説明

車両のピラー下部構造

【課題】部品点数を抑えながら、衝突荷重に対するピラー下部の強度を高めることができる車両のピラー下部構造を得る。
【解決手段】ピラーインナパネル32に対して車幅方向外側に配置される部位とロッカインナパネル26に対して車幅方向外側に配置される部位とがアウタパネル40によって一部材で一体に形成されている。ピラーアウタ下部42には、対向するピラーインナ下部34側へ凹んでピラーインナ下部34側に結合される補強部50が形成されている。このため、ロッカ24と一体化されたセンタピラー16の下部がピラーインナ下部34とピラーアウタ下部42とで閉断面化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のピラー下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部においては、部品点数を抑えるために、ピラーアウタ下部とサイドシルアウタ(ロッカアウタ)とを一体化してアウタ側のリインフォース部材とした構造がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−127899公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造では、サイドシル(ロッカ)と一体化されたピラー下部が車両上下方向に開放された開断面形状となってしまい、衝突荷重に対するピラー下部の強度を高める観点からは改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、部品点数を抑えながら、衝突荷重に対するピラー下部の強度を高めることができる車両のピラー下部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両のピラー下部構造は、車体側部に略車両上下方向を長手方向として配置されたピラーインナパネルにおける車両上下方向の下部を構成し、車体側部の下端部で車両前後方向を長手方向として配置されたロッカインナパネルの車幅方向外側に接合されたピラーインナ下部と、前記ピラーインナパネルに対して車幅方向外側に配置される部位と前記ロッカインナパネルに対して車幅方向外側に配置される部位とが一部材で一体に形成されて車幅方向内向きに開口された断面ハット形状を成すアウタパネルにおいて前記ピラーインナ下部に対して車幅方向外側に対向配置される部位を構成し、車幅方向内端のフランジが前記ピラーインナ下部及び前記ロッカインナパネルに接合されたピラーアウタ下部と、互いに対向する前記ピラーアウタ下部と前記ピラーインナ下部との少なくとも一方に形成され、対向する相手側へ凹んで当該相手側に結合される補強部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両のピラー下部構造によれば、ピラーインナパネルは、車体側部に略車両上下方向を長手方向として配置され、このピラーインナパネルにおける車両上下方向の下部を構成するピラーインナ下部は、車体側部の下端部で車両前後方向を長手方向として配置されたロッカインナパネルの車幅方向外側に接合されている。これに対して、アウタパネルは、ピラーインナパネルに対して車幅方向外側に配置される部位とロッカインナパネルに対して車幅方向外側に配置される部位とが一部材で一体に形成されて車幅方向内向きに開口された断面ハット形状を成し、アウタパネルにおいてピラーインナ下部に対して車幅方向外側に対向配置される部位を構成するピラーアウタ下部は、車幅方向内端のフランジがピラーインナ下部及びロッカインナパネルに接合されている。
【0008】
ここで、互いに対向するピラーアウタ下部とピラーインナ下部との少なくとも一方には、対向する相手側へ凹んで当該相手側に結合される補強部が形成されている。このため、ロッカと一体化されたピラー下部がピラーインナ下部とピラーアウタ下部とで閉断面化されるので、衝突荷重に対するピラー下部の強度が高められる。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車両のピラー下部構造は、請求項1記載の構成において、前記補強部が、前記ピラーアウタ下部と前記ピラーインナ下部との両方に形成されて互いに結合されている。
【0010】
請求項2に記載する本発明の車両のピラー下部構造によれば、補強部が、ピラーアウタ下部とピラーインナ下部との両方に形成されて互いに結合されている。このため、補強部の凹みの深さが抑えられつつピラー下部が閉断面化される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両のピラー下部構造によれば、部品点数を抑えながら、衝突荷重に対するピラー下部の強度を高めることができるという優れた効果を有する。
【0012】
