説明

車両のパワートレイン配設構造

【課題】パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させることができるとともに、排気系補機の温度を適正に制御できるようにする。
【解決手段】車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3に設けられて車体の後方側に凹入する凹入部5内に、車輪を駆動するパワートレイン11の一部が配設された車両において、上記パワートレイン11の前方には熱交換器本体16と冷却ファン17とを有するパワートレイン冷却用の熱交換器18が配設されるとともに、上記パワートレイン11と冷却ファン17a,17bとの間にパワートレイン11から延びる排気管24の延長部26が配設されるとともに、この排気管24の延長部26に排気系補機23が設けられ、かつ上記冷却ファン17a,17bが一定角度で傾斜した状態で熱交換器本体16に対向するとともに、上記排気系補機23の設置部を指向するように配置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両のパワートレイン配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車室と、その前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、上記エンジンルーム内に配設されたエンジン本体等を有するパワートレインにより後輪が駆動されるように構成された後輪駆動車両において、図9に示すように、エンジン本体12の排気管24をパワートレイン11の前方を経由して後方に延びるように配置し、この排気管24の上流部に排気ガス浄化用の上流側キャタライザー(キャタリスト)23を設けて上記パワートレイン11の前方側に配設するとともに、その前方側にラジエータと冷却ファンとを有するパワートレイン冷却用の熱交換器(クーリングユニット)18を配設し、かつ車室フロアのトンネル部6内に導入された排気管24の下流部28に排気ガス浄化用の下流側キャタライザーαを配設することが行われている。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、エンジン本体12の排気管24に設けられた排気ガス浄化用の上流側キャタライザーからなる排気系補機23を、パワートレイン11の前方側において車幅方向に延びるように配設した場合には、パワートレイン11の後方側に上記排気系補機23を配設した場合に比べ、パワートレイン11を車体の後方側に位置させることができるため、車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを低減して操縦安定性を向上させることが可能である。しかし、上記のようにラジエータ等からなる熱交換器18とパワートレイン11との間に上記排気系補機23を配設した場合には、エンジンルーム内の限られたスペースに排気管24を導入して上記排気系補機23を設置する必要があるため、レイアウトの自由度が制限されるとともに、上記排気系補機23の温度を適正値に維持することが困難である等の問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させるとともに、排気系補機の温度を適正に制御することができる車両のパワートレイン配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに、車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に、車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記パワートレインの前方には熱交換器本体と冷却ファンとを有するパワートレイン冷却用の熱交換器が配設されるとともに、上記パワートレインと冷却ファンとの間にパワートレインから延びる排気管の延長部が配設されてこの延長部に排気系補機が設けられ、かつ上記冷却ファンが一定角度で傾斜して熱交換器本体に対向するとともに、上記排気系補機の設置部を指向するように配置されたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記熱交換器が複数の冷却ファンを有するとともに、そのうちの少なくとも一つが排気系補機の設置部を指向するように設置されたものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記複数の冷却ファンが車幅方向に併設されてその一方が上記パワートレインの一側面部に配設された吸気管の設置部を指向するとともに、他方が上記排気系補機の設置部を指向するように配置されたものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、上記請求項2に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機がパワートレインの前面部に沿って車幅方向に延びるように配設され、かつ複数の冷却ファンが上下方向に併設されてそれぞれが上記排気系補機の設置部を指向するように側面視で傾斜した状態で配置されたものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、上記請求項2に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機がパワートレインの前面部に沿って上下方向に延びるように配設され、かつ複数の冷却ファンが車幅方向に併設されてそれぞれが上記排気系補機の設置部を指向するように平面視で傾斜した状態で配置されたものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記パワートレインが、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備えたものである。
