説明

車両のフレーム構造

【課題】車体フレームの剛性を確保しながら、床および乗員用シートの高さを低くして、低床、低重心とすることができる車両のフレーム構造を提供する。
【解決手段】前輪駆動系を支持するフロントフレーム部2と、乗員の居住空間を備えるセンターフレーム部3と、後輪駆動系を支持するリヤフレーム部4とを備える車両のフレーム構造であって、車体Bの左右下部に配置されて前後方向に延びる一対のロアフレーム34と、運転席9と助手席10との間を通りセンターフレーム部3の略車体中心線CL上に前後方向に配置されたセンターパイプ35とを備える。また、ロアフレーム34の車幅方向外側には、前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム51と、サイドフレーム51を前後方向に連結するサイドパイプ52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフレーム構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフレーム構造として、車両の軽量化、コスト低減を図った車両の車体フレーム構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の車両の車体フレーム構造は、車体フレームが、前輪駆動系を支持するフロントフレーム部と、乗員の居住空間を形成するセンターフレーム部と、後輪駆動系を支持するリヤフレーム部とからなる。センターフレーム部の床下フレーム構造は、ロアフレーム、サイドコ字フレームからなる下部と、サブフレーム、アッパーサイドフレームからなる上部の2層構造となっている。
【特許文献1】特開2006−103370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の車体フレーム構造では、センターフレーム部の床下フレーム構造が、下部および上部の2層構造となっているため、床下フレームの剛性を十分に確保できるものの、床高さが高くなって乗員が座るシートが高くなる。一方、MUV(マルチ・ユーティリティ・ビークル)等の車両で要求される走行性能を高めるためには、車体フレームの剛性を向上させると共に、低床、低重心であることが望ましい。
【0004】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体フレームの剛性を確保しながら、床および乗員用シートの高さを低くして、低床、低重心とすることができる車両のフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車体フレームと、車体フレームに車幅方向に並んで配置され、運転席および助手席を構成する一対の乗員用シートと、を備える車両のフレーム構造であって、運転席と助手席との間を通り、車体フレームの略車体中心線上に前後方向に配置されたセンターパイプを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、車体の左右下部に配置されて前後方向に延びるロアフレームと、ロアフレームの車幅方向外側において前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、各サイドフレームを前後方向に連結する一対のサイドパイプと、を更に備え、センターパイプは、ロアフレームの上方において、略車体中心線上に前後方向に配置されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2の構成に加えて、センターパイプは、乗員用シート後方の車体フレームを構成するフレームから前方に延びるアッパセンターパイプと、ロアフレームを構成するフレームを介し乗員用シート間の下方から前上方に延びるダウンセンターパイプと、ロアフレームの乗員用シート前方から後上方に延びる起立センターパイプと、乗員用シート前方の車体フレームを構成するフレームから後下方に延びるフロントセンターパイプと、からなり、アッパセンターパイプ、ダウンセンターパイプ、起立センターパイプ、およびフロントセンターパイプは、乗員用シート前方の結合点で交わり結合されることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかの構成に加えて、フロントロアフレームの先端から上方に向かって延びた後、後方に延設されて前アッパクロスメンバに連結され、車体の前部上方を覆う左右一対のフロントアッパフレームを更に備え、フロントセンターパイプは、結合点を基点として前方に向かって左右二股に形成され、フロントアッパフレームと前アッパクロスメンバの左右連結部近傍