説明

車両のリアゲート構造

【課題】 強度を確保しつつ十分深い収納部を確保する。
【解決手段】 リアゲート2を、外周縁で互いに結合されたアウタパネル3とインナパネル4で構成するとともに、インナパネル4を環状に成形してその内周縁をアウタパネル3方向へ屈曲させ、かつリアゲート2の長手方向の複数位置にアウタパネル3とインナパネル4との間でゲート幅方向へ延びるリーンホースメントパネル51を設けて、これらリーンホースメントパネル51の両端部511,512をそれぞれインナパネル4の延出部45,46に接合して当該インナパネル4とで閉断面構造X1,X2を形成するようになし、かつ、リーンホースメントパネル51の中間部513をアウタパネル3近くまで湾曲させて、インナパネル4とリーンホースメントパネル51とで形成された凹陥部Rに収納容器6を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のリアゲート構造に関し、特に、収納部を設けたリアゲートの構造改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはトラックのリアゲートの内面を凹陥させて収納凹所を形成し、ここにラダーレールを挿置したものが示されている。しかし、ゲート内面を構成するインナパネルを凹陥成形することは成形時の制約等により収納凹所の深さを十分確保できないという問題がある。そこで、特許文献2では、バン型車の後部開口下半を開閉するリアゲートのインナパネルを環状に成形してこれの内周縁をアウタパネル方向へ凹陥させることにより比較的深い収納凹所を形成し、ここにスペアタイヤを収納するようにしたものが示されている。
【特許文献1】特開平7−132769
【特許文献2】特開2000−142494
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献2の構造では、上記特許文献1においてインナパネルとアウタパネルによって形成されていた閉断面構造が解消されてしまうために、リアゲート全体の強度が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、強度を確保しつつ十分深い収納部を確保することができる車両のリアゲート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、下端が車両後部開口(O)の下縁に軸支されて車両後部開口(O)を開閉する車両のリアゲート(2)において、当該リアゲート(2)を、外周縁で互いに結合されたアウタパネル(3)とインナパネル(4)で構成するとともに、インナパネル(4)を環状に成形してその内周縁をアウタパネル(3)方向へ屈曲させ、かつリアゲート(2)の長手方向の複数位置にアウタパネル(3)とインナパネル(4)との間でゲート幅方向へ延びるリーンホースメントパネル(51)を設けて、これらリーンホースメントパネル(51)の両端部(511,512)をそれぞれインナパネル(4)に接合して当該インナパネル(4)とで閉断面構造(X1,X2)を形成するようになし、かつ、リーンホースメントパネル(51)の中間部(513)をアウタパネル(3)近くまで湾曲させて、インナパネル(4)とリーンホースメントパネル(51)とで形成された凹陥部(R)を収納部とする。
【0006】
本発明においては、リーンホースメントパネルによってリアゲート全体の構造が強化されるとともに、特に、リーンホースメントパネルとインナパネルとの間に形成された閉断面構造によってゲート外周部の剛性が向上させられる。同時に、環状のインナパネルとリーンホースメントパネルによってリアゲートの内周部に十分深い収納部が形成される。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両のリアゲート構造によれば、強度を確保しつつ十分深い収納部を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1には本発明のリアゲートを備えるワンボックス車の後面図を示す。図1において、車両の後部開口Oは上半が、開口上縁に軸支されて上方へ回動するハッチドア1によって開閉され、下半は、開口下縁に軸支されて後方へ傾倒回動する横長のリアゲート2によって開閉される。
【0010】
図2には後方の水平姿勢へ開放傾倒させた状態のリアゲート2の、パネル部の斜視図を示す。また、図3にはリアゲートパネル部の平面図を、図4にはその断面図を示す。リアゲート2は全体として横長の略長方形をなし、外方(下方)へ膨出湾曲する断面形状のアウタパネル3(図4)と、外周縁がヘミング加工によって上記アウタパネル3の外周縁に結合されたインナパネル4とを備えている。インナパネル4はアウタパネル3の外周に沿った環状に成形されており(図3)、相対的に車両後方側(図3の下方)に位置する一方の長辺部は、アウタパネル3と間隔をおいて略水平に延びる内周部41とこれより上方に位置する外周部42(図4)を有している。また、インナパネル4の他方の長辺部は、アウタパネル3と間隔をおいて略水平に延びる内周部43とこれよりアウタパネル3の外周縁に向けて山形に下り傾斜する外周部44とを有している。
【0011】
インナパネル4の内周縁は下方のアウタパネルに向けて略直角に屈曲させられるとともに、各長辺部の内周部41,43には互いに対向する複数箇所でアウタパネル3に向けて延出する延出部45,46(図4)が形成されている。各延出部45,46の先端(下端)は互いに対向する内方へ水平に屈曲して、アウタパネル3に近い位置でこれと略平行な内端部451,461となっている。
