説明

車両のフレーム構造

【課題】本発明は、フレーム部材の軽量化と剛性強度の両立、さらにはリサイクル性の向上が図れる車両のフレーム構造を提供する。
【解決手段】本発明のフレーム構造は、同フレーム構造を構成するフレーム部材4bを、外周壁の一部が開放した金属製の細長の中空のメンバ部材15と、開放した部分からメンバ部材内に分離可能に嵌め込まれた合成樹脂製の中空の補強部材20a,20bとを有して構成した。同構成により、フレーム部材4bは、重量物である金属材が削減されつつ、求められる剛性強度が軽量な合成樹脂部材により確保される。しかも、合成樹脂製の補強部材20a、20b、メンバ部材15内から抜出可能なので、金属製のメンバ部材15と合成樹脂製の補強部材20a,20bとに仕分けしやすい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種フレーム部材を組み合わせて構成される車両のフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
路線バスや観光バスなどバス車両の車体には、特許文献1にも開示されているように多くの種類のフレーム部材を組み合わせたフレーム構造が用いられている。
こうしたフレーム構造では、軽量化を図りつつ剛性強度を確保することが求められる。そのため、フレーム部材の多くは、全周が壁で覆われたチューブ部材、具体的には四角断面をもつ中空の金属製のメンバ部材を用いて軽くし、同メンバ部材に、別途、補強部材を設けて強度を補強する構造が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004− 82855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレーム部材の軽量化は、車体のシル部材やピラー部材に限らず、フロントウインドの下縁部に沿って配置されるクロスメンバまでも、求められる傾向になってきた。
ところが、金属製のチューブ部材を補強部材で補強する構造は、重量が増しやすく、軽量化と剛性強度の確保とを両立するのは難しい。しかも、補強は、近時、注目されている廃車時におけるフレーム部材のリサイクルのしやすさは考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、フレーム部材の軽量化と剛性強度の両立、さらにはリサイクル性の向上が図れる車両のフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、フレーム部材は、外周壁の一部が開放した金属製の細長の中空のメンバ部材と、開放した部分からメンバ部材内に分離可能に嵌め込まれた合成樹脂製の中空の補強部材とを有して構成する構造とした。
同構成によると、フレーム部材は、重量物である金属材が削減されつつ、求められる剛性強度が、軽量な合成樹脂部材により確保される。しかも、合成樹脂製の補強部材は、中空のメンバ部材内から抜出可能なので、金属製のメンバ部材と合成樹脂製の補強部材とに仕分けしやすい。
【0007】
請求項2の発明は、上記目的に加え、さらに簡単な構造ですむよう、メンバ部材は、断面形状が略C形状をなした細長の金属部材から構成し、補強部材は、金属部材の開口した部分から内部に嵌め込まれるダクト形補強部材から構成した。
請求項3の発明は、上記目的に加え、メンバ部材内に嵌るダクト形補強部材が、さらに軽量化を図る目的として活用されるよう、メンバ部材には、車両のフロントウインドの下縁部に沿って配置されたクロスメンバ部材を用い、クロスメンバ部材と隣接した車両の車室側には、デフロスター用の空調空気をフロントウインドの下縁部沿いに通風させる合成樹脂製のデフロスターダクトを有したうえで、ダクト形補強部材をデフロスターダクトと一体に連結された構造にし、ダクト形補強部材がデフロスターダクトの支持を兼ね、デフロスターダクトが、別途、支持部品を必要とせずに、クロスメンバ部材に支持されるものとした。
【0008】
請求項4の発明は、上記目的に加え、さらにダクト形補強部材の負担が軽減されるよう、ダクト形補強部材は、デフロスターダクトと一体に成形されるものとした。
請求項5の発明は、上記目的に加え、一層、フレーム部材の剛性強度が高められるよう、ダクト形補強部材の中空部に、補強用の発泡樹脂部材を充填するものとした。
