説明

車両のリアボディ構造

【課題】アッパバックメンバをリアサスペンション入力ポイントの直上位置に近づけつつ、アッパバックメンバの捻りに対する剛性が高い車両リアボディの構造を提供する。
【解決手段】アッパバックメンバ106は、リアホイールハウス102に対して上方に位置し、車幅方向に延びている。アッパバックメンバ106の車両前方側の側面は、その上端が車両後方側に位置するように鉛直面Vに対して角度θだけ傾斜する。第1ストレーナ部107Aは、アッパバックメンバ106の車両前方側の側面の車幅方向での両端部からアッパバックメンバ106の下面の高さ位置で折れ曲がることなく角度θのまま下方に延び、リアホイールハウス102に接続する。アッパバックメンバ106の車両前方の側面と第1ストレーナ部107Aとは、同一の鋼板から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクスルー機構を実現するのに適した車両のリアボディ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図4(部分斜視図)及び図5(部分端面図)には、車両のリアボディ構造の一例が模式的に示されており、同文献には、それまでの車両のリアボディ構造についての技術的課題を解決する発明が開示されている。詳細に述べると、特許文献1の段落0003〜0006には、同文献の図4及び図5に示される車両のリアボディ構造の説明として、「この種の車両は、…、左右の後輪の各ホイールハウス51に隣接して長さ方向を車両前後に向けたサイドメンバ52を設け、これらの左右のサイドメンバ52間にクロスメンバ53を横設している。」、「また、従来の車両は、クロスメンバ53の後上方位置であってCピラー55の基端近傍に、車両を横切るように断面階段形のアッパバックパネル56を配設し、離隔したクロスメンバ53とアッパバックパネル56とに架け渡すように、平板状に形成されたパーティションパネル60を設置している。」、「なお、従来の車両は、パーティションパネル60の上側部位がアッパバックパネル56と接合して閉断面を画成することで、アッパバックメンバ57を備えている。」、及び、「このように従来の車両は、リヤサスペンションタワー58からの入力の対策として、アッパバックパネル56とクロスメンバ53とをパーティションパネル60を介して結合することで、ボディの剛性を確保している。」との記載がある。そして、特許文献1は、車両のリヤボディ構造に、「リヤシートからトランクルームへ物の出し入れ等を可能とする、所謂トランクスルー仕様をこのような車両のリヤボディ構造に適用するには、パーティションパネル60が居住空間とトランクルームとを仕切るために不適応であり、これを回避するために、パーティションパネル60を取り除いて車両後部を構成すると、ボディの剛性が低下してしまう」という課題に言及している(特許文献1の段落0008参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両のリアボディ構造は、「パーティションパネルを備えていないが、リヤサスペンションタワー2を二つの補強部材(サスペンションタワー下方補強部材20,サスペンションタワー上方補強部材10)が支持している」ものである(同文献の段落0024参照)。特許文献1によれば、この車両のリアボディ構造によって、「従来のパーティションパネルを備えたセダンタイプの車両と同等の車体剛性が確保され」、「従来車両の剛性を確保するうえで採用することができなかった車両にトランクスルー仕様を適用することができる」とされる(同文献の段落0024参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−081899号公報
【特許文献2】特開2006−168434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の図5はあくまでも模式的な図にすぎず、実際のアッパバックメンバの断面は台形状ではなく略矩形状になっているという実情がある。というのも、アッパバックメンバの断面が台形状であると捻れ剛性が弱まってしまい、略矩形状にすることで捻れ剛性が高まるからである(本明細書にて図4等に基づいて後述)。断面が略矩形状になっているアッパバックメンバは、特許文献1での実施の形態で引用される同文献の図1、並びに、特許文献2の実施の形態で引用される同文献の図1及び図2に示されている。また、特許文献1にはアッパバックメンバの断面が台形状である旨の特段の記載もない。
【0006】
