説明

車両のルーフ構造

【課題】 ルーフガラスおよびルーフサイドレールの接続部の外観を確保しながら、ルーフキャリヤの荷重によるルーフガラスの割れを防止する。
【解決手段】 ルーフガラス12を支持するルーフパネル11とルーフサイドレール15との結合部に形成されたモール取付溝19に装着されるルーフモール16を、モール取付溝19に嵌合する支持脚22,23と、ルーフキャリヤ31のキャリヤベース39を支持するモール本体21とで構成する。ルーフパネル11およびルーフガラス12に跨がるように配置したモール本体21の少なくともキャリヤベース39およびルーフパネル11に当接する部分に芯金24を埋設したので、モール本体21でルーフガラス12からルーフサイドレール15までを連続的に覆って外観の向上を図ることができるだけでなく、キャリヤベース39から加わる荷重をルーフガラス12に伝達することなくルーフパネル11に効果的に伝達し、ルーフガラス12の破損を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央の開口にルーフガラスを支持するルーフパネルとルーフサイドレールとの結合部に沿って形成されたモール取付溝にルーフモールを装着する車両のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーフサイドレールとドアガラスのウエザーストリップとの間にルーフモールを配置した車両において、従来はルーフモールに取り付けていたルーフキャリヤをルーフサイドレールに取り付けることでルーフモールの変形や損傷を防止するものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】実用新案登録第2540607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ルーフパネルの中央部に大型のルーフガラスを配置した車両では、ルーフガラスの側縁とルーフサイドレールとが接近しているため、ルーフサイドレールに装着したルーフキャリヤの荷重がルーフガラスの側縁に加わってガラス割れが発生する可能性があった。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ルーフガラスおよびルーフサイドレールの接続部の外観を確保しながら、ルーフキャリヤの荷重によるルーフガラスの割れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、中央の開口にルーフガラスを支持するルーフパネルとルーフサイドレールとの結合部に沿って形成されたモール取付溝にルーフモールを装着する車両のルーフ構造において、前記ルーフモールは、モール取付溝に嵌合する支持脚と、ルーフキャリヤのキャリヤベースを支持するモール本体とを備えており、前記モール本体はルーフパネルおよびルーフガラスに跨がるように配置されるとともに、少なくともキャリヤベースおよびルーフパネルに当接する部分に芯金が埋設されたことを特徴とする車両のルーフ構造が提案される。
【0006】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記芯金はルーフモールのモール本体から支持脚へと延びていることを特徴とする車両のルーフ構造が提案される。
【0007】
尚、実施例の外側支持脚22および内側支持脚23は本発明の支持脚に対応する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成によれば、中央の開口にルーフガラスを支持するルーフパネルとルーフサイドレールとの結合部に沿って形成されたモール取付溝に装着されるルーフモールを、前記モール取付溝に嵌合する支持脚と、ルーフキャリヤのキャリヤベースを支持するモール本体とで構成し、ルーフパネルおよびルーフガラスに跨がるように配置したモール本体の少なくともキャリヤベースおよびルーフパネルに当接する部分に芯金を埋設したので、モール本体でルーフガラスからルーフサイドレールまでを連続的に覆って外観の向上を図ることができるだけでなく、ルーフキャリヤのキャリヤベースから加わる荷重をルーフガラスに伝達することなくルーフパネルに効果的に伝達し、ルーフガラスの破損を確実に防止することができる。
【0009】
請求項2の構成によれば、芯金がルーフモールのモール本体から支持脚へと延びているので、芯金によって支持脚の剛性を高めてモール取付溝に対するルーフモールの保持を確実なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図4は本発明の一実施例を示すもので、図1はRV車両の部分斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の要部拡大図、図4はルーフキャリヤの装着状態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、車両Vのルーフパネル11の前部に装着される大型のルーフガラス12は、フロントガラス13の上端近傍からリヤドア14の後端近傍まで車体前後方向に延びており、かつ左右のルーフサイドレール15,15を接続するように車体左右方向に延びている。左右のルーフサイドレール15,15とルーフパネル11との境界部に、車体前後方向に延びるルーフモール16,16が装着される。
