車両のフレーム構造
【目的】車体正面へ大荷重を受けたとき、車体前部が変形してもルーフを下げないようにする。
【構成】サイドビーム31及び斜めビーム32の前部にバンパーフレーム36を設け、その上方にサブフレーム60を支持させる。サブフレーム60は側面視略三角形状のトラス状をなすアッパー部61と、下方へ湾曲するロアー部62を備え、ロアー部62から後方へ延出するコントロールアーム部63に設けた下部ブラケット64に前輪操舵機構5の上ステアリングパイプ51を取付ける。アッパー部61の頂部にはルーフを支持するブラケット66を設ける。
大荷重Fによりサブフレーム60が変形すると、ロアー部62が屈曲点で曲がるよう変形して下方へ下がるとともに、アッパー部61は開き角を縮小するよう変形する。このためルーフを支持するブラケット66の位置はほぼ一定高さを維持し、十分な大きさの車室内空間Sを維持する。
【構成】サイドビーム31及び斜めビーム32の前部にバンパーフレーム36を設け、その上方にサブフレーム60を支持させる。サブフレーム60は側面視略三角形状のトラス状をなすアッパー部61と、下方へ湾曲するロアー部62を備え、ロアー部62から後方へ延出するコントロールアーム部63に設けた下部ブラケット64に前輪操舵機構5の上ステアリングパイプ51を取付ける。アッパー部61の頂部にはルーフを支持するブラケット66を設ける。
大荷重Fによりサブフレーム60が変形すると、ロアー部62が屈曲点で曲がるよう変形して下方へ下がるとともに、アッパー部61は開き角を縮小するよう変形する。このためルーフを支持するブラケット66の位置はほぼ一定高さを維持し、十分な大きさの車室内空間Sを維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のフレーム構造に係り、特に車体前部へ大荷重が加わって変形するとき、ステアリングシャフトを前方へ傾くように誘導できるようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根付き車両における屋根の支持構造として、車体前部に前支柱を立ててフロントカウルと屋根の前ピラーを支持させる車体フレーム構造が知られている。
【特許文献1】特開2006−26303
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来例の構造では、前方から過大な入力が印加された場合、屋根支持部が傾き、ルーフが変形することが想定される。このため、屋根付き車両において、車両前方へ過大な入力が加わったとき、フレームの変形によってエネルギーを逃がしながら、かつ屋根の乗員空間方向への変形を少なくすることが望まれている。本願はこのような要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため車両のフレーム構造に係る請求項1の発明は、前輪及び後輪を前後に支持する車体フレームの前部に左右へ架け渡された左右方向フレームを設け、車室上方をルーフで覆った車両のフレーム構造において、
前記左右方向フレームに前端部が取付けられ、後端部が前端部とほぼ同じ高さで前記車体フレームへ取付けられるとともに側面視で上方へ凸形状をなすトラス状フレームを設け、
このトラス状フレームの凸部に前記ルーフの前端部を支持したことを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は上記請求項1において、前記トラス状フレームを前記左右方向フレームへ連結する介在部材を備え、この介在部材には左右方向へ延びるフロント部と前後方向へ延びるロアー部とを備え、
前記フロント部は前記左右方向フレームへ支持されかつ前記トラス状フレームの前端部を支持し、
前記ロアー部は中間部前側に下方へ凸に曲がる屈曲部を設け、前端を前記フロント部へ結合し、後端部を前記トラス状フレームの後端部に結合したことを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は上記請求項1において、前記トラス状フレームが左右一対で設けられ、上面視で略ハの字をなしていることを特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は上記請求項1において、ハンドルと、このハンドルの回動軸であるステアリングシャフトと、このステアリングシャフトを回動自在に支持するステアリングパイプとからなるステアリング装置を備え、前記ロアー部で前記ステアリングパイプの下部を支持したことを特徴とする。
【0008】
請求項5の発明は上記請求項1において、前記車体フレームは主要部であるメインフレームと、このメインフレームに対して別体で着脱自在なサブフレームとを備え、
前記左右方向フレームは前記メインフレームの一部であり、
前記ロアー部とトラス状フレームは前記メインフレームと別体のサブフレームであり、このサブフレームは前記メインフレームにボルトで締結されることを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、車体前部へ前方から過大な荷重が加わると、トラス状フレームの開き角が狭くなるように変形するため、側面視で常に三角の頂点を下がらないようにして屋根の乗員空間方向への変形を少なくすることが可能となる。
【0010】
請求項2の発明によれば、屈曲部を有するロアー部が屈曲部でさらに下方へ凸に曲がるよう変形されるので、入力エネルギーを効果的に吸収することができる。また、屈曲部が中間部前側に設けられているので、ロアー部は前側が比較的下に沈むようになる。一方、トラス状フレームの凸部は開き角が狭まると上に上がろうとするため、結果的にルーフ支持部の高さを一定に保つことが可能となる。
【0011】
請求項3の発明によれば、トラス状フレームが上面視でハの字状になっているため、トラス状フレームの受ける荷重の一部がトラス状フレームを凸部が下がる方向へ捩るものになり、この捩りによりトラス状フレームが上に上がるのを抑えることが可能となる。
【0012】
請求項4の発明によれば、ハンドルをバーハンドルとしたので、前方からの荷重を受けた際、ハンドルをつかんだ状態を保持しやすく、介在部材の変形を正確になるよう誘導できる。
【0013】
請求項5の発明によれば、サブフレームをメインフレームと別体に構成したので、強度の高いメインフレームをサイズの大きな部材で一体に形成できるとともに、荷重負荷時の入力エネルギーを吸収できるサブフレームは比較的サイズの小さな部材で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。なお、以下において、上下及び前後は図1の図示状態、左右は図2の図示状態をそれぞれ基準とする。
【0015】
図1は本願に係る小型自動4輪車の側面図である。この車両は、車体フレーム1の前後に前輪2及び後輪3を備え、車体中央に設けられた運転者D用のフロントシート4前方に前輪操舵機構5を備える。フロントシート4は座部からなり、物入れ4a上に支持され、前端をヒンジ4bにて回動自在に取付けられており、フロントシート4を開くと、物入れ4aの開口が開かれて物品を出入可能である。物入れ4aはヘルメット等の大型物品を収容できる程度に大容量である。
【0016】
フロントシート4の後方には別体で構成されたバックレスト6がフロアパネルから隆起する台座部7上に支持され前後方向へスライド自在になっている。
バックレスト6から後方にセンターグリップ8が延出し、同乗者Pが着座時及び乗降時に握れるようになっている。
バックレスト6の後方には、サイドグリップ9及びリヤシート10が設けられている。
【0017】
リヤシート10の座部下方にはパワーユニット11が設けられ、このパワーユニット11により後輪3を駆動する。
パワーユニット11は図示省略のリンクにより車体フレーム1へ揺動自在に支持され、燃料噴射(FI)式である。12はFIユニット、13は燃料タンクで物入れ7の後方に配置される。14は燃料ポンプ、15はエアクリーナである。
【0018】
車体の前部はフロントカバー16で覆われ、その一部はフロントフェンダをなし、前輪2の前側から後側までを覆う。車室内前部はインナーパネル18で覆われ、その側部は運転者Dの脚部L側方を覆う。19はミラー、20はバーハンドルである。バーハンドル20は前輪操舵機構5の一部を構成するとともにインナーパネル18の上方にて後方の運転者Dにより操舵される。車室内空間Sの前部はウインドスクリーン21、上部はルーフ22で覆われる。ルーフ22の前部は後傾したフロントピラー23で支持され、このフロントピラー23にはウインドスクリーン21も支持される。ルーフ22の後部はほぼ直立したリヤピラー24で支持される。フロントピラー23及びリヤピラー24の各下端部は車体フレーム1側へ支持されている。