ここで、特許文献1に記載されるようにパーティションパネルを傾斜させて設けることが構造上要請されている車両のリアボディ構造を製造するに際して、断面が略矩形状であるアッパバックメンバを採用しようとすると、傾斜角度の違いによって必然的に、パーティションパネルとアッパバックメンバとの境界箇所に、折り目のような傾斜変換線があらわれる。その一例は、特許文献2の図1や図3に示されるアッパバックメンバ6と第二補強部材20との境界箇所である。別の一例は、図5(車両前方側から見た斜視図)及び図6(図5のB−B線端面図)に示す従来例の車両リアボディ901での傾斜変換線902であり、これは発明者が知見しているものである。この従来例の車両リアボディ901では、断面略矩形形状のアッパバックメンバ903と傾斜するストレーナ904との境界箇所に、傾斜変換線902があらわれる。図6は端面図であり、図6において傾斜変換線902は点状に示される。
【0007】
図5及び図6に示す車両リアボディ901の概略を述べる。ストレーナ904は、板状体をプレス加工して成形されたブラケット部材である。ストレーナ904は、ストレーナ前面904Aとストレーナ後面904Bとを有し、左右一対のリアホイールハウス905のそれぞれの上部から立設する。ストレーナ前面904Aは、車両前方側に位置し上方に向かうにつれて車両後方側に向かうよう傾斜する。ストレーナ後面904Bは、ストレーナ前面904Aよりも車両後方側に位置し、ストレーナ前面904Aに対面する。ストレーナ904の上端には、ブラケットパッケージトレイ906が固定される。左右一対のブラケットパッケージトレイ906には、リンフォース907が掛け渡されている。リンフォース907は、上面開口で断面コ字形状をなす。リンフォース907の開口部分は、ブラケットパッケージトレイ906や、このブラケットパッケージトレイ906に車幅方向に隣接し略水平方向に延展するアッパバックパネル908により閉じられる。このようにして、ブラケットパッケージトレイ906とリンフォース907とアッパバックパネル908とによって閉断面が形成され、アッパバックメンバ903が形成される。
【0008】
発明者は、このような車両リアボディ901での、リアサスペンション入力ポイント910からの振動入力を経路Fに従ってアッパバックメンバ903に如何に効率良く逃がすかを検討した。そして、発明者は、アッパバックメンバ903がリアサスペンション入力ポイント910の直上位置にあることが望ましいとの考えに至った。しかしながら、車両に対する形状についての要請によって、アッパバックメンバ903をリアサスペンション入力ポイント910の直上位置に位置付けるのは困難であるという実情がある。そこで、発明者は、アッパバックメンバ903がリアサスペンション入力ポイント910の直上位置に近づけることができるよう、車両のリアボディの構造を再検討した。
【0009】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、アッパバックメンバをリアサスペンション入力ポイントの直上位置に近づけつつ、アッパバックメンバの捻りに対する剛性が高い車両リアボディの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両のリアボディ構造は、車両の左右両側それぞれに設けられるリアホイールハウスと、前記リアホイールハウスに対して上方に位置し、車幅方向に長尺をなし、閉断面をなし、車両前方側の側面が、その上端が車両後方側に位置するように鉛直面に対して所定の角度だけ傾斜するアッパバックメンバと、前記アッパバックメンバの車両前方側の側面の車幅方向での両端部から前記アッパバックメンバの下面の高さ位置で折れ曲がることなく前記角度のまま下方に延びて前記リアホイールハウスに接続する第1ストレーナ部と、を備え、前記アッパバックメンバの車両前方の側面と前記第1ストレーナ部とは、同一の鋼板から形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アッパバックメンバの前面とストレーナの第1ストレーナ部とが一面化し、アッパバックメンバをリアサスペンション入力ポイントの直上位置に近づけつつ、アッパバックメンバの捻りに対する剛性が高い車両リアボディの構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】リアボディ構造の斜視図である。
【図2】リンフォースとストレーナとを省略して示すリアボディ構造の斜視図である。
【図3】図1のA−A線端面図である。
【図4】アッパバックメンバを模式的に示した側面端面図である。
【図5】発明者が知見する従来例の車両リアボディを車両前方側から見た斜視図である。