【0013】
図2に示すように、ルーフパネル11の中央部にはルーフガラス12を装着するための開口17が形成されており、この開口17の周縁部を補強するようにルーフパネル11の下面にスチフナ18が溶接W1,W2される。即ち、ルーフパネル11の内外のフランジ11a,11bとスチフナ18の内外のフランジ18a,18bとを溶接W1,W2することで、開口17を囲む部分でルーフパネル11およびスチフナ18は閉断面を構成する。ルーフパネル11の内外のフランジ11a,11bに挟まれた位置に、車幅方向外側に位置して上向きに突出する凸部11cと、その凸部11cの車幅方向内側に位置する平坦部11dとが形成される。
【0014】
ルーフサイドレール15の車幅方向内端は下向きに折り曲げられており、その途中に概ね水平なステップ部15aが形成されるとともに、その下端に車幅方向内向きに折り曲げられたフランジ15bが形成される。ルーフサイドレール15のフランジ15bは、ルーフパネル11およびスチフナ18の車幅方向外側のフランジ11b,18bと重ね合わされて溶接W2されており、これによりルーフパネル11およびルーフサイドレール15間に車体前後方向に延びるモール取付溝19が形成される。ルーフガラス12の周縁部は、ルーフパネル11の平坦部11dにダムラバー20および接着剤25を介して固定されており、この状態でルーフガラス12の周縁部の上面はルーフパネル11の凸部11cの上面と略同じ高さに整列する。
【0015】
図2および図3に示すように、ルーフモール16はモール取付溝19から露出するモール本体21と、このモール本体21から下方に延びる外側支持脚22および内側支持脚23とを備える。モール本体21、外側支持脚22および内側支持脚23は芯金24と一体にモールドされており、二つ折りに折り返された芯金24の一端側はモール本体21および外側支持脚22に沿って延び、他端側は内側脚支持脚23に沿って延びている。このように、ルーフモール16のモール本体21、外側支持脚22および内側支持脚23に沿って芯金24を取り付けたので、ルーフモール16を薄肉にしても芯金24によって剛性を高めることで、外側支持脚22および内側支持脚23によるルーフモール16の保持を確実なものにすることができる。
【0016】
モール本体21は芯金24からルーフサイドレール15側に張り出す外側リップ部21aと、芯金24からルーフガラス12側に張り出す内側リップ部21bと、ルーフサイドレール15に近い車幅方向外側部分で下向きに傾斜する傾斜部21cとを備える
ルーフモール16をルーフパネル11およびルーフサイドレール15間のモール取付溝19に装着すると、外側支持脚22の下端に設けた外側爪部22aがルーフサイドレール15のステップ部15aの下側の内壁15cに当接して上向きに弾性変形し、かつ内側支持脚23の下端に設けた内側爪部23aがルーフパネル11の凸部11cの下側の内壁11eに弾発的に当接当接して上向きに弾性変形することで、ルーフモール16がモール取付溝19に強固に保持される。このとき、内側支持脚23の上部下面に突設した突起23bがルーフパネル11の凸部11cの上面に当接することで、ルーフモール16の上下位置が規制される。
【0017】
その結果、ルーフモール16のモール本体21の外側リップ部21aはルーフサイドレール15のステップ部15aに上面に弾発的に当接し、モール本体21の内側リップ部21bはルーフガラス12の上面に弾発的に当接する。そしてルーフサイドレール15のステップ部15aの上側の内壁15dとルーフモール16のモール本体21の傾斜部21cとにより、図3に斜線を施して示す雨垂れ容積が確保される。
【0018】
図1および図4に示すように、車両Vのルーフ上に装着されるルーフキャリヤ31は、物品を載置する矩形枠状のキャリヤ本体32と、キャリヤ本体32の下面を支持するように車幅方向に延びる前後2本のクロス部材33,33と、各々のクロス部材33の左右両端に固定された脚部34,34と、各々の脚部34に支軸35を介して上端を揺動自在に枢支されたクランプ部材36と、クランプ部材36を貫通して脚部34の雌ねじ34aに螺合するボルト37と、ボルト37を操作するためのノブ38とを備える。脚部34の下端には断面円弧状の当接部34bが形成され、クランプ部材36の下端にはルーフサイドレール15の側端縁に係合可能に折り曲げられた係止部36aが形成される。
【0019】
ルーフキャリヤ31と共同するキャリヤベース39は、合成樹脂製の裏板40で下面を支持された金属プレート41と、これら裏板40および金属プレート41を被覆するゴム製の本体部42とで構成される。本体部42の上面には前記脚部34の当接部34bが嵌合する溝42aが形成されており、この溝42aの底部に前記金属プレート41に形成した円弧状の凹部41aが臨んでいる。また本体部42の下面に突出する係止突起42bは、ルーフサイドレール15の壁面15dに当接可能である。
【0020】