請求項6の発明は、上記目的に加え、メンバ部材内に嵌るダクト形補強部材が、他にも活用されるよう、ダクト形補強部材の中空部は、ウインドウォッシャ液を貯留する貯留室をなす構造とした。
【0009】
請求項7の発明は、上記目的に加え、さらにダクト形補強部材内に貯留されるウインドウォッシャ液が、車両の衝突時に生じる火災を防ぐ手立てとして作用するよう、隣接するダクト形補強部材とデフロスターダクトとの間は、車体の衝突時、所定以上の衝撃を受けると、爆発を生じさせる火薬部を有し、火薬部を挟んで向き合うダクト形補強部材の壁部、デフロスターダクトの壁部は、爆発の圧力を受けて、壁部の一部を穿孔させる脆弱部を有し、穿孔部分を通じダクト形補強部材内のウインドウォッシャ液がデフロスターダクト内へ流れ込み可能とした。つまり、車両の衝突が生じると、ダクト形補強部材内のウインドウォッシャ液は、デフロスターダクト内へ流れ込み、同ダクト内を通る空調空気と混じりながら、フロントウインド内面に噴出され、火災の発生を防ぐ。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、フレーム部材は、軽量に有効な外周壁の一部が開放した金属製の中空のメンバ部材と、同メンバ部材内に嵌る合成樹脂製の中空の補強部材とを組み合わせたことによって、重量物である金属材が削減されつつ、求められる剛性強度が、軽量な合成樹脂部材により確保される。
それ故、フレーム部材の軽量化と剛性強度とは両立できる。しかも、中空の補強部材は、メンバ部材内から抜去可能なので、金属製のメンバ部材と合成樹脂製の補強部材とが、仕分けしやすくなり、廃車時、フレーム部材の各部のリサイクルがしやすく、リサイクル性が向上する。
【0011】
請求項2の発明によれば、フレーム部材は、略C形の断面形状をなした金属部材で形成されたメンバ部材内に、合成樹脂製のダクト形補強部材を嵌め込むという、簡単な構造ですむ。
請求項3の発明によれば、デフロスターダクトは、ダクト形補強部材を流用して、別途、支持部品を必要とせずに、クロスメンバ部材に支持できる。
【0012】
請求項4の発明によれば、ダクト形補強部材は、デフロスターダクトに付随して成形されるから、ダクト形補強部材の成形に必要な負担が軽減できる。
請求項5の発明によれば、ダクト形補強部材の中空部に発泡樹脂部材を充填することにより、軽量化とリサイクル性とを確保しつつ、一層、フレーム部材の剛性強度を高めることができる。
【0013】
請求項6の発明によれば、ダクト形補強部材の中空部を活用して、ウインドウォッシャ液を貯留することができる。しかも、厳冬時、ウインドウォッシャ液がダクト形補強部材内で凍結したとしても、隣接するデフロスターダクトを流れる温熱の伝熱により、解氷が行われるから、ウインドウォッシャ機能を安定して確保できる。
請求項7の発明によれば、車両の衝突が生じると、ダクト形補強部材内のウインドウォッシャ液は、火薬部の爆発で形成された穿孔を通じて、デフロスターダクト内へ流れ込み、デフロスターダクトを通る空調空気と混じりながら、フロントウインド内面へ噴出されるから、噴出されるウインドウォッシャ液により、未然に火災の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバス車両の最前部を構成するフレーム構造の一部を、デフロスターダクトと共に示す斜視図。
【図2】図1中のA‐A線に沿うクロスメンバおよびデフロスターダクト周辺の断面図。
【図3】同クロスメンバの分解斜視図。
【図4】同クロスメンバの断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態の要部を示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態の要部を示す断面図。
【図7】本発明の第4の実施形態の要部を示す断面図。
【図8】同要部の構造によってダクト形補強部材内のウインドウォッシャ液がフロントウインド内面へ噴出される状況を示す断面図。
