説明

車両のピラー構造

【課題】中空パイプの内部に配索された配索部材を中空パイプ内部に固定することができる車両のピラー構造を得る。
【解決手段】中空パイプ32を含んで構成された車両のピラー構造において、中空パイプ32の開口部32Kに挿入されることにより該中空パイプ32の内部に拡開する脚部52を備えたクリップ44を設けることにより、中空パイプ32の内部に配索されたサンルーフドレンホース42を中空パイプ32の内部に固定した。その結果、車両の走行時にサンルーフドレンホース42が中空パイプ32の内部を移動すること及びサンルーフドレンホース42と中空パイプ32の内壁とが干渉することによる異音の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に中空パイプを含んで構成された車両のピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントピラー等のピラーの構成要素として中空パイプを用いることにより、ピラーの細幅化が図られた車両のピラー構造が知られている。例えば、下記特許文献1には、多角形閉断面を有するパイプ状の中空部材を用いたフロントピラー構造が開示されている。このようなピラー構造は、ピラー自体の軽量化及びキャビンからの視界確保という点では大変優れた構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−182079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、中空パイプを用いることによりピラーの細幅化が図られたとしても、該ピラーに沿って配線や配管等の配索部材が配索された場合、該配索部材の分だけピラー全体の幅が大きくなってしまい、上記のキャビンからの視界確保を図れるというメリットを充分に発揮することができない。そこで、この配索部材を中空パイプの内部に配索することが考えられる。
【0005】
しかしながら、配索部材を中空パイプの内部に配索した場合、該配索部材の固定が困難となる。その結果、車両の走行時に配索部材が中空パイプの内部を移動すること及び配索部材が中空パイプの内壁と干渉して異音が発生することが考えられる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、中空パイプの内部に配索された配索部材を中空パイプ内部に固定することができる車両のピラー構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に係る車両のピラー構造は、ピラーを構成すると共に内部が中空構造とされた長尺状の中空パイプと、前記中空パイプの側面に設けられた開口部と、前記中空パイプの内部に沿って配索された長尺状の配索部材と、前記開口部に挿入される脚部を備えると共に、前記脚部が前記中空パイプの内部で拡開することにより、前記脚部と前記中空パイプの内壁との間に前記配索部材を狭持するクリップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の本発明では、配索部材が中空パイプの内部に配索されると共に、この配索部材がクリップの脚部と中空パイプの内壁との間で狭持されている。換言すると、クリップの脚部によって配索部材が中空パイプの内部に固定されている。そのため、車両の走行時に配索部材が中空パイプの内部を移動すること及び配索部材と中空パイプの内壁とが干渉することによる異音の発生が抑制される。
【0009】
請求項2記載の本発明に係る車両のピラー構造は、請求項1記載の車両のピラー構造において、前記クリップの前記脚部は、先端部が結合されたU字状に形成されており、前記脚部が前記開口部に挿入されて、前記脚部の前記先端部が前記中空パイプの内壁に当接することにより、前記脚部が前記中空パイプの内部で拡開することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の本発明では、クリップの脚部の先端部が中空パイプの内壁に当接することにより、クリップの脚部が中空パイプの内部に拡開する。換言すると、クリップの脚部を中空パイプの開口部に挿入するという単純な作業によって、配索部材が中空パイプの内部に固定される。
【0011】
請求項3記載の本発明に係る車両のピラー構造は、請求項2記載の車両のピラー構造、において、前記クリップの前記脚部には剛性低下部が設けられており、この剛性低下部を起点として屈曲することにより前記脚部が前記中空パイプの内部で拡開することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の本発明では、クリップの脚部が剛性低下部を基点として屈曲しながら中空パイプの内部で拡開する。即ち、クリップの脚部は剛性低下部を角部として多角形に拡開する。その結果、例えば、中空パイプが多角形の閉断面を成している場合、剛性低下部をこの中空パイプの断面形状に応じて適宜設定することにより、クリップの脚部がこの中空パイプの断面形状に沿って拡開する。
【0013】