に連結されることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかの構成に加えて、内燃機関の駆動力を前輪駆動系に伝達するプロペラシャフトは、センターパイプに沿って配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項5の構成に加えて、乗員の足によって操作可能な足操作子と、プロペラシャフトの中間部に連結されて、プロペラシャフトの回転方向を逆方向に変換するリダクションギヤと、を更に備え、リダクションギヤは、足操作子より後方且つ乗員用シートより前方で、ダウンセンターパイプと起立センターパイプとの間に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれかの構成に加えて、車体フレームは、前輪駆動系を支持するフロントフレーム部と、乗員の居住空間を備えるセンターフレーム部と、後輪駆動系を支持するリヤフレーム部と、を有し、センターパイプは、センターフレーム部に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、センターパイプが、運転席と助手席との間を通り、車体フレームの略車体中心線上に前後方向に配置されるので、車体フレームの剛性を向上させることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、ロアフレームの車幅方向外側において前後方向に延びる左右一対のサイドフレームを備え、このサイドフレームの前後部をサイドパイプで連結すると共に、センターパイプが、ロアフレームの上方において略車体中心線上に前後方向に配置されるので、車体フレームのサイド部の剛性が、上下に配置されるサイドフレームとサイドパイプによって確保され、車体フレームのセンター部の剛性が、上下に配置されるロアフレームとセンターパイプによって確保される。これにより、車体フレームの剛性を維持したまま、乗員用シート高さ、および床高さを低くすることができ、低床化、低重心化が可能となる。
【0014】
請求項3の発明によれば、センターパイプは、アッパセンターパイプ、ダウンセンターパイプ、起立センターパイプ、およびフロントセンターパイプからなり、これらの各部材が乗員用シート前方の結合点で交わり結合されているので、このセンターパイプ構造によって車体の剛性を向上させることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、車体の前部上方を覆うようにフロントロアフレームの先端から延びる左右一対のフロントアッパフレームを備え、左右二股に形成されたフロントセンターパイプが、フロントアッパフレームと前アッパクロスメンバの左右連結部近傍に連結されているので、車体の剛性をより向上させることができる。また、前アッパクロスメンバにかかる折れ曲がり力を低減することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、前輪駆動系に内燃機関の駆動力を伝達するプロペラシャフトが、センターパイプに沿って配置されているので、車体の捩れ力がプロペラシャフトに作用し難くすることができる。また、センターパイプ下方のデッドスペースを利用してプロペラシャフトを配置することができ、コンパクトなレイアウトが可能となって乗員の居住空間を大きくとることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、プロペラシャフトの回転方向を逆方向に変換するリダクションギヤが、足操作子より後方且つ乗員用シートより前方に位置し、ダウンセンターパイプと起立センターパイプとの間に配置されているので、リダクションギヤを車体剛性が高いデッドスペースに配置することができ、リダクションギヤを保護すると共に、コンパクトなレイアウトが可能となって乗員の居住空間を大きくとることができる。
【0018】
請求項7の発明によれば、センターパイプが、乗員の居住空間を備えるセンターフレーム部に設けられるので、センターフレーム部の剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の車両のフレーム構造に係る一実施形態について、MUV(マルチ・ユーティリティ・ビークル)を例にとって説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0020】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る車両1は、フロントフレーム部2と、センターフレーム部3と、リヤフレーム部4とを有して車体Bを構成する車体フレーム30を備える。フロントフレーム部2には、左右の前輪5を懸架する前輪用懸架装置(図示せず)が取り付けられ、フロントディファレンシャルギヤユニット81、フロントドライブシャフト82等の前輪駆動系や、前輪5を操舵する操舵部材(ステアリングシャフト6、このステアリングシャフト6の上端に取り付けたハンドル7を含む)等が支持されている。