【0019】
図中の符号13aはタンクカバー、12aはFIカバー、25は前輪マッドガード、26はチェンジペダル、27はチェンジケーブル、28はアームレスト、29はリヤカバーである。リヤカバー29の一部はリヤフェンダ29aをなして、後輪3の前側及び上側から後側を覆う。
【0020】
図2は車両の平面図(ウインドスクリーン21及びルーフ22を省略)である。前輪2及び後輪3はそれぞれ左右一対で設けられる。リヤシート10は左右へ2人並んで着座できる大きさであり、リヤシート10の乗員はそれぞれ足をフロントシート4の側方におけるフロアパネル30の上へ出すことができる。前輪操舵機構5及びフロントシート4は車体中心線Cの上に配置され、バーハンドル20は左右方向へ延びて運転者Dの両手で操作される。フロントシート4はフロアパネル30の略中央に位置する。
【0021】
サイドグリップ9はセンターグリップ8の左右に設けられ、同乗者Pの前方左右方向へ横切り、着座時に同乗者Pが握れるようになっている。このサイドグリップ9は、一端をアームレスト28へ回動自在に支持され、乗降時にはアームレスト28との連結軸を中心に車体内側の他端を上方へ跳ね上げるように回動させることができる(図1参照)。
【0022】
図3は車体フレーム1の側面図である。この車体フレーム1は、メインフレームと、これに対して別体に構成されて着脱自在なサブフレーム60を備える。
メインフレームは、前後方向へ略直線状に延びるサイドビーム31と、その前部から斜め上がりに前方へ延びる斜めビーム32、後部から斜め上がり後方へ延びる斜めビーム33並びにこれら斜めビームとサイドビーム31を連結して略垂直方向へ延びる補強メンバ34,35、さらにサイドビーム31と前側の斜めビーム32の各前端間に設けられるフロントバンパ部36、斜めビーム33の上端に支持されるシートレール部37等で構成される。
【0023】
サイドビーム31、斜めビーム32及び斜めビーム33は、車体フレーム1における必要な高剛性を維持するための主要骨格部をなし、比較的太い角パイプで構成されている。
これに対してフロントバンパ部36は、衝撃吸収用の部分であり、サイドビーム31に比べてより細径の丸パイプ部材で構成されている。シートレール部37も同様にサイドビーム31と比べてより細い部材を用いてあり、斜めビーム33前方のピラー部38と前方延出部39で側面視トラス形状をなしている。
【0024】
サブフレーム60はフロントバンパ部36とともに車体前部に加わる大荷重により変形して入力エネルギーをを吸収できるようにした部材である。
このようにサブフレーム60をメインフレームと別体にして着脱自在に構成すると、強度の高いメインフレームをサイズの大きな部材で一体に形成できるとともに、荷重負荷時の入力エネルギーを吸収できるサブフレーム60は比較的サイズの小さな部材で形成することができ、異なる機能を複合した車体フレーム1の構成が容易になる。
【0025】
図4はメインフレーム部分の平面図である。サイドビーム31、斜めビーム32及び斜めビーム33、シートレール37はそれぞれは左右一対で平行して配置され、左右の斜めビーム32前端部間は第1クロスメンバ41で連結され、左右のサイドビーム31間は前方から順に、第2クロスメンバ42、第3クロスメンバ43、第4クロスメンバ44で連結される。左右のシートレール37間も前後のクロスパイプ45a及び45で連結されている。
第2クロスメンバ42は中央部をセンタービーム46で分断され、各左右部分はそれぞれ中央側がセンタービーム46と溶接され、この溶接部分が前方へ出るとともに、サイドビーム31と溶接される側方端部が後方へ下がるよう後傾して設けられる。
【0026】
センタービーム46は、左右のサイドビーム31間にて車体中心線C上を第3クロスメンバ43から前方へ延出し、フロントバンパ部36の下部パイプ36cと接続する。下部パイプ36cは略V字状をなす左右一対の部材であり、センタービーム46の前端から前方へ外開き状に延びている。下部パイプ36cの前端は上下部パイプ36b(図3参照)を介して上部パイプ36aに接続している。これら下部パイプ36c、上下部パイプ36b及び上部パイプ36aは連続する一つのパイプ部材を折り曲げて形成され、それぞれ左右一対で設けられる。
【0027】
左右一対の上部パイプ36aは後方へ向かって外開き状に配置され、後端部は中間部が前方へ凸に曲がっている第1クロスメンバ41の左右両端部近傍へ溶接されている。左右の上部パイプ36a及び上下部パイプ36b間は上クロスパイプ36d及び下クロスパイプ36eで連結されている。第1クロスメンバ41はフロントバンパ部36の一部を構成している。
【0028】
第3クロスメンバ43と第4クロスメンバ44間は左右一対のパイプ部材47、47で連結され、第3クロスメンバ43、第4クロスメンバ44及び左右のパイプ部材47、47で囲まれた空間48を形成し、この中に燃料タンク13が収容して支持され、さらに燃料タンク13の上にFIユニット12及び燃料ポンプ14が配置される。この空間48内の燃料タンク13前方には、電装品であるバッテリ49が収容され、第3クロスメンバ43の中央部に支持されている。また、ピラー部38の上下方向中間部からアーム部38aが燃料タンク13の上方へ延出している。
【0029】
図5は、前輪操舵機構5の配置を示す車体前部の側面図である。前輪操舵機構5は、上ステアリングシャフト50、上ステアリングパイプ51、ジョイントシャフト52、下ステアリングパイプ53、下ステアリングシャフト54を備える。ジョイントシャフト52は軸方向両端でユニバーサルジョイント52aにより上ステアリングシャフト50及び下ステアリングシャフト54と連結し、各シャフトはユニバーサルジョイント52のジョイント軸52bにて自在に曲がることができる。
【0030】
上ステアリングシャフト50と下ステアリングシャフト54は略平行に後傾して上下に分離配置され、下ステアリングシャフト54の下端はタイロッド55に連結される。タイロッド55は下ステアリングシャフト54と左右の前輪2を結び、下ステアリングシャフト54の回動により、左右の前輪2を同方向へ回動させて操舵する。
【0031】
上ステアリングパイプ51と下ステアリングパイプ53は上下に分割してステアリングシャフトを支持する高剛性の筒状部材であり、上ステアリングパイプ51は上ステアリングシャフト50を回動自在に支持し、斜めビーム32の前端部近傍かつ上方に配置される。運転者Dの膝N前方となる位置でもある。
【0032】
下ステアリングパイプ53は下ステアリングシャフト54を回動自在に支持し、ステー56a,56bを介して、バンパーフレーム36のステー36f及び36gへ支持される。下ステアリングパイプ53はバンパーフレーム36で囲まれた空間内に位置することになる。上ステアリングパイプ51はサブフレーム60に支持される。
【0033】
サブフレーム60は、バンパーフレーム36よりもさらに細径のパイプ部材で構成され、バンパーフレーム36による衝撃吸収時において、一体になって衝撃を吸収するとともに、この変形時にバーハンドル20やルーフ22の位置をコントロールするための部材である。
サブフレーム60は側面視で上へ凸の略三角形状をなすアッパー部61と、下方へ湾曲するロアー部62と、ロアー部62から斜め上がりに後方へ延出するコントロールアーム部63を備え、コントロールアーム部63の後部には下部ブラケット64と65が設けられて、上ステアリングパイプ51の上下部分と連結されている。
【0034】
アッパー部61の頂部には、ブラケット66が設けられ、別のブラケット59を介してフロントピラー23を支持している。ブラケット59はミラー19の取付部でもある。67はアッパー部61の頂部に設けられるステーであり、インナーパネル18を支持する。
【0035】
図6はサブフレーム60とバンパーフレーム36を分解した状態で示す斜視図である。サブフレーム60は、フロント部70,トップ部71及びリヤ部72の各クロス部材を備える。フロント部70は中間部70aが後方へ湾曲し、左右方向両端部70bが角状に前方へ突出し、ここに溶接されたステー73にはボルト用の通し穴が設けられ、ここで第1クロスメンバ41上に設けられているステー75のウエルドナットへボルト止めされる。また中間部70aの中央からもステー74が前方へ延出し、その先端部が同様にステー75のウエルドナットへボルト止めされる。さらに両端部70bには左右のロアー部62の各前端部が溶接されている。
【0036】
リヤ部72の左右両端部は屈曲して前方へ斜め下がりに延びる取付腕部72bをなし、その先端に設けられた偏平部72cで斜めビーム32の上端部へボルト止めされる。これによりサブフレーム60は、前部をバンパーフレーム36の上部へ、後部を斜めビーム32の上部へ、それぞれボルト止めにより着脱自在に支持される。