【0011】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造において、上記排気系補機が排気ガス浄化用のキャタライザーからなるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機をパワートレインの前方側に配設するとともに、上記パワートレインの一部をダッシュパネル凹入部内に配設することにより、エンジンルーム内において縦置き式に配設された重量物である上記パワートレインを、可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。また、上記冷却ファンを、一定角度で傾斜させた状態で熱交換器本体に対向させるとともに、上記排気系補機の設置部を指向させるように配置したため、冷却ファンの設置寸法が限られている場合においても、その幅寸法を充分に確保して上記排気系補機の設置部に充分な風量の冷却風を供給することが可能である。したがって、フロントグリルの開口部等からエンジンルーム内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化し、あるいはその温度が適正値以上となって排気ガスの浄化機能が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0013】
請求項2に係る発明では、複数の冷却ファンのうち排気系補機の設置部を指向するように傾斜した状態で配置された熱交換器の冷却ファンにより、上記排気系補機を効果的に冷却することができるため、排気系補機が早期に熱劣化し、あるいはその排気ガスの浄化機能が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0014】
請求項3に係る発明では、車幅方向に併設された複数の冷却ファンの一方を、上記パワートレインの一側面部に配設された吸気管の設置部を指向させるとともに、上記冷却ファンの他方を、上記パワートレインの前面部に沿って車幅方向に延びるように配設された排気系補機の設置部を指向させるように配置することにより、上記複数の冷却ファンから供給される冷却風に応じて上記吸気管および排気系補機の両方を効率よく冷却することが可能であり、上記排気系補機が過度に加熱されることに起因して早期に熱劣化すること等を効果的に防止できるとともに、上記パワートレインに対する吸気の充填効率を高めてエンジン出力を効果的に向上させることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、パワートレインの前面部に沿って排気系補機を車幅方向に延びるように配設するとともに、上下方向に併設された複数の冷却ファンを、それぞれ上記排気系補機の設置部を指向させるように配置したため、複数の冷却ファンにより排気系補機を同時に冷却してその熱劣化等を効果的に防止できるという利点がある。
【0016】
請求項5に係る発明では、パワートレインの前面部に沿って排気系補機を上下方向に延びるように配設するとともに、車幅方向に併設された複数の冷却ファンを、それぞれ上記排気系補機の設置部を指向させるように配置したため、車幅方向における設置寸法が限られている場合でも、上記パワートレインと冷却ファンとの間に大型の排気系補機を配設することができるとともに、上記複数の冷却ファンにより排気系補機を同時に冷却してその熱劣化等を効果的に防止できるという利点がある。
【0017】
請求項6に係る発明では、エンジンルーム内において縦置き式に配設された重量物であるエンジン本体およびトランスミッションを有するパワートレインを可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。
【0018】
請求項7に係る発明では、パワートレインの前方に、排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機を配設するとともに、この排気ガス浄化用のキャタライザーの設置部を指向させるように熱交換器の冷却ファンを配置したため、上記排気ガス浄化用のキャタライザーがその反応熱等により過度に加熱されて早期に熱劣化するのを防止するとともに、適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下するのを効果的に防止できる等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜図4は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第1実施形態を示している。上記車両には、車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3が設けられるとともに、このダッシュパネル3の下端部にフロアパネル4の前端部が接続されている。上記ダッシュパネル3の車幅方向中央部には、車体の後方側に凹入する凹入部5が形成されるとともに、上記フロアパネル4の車幅方向中央部には、上方に向けて膨出するトンネル部6が形成され、かつその左右には、運転席および助手席等からなる乗員用シート7が配設されている。