請求項2に記載の車両のピラー下部構造によれば、補強部の凹みの深さが抑えられることで成形性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るセンタピラー下部構造を示す車両正面視の縦断面図(図3の1−1線に沿った拡大断面図)である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るセンタピラー下部構造が適用された車体側部の一部を車室内側から見た状態で示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るセンタピラー下部構造が適用された自動車の一部を示す模式的な側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るセンタピラー下部構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るフロントピラー下部構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るフロントピラー下部構造が適用された車体側部の一部をロッカインナパネルを取り外して車室内側から見た状態で示す斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るフロントピラー下部構造が適用された自動車が前面衝突した場合の作用を説明するための模式的な側面図である。
【図8】自動車をバリアに前面衝突させたときのF−S線図である。
【図9】対比構造(本発明の実施形態との比較例)に係るセンタピラー下部構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【図10】対比構造(本発明の実施形態との比較例)に係るセンタピラー下部構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両のピラー下部構造について図1〜図3を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車幅方向内側を示している。
【0015】
図3には、車両のピラー下部構造としてのセンタピラー下部構造30が適用された自動車10(車両)の一部が模式的な側面図にて示されている。また、図1には、図3の1−1線に沿った拡大断面図が示されており、図2には、センタピラー下部構造30が適用された車体側部12の一部が車室内側から見た分解斜視図にて示されている。
【0016】
図3に示されるように、車体側部12には、フロント側から順にフロントピラー14(Aピラー)、センタピラー16(Bピラー)、及びリヤピラー18(Cピラー)が配設されている。なお、フロントピラー14、センタピラー16、及びリヤピラー18は、左右一対設けられている。センタピラー16は、車体側部12に形成されたフロントドア用開口部20A及びリヤドア用開口部20Bとの間に配置され、略車両上下方向を長手方向とする車体骨格部材とされている。
【0017】
センタピラー16の上端部16Aは、ルーフサイドレール部22における車両前後方向の中間部に結合されている。ルーフサイドレール部22は、車両ルーフの両サイドにおいて略車両前後方向を長手方向として配置された骨格部材とされている。また、センタピラー16の下端部16Bは、ロッカ24(「サイドシル」ともいう。)における車両前後方向の中間部に結合されており、センタピラー16の下端部16B側とロッカ24とで三叉状(三叉路)になっている。ロッカ24は、車体下部の両サイドにおいて略車両前後方向を長手方向として配置された骨格部材とされている。
【0018】
図1及び図2に示されるように、ロッカ24は、ロッカインナパネル26を備えている。ロッカインナパネル26は、ロッカ24の車幅方向内側の部位を構成し、車体側部12の下端部で車両前後方向を長手方向として配置されており、車幅方向外向きに開口された断面ハット形状とされている。ロッカインナパネル26の上端側で車幅方向外端には上フランジ部26Aが形成され、ロッカインナパネル26の下端側で車幅方向外端には下フランジ部26Bが形成されている。上フランジ部26A及び下フランジ部26Bは、その一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されている。
【0019】
ロッカ24に連続して設けられるセンタピラー16は、車体側部12において略車両上下方向を長手方向として配置されたピラーインナパネル32を備えている。図1に示されるように、ピラーインナパネル32は、センタピラー16の車幅方向内側の部位を構成している。ピラーインナパネル32における車両上下方向の下部を構成するピラーインナ下部34は、上側及び下側の接合部34A、34Bがロッカインナパネル26における上フランジ部26A及び下フランジ部26Bの車幅方向外側に重ね合わせられてスポット溶接により接合されている。
【0020】