【0037】
以下、サブフレーム60について詳細を説明する。図7はサブフレーム60の平面図、図8は背面図、図9は側面図である。
図7において、フロント部70における左右方向両端の取付部70bに設けられたステー73及びこれらの中間に設けられたステー74はそれぞれ第1クロスメンバ41へボルト76で締結される。
リヤ部72の左右両端部である取付腕部72bは、屈曲して前方へ斜め下がりに延びてその先端の扁平部72cが斜めビーム32の上端部側面へ重ねられ、ボルト76で取付けられている。
【0038】
トップ部71はアッパー部61の頂部に設けられ、ここからフロント部70へ向かって前下がりにアッパー前部77が左右一対で設けられ、それぞれ上端がトップ部71へ、下端がフロント部70へ溶接されている。また、トップ部71から後方へ左右一対でアッパー後部78が設けられ、やはり上端部がトップ部71へ、下端部がリヤ部72へそれぞれ溶接されている。
【0039】
左右一対をなすロアー部62は、前端部がフロント部70へ溶接され、各後端部はリヤ部72の中間部72aへ溶接されている。各ロアー部62の中間部にはコントロールアーム部63の前端部が溶接されている。コントロールアーム部63は略アーチ状をなしてアーチ部が後方へ延出する部材であり、その後端部とリヤ部72における中間部72aの中央部との間に下部ブラケット64が上下に掛け渡されて溶接されている。またコントロールアーム部63の後端部には別の上部ブラケット65が一端を溶接され、他端が上方へ突出して設けられている。
【0040】
フロント部70及びリヤ部72の各中間部70a及び72a、並びにトップ部71は略平行に配置され、左右のロアー部62は車体中心線Cと平行に前後方向へ略直線状に延びている。
左右のアッパー前部77は平面視(上面視)で前すぼまりの略ハの字状をなし、その前(下)端部は、ロアー部62の前部とともに、フロント部70の取付部70b近傍へ溶接されている。ステー73及び74はボルト76によって第1クロスメンバ41へ取付けられている。
【0041】
左右のアッパー後部78も、平面視(上面視)で前方へ向かって略ハの字状をなすがアッパー前部77よりも開きが大きくなっている。左右のアッパー後部78の前(上)端部がアッパー前部77の前(上)端部よりも外側にてトップ部71の軸方向端部へ溶接され、後端部側は後方へ向かって拡開して延びて中間部72aの軸方向端部における取付腕部72bとの屈曲部近傍へ溶接されている。
中間部72aのアッパー後部78及びロアー部62との連結部間には山形に後方へ突出するステー79が設けられ、インナーパネル18の凹みを規制するようになっている。
【0042】
コントロールアーム部63の後端部は平面視でリヤ部72より後方へ突出するよう設けられる。下部ブラケット64は上端側が後傾するよう後方傾斜状態でコントロールアーム部63の後端部と中間部72aの各中央部に連結支持される。下部ブラケット64には上ステアリングパイプ51の下部取付用通し穴64aが左右に設けられている。
コントロールアーム部63の後端部中央左寄り位置にステー65が上方へ突出して設けられ、ここにも上ステアリングパイプ51の上部取付用通し穴65aが設けられている。
【0043】
サブフレーム60の前部にはブラケット68が設けられ、ここに図示しないアクセルペダル及びブレーキペダルが支持される。69bはカプラーホルダである。
【0044】
図8はサブフレーム60の背面図であり、左右のアッパー前部77は、下端(前端)が車体中央側でコントロールアーム部63の両端部とほぼ重なる位置になるよう、上端(後端)は上方へ向かって外開き状に配置される。左右のアッパー後部78は、逆に下方へ向かって外開き状に配置される。上ステアリングパイプ51には上端部に上ブラケット56が設けられ、ここにウエルドナット56aが設けられている。下端部にも下ブラケット57が設けられ、ここにウエルドナット57aが設けられている。各ウエルドナット56a及び57aにはそれぞれ下部ブラケット64及び65の通し穴64a及び穴65a(図6)が重ねられ、ボルトにより締結されることにより、上ステアリングパイプ51がコントロールアーム部63及びリヤ部72へ支持される。69aはワイヤーケーブル支持用のクランプである。
【0045】
図9に示すように、ロアー部62は中間部が下方へ凸になるよう湾曲した曲線状に形成され、両端のフロント部70及びリヤ部72との連結点P1,P2に対して、ロアー部62の最も下方となる湾曲点P3は、中間部より前方側、すなわちP2よりもP1寄りに位置する。コントロールアーム部63の前端部はロアー部62に対して湾曲点P3より若干後方側にて溶接されている。
アッパー前部77とアッパー後部78はθなる挟み角(開き角)をなしている。この角度はサブフレーム60の変形時における変形しやすさに影響するが、任意に設定でき、本実施例では鋭角になっている。
【0046】
図10は上ステアリングパイプ51部分の軸方向断面図である。上ステアリングパイプ51は軸方向端部である上下端部でボールベアリング58により、上ステアリングシャフト50が回動自在に支持されている。
上ブラケット56は上ステアリングパイプ51の上端から上方へ張り出して設けられ、下部が上ステアリングパイプ51の上端部側面へ溶接され、その下部内側にウエルドナット56aが溶接されている。
下ブラケット57は略コ字状断面をなして上ステアリングパイプ51の下端部側面へ溶接され、内側にウエルドナット57aが溶接されている。
【0047】
次に、本実施例の作用を説明する。図5において、バーハンドル20を握った状態で前方からバンパーフレーム36へ正面から大荷重Fが加わると、車体フレーム1のうち、剛性の高いサイドビーム31及び斜めビーム32等が変形を生じる前に、比較的細径のパイプからなる衝撃吸収構造のバンパーフレーム36及びやはり細径の第1クロスメンバ41が変形を始める。
【0048】
すると、本願の左右方向フレームに相当する第1クロスメンバ41に前側を支持されているサブフレーム60は、バンパーフレーム36よりもさらに細径のパイプからなり、より変形しやすい構造になっているので、バンパーフレーム36と同時に変形を開始する。
この変形は、サブフレーム60が後部側の取付腕部72bにて高剛性の斜めビーム32へ支持されているから、リヤ部72を変形基点とし、これに向かって前方側のフロント部70が近づくように変形し、アッパー部61、ロアー部62及びコントロールアーム部63等が仮想線のように変形する。
なお、サブフレーム60は本願の介在部材に相当し、アッパー部61は本願のトラス状フレームに相当する。
【0049】
図11はこの変形を原理的に示す模式図であり、Aに変形前の状態、Bに変形後の状態を示す。まずAにおいて大荷重Fによってフロント70が後方へ押され、リヤ部72は不動で変形の基点をなすため、図中に矢示するようにアッパー部61が開き角θを閉じるよう、アッパー前部77側が下端部側を後方へ回動しようとし、かつリヤ部72側からも反力が加わるため、ロアー部62は湾曲点P3近傍部にてさらに下方へ凸に曲がろうとする。ロアー部62では湾曲点P3が中間部より前寄りに位置し、かつコントロールアーム部63の接続点よりも前方で比較的剛性が低く曲がりやすい状態にあるので、この湾曲点P3を下方へ突出するように変形させながら、前側の点P1が後側の点P2へ接近する。
【0050】
このとき、湾曲点P3の沈み込みに伴って、コントロールアーム部63を下方へ引っ張り込み、後端を下部ブラケット64及び65と一緒に斜め前下方へ引っ張っる。同時にロアー部62の湾曲点P3より後方側は、コントロールアーム部63の補強により剛性が高くなっているため、曲がり変形せずにコントロールアーム部63と一体になって変形しようとする。
【0051】
しかし、ロアー部62の後端部及び下部ブラケット64の下端部が結合されているリヤ部72は、斜めビーム32に支持されて変形の基点となっているため、ロアー部62の湾曲点P3より後方部分及びコントロールアーム部63は、リヤ部72の軸心線を中心に反時計回り方向へ回動し、その結果、下部ブラケット64及び上部ブラケット65は次第に起立するようになり、やがてBに示す状態となる。点P2は基点として固定されているため、変形前後で同じ位置にあり、トップ部71の高さも後述するようにあまり変化しない。点P1とP3が下方及び後方へ大きく移動している。
【0052】
このとき下部ブラケット64は上下をコントロールアーム部63とリヤ部72へ溶接されているため、この溶接部で曲がり易くなるので、下部ブラケット64をコントロールアーム部63やリヤ部72同様のパイプ部材で構成したときよりもスムーズかつ確実な変形を生じる。
