説明

車両のフード装置

【課題】車体の左、右側壁に締結された左右一対のヒンジブラケットに対しフードを枢支した場合に、フードの回動が安定した状態で、できるようにし、しかも、これが、簡単な構成で、かつ、質量の増加を抑制しつつ達成できるようにする。
【解決手段】車両のフード装置は、車体2に形成された車体開口22を上方から開閉可能に閉じるフード25と、下端部28bが上記各側壁18にそれぞれ前、後締結具26,27により締結されるヒンジブラケット28と、フード25の前、後端部のうち、一端部側が上方に向かって往、復回動A,B可能となるよう他端部を各ヒンジブラケット28の上端部28a側に枢支させる枢支軸29とを備える。ヒンジブラケット28の上端部28aを側壁18に上締結具31により締結する。車体2の側面視で、前、後締結具26,27と上締結具31とによる各締結部26a,27a,31aで囲まれた枠33内に枢支軸29を位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に向かって往、復回動するよう車体に枢支されるフードを備えた車両のフード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記フード装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、フード装置は、車体前部の左、右側壁の間に上方に向かって開くよう形成された車体開口と、この車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、下端部が上記各側壁にそれぞれ前、後締結具により締結されるヒンジブラケットと、上記フードの前端部側が上方に向かって往、復回動可能となるよう後端部を上記各ヒンジブラケットの上端部側に枢支させる枢支軸とを備えている。
【0003】
そして、上記枢支軸を中心として上記フードの前端部側を上方に向かって往回動させれば、上記車体開口が開かれる。一方、この状態から上記フードの前端部側を復回動させれば、上記車体開口が閉じられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−166382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の技術のヒンジブラケットは、その下端部のみが車体の側壁に締結されていて、上記ヒンジブラケットの上部側にフードが枢支されている。つまり、上記側壁に対し片持ち支持されたヒンジブラケットにフードが枢支されている。このため、上記ヒンジブラケットに対するフードの枢支強度が不十分となって、車体開口を開閉させるときのフードの往、復回動が不安定になるおそれがあり、これはフードの回動操作上、好ましくない。
【0006】
そこで、上記ヒンジブラケットを締結させる上記側壁の部分や、上記ヒンジブラケット自体を補強する補強材を設けたり、板厚を大きくしたりすることが考えられる。しかし、このようにした場合には、車体の部品点数が増加してその構成が複雑になったり、質量が増加したりするという不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車体の左、右側壁に締結された左右一対のヒンジブラケットに対しフードを枢支した場合に、このフードの回動が安定した状態で、できるようにし、しかも、これが、簡単な構成で、かつ、質量の増加を抑制しつつ達成できるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、車体2の左、右側壁18,18の間に上方に向かって開くよう形成された車体開口22と、この車体開口22をその上方から開閉可能に閉じるフード25と、下端部28bが上記各側壁18にそれぞれ前、後締結具26,27により締結されるヒンジブラケット28と、上記フード25の前、後端部のうち、一端部側が上方に向かって往、復回動A,B可能となるよう他端部を上記各ヒンジブラケット28の上端部28a側に枢支させる枢支軸29とを備えた車両のフード装置において、
上記ヒンジブラケット28の上端部28aを上記側壁18に上締結具31により締結し、
車体2の側面視(図1)で、上記前、後締結具26,27と上締結具31とによる各締結部26a,27a,31aで囲まれた枠33内に上記枢支軸29を位置させたことを特徴とする車両のフード装置である。
【0009】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果は、次の如くである。