【図6】図5のB−B線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の一形態を、図1ないし図4に基づいて説明する。図1は、リアボディ構造の斜視図である。図2は、リンフォースとストレーナとを省略して示すリアボディ構造の斜視図である。リアボディ構造101は、リアホイールハウス102を有する。リアホイールハウス102は、車両後方寄りで車幅方向両端部のそれぞれに一対設けられる。リアホイールハウス102の内部には、リアタイア(図示せず)が配置される。なお、図1では、車幅方向右側に位置するリアホイールハウス102が示されている。車幅方向左側に位置するリアホイールハウスは、車両において左右対称の位置に設けられる。車幅方向左側に位置するリアホイールハウスの図示は、省略する。
【0014】
左右のリアホイールハウス102のそれぞれには、車両前後方向に延びるサイドメンバ103が、リアホイールハウス102の車幅方向内側に近接配置している。左右一対のサイドメンバ103の間には、クロスメンバ104が横設されている。サイドメンバ103及びクロスメンバ104のいずれも、断面コ字形状の長尺をなしていて、上面開口している。サイドメンバ103及びクロスメンバ104の上面には、フロアパネル105が配置される。フロアパネル105は、サイドメンバ103に接合して閉断面を形成する。また、フロアパネル105は、クロスメンバ104に接合して閉断面を形成する。
【0015】
リアボディ構造101は、アッパバックメンバ106を有する。アッパバックメンバ106は、リアホイールハウス102よりも上方に位置し、車両を横切るように車幅方向に長尺をなしている。アッパバックメンバ106は、ブラケットパッケージトレイ106Aとリンフォース106Bとアッパバックパネル106Cとストレーナ107の第1ストレーナ構成体111とにより構成され、閉断面をなす。ここで、ブラケットパッケージトレイ106Aは、リアホイールハウス102から上方に延びる支持部材(図示せず)に支持されているものである。
【0016】
リアボディ構造101は、ストレーナ107を有する。ストレーナ107は、リアホイールハウス102の上部から上方に立設する。ストレーナ107は、車両前方側に位置し上方に向かうにつれて車両後方側に傾斜する第1ストレーナ構成体111と、第1ストレーナ構成体111よりも車両後方側に位置して第1ストレーナ構成体111に対面する第2ストレーナ構成体112と、第3ストレーナ構成体113(図3に基づいて後述)とを含む。第1ストレーナ構成体111の上端部分は、アッパバックメンバ106の前側面の一部をなしている。第1ストレーナ構成体111は、第1ストレーナ部107Aとして機能する。第2ストレーナ構成体112は、第2ストレーナ部107Bとして機能する。
【0017】
本実施の形態では、アッパバックメンバ106とリアホイールハウス102とが、ストレーナ107によって接続される。そして、アッパバックメンバ106の車両前方側の側面(前側面106P)とストレーナ107の第1ストレーナ部107Aとが、折れ目を形成すること無く面一に繋がっている。
【0018】
図3は、図1のA−A線端面図である。図3を参照し、リアボディ構造101の詳細について述べる。図3に示される格子の1マスの一辺は、10センチメートルである。ストレーナ107を構成する第1ストレーナ構成体111、第2ストレーナ構成体112及び第3ストレーナ構成体113は、いずれも鋼板をプレス加工して形成されるものであり、それぞれ別体である。
【0019】
第1ストレーナ構成体111は、図3に示す固定点Pにてリアホイールハウス102と接続する。第1ストレーナ構成体111は、側面視において固定点Pを通る鉛直面Vに対し車両後方側に所定の角度θだけ傾斜するよう傾斜している。角度θの範囲は、0度〜30度である。望ましい角度θは、略20度である。また、固定点Pは、リアサスペンション入力ポイントS(後述)よりも車両前方側に位置する。第1ストレーナ構成体111は、側面視において固定点Pの箇所で折れ曲がっている。このため、第1ストレーナ構成体111では、固定点Pを通り車幅方向に延びる折れ線があらわれる。第1ストレーナ構成体111における固定点Pの近傍では、第3ストレーナ構成体113が車両後方側に取付けられ、固定点Pでの折れ曲がりによる第1ストレーナ構成体111の剛性低下を抑えている。
【0020】
第1ストレーナ構成体111の上端には、余白部106Aaが溶接取付される。この余白部106Aaは、ブラケットパッケージトレイ106Aの前方端部分を下方に折り曲げで形成されるものである。余白部106Aaは、第1ストレーナ構成体111と略同じ角度に傾斜している。
【0021】