【0020】
上記エンジンルーム2の上面部には、ボンネット8が開閉可能に設置されている。このボンネット8の前端部下方には、走行風取入用の開口部を有するフロントグリル9が配設されている。このフロントグリル9の上部後方には、バンパレインフォースメント10が車幅方向に延びるように設置され、その左右両端部には、左右一対のフロントサイドフレーム20が車体の後方側に延びるように配設されている。また、上記エンジンルーム2の後方部には、図外の後部車輪を駆動するパワートレイン11が配設されている。このパワートレイン11は、縦置き式に配設されたロータリエンジン等からなるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを有している。
【0021】
そして、上記エンジン本体12の後部が、ダッシュパネル3に形成された凹入部5内に配設されるとともに、上記トランスミッション13およびこれに接続されたプロペラシャフト14と、パワープラントフレーム15とが上記トンネル部6内に配設されている。また、上記エンジンルーム2の前方部には、ラジエータ等からなる熱交換器本体16と、左右一対の冷却ファン17a,17b等とを備えたパワートレイン冷却用の熱交換器18が設置されている。
【0022】
上記冷却ファン17a,17bは、図2に示すように、車幅方向に延びるように設置された熱交換器本体16の後方側において車幅方向に併設されるとともに、一定角度で傾斜して熱交換器本体16に対向するように設置されている。具体的には、上記冷却ファン17a,17bの一方(車体の左側に位置する冷却ファン17a)が、エンジン本体12の一側面部(左側面部)を指向するように、平面視で右斜め後方に向けて傾斜した状態で配置されるとともに、冷却ファン17a,17bの他方(車体の右側に位置する冷却ファン17b)が、エンジン本体12の前面部と他側面部(右側面部)とを指向するように、平面視でやや左斜め後方に向けて傾斜した状態で配置されることにより、上記冷却ファン17a,17bが平面視で前広がりの略ハの字状に配設されている。
【0023】
上記エンジン本体12の一側面部には、エアクリーナ21を有する吸気管22が接続されるとともに、エンジン本体12の他側面部には、排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機23を有する排気管24が接続されている。この排気管24は、エンジン本体12の他側面部から車体の前方側に延びる前方延長部25と、その前端部から上記熱交換器18の前面部を通って車幅方向に延びる第1側方延長部26と、その側端部においてU字状に折曲げられることにより熱交換器18の他側面部側に向けて車幅方向に延びる第2側方延長部27と、その側端部から車体の後方側に延びる後方延長部28とを有し、この後方延長部28の後部が上記トンネル部6内に配設されている。上記排気管24の第1側方延長部26、具体的にはエンジン本体12の前面部に沿った位置で車幅方向の右側へややオフセットした位置に上記排気系補機23が配設されている。
【0024】
なお、図1において、符号29は、エンジンの冷却水温度を検出する温度センサ30の出力信号に応じてパワートレイン11が暖機完了状態にあるか否かを検出する暖機完了検出手段である。また、符号31は、上記暖機完了検出手段29の検出信号に応じて上記冷却ファン17a,17bに作動指令用の制御信号を出力する冷却ファン制御手段であり、図3において、符号32は、前輪用のサスペンションーアーム等が取り付けられるサスペンションクロスメンバである。
【0025】
上記構成において、温度センサ30の検出信号に応じてパワートレイン11が暖機完了状態にあることが上記暖機完了検出手段29により確認された場合には、この暖機完了検出手段29の出力信号を受けて上記熱交換器18の冷却ファン17a,17bを作動させる制御信号が上記冷却ファン制御手段31から冷却ファン17a,17bの駆動部に出力される。これにより、図2に示すように、エンジン本体の12の一側辺部側に設置された上記吸気管22の設置部と、パワートレイン11の前面部に沿って配設された上記排気系補機23の設置部とに向けて冷却ファン17a,17bの冷却風Rがそれぞれ送風され、上記吸気管22および排気系補機23の両方を冷却する制御が実行される。
【0026】
また、上記温度センサ30の検出信号に応じて暖機完了状態にないこと、つまりパワートレイン11の始動直後における暖機運転状態にあることが上記暖機完了検出手段29により確認された場合には、その出力信号を受けて上記冷却ファン17a,17bを作動停止状態とする制御が上記冷却ファン制御手段31において実行される。これにより、上記冷却ファン17a,17bから排気系補機23に対する冷却風Rの供給が停止され、上記パワートレイン11および排気系補機23の暖機が促進されることになる。
