説明

車両のベンチレーショングリル構造

【課題】 車両のベンチレーショングリルを不使用時には見えないようにし、インパネまわりをすっきりさせるとともに、デザインの自由度を高める。
【解決手段】
インストルメントパネル10の開口部10aに、ベンチレーショングリルユニットUのケース30を取り付け、このケース30にグリル40と蓋50を設ける。グリル40は、モータ60等の駆動手段によってケース30の内部(グリル収容穴)に収容された収容位置と、上へ突出された使用位置との間で回転されるようにする。グリル40が収容位置のとき、蓋50でグリル収容穴の開口部10aを閉じる。蓋50は、グリル40の回転軸41と平行な回転軸52のまわりに回転可能にするとともに、付勢手段70にて閉方向に付勢する。グリル40が突出すると付勢手段70に抗して蓋50を開方向へ押すようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のベンチレーショングリル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のベンチレーショングリルは、インストルメントパネル等の車両内装に組み込まれている。車両内装にはグリル収容穴が形成され、この収容穴にグリルが嵌め込まれている。グリルには吹出し口が設けられており、この吹出し口が車内に向けて開口されている。
【特許文献1】特開平11−222028
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のグリルは、エアコンの使用中か否かに関らず、常時、車内に露出されており、不使用時でも目立っている。デザイン上も制約になっており、自由度が減殺されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、
車両の内装に設けられたグリル収容穴と、
このグリル収容穴に収容された収容位置と、グリル収容穴から突出された使用位置との間で出没可能なグリルと、
このグリルを出没動作させる駆動手段と、
前記グリルが収容位置のとき前記グリル収容穴を閉じ、前記グリルが使用位置のとき開く蓋とを備えたことを特徴とする。
【0005】
前記グリルが、前記駆動手段によって回転軸のまわりに前記収容位置と使用位置との間で回転されるのが好ましい。
また、前記蓋が、前記グリルの回転軸と平行な回転軸のまわりに回転可能になるとともに、付勢手段にて閉方向に付勢されており、前記グリルが、前記グリル収容穴から突出しているとき前記付勢手段に抗して前記蓋を開方向へ押すようになっていることが好ましい。前記蓋回転軸は、前記グリル回転軸と同軸をなしていてもよく、ずれていてもよい。
【0006】
前記車両内装の裏側には、前記グリル収容穴を構成するケースが取り付けられており、このケースの側部にベンチレーションダクトとの連通口が形成され、この連通口が、前記収容位置のときのグリルの側部によって塞がれるようになっていることが好ましい。
【0007】
蓋の色調や模様や質感が、インストルメントパネルとほぼ同じであることが好ましい。
閉位置のときの蓋は、インストルメントパネルの表面とほぼ滑らかに連続することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グリルを不使用時には見えないようにすることができ、インストルメントパネル等の車両内装のまわりをすっきりさせることができるとともに、デザインの自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、車両のインストルメントパネル10(車両内装)を示したものである。インストルメントパネル10は、左右に延びている。図1及び図3に示すように、インストルメントパネル10の左右両端部と中央には、4つ(複数)のグリル用開口部10aが設けられ、これら開口部10aにベンチレーショングリルユニットUがそれぞれ取り付けられている。
【0010】
図3及び図4に示すように、ベンチレーショングリルユニットUは、ユニットケース30(グリル収容部)と、ベンチレーショングリル40と、蓋50(図4において省略)を備えている。ケース30は上に開口されている。このケース30の上面開口がインストルメントパネル10の開口部10aと一致するようにして、ケース30の上面開口の縁部31が、インストルメントパネル10の裏面に接合されている。図4及び図7に示すように、ケース30の側壁32には、ダクト連通口33が設けられている。この連通口33にエアコンユニット(図示せず)からのベンチレーションダクト20が連なっている。
【0011】
図3に示すように、ケース30の内部にグリル40が収容されている。このケース30の内部がインストルメントパネル10の開口部10aと一体に連なっている。ケース30の内部とインストルメントパネル10の開口部10aとにより「グリル収容穴」が構成されている。
図3及び図4に示すように、グリル40は、一対の側壁41,41と、奥壁42と、天板43を有し、底部が開口された箱状をなしている。なお、グリル40は四角い箱状に限らず、球形などの丸みを持った形状になっていてもよく、その他の形状になっていてもよい。グリル40の前面には吹出し口44が設けられている。吹出し口44には、縦横に延びる多数のフィン45が並んで設けられており、ツマミ46によってフィン45の向きを変え、風向調節できるようになっている。