【0021】
センターフレーム部3には、車幅方向に並んで配置された運転席9および助手席10を構成する一対の乗員用シート11が取り付けられており、乗員の居住空間を構成する。助手席10の下部空間には、燃料タンク12が配設されると共に、運転席9と助手席10との間には、パワーユニットPとフロントディファレンシャルギヤユニット81とを連結するフロントプロペラシャフト83が配置されている。
【0022】
リヤフレーム部4には、左右の後輪15を懸架する後輪用懸架装置(図示せず)が取り付けられ、内燃機関13および変速機14を含むパワーユニットPに加え、リヤプロペラシャフト86、リヤディファレンシャルギヤユニット、リヤドライブシャフト85等の後輪駆動系等が支持されている。
【0023】
図3に示すように、リヤフレーム部4に支持されたパワーユニットPは、内燃機関13のクランクシャフト16が車体前後方向に向けて配置された縦置きレイアウトとされている。クランクシャフト16から動力が伝達される出力軸80は、略車体中心線CL上に配置され、その前端は、フロントプロペラシャフト83に連結され、後端はリヤプロペラシャフト86に連結されている。
【0024】
リヤプロペラシャフト86は、略車体中心線CL上に配置されたリヤディファレンシャルギヤユニット84に接続されており、内燃機関13の駆動力は、リヤプロペラシャフト86、リヤディファレンシャルギヤユニット84、及び、リヤディファレンシャルギヤユニット84に接続されたリヤドライブシャフト85を介して左右の後輪15に伝達される。
【0025】
フロントプロペラシャフト83には、その中間部にリダクションギヤ90が設けられており、フロントプロペラシャフト83は、リダクションギヤ90より後方に配置された第1プロペラシャフト87と、リダクションギヤ90より前方に配置された第2プロペラシャフト88とで構成される。リダクションギヤ90は、前輪5と後輪15を同一方向に回転させるため、第1プロペラシャフト87の回転方向を逆方向に変換して第2プロペラシャフト88に伝達する。これにより、内燃機関13の駆動力は、第1プロペラシャフト87、リダクションギヤ90、第2プロペラシャフト88、フロントディファレンシャルギヤユニット81、及び、フロントディファレンシャルギヤユニット81に接続されたフロントドライブシャフト82を介して左右の前輪5に伝達される。
【0026】
図8に拡大して示すように、内燃機関13のシリンダヘッド18の後部には、スロットルバルブユニット19がインテークマニホールド20を通じて接続されており、シリンダヘッド18の前部には、後述する排気管120が接続されている。スロットルバルブユニット19の後部には、後述する第1及び第2エアクリーナ室111、112を備えたエアクリーナ110がコネクティングチューブ117を介して接続される。また、スロットルバルブユニット19には、燃料タンク12から延びる燃料配管21と、バッテリケース22やECU26等を備えたバッテリケース22から配索されたワイヤハーネス23が接続されている。
【0027】
さらに、図2及び図4に示すように、内燃機関13には、フロントフレーム部2に配置されたラジエータ24が2本の水配管25によって接続されており、内燃機関13を冷却する冷却水は、水配管25を介してラジエータ24との間を循環する。
【0028】
なお、図1中、26はフロントカバー、27はインストルメントパネル、28は、中央のカバー部材28aと左右一対のカバー部材28bとからなるセンターコンソールカバーである。
【0029】
図4及び図5に示すように、車体フレーム30は、車体Bの左右下部に配置されて前後方向に延び、車体Bの前方から、フロントロアフレーム31と、センターロアフレーム32と、リヤロアフレーム33とを構成する一対のロアフレーム34を有する。
【0030】
フロントフレーム部2では、フロントロアフレーム31の先端から、左右一対のフロントアッパフレーム70が上方に向かって延びた後、更に後方に延設されて前アッパクロスメンバ44に連結されて、車体Bの前部上方を覆っている。フロントロアフレーム31およびフロントアッパフレーム70は、コの字型フレーム71によって互いに結合されている。
【0031】