【0027】
上記のように車室1とエンジンルーム2を区画するダッシュパネル3に、車体の後方側に凹入する凹入部5が設けられるとともに、車輪を駆動するパワートレイン11の一部が上記凹入部5内に配設された車両において、上記パワートレイン11の前方に、パワートレイン冷却用の熱交換器18を配設するとともに、パワートレイン11を構成するエンジン本体12の側方に排気系補機23を有する排気管24を配設した場合には、上記パワートレイン11を車両の後方側に位置させて車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを効果的に低減することができる。
【0028】
すなわち、上記パワートレイン11の前方に配設された熱交換器18の冷却ファン17a,17bと上記パワートレイン11との間に排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機23を配設するとともに、上記パワートレイン11を構成するエンジン本体12の後部を上記ダッシュパネル3の凹入部5内に配設することにより、エンジンルーム2内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性および走行安定性を向上させることができる。
【0029】
また、上記パワートレイン11を車両の後方側に位置させることによりスペース的に余裕が生じたエンジンルーム2内において、大型のキャタライザーからなる排気系補機23を自由にレイアウトすることができるため、図9および図10に示すように、従来は車室フロアのトンネル部6内またはフロアパネル4の下方等に配設されていた下流側キャタライザーαを小型化し、あるいは省略することができる。したがって、上記下流側キャタライザーαにおいて発生した熱の影響が車室内に及ぶのを阻止するために断熱部材を設置する等の手段を講じることなく、上記下流側キャタライザーαの反応熱に応じて乗員の足元部分が加熱されること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0030】
しかも、従来例のように、車室フロアのトンネル部6内等に上記排気ガス浄化用の下流側キャタライザーαを配設した場合には、車室1内に配設された乗員用シート7を、ある程度上方に位置させることにより、上記下流側キャタライザーαとの干渉を避ける必要がある。これに対して上記下流側キャタライザーαを省略、または小型化した場合には、図4に示すように、乗員用シート7を従来よりも下方に位置させることができるとともに、これに対応して車高を低くすることが可能になる等の利点がある。
【0031】
そして、上記のようにパワートレイン11と冷却ファン17a,17bとの間にパワートレイン11から延びる排気管24の側方延長部26が配設されるとともに、この排気管24の側方延長部26に上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機23が配設されたパワートレイン配設構造において、上記冷却ファン17a,17bを、一定角度で傾斜させて熱交換器本体16に対向させるとともに、その一方を排気系補機23の設置部に向けて配置したため、冷却ファン17a,17bの車幅方向における設置寸法が限られている場合でも、その平面視におけるその幅寸法を充分に確保して上記排気系補機23の設置部等に充分な風量の冷却風Rを供給することができる。したがって、上記フロントグリル9の開口部等からエンジンルーム内に導入される走行風量が少ない場合においても、排気系補機23がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化し、あるいはその温度が適正値以上となって排気ガスの浄化機能が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0032】
また、上記第1実施形態では、パワートレイン11の一側面部に吸気管22が配設された車両のパワートレイン配設構造において、車幅方向に併設された複数の冷却ファン17a,17bの一方(冷却ファン17a)を平面視で傾斜させた状態で設置することにより、上記吸気管22の設置部を指向させるとともに、上記冷却ファン17a,17bの他方(冷却ファン17a)を平面視で傾斜させた状態で設置することにより、上記パワートレイン11の前面部に沿って車幅方向に延びるように配設された排気系補機23の設置部を指向させるように構成したため、上記複数の冷却ファン17a,17bにより吸気管22および排気系補機23の両方を効率よく冷却することができ、上記排気系補機23がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化し、あるいはその温度が適正値以上となって排気ガスの浄化機能が損なわれること等を効果的に防止しつつ、上記パワートレイン11に対する吸気の充填効率を高めてエンジン出力を効果的に向上させることができる。
【0033】