【0012】
図3に示すように、グリル40の奥端部には、軸線を左右に向けた回転軸47が設けられている。グリル40は、この回転軸47を介してケース30に上下に回転可能に取り付けられている。回転軸47には、モータ60(駆動手段)が連結されている。モータ60は、車両空調のオンオフに伴って駆動し、グリル40を回転軸47のまわりに回転させるようになっている。インストルメントパネル10等に専用のボタンを設け、このボタンを操作すると空調のオンオフに拘わらずモータ60が駆動されグリル40が回転されるようになっていてもよい。
図3に示すように、回転可能範囲の下限位置では、グリル40の上端部がインストルメントパネル10の開口部10aより沈み込み、グリル40の全体がケース30の内部に完全に入り込んでいる。図5〜図7に示すように、回転可能範囲の上限位置では、グリル40がインストルメントパネル10の開口部10aから上方に突出し、前面の吹出し口44が車内に露出するようになっている。以下、グリル40の下限位置を「収容位置」と言い、上限位置を「使用位置」と言う。
【0013】
図3に示すように、グリル40が収容位置のときは、このグリル40の側壁41によってケース30のダクト連通口33が塞がれるようになっている。図7に示すように、グリル40が使用位置のときは、側壁41を含むグリル40全体がダクト連通口33より上に位置する。これにより、ダクト連通口33が開き、ベンチレーションダクト20が、ダクト連通口33及びケース30の内部を順次介してグリル40の下面開口に連なり、さらにはグリル40の内部を介して吹出し口44に連なることになる。
グリル40の収容位置と使用位置の間の回転角度は、例えば40〜50度程度であるが、この角度範囲より小さくてもよく大きくてもよい。
【0014】
図2及び図3に示すように、インストルメントパネル10のグリル用開口部10aには、ベンチレーショングリルユニットUの蓋50が配置されている。蓋50は、グリル40より上側(車室側)に配置され、グリル40に被さっている。蓋50の表面(車室に面する側の面)は、インストルメントパネル10の表面と色調や模様や質感が同じになっている。
【0015】
図3及び図6に示すように、蓋50の側縁部の裏側にはアーム51が設けられている。アーム51は、ケース30の側壁32に設けられたアーム挿通孔34に通されている(図6)。図3に示すように、アーム51の先端部は、ケース30のアーム挿通孔34より奥側へ突出し、ケース30の背部に設けられたブラケット35に回転軸52を介して回転可能に止められている。これによって、蓋50が、開位置(図2の仮想線及び図5〜図7)と閉位置(図2及び図3)との間で上下に回転可能になっている。図2及び図3に示すように、閉位置のときの蓋50は、インストルメントパネル10のグリル用開口部10aを塞いでいる。この閉位置のときの蓋50は、インストルメントパネル10とほぼ面一をなして滑らかに連続している。図5〜図7に示すように、開位置のときの蓋50は、インストルメントパネル10のグリル用開口部10aから上に離れた状態になる。
【0016】
図3に示すように、蓋50の回転軸52は、グリル40の回転軸47と平行をなし、回転軸47からずれている。ここでは、蓋50の回転軸52が、グリル40の回転軸47より下に配置されているが、反対にグリル40の回転軸47より上に配置されていてもよい。また、蓋50の回転軸52が、グリル40の回転軸47より奥側(車両のフロント側)に配置されているが、反対にグリル40の回転軸47より手前側(車室側)に配置されていてもよい。
【0017】
アーム51の先端部とブラケット35の間には捩りばね等からなる付勢手段70が設けられている。この付勢手段70によって、アーム51ひいては蓋50が閉位置の方向に付勢されている。
【0018】
上記構成の車両用ベンチレーショングリル40構造の動作を説明する。
図2及び図3に示すように、車両の空調がオフ時には、グリル40が収容位置に位置され、ケース30の内部にすっぽり収まる。このとき、グリル40の側部41がケース30のダクト連通口33を塞いだ状態になる。これによって、グリル40の側部41をシャッター代わりにすることができる。
蓋50は、付勢手段70の付勢により閉位置に安定的に位置され、インストルメントパネル10のグリル用開口部10aを塞ぐ。したがって、グリル40が蓋50で完全に覆われ見えなくなる。これによって、インストルメントパネル10のまわりをすっきりさせることができる。このとき蓋50はインストルメントパネル10とほぼ滑らかに連続しており、しかも色調や模様や質感がインストルメントパネル10に合わせられているので、デザイン的にインストルメントパネル10に溶け込ませてほとんど目立たなくすることができる。これによって、インストルメントパネル10まわりを一層すっきりさせることができる。
また、インストルメントパネル10全体のデザインの自由度を高めることができる。
【0019】
