるように設置し、この排気管の上流部に排気ガス浄化用の上流側キャタライザー(キャタリスト)を設けて上記パワートレインの前方側に配設するとともに、その前方側にラジエータと冷却ファンとを有するパワートレイン冷却用の熱交換器(クーリングユニット)を配設し、かつ車室フロアのトンネル部内に導入された排気管の下流部に排気ガス浄化用の下流側キャタライザーを配設することが行われている。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、エンジン本体の排気管に設けられた排気ガス浄化用の上流側キャタライザーからなる排気系補機を、パワートレインの前方側において車幅方向に延びるように配設した場合には、パワートレインの後方側に上記上流側キャタライザーを配設した場合に比べ、パワートレインを車体の後方側に位置させることができるため、車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを低減して操縦安定性を向上させることが可能である。しかし、上記特許文献1に開示された車両のエンジン配設構造では、図6および図7に示すように、排気ガス浄化用の下流側キャタライザーαが車室内の中央底部に設けられたトンネル部6内に配設されているため、この下流側キャタライザーαにおいて発生した反応熱により乗員の足元部に及ぶのを防止するための遮熱板を設け、あるいは乗員用シート7を上方に配設して上記下流側キャタライザーαから離間させる等の手段を講じる必要がある。したがって、車体の構造が複雑になって製造コストがアップし、あるいは車高が高くなって車体デザインの自由度が制限される等の問題がある。
【0004】
なお、エンジンルーム内に配設された排気ガス浄化用の上流側キャタライザーを大型化することにより、上記トンネル部6内に配設される下流側キャタライザーαを小型化し、あるいはこの下流側キャタライザーαを省略することも考えられるが、この場合には、エンジンルーム内に配設された上記排気ガス浄化用の上流側キャタライザー等からなる排気系補機26を適正にレイアウトすることが困難であるという問題がある。また、上記排気系補機26の温度制御が困難であるため、パワートレイン11の始動後に排気系補機26を暖機するのに長時間を要し、あるいは排気系補機26が過度に加熱されて熱害が発生し易い等の問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させることができるとともに、排気系補機の温度を適正に制御することができる車両のパワートレイン配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに、車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に、車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記パワートレインの前方にはパワートレイン冷却用の熱交換器が配設され、この熱交換器とパワートレインとの間には、パワートレインから車体の前方側に延びる排気管が配設されてこの排気管に排気系補機が設けられるとともに、上記熱交換器が熱交換器本体とこの熱交換器本体に冷却風を供給する冷却ファンとを有し、この冷却ファンの冷却風により上記排気系補機が冷却可能に構成されたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記冷却ファンが、熱交換器本体と排気系補機との間に配設されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機と冷却ファンとが正面視で互いに重合するように配設されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記パワートレインが暖機完了状態にあるか否かを検出する暖機完了検出手段と、この暖機完了検出手段によりパワートレインが暖機完了状態にあることが確認された場合に、上記排気系補機を冷却するように冷却ファンを制御する冷却ファン制御手段とを備えたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の車両のパワートレイン配設構造において、暖機完了検出手段によりパワートレインが暖機完了状態にないことが確認された場合に、冷却風を車体の前方側に向けて送風し、パワートレインが暖機完了状態にあることが確認された場合に、冷却風を車体後方側に向けて送風するように冷却ファンを制御するものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記パワートレインが、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備えたものである。
