説明

車両のフロントエンドパネル構造

【課題】エンジン側から前方への暖気の吹き返しを抑制可能なだけでなく、軽量でかつ高剛性のフロントエンドパネル構造を得る。
【解決手段】フロントエンドパネル3におけるロアメンバ7の車幅方向の少なくとも一端で、かつ車両前後方向の中央よりも後方にラジエータ13をマウントするマウント部を形成する。サイドメンバ9にラジエータ13の側面13aに近接して前後方向に延びる板状側壁部29を設け、この側壁部29の前端及び後端からそれぞれ車幅方向外側に延びる板状の前壁部31及び後壁部33とによって、車幅方向外側が開放する断面略コ字状に形成する。後壁部33の板厚を前壁部31よりも大きくする。側壁部29の前壁部31近傍内側にラジエータ13の前方に配設されるコンデンサ15の側部15aに近接し、上下方向に延びるコンデンサ対向部37を一体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントエンドパネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車幅方向に延びるフロントエンドパネル及び、このフロントエンドパネルの開口部内にラジエータとコンデンサとが配設されてなる車両のフロントエンドパネル構造は知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンデンサの後方に配置されるラジエータとの隙間を覆って送風機によって誘起された空気流がラジエータを迂回して流れることを抑制するファンシュラウドを設け、フロントエンドパネルのうちファンシュラウドの外縁部側と対向するパネル側対向部と、ファンシュラウドのうちパネル側対向部と対向するシュラウド側対向部との間に迷路構造化された隙間を設けるものが開示されている。このことで、エンジン周辺の暖気の逆流を防ぐようになっている。
【特許文献1】特開2004−322847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両のフロントエンドパネル構造では、通常、コンデンサよりも重量の大きいラジエータがフロントエンドパネルの前後方向中央よりも後方側で支持されているので、後側の剛性が不足し、フロントエンドパネルにラジエータやコンデンサ等の冷却装置を安定して保持することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フロントエンドパネルの構成に工夫を加えることで、エンジン側から前方への暖気の吹き返しを抑制可能なだけでなく、軽量でかつ高剛性のフロントエンドパネル構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、サイドメンバの後側の剛性を高めると共に、サイドメンバをラジエータ及びコンデンサに近接させるようにした。
【0007】
具体的には、本発明では、車幅方向に延びるアッパメンバと、該アッパメンバの下方で車幅方向に延びるロアメンバと、上記アッパメンバ及びロアメンバの左右両側に上端及び下端が連結するように一体成形されて上下に延びる左右のサイドメンバとを備えた略矩形状の開口部を有する樹脂製のフロントエンドパネル及び該フロントエンドパネルの上記開口部内にラジエータとコンデンサとが配設されてなる車両のフロントエンドパネル構造を対象とする。
【0008】
そして、上記フロントエンドパネルにおけるロアメンバの車幅方向の少なくとも一端で、かつ車両前後方向の中央よりも後方にはラジエータをマウントするマウント部が形成され、
上記ロアメンバの一端側のサイドメンバは、ラジエータの側面に近接して前後方向に延びる板状側壁部と、該側壁部の前端及び後端からそれぞれ車幅方向外側に延びる板状の前壁部及び後壁部とによって、車幅方向外側が開放する断面略コ字状に形成され、上記後壁部の板厚が前壁部よりも大きく設定され、
上記サイドメンバ側壁部の上記前壁部近傍内側には、ラジエータの前方に配設されるコンデンサの側部に近接し、上下方向に延びるコンデンサ対向部が一体に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記の発明によれば、車幅方向外側が開放する断面略コ字状に形成されたフロントエンドパネルのサイドメンバの後壁部の板厚を前壁部よりも大きくし、かつサイドメンバ側壁部の前壁近傍内側にコンデンサ対向部を形成しているので、フロントエンドパネル全体の剛性が向上され、ラジエータ及びコンデンサを堅固に支持することができる。また、サイドメンバ側壁部の前壁部近傍内側に設けたコンデンサ対向部によって、エンジン側から前方への暖気の吹き返しを抑制することができる。したがって、ラジエータ及びコンデンサの熱交換率の低下を防ぐことができると共に、軽量でかつ高剛性のフロントエンドパネル構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に本発明の実施形態にかかる車両のフロントエンドパネル構造1の分解斜視図を示す。図2に該フロントエンドパネル構造1の平面図を示す。