図2に示されるように、ピラーインナパネル32は、ロッカ24よりも車両上方側の部位では、水平断面形状が車幅方向外向きに開口された略ハット形状とされている。ピラーインナパネル32の車両前後方向の前端側には、前フランジ部32Aが形成され、ピラーインナパネル32の車両前後方向の後端側には、後フランジ部32Bが形成されており、これらは接合用とされている。
【0021】
ピラーインナパネル32及びロッカインナパネル26の車幅方向外側には、これらに対向してアウタパネル40(サイメンアウタパネルリインフォース)が配置されている。なお、アウタパネル40のさらに車幅方向外側には、サイメンアウタ52(図1参照)が配置されている。
【0022】
アウタパネル40は、ピラーインナパネル32に対して車幅方向外側に配置される部位とロッカインナパネル26に対して車幅方向外側に配置される部位とが一部材で一体に形成された強度部材とされている。すなわち、アウタパネル40は、ピラーインナ下部34に対して車幅方向外側に対向配置される部位を構成するピラーアウタ下部42と、ピラーアウタ下部42の車両上方側でピラーインナパネル32の車幅方向外側に対向配置されるピラーアウタ長手部44と、ピラーアウタ下部42の車両前方側及び後方側でロッカインナパネル26の車幅方向外側に配置されるロッカアウタ長手部46と、を含んで一体に形成されており、車幅方向内向きに開口された断面ハット形状を成している。
【0023】
ロッカアウタ長手部46は、車両前後方向を長手方向として配置され、車幅方向内向きに開口された断面ハット形状とされている。また、ロッカアウタ長手部46の上端側で車幅方向内端には、上フランジ部46Aが形成され、ロッカアウタ長手部46の下端側で車幅方向内端には、下フランジ部46Bが形成されている。上フランジ部46A及び下フランジ部46Bは、その一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されている。そして、上フランジ部46Aは、ロッカインナパネル26の上フランジ部26Aの車幅方向外側に重ね合わせられてスポット溶接により接合され、下フランジ部46Bは、ロッカインナパネル26の下フランジ部26Bの車幅方向外側に重ね合わせられてスポット溶接により接合されている。
【0024】
また、アウタパネル40のピラーアウタ長手部44は、略車両上下方向を長手方向として配置され、水平断面形状が車幅方向内向きに開口された略ハット形状とされている。ピラーアウタ長手部44の車両前後方向の前端側には、その車幅方向内端に前フランジ部44Aが形成され、ピラーアウタ長手部44の車両前後方向の後端側には、その車幅方向内端に後フランジ部44Bが形成されている。ピラーアウタ長手部44の前フランジ部44Aは、ピラーインナパネル32の前フランジ部32Aの車幅方向外側に重ね合わせられてスポット溶接により接合され、ピラーアウタ長手部44の後フランジ部44Bは、ピラーインナパネル32の後フランジ部32Bの車幅方向外側に重ね合わせられてスポット溶接により接合されている。
【0025】
ロッカアウタ長手部46とピラーアウタ長手部44との間に設けられたピラーアウタ下部42は、ロッカアウタとしての機能とピラーアウタとしての機能とを兼ね備えている。ピラーアウタ下部42の車幅方向内端には、ピラーアウタ長手部44の前フランジ部44Aとロッカアウタ長手部46の上フランジ部46Aとの間を繋ぐフランジとしての前フランジ部42Aと、ピラーアウタ長手部44の後フランジ部44Bとロッカアウタ長手部46の上フランジ部46Aとの間を繋ぐフランジとしての後フランジ部42Bと、ロッカアウタ長手部46の下フランジ部46Bと一体に連続するフランジとしての下フランジ部42Cと、が形成されている。
【0026】
ピラーアウタ下部42の前フランジ部42A及び後フランジ部42Bは、ピラーインナ下部34の上側の接合部34Aの車幅方向外側に重ね合わせられ、ピラーインナ下部34の接合部34A及びロッカインナパネル26の上フランジ部26Aと三枚重ねの状態でスポット溶接により接合されている。また、ピラーアウタ下部42の下フランジ部42Cは、ピラーインナ下部34の下側の接合部34Bの車幅方向外側に重ね合わせられ、ピラーインナ下部34の接合部34B及びロッカインナパネル26の下フランジ部26Bと三枚重ねの状態でスポット溶接により接合されている。
【0027】
また、ピラーアウタ下部42には、対向するピラーインナ下部34側(対向する相手側)へ凹んでピラーインナ下部34側に結合される補強部50が深絞り成形によって形成されている。補強部50は、車幅方向外側に開口して車幅方向内側を底壁部50Aとする略矩形箱状に形成されている。補強部50においてピラーインナ下部34側に対向する底壁部50Aは、ピラーアウタ下部42の前フランジ部42A及び後フランジ部42Bと車幅方向の位置が揃えられており、図1に示されるように、ピラーインナ下部34及びロッカインナパネル26の上フランジ部26Aと三枚重ねの状態でスポット溶接により接合されている。これにより、ロッカ24と一体化されたセンタピラー16の下部には、ピラーインナ下部34とピラーアウタ下部42とで閉断面36が形成されている(Bピラー下部ロッカ結合構造)。