【0012】
インナパネル4とアウタパネル3の間には上記延出部45,46に対応させてゲート長手方向の複数位置にリーンホースメントパネル51,52が配設されている(図3)。リーンホースメントパネル51,52は細長の板状体で、リーンホースメントパネル51(図4)は両端部がインナパネル4の対向する長辺部の外周部42と内周部43とにそれぞれ接合されている。図5にはリーンホースメントパネル51の端部512(図3)の断面を示し、当該端部512はハット型に成形されてその両側縁514,515が上記内周部43下面に溶接してある(図5の×印)。上記パネル51の端部511(図3)も同様の断面形状とされてインナパネル4の外周部42に溶接されている。リーンホースパネル51の中間部513は図6に示すような略Z型断面に成形されて、アウタパネル3に近い位置まで湾曲し(図4)、両端部511,512から中間部513に至る途中で、対向する延出部45,46の各先端451,461に接合されている。これにより、ゲート幅方向の両側で、インナパネルの内周部41,43、延出部45,46およびリーンホースメントパネル51によって閉断面構造X1,X2が形成される。リーンホースメントパネル52はリーンホースメントパネル51と相似形状としてあり、その両端部から中間部に至る途中で、対向する延出部45,46の各先端451,461(図4参照)に接合されて、ゲート幅方向の両側で、インナパネルの内周部41,43、延出部45,46およびリーンホースメントパネル52によって閉断面構造が形成される。このようにして、閉断面構造X1,X2がゲート長手方向の複数位置に形成される。
【0013】
このようなリーンホースメントパネル51,52によって、インナパネル4を環状としたことによって解消されていたアウタパネル3との閉断面構造が回復されてリアゲート2全体の構造が強化されるとともに、特に、リーンホースメントパネル51とインナパネル4との間に形成された閉断面構造X1,X2によってゲート外周部の剛性が向上させられる。
【0014】
環状のインナパネル4とリーンホースメントパネル51,52によってリアゲート2の内周部には十分深い略長方形の凹陥部R(図4)が形成され、ここに図7に示す蓋付きの収納容器6が設置される。収納容器6は外周のフランジ部61がインナパネル4上に位置させられて周方向の複数箇所で係止部材611によってインナパネル4に固定され、内周の矩形容器部62が上記凹陥部R内に挿入されている。蓋体63は容器部62を閉止できる大きさの矩形板体で、一側縁の複数箇所に突設された係止突起631が、収納容器6のフランジ部61に形成された取付開口611内に着脱可能に挿入されるとともに、他側縁の複数箇所に設けられた止め具632が、閉止状態(図4)ではフランジ部61の開口を貫通してインナパネル4の内周部41に形成された取付穴411内に着脱可能に挿入係止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】リアゲートを備えるワンボックス車の後面図である。
【図2】後方の水平姿勢へ開放傾倒した状態のリアゲートの、パネル部の斜視図である。
【図3】後方の水平姿勢へ開放傾倒した状態のリアゲートの、パネル部の平面図である。
【図4】後方の水平姿勢へ開放傾倒した状態のリアゲートの断面図で、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿ったリーンホースパネル端部の断面図である。
【図6】図3のVI−VI線に沿ったリーンホースパネル中間部の断面図である。
【図7】蓋体を開放した状態の収納容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
2…リアゲート、3…アウタパネル、4…インナパネル、51…リーンホースメントパネル、端部…511,512、中間部…513、O…後部開口、R…凹陥部、X1,X2…閉断面構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が車両後部開口の下縁に軸支されて車両後部開口を開閉する車両のリアゲートであって、外周縁で互いに結合されたアウタパネルとインナパネルで構成されたリアゲートにおいて、前記インナパネルを環状に成形してその内周縁をアウタパネル方向へ屈曲させ、かつ前記リアゲートの長手方向の複数位置に前記アウタパネルとインナパネルとの間でゲート幅方向へ延びるリーンホースメントパネルを設けて、これらリーンホースパネルの両端部をそれぞれ前記インナパネルに接合して当該インナパネルとで略三角形の閉断面構造を形成するようになし、かつ前記リーンホースメントパネルを前記アウタパネル近くまで湾曲させて、前記インナパネルとリーンホースメントパネルとで形成された凹陥部を収納部とした車両のリアゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−55920(P2008−55920A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231525(P2006−231525)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】