【0012】
上記フロントエンドパネル構造1は、樹脂製のフロントエンドパネル3を有し、このフロントエンドパネル3は、バンパーフェイス(図示せず)が前側に固定されるバンパーレインフォースメント41の後側に固定されている。具体的には、バンパーレインフォースメント41の後側には、車幅方向に所定の間隔をあけてブラケット43が固定され、このブラケット43には、上下に間隔をあけて貫通孔43aが形成されている。この貫通孔43a(図1には上側の貫通孔43aのみ示す)にボルト(図示せず)を挿通すると共に、該貫通孔43aに対応するようにフロントエンドパネル3のサイドメンバ9に開口した取付孔3aに締結することで、フロントエンドパネル3がバンパーレインフォースメント41に取り付けられている。
【0013】
上記フロントエンドパネル3は、車幅方向に延びるアッパメンバ5を有し、このアッパメンバ5の下方には、車幅方向に延びるロアメンバ7が設けられている。これらアッパメンバ5及びロアメンバ7の左右両側に上端及び下端が連結するように上下に延びる左右のサイドメンバ9が一体成形されている。これらアッパメンバ5、ロアメンバ7及び左右のサイドメンバ9に囲まれて略矩形状の開口部11が形成され、この開口部11内にラジエータ13とコンデンサ15とが配設されている。
【0014】
具体的には、上記ラジエータ13は、矩形板状の形状を有し、その下端部に所定の間隔をあけて一対の脚部17が設けられている。この脚部17には、公知の免震ゴム(詳細は図示せず)が取り付けられている。一方、上記フロントエンドパネル3におけるロアメンバ7の車幅方向の両端で、かつ車両前後方向の中央よりも後方には、マウント部としてのマウント孔21(図3に拡大して示す)が形成されている。このマウント孔21に上記ラジエータ13の脚部17が免震ゴムを介して挿入され、ラジエータ13をマウントして該ラジエータ13などがダイナミックダンパーとして機能するようになっている。このラジエータ13の前方に該ラジエータ13よりも小型で軽量な空調装置(図示せず)のコンデンサ15が配設されるようになっている。なお、図1において、バンパーレインフォースメント41の左右端には、クラッシュ管45が設けられ、該クラッシュ管45の後端がフロントサイドフレーム(図示せず)に取り付けられるようになっている。
【0015】
また、上記ラジエータ13の後方には、図2に二点差線で示すように、冷却ファン23及びファン用モータ25が取り付けられている。この冷却ファン23の回りとラジエータ13の後方には、ファンシュラウド27が取り付けられ、後方のエンジン(図示せず)の周囲の暖気が逆流しないように構成されている。
【0016】
これらラジエータ13、コンデンサ15、冷却ファン23及びファンシュラウド27は、別々にフロントエンドパネル3に取り付けても、あるいはまとめてサブ組立した上で、フロントエンドパネル3に取り付けてもよい。
【0017】
上記フロントエンドパネル3のサイドメンバ9は、ラジエータ13の側面13aに近接して前後方向に延びる板状の側壁部29を有している。すなわち、このサイドメンバ9の側壁部29とラジエータ13の側面13aとの間には、フロントエンドパネル3やラジエータ13の製作誤差及びラジエータ13の組付性を考慮して所定の隙間が確保されている。
【0018】
図3にも示すように、上記側壁部29の前端及び後端からそれぞれ車幅方向外側に板状の前壁部31及び後壁部33が延びている。サイドメンバ9は、これら側壁部29、前壁部31及び後壁部33によって、車幅方向外側が開放する断面略コ字状に形成されている。そして、後壁部33の板厚t2は、前壁部31の板厚t1よりも大きく設定されている(t2>t1)。なお、図1にも示すように、前壁部31と後壁部33との間には、側面視X字状の補強リブ35が一体形成されている。
【0019】
また、上記サイドメンバ9の側壁部29の前壁部31近傍内側には、ラジエータ13の前方のコンデンサ15の側部15aに近接し、上下方向に延びるコンデンサ対向部37が一体に形成されている。このコンデンサ対向部37は、側壁部29との間に後方側が開放する隙間Sを有するように断面L字状に形成することで、冷却風の乱気流を防止して騒音の発生を防ぐと共に、後方からの暖気の逆流を防ぐようになっている。さらには、コンデンサ対向部37によってサイドメンバ9の前側の剛性も向上されている。
【0020】