【0028】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
上記構成のセンタピラー下部構造30では、ピラーインナパネル32に対して車幅方向外側に配置される部位とロッカインナパネル26に対して車幅方向外側に配置される部位とがアウタパネル40によって一部材で一体に形成されているため、部品点数を減らすことができ、組付工程も減らすことができる。
【0030】
ここで、対比構造と比較して補足説明すると、衝突荷重に対する強度を高くするために、例えば、図9に示す対比構造(本発明の実施形態との比較例)に係るセンタピラー下部構造100では、ピラーアウタリインフォース102を設けると共にこれとは別に車幅方向内向きに開口された断面ハット形状のロッカアウタリインフォース104を設け、このロッカアウタリインフォース104とピラーインナパネル32とで閉断面106を形成しているので(Bピラー・ロッカ分割構造)、アウタ側に配設される強度部材がピラーアウタリインフォース102及びロッカアウタリインフォース104の二部材となる。
【0031】
これに対して、図1に示されるセンタピラー下部構造30では、前記対比構造における二部材に代えて、アウタパネル40を設けて部品統合をしているため、前記対比構造に比べて部品点数を減らすことができ、組付工程も減らすことができる。
【0032】
また、センタピラー下部構造30では、ピラーアウタ下部42には、対向するピラーインナ下部34側へ凹んでピラーインナ下部34側に結合される補強部50が形成されているため、ロッカ24と一体化されたセンタピラー16の下部には、ピラーインナ下部34とピラーアウタ下部42とで閉断面36が形成され、衝突荷重Fに対するセンタピラー16の下部(ロッカ24と一体化された部分)の強度が高められる。
【0033】
例えば、自動車10に対する側面衝突時には、センタピラー16の下部における車幅方向外側部分に対して車幅方向内向きの衝突荷重F(圧縮荷重)が入力されるが、本実施形態に係るセンタピラー下部構造30は、この部分に閉断面36が形成された構造となっているので、車幅方向内側に変形(断面崩れ)しにくい。すなわち、センタピラー下部構造30では、アウタパネル40の補強部50が前記対比構造におけるロッカアウタリインフォース104(図9参照)の上部側と同様に荷重支持部として機能するので、部品点数を減らしながらセンタピラー16の下部が効率的に補強される。また、センタピラー下部構造30では、衝突初期からピラーアウタ下部42に入力された衝突荷重Fがピラーインナ下部34に伝達されるので、部品統合しても、反力(荷重レベル)の低下が抑えられる(衝突性能の向上)。
【0034】
この点について、他の対比構造と比較しながら補足説明すると、部品点数を減らすために、例えば、図10に示す対比構造(本発明の実施形態との比較例)に係るセンタピラー下部構造110では、ピラーアウタ部とロッカアウタ部とをアウタパネル112によって一体化するが、アウタパネル112は、先の対比構造に示すロッカアウタリインフォース104(図9参照)の上部側に相当する部位を備えずに車両上下方向に延在している。この図10に示す対比構造では、ロッカと一体化されたピラー下部が車両上下方向に開放された開断面(開放断面)形状になっているため、衝突荷重Fに対するセンタピラー下部(ロッカと一体化された部分)の強度が閉断面形状の場合に比べて低くなる。よって、この対比構造では、閉断面形状の場合に比べて側面衝突時に早期に断面崩れしやすく、その結果として、ロッカが衝突時の機能(エネルギー吸収機能や荷重伝達機能等)を十分には発揮できなくなる可能性も考えられる。
【0035】
これに対して、図1に示されるセンタピラー下部構造30では、センタピラー16の下部が閉断面化されているので、衝突荷重Fに対するセンタピラー16の下部(ロッカ24と一体化された部分)の強度が前記対比構造(図10参照)に比べて高く、衝突時における反力(荷重レベル)を高めることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るセンタピラー下部構造30によれば、部品点数を抑えながら、衝突荷重Fに対するセンタピラー16の下部の強度(断面潰れに対する強度)及び剛性を高めることができる。
【0037】
また、センタピラー16の下部の剛性が高まることで、この部分の共振周波数が変化すると共に車両走行時の振動が抑制され、操安性も向上する。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両のピラー下部構造について、図4を用いて説明する。図4には、本発明の第2の実施形態に係る車両のピラー下部構造としてのセンタピラー下部構造60が車両正面視の縦断面図(第1の実施形態における図1に相当する図)にて示されている。
