説明

車両のフレーム構造

【課題】ルーフサイドレールとピラーとが交差するルーフサイドレール内にルーフレール補強部材を組付ける際に、ルーフレール補強部材のずれを防止し、交差部の組付けを容易にした車両のフレーム構造を提供する。
【解決手段】車両のフレーム構造のレール構造67は、ルーフサイドレール29とクオーターピラー31とが交差する交差部32であり、左サイドボデーのアウトサイドパネル33と、アウトサイドパネルの内側に取り付けたリヤインサイドパネル34と、リヤインサイドパネルとアウトサイドパネルで挟んだルーフレール補強部材54Bと、を備え、アウトサイドパネルは、止め折り曲げ部71と、直交折り曲げ部72と、を備え、ルーフレール補強部材は、掛止爪75を備える。掛止爪75は直交折り曲げ部に当接して掛かる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフサイドレールとピラーとが交差する交差部を溶接で製造する際に、ルーフサイドレール内に配置したルーフレール補強部材のずれを防ぐ車両のフレーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフサイドレールとピラーとが交差する交差部に補強パネルを用いた構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−82885公報(第9頁、図1)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は、従来の技術の基本構成を説明する図であり、従来の自動車車体の上側部構造は、ルーフサイドレール101が、レールアウタパネル102と、レールインナパネル103と、これら両パネル102、103の間に介設されたレール補強パネル104と、を備え、これらのパネル102、103、104の端部をスポット溶接(溶接部105、106)すると、ピラーにシートベルトによる引っ張り力が加わっても、レール補強パネル104によって、ルーフサイドレール101のスポット溶接した溶接部は、容易に破断しないというものである。
【0004】
しかし、特許文献1の自動車車体の上側部構造では、パネル102、103、104の端部をスポット溶接するために、レールアウタパネル102とレールインナパネル103とでレール補強パネル104を挟む際に、レール補強パネル104の位置がずれることがある。例えば、図の左を下にした状態、つまりレールアウタパネル102を一体に成形したアウタパネルを置き、ほぼ垂直となるレールアウタパネル102にレール補強パネル104を矢印a1のように重ね、重ねたレール補強パネル104にレールインナパネル103をさらに矢印a2のように重ねると、レール補強パネル104の端部107が矢印a3の方向にずれて、レール補強パネル104が二点鎖線で示すような状態になることが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ルーフサイドレールとピラーとが交差するルーフサイドレール内にルーフレール補強部材を組付ける際に、ルーフレール補強部材のずれを防止し、交差部の組付けを容易にした車両のフレーム構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、 閉断面形状が、少なくとも第1成形板材の両端部に第2成形板材の両端部がそれぞれ溶接されることで形成されたレール構造を備える車両のフレーム構造において、第1成形板材の両端部のうち、一方の端部に成形された止め折り曲げ部と、他方の端部に成形されて止め折り曲げ部に対して直交する直交折り曲げ部と、第2成形板材の両端部のうち、一方の端部に成形されて止め折り曲げ部に当接する当接折り曲げ部と、他方の端部に成形されて直交折り曲げ部に接触する接触折り曲げ部と、この接触折り曲げ部に連ねて成形されて直交折り曲げ部に掛止する掛止爪と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、乗員室の壁の上部に相当するルーフサイドレールと壁に配置した窓枠に相当するピラーとが交差する交差部であり、壁の外板をなすアウトサイドパネルと、アウトサイドパネルの内側に取り付けたリヤインサイドパネルと、リヤインサイドパネルとアウトサイドパネルで挟んだルーフレール補強部材と、を備え、アウトサイドパネルは、止め折り曲げ部と、直交折り曲げ部と、を備え、ルーフレール補強部材は、掛止爪を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、第1成形板材の一方の止め折り曲げ部と、他方の直交折り曲げ部と、第2成形板材の一方の当接折り曲げ部と、他方の接触折り曲げ部と、この接触折り曲げ部に連ねて成形されて直交折り曲げ部に掛止する掛止爪と、を備えたので、掛止爪によって、第2成形板材のずれを防止することができる。