しかして、ルーフパネル11とルーフサイドレール15との結合部に沿って形成されたモール取付溝19に装着されるルーフモール16のモール本体21が、その一側縁にモール取付溝19から張り出してルーフガラス12の周縁部を覆う内側リップ部21bを備え、他側縁にモール取付溝19の底に向けて滑らかに下降する傾斜部21cを備えているので、モール本体21でルーフサイドレール15からルーフガラス12までを連続的に覆って外観を向上できるだけでなく、内側リップ部21bでルーフガラス12のエッジを覆って保護することができる。
【0021】
しかもモール取付溝19の内壁15dとモール本体21の傾斜部21cとで区画される凹部によってルーフパネル11側からルーフサイドレール15を超えて雨水が垂れるのを抑制しながら、その凹部をモール取付溝19のルーフサイドレール15側に形成して目立ち難くすることにより、外観のへの影響を最小限に抑えることができる。
【0022】
ルーフキャリヤ31を車体に固定するには、先ず左右各2個のキャリヤベース39を、ルーフサイドレール15およびルーフモール16に跨がるように装着する。このとき、各キャリヤベース39の本体部42の下面に突設した係止突起42bがルーフサイドレール15の内壁15dに係合する。
【0023】
続いて、ルーフキャリヤ31の4個の脚部34の下端の当接部34bを、キャリヤベース39の本体部42の溝42aに嵌合させて金属プレート41の凹部41aに当接させるとともに、クランプ部材36の係止部36aをルーフサイドレール15の側端縁に係合させる。
【0024】
この状態からノブ38を操作してボルト37を脚部34の雌ねじ34aに螺入すると、ノブ38の押圧部38aに押されたクランプ部材36が支軸35まわりに揺動することで、クランプ部材36の係止部36aと脚部34の当接部34bとが相互に接近する。その結果、クランプ部材36の係止部36aがルーフサイドレール15の側端縁に強く押し付けられるとともに、脚部34の当接部34bに溝42aを押圧されたキャリヤベース39の係止突起42bがルーフサイドレール15の内壁15dに強く押し付けられることで、ルーフキャリヤ31がルーフの上方に固定される。
【0025】
ルーフキャリヤ31およびそれに搭載された物品の重量はキャリヤベース39に加わり、その一部はキャリヤベース39から直接ルーフサイドレール15に支持され、他の一部はルーフモール16のモール本体21を介してルーフパネル11の凸部11cに支持される。このとき、キャリヤベース39およびルーフパネル11の凸部11cに当接するモール本体21の内部に芯金24が埋設されており、かつその芯金24は二つ折りにされて厚くなっているため、キャリヤベース39の荷重をルーフパネル11の凸部11cに効果的に伝達して支持することができる。しかもモール本体21がルーフガラス12を覆う部分は可撓性を有する内側リップ部21bであるため、ルーフガラス12に荷重が伝達されて破損するのを確実に防止することができる。
【0026】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0027】
例えば、実施例ではRV車両を例示したが、本発明は他の任意のタイプの車両に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】RV車両の部分斜視図
【図2】図1の2−2線拡大断面図
【図3】図2の要部拡大図
【図4】ルーフキャリヤの装着状態を示す図
【符号の説明】
【0029】
11 ルーフパネル
12 ルーフガラス
15 ルーフサイドレール
16 ルーフモール
17 開口
19 モール取付溝
21 モール本体
22 外側支持脚(支持脚)
23 内側支持脚(支持脚)
24 芯金
31 ルーフキャリヤ
39 キャリヤベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央の開口(17)にルーフガラス(12)を支持するルーフパネル(11)とルーフサイドレール(15)との結合部に沿って形成されたモール取付溝(19)にルーフモール(16)を装着する車両のルーフ構造において、
前記ルーフモール(16)は、モール取付溝(19)に嵌合する支持脚(22,23)と、ルーフキャリヤ(31)のキャリヤベース(39)を支持するモール本体(21)とを備えており、
前記モール本体(21)は、ルーフパネル(11)およびルーフガラス(12)に跨がるように配置されるとともに、少なくともキャリヤベース(39)およびルーフパネル(11)に当接する部分に芯金(24)が埋設されたことを特徴とする車両のルーフ構造。
【請求項2】
前記芯金(24)はルーフモール(16)のモール本体(21)から支持脚(22,23)へと延びていることを特徴とする、請求項1に記載の車両のルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−168679(P2006−168679A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367828(P2004−367828)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】