【0011】
請求項1の発明は、車体の左、右側壁の間に上方に向かって開くよう形成された車体開口と、この車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、下端部が上記各側壁にそれぞれ前、後締結具により締結されるヒンジブラケットと、上記フードの前、後端部のうち、一端部側が上方に向かって往、復回動可能となるよう他端部を上記各ヒンジブラケットの上端部側に枢支させる枢支軸とを備えた車両のフード装置において、
上記ヒンジブラケットの上端部を上記側壁に上締結具により締結している。
【0012】
つまり、上記ヒンジブラケットの上、下端部がそれぞれ車体の側壁に支持されたため、上記ヒンジブラケットは側壁に上、下両端支持されることとなって、ヒンジブラケットの強度向上が達成される。
【0013】
しかも、車体の側面視で、上記前、後締結具と上締結具とによる各締結部で囲まれた枠内に上記枢支軸を位置させている。
【0014】
つまり、前記したように両端支持されたヒンジブラケットのうち、強度が効果的に向上させられる上記枠内に枢支軸を位置させたのであり、このため、この枢支軸を介してのヒンジブラケットに対するフードの枢支強度は、より確実に向上する。
【0015】
よって、上記車体開口を開閉させるときのフードの往、復回動は、安定した状態ですることができ、これは、フードの回動操作上、有益である。
【0016】
また、上記したヒンジブラケットに対するフードの枢支強度の向上は、上記したようにヒンジブラケットを側壁に両端支持させることと、上記した枠内に枢支軸を位置させることとにより達成される。このため、上記枢支強度を向上させようとする場合に、別途の補強材を設けたり、板厚を大きくしたりしないで足りる。よって、フードの安定した状態での回動は、簡単な構成、かつ、質量の増加を抑制しつつ達成できる。
【0017】
更に、上記側壁は、上記ヒンジブラケットの下端部と互いに締結されると共に、このヒンジブラケットの上端部とも互いに締結される。このため、上記側壁は上記ヒンジブラケットによって効果的に補強される。よって、上記側壁は、その強度と剛性とが効果的に向上させられることから、車体の外部からの手押し力などの外力に対し強固に対抗できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図2の部分拡大図である。
【図2】車体の部分側面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図2,3で示したものの斜視図である。
【図6】フードを往回動させて車体開口を開いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の車両のフード装置に関し、車体の左、右側壁に締結された左右一対のヒンジブラケットに対しフードを枢支した場合に、このフードの回動が安定した状態で、できるようにし、しかも、これが、簡単な構成で、かつ、質量の増加を抑制しつつ達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0020】
即ち、車両のフード装置は、車体の左、右側壁の間に上方に向かって開くよう形成された車体開口と、この車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、下端部が上記各側壁にそれぞれ前、後締結具により締結されるヒンジブラケットと、上記フードの前、後端部のうち、一端部側が上方に向かって往、復回動可能となるよう他端部を上記各ヒンジブラケットの上端部側に枢支させる枢支軸とを備える。上記ヒンジブラケットの上端部が上記側壁に上締結具により締結される。車体の側面視で、上記前、後締結具と上締結具とによる各締結部で囲まれた枠内に上記枢支軸が位置させられる。
【実施例】
【0021】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0022】
図において、符号1は、自動車で例示される車両である。また、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0023】