すなわち、閉断面形状に組付ける際に、第1成形板材側へ第2成形板材を押すと、掛止爪は直交折り曲げ部に当接して掛かるので、掛止爪に連なる接触折り曲げ部を止める。従って、第2成形板材のずれを防止することができるという利点がある。
【0009】
請求項2に係る発明では、レール構造は、ルーフサイドレールとピラーとが交差する交差部であり、壁の外板をなすアウトサイドパネルと、アウトサイドパネルの内側に取り付けたリヤインサイドパネルと、リヤインサイドパネルとアウトサイドパネルで挟んだルーフレール補強部材と、を備え、アウトサイドパネルは、止め折り曲げ部と、直交折り曲げ部と、を備え、ルーフレール補強部材は、掛止爪を備えたので、ルーフレール補強部材を挟む際に、アウトサイドパネル側へ押すと、掛止爪は直交折り曲げ部に当接して掛かり、掛止爪を備えたルーフレール補強部材を止める。従って、ルーフレール補強部材のずれを防止することができるという利点がある。
【0010】
また、ルーフレール補強部材を挟む際に、アウトサイドパネル側へ押すと、掛止爪は直交折り曲げ部に当接して掛かり、掛止爪を備えたルーフレール補強部材を止める。従って、交差部の組付けは容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明のフレーム構造を採用した車両の後部の斜視図である。
車両11は、4ドアで、車体12を有し、車体12は、床部をなすアンダボデー13と、アンダボデー13の左右に接続した左・右サイドボデー14,15と、後に接続したリヤボデー16と、左・右サイドボデー14,15の上部に接続したルーフ17と、を備える。21は乗員室、22は荷物室である。
【0012】
図下の軸は、方向を示し、Xは水平な方向及び前後方向を示す軸、YはXに直交する軸、ZはX,Yに直交する鉛直軸である。
【0013】
左サイドボデー14は、乗員室21の壁(左サイドボデー)14の上部に相当するルーフサイドレール29と、ルーフサイドレール29の後部側に連なるピラーであるところのクオーターピラー31と、ルーフサイドレール29とクオーターピラー(ピラー)31とが交差する交差部32と、を備える。
また、乗員室21の壁(左サイドボデー14)の外板をなすアウトサイドパネル33と、アウトサイドパネル33の内側に取り付けたリヤインサイドパネル34(右サイドボデー15及び図2参照)と、を備える。ルーフサイドレール29にルーフ17を取り付けた。
右サイドボデー15は、左サイドボデー14とほぼ対称である。
【0014】
アウトサイドパネル33は、ルーフレールアウタ部35B(第1成形板材35)と、ルーフレールアウタ部35Bに一体に成形したクオーターピラーアウタ部36と、有する。
【0015】
図2は、本発明のフレーム構造の分解図である。ルーフサイドレール29、アウトサイドパネル33、リヤインサイドパネル34を示している。
リヤインサイドパネル34は、上部に成形したルーフレールインナ部51と、ルーフレールインナ部51に一体に成形したクオーターピラーインナ部52と、を有する。
【0016】
ルーフサイドレール29は、アウトサイドパネル33の上部のルーフレールアウタ部35Bと、リヤインサイドパネル34の上部のルーフレールインナ部51とでルーフレール補強部材54B(第2成形板材54)を挟んだものである。
ルーフサイドレール29は、具体的には、ルーフレールアウタ部35Bの両端部61,62にルーフレール補強部材54Bの両端部63,64がそれぞれ溶接されることで閉断面形状に形成され、さらに、両端部63,64にルーフレールインナ部51の両端部65,66がそれぞれ溶接されることで、閉断面形状に形成されたレール構造67である。
なお、レール構造67は、ルーフレールアウタ部35B(第1成形板材35)とルーフレール補強部材54B(第2成形板材54)とで閉断面形状に形成したものでもよい。
【0017】