【0039】
この図に示されるように、センタピラー下部構造60は、ピラーインナ下部34にも補強部62が設けられている点等で、第1の実施形態に係るセンタピラー下部構造30(図1参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
ピラーアウタ下部42には、対向するピラーインナ下部34側(対向する相手側)へ凹んでピラーインナ下部34側に結合される補強部54が深絞り成形によって形成されている。この補強部54は、その凹みの深さが第1の実施形態における補強部50(図1参照)の凹みの深さに比べて浅く設定されているが、他の点については第1の実施形態における補強部50(図1参照)と同様とされている。
【0041】
また、ピラーインナ下部34には、対向するピラーアウタ下部42側(対向する相手側)へ凹んでピラーアウタ下部42側に結合される補強部62が深絞り成形によって形成されている。補強部62は、概ね補強部54を車幅方向に反転させたような形状とされている。なお、本実施形態では、補強部62における車両上下方向の下部側となる下板部62Bに上側の接合部34Aが設けられ、この接合部34Aにロッカインナパネル26における上フランジ部26Aが接合されている。
【0042】
ピラーアウタ下部42における補強部54の底壁部54Aと、ピラーインナ下部34における補強部62の底壁部62Aとは、重ね合わせられてスポット溶接により互いに結合されている。これにより、ロッカ24と一体化されたセンタピラー16の下部には、ピラーインナ下部34とピラーアウタ下部42とで閉断面64が形成されている。
【0043】
本実施形態の構成によれば、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られるうえ、補強部54、62の凹みの深さ(絞り深さ)が抑えられるので、アウタパネル40及びピラーインナパネル32の深絞りによる成形性を向上させることができる。
【0044】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る車両のピラー下部構造について、図5〜図8を用いて説明する。なお、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図5には、本発明の第3の実施形態に係る車両のピラー下部構造としてのフロントピラー下部構造70が車両正面視の縦断面図にて示されている。また、図6には、フロントピラー下部構造70が適用された車体側部12の一部がロッカインナパネル26を取り外して車室内側から見た状態の斜視図にて示されている。
【0046】
これらの図に示されるフロントピラー14は、図3に示されるように、フロントドア用開口部20Aの前側の縁部に配置され、略車両上下方向を長手方向とする車体骨格部材とされている。フロントピラー14の上端部14Aは、ルーフサイドレール部22における車両前後方向の前端に結合されている。また、フロントピラー14の下端部14Bは、ロッカ24における車両前後方向の前端に結合されており、フロントピラー14とロッカ24とで略L字状になっている。
【0047】
図5に示されるように、フロントピラー14は、車体側部12において略車両上下方向を長手方向として配置されたピラーインナパネル72を備えている。ピラーインナパネル72は、フロントピラー14の車幅方向内側の部位を構成している。ピラーインナパネル72における車両上下方向の下部を構成するピラーインナ下部74は、その上側および下側の接合部74A、74Bがロッカインナパネル26における上フランジ部26A及び下フランジ部26Bの車幅方向外側に重ね合わせられてスポット溶接により接合されている。
【0048】
図6に示されるように、ピラーインナパネル72は、上部側の水平断面形状が車幅方向外向きに開口された略ハット形状とされている。ピラーインナパネル72の車両前後方向の前端側には、前フランジ部72Aが形成され、ピラーインナパネル72の車両前後方向の後端側には、後フランジ部72Bが形成されており、これらは接合用とされている。
【0049】
ピラーインナパネル72の車幅方向外側には、アウタパネル40の一部が配置されている。なお、図5及び図6においては、第1の実施形態で図示されたアウタパネル40の車両前後方向の前部側が図示されている。アウタパネル40は、ピラーインナパネル72に対して車幅方向外側に配置される部位とロッカインナパネル26に対して車幅方向外側に配置される部位とが一部材で一体に形成されている。
【0050】
すなわち、図6に示されるアウタパネル40は、ピラーインナ下部74に対して車幅方向外側に対向配置される部位を構成するピラーアウタ下部48と、ピラーアウタ下部48の車両上方側でピラーインナパネル72の車幅方向外側に対向配置されるピラーアウタ長手部49と、ピラーアウタ下部48の車両後方側でロッカインナパネル26の車幅方向外側に配置されるロッカアウタ長手部46(図2参照)と、を含んで一体に形成されており、車幅方向内向きに開口された断面ハット形状を成している。