請求項4記載の本発明に係る車両のピラー構造は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両のピラー構造において、前記クリップの前記脚部には、該脚部が前記中空パイプの内部で拡開されることにより伸長して脚部間を塞ぐ仕切り部が設けられたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の本発明では、仕切り部がクリップの脚部に設けられている。この仕切り部は、クリップの脚部が中空パイプの内部で拡開することによって伸長し、その結果、この仕切り部によって中空パイプの内部が軸方向に仕切られる。また、仕切り部が中空パイプの内部を軸方向に仕切ることによって、中空パイプの内部を伝わるノイズがこの仕切り部によって減衰乃至遮断される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明に係る車両のピラー構造は、中空パイプの内部に配索された配索部材を中空パイプ内部に固定することができる、という優れた効果を有する。
【0016】
請求項2記載の本発明に係る車両のピラー構造は、中空パイプの内部に配索された配索部材を中空パイプ内部に固定する際の作業性を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0017】
請求項3記載の本発明に係る車両のピラー構造は、クリップの脚部の最適な拡開形状を得ることができる、という優れた効果を有する。
【0018】
請求項4記載の本発明に係る車両のピラー構造は、中空パイプの内部を伝わるノイズを低減することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る車両のピラー構造が適用されたフロントピラーを示す断面図である。
【図2】(A)は第1実施形態に係る車両のピラー構造が適用された車体の側面を示す側面図であり、(B)はサンルーフドレンホースの配索の状態を示すフロントピラーの側面図である。なお、(B)においては、サンルーフドレンホースの配索の状態をわかり易くするために、サイドアウタパネル等の図示を省略してある。
【図3】第1実施形態に係るクリップの側面図である。
【図4】第2実施形態に係る車両のピラー構造が適用されたフロントピラーを示す断面図である。
【図5】第2実施形態に係るクリップの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1〜図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る車両のピラー構造について説明する。なお、車両前後方向前方側を矢印FRで示し、車幅方向外側を矢印OUTで示し、車両上下方向上側を矢印UPで示す。
【0021】
図2(A)に示されるように、本実施形態の車両のピラー構造10が適用された車体12は、キャビン14の天井部を形成するルーフ16を備えている。また、車体12はルーフ16の車幅方向外側の端部に配置されると共に車両前後方向に延在するルーフサイドレール18を備えている。さらに、車体12は上端部がルーフサイドレール18に接続されてルーフ16を支持するフロントピラー20、センタピラー22及びリヤピラー24を備えている。また、車体12は、フロントピラー20、センタピラー22及びリヤピラー24の下端部が接続されると共に、車両前後方向に延在するロッカ26を備えている。このルーフサイドレール18、フロントピラー20、センタピラー22、リヤピラー24及びロッカ26は車体の骨格部材とて機能する共に、車両前後方向に沿って乗降用の開口部28及び開口部30を形成する。この開口部28及び開口部30が図示を省略するフロントサイドドア及びリアサイドドアによって閉止されることにより、該フロントサイドドア及びリアサイドドアによってキャビン14と車外側とが隔成される構成である。
【0022】
次に本実施形態の要部であるフロントピラー20について説明する。
【0023】
フロントピラー20はキャビン14の前側かつ車幅方向外側に配置されると共に、車両前後方向に沿って傾斜して延在する長尺状の骨格部材である。
【0024】
図1に示されるように、フロントピラー20は断面視で該フロントピラー20の略中心部に配置された中空パイプ32と、車幅方向外側に配置されて車体12の外観意匠の一部を構成するサイドパネルアウタ34と、を備えている。また、フロントピラー20は、キャビン14側に配置されると共に一方の端部がサイドパネルアウタ34と重ね合わされて接合されることによりオープニングウエザストリップ36の取付部を形成するサイドパネルインナ38を備えている。さらに、フロントピラー20は、キャビン14側に配置されると共に中空パイプ32に接合されてキャビン14内の意匠の一部を構成するピラーガーニッシュ40を備えている。また、図1及び図2(B)に示されるように、フロントピラー20における中空パイプ32の内部には、該中空パイプ32の内部に沿って配索部材としてのサンルーフドレンホース42が配索されている。このサンルーフドレンホース42の上端部はルーフ16(図2(A)参照)に設けられた図示を省略するサンルーフの開口部に接続されると共に、下端部がロッカ26(図2(A)参照)の前端部付近から車体下方側に向けて開放されている。その結果、サンルーフの開口部に溜まった雨水などがこのサンルーフドレンホース42を通じて排出される構成である。さらに、図1に示されるように、このサンルーフドレンホース42は、クリップ44によって中空パイプ32の内部に固定されている。以下、先ずフロントピラー20を構成する中空パイプ32、サイドパネルアウタ34、サイドパネルインナ38及びピラーガーニッシュ40について説明し、最後にサンルーフドレンホース42を中空パイプ32の内部に固定するクリップ44について説明する。