また、コの字型フレーム71とフロントアッパフレーム70の立上り部同士は、略L字型に形成されたフロントサスペンション支持パイプ72によって連結されている。フロントロアフレーム31およびフロントサスペンション支持パイプ72にそれぞれ2個ずつ固定されたブラケット63には、左右の前輪5を回転自在に懸架する前輪用懸架装置が揺動自在に配設されている。
【0032】
一方、リヤフレーム部4では、左右一対のリヤアッパフレーム75がリヤロアフレーム33の後端から上方に延びた後、内燃機関13を含むパワーユニットPを覆うように屈曲して前方に延設され、センターロアフレーム32の乗員用シート11の後方から上方に延びる一対のセンター起立フレーム40に連結されている。リヤアッパフレーム75の水平部とリヤロアフレーム33とは、下方に向かうにつれて前方に傾斜するリヤ起立フレーム76によって上下方向に連結されている。また、リヤアッパフレーム75の垂直部とリヤ起立フレーム76とは、リヤサスペンション支持パイプ77によって連結されている。
【0033】
リヤロアフレーム33及びリヤサスペンション支持パイプ77に、それぞれ前後に2個ずつ固定された合計4個のブラケット78には、左右の後輪15を回転自在に懸架する後輪用懸架装置が揺動自在に配設されている。
【0034】
センターフレーム部3では、センターロアフレーム32の車幅方向外側に、センターロアフレーム32の前方に結合された結合パイプ66と、センター起立フレーム40の中間部に連結された結合パイプ67よって各ロアフレーム34とそれぞれ連結される左右一対のサイドフレーム51が前後方向に延びて配置されている。
【0035】
サイドフレーム51は、前立上り部51aと、後立上り部51bと、前立上り部51aと後立上り部51bとを連結する水平部51cとによって下方に凸の略コの字型に形成されている。
【0036】
略コの字型のサイドフレーム51は、サイドパイプ52によって前立上り部51aと後立上り部51bとが、前後方向に連結されている。一対のサイドフレーム51の前立上り部51aの端部同士は、前アッパクロスメンバ44によって車幅方向に連結されている。後立上り部51bの中間部と水平部51cの中間部とは、略L字型のシート支持用パイプ53によって連結されている。
【0037】
一対のサイドフレーム51の前立上り部51aおよび後立上り部51bには、略コの字型に形成された一対のサイドアッパフレーム55が、上方に凸とされて連結されている。一対のサイドアッパフレーム55は、一対のセンター起立フレーム40の上端部が結合される第1アッパクロスメンバ54、2本のルーフクロスメンバ56、57、及び、第1アッパクロスメンバ54とも中間部で連結されるヘッドレスト用クロスメンバ58によって車幅方向に連結されている。
【0038】
一対のシート支持用パイプ53には、ブラケットを介して第1シートクロスメンバ61が掛け渡されている。また、各サイドフレーム51の後立上り部51bには、1対のセンター起立フレーム40の中間部下方同士を車幅方向に連結する後クロスメンバ64とそれぞれ結合される一対の第2シートクロスメンバ62がブラケットを介して連結されている。これにより、第1及び第2シートクロスメンバ61,62と、これら第1及び第2シートクロスメンバ61、62とを前後方向に連結する連結フレーム65とはシートフレームを構成し、運転席9および助手席10のシートパイプ60(図9参照)はこれらシートフレーム上に取り付けられる。
【0039】
また、センターフレーム部3には、運転席9と助手席10との間を通り、ロアフレーム34の上方において略車体中心線CL上に前後方向に配置されたセンターパイプ35が設けられる。従って、センターフレーム部3は、車幅方向中央部にセンターパイプ35とロアフレーム34とが上下に配置され、サイド部にサイドパイプ52とサイドフレーム51とが上下に配置された構造となる。これにより、センターフレーム部3の剛性が向上すると共に、低床化、低重心化が可能となる。
【0040】
図7にも拡大して示すように、センターパイプ35は、アッパセンターパイプ36と、ダウンセンターパイプ37と、起立センターパイプ38と、フロントセンターパイプ39と、を備え、各部材36,37,38,39は乗員用シート11より前方の結合点Jで交わり互いに結合されている。
【0041】
アッパセンターパイプ36は、一対のセンター起立フレーム40同士を連結する後アッパクロスメンバ41の中央に一端が結合されて前方に延びる。ダウンセンターパイプ37は、センターロアフレーム32の乗員用シート11より下方に設けられた後ロアクロスメンバ42の中央に一端が結合されて前上方に延びる。
【0042】