さらに、上記第1実施形態では、暖機完了検出手段29においてパワートレイン11が暖機完了状態にないこと、つまりパワートレイン11の始動直後における暖機運転状態にあることが確認された場合に、上記冷却ファン17a,17bを作動停止状態に維持する制御を実行して冷却風Rの送風を停止するように構成したため、上記排気ガス浄化用のキャタライザー等からなる排気系補機23が上記冷却風Rにより冷却されるのを防止することができる。したがって、上記排気系補機23の暖機を効果的に促進して排気ガスの浄化機能を早期に発揮させることができるとともに、上記排気系補機23の反応熱に応じてその後方に配設されたパワートレイン11を加熱することにより、その暖機を効果的に促進できるという利点がある。
【0034】
図5は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第2実施形態を示している。この第2実施形態は、上記排気系補機23がパワートレイン11の前面部に沿って車幅方向に延びるように配設された車両のパワートレイン配設構造において、複数の冷却ファン17c,17dが上下方向に併設されるとともに、側面視で上方の冷却ファン17cが後傾(前下がり)状態で設置されるとともに、下方の冷却ファン17dが前傾(前上がり)状態で設置されることにより、各冷却ファン17c,17dがそれぞれ排気系補機23の設置部を指向するように傾斜した状態で配置されている。また、図5において、符号33は、駆動ベルト34を介してエンジン出力軸から入力される駆動力により回転駆動されるオルタネータ等からなるエンジン補機であり、このエンジン補機33は、上記排気系補機23の後方側においてパワートレイン11の一側面部の前部下方に配設されている。
【0035】
上記第2実施形態に示すように、上下方向に併設された複数の冷却ファン17c,17dを、それぞれ排気系補機23の設置部を指向させるように側面視で傾斜させた構成によれば、上下方向における上記各冷却ファン17c,17dの設置スペースが限られている場合においても、側面視における冷却ファン17c,17dの縦幅寸法を充分に確保することができる。そして、上記各冷却ファン17c,17dから同時に供給される冷却風Rにより排気系補機23を効率よく冷却することができるため、上記排気系補機23がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化し、あるいはその温度が適正値以上となって排気ガスの浄化機能が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。また、上記各冷却ファン17c,17dの冷却風Rを、上記排気系補機23の後方側に配設されたエンジン補機33の設置部に供給することにより、このエンジン補機33を効果的に冷却してその作動効率を向上させることができる。
【0036】
図6および図7は、本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第3実施形態を示している。この第3実施形態は、上記パワートレイン11を構成するエンジン本体12の前方において上下方向に延びる排気管24の縦延長部34が設置されるとともに、この排気管24の縦延長部34に設けられた排気系補機23が上記エンジン本体12の前面部に沿って上下方向に延びるように配設された車両のパワートレイン配設構造において、車幅方向に併設された複数の冷却ファン17e,17fが、平面視で後広がりのハの字状に配設されることにより、上記冷却ファン17e,17fのそれぞれが上記排気系補機23の設置部を指向するように傾斜した状態で配置されている。この第3実施形態に示すように排気系補機23を上下方向に延びるように配設した場合には、エンジンルーム2内の限られた設置スペースに大口径の排気系補機23を配設することが可能であるとともに、各冷却ファン17e,17fから同時に供給される冷却風Rにより上記排気系補機23を効率よく冷却できるという利点がある。
【0037】
なお、図2に示すように、熱交換器18に一対の冷却ファン17a,17bを設けるとともに、そのうちの少なくとも一つを排気系補機23の設置部に向けて配置してなる上記第1実施形態等に代え、例えば図8に示す第4実施形態のように、上記熱交換器18に単一の冷却ファン17を設け、この冷却ファン17を一定角度で傾斜させて熱交換器本体16に対向させるとともに、上記排気系補機23の設置部を指向させるように配置し、あるいは三個以上の冷却ファンを配置し、その少なくとも一つを上記排気系補機23の設置部を指向させるように配設した構造としてもよい。図8に示すように、上記冷却ファン17を一定角度で傾斜させて熱交換器本体16に対向させるとともに、上記排気系補機23の設置部を指向させるように配置した構成によれば、上記冷却ファン17の車幅方向における設置寸法Lが限られている場合でも、その平面視における幅寸法Wを充分に確保して上記排気系補機23の設置部に充分な風量の冷却風Rを供給することができるため、排気系補機23を効率よく冷却することが可能である。
【0038】
また、上記各実施形態では、エンジンルーム2内に縦置き式に配設されるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを備えたパワートレイン11の一部を、ダッシュパネル3に形成された後方側への凹入部5内に配設したため、重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設して車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができるという利点がある。