【0025】
中空パイプ32は、曲げ加工及びハイドフォーミング加工が円筒状の高張力鋼管に施されることにより形成されている。具体的には、フロントピラー20の形状に沿って曲げ加工が施された円筒状の高張力鋼管が所要の断面形状が得られるように形成された金型にセットされる。次いで、流体が高張力鋼管の内部に高圧力で注入されるハイドロフォーミング加工が施されることによって、中空パイプ32が形成される。なお、高張力鋼管とは、引張強さが概ね490MPa以上の高張力鋼が用いられた管材のことをいう。
【0026】
また、中空パイプ32は、車両前方側に形成された第1屈曲部32Aを起点として車幅方向外側に傾斜して延在する第1壁部32Bと、該第1壁部32Bの車幅方向外側の端部から車両後方側に傾斜して延在する第2壁部32Cと、を備えている。また、この第1壁部32Bと第2壁部32Cとの間には第2屈曲部32Dが形成されている。さらに、中空パイプ32は、第2壁部32Cの車両後方側の端部から車幅方向内側に傾斜して延在する第3壁部32Eと、該第3壁部32Eの車幅方向内側の端部から車両前方側に傾斜して延在する第4壁部32Fと、を備えている。また、第2壁部32Cと第3壁部32Eとの間には第3屈曲部32Gが形成されており、第3壁部32Eと第4壁部32Fとの間には第4屈曲部32Hが形成されている。さらに、中空パイプ32は、第4壁部32Fの車両前方側の端部から車幅方向外側に傾斜して延在すると共に、先端が第1壁部32Bの車幅方向内側の端部(第1屈曲部32A)に接続された第5壁部32Iを備えている。また、第4壁部32Fと第5壁部32Iとの間には第5屈曲部32Jが形成されている。以上の第1壁部32B乃至第5壁部32Iによって5つの屈曲部(第1屈曲部32A乃至第5屈曲部32J)を有する5角形の閉断面が形成されている。また、中空パイプ32の第4壁部32Fには、以下に説明するクリップ44が挿入される開口部32Kが形成されている。
【0027】
サイドパネルアウタ34は、鋼板材料にプレス加工が成されることにより形成されたプレス成型部品である。具体的には、サイドパネルアウタ34は、上記中空パイプ32の第1壁部32Bに接合される第1フランジ部34Aを備えている。また、サイドパネルアウタ34は、第1フランジ部34Aの車幅方向外側の端部から車幅方向外側に傾斜して延在する第1パネル部34Bと、該第1パネル部34Bの車幅方向外側の端部から車両後方側に傾斜して延在する第2パネル部34Cと、を備えている。さらに、サイドパネルアウタ34は、第2パネル部34Cの車両後方側の端部から車幅方向内側に屈曲して延在する第3パネル部34Dと、該第3パネル部34Dの車幅方向内側の端部から車幅方向内側に傾斜して延在する第4パネル部34E及び第5パネル部34Fと、を備えている。また、サイドパネルアウタ34は、第5パネル部34Fの車幅方向内側の端部から車両後方側に延在する第2フランジ部34Gを備えている。
【0028】
サイドパネルインナ38は、上記サイドパネルアウタ34と同様に鋼板材料にプレス加工が成されることにより形成されたプレス成型部品である。具体的には、サイドパネルインナ38は、上記サイドパネルアウタ34の第2フランジ部34Gと重ね合わされて接合されるフランジ部38Aを備えている。また、サイドパネルインナ38は、フランジ部38Aの車両前方側の端部から上記中空パイプ32の第3壁部32E及び第4壁部32Fに沿って延在すると共に、該第3壁部32E及び第4壁部32Fと接合される第1パネル部38B及び第2パネル部38Cを備えている。
【0029】
ピラーガーニッシュ40は、樹脂材料を用いて形成された内装部品であり、中空パイプ32をキャビン14側から覆うように設けられている。また、ピラーガーニッシュ40には、該ピラーガーニッシュ40を中空パイプ32に固定するための固定部40Aが設けられている。さらに、この固定部40Aには取付孔40Bが形成されており、以下に説明するクリップ44がこの取付孔40Bに挿入されることにより、ピラーガーニッシュ40が中空パイプ32に固定されている。なお、ピラーガーニッシュ40が中空パイプ32に固定された状態において、ピラーガーニッシュ40と中空パイプ32との間には、配線46及びカーテンエアバッグ装置48が設けられている。換言すると、ピラーガーニッシュ40によって、配線46及びカーテンエアバッグ装置48がキャビン14内に着座した乗員からは見えないようになっている。
【0030】
図3に示されるように、クリップ44は、樹脂材料を用いて形成された一体成型部品である。また、クリップ44は、上記中空パイプ32の開口部32Kに挿入されることによって、ピラーガーニッシュ40を中空パイプ32に固定する固定部50を備えている。さらに、クリップ44は、中空パイプ32の断面内部にて該中空パイプ32の径方向外側に拡開することによって、サンルーフドレンホース42を中空パイプ32の内部に固定する脚部52を備えている。