上記車両1の車体2前部は、それぞれ上下方向に延びて、車体2前部の左右各側部を構成する左右一対のフロントピラー3,3と、車体2の幅方向に延び、上記フロントピラー3,3の上下方向の中途部を互いに連結するフロントカウル4と、上記各フロントピラー3の中途部からそれぞれ前方に突出するエプロンメンバ5と、これら左右エプロンメンバ5の互いの対向面にそれぞれ支持されるサスペンションタワー6と、車体2の幅方向に延びて、この車体2の前端部を構成し、上記各エプロンメンバ5の突出端部と互いに連結されるラジエータサポート7とを備えている。この場合、フロントカウル4の長手方向の各端部における前部は、上記各エプロンメンバ5における上記フロントピラー3側の端部(基部)に結合されている。
【0024】
上記した車体2の各構成部材3〜7はいずれも板金製で、それぞれ高強度、高剛性を有して、車体2前部の骨格部材とされている。
【0025】
上記左、右フロントピラー3,3の各上部とフロントカウル4とで囲まれた部分がフロントウィンド10とされている。上記フロントカウル4は、その長手方向各部断面がU字形状とされ、その上端開口は樹脂製のカウルルーバ11により覆われている。上記各エプロンメンバ5をその外側方から覆う板金製のフロントフェンダ12が設けられる。このフロントフェンダ12は、その上縁部の前、後部がそれぞれ前、後締結具13,14により上記エプロンメンバ5に締結されることにより、このエプロンメンバ5に強固に支持されている。上記ラジエータサポート7をその前方から覆ってこのラジエータサポート7に支持されるバンパ15が設けられている。
【0026】
上記各エプロンメンバ5と各フロントフェンダ12とは、車体2前部の左、右各側壁18を構成している。これら左、右側壁18,18、フロントカウル4、およびラジエータサポート7で囲まれた空間がエンジンルーム20とされ、このエンジンルーム20にエンジン21が収容されている。上記エンジンルーム20の上端は、上方に向かって開く車体開口22とされている。
【0027】
上記車体開口22を開閉可能とするフード装置24が設けられている。
【0028】
上記フード装置24は、上記車体開口22をその上方から開閉可能に閉じる(図1中二点鎖線、図2中実線)板金製のフード25と、上、下端部28a,28bのうち、下端部28bが上記各側壁18におけるエプロンメンバ5の基部上面にそれぞれ前、後締結具26,27により締結される板金製のヒンジブラケット28と、上記フード25の前、後端部のうち、前端部側が上方に向かって往、復回動A,B可能となるよう後端部を上記各ヒンジブラケット28の上端部28a側に枢支させる枢支軸29とを備えている。なお、上記前、後締結具26,27に加えて、これら26,27の間に他の締結具を設けてもよい。
【0029】
上記各ヒンジブラケット28の上端部28aは、上記各側壁18におけるフロントフェンダ12の上縁部の前後方向の中途部にそれぞれ上締結具31により締結されている。そして、車体2の側面視(図1)で、上記前、後締結具26,27と上締結具31とによる各締結部26a,27a,31aで囲まれた三角形状の枠33内に、上記枢支軸29の少なくとも一部、具体的には、この枢支軸29の軸心29aが位置させられている。
【0030】
上記フード25は、上記車体開口22を全体的に閉じる板金製のフード本体35と、前後方向に延び、前端部がこのフード本体35の後端部に締結具36により締結され、後端部が上記フード本体35から後方に向かって突設される左右一対のヒンジアーム37,37とを備えている。これら各ヒンジアーム37の突出端部(後端部)が上記各ヒンジブラケット28に上記枢支軸29により枢支される。
【0031】
上記フード25を往回動Aさせて、上記車体開口22を全開にさせたとき(図1,2中一点鎖線、図6)、上記各ヒンジブラケット28に当接して(図1中一点鎖線)、それ以上のフード25の往回動Aを阻止するストッパ39が上記フード25の各ヒンジアーム37に一体的に形成されている。
【0032】
なお、以上は図示の例によるが、上記フード装置24のフード25は、車体2の後部に設けられるフードであってもよい。この場合、このフードは、その後端部側が上方に向かって往、復回動可能となるよう前端部が各ヒンジブラケットに枢支される。
【0033】
上記構成によれば、ヒンジブラケット28の上端部28aを上記側壁18に上締結具31により締結している。
【0034】
つまり、上記ヒンジブラケット28の上、下端部28a,28bがそれぞれ車体2の側壁18に支持されたため、上記ヒンジブラケット28は側壁18に上、下両端支持されることとなって、ヒンジブラケット28の強度向上が達成される。
【0035】