【0051】
また、アウタパネル40のピラーアウタ長手部49は、略車両上下方向を長手方向として配置され、水平断面形状が車幅方向内向きに開口された略ハット形状とされている。ピラーアウタ長手部49の車両前後方向の前端側で車幅方向内端には、前フランジ部49Aが形成され、ピラーアウタ長手部49の車両前後方向の後端側で車幅方向内端には、後フランジ部49Bが形成されている。ピラーアウタ長手部49の前フランジ部49Aは、ピラーインナパネル72の前フランジ部72Aの車幅方向外側に接合され、ピラーアウタ長手部49の後フランジ部49Bは、ピラーインナパネル72の後フランジ部72Bの車幅方向外側に接合されている。
【0052】
ピラーアウタ下部48は、ロッカアウタとしての機能とピラーアウタとしての機能とを兼ね備えている。ピラーアウタ下部48の前端側から下端側にかけての車幅方向内端には、フランジとしての第一フランジ部48Aが形成され、ピラーアウタ下部48の後端側かつ上端側の車幅方向内端には、フランジとしての第二フランジ部48Bが形成されている。ピラーアウタ下部48の第一フランジ部48A及び第二フランジ部48Bは、ピラーインナ下部74及びロッカインナパネル26の車幅方向外側に重ね合わせられて三枚重ねの状態でスポット溶接により接合されている。
【0053】
図5及び図6に示されるように、ピラーインナ下部74には、対向するピラーアウタ下部48側(対向する相手側)へ凹んでピラーアウタ下部48側に結合される補強部76が形成されている。図5に示されるように、補強部76は、側断面視で略コ字形状とされ、補強部76においてピラーインナ下部74側に対向する底壁部76Aは、ピラーアウタ下部48と重ね合わせられてスポット溶接により接合されている。これにより、ロッカ24と一体化されたフロントピラー14の下部には、ピラーインナ下部74とピラーアウタ下部48とで閉断面78が形成されている(Aピラー下部ロッカ結合構造)。
【0054】
また、本実施形態では、図6に示されるように、補強部76の底壁部76Aにおける車両前後方向の前端及び後端からはその車両上下方向中央部より舌片状の舌片部80A、80Bが延設されて車幅方向内側へ折り曲げられている。前側の舌片部80Aは、ピラーアウタ下部48の車両前後方向の前側に設けられた前壁部48Cに重ね合わせられてスポット溶接により接合されている。また、後側の舌片部80Bは、ピラーアウタ下部48の車両前後方向の後側に設けられた後壁部48Dに重ね合わせられてスポット溶接により接合されている。
【0055】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0056】
上記構成のフロントピラー下部構造70では、ピラーインナパネル72に対して車幅方向外側に配置される部位とロッカインナパネル26に対して車幅方向外側に配置される部位とがアウタパネル40によって一部材で一体に形成されているため、第1の実施形態と同様に、部品点数を減らすことができ、組付工程も減らすことができる。
【0057】
また、図5に示されるように、フロントピラー下部構造70では、ピラーインナ下部74には、対向するピラーアウタ下部48側へ凹んでピラーアウタ下部48側に結合される補強部76が形成されているため、ロッカ24と一体化されたフロントピラー14の下部にはピラーインナ下部74とピラーアウタ下部48とで閉断面78が形成され、衝突荷重に対するフロントピラー14の下部の強度が高められる。
【0058】
例えば、図7に示されるように、前面衝突時には、フロントピラー14の下部における前端側部分に対してタイヤ82を介して車両後方向きの衝突荷重fが入力されるが、この部分は閉断面78(図5参照)が形成された構造となっているので、変形しにくい。すなわち、ロッカ24を軸圧縮させる方向の衝突荷重fにより、フロントピラー14の下部のアウタ側には、面外方向(車幅方向外側)へ凸状に変形させるような荷重が作用するが、図5に示される補強部76がピラーアウタ下部48側に結合されて閉断面78が形成されることでフロントピラー14の下部が効率的に補強されるので、フロントピラー14の下部は断面崩れしにくい。つまり、補強部76を設けてピラーインナ下部74とピラーアウタ下部48とで閉断面78を形成する構造が、衝突時にバルクヘッド的な役割を果たす。このため、補強部76(閉断面78)が形成されない対比構造に比べて、反力(荷重レベル)の低下が抑えられる(衝突性能の向上)。
【0059】
ここで、図8のグラフ(F−S線図)を参照しながら、フロントピラー下部構造70の作用について説明する。図8には、自動車をバリアに前面衝突させたときのF−S線図、すなわち、荷重FとストロークSとの関係を示すグラフが示されている。
【0060】