ブラケットパッケージトレイ106Aの下面には、リンフォース106Bの上段部106Baが取付けられる。この上段部106Baは、リンフォース106Bの最上部をなしている。リンフォース106Bには、一枚の鋼板をプレス加工することによって、この上段部106Baと、上段部106Baの前端から下方に延びる連結部106Bbと、連結部106Bbの下端から106Baと平行に前方に延びる下段部106Bcと、下段部106Bcの前端から下方に延びるフランジ部106Bdとが形成される。フランジ部106Bdは、第1ストレーナ構成体111の後方側の面に溶接取付されている。この溶接取付箇所の上端であって、下段部106Bcとフランジ部106Bdとの折目箇所を、結合点Qと呼ぶ。結合点Qの高さは、アッパバックメンバ106の下面の高さ位置に一致する。
【0022】
ところで、図3に示されるのは、図1のA−A線端面図であり、アッパバックメンバ106の端部部分が示されていることになる。図1及び図3に示されるように、アッパバックメンバ106の端部は、ブラケットパッケージトレイ106Aと、リンフォース106Bの連結部106Bb及び下段部106Bcと、第1ストレーナ構成体111とにより構成される。他方、アッパバックメンバ106の中腹部分では、図1に示されるように、前端部分を下方に折り曲げられたアッパバックパネル106Cと、リンフォース106Bの連結部106Bb及び下段部106Bcとにより閉断面が構成される。ブラケットパッケージトレイ106Aとアッパバックパネル106Cとは、互いに車幅方向に隣り合ってアッパバックメンバ106の上面をなす。また、第1ストレーナ構成体111と下方に折り曲げられたアッパバックパネル106Cの前端部分とは、互いに車幅方向に隣り合ってアッパバックパネル106Cの前面をなす。第1ストレーナ構成体111と下方に折り曲げられたアッパバックパネル106Cの前端部分とは、いずれも角度θだけ傾斜している。なお、アッパバックメンバ106の中腹部分においても、アッパバックメンバ106の下面はリンフォース106Bの下段部106Bcにより形成され、アッパバックメンバ106の後面は、リンフォース106Bの連結部106Bbにより形成される。
【0023】
第1ストレーナ構成体111は、アッパバックメンバ106の車両前方にある側面の車幅方向での両端部から、鉛直に対して角度θのままで下方に延び、リアホイールハウスに接続する。ここで重要なのは、第1ストレーナ構成体111が、アッパバックメンバの下面の高さ位置で折れ曲がっていないということである。第1ストレーナ構成体111と余白部106Aaとは、ストレーナ107の第1ストレーナ部107Aを構成する。
【0024】
第2ストレーナ構成体112は、第2ストレーナ部107Bとして機能するもので、ブラケットパッケージトレイ106Aの下方に位置する。第2ストレーナ構成体112は、アッパバックメンバ106の車両後方側の側面から下方に延び、下方に向かうに従って前方に向かうように湾曲し、途中で略鉛直になるように湾曲方向が変わって、リアサスペンション入力ポイントS(後述)よりも車両後方側にある固定点Rでリアホイールハウス102に接続する。
【0025】
ところで、リアホイールハウス102には、リアサスペンション(図示せず)からの振動が入力されるリアサスペンション入力ポイントSがある。このリアサスペンション入力ポイントSは、車両の性能により定まるものであり、側面視で見て固定点Pや固定点Rよりも下方に位置する。前述の固定点P及び固定点Rは、車両前後方向に見てリアサスペンション入力ポイントSを挟む位置に位置付けられる。第1ストレーナ構成体111は固定点Pから、第2ストレーナ構成体112は固定点Rから、それぞれ上方に向かうにつれて車両後方側に傾いている。アッパバックメンバ106は、車両を側面視で見て、リアサスペンション入力ポイントSを通り第1ストレーナ構成体111と平行に延びる仮想線Tの延長上に位置する。
【0026】
本実施の形態のリアボディ構造101では、第1ストレーナ構成体111によってアッパバックメンバ106の前面とストレーナ107の第1ストレーナ部107Aとが一面化し、結合点Qに折れ点が無くなって、アッパバックメンバ106の断面が台形状でありながらアッパバックメンバ106で生じる捻れに対する剛性が高まって、アッパバックメンバをリアサスペンション入力ポイントの直上位置に近づけつつ、アッパバックメンバの捻りに対する剛性が高い車両リアボディの構造を提供することができる。その結果、特許文献1に記載のサスペンションタワー上方補強部材(第一補強部材)のようなガセットを用いなくても充分使用に耐えられる程の剛性が生まれる。これにより、従来と同じ程度のリアボディ構造101の捻り剛性を求めるのであればリアボディ構造101の質量低減を実現でき、リアボディ構造101の質量を従来と同じ程度に設定することが許されるのであれば、リアボディ構造101の捻り剛性の向上を実現することができる。
【0027】