起立センターパイプ38は、センターロアフレーム32の乗員用シート11前方に設けられた前ロアクロスメンバ43の中央に一端が結合されて後上方に延びる。また、フロントセンターパイプ39は、結合点Jを基点として前方に向かって左右二股に形成された略V字型のパイプ部材であり、左右二股の端部は、フロントアッパフレーム70と前アッパクロスメンバ44との連結部近傍で前アッパクロスメンバ44に連結される。
なお、本実施形態では、一対のセンター起立フレーム40及び後アッパクロスメンバ41は、本発明の乗員シート後方の車体フレームを構成するフレームであり、センターロアフレーム32及び後ロアクロスメンバ42は、本発明のロアフレームを構成するフレームであり、フロントアッパフレーム70及び前アッパクロスメンバ44は、本発明の乗員シート前方の車体フレームを構成するフレームである。
【0043】
このように構成されるセンターパイプ35では、剛性が高くなった結合点J近傍の上方に、シフトレバー105が取り付けられ、また、アッパセンターパイプ36の中間部上方には、サイドブレーキレバー106が取り付けられている。なお、前アッパクロスメンバ44には、サブフレーム107を介して操舵部材であるステアリングシャフト6が取り付けられており、これらシフトレバー105、サイドブレーキレバー106、ステアリングシャフト6に加え、運転席9側に配置されたブレーキペダルやアクセルペダル等の足操作子91等から延びる各配線は、電気接続箱103に集約された後、一本のワイヤハーネス104として束ねられて運転席9の後方に設けられたバッテリケース22に接続される。
【0044】
また、図2、図3、及び図7に示すように、第1プロペラシャフト87は、センターパイプ35の下方で、センターパイプ35に沿って略車体中心線CL上に位置し、側面視において燃料タンク12と重なるように、換言すれば、燃料タンク12と車幅方向に並んで配置されている。リダクションギヤ90に接続された第2プロペラシャフト88は、第1プロペラシャフト87に対して車幅方向助手席10側にオフセットして配置されている。さらに、第2プロペラシャフト88は、フロントロアフレーム31の略車体中心線CL上に配設されたフロントディファレンシャルギヤユニット81に助手席10側で連結されている。
【0045】
このように、フロントプロペラシャフト83は、ほぼセンターパイプ35に沿って配置されているので、車両1の捩れ力がフロントプロペラシャフト83に作用し難い構造となっている。また、第2プロペラシャフト88が車幅方向助手席10側にオフセットして配置されているので、低床化されても乗員の居住空間を大きくとることができると共に、足操作子91のレイアウトの自由度が向上し、操作性のよい位置に配置することができる。
【0046】
また、リダクションギヤ90は、運転席9側に配置されたブレーキペダルやアクセルペダル等の足操作子91より後方、且つ一対の乗員用シート11より前方に位置し、ダウンセンターパイプ37と起立センターパイプ38との間に配置されている。
【0047】
ラジエータ24と内燃機関13とを接続する2本の水配管25や電気接続箱103とバッテリケース22とを電気的に接続するワイヤハーネス104も、フロントプロペラシャフト83と同様に、起立センターパイプ38より前方では車幅方向助手席10側にオフセットして配置されている。
【0048】
このため、運転席9と助手席10との間に設けられたセンターコンソールカバー28は、その前部が助手席側にオフセットされた状態で、これらセンターパイプ35、フロントプロペラシャフト83、リダクションギヤ90、水配管25、ワイヤハーネス104、シフトレバー105、サイドブレーキレバー106を収容する。
【0049】
これにより、水配管25、およびワイヤハーネス104は、デッドスペースを利用してコンパクトに配置され、乗員の居住空間を大きくとることができると共に、足操作子91のレイアウトの自由度が向上し、操作性のよい位置に配置することができる。
【0050】
また、車体フレーム30が左右対称形に配置され、且つ主な重量物であるフロントディファレンシャルギヤユニット81、リダクションギヤ90、内燃機関13、リヤディファレンシャルギヤユニット84等が略車体中心線CL上に配置されているので、左右の重量バランスが良好となり、車両1の安定性が増大する。
【0051】
図8〜図10に示すように、吸気装置であるエアクリーナ110は、助手席10の後方、且つ内燃機関13の右側方に配置されており、第1エアクリーナ室111と第2エアクリーナ室112とを備える。
【0052】
第1エアクリーナ室111には、助手席10の後方に配置され、開口を覆うカバー114を備えたシュノーケル113が、その車幅方向外側面に取り付けられたダクトを介して接続される。第1エアクリーナ室111と第2エアクリーナ室112は、リヤ起立フレーム76の一部を跨ぐようにして車幅方向に対向しており、接続チューブ116によって連通される。また、第2エアクリーナ室112は、コネクティングチューブ117によって内燃機関13に接続される。