【0012】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機が排気ガス浄化用のキャタライザーからなるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機をパワートレインの前方側に配設するとともに、上記パワートレインの一部をダッシュパネル凹入部内に配設することにより、エンジンルーム内において縦置き式に配設された重量物である上記パワートレインを、可及的に車両の後方側に位置させることができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。また、ラジエータ等からなる熱交換器本体に冷却風を供給する熱交換器の冷却ファンにより、上記排気系補機を冷却可能に構成したため、フロントグリルの開口部等からエンジンルーム内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化したり、その温度が適正値以上となって排気ガスの浄化機能が損なわれたりすること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明では、必要に応じて上記冷却ファンを作動させることにより熱交換器における熱交換機能を充分に発揮させることができるとともに、上記冷却ファンから供給される冷却風により排気系補機を効率よく冷却してその熱劣化を効果的に防止できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、必要時に冷却ファンの冷却風を排気系補機の設置部に対して充分に供給し、この排気系補機を、より効果的に冷却できるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明では、暖機完了検出手段においてパワートレインが暖機完了状態にあることが確認された場合に、上記冷却ファンを作動させて排気系補機を冷却するように構成したため、フロントグリルの開口部等からエンジンルーム内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機を効果的に冷却してその早期熱劣化等を効果的に防止することができる。また、上記暖機完了検出手段においてパワートレインが暖機完了状態にないこと、つまりパワートレインの始動直後における暖機運転状態にあることが確認された場合に、上記冷却ファンを作動停止状態とすることにより、排気系補機の暖機を効果的に促進して早期に排気ガスの浄化機能を発揮させることができるとともに、上記排気系補機の反応熱に応じてその後方に配設されたパワートレインを加熱することにより、その暖機を効果的に促進できるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明では、暖機完了検出手段においてパワートレインが暖機完了状態にあることが確認された場合に、上記冷却ファンの冷却風を車体後方側に向けて送風し、上記熱交換器の車体の後方側に位置する排気系補機の設置部に上記冷却風を供給して排気系補機を冷却するように構成したため、フロントグリルの開口部等からエンジンルーム内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機を効果的に冷却してその早期熱劣化等を効果的に防止することができる。また、上記暖機完了検出手段においてパワートレインが暖機完了状態にないことが確認された場合に、上記冷却ファンの冷却風を車体の前方側に向けて送風するように構成したため、車両の走行時に上記フロントグリルの開口部等からエンジンルーム内に導入された走行風を、上記冷却風によって車体の前方側へ押し返すことができ、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機の設置部に到達する走行風の風量を低減することができるため、排気系補機の暖機を効果的に促進して早期に排気ガスの浄化機能を発揮させることができるとともに、上記排気系補機の反応熱に応じてその後方に配設されたパワートレインを加熱することにより、その暖機を効果的に促進できるという利点がある。
【0018】
請求項6に係る発明では、エンジンルーム内において縦置き式に配設された重量物であるエンジン本体およびトランスミッションを有するパワートレインを可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。
【0019】
請求項7に係る発明では、パワートレインの前方側に、排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機を配設するとともに、この排気ガス浄化用のキャタライザーを熱交換器の冷却ファンにより冷却可能に構成したため、上記排気ガス浄化用のキャタライザーがその反応熱等により過度に加熱されて早期に熱劣化するのを防止できるとともに、適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下するのを効果的に防止できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜図4は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の実施形態を示している。上記車両には、車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3が設けられるとともに、このダッシュパネル3の下端部にフロアパネル4の前端部が接続されている。上記ダッシュパネル3の車幅方向中央部には、車体の後方側に凹入する凹入部5が形成されるとともに、上記フロアパネル4の車幅方向中央部には、上方に向けて膨出するトンネル部6が形成され、かつその左右には、運転席および助手席等からなる乗員用シート7が配設されている。
【0021】
上記エンジンルーム2の上面部には、ボンネット8が開閉可能に設置されている。このボンネット8の前端部下方には、走行風取入用の開口部を有するフロントグリル9が配設されている。このフロントグリル9の上部後方には、バンパレインフォースメント10が車幅方向に延びるように設置され、その左右両端部には、左右一対のフロントサイドフレーム20が車体の後方側に延びるように配設されている。また、上記エンジンルーム2の後方部には、図外の後部車輪を駆動するパワートレイン11が配設されている。このパワートレイン11は、縦置き式に配設されたロータリエンジン等からなるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを有している。