【0053】
また、ロアー部62は湾曲点P3が前方寄りに位置するため、前部側を湾曲点P3が下方移動するよう確実に変形させることができ、湾曲点P3より後方部分側の起立を確実にする。しかもロアー部62は湾曲形状のため、湾曲点P3における急激な変形でなく、全体を変形させるように力が加わるから、湾曲点P3を下方へ移動させつつも、後方へも移動しようとしてリヤ部72との連結点P2を捩るように力が働くから、この点でも下部ブラケット64の起立動作を大きくすることができる。
【0054】
このため、図5に示すように、下部ブラケット64及び上部ブラケット65に取付けられている上ステアリングパイプ51も一体に起立し、これに伴って上ステアリングシャフト50及びこれと一体化されているバーハンドル20は共に前方へ移動する。しかも、上ステアリングパイプ51が支持する上ステアリングシャフト50はジョイントシャフト52と上側のユニバーサルジョイント52aにおいてジョイント軸52bで連結され、このジョイント軸52bを中心に軸回りに回動できるから、上ステアリングシャフト50はスムーズに上ステアリングパイプ51と共に起立方向へ回動できる。
【0055】
この結果、上ステアリングパイプ51へ回動自在に支持されている上ステアリングシャフト50は、上ステアリングパイプ51とともに前方へ傾くようになるから、上ステアリングシャフト50を下方へ移動させるだけでなく、前方へ傾けるように誘導させることが可能となる。
また、上ステアリングパイプ51及び上ステアリングシャフト50は、左右一対で設けられたトップ部61、ロアー部62及びコントロールアーム部63の各中央部に配置されるので、変形時に上ステアリングパイプ51及び上ステアリングシャフト50が車両前後方向ではなく左右方向に傾くことを防ぐことが可能となり、上ステアリングシャフト50をより正確に前方へ誘導することが可能となる。
【0056】
さらに、ジョイントシャフト52はユニバーサルジョイント52aで上ステアリングシャフト50と連結し、このジョイントシャフト52と下ステアリングパイプ53もユニバーサルジョイント52aで連結しているから、これらのジョイントシャフト52及び下ステアリングパイプ53は上ステアリングパイプ51及び上ステアリングシャフト50が回動して取付姿勢が変化してもその影響をほとんど受けず、これまでの状態を維持する。
【0057】
また、長さ方向へ3分割されたステアリングシャフトのうち、最上部のバーハンドル20側となるステアリングシャフト50を他の分割シャフト部分であるジョイントシャフト52や下ステアリングシャフト54よりも最も立てて、すなわちこれら他の部分よりも最も前方側へ傾けて配置することにより、バーハンドル20をつかんだ状態で前方から荷重を受けた際、下部支持部材であるロアー部62に対して大きな曲げモーメントを作用させることが可能となる。また、下方のジョイントシャフト52や下ステアリングシャフト54よりも前方へ傾いているため、変形の際にバーハンドル20を前方へ傾き易くすることができる。
しかも、ハンドルがバーハンドル20であるため、前方からの荷重を受けた際、バーハンドル20をつかんだ状態を保持しやすく、バーハンドル20を前方へ傾けやすくなる。
【0058】
一方、アッパー部61においては、再び図11において、前側の点P1が後側の点P2へ接近するように変形する。このとき、アッパー前部77は前方へ向かって略ハの字状をなし、アッパー前部77の各前端部間における比較的狭いフロント部70へ大荷重Fが加わるから(図7参照)、アッパー前部77はリヤ部72を中心に、容易にアッパー後部78側へ移動し、開き角をθ1からθ2(θ1>θ2)へ縮小し、フロント部70は比較的たやすく後方へ移動できる。
【0059】
一方、アッパー後部78は前すぼまりの略ハの字状をなしてトップ部71の左右両端部を後方から支持し、この支持部近傍へアッパー前部77の後端部から力が加わるので、トップ部71の後方移動に対して突っ張る状態となるから(図7参照)、トップ部71の後方移動よりもアッパー前部77の前記開き角を縮小する変形の方が大きくなる。
また、アッパー前部77とアッパー後部78間における開き角を縮小する変形において、アッパー前部77とアッパー後部78の各下端部の高さが一定であれば、トップ部71が上方へ移動しなければならない。
【0060】
しかし、ロアー部62の前端部におけるフロント部70と連結する点P1は下方へ移動し易くなり、しかも前記湾曲点P3の沈み込みによっても、点P1が確実に下方へ移動するから、開き角θが縮小することに伴う変化は、アッパー前部77の下端部がトップ部71を中心に反時計回りに回動し、点P1と共に下方へ移動することになり、トップ部71の高さ変化はほとんど生じず、同じ高さを維持したまま、開き角θを縮小させるような変形を許容することになる。そのうえ、大荷重Fの一部は、ロアー部62及びコントロールアーム部63によってリヤ部72を捩る方向の力になるから、この捩りによってもブラケット66が下がるようにアッパー部61を回動させることができるようになり、ブラケット66の上昇を抑えることができる。
【0061】
その結果、図5に示すようにトップ部71の高さがあまり変化せず、ルーフ22の下降を防ぐことができる。すなわち、サブフレーム60により大荷重Fを受けてバンパーフレーム36が変形するとき、サブフレーム60はバーハンドル20を前方へ移動させ、かつルーフ22を高い位置に保つよう、上ステアリングパイプ51の取付姿勢及びブラケット66によるルーフ22の支持位置をコントロールできることにより、ルーフ22の乗員方向への変形を少なくすることができ、運転者Dの前方における車室内空間S(乗員空間)を十分に大きく保つことが可能になる。
【0062】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、ロアー部62を湾曲形状とせず、アッパー部61と同様に略V字形の屈曲構造としてもよい。この場合はサブフレーム60の変形をより大きくすることができる。
また、下部ブラケット64及び65は必ず設けなければなないものではなく、ロアー部62の後端を直接上ステアリングパイプ51の下部へ連結し、コントロールアーム部63の後端を直接上ステアリングパイプ51の上部へ連結してもよい。さらに、ハンドルは円形のもの等、バーハンドル20以外の形状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例に係る自動4輪車の側面図
【図2】車室内部を見せた平面図
【図3】車体フレームの側面図
【図4】同平面図
【図5】車体前部の斜視図
【図6】車体前部の側面図
【図7】サブフレームの平面図
【図8】サブフレームの背面図
【図9】サブフレームの側面図
【図10】上ステアリングパイプの断面図
【図11】作用説明図
【符号の説明】
【0064】
1:車体フレーム、5:前輪操舵機構、20:バーハンドル、22:ルーフ、31:サイドビーム、32:斜めビーム、36:バンパーフレーム、50:上ステアリングシャフト、51:上ステアリングパイプ、60:サブフレーム、61:アッパー部、62:ロアー部、63:コントロールアーム部、64:ブラケット(上ステアリングパイプの下部支持用)、65:ブラケット(上ステアリングパイプの上部支持用)、66:ブラケット(ルーフ支持用)、70:フロント部、71:トップ部、72:リヤ部
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のフレーム構造に係り、特に車体前部へ大荷重が加わって変形するとき、ステアリングシャフトを前方へ傾くように誘導できるようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根付き車両における屋根の支持構造として、車体前部に前支柱を立ててフロントカウルと屋根の前ピラーを支持させる車体フレーム構造が知られている。
【特許文献1】特開2006−26303
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来例の構造では、前方から過大な入力が印加された場合、屋根支持部が傾き、ルーフが変形することが想定される。このため、屋根付き車両において、車両前方へ過大な入力が加わったとき、フレームの変形によってエネルギーを逃がしながら、かつ屋根の乗員空間方向への変形を少なくすることが望まれている。本願はこのような要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため車両のフレーム構造に係る請求項1の発明は、前輪及び後輪を前後に支持する車体フレームの前部に左右へ架け渡された左右方向フレームを設け、車室上方をルーフで覆った車両のフレーム構造において、