【図9】本発明の第5の実施形態の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図1ないし図4に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は、バス車両、例えば観光バス(以下、単にバスという)の車両前部を、同前部のフレーム構造と共に示し、図2は同フレーム構造の一部の断面を示し、図3および図4は同フレーム構造のフレーム部材を周辺の部品と共に示している。
【0016】
図1を説明すると、図中1はバスの車体を示し、2は同車体1の前部を構成するフレーム構造を示し、1aは車体1内に形成される車室を示している。上記フレーム構造2は、多くのフレーム部材、例えば上下に延びる左右対のフロントピラー3、フロントピラー3間に掛け渡した各種クロスメンバ4a,4bなど、各種フレーム部材を組み合わせて構成される。フレーム部材のうち、車体中段に配置されたクロスメンバ4b(本願のフレーム部材に相当)は、車体前部に設けたフロントウインド5の下縁部に沿って配置される部材である。
【0017】
クロスメンバ4bの車室1a側には、合成樹脂製のデフロスターダクト10が隣接して配設されている。デフロスターダクト10は、クロスメンバ4bにならい車幅方向に沿って配設されている。このデフロスターダクト10にて、デフロスター用の空調空気(フロントウインド5の結露及び付着した霜を解消する空気)を、同デフロスターダクト10の周囲の部材、具体的には車体前部の機器の周囲を覆い隠すように設けたインストルメントパネル11の上面から吹き出せるようにしている。
【0018】
すなわち、デフロスターダクト10は、例えば車幅方向中央に配置される略T形のセンターダクト10aと、同センターダクト10aの左右両側に接続されるI形のサイドダクト10bとを有して構成され、フロントウインド5の下縁部沿いに配置される。センターダクト10aの下側に配置された入口部は、例えば空調空気を各部へ配風させるデフロスターモジュール13を介して、例えば車体に搭載されたサブ駆動式の空調ユニット(図示しない)と接続される。これにて、デフロスターに供される温熱(温風)が、センターダクト10a,サイドダクト10bを通じて、フロントウインド5の下縁部沿いに通風される。さらに述べると、図2および図3に示されるようにセンターダクト10a,サイドダクト10bの上部壁に形成されている吹出し口部14は、その直上に配置されるインストメントパネル部材11の上壁部11aに有る吹出し部11bと接続され、各ダクト10a,10bを通る温熱(温風)がフロンウインド5の内面へ吹き出される構造としてある。
【0019】
このバス前部のフレーム構造2を構成するフレーム部材、例えばフロントウインド5の下縁部に配置されたクロスメンバ4bには、軽量や剛性強度やリサイクル性に優れる構造が採用されている。
このクロスメンバ4bは、図2〜図4に示されるような外周壁の一部が開放した金属製の細長中空のメンバ部材であるところの、車体前部に組み付けた断面形状が略C形形状の金属部材で形成されたクロスメンバ部材15(本願のメンバ部材に相当)と、同クロスメンバ部材15内の略全体に渡り嵌め込んだ、合成樹脂製の中空の補強部材であるところの、ダクト形をなしたダクト形補強部材20とから構成されている。
【0020】
具体的には、図1〜図4に示されるように金属製のクロスメンバ部材15は、重量物となる金属部分をできるだけ削減するよう、例えば薄肉の板厚でコ形に成形した細長の金属部材が用いられる。ダクト形補強部材20には、例えばエンジニアリングプラスチック部材、例えばHDPE(高密度ポリエチレン樹脂)やPP(ポリプロピレン樹脂)やPA(ポリアミド樹脂)などで成形され、クロスメンバ部材15の内腔形状にならう角(四角)筒形の断面形状をもち、クロスメンバ4bに応じた長さをもつ、細長のダクト形の部材が用いられる。
【0021】
このダクト形補強部材20は、センターダクト10a,サイドダクト10b毎、複数に分割されている。分割されたダクト形補強部材20a,20b(一部しか図示せず)は、両端の開口が塞がれても構わない。この分割されたダクト形補強部材20a,20b(一部しか図示せず)は、クロスメンバ4bと隣接して配置されるデフロスターダクト10、ここでは例えばサイドダクト10bの側部やセンターダクト10aの側部と一体に連結されている。このサイドダクト10bとダクト形補強部材20bとを一体に連結する構造、センターダクト10aにダクト形補強部材20aを一体に連結する構造は、いずれも双方(ダクトと補強部材)を一緒に成形する構造でなされている。