【0022】
そして、上記エンジン本体12の後部が、ダッシュパネル3に形成された凹入部5内に配設されるとともに、上記トランスミッション13およびこれに接続されたプロペラシャフト14と、パワープラントフレーム15とが上記トンネル部6内に配設されている。また、上記エンジンルーム2の前方部には、ラジエータ等からなる熱交換器本体16と、その後方側に位置する冷却ファン17等とを備えたパワートレイン冷却用の熱交換器18が、上記エンジン本体12の前方位置において所定角度の前傾姿勢で設置されている。
【0023】
上記エンジン本体12の一側面部には、排気ポートに連通する排気管22が接続されている。この排気管22は、エンジン本体12の一側面部から車体の前方側に延びる前方延長部23と、その前端部からエンジン本体12の下部前面に沿って車幅方向に延びる側方延長部24と、その側端部から車体の後方側に延びる後方延長部25とを有し、この後方延長部25の後部が上記トンネル部6内に導入されている。
【0024】
上記排気管22の側方延長部24には、排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26が、上記エンジン本体12と熱交換器18との間、具体的には熱交換器本体16の後方側に配設された冷却ファン17の後方側で、かつエンジン本体12の前方側において車幅方向に延びるように配設されている。また、上記排気系補機26が熱交換器18の下方部に沿った位置に配設されるとともに、正面視で排気系補機26と熱交換器18の冷却ファン17とが互いに重合するように、それぞれの設置高さが設定されている。
【0025】
なお、図1において、符号28は、エンジンの冷却水温度を検出する温度センサであり、符号29は、上記温度センサ28の出力信号に応じてパワートレイン11が暖機完了状態にあるか否かを検出する暖機完了検出手段である。また、符号30は、上記暖機完了検出手段29の検出信号に応じて上記冷却ファン17に作動指令信号を出力する冷却ファン制御手段であり、図3において、符号31は、前輪用のサスペンションーアーム等が取り付けられるサスペンションクロスメンバである。
【0026】
上記構成において、温度センサ28の検出信号に応じてパワートレイン11が暖機完了状態にあることが上記暖機完了検出手段29により確認された場合には、この暖機完了検出手段29の出力信号を受けて上記熱交換器18の冷却ファン17を正回転させる作動指令信号が冷却ファン制御手段28から冷却ファン17の駆動部に出力され、図1に示すように、その冷却風Rを車体後方側に向けて送風する制御が実行される。この結果、上記冷却風Rにより排気系補機26が効果的に冷却され、この排気系補機26の温度が過度に上昇することが抑制される。
【0027】
また、上記温度センサ28の検出信号に応じて暖機完了状態にないこと、つまりパワートレイン11の始動直後における暖機運転状態にあることが上記暖機完了検出手段29により確認された場合には、その出力信号を受けて上記冷却ファン17を逆回転させる作動指令信号が上記冷却ファン制御手段28から冷却ファン17に出力され、図5に示すように、その冷却風Fを車体の前方側に向けて送風する制御が実行される。これにより、車両の走行時に上記フロントグリル9の開口部等からエンジンルーム2内に導入された走行風Sが、上記冷却風Fによって前方の車外側へ押し返され、上記排気系補機26の設置部に到達する走行風Sの風量が低減されて排気系補機26の暖機が促進されることになる。
【0028】
上記のように車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3に、車体の後方側に凹入する凹入部5が設けられるとともに、車輪を駆動するパワートレイン11の一部が上記凹入部5内に配設された車両において、上記パワートレイン11の前方に、パワートレイン冷却用の熱交換器18と、パワートレイン11を構成するエンジン本体12の側面部から車体の前方側に延びる排気管22とを配設するとともに、この排気管22に設けられた排気系補機26を上記パワートレイン11の前方に配設した場合には、このパワートレイン11を車両の後方側に位置させて車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを効果的に低減できる等の利点がある。
【0029】
すなわち、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26をパワートレイン11の前方側に配設するとともに、上記パワートレイン11を構成するエンジン本体12の後部を上記凹入部5内に配設することにより、エンジンルーム2内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性および走行安定性を向上させることができる。
【0030】