【0053】
これにより、第1エアクリーナ室111がリヤ起立フレーム76の車幅方向外側に配置され、第2エアクリーナ室112がリヤ起立フレーム76の車幅方向内側に配置される。また、空気中の塵埃を除去するエアクリーナエレメント115は、第1エアクリーナ室111内に収容されている。
【0054】
このようなエアクリーナ110は、シュノーケル113から外部空気を導入し、第1エアクリーナ室111のエアクリーナエレメント115によって空気中の塵埃が除去され、接続チューブ116を通って第2エアクリーナ室112に導かれた後、コネクティングチューブ117から浄化された空気が内燃機関13へ供給される。
【0055】
エアクリーナ110は、ロアフレーム34の車幅方向外側に配置された第1エアクリーナ室111と、車幅方向内側に配置された第2エアクリーナ室112とを備えるので、フレームで囲まれた狭い空間内に、大きな容量のエアクリーナ110をコンパクトに配置することができる。また、第1エアクリーナ室111がリヤ起立フレーム76の車幅方向外側に配置されているので、エアクリーナ110のメンテナンススペースが広くなり、メンテナンス作業を容易に行うことができ、整備性に優れる。
なお、第1エアクリーナ室111と第2エアクリーナ室112は、取付位置に応じて、リヤ起立フレーム76の他、ロアフレーム34やリヤアッパフレーム75の一部を跨ぐように配置される場合にも、上記効果を奏する。
【0056】
また、図8及び図11に示すように、シリンダヘッド18の前部に接続された排気管120は、前方に向かって延びた後、Uターンして後方に向かって延び、さらに略90°で屈曲し、水平面に対して下方に傾斜しながら直線的に車体外方に向かって延びる。さらに、排気管120は、車幅方向で運転席9の後方領域に達した後、車体内方に屈曲して上方に傾斜しながら直線的に略車体中心線CL上に戻り、リヤフレーム部4の略車体中心線CL上に前後方向に向けて配設された消音器122に接続している。これにより、排気管120の最外方延出部121は、サイドフレーム51の後方延長線上より車幅方向内側、且つリヤアッパフレーム75より車幅方向外側まで延出している。
【0057】
従って、内燃機関13が乗員用シート11後方に配置されて、リヤフレーム部4のスペースが制約された、例えば低床化された車両1においても、排気管120の長さを必要長さだけ確保することができる。また、排気管120の直線部分が多いので、加工が容易であり、組立て工数を低減して制作費を抑制することができる。
【0058】
排気管120の最外方延出部121は、サイドフレーム51の後方延長線上より車幅方向内側、且つリヤアッパフレーム75より車幅方向外側まで延出している。これにより、排気管120の長さを確保しつつ、排気管120が保護される。
【0059】
また、排気管120は、リヤ起立フレーム76の前方で略車体中心線CL上に戻るので、リヤ起立フレーム76より後方に配設された後輪用懸架装置との干渉が確実に防止される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る車両のフレーム構造によれば、センターパイプ35が、運転席9と助手席10との間を通り、車体フレーム30の略車体中心線CL上に前後方向に配置されるので、車体フレーム30の剛性を向上させることができる。
【0061】
また、ロアフレーム34の車幅方向外側において前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム51を備え、このサイドフレーム51の前後部をサイドパイプ52で連結すると共に、センターパイプ35が、ロアフレーム34の上方において略車体中心線CL上に前後方向に配置されるので、車体フレーム30のサイド部の剛性が、上下に配置されるサイドフレーム51とサイドパイプ52によって確保され、車体フレーム30のセンター部の剛性が、上下に配置されるロアフレーム34とセンターパイプ35によって確保される。これにより、車体フレーム30の剛性を維持したまま、乗員用シート高さ、および床高さを低くすることができ、低床化、低重心化が可能となる。
【0062】
さらに、センターパイプ35は、アッパセンターパイプ36、ダウンセンターパイプ37、起立センターパイプ38、およびフロントセンターパイプ39からなり、これらの各部材36,37,38,39が乗員用シート前方の結合点Jで交わり結合されているので、このセンターパイプ構造によって車体の剛性を向上させることができる。