【0022】
具体的には、例えば回転成形により、ダクト形補強部材20bとサイドダクト10bとを一体成形することによって、図3および図4に示されるようにダクト形補強部材20bとサイドダクト10bとを一体に連結させている。図3および図4中の21は、両者の連結部となる、ダクト形補強部材20aの下部壁とサイドダクト10bの下部壁との間の全域を連結する壁部を示している。ダクト形補強部材20aとセンターダクト10a間でも同じ構造が用いてある。
【0023】
ここでは、回転成形を用いてダクト形補強部材20a,20bは、いずれも一般プラスチック材で成形されるサイドダクト10b,センターダクト10a(いずれもデフロスターダクト10)と一体でありながら、同デフロスターダクト10とは異なる、高い剛性強度を確保し得る合成樹脂材で成形され、高い剛性強度を確保している。ちなみに、回転成形により、ダクト形補強部材20a,20bだけ、例えば多数のガラス繊維(繊維部材)を含有したエンジニアリングプラスチック部材で成形することも可能である(高い剛性強度を確保するため)。
【0024】
クロスメンバ4bは、このセンターダクト10aと一体なダクト形補強部材20a(一部だけ図示)、サイドダクト10bと一体なダクト形補強部材20bの全体を、車体前部に接合してあるクロスメンバ部材15の開口から、クロスメンバ部材15内に内部空間を占めるように嵌め込んで構成される(図3、図4)。この嵌め込み構造によって、クロスメンバ4bは、重量物となる金属部分を削減しつつ(軽量)、高剛性強度をもたらす閉断面構造を作り出している。
【0025】
またクロスメンバ部材15に嵌め込んだダクト形補強部材20a,20bは、図2および図4に示されるように係止されている。例えばダクト形補強部材20a,20bは、係止部、具体的にはクロスメンバ部材15の開口両側の壁部15aに外力Fを加えて壁部15aを変形させるというかしめ構造により係止されている。これにより、ダクト形補強部材20a,20bの全体は、リサイクルに伴う部材の仕分けが行いやすくなるよう、クロスメンバ部材15に対し分離可能に組み付けられる。これで、バスの廃車時、車体1の各部材のリサイクルをするとき、例えばかしめを解く作業を行うと、クロスメンバ部材15から、合成樹脂部品たるダクト形補強部材20a,20b全体が抜去されるようにしている。つまり、リサイクルに伴う仕分けを行いやすくしている。
【0026】
以上、述べたように一部が開放した金属製のクロスメンバ部材15(本願のメンバ部材に相当)内に、合成樹脂製の中空のダクト形補強部材20a,20b(本願の補強部材に相当)を嵌め込んで補強するクロスメンバ4b(本願のフレーム部材に相当)だと、重量物である金属材が削減されつつ、求められる剛性強度は、軽量な合成樹脂材(ダクト形補強材20a,20b)により確保される。
【0027】
それ故、クロスメンバ4bは、軽量化を図りつつ、十分な剛性強度が確保される。つまり、軽量化と剛性強度の向上とが両立できる。しかも、ダクト形補強部材20a,20bは、嵌め込み構造により、クロスメンバ部材15内に分離可能に嵌めてあるので、ダクト形補強部材20a,20bは、かしめを解く、あるいはダクト形補強部材20a,20bの一部を変形させるなど係止を解く作業を行い、クロスメンバ部材15から抜き去ると、クロスメンバ部材15から仕分けられる。このため、クロスメンバ4bの材質別の仕分けはしやすく(金属製のメンバ部材と合成樹脂製の補強部材)、バスの廃車時、クロスメンバ4bの各部のリサイクルがしやすくなり、リサイクル性の向上が図れる。
【0028】
特に、金属製のコ形断面形状のクロスメンバ部材15(本願のフレーム部材に相当)の内部に、合成樹脂製の中空のダクト形補強部材20a,20bを嵌め込む構造は、簡単な構造ですむ。
しかも、ダクト形補強部材20a,20bを、隣接配置されたデフロスターダクト10(センターダクト10a,サイドダクト10b)と一体に連結すると、デフロスターダクト10は、ダクト形補強部材20a,20bをそのまま流用して、別途、支持部品を必要とせずにクロスメンバ部材15に支持でき、同構造の併用で、一層、クロスメンバ4bの軽量化が図れる。
【0029】