また、上記パワートレイン11を車両の後方側に位置させることによりスペース的に余裕が生じたエンジンルーム2内において、大型のキャタライザーからなる排気系補機26を自由にレイアウトすることができるため、従来、車室フロアのトンネル部6内またはフロアパネル4の下方等に配設されていた下流側キャタライザーα(図6および図7参照)を小型化し、あるいは省略することができる。したがって、上記下流側キャタライザーαにおいて発生した熱の影響が車室1内に及ぶのを阻止するために断熱部材を設置する等の手段を講じることなく、上記下流側キャタライザーαの反応熱に応じて乗員の足元部分が加熱されること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0031】
しかも、従来例のように、車室フロアのトンネル部6内等に上記排気ガス浄化用の下流側キャタライザーαを配設した場合には、車室1内に配設された乗員用シート7を、ある程度上方に位置させることにより、上記下流側キャタライザーαとの干渉を避ける必要がある。これに対して上記下流側キャタライザーαを省略、または小型化した場合には、図4に示すように、乗員用シート7を従来よりも下方に位置させることができるとともに、これに対応して車高を低くすることが可能になる等の利点がある。
【0032】
そして、上記のようにラジエータ等からなる熱交換器本体16に冷却風を供給する熱交換器18の冷却ファン17により、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26を冷却可能に構成したため、フロントグリル9の開口部等からエンジンルーム2内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機26がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化したり、その温度が適正値以上となって排気ガスの浄化機能が損なわれたりすること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0033】
すなわち、上記実施形態では、熱交換器18の冷却ファン17と、上記排気系補機26とを正面視で互いに重合するように配設し、暖機完了検出手段29においてパワートレイン11が暖機完了状態にあることが確認された場合に、上記冷却ファン17を正回転させる作動指令信号を出力し、その吸引力に応じて上記フロントグリル9の開口部等からエンジンルーム2内に冷却風Rを導入し、この冷却風Rを上記熱交換器18の設置部に供給してエンジン冷却水の熱交換を積極的に行わせるとともに、その車体の後方側に位置する上記排気系補機26の設置部に上記冷却風Rを供給して排気系補機26を冷却するように構成したため、フロントグリル9の開口部等からエンジンルーム2内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機26を効果的に冷却してその早期熱劣化等を効果的に防止することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、暖機完了検出手段29においてパワートレイン11が暖機完了状態にないこと、つまりパワートレイン11の始動直後における暖機運転状態にあることが確認された場合に、上記冷却ファン17を逆回転させる作動指令信号を出力し、図5に示すように、その冷却風Fを車体の前方側に向けて送風するように構成したため、車両の走行時に上記フロントグリル9の開口部等からエンジンルーム2内に導入された走行風Sを、上記冷却風Fによって車体の前方側へ押し返すことができる。したがって、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機26の設置部に到達する走行風Sの風量を低減することにより、排気系補機26の暖機を効果的に促進して早期に排気ガスの浄化機能を発揮させることができる。さらに、上記排気系補機26の反応熱に応じてその後方に配設されたパワートレイン11を加熱することにより、その暖機を効果的に促進できるという利点がある。
【0035】
なお、上記熱交換器18の冷却ファン17と排気系補機26とを正面視で互いに重合するように配設した上記実施形態に代え、上記冷却ファン17と排気系補機26とを正面視で上下にオフセットさせて配設するとともに、上記冷却ファン17の送風方向が排気系補機26の設置部を向くように、冷却ファン17を傾斜させた構成としてもよい。そして、パワートレイン11の暖機完了状態あることが確認された場合に、上記冷却ファン17を正回転させてその冷却風を排気系補機26の設置部に供給することにより、これを冷却するように構成してもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、暖機完了検出手段29においてパワートレイン11が暖機完了状態にないことが確認された場合に、上記冷却ファン17を常時作動させてその冷却風Fを車体の前方側に向けて送風する制御を上記冷却ファン制御手段27により実行するように構成した例について説明したが、上記暖機完了検出手段29においてパワートレイン11の暖機完了状態にないことが確認されるとともに、図外の車輪速センサの検出信号等に応じて車両が所定の走行状態にあることが確認されたた場合にのみ、上記冷却ファン17を作動させてその冷却風Fを車体の前方側に向けて送風する制御を実行し、かつ車両が停止状態あるいは低速走行状態にあることが確認された場合には、冷却ファン17の作動を停止させるように構成してもよい。
【0037】
上記のように構成した場合には、パワートレイン11の暖機運転状態における車両の走行時に、上記フロントグリル9の開口部等からエンジンルーム2内に導入された走行風Sを、上記冷却風Fによって車体の前方側へ押し返すことにより、排気系補機26が走行風Sにより冷却されるのを防止してその暖機を効果的に促進できるとともに、パワートレイン11の暖機運転状態における車両の停止時等には、上記冷却ファン17を停止状態とすることにより、電力の消費を抑制しつつ、上記排気系補機26の暖機を効果的に促進できるという利点がある。