また、上記の場合、ヒンジブラケット28の下端部28bはエプロンメンバ5の基部に締結されていて、このエプロンメンバ5は車体2の骨格部材である。このため、上記ヒンジブラケット28の下端部28bは上記側壁18に強固に支持されている。一方、上記ヒンジブラケット28の上端部28aは上記フロントフェンダ12の上縁部の前後方向の中途部に締結されており、このフロントフェンダ12の上縁部の前、後部は同上エプロンメンバ5に締結され、つまり、少なくとも前後二点支持されている。このため、上記ヒンジブラケット28の上端部28aも上記側壁18に強固に支持されている。よって、上記ヒンジブラケット28の強度向上はより確実に達成される。
【0036】
しかも、車体2の側面視(図1)で、上記前、後締結具26,27と上締結具31とによる各締結部26a,27a,31aで囲まれた枠33内に上記枢支軸29を位置させている。
【0037】
つまり、前記したように両端支持されたヒンジブラケット28のうち、強度が効果的に向上させられる上記枠33内に枢支軸29を位置させたのであり、このため、この枢支軸29を介してのヒンジブラケット28に対するフード25の枢支強度は、より確実に向上する。
【0038】
よって、上記車体開口22を開閉させるときのフード25の往、復回動A,Bは、安定した状態ですることができ、これは、フード25の回動A,B操作上、有益である。
【0039】
また、上記したヒンジブラケット28に対するフード25の枢支強度の向上は、上記したようにヒンジブラケット28を側壁18に両端支持させることと、上記した枠33内に枢支軸29を位置させることとにより達成される。このため、上記枢支強度を向上させようとする場合に、別途の補強材を設けたり、板厚を大きくしたりしないで足りる。よって、フード25の安定した状態での回動A,Bは、簡単な構成、かつ、質量の増加を抑制しつつ達成できる。
【0040】
更に、上記側壁18のエプロンメンバ5は上記ヒンジブラケット28の下端部と互いに締結され、かつ、上記側壁18のフロントフェンダ12は上記ヒンジブラケット28の上端部と互いに締結されている。しかも、上記フロントフェンダ12と締結された上記ヒンジブラケット28の上端部の直下近傍で、このヒンジブラケット28の下端部が前、後締結具13,14により上記エプロンメンバ5に締結されている。
【0041】
このため、特に、上記フロントフェンダ12は上記エプロンメンバ5とヒンジブラケット28とによって効果的に補強される。よって、上記フロントフェンダ12は、その強度と剛性とが効果的に向上させられることから、車体2の外部からの手押し力などの外力に対し強固に対抗できる。
【0042】
なお、上記ヒンジブラケット28の上端部28aは、上記側壁18の他の部分やフロントカウル4に締結してもよい。また、上記ヒンジブラケット28の上端部28aを前、後上締結具31,31により締結してもよく、この場合、前、後締結具26,27と前、後上締結具31,31とによる各締結部で囲まれた多角形状の枠33内に枢支軸29の少なくとも一部を位置させればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
2 車体
3 フロントピラー
4 フロントカウル
5 エプロンメンバ
6 サスペンションタワー
7 ラジエータサポート
12 フロントフェンダ
13 締結具
14 締結具
18 側壁
20 エンジンルーム
22 車体開口
24 フード装置
25 フード
26 締結具
26a 締結部
27 締結具
27a 締結部
28 ヒンジブラケット
28a 上端部
28b 下端部
29 枢支軸
29a 軸心
31 上締結具
31a 締結部
33 枠
A 往回動
B 復回動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左、右側壁の間に上方に向かって開くよう形成された車体開口と、この車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、下端部が上記各側壁にそれぞれ前、後締結具により締結されるヒンジブラケットと、上記フードの前、後端部のうち、一端部側が上方に向かって往、復回動可能となるよう他端部を上記各ヒンジブラケットの上端部側に枢支させる枢支軸とを備えた車両のフード装置において、
上記ヒンジブラケットの上端部を上記側壁に上締結具により締結し、
車体の側面視で、上記前、後締結具と上締結具とによる各締結部で囲まれた枠内に上記枢支軸を位置させたことを特徴とする車両のフード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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