したがって、本実施形態にかかる車両のフロントエンドパネル3構造によると、車幅方向外側が開放する断面略コ字状に形成されたサイドメンバ9の後壁部33の板厚を前壁部31よりも大きくしているので、後方側の剛性が向上され、上記前壁部31近傍にコンデンサ対向部37が形成されているのと併せて、フロントエンドパネル3全体の剛性が向上し、ラジエータ13及びコンデンサ15を堅固に安定して支持することができる。
【0021】
また、サイドメンバ9の側壁部29の前壁部31近傍内側に設けたコンデンサ対向部37によって、コンデンサ15の側部15aとサイドメンバ9との間の隙間を小さくすることで、エンジン側から前方への暖気の吹き返しを確実に抑制することができる。
【0022】
したがって、ラジエータ13及びコンデンサ15の熱交換率の低下を防ぐことができると共に、軽量でかつ高剛性のフロントエンドパネル3構造を得ることができる。
【0023】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0024】
すなわち、上記実施形態では、ラジエータ13の脚部17側に免震ゴムを設け、ロアメンバ7側にマウント孔21を設けたが、逆にロアメンバ7側に免震ゴムを設けてもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、フロントエンドパネル3におけるロアメンバ7の車幅方向の両端にマウント孔21を形成したが、車幅方向一端側にラジエータ13が設けられ、他端側にインタークーラーが設けられる場合であれば、一端側にマウント孔21を設けると共に、ラジエータ13とインタークーラーとの間に上下方向に延びる隔壁部を設け、該隔壁部近傍にもう1つのマウント孔21を設ければよい。この場合には、他端側のサイドメンバの形状は、一端側のサイドメンバ9の形状と同様の形状とすることが好ましいが、異なる形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本発明は、コンデンサ及びラジエータを支持するフロントエンドパネルを備えた車両のフロントエンドパネル構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両のフロントエンドパネル構造を示す分解斜視図である。
【図2】フロントエンドパネル構造を上方から見た断面図である。
【図3】フロントエンドパネルのコンデンサ対向部及びその周辺を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 フロントエンドパネル構造
3 フロントエンドパネル
5 アッパメンバ
7 ロアメンバ
9 サイドメンバ
11 開口部
13 ラジエータ
13a ラジエータの側面
15 コンデンサ
15a コンデンサの側部
21 マウント孔(マウント部)
29 側壁部
31 前壁部
33 後壁部
37 コンデンサ対向部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるアッパメンバと、該アッパメンバの下方で車幅方向に延びるロアメンバと、上記アッパメンバ及びロアメンバの左右両側に上端及び下端が連結するように一体成形されて上下に延びる左右のサイドメンバとを備えた略矩形状の開口部を有する樹脂製のフロントエンドパネル及び該フロントエンドパネルの上記開口部内にラジエータとコンデンサとが配設されてなる車両のフロントエンドパネル構造であって、
上記フロントエンドパネルにおけるロアメンバの車幅方向の少なくとも一端で、かつ車両前後方向の中央よりも後方にはラジエータをマウントするマウント部が形成され、
上記ロアメンバの一端側のサイドメンバは、ラジエータの側面に近接して前後方向に延びる板状側壁部と、該側壁部の前端及び後端からそれぞれ車幅方向外側に延びる板状の前壁部及び後壁部とによって、車幅方向外側が開放する断面略コ字状に形成され、上記後壁部の板厚が前壁部よりも大きく設定され、
上記サイドメンバ側壁部の上記前壁部近傍内側には、ラジエータの前方に配設されるコンデンサの側部に近接し、上下方向に延びるコンデンサ対向部が一体に形成されていることを特徴とする車両のフロントエンドパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−55374(P2007−55374A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241497(P2005−241497)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(505142872)ダイキョーニシカワ株式会社 (79)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】