ルーフレールアウタ部35Bは、一方の端部61に止め折り曲げ部71をZ軸方向に延びるように成形し、他方の端部62に直交折り曲げ部72を止め折り曲げ部71に対して直交するようにY軸方向に延ばして成形したものである。
止め折り曲げ部71並びに直交折り曲げ部72はともに、溶接するための部位である。
【0018】
言い換えると、第1成形板材35は、第1成形板材35の両端部61,62のうち、一方の端部61にZ軸方向に成形された止め折り曲げ部71と、他方の端部62にY軸方向に成形されて止め折り曲げ部71に対して直交する直交折り曲げ部72と、を備える。
【0019】
ルーフレール補強部材54Bは、一方の端部63に成形されて止め折り曲げ部71に当接する当接折り曲げ部73と、他方の端部64に成形されて直交折り曲げ部72に接触する接触折り曲げ部74と、この接触折り曲げ部74に連ねて成形されて直交折り曲げ部72に掛止する掛止爪75,75と、を備える。
当接折り曲げ部73並びに接触折り曲げ部74はともに、溶接するための部位である。
【0020】
言い換えると、第2成形板材54は、第2成形板材54の両端部63,64のうち、一方の端部63に成形されて止め折り曲げ部71に当接する当接折り曲げ部73と、他方の端部64に成形されて直交折り曲げ部72に接触する接触折り曲げ部74と、この接触折り曲げ部74に連ねて成形されて直交折り曲げ部72に掛止する掛止爪75,75と、を備える。
【0021】
ルーフレールインナ部51は、一方の端部65に成形されて当接折り曲げ部73に重ねる第1折り曲げ部81と、他方の端部66に成形されて接触折り曲げ部74に重ねる第2折り曲げ部82と、を備える。
第1・第2折り曲げ部81,82はともに、溶接するための部位である。
【0022】
図3は、図1の3−3線断面図であり、ルーフサイドレール29の断面を示す。
ルーフサイドレール29は、既に述べたように、ルーフレールアウタ部35Bと、ルーフレールインナ部51とでルーフレール補強部材54Bを挟んだものであるが、ルーフレール補強部材54Bには、ルーフレール補強部材54Bにルーフレールアウタ部35B側へ押す荷重が加わった場合に、ルーフレールアウタ部35Bに対して接触しつつ滑る部位(接触折り曲げ部)74にストッパ部材(掛止爪)75,75をルーフレールアウタ部35Bに掛かるように形成した。
【0023】
なお、掛止爪75は、2個形成したが、数は任意である。
掛止爪75の幅をWとしたが、幅W(図2参照)は任意であり、例えば、掛止爪75,75を一体にすることも可能である。
掛止爪75の高さHは任意であり、ルーフレールアウタ部35Bに掛止されればよい。
【0024】
次に、本発明のフレーム構造の作用を説明する。
図4(a)〜(c)は、本発明のフレーム構造の製造に用いるスポット溶接を実施する前の作用を説明する図である。
(a)において、アウトサイドパネル33の内側を上(矢印b1の方向)へ向けて台84に置き、ルーフレールアウタ部35B(第1成形板材35)にルーフレール補強部材54B(第2成形板材54)を矢印b2,b2のように載せ始める。
【0025】
(b)において、ルーフレールアウタ部35B(第1成形板材35)の止め折り曲げ部71にルーフレール補強部材54B(第2成形板材54)の当接折り曲げ部73を重ねるとともに、ルーフレールアウタ部35Bの直交折り曲げ部72にルーフレール補強部材54Bの接触折り曲げ部74を重ねる。その際、接触折り曲げ部74に一体に成形した掛止爪75を直交折り曲げ部72の縁に掛止する。引き続き、重ねたルーフレール補強部材54Bにリヤインサイドパネル34を矢印b3,b3のように載せ始める。
【0026】
(c)において、重ねたルーフレール補強部材54Bの当接折り曲げ部73にルーフレールインナ部51の第1折り曲げ部81を重ね、ルーフレール補強部材54Bの接触折り曲げ部74にルーフレールインナ部51の第2折り曲げ部82を重ねるとともに、矢印b4,b5のように押して重ねた折り曲げ部71〜74,81,82同士を密着させる。
【0027】
ルーフレールインナ部51を矢印b4,b5のようにルーフレールアウタ部35B側へ押すと、ルーフレールインナ部51の他方の端部66はルーフレール補強部材54Bの他方の端部64を下方(矢印b6の方向)へ押すので、掛止爪75,75は直交折り曲げ部72に矢印b7のように当接して掛かり、ルーフレール補強部材54Bの端部64の下方への滑りを防ぐことができる。