【0063】
加えて、車体Bの前部上方を覆うようにフロントロアフレーム31の先端から延びる左右一対のフロントアッパフレーム70を備え、左右二股に形成されたフロントセンターパイプ39が、フロントアッパフレーム70と前アッパクロスメンバ44の左右連結部近傍に連結されているので、車体Bの剛性をより向上させることができる。また、前アッパクロスメンバ44にかかる折れ曲がり力を低減することができる。
【0064】
また、前輪駆動系に内燃機関13の駆動力を伝達するフロントプロペラシャフト83が、略センターパイプ35に沿って配置されているので、車体Bの捩れ力がフロントプロペラシャフト83に作用し難くすることができる。また、センターパイプ35下方のデッドスペースを利用してフロントプロペラシャフト83を配置することができ、コンパクトなレイアウトが可能となって乗員の居住空間を大きくとることができる。
【0065】
さらに、フロントプロペラシャフト83の回転方向を逆方向に変換するリダクションギヤ90が、足操作子91より後方且つ乗員用シート19より前方に位置し、ダウンセンターパイプ37と起立センターパイプ38との間に配置されているので、リダクションギヤ90を車体剛性が高いデッドスペースに配置することができ、リダクションギヤ90を保護すると共に、コンパクトなレイアウトが可能となって乗員の居住空間を大きくとることができる。
【0066】
また、センターパイプ35が、乗員の居住空間を備えるセンターフレーム部に設けられるので、センターフレーム部3の剛性を向上させることができる。
【0067】
また、フロントフレーム部2にラジエータ24が配置され、リヤフレーム部4に内燃機関13が配置される構成において、このラジエータ24と内燃機関13とを繋ぐ水配管25が、起立センターパイプ38より前方において該起立センターパイプ38より助手席側を通るようにして、略センターパイプ35に沿って配置されている。これにより、水配管25を車体剛性が高いデッドスペースに配置することができ、水配管25を保護すると共に、コンパクトなレイアウトが可能となって乗員の居住空間を大きくとることができる。
【0068】
また、シフトレバー105は、センターパイプ35を構成する各部材36,37,38,39の結合点Jの近傍に配置されるので、シフトレバー105は、別途専用の支持ブラケットを設けることなく、車体剛性の高く、且つ、運転者の操作性の良い位置に設けることができる。
【0069】
さらに、サイドブレーキレバー106は、アッパセンターパイプ36上に配置されるので、サイドブレーキレバー106も、別途専用の支持ブラケットを設けることなく、運転者の操作性の良い位置に設けることができる。
【0070】
また、運転席9と助手席10との間に設けられたセンターコンソールカバー28は、センターパイプ35、フロントプロペラシャフト83、リダクションギヤ90、水配管25、ワイヤハーネス104、シフトレバー105、サイドブレーキレバー106を収容するので、これら部材を車体センターに集約することができると共に、センターコンソールカバー28によって覆うことで外観が良くなり、乗員の居住空間を広く取ることができる。
【0071】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。例えば、本発明においては、MUV(マルチ・ユーティリティ・ビークル)に適用したものとして説明したが、これに限定されるものではなく、4輪以上の車輪を有する任意の形式の車両にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る車両のフレーム構造が採用された車両の左側面図である。
【図2】図1に示す車両の平面図である。
【図3】図1に示す車両の動力伝達機構の要部平面図である。
【図4】図1に示す車両の右側面図である。
【図5】図1に示す車両のフレーム構造を示す斜視図である。
【図6】配線が配索された状態を示す要部拡大平面図である。
【図7】センターコンソールカバーの内部を示す、図2のVII―VII線に沿った要部拡大側面図である。
【図8】図2の後方要部拡大平面図である。
【図9】図1に示す車両の背面図である。
【図10】図9の吸気構造の要部拡大背面図である。
【図11】図1のリヤフレーム部を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 車両
2 フロントフレーム部
3 センターフレーム部
4 リヤフレーム部
9 運転席
10 助手席
11 乗員用シート
13 内燃機関
30 車体フレーム
31 フロントロアフレーム
32 センターロアフレーム
33 リヤロアフレーム
34 ロアフレーム