【0038】
上記実施形態では、エンジンルーム2内に縦置き式に配設されるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを備えたパワートレイン11の一部を、ダッシュパネル3に形成された後方側への凹入部5内に配設したため、重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設して車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができるという利点がある。
【0039】
なお、上記排気系補機26としては排気ガス浄化用のキャタライザー以外に、排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させるサーマルリアクタ、またはターボチャージャー用の排気タービン等が考えられる。しかし、上記排気ガス浄化用のキャタライザーは、温度変化に応じて活性状態が顕著に変化するとともに、高温に加熱されると熱劣化を生じ易い傾向がある。したがって、上記実施形態に示すように、パワートレイン11の前方側に、排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機26を配設するとともに、この排気系補機26を熱交換器18の冷却ファン17により冷却可能に構成すれば、上記排気系補機26がその反応熱等により過度に加熱されて早期に熱劣化するのを防止できるとともに、適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下するのを効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記パワートレイン配設構造の実施形態を示す平面断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】パワートレインの暖機完了状態における冷却ファンの作動状態を側面断面図である。
【図6】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の従来例を示す側面断面図である。
【図7】図6のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 車室
2 エンジンルーム
11 パワートレイン
12 エンジン本体
13 トランスミッション
16 熱交換器本体
17 冷却ファン
18 熱交換器
22 排気管
26 排気系補機
29 暖機完了検出手段
30 冷却ファン制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに、車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に、車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記パワートレインの前方にはパワートレイン冷却用の熱交換器が配設され、この熱交換器とパワートレインとの間には、パワートレインから車体の前方側に延びる排気管が配設されてこの排気管に排気系補機が設けられるとともに、上記熱交換器が熱交換器本体とこの熱交換器本体に冷却風を供給する冷却ファンとを有し、この冷却ファンの冷却風により上記排気系補機が冷却可能に構成されたことを特徴とする車両のパワートレイン配設構造。
【請求項2】
上記冷却ファンが、熱交換器本体と排気系補機との間に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項3】
上記排気系補機と冷却ファンとが正面視で互いに重合するように配設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項4】
上記パワートレインが暖機完了状態にあるか否かを検出する暖機完了検出手段と、この暖機完了検出手段によりパワートレインが暖機完了状態にあることが確認された場合に、上記排気系補機を冷却するように冷却ファンを制御する冷却ファン制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項5】
上記冷却ファン制御手段は、暖機完了検出手段によりパワートレインが暖機完了状態にないことが確認された場合に、冷却風を車体の前方側に向けて送風し、パワートレインが暖機完了状態にあることが確認された場合に、冷却風を車体後方側に向けて送風するように冷却ファンを制御することを特徴とする請求項4に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項6】
上記パワートレインは、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項7】
上記排気系補機が排気ガス浄化用のキャタライザーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−40183(P2009−40183A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206627(P2007−206627)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】