図4は、アッパバックメンバを模式的に示した側面端面図である。図4、図6及び図3に基づいて、従来例と本実施の形態との捻れ剛性の違いについて検討を行う。なお、図4では、従来例のアッパバックメンバ903の断面形状(従来断面A)は矩形状に示されており、本実施の形態でのアッパバックメンバ106の断面形状(新断面B)は台形状に示されている。また、図4では、アッパバックメンバ903の断面形状の面積とアッパバックメンバ106の断面形状の面積とは、等しいとする。
【0028】
まず、図4を参照する。従来断面Aについては図4中の固定点A1で、新断面Bについては図4中の固定点B1で固定された状態で、従来断面A及び新断面Bのいずれについても、捻り中心Oを中心として矢印Mの回転方向に同一の入力モーメントで捻られた場合を想定する。捻り中心Oと図4中の変位点A2との距離αは、捻り中心Oと図4中の変位点B2との距離βよりも大きい。このことから、変位点A2の変位量は、変位点B2の変位量よりも小さい。これより、従来断面Aのほうが、新断面Bよりも捻り剛性が高いといえる。
【0029】
次いで、図6(従来例)と図3(本実施の形態)とを参照する。従来例では、リアサスペンション入力ポイント910からの振動の入力が、ストレーナ前面904Aを伝って、傾斜変換線902を通り、アッパバックメンバ903に伝わり、傾斜変換線902を回転運動の中心(固定点A1)としてアッパバックメンバ903の変位点A2が回転する。この回転は、固定点A1と変位点A2との距離LAに応じて抑制される。他方、本実施の形態では、リアサスペンション入力ポイントSからの振動の入力が、ストレーナ107の第1ストレーナ構成体111を伝って、アッパバックメンバ106に伝わり、固定点Pを回転運動の中心(固定点B1)としてアッパバックメンバ106の変位点B2が回転する。この回転の抑制には、固定点B1と変位点B2との距離LBが効く。回転運動の中心と変位点との距離が大きいほど変位点の回転運動は強く抑制される。このため、本実施の形態のほうが、従来例と比較して、変位点の回転運動を強く抑制し、アッパバックメンバの捻り剛性が高いといえる。
【符号の説明】
【0030】
101 リアボディ構造
102 リアホイールハウス
106 アッパバックメンバ
107A 第1ストレーナ部
107B 第2ストレーナ部
P 固定点(第1ストレーナ部とリアホイールハウスとの接続箇所)
R 固定点(第2ストレーナ部とリアホイールハウスとの接続箇所)
S リアサスペンション入力ポイント
T 仮想線(リアサスペンション入力ポイントを通り第1ストレーナ部と平行に延びる仮想線)
V 鉛直面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右両側それぞれに設けられるリアホイールハウスと、
前記リアホイールハウスに対して上方に位置し、車幅方向に長尺をなし、閉断面をなし、車両前方側の側面が、その上端が車両後方側に位置するように鉛直面に対して所定の角度だけ傾斜するアッパバックメンバと、
前記アッパバックメンバの車両前方側の側面の車幅方向での両端部から前記アッパバックメンバの下面の高さ位置で折れ曲がることなく前記角度のまま下方に延びて前記リアホイールハウスに接続する第1ストレーナ部と、
を備え、
前記アッパバックメンバの車両前方の側面と前記第1ストレーナ部とは、同一の鋼板から形成される、
車両のリアボディ構造。
【請求項2】
前記第1ストレーナ部と前記リアホイールハウスとの接続箇所は、リアサスペンションの入力ポイントよりも車両前方側に位置する、
請求項1記載の車両のリアボディ構造。
【請求項3】
前記アッパバックメンバの車両後方の側面から下方に延び、リアサスペンションの入力ポイントよりも車両後方側で前記リアホイールハウスに接続する第2ストレーナ部を備える、
請求項1又は2記載の車両のリアボディ構造。
【請求項4】
前記第1ストレーナ部と前記リアホイールハウスとの接続箇所は、前記第2ストレーナ部と前記リアホイールハウスとの接続箇所よりも車両前方側に位置する、
請求項3記載の車両のリアボディ構造。
【請求項5】
前記アッパバックメンバは、車両を側面視で見て、リアサスペンションの入力ポイントを通り前記第1ストレーナ部と平行に延びる仮想線の延長上に位置する、
請求項1から4のいずれか一に記載の車両のリアボディ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52852(P2013−52852A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194409(P2011−194409)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】