35 センターパイプ
36 アッパセンターパイプ
37 ダウンセンターパイプ
38 起立センターパイプ
39 フロントセンターパイプ
40 センター起立フレーム
41 後アッパクロスメンバ
42 後ロアクロスメンバ
43 前ロアクロスメンバ
44 前アッパクロスメンバ
51 サイドフレーム
52 サイドパイプ
70 フロントアッパフレーム
81 フロントディファレンシャルギヤユニット(前輪駆動系)
82 フロントドライブシャフト(前輪駆動系)
83 フロントプロペラシャフト
84 リヤディファレンシャルギヤユニット(後輪駆動系)
85 リヤドライブシャフト(後輪駆動系)
86 リヤプロペラシャフト
87 第1プロペラシャフト
88 第2プロペラシャフト
90 リダクションギヤ
91 足操作子
B 車体
CL 車体中心線
J 結合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
該車体フレームに車幅方向に並んで配置され、運転席および助手席を構成する一対の乗員用シートと、を備える車両のフレーム構造であって、
前記運転席と前記助手席との間を通り、前記車体フレームの略車体中心線上に前後方向に配置されたセンターパイプを備えることを特徴とする車両のフレーム構造。
【請求項2】
前記車体の左右下部に配置されて前後方向に延びるロアフレームと、
前記ロアフレームの車幅方向外側において前後方向に延びる左右一対のサイドフレームと、
前記各サイドフレームを前後方向に連結する一対のサイドパイプと、
を更に備え、
前記センターパイプは、前記ロアフレームの上方において、略車体中心線上に前後方向に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両のフレーム構造。
【請求項3】
前記センターパイプは、前記乗員用シート後方の前記車体フレームを構成するフレームから車体前方に延びるアッパセンターパイプと、
前記ロアフレームを構成するフレームを介し前記乗員用シート間の下方から前上方に延びるダウンセンターパイプと、
前記ロアフレームの前記乗員用シート前方から後上方に延びる起立センターパイプと、
前記乗員用シート前方の車体フレームを構成するフレームから後下方に延びるフロントセンターパイプと、からなり、
前記アッパセンターパイプ、前記ダウンセンターパイプ、前記起立センターパイプ、および前記フロントセンターパイプは、前記乗員用シート前方の結合点で交わり結合されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のフレーム構造。
【請求項4】
前記フロントロアフレームの先端から上方に向かって延びた後、後方に延設されて前記前アッパクロスメンバに連結され、前記車体の前部上方を覆う左右一対のフロントアッパフレームを更に備え、
前記フロントセンターパイプは、前記結合点を基点として前方に向かって左右二股に形成され、前記フロントアッパフレームと前記前アッパクロスメンバの左右連結部近傍に連結されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両のフレーム構造。
【請求項5】
内燃機関の駆動力を前記前輪駆動系に伝達するプロペラシャフトは、前記センターパイプに沿って配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両のフレーム構造。
【請求項6】
乗員の足によって操作可能な足操作子と、
前記プロペラシャフトの中間部に連結されて、前記プロペラシャフトの回転方向を逆方向に変換するリダクションギヤと、
を更に備え、
前記リダクションギヤは、前記足操作子より後方且つ前記乗員用シートより前方で、前記ダウンセンターパイプと前記起立センターパイプとの間に配置されることを特徴とする請求項5に記載の車両のフレーム構造。
【請求項7】
前記車体フレームは、前輪駆動系を支持するフロントフレーム部と、乗員の居住空間を備えるセンターフレーム部と、後輪駆動系を支持するリヤフレーム部と、を有し、
前記センターパイプは、前記センターフレーム部に設けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両のフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−83274(P2010−83274A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253176(P2008−253176)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】