前記左右方向フレームに前端部が取付けられ、後端部が前端部とほぼ同じ高さで前記車体フレームへ取付けられるとともに側面視で上方へ凸形状をなすトラス状フレームを設け、
このトラス状フレームの凸部に前記ルーフの前端部を支持したことを特徴とする。
【0005】
請求項2の発明は上記請求項1において、前記トラス状フレームを前記左右方向フレームへ連結する介在部材を備え、この介在部材には左右方向へ延びるフロント部と前後方向へ延びるロアー部とを備え、
前記フロント部は前記左右方向フレームへ支持されかつ前記トラス状フレームの前端部を支持し、
前記ロアー部は中間部前側に下方へ凸に曲がる屈曲部を設け、前端を前記フロント部へ結合し、後端部を前記トラス状フレームの後端部に結合したことを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明は上記請求項1において、前記トラス状フレームが左右一対で設けられ、上面視で略ハの字をなしていることを特徴とする。
【0007】
請求項4の発明は上記請求項1において、ハンドルと、このハンドルの回動軸であるステアリングシャフトと、このステアリングシャフトを回動自在に支持するステアリングパイプとからなるステアリング装置を備え、前記ロアー部で前記ステアリングパイプの下部を支持したことを特徴とする。
【0008】
請求項5の発明は上記請求項1において、前記車体フレームは主要部であるメインフレームと、このメインフレームに対して別体で着脱自在なサブフレームとを備え、
前記左右方向フレームは前記メインフレームの一部であり、
前記ロアー部とトラス状フレームは前記メインフレームと別体のサブフレームであり、このサブフレームは前記メインフレームにボルトで締結されることを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、車体前部へ前方から過大な荷重が加わると、トラス状フレームの開き角が狭くなるように変形するため、側面視で常に三角の頂点を下がらないようにして屋根の乗員空間方向への変形を少なくすることが可能となる。
【0010】
請求項2の発明によれば、屈曲部を有するロアー部が屈曲部でさらに下方へ凸に曲がるよう変形されるので、入力エネルギーを効果的に吸収することができる。また、屈曲部が中間部前側に設けられているので、ロアー部は前側が比較的下に沈むようになる。一方、トラス状フレームの凸部は開き角が狭まると上に上がろうとするため、結果的にルーフ支持部の高さを一定に保つことが可能となる。
【0011】
請求項3の発明によれば、トラス状フレームが上面視でハの字状になっているため、トラス状フレームの受ける荷重の一部がトラス状フレームを凸部が下がる方向へ捩るものになり、この捩りによりトラス状フレームが上に上がるのを抑えることが可能となる。
【0012】
請求項4の発明によれば、ハンドルをバーハンドルとしたので、前方からの荷重を受けた際、ハンドルをつかんだ状態を保持しやすく、介在部材の変形を正確になるよう誘導できる。
【0013】
請求項5の発明によれば、サブフレームをメインフレームと別体に構成したので、強度の高いメインフレームをサイズの大きな部材で一体に形成できるとともに、荷重負荷時の入力エネルギーを吸収できるサブフレームは比較的サイズの小さな部材で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。なお、以下において、上下及び前後は図1の図示状態、左右は図2の図示状態をそれぞれ基準とする。
【0015】
図1は本願に係る小型自動4輪車の側面図である。この車両は、車体フレーム1の前後に前輪2及び後輪3を備え、車体中央に設けられた運転者D用のフロントシート4前方に前輪操舵機構5を備える。フロントシート4は座部からなり、物入れ4a上に支持され、前端をヒンジ4bにて回動自在に取付けられており、フロントシート4を開くと、物入れ4aの開口が開かれて物品を出入可能である。物入れ4aはヘルメット等の大型物品を収容できる程度に大容量である。
【0016】
フロントシート4の後方には別体で構成されたバックレスト6がフロアパネルから隆起する台座部7上に支持され前後方向へスライド自在になっている。
バックレスト6から後方にセンターグリップ8が延出し、同乗者Pが着座時及び乗降時に握れるようになっている。
バックレスト6の後方には、サイドグリップ9及びリヤシート10が設けられている。
【0017】
リヤシート10の座部下方にはパワーユニット11が設けられ、このパワーユニット11により後輪3を駆動する。
パワーユニット11は図示省略のリンクにより車体フレーム1へ揺動自在に支持され、燃料噴射(FI)式である。12はFIユニット、13は燃料タンクで物入れ7の後方に配置される。14は燃料ポンプ、15はエアクリーナである。
【0018】
車体の前部はフロントカバー16で覆われ、その一部はフロントフェンダをなし、前輪2の前側から後側までを覆う。車室内前部はインナーパネル18で覆われ、その側部は運転者Dの脚部L側方を覆う。19はミラー、20はバーハンドルである。バーハンドル20は前輪操舵機構5の一部を構成するとともにインナーパネル18の上方にて後方の運転者Dにより操舵される。車室内空間Sの前部はウインドスクリーン21、上部はルーフ22で覆われる。ルーフ22の前部は後傾したフロントピラー23で支持され、このフロントピラー23にはウインドスクリーン21も支持される。ルーフ22の後部はほぼ直立したリヤピラー24で支持される。フロントピラー23及びリヤピラー24の各下端部は車体フレーム1側へ支持されている。
【0019】
図中の符号13aはタンクカバー、12aはFIカバー、25は前輪マッドガード、26はチェンジペダル、27はチェンジケーブル、28はアームレスト、29はリヤカバーである。リヤカバー29の一部はリヤフェンダ29aをなして、後輪3の前側及び上側から後側を覆う。
【0020】
図2は車両の平面図(ウインドスクリーン21及びルーフ22を省略)である。前輪2及び後輪3はそれぞれ左右一対で設けられる。リヤシート10は左右へ2人並んで着座できる大きさであり、リヤシート10の乗員はそれぞれ足をフロントシート4の側方におけるフロアパネル30の上へ出すことができる。前輪操舵機構5及びフロントシート4は車体中心線Cの上に配置され、バーハンドル20は左右方向へ延びて運転者Dの両手で操作される。フロントシート4はフロアパネル30の略中央に位置する。
【0021】
サイドグリップ9はセンターグリップ8の左右に設けられ、同乗者Pの前方左右方向へ横切り、着座時に同乗者Pが握れるようになっている。このサイドグリップ9は、一端をアームレスト28へ回動自在に支持され、乗降時にはアームレスト28との連結軸を中心に車体内側の他端を上方へ跳ね上げるように回動させることができる(図1参照)。
【0022】
図3は車体フレーム1の側面図である。この車体フレーム1は、メインフレームと、これに対して別体に構成されて着脱自在なサブフレーム60を備える。
メインフレームは、前後方向へ略直線状に延びるサイドビーム31と、その前部から斜め上がりに前方へ延びる斜めビーム32、後部から斜め上がり後方へ延びる斜めビーム33並びにこれら斜めビームとサイドビーム31を連結して略垂直方向へ延びる補強メンバ34,35、さらにサイドビーム31と前側の斜めビーム32の各前端間に設けられるフロントバンパ部36、斜めビーム33の上端に支持されるシートレール部37等で構成される。
【0023】
サイドビーム31、斜めビーム32及び斜めビーム33は、車体フレーム1における必要な高剛性を維持するための主要骨格部をなし、比較的太い角パイプで構成されている。
これに対してフロントバンパ部36は、衝撃吸収用の部分であり、サイドビーム31に比べてより細径の丸パイプ部材で構成されている。シートレール部37も同様にサイドビーム31と比べてより細い部材を用いてあり、斜めビーム33前方のピラー部38と前方延出部39で側面視トラス形状をなしている。
【0024】
サブフレーム60はフロントバンパ部36とともに車体前部に加わる大荷重により変形して入力エネルギーをを吸収できるようにした部材である。
このようにサブフレーム60をメインフレームと別体にして着脱自在に構成すると、強度の高いメインフレームをサイズの大きな部材で一体に形成できるとともに、荷重負荷時の入力エネルギーを吸収できるサブフレーム60は比較的サイズの小さな部材で形成することができ、異なる機能を複合した車体フレーム1の構成が容易になる。
【0025】