図5〜図7に示すように、車両の空調をオンにすると、モータ60が駆動し、グリル40がインストルメントパネル10の開口部10aから上へ突出される。この時、グリル40の上端部が蓋50に当たり、付勢手段70に抗して蓋50を閉位置から押し上げる。そして、グリル40が使用位置に位置され吹出し口44が車室に面するとともに、蓋50が開位置に位置される。この開位置の蓋50は、グリル40の背部に隠れる。このとき、蓋50は付勢手段70の付勢によりグリル40の上端部に押し当てられ安定状態になっている。
更に、グリル40の突出によりダクト連通口33が開口される。そして、エアコンユニットからの空調風が、ダクト連通口33、ケース30の内部、グリル40の底部開口、グリル40の内部を順次経て、吹出し口44から車室内に吹き出される。これによって、車室の空調を行なうことができる。
その後、空調を停止すると、モータ60の駆動によってグリル40が収容位置に戻る。蓋50は、付勢手段70の付勢によってグリル40に追随するようにして閉位置に戻る。
【0020】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の改変をなすことができる。
例えば、インストルメントパネル10以外の車両内装に設けられたベンチレーショングリル構造にも適用できる。デフ用のベンチレーショングリル構造にも適用できる。
グリル40は、回転に代えて昇降などのスライド動作により出没するようになっていてもよい。
蓋50は、回転に代えてスライド動作により開閉するようになっていてもよい。
蓋50にも駆動手段を接続し、その駆動力で蓋50が開閉されるようにしてもよい。
グリル40の出没と蓋50の開閉をリンク機構にて連携してもよく、更にグリル40と蓋50のうちどちらか一方にモータ60等の駆動手段を連結してもよい。
蓋50の色調や模様や質感を、インストルメントパネル10と異ならせてもよく、閉位置のときの蓋50が、インストルメントパネル10の表面と不連続的(非面一)になっていてもよい。
ケース30が、インストルメントパネル10と一体になっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るベンチレーショングリル構造を備えたインストルメントパネルを空調オフ状態で車室から見た正面図である。
【図2】図1の円部IIのベンチレーショングリル構造を、空調オフ状態で示す斜視図である。
【図3】前記ベンチレーショングリル構造を備えたインストルメントパネルを、空調オフ状態で図1のIII-III線に沿って示す断面図である。
【図4】前記ベンチレーショングリル構造を、空調オン状態で蓋を省略して示す斜視図である。
【図5】前記ベンチレーショングリル構造を備えたインストルメントパネルの空調オン状態の斜視図である。
【図6】前記ベンチレーショングリル構造を備えたインストルメントパネルを空調オン状態で別の角度から見た斜視図である。
【図7】前記ベンチレーショングリル構造を備えたインストルメントパネルを、空調オン状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
U ベンチレーショングリルユニット
10 インストルメントパネル(車両内装)
10a 開口部
20 ベンチレーションダクト
30 ケース
33 ダクト連通口
40 グリル
44 吹出し口
47 グリルの回転軸
50 蓋
52 蓋の回転軸
60 モータ(駆動手段)
70 付勢手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装に設けられたグリル収容穴と、
このグリル収容穴に収容された収容位置と、グリル収容穴から突出された使用位置との間で出没可能なグリルと、
このグリルを出没動作させる駆動手段と、
前記グリルが収容位置のとき前記グリル収容穴を閉じ、前記グリルが使用位置のとき開く蓋とを備えたことを特徴とする車両のベンチレーショングリル構造。
【請求項2】
前記グリルが、前記駆動手段によって回転軸のまわりに収容位置と使用位置との間で回転され、
前記蓋が、前記グリルの回転軸と平行な回転軸のまわりに回転可能になるとともに付勢手段にて閉方向に付勢されており、
前記グリルが、前記グリル収容穴から突出しているとき前記付勢手段に抗して前記蓋を開方向へ押すことを特徴とする請求項1に記載の車両のベンチレーショングリル構造。
【請求項3】
前記車両内装の裏側には、前記グリル収容穴を構成するケースが取り付けられており、このケースの側部にベンチレーションダクトとの連通口が形成され、この連通口が、前記収容位置のときのグリルの側部によって塞がれるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のベンチレーショングリル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−335184(P2006−335184A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161214(P2005−161214)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)