図8において、点線の線図は、閉断面(78)が形成されていない対比構造のF−S線図を示し、二点鎖線の線図は、ピラーアウタリインフォースとは別に車幅方向内向きに開口された断面ハット形状のロッカアウタリインフォースを設けて当該ロッカアウタリインフォースとピラーインナパネルとで閉断面を形成した対比構造のF−S線図を示す。これに対して、実線の線図は、本実施形態に係るフロントピラー下部構造70のF−S線図を示す。図8に示されるように、本実施形態に係るフロントピラー下部構造70では、反力(荷重レベル)が向上している。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係るフロントピラー下部構造70によれば、部品点数を抑えながら、衝突荷重fに対するフロントピラー14の下部の強度(断面潰れに対する強度)及び剛性を高めることができる。
【0062】
[実施形態の補足説明]
なお、上記第1の実施形態では、図1等に示されるセンタピラー下部構造30において、ピラーアウタ下部42にピラーインナ下部34側へ凹む補強部50が形成されて当該補強部50がピラーインナ下部34側に結合されているが、第1の実施形態の変形例として、ピラーインナ下部(34)にピラーアウタ下部(42)側へ凹む補強部が形成されて当該補強部がピラーアウタ下部(42)側に結合されてもよい。
【0063】
また、上記第1の実施形態では、補強部50の底壁部50Aが、ピラーインナ下部34の接合部34A及びロッカインナパネル26の上フランジ部26Aと三枚重ねの状態で接合されているが、補強部は、例えば、底壁部がピラーインナ下部のみに重ね合わせられた二枚重ねの状態で接合されてもよい。
【0064】
さらに、上記第2の実施形態では、図4に示されるセンタピラー下部構造60において、ピラーアウタ下部42に補強部54が形成されると共にピラーインナ下部34に補強部62が形成されてこれらの補強部54、62が互いに結合されているが、例えば、ピラーアウタ下部とピラーインナ下部との両方に補強部が形成されかつこれらの補強部が互いに結合されている構造がフロントピラー下部構造に適用されてもよい。
【0065】
さらにまた、上記第3の実施形態では、図5に示されるフロントピラー下部構造70において、ピラーインナ下部74にピラーアウタ下部48側へ凹んでピラーアウタ下部48側に結合される補強部76が形成されているが、第3の実施形態の変形例として、ピラーアウタ下部(48)にピラーインナ下部(74)側へ凹む補強部が形成されて当該補強部がピラーインナ下部(74)側に結合されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
12 車体側部
26 ロッカインナパネル
30 センタピラー下部構造(ピラー下部構造)
32 ピラーインナパネル
34 ピラーインナ下部
40 アウタパネル
42 ピラーアウタ下部
42A 前フランジ部(フランジ)
42B 後フランジ部(フランジ)
42C 下フランジ部(フランジ)
48 ピラーアウタ下部
48A 第一フランジ部(フランジ)
48B 第二フランジ部(フランジ)
50 補強部
54 補強部
60 センタピラー下部構造(ピラー下部構造)
62 補強部
70 フロントピラー下部構造(ピラー下部構造)
72 ピラーインナパネル
74 ピラーインナ下部
76 補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に略車両上下方向を長手方向として配置されたピラーインナパネルにおける車両上下方向の下部を構成し、車体側部の下端部で車両前後方向を長手方向として配置されたロッカインナパネルの車幅方向外側に接合されたピラーインナ下部と、
前記ピラーインナパネルに対して車幅方向外側に配置される部位と前記ロッカインナパネルに対して車幅方向外側に配置される部位とが一部材で一体に形成されて車幅方向内向きに開口された断面ハット形状を成すアウタパネルにおいて前記ピラーインナ下部に対して車幅方向外側に対向配置される部位を構成し、車幅方向内端のフランジが前記ピラーインナ下部及び前記ロッカインナパネルに接合されたピラーアウタ下部と、
互いに対向する前記ピラーアウタ下部と前記ピラーインナ下部との少なくとも一方に形成され、対向する相手側へ凹んで当該相手側に結合される補強部と、
を有する車両のピラー下部構造。
【請求項2】
前記補強部が、前記ピラーアウタ下部と前記ピラーインナ下部との両方に形成されて互いに結合されている請求項1記載の車両のピラー下部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−105269(P2011−105269A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265273(P2009−265273)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】