図4はメインフレーム部分の平面図である。サイドビーム31、斜めビーム32及び斜めビーム33、シートレール37はそれぞれは左右一対で平行して配置され、左右の斜めビーム32前端部間は第1クロスメンバ41で連結され、左右のサイドビーム31間は前方から順に、第2クロスメンバ42、第3クロスメンバ43、第4クロスメンバ44で連結される。左右のシートレール37間も前後のクロスパイプ45a及び45で連結されている。
第2クロスメンバ42は中央部をセンタービーム46で分断され、各左右部分はそれぞれ中央側がセンタービーム46と溶接され、この溶接部分が前方へ出るとともに、サイドビーム31と溶接される側方端部が後方へ下がるよう後傾して設けられる。
【0026】
センタービーム46は、左右のサイドビーム31間にて車体中心線C上を第3クロスメンバ43から前方へ延出し、フロントバンパ部36の下部パイプ36cと接続する。下部パイプ36cは略V字状をなす左右一対の部材であり、センタービーム46の前端から前方へ外開き状に延びている。下部パイプ36cの前端は上下部パイプ36b(図3参照)を介して上部パイプ36aに接続している。これら下部パイプ36c、上下部パイプ36b及び上部パイプ36aは連続する一つのパイプ部材を折り曲げて形成され、それぞれ左右一対で設けられる。
【0027】
左右一対の上部パイプ36aは後方へ向かって外開き状に配置され、後端部は中間部が前方へ凸に曲がっている第1クロスメンバ41の左右両端部近傍へ溶接されている。左右の上部パイプ36a及び上下部パイプ36b間は上クロスパイプ36d及び下クロスパイプ36eで連結されている。第1クロスメンバ41はフロントバンパ部36の一部を構成している。
【0028】
第3クロスメンバ43と第4クロスメンバ44間は左右一対のパイプ部材47、47で連結され、第3クロスメンバ43、第4クロスメンバ44及び左右のパイプ部材47、47で囲まれた空間48を形成し、この中に燃料タンク13が収容して支持され、さらに燃料タンク13の上にFIユニット12及び燃料ポンプ14が配置される。この空間48内の燃料タンク13前方には、電装品であるバッテリ49が収容され、第3クロスメンバ43の中央部に支持されている。また、ピラー部38の上下方向中間部からアーム部38aが燃料タンク13の上方へ延出している。
【0029】
図5は、前輪操舵機構5の配置を示す車体前部の側面図である。前輪操舵機構5は、上ステアリングシャフト50、上ステアリングパイプ51、ジョイントシャフト52、下ステアリングパイプ53、下ステアリングシャフト54を備える。ジョイントシャフト52は軸方向両端でユニバーサルジョイント52aにより上ステアリングシャフト50及び下ステアリングシャフト54と連結し、各シャフトはユニバーサルジョイント52のジョイント軸52bにて自在に曲がることができる。
【0030】
上ステアリングシャフト50と下ステアリングシャフト54は略平行に後傾して上下に分離配置され、下ステアリングシャフト54の下端はタイロッド55に連結される。タイロッド55は下ステアリングシャフト54と左右の前輪2を結び、下ステアリングシャフト54の回動により、左右の前輪2を同方向へ回動させて操舵する。
【0031】
上ステアリングパイプ51と下ステアリングパイプ53は上下に分割してステアリングシャフトを支持する高剛性の筒状部材であり、上ステアリングパイプ51は上ステアリングシャフト50を回動自在に支持し、斜めビーム32の前端部近傍かつ上方に配置される。運転者Dの膝N前方となる位置でもある。
【0032】
下ステアリングパイプ53は下ステアリングシャフト54を回動自在に支持し、ステー56a,56bを介して、バンパーフレーム36のステー36f及び36gへ支持される。下ステアリングパイプ53はバンパーフレーム36で囲まれた空間内に位置することになる。上ステアリングパイプ51はサブフレーム60に支持される。
【0033】
サブフレーム60は、バンパーフレーム36よりもさらに細径のパイプ部材で構成され、バンパーフレーム36による衝撃吸収時において、一体になって衝撃を吸収するとともに、この変形時にバーハンドル20やルーフ22の位置をコントロールするための部材である。
サブフレーム60は側面視で上へ凸の略三角形状をなすアッパー部61と、下方へ湾曲するロアー部62と、ロアー部62から斜め上がりに後方へ延出するコントロールアーム部63を備え、コントロールアーム部63の後部には下部ブラケット64と65が設けられて、上ステアリングパイプ51の上下部分と連結されている。
【0034】
アッパー部61の頂部には、ブラケット66が設けられ、別のブラケット59を介してフロントピラー23を支持している。ブラケット59はミラー19の取付部でもある。67はアッパー部61の頂部に設けられるステーであり、インナーパネル18を支持する。
【0035】
図6はサブフレーム60とバンパーフレーム36を分解した状態で示す斜視図である。サブフレーム60は、フロント部70,トップ部71及びリヤ部72の各クロス部材を備える。フロント部70は中間部70aが後方へ湾曲し、左右方向両端部70bが角状に前方へ突出し、ここに溶接されたステー73にはボルト用の通し穴が設けられ、ここで第1クロスメンバ41上に設けられているステー75のウエルドナットへボルト止めされる。また中間部70aの中央からもステー74が前方へ延出し、その先端部が同様にステー75のウエルドナットへボルト止めされる。さらに両端部70bには左右のロアー部62の各前端部が溶接されている。
【0036】
リヤ部72の左右両端部は屈曲して前方へ斜め下がりに延びる取付腕部72bをなし、その先端に設けられた偏平部72cで斜めビーム32の上端部へボルト止めされる。これによりサブフレーム60は、前部をバンパーフレーム36の上部へ、後部を斜めビーム32の上部へ、それぞれボルト止めにより着脱自在に支持される。
【0037】
以下、サブフレーム60について詳細を説明する。図7はサブフレーム60の平面図、図8は背面図、図9は側面図である。
図7において、フロント部70における左右方向両端の取付部70bに設けられたステー73及びこれらの中間に設けられたステー74はそれぞれ第1クロスメンバ41へボルト76で締結される。
リヤ部72の左右両端部である取付腕部72bは、屈曲して前方へ斜め下がりに延びてその先端の扁平部72cが斜めビーム32の上端部側面へ重ねられ、ボルト76で取付けられている。
【0038】
トップ部71はアッパー部61の頂部に設けられ、ここからフロント部70へ向かって前下がりにアッパー前部77が左右一対で設けられ、それぞれ上端がトップ部71へ、下端がフロント部70へ溶接されている。また、トップ部71から後方へ左右一対でアッパー後部78が設けられ、やはり上端部がトップ部71へ、下端部がリヤ部72へそれぞれ溶接されている。
【0039】
左右一対をなすロアー部62は、前端部がフロント部70へ溶接され、各後端部はリヤ部72の中間部72aへ溶接されている。各ロアー部62の中間部にはコントロールアーム部63の前端部が溶接されている。コントロールアーム部63は略アーチ状をなしてアーチ部が後方へ延出する部材であり、その後端部とリヤ部72における中間部72aの中央部との間に下部ブラケット64が上下に掛け渡されて溶接されている。またコントロールアーム部63の後端部には別の上部ブラケット65が一端を溶接され、他端が上方へ突出して設けられている。
【0040】
フロント部70及びリヤ部72の各中間部70a及び72a、並びにトップ部71は略平行に配置され、左右のロアー部62は車体中心線Cと平行に前後方向へ略直線状に延びている。
左右のアッパー前部77は平面視(上面視)で前すぼまりの略ハの字状をなし、その前(下)端部は、ロアー部62の前部とともに、フロント部70の取付部70b近傍へ溶接されている。ステー73及び74はボルト76によって第1クロスメンバ41へ取付けられている。
【0041】
左右のアッパー後部78も、平面視(上面視)で前方へ向かって略ハの字状をなすがアッパー前部77よりも開きが大きくなっている。左右のアッパー後部78の前(上)端部がアッパー前部77の前(上)端部よりも外側にてトップ部71の軸方向端部へ溶接され、後端部側は後方へ向かって拡開して延びて中間部72aの軸方向端部における取付腕部72bとの屈曲部近傍へ溶接されている。
中間部72aのアッパー後部78及びロアー部62との連結部間には山形に後方へ突出するステー79が設けられ、インナーパネル18の凹みを規制するようになっている。
【0042】
コントロールアーム部63の後端部は平面視でリヤ部72より後方へ突出するよう設けられる。下部ブラケット64は上端側が後傾するよう後方傾斜状態でコントロールアーム部63の後端部と中間部72aの各中央部に連結支持される。下部ブラケット64には上ステアリングパイプ51の下部取付用通し穴64aが左右に設けられている。