つまり、ルーフサイドレール29とクオーターピラー(ピラー)31とが交差するルーフサイドレール29内にルーフレール補強部材54Bを組付ける際に、ルーフレール補強部材54B(第2成形板材54)のずれを防止することができる。
【0028】
また、ルーフレールインナ部51を矢印b4,b5のようにルーフレールアウタ部35B側へ押すと、ルーフレールインナ部51の端部66はルーフレール補強部材54Bの端部64を下方(矢印b6の方向)へ押すので、掛止爪75,75は直交折り曲げ部72に当接して掛かり、ルーフレール補強部材54Bの端部64(接触折り曲げ部74)の下方への滑りを防ぐことができる。従って、交差部32の組付けは容易になる。
【0029】
図5は、本発明のフレーム構造の製造に用いるスポット溶接を実施するときの作用を説明する図である。
ルーフレールインナ部51を重ねた後、重ねた折り曲げ部71〜74,81,82同士をスポット溶接装置85で溶接する。その際、掛止爪75,75によってルーフレール補強部材54Bは止めた状態となるから、交差部32の組付け精度の管理は容易になる。
【0030】
尚、本発明の車両のフレーム構造は、実施の形態ではルーフサイドレールとピラーとが交差する交差部に採用したが、交差部の無い閉断面形状のレール構造に採用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の車両のフレーム構造は、ルーフサイドレールとピラーとが交差する交差部に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のフレーム構造を採用した車両の後部の斜視図
【図2】本発明のフレーム構造の分解図
【図3】図1の3−3線断面図
【図4】本発明のフレーム構造の製造に用いるスポット溶接を実施する前の作用を説明する図
【図5】本発明のフレーム構造の製造に用いるスポット溶接を実施するときの作用を説明する図
【図6】従来の技術の基本構成を説明する図
【符号の説明】
【0033】
14…乗員室の壁(左サイドボデー)、21…乗員室、29…ルーフサイドレール、31…ピラー(クオーターピラー)、32…交差部、33…アウトサイドパネル、34…リヤインサイドパネル、35…第1成形板材、54…第2成形板材、54B…ルーフレール補強部材、61…第1成形板材の一方の端部、62…第1成形板材の他方の端部、63…第2成形板材の一方の端部、64…第2成形板材の他方の端部、67…レール構造、71…止め折り曲げ部、72…直交折り曲げ部、73…当接折り曲げ部、74…接触折り曲げ部、75…掛止爪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉断面形状が、少なくとも第1成形板材の両端部に第2成形板材の両端部がそれぞれ溶接されることで形成されたレール構造を備える車両のフレーム構造において、
前記第1成形板材の両端部のうち、一方の端部に成形された止め折り曲げ部と、他方の端部に成形されて前記止め折り曲げ部に対して直交する直交折り曲げ部と、
前記第2成形板材の両端部のうち、一方の端部に成形されて前記止め折り曲げ部に当接する当接折り曲げ部と、他方の端部に成形されて前記直交折り曲げ部に接触する接触折り曲げ部と、この接触折り曲げ部に連ねて成形されて直交折り曲げ部に掛止する掛止爪と、を備えたことを特徴とする車両のフレーム構造。
【請求項2】
前記レール構造は、乗員室の壁の上部に相当するルーフサイドレールと前記壁に配置した窓枠に相当するピラーとが交差する交差部であり、前記壁の外板をなすアウトサイドパネルと、アウトサイドパネルの内側に取り付けたリヤインサイドパネルと、リヤインサイドパネルとアウトサイドパネルで挟んだルーフレール補強部材と、を備え、
前記アウトサイドパネルは、前記止め折り曲げ部と、前記直交折り曲げ部と、を備え、
前記ルーフレール補強部材は、前記掛止爪を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両のフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−210571(P2007−210571A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35817(P2006−35817)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】