【0039】
なお、上記排気系補機23としては排気ガス浄化用のキャタライザー以外に、排気ガス中の未燃焼成分を燃焼させるサーマルリアクタ、またはターボチャージャー用の排気タービン等が考えられる。しかし、上記排気ガス浄化用のキャタライザーは、温度変化に応じて活性状態が顕著に変化するとともに、高温に加熱されると熱劣化を生じ易い傾向がある。したがって、上記各実施形態に示すように、パワートレイン11の前方に、排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機23を配設するとともに、その設置部を指向させるように熱交換器18の冷却ファン17を傾斜させて配置すれば、上記排気ガス浄化用のキャタライザーからなる排気系補機23がその反応熱等により過度に加熱されて早期に熱劣化するのを防止できるとともに、適正反応温度よりも高温に加熱されて排気ガスの浄化性能が低下するのを効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記パワートレイン配設構造の第1実施形態を示す平面断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第2実施形態を示す側面断面図である。
【図6】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の第3実施形態を示す側面断面図である。
【図7】上記パワートレイン配設構造の第3実施形態を示す平面断面図である。
【図8】上記パワートレイン配設構造の第4実施形態を示す側面断面図である。
【図9】本発明に係る車両のパワートレイン配設構造の従来例を示す側面断面図である。
【図10】図9のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 車室
2 エンジンルーム
11 パワートレイン
12 エンジン本体
13 トランスミッション
16 熱交換器本体
17 冷却ファン
18 熱交換器
22 吸気管
23 排気系補機
24 排気管
26 第1側方延長部(排気管の延長部)
34 縦延長部(排気管の延長部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームを区画するダッシュパネルに、車体の後方側に凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に、車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記パワートレインの前方には熱交換器本体と冷却ファンとを有するパワートレイン冷却用の熱交換器が配設されるとともに、上記パワートレインと冷却ファンとの間にパワートレインから延びる排気管の延長部が配設されてこの延長部に排気系補機が設けられ、かつ上記冷却ファンが一定角度で傾斜して熱交換器本体に対向するとともに、上記排気系補機の設置部を指向するように配置されたことを特徴とする車両のパワートレイン配設構造。
【請求項2】
上記熱交換器が複数の冷却ファンを有するとともに、そのうちの少なくとも一つが排気系補機の設置部を指向するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項3】
上記複数の冷却ファンが車幅方向に併設されてその一方が上記パワートレインの一側面部に配設された吸気管の設置部を指向するとともに、他方が上記排気系補機の設置部を指向するように配置されたことを特徴とする請求項2に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項4】
上記排気系補機がパワートレインの前面部に沿って車幅方向に延びるように配設され、かつ複数の冷却ファンが上下方向に併設されてそれぞれが上記排気系補機の設置部を指向するように側面視で傾斜した状態で配置されたことを特徴とする請求項2に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項5】
上記排気系補機がパワートレインの前面部に沿って上下方向に延びるように配設され、かつ複数の冷却ファンが車幅方向に併設されてそれぞれが上記排気系補機の設置部を指向するように平面視で傾斜した状態で配置されたことを特徴とする請求項2に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項6】
上記パワートレインは、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。
【請求項7】
上記排気系補機が排気ガス浄化用のキャタライザーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−51302(P2009−51302A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218517(P2007−218517)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】