【0031】
固定部50は、略円筒状の基部50Aを備えている。また、この基部50Aの周壁には該基部50Aの径方向外側に突出した第1突起部50B及び第2突起部50Cを備えている。また、固定部50は、基部50Aの一方の端部から該基部50Aの軸方向に突出して形成された円筒状の突出部50Dを備えている。さらに、この突出部50Dの端部には該突出部50Dの径方向外側に突出して形成されたフランジ部50Eが形成されている。
【0032】
脚部52は、上記固定部50の基部50Aの他方の端部から該基部50Aの軸線方向に延在する第1脚部52A及び第2脚部52Bを備えている。また、この第1脚部52A及び第2脚部52Bの長さは上記中空パイプ32における第2壁部32Cと第4壁部32Fとの間の距離よりも長く設定されている。さらに、第1脚部52Aの先端部と第2脚部52Bの先端部とは結合されており、その結果、脚部52はU字状断面を成している。また、第1脚部52A及び第2脚部52Bの中間部には、該第1脚部52A及び第2脚部52Bによって形成されたU字状断面の内側へ向けて開口した剛性低下部としての切欠部52Cがそれぞれ形成されている。
【0033】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0034】
図1に示されるように、ピラーガーニッシュ40を中空パイプ32に取付ける場合、中空パイプ32に設けられた開口部32Kとピラーガーニッシュ40に設けられた取付孔40Bとが重ね合わされた位置にて、クリップ44が挿入される。すると、中空パイプ32に設けられた開口部32K及びピラーガーニッシュ40に設けられた取付孔40Bの各々の縁がクリップ44における第1脚部52A及び第2脚部52Bの基端部とフランジ部50Eとの間に挟み込まれる。その結果、ピラーガーニッシュ40が中空パイプ32に固定される。また、クリップ44の脚部52が中空パイプ32に設けられた開口部32K挿入される過程において、脚部52の先端部が中空パイプ32の第2壁部32Cに当接する。次いで、第1脚部52Aに設けられた切欠部52C及び第2脚部52Bに設けられた切欠部52Cを起点として、脚部52(第1脚部52A及び第2脚部52B)が中空パイプ32の断面内部に拡開される(本実施形態では、四角形状に拡開される)。その結果、第2脚部52Bにおける基端部から切欠部52Cかけての部分がサンルーフドレンホース42を押圧する。換言すると、サンルーフドレンホース42が第2脚部52Bにおける基端部から切欠部52Cかけての部分と中空パイプ32の第3壁部32E及び第4壁部32Fとの間に狭持されることにより、サンルーフドレンホース42が中空パイプ32の内部に固定されている。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るピラー構造10では、中空パイプ32の内部に配索されたサンルーフドレンホース42を中空パイプ32の内部に固定することができる。その結果、車両の走行時にサンルーフドレンホース42が中空パイプ32の内部を移動すること及びサンルーフドレンホース42と中空パイプ32の内壁とが干渉することによる異音の発生を抑制できる。
【0036】
また、本実施形態に係るピラー構造10では、クリップ44の脚部52の先端部が中空パイプ32の内壁に当接することにより、クリップ44の脚部52が中空パイプの内部に拡開する。換言すると、クリップ44の脚部52を中空パイプ32の開口部32Kに挿入するという単純な作業によって、サンルーフドレンホース42が中空パイプ32の内部に固定される。即ち、本実施形態に係るピラー構造10では、中空パイプ32の内部に配索されたサンルーフドレンホース42を中空パイプ32の内部に固定する際の作業性を向上させることができる。
【0037】
<第2実施形態>
次に、図4及び図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る車両のピラー構造について説明する。なお、第1実施形態と同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
図4に示されるように、本実施形態に係る車両のピラー構造56は、複数の剛性低下部としての切欠部がクリップ44の第1脚部52A及び第2脚部52Bにそれぞれ形成されていること及び仕切り部54が第1脚部52Aと第2脚部52Bとの間にかけ渡されるように設けられていることに特徴がある。
【0039】
具体的には、図5に示されるように、クリップ44の第1脚部52Aには、基端部から先端部にかけて、第1切欠部52D、第2切欠部52E及び第3切欠部52Fが設けられている。従って、第1脚部はこの第1切欠部52D、第2切欠部52E及び第3切欠部52Fを起点として中空パイプ32の内部に拡開する。また、図4に示されるように、この第1脚部52Aが中空パイプ32の内部に拡開された状態において、第1切欠部52D、第2切欠部52E及び第3切欠部52Fはそれぞれ中空パイプの第5屈曲部32J、第1屈曲部32A及び第2屈曲部32Dに隣接して配置されるように形成されている。