コントロールアーム部63の後端部中央左寄り位置にステー65が上方へ突出して設けられ、ここにも上ステアリングパイプ51の上部取付用通し穴65aが設けられている。
【0043】
サブフレーム60の前部にはブラケット68が設けられ、ここに図示しないアクセルペダル及びブレーキペダルが支持される。69bはカプラーホルダである。
【0044】
図8はサブフレーム60の背面図であり、左右のアッパー前部77は、下端(前端)が車体中央側でコントロールアーム部63の両端部とほぼ重なる位置になるよう、上端(後端)は上方へ向かって外開き状に配置される。左右のアッパー後部78は、逆に下方へ向かって外開き状に配置される。上ステアリングパイプ51には上端部に上ブラケット56が設けられ、ここにウエルドナット56aが設けられている。下端部にも下ブラケット57が設けられ、ここにウエルドナット57aが設けられている。各ウエルドナット56a及び57aにはそれぞれ下部ブラケット64及び65の通し穴64a及び穴65a(図6)が重ねられ、ボルトにより締結されることにより、上ステアリングパイプ51がコントロールアーム部63及びリヤ部72へ支持される。69aはワイヤーケーブル支持用のクランプである。
【0045】
図9に示すように、ロアー部62は中間部が下方へ凸になるよう湾曲した曲線状に形成され、両端のフロント部70及びリヤ部72との連結点P1,P2に対して、ロアー部62の最も下方となる湾曲点P3は、中間部より前方側、すなわちP2よりもP1寄りに位置する。コントロールアーム部63の前端部はロアー部62に対して湾曲点P3より若干後方側にて溶接されている。
アッパー前部77とアッパー後部78はθなる挟み角(開き角)をなしている。この角度はサブフレーム60の変形時における変形しやすさに影響するが、任意に設定でき、本実施例では鋭角になっている。
【0046】
図10は上ステアリングパイプ51部分の軸方向断面図である。上ステアリングパイプ51は軸方向端部である上下端部でボールベアリング58により、上ステアリングシャフト50が回動自在に支持されている。
上ブラケット56は上ステアリングパイプ51の上端から上方へ張り出して設けられ、下部が上ステアリングパイプ51の上端部側面へ溶接され、その下部内側にウエルドナット56aが溶接されている。
下ブラケット57は略コ字状断面をなして上ステアリングパイプ51の下端部側面へ溶接され、内側にウエルドナット57aが溶接されている。
【0047】
次に、本実施例の作用を説明する。図5において、バーハンドル20を握った状態で前方からバンパーフレーム36へ正面から大荷重Fが加わると、車体フレーム1のうち、剛性の高いサイドビーム31及び斜めビーム32等が変形を生じる前に、比較的細径のパイプからなる衝撃吸収構造のバンパーフレーム36及びやはり細径の第1クロスメンバ41が変形を始める。
【0048】
すると、本願の左右方向フレームに相当する第1クロスメンバ41に前側を支持されているサブフレーム60は、バンパーフレーム36よりもさらに細径のパイプからなり、より変形しやすい構造になっているので、バンパーフレーム36と同時に変形を開始する。
この変形は、サブフレーム60が後部側の取付腕部72bにて高剛性の斜めビーム32へ支持されているから、リヤ部72を変形基点とし、これに向かって前方側のフロント部70が近づくように変形し、アッパー部61、ロアー部62及びコントロールアーム部63等が仮想線のように変形する。
なお、サブフレーム60は本願の介在部材に相当し、アッパー部61は本願のトラス状フレームに相当する。
【0049】
図11はこの変形を原理的に示す模式図であり、Aに変形前の状態、Bに変形後の状態を示す。まずAにおいて大荷重Fによってフロント70が後方へ押され、リヤ部72は不動で変形の基点をなすため、図中に矢示するようにアッパー部61が開き角θを閉じるよう、アッパー前部77側が下端部側を後方へ回動しようとし、かつリヤ部72側からも反力が加わるため、ロアー部62は湾曲点P3近傍部にてさらに下方へ凸に曲がろうとする。ロアー部62では湾曲点P3が中間部より前寄りに位置し、かつコントロールアーム部63の接続点よりも前方で比較的剛性が低く曲がりやすい状態にあるので、この湾曲点P3を下方へ突出するように変形させながら、前側の点P1が後側の点P2へ接近する。
【0050】
このとき、湾曲点P3の沈み込みに伴って、コントロールアーム部63を下方へ引っ張り込み、後端を下部ブラケット64及び65と一緒に斜め前下方へ引っ張っる。同時にロアー部62の湾曲点P3より後方側は、コントロールアーム部63の補強により剛性が高くなっているため、曲がり変形せずにコントロールアーム部63と一体になって変形しようとする。
【0051】
しかし、ロアー部62の後端部及び下部ブラケット64の下端部が結合されているリヤ部72は、斜めビーム32に支持されて変形の基点となっているため、ロアー部62の湾曲点P3より後方部分及びコントロールアーム部63は、リヤ部72の軸心線を中心に反時計回り方向へ回動し、その結果、下部ブラケット64及び上部ブラケット65は次第に起立するようになり、やがてBに示す状態となる。点P2は基点として固定されているため、変形前後で同じ位置にあり、トップ部71の高さも後述するようにあまり変化しない。点P1とP3が下方及び後方へ大きく移動している。
【0052】
このとき下部ブラケット64は上下をコントロールアーム部63とリヤ部72へ溶接されているため、この溶接部で曲がり易くなるので、下部ブラケット64をコントロールアーム部63やリヤ部72同様のパイプ部材で構成したときよりもスムーズかつ確実な変形を生じる。
【0053】
また、ロアー部62は湾曲点P3が前方寄りに位置するため、前部側を湾曲点P3が下方移動するよう確実に変形させることができ、湾曲点P3より後方部分側の起立を確実にする。しかもロアー部62は湾曲形状のため、湾曲点P3における急激な変形でなく、全体を変形させるように力が加わるから、湾曲点P3を下方へ移動させつつも、後方へも移動しようとしてリヤ部72との連結点P2を捩るように力が働くから、この点でも下部ブラケット64の起立動作を大きくすることができる。
【0054】
このため、図5に示すように、下部ブラケット64及び上部ブラケット65に取付けられている上ステアリングパイプ51も一体に起立し、これに伴って上ステアリングシャフト50及びこれと一体化されているバーハンドル20は共に前方へ移動する。しかも、上ステアリングパイプ51が支持する上ステアリングシャフト50はジョイントシャフト52と上側のユニバーサルジョイント52aにおいてジョイント軸52bで連結され、このジョイント軸52bを中心に軸回りに回動できるから、上ステアリングシャフト50はスムーズに上ステアリングパイプ51と共に起立方向へ回動できる。
【0055】
この結果、上ステアリングパイプ51へ回動自在に支持されている上ステアリングシャフト50は、上ステアリングパイプ51とともに前方へ傾くようになるから、上ステアリングシャフト50を下方へ移動させるだけでなく、前方へ傾けるように誘導させることが可能となる。
また、上ステアリングパイプ51及び上ステアリングシャフト50は、左右一対で設けられたトップ部61、ロアー部62及びコントロールアーム部63の各中央部に配置されるので、変形時に上ステアリングパイプ51及び上ステアリングシャフト50が車両前後方向ではなく左右方向に傾くことを防ぐことが可能となり、上ステアリングシャフト50をより正確に前方へ誘導することが可能となる。
【0056】
さらに、ジョイントシャフト52はユニバーサルジョイント52aで上ステアリングシャフト50と連結し、このジョイントシャフト52と下ステアリングパイプ53もユニバーサルジョイント52aで連結しているから、これらのジョイントシャフト52及び下ステアリングパイプ53は上ステアリングパイプ51及び上ステアリングシャフト50が回動して取付姿勢が変化してもその影響をほとんど受けず、これまでの状態を維持する。
【0057】
また、長さ方向へ3分割されたステアリングシャフトのうち、最上部のバーハンドル20側となるステアリングシャフト50を他の分割シャフト部分であるジョイントシャフト52や下ステアリングシャフト54よりも最も立てて、すなわちこれら他の部分よりも最も前方側へ傾けて配置することにより、バーハンドル20をつかんだ状態で前方から荷重を受けた際、下部支持部材であるロアー部62に対して大きな曲げモーメントを作用させることが可能となる。また、下方のジョイントシャフト52や下ステアリングシャフト54よりも前方へ傾いているため、変形の際にバーハンドル20を前方へ傾き易くすることができる。