そのうえ、ダクト形補強部材20a,20bは、デフロスターダクト10(センターダクト10a,サイドダクト10b)と一体に成形してあると、デフロスターダクト10に付随して成形されるから、ダクト形補強部材20a,20bの成形に必要な負担が軽減できる。
【0030】
図5は、本発明の第2の実施形態を示す。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例で、ダクト形補強部材20a,20bの中空部に発泡樹脂部材25を充填したものである。
このようにすると、充填された発泡樹脂材25により、軽量化を図りながら、一層、クロスメンバ4b(本願のフレーム部材に相当)の剛性強度を高めることができる。
【0031】
図6は、本発明の第3の実施形態を示す。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例で、ダクト形補強部材20a,20bの中空部を、ウインドウォッシャ液aを貯留する貯留室30としたものである。具体的には、ダクト形補強部材20a,20bは、両端が閉塞された構造にして、内部に貯留室30を形成している。そして、ダクト形補強部材20a,20bに、外部からウインドウォッシャ液aを注入するための注入部31や、ウインドウォッシャ液aをフロントウインド5へ供給するためのウォッシャ液噴射系32(ウォッシャポンプ32aや供給路32bなどで形成)を設けて、貯留室30のウインドウォッシャ液aがフロントウインド5の外面へ噴射される構造としている。
【0032】
このようにすると、第1の実施形態の作用効果に加え、ダクト形補強部材20a,20bの中空部を活用して、ウインドウォッシャ液aの貯留ができる。しかも、ダクト形補強部材20a,20b内でウインドウォッシャ液aを貯留すると、例えば厳冬時、ウインドウォッシャ液aがダクト形補強部材20a、20b内で凍結したとしても、隣接するデフロスターダクト10を流れる温熱の伝熱により、解氷が行われるから、ウインドウォッシャ機能を安定して確保できる。また常時デフロスターを作動させれば、次第にウォッシャ液aは温水(人肌程度)となり、それをフロントウインド5に噴射すれば、フロントウインド5の氷雪の解氷を行うことができ、前方視界が確保され、前方の安全性を確保できる。
【0033】
図7および図8は、本発明の第4の実施形態を示す。
本実施形態は、第3の実施形態の変形例で、ダクト形補強部材20a,20b内のウインドウォッシャ液aが、車両の衝突時に生じる火災を防ぐ手立てとして作用するようにしたものである。
【0034】
具体的には、図7に示されるように隣接するダクト形補強部材20a、20bとセンターダクト10a,サイドダクト10b(いずれもデフロスターダクト10)との間、例えば壁部21上に、火薬部40を設け、同火薬部40に、衝突センサ41および制御部42で構成される爆発制御系43を設けて、車両の衝突時、車体1の前部から所定以上の衝撃を受けると、火薬部40を爆発させる構造とする。さらに火薬部40を挟んで向き合うダクト形補強部材20a,20bの側壁部22に、爆発の圧力を受けて、側壁部22の一部を穿孔させる脆弱部、ここでは他の部分より肉厚を薄くした薄肉部43を形成したものである。
【0035】
同構造は、デフロスター機能の作動中、車両の衝突に伴い、火薬部40で爆発が生じると、図8に示されるように薄肉部44に形成される穿孔部分b(図8に図示)を通じて、ダクト形補強部材20a,20b内のウインドウォッシャ液aがセンターダクト10a内,サイドダクト10b内へ流れ込む。つまり、車両の衝突が生じると、ダクト形補強部材20a,20b内のウインドウォッシャ液aは、センターダクト10a内,サイドダクト10b内へ流れ込み、同ダクト10a,10bを通風する空調空気と混じりながら、フロントウインド5の内面へ噴出され、火災の発生を防ぐ。
【0036】
図9は、本発明の第5の実施形態を示す。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例で、ダクト形補強部材20a、20bとセンターダクト10a,サイドダクト10bとが、どのような個所で連結されても構わない例を示したものである。第1の実施形態は、ダクト形補強部材20a、20bとセンターダクト10a,サイドダクト10bとが互いに向き合うように配置されるため、さらには回転成形における離型作業を考慮して、下部壁同士を壁部21で連結したが、他の部位でもよい。例えば図9に示されるようにダクト形補強部材20a、20bとセンターダクト20a,サイドダクト20bとが段違いに配置されるような場合は、同図に示されるように向き合う壁部22の部位同士を壁部21で連結しても構わない。