【0040】
また、図5に示されるように、クリップ44の第2脚部52Bには、基端部から先端部にかけて、第4切欠部52G、第5切欠部52H及び第6切欠部52Iが設けられている。従って、第2脚部52Bはこの第4切欠部52G、第5切欠部52H及び第6切欠部52Iを起点として中空パイプ32の内部に拡開する。さらに、図4に示されるように、第2脚部が中空パイプ32の内部に拡開された状態において、第4切欠部52G及び第5切欠部52Hはサンルーフドレンホース42を跨いで配置されるように、また第6切欠部52Iは中空パイプ32の第3屈曲部32Gに隣接して配置されるように形成されている。
【0041】
さらに、図5に示されるように、仕切り部54は、柔軟性のあるゴム系の薄肉材料を用いて形成されると共に、第1脚部52Aと第2脚部52Bとの間にかけ渡されて設けられている。具体的には、仕切り部54は、第1脚部52A及び第2脚部52Bが延在する方向と略同一方向に延びる凹部54Aと凸部54Bとが交互に連続して形成された所謂蛇腹形状を成している。また、図4に示されるように、この仕切り部54は、クリップ44の第1脚部52A及び第2脚部52Bが中空パイプ32の内部で拡開することによって伸長し、中空パイプ32の内部を軸方向に仕切る。
【0042】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0043】
本実施形態では、上記構成の第1切欠部52D乃至第6切欠部52Iがクリップ44の第1脚部52A及び第2脚部52Bに設けられている。そのため、クリップ44の脚部52が中空パイプ32の開口部32Kに挿入されると、クリップ44は中空パイプ32の断面及びサンルーフドレンホース42の形状に沿って拡開する。換言すると、本実施形態に係る車両のピラー構造56では、第1切欠部52D乃至第6切欠部52Iが上記の位置に設けられているため、最適な脚部52の拡開形状を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態では、仕切り部54が中空パイプ32の内部を軸方向に仕切るため、中空パイプ32の内部を伝わるノイズがこの仕切り部54によって減衰乃至遮断される。換言すると、本実施形態の車両のピラー構造56では、中空パイプの内部を伝わるノイズを低減することができる。
【0045】
以上、第1実施形態及び第2実施形態では、クリップ44の脚部52として第1脚部52A及び第2脚部52Bを設けた例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、その他多数の脚部を設けた構成としても良い。
【0046】
また、第2実施形態では、仕切り部54にゴム系の薄肉材料を用いた例を説明してきたが本発明はこれに限定されず、例えば樹脂系の材料を用いた構成としても良い。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 車両のピラー構造
12 車体
16 ルーフ
32 中空パイプ
32K 開口部
42 サンルーフドレンホース(配索部材)
44 クリップ
52 脚部
52C 切欠部(剛性低下部)
52D 第1切欠部(剛性低下部)
52E 第2切欠部(剛性低下部)
52F 第3切欠部(剛性低下部)
52G 第4切欠部(剛性低下部)
52H 第5切欠部(剛性低下部)
52I 第6切欠部(剛性低下部)
54 仕切り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラーを構成すると共に内部が中空構造とされた長尺状の中空パイプと、
前記中空パイプの側面に設けられた開口部と、
前記中空パイプの内部に沿って配索された長尺状の配索部材と、
前記開口部に挿入される脚部を備えると共に、前記脚部が前記中空パイプの内部で拡開することにより、前記脚部と前記中空パイプの内壁との間に前記配索部材を狭持するクリップと、
を備えた車両のピラー構造。
【請求項2】
前記クリップの前記脚部は、先端部が結合されたU字状に形成されており、
前記脚部が前記開口部に挿入されて、前記脚部の前記先端部が前記中空パイプの内壁に当接することにより、前記脚部が前記中空パイプの内部で拡開する請求項1記載の車両のピラー構造。
【請求項3】
前記クリップの前記脚部には剛性低下部が設けられており、この剛性低下部を起点として屈曲することにより前記脚部が前記中空パイプの内部で拡開する請求項2記載の車両のピラー構造。
【請求項4】
前記クリップの前記脚部には、該脚部が前記中空パイプの内部で拡開されることにより伸長して脚部間を塞ぐ仕切り部が設けられた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両のピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86729(P2013−86729A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231082(P2011−231082)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】