しかも、ハンドルがバーハンドル20であるため、前方からの荷重を受けた際、バーハンドル20をつかんだ状態を保持しやすく、バーハンドル20を前方へ傾けやすくなる。
【0058】
一方、アッパー部61においては、再び図11において、前側の点P1が後側の点P2へ接近するように変形する。このとき、アッパー前部77は前方へ向かって略ハの字状をなし、アッパー前部77の各前端部間における比較的狭いフロント部70へ大荷重Fが加わるから(図7参照)、アッパー前部77はリヤ部72を中心に、容易にアッパー後部78側へ移動し、開き角をθ1からθ2(θ1>θ2)へ縮小し、フロント部70は比較的たやすく後方へ移動できる。
【0059】
一方、アッパー後部78は前すぼまりの略ハの字状をなしてトップ部71の左右両端部を後方から支持し、この支持部近傍へアッパー前部77の後端部から力が加わるので、トップ部71の後方移動に対して突っ張る状態となるから(図7参照)、トップ部71の後方移動よりもアッパー前部77の前記開き角を縮小する変形の方が大きくなる。
また、アッパー前部77とアッパー後部78間における開き角を縮小する変形において、アッパー前部77とアッパー後部78の各下端部の高さが一定であれば、トップ部71が上方へ移動しなければならない。
【0060】
しかし、ロアー部62の前端部におけるフロント部70と連結する点P1は下方へ移動し易くなり、しかも前記湾曲点P3の沈み込みによっても、点P1が確実に下方へ移動するから、開き角θが縮小することに伴う変化は、アッパー前部77の下端部がトップ部71を中心に反時計回りに回動し、点P1と共に下方へ移動することになり、トップ部71の高さ変化はほとんど生じず、同じ高さを維持したまま、開き角θを縮小させるような変形を許容することになる。そのうえ、大荷重Fの一部は、ロアー部62及びコントロールアーム部63によってリヤ部72を捩る方向の力になるから、この捩りによってもブラケット66が下がるようにアッパー部61を回動させることができるようになり、ブラケット66の上昇を抑えることができる。
【0061】
その結果、図5に示すようにトップ部71の高さがあまり変化せず、ルーフ22の下降を防ぐことができる。すなわち、サブフレーム60により大荷重Fを受けてバンパーフレーム36が変形するとき、サブフレーム60はバーハンドル20を前方へ移動させ、かつルーフ22を高い位置に保つよう、上ステアリングパイプ51の取付姿勢及びブラケット66によるルーフ22の支持位置をコントロールできることにより、ルーフ22の乗員方向への変形を少なくすることができ、運転者Dの前方における車室内空間S(乗員空間)を十分に大きく保つことが可能になる。
【0062】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、ロアー部62を湾曲形状とせず、アッパー部61と同様に略V字形の屈曲構造としてもよい。この場合はサブフレーム60の変形をより大きくすることができる。
また、下部ブラケット64及び65は必ず設けなければなないものではなく、ロアー部62の後端を直接上ステアリングパイプ51の下部へ連結し、コントロールアーム部63の後端を直接上ステアリングパイプ51の上部へ連結してもよい。さらに、ハンドルは円形のもの等、バーハンドル20以外の形状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例に係る自動4輪車の側面図
【図2】車室内部を見せた平面図
【図3】車体フレームの側面図
【図4】同平面図
【図5】車体前部の斜視図
【図6】車体前部の側面図
【図7】サブフレームの平面図
【図8】サブフレームの背面図
【図9】サブフレームの側面図
【図10】上ステアリングパイプの断面図
【図11】作用説明図
【符号の説明】
【0064】
1:車体フレーム、5:前輪操舵機構、20:バーハンドル、22:ルーフ、31:サイドビーム、32:斜めビーム、36:バンパーフレーム、50:上ステアリングシャフト、51:上ステアリングパイプ、60:サブフレーム、61:アッパー部、62:ロアー部、63:コントロールアーム部、64:ブラケット(上ステアリングパイプの下部支持用)、65:ブラケット(上ステアリングパイプの上部支持用)、66:ブラケット(ルーフ支持用)、70:フロント部、71:トップ部、72:リヤ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪を前後に支持する車体フレームの前部に左右へ架け渡された左右方向フレームを設け、車室上方をルーフで覆った車両のフレーム構造において、
前記左右方向フレームに前端部が取付けられ、後端部が前端部とほぼ同じ高さで前記車体フレームへ取付けられるとともに側面視で上方へ凸形状をなすトラス状フレームを設け、
このトラス状フレームの凸部に前記ルーフの前端部を支持したことを特徴とする車両のフレーム構造。
【請求項2】
前記トラス状フレームを前記左右方向フレームへ連結する介在部材を備え、この介在部材には左右方向へ延びるフロント部と前後方向へ延びるロアー部とを備え、
前記フロント部は前記左右方向フレームへ支持されかつ前記トラス状フレームの前端部を支持し、
前記ロアー部は中間部前側に下方へ凸に曲がる屈曲部を設け、前端を前記フロント部へ結合し、後端部を前記トラス状フレームの後端部に結合したことを特徴とする請求項1に記載した車両のフレーム構造。
【請求項3】
前記トラス状フレームが左右一対で設けられ、上面視で略ハの字をなしていることを特徴とする請求項1に記載した車両のフレーム構造。
【請求項4】
ハンドルと、このハンドルの回動軸であるステアリングシャフトと、このステアリングシャフトを回動自在に支持するステアリングパイプとからなるステアリング装置を備え、前記ロアー部で前記ステアリングパイプの下部を支持したことを特徴とする請求項1に記載した車両のフレーム構造。
【請求項5】
前記車体フレームは主要部であるメインフレームと、このメインフレームに対して別体で着脱自在なサブフレームとを備え、
前記左右方向フレームは前記メインフレームの一部であり、
前記ロアー部とトラス状フレームは前記メインフレームと別体のサブフレームであり、このサブフレームは前記メインフレームにボルトで締結されることを特徴とする請求項1に記載した車両のフレーム構造。
【請求項1】
前輪及び後輪を前後に支持する車体フレームの前部に左右へ架け渡された左右方向フレームを設け、車室上方をルーフで覆った車両のフレーム構造において、
前記左右方向フレームに前端部が取付けられ、後端部が前端部とほぼ同じ高さで前記車体フレームへ取付けられるとともに側面視で上方へ凸形状をなすトラス状フレームを設け、
このトラス状フレームの凸部に前記ルーフの前端部を支持したことを特徴とする車両のフレーム構造。
【請求項2】
前記トラス状フレームを前記左右方向フレームへ連結する介在部材を備え、この介在部材には左右方向へ延びるフロント部と前後方向へ延びるロアー部とを備え、
前記フロント部は前記左右方向フレームへ支持されかつ前記トラス状フレームの前端部を支持し、
前記ロアー部は中間部前側に下方へ凸に曲がる屈曲部を設け、前端を前記フロント部へ結合し、後端部を前記トラス状フレームの後端部に結合したことを特徴とする請求項1に記載した車両のフレーム構造。
【請求項3】
前記トラス状フレームが左右一対で設けられ、上面視で略ハの字をなしていることを特徴とする請求項1に記載した車両のフレーム構造。
【請求項4】
ハンドルと、このハンドルの回動軸であるステアリングシャフトと、このステアリングシャフトを回動自在に支持するステアリングパイプとからなるステアリング装置を備え、前記ロアー部で前記ステアリングパイプの下部を支持したことを特徴とする請求項1に記載した車両のフレーム構造。
【請求項5】
前記車体フレームは主要部であるメインフレームと、このメインフレームに対して別体で着脱自在なサブフレームとを備え、
前記左右方向フレームは前記メインフレームの一部であり、
前記ロアー部とトラス状フレームは前記メインフレームと別体のサブフレームであり、このサブフレームは前記メインフレームにボルトで締結されることを特徴とする請求項1に記載した車両のフレーム構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−162302(P2008−162302A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350719(P2006−350719)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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