【0037】
但し、上述した第2〜5の実施形態において、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付して、その説明を省略した。
なお、本発明は上述した第1〜第5の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変えて実施しても構わない。例えば上述の実施形態は、いずれもフロントウインドの下縁部に配置されるクロスメンバに本発明を適用して、同クロスメンバの軽量、剛性強度の向上、さらにはリサイクル性を向上させたが、これに限らず、他のクロスメンバなどフレーム構造を構成するフレーム部材に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 車体
4b クロスメンバ(フレーム部材)
10a,10b センターダクト,サイドダクト(デフロスターダクト)
15 クロスメンバ部材(メンバ部材)
20a,20b ダクト形補強部材(中空の補強部材)
25 発泡樹脂部材
30 貯留室
40 火薬部
43 薄肉部(脆弱部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種フレーム部材を組み合わせて構成される車両のフレーム構造であって、
前記フレーム部材は、外周壁の一部が開放した金属製の細長の中空のメンバ部材と、
前記開放した部分から前記メンバ部材内に分離可能に嵌め込まれた合成樹脂製の中空の補強部材とを有して構成される
ことを特徴とする特徴とする車両のフレーム構造。
【請求項2】
前記メンバ部材は、断面形状が略C形状をなした細長の金属部材から構成され、
前記補強部材は、前記金属部材の開口した部分から内部に嵌め込まれるダクト形補強部材から構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のフレーム構造。
【請求項3】
前メンバ部材は、車両のフロントウインドの下縁部に沿って配置されたクロスメンバ部材であり、
前記クロスメンバ部材と隣接した車両の車室側には、デフロスター用の空調空気を前記フロントウインドの下縁部沿いに通風させる合成樹脂製のデフロスターダクトを有し、
前記ダクト形補強部材は、前記デフロスターダクトと一体に連結され、前記デフロスターダクトの支持を兼ねる
ことを特徴とする請求項2に記載の車両のフレーム構造。
【請求項4】
前記ダクト形補強部材は、前記デフロスターダクトと一体に成形されていることを特徴とする請求項3に記載の車両のフレーム構造。
【請求項5】
前記ダクト形補強部材の中空部は、補強用の発泡樹脂部材が充填されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両のフレーム構造。
【請求項6】
前記ダクト形補強部材の中空部は、ウインドウォッシャ液を貯留する貯留室をなす構造としたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両のフレーム構造。
【請求項7】
更に、前記隣接するダクト形補強部材と前記デフロスターダクトとの間は、車体の衝突時、所定以上の衝撃を受けると、爆発を生じさせる火薬部を有し、
前記火薬部を挟んで向き合う前記ダクト形補強部材の壁部、前記デフロスターダクトの壁部には、前記爆発の圧力を受けて、壁部の一部を穿孔させる脆弱部を有し、
前記穿孔部分を通じ前記ダクト形補強部材内のウインドウォッシャ液を前記デフロスターダクト内へ流れ込み可能とした
ことを特徴とする請求項6に記載の車両のフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−224180(P2012−224180A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92882(P2011−92882)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】