説明

車両のルーフ構造

【課題】ルーフパネルの振動による車室内のこもり音を低減できる車両のルーフ構造の提供を課題とする。
【解決手段】車両12のルーフ部16に設けられたルーフパネル18の車幅方向両端部に車体前後方向に沿って設けられた左右一対のルーフサイドレール20と、ルーフサイドレール20間に設けられ、ルーフパネル18とで形成する閉断面部の断面積が車幅方向中央部において最小となるルーフリインフォースメント44と、ルーフサイドレール20におけるルーフリインフォースメント44と車体前後方向がラップする部分に設けられ、カーテンエアバッグ装置56を保持する保持部材50と、一端部62がルーフリインフォースメント44に複数箇所で連結され、他端部64が保持部材50を介してルーフサイドレール20に連結されると共に、中途部に他端部64側よりも一端部62側を高位とする段差部66が形成された連結部材60と、を備えたルーフ構造10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーフパネルの振動による車室内のこもり音を低減するために、ルーフリインフォースメントの車幅方向両端部をルーフサイドレールの車体上面部及び車体下面部に結合したルーフ構造は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−26020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、ルーフパネルの振動による車室内のこもり音を低減する手段は種々提案されており、上記とは別の手段でルーフパネルの振動による車室内のこもり音を低減することも求められている。
【0004】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、ルーフパネルの振動による車室内のこもり音を低減できる車両のルーフ構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両のルーフ構造は、車両のルーフ部に設けられたルーフパネルと、前記ルーフパネルの車幅方向両端部に車体前後方向に沿って設けられた左右一対のルーフサイドレールと、前記ルーフサイドレール間に車幅方向に沿って設けられ、前記ルーフパネルとで形成する閉断面部の断面積が車幅方向中央部において最小となるルーフリインフォースメントと、少なくとも前記ルーフサイドレールにおける前記ルーフリインフォースメントと車体前後方向がラップする部分に設けられ、カーテンエアバッグ装置を保持する保持部材と、一端部が前記ルーフリインフォースメントに車幅方向に離隔した複数箇所で連結され、他端部が前記保持部材を介して前記ルーフサイドレールに連結されるとともに、中途部に前記他端部側よりも前記一端部側を高位とする段差部が形成された連結部材と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、左右一対のルーフサイドレールの振動に伴って、各ルーフサイドレールが車体下方向へ変位し、車幅方向内側へ捩れると、保持部材を介して連結部材の他端部側が車体下方向へ変位する。ここで、その連結部材の中途部には、一端部側が他端部側よりも高位となる段差部が形成されているため、連結部材の他端部側が車体下方向へ変位すると、段差部を支点として、一端部側に車体上方向に向かう力が発生する。
【0007】
そして、ルーフリインフォースメントは車幅方向中央部の閉断面部の断面積が最小となっているので、連結部材の一端部側に車体上方向に向かう力が発生すると、その一端部側が連結されているルーフリインフォースメントが車体上方向へ変位する。つまり、ルーフリインフォースメントはルーフサイドレールと逆位相に変位するため、ルーフパネルの振動を抑えることができ、ルーフパネルの振動による車室内のこもり音を低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、ルーフパネルの振動による車室内のこもり音を低減できる車両のルーフ構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。図1はカーテンエアバッグ装置56が取り付けられた車両12の概略斜視図であり、図2は本実施形態に係るルーフ構造10を示す概略斜視図である。また、図3は本実施形態に係るルーフ構造10を示す概略断面図であり、図4はその一部を拡大して示す概略断面図である。
【0010】
そして、図5は本実施形態に係るルーフ構造10の作用を示す概略断面図である。なお、各図において適宜示す矢印UPは車体上方向を示し、矢印FRは車体前方向を示し、矢印INは車幅方向内側を示す。
【0011】
図1〜図4で示すように、自動車などの車両12のルーフ部16には、車室14のルーフを構成するルーフパネル18が備えられている。そして、ルーフパネル18の車幅方向両端部には、車体前後方向に延在する剛性の高い車体骨格部材である左右一対のルーフサイドレール20が設けられている。
【0012】
各ルーフサイドレール20は、車幅方向内側に配置されるレールインナパネル22と、車幅方向外側に配置されるレールアウタパネル24と、を含んで構成されており、レールインナパネル22、レールアウタパネル24は、それぞれの上端側及び下端側が互いに接合されることで、閉断面構造を形成するようになっている。
【0013】
また、レールインナパネル22とレールアウタパネル24の下端側における接合部分は、車体下方側へ向けてフランジ状に突出しており、この接合部分で、かつ後述するセンターピラー30の結合部分を除く部位には、オープニングウエザストリップ26が取り付けられている。
【0014】
センターピラー30は、車体上下方向に延在する車体骨格部材であり、車幅方向内側に配置されるピラーインナパネル32と、車幅方向外側に配置されるピラーアウタパネル34と、ピラーインナパネル32とピラーアウタパネル34との間に配置されるピラーリインフォースメント36と、を含んで構成されている。
【0015】
ピラーインナパネル32、ピラーリインフォースメント36、ピラーアウタパネル34の周縁部には、それぞれフランジ部32A、36A、34Aが形成されており、各フランジ部32A、36A、34Aが互いに接合されることで、センターピラー30が閉断面構造となるように構成されている。
【0016】
そして、上記接合部分にピラーインナパネル32の上端部とピラーリインフォースメント36の上端部が接合されるようになっている(図2参照)。なお、レールアウタパネル24とピラーアウタパネル34とは一体化されており、共にサイメンアウタの一部を構成するようになっている。
【0017】
また、レールインナパネル22とレールアウタパネル24の上端側における接合部分は、車幅方向内側へ向けてフランジ状に突出されており、レールインナパネル22とレールアウタパネル24の上端側における接合部分の間には、ルーフパネル18の車幅方向外側端部18Aが重ね合わされて接合されている。なお、以下において、この接合部分を接合部28とする。
【0018】
また、ルーフパネル18の車幅方向外側端部18A(接合部28)と、レールアウタパネル24の車幅方向内側端部24A(接合部28)は、それぞれ車体下方側へ向かって屈曲成形されている。これにより、ルーフ部16の車幅方向両端部には、接合部28を底壁とする溝部Gが車体前後方向に形成される構成である。
【0019】
また、センターピラー30の車体前方側には、車体上下方向に延在する車体骨格部材としてのフロントピラー38が、ルーフサイドレール20と連続的に設けられている。そして、このフロントピラー38の車体上方側における左右のルーフサイドレール20間には、車幅方向に延在する車体骨格部材としてのフロントルーフクロスメンバ40が架設されている。
【0020】
また、センターピラー30の結合部分における左右のルーフサイドレール20間には、車幅方向に延在する車体骨格部材としてのセンタールーフクロスメンバ42が架設されており、フロントルーフクロスメンバ40とセンタールーフクロスメンバ42との間における左右のルーフサイドレール20間には、車幅方向に延在するルーフリインフォースメント44が架設されている。
【0021】
このルーフリインフォースメント44は、断面略ハット状に形成されており、その側壁部46の車体上方側において、それぞれ車体前後方向に延設されるフランジ部48は、図2の底面視で示すように、略千鳥状となるように形成されている。そして、このフランジ部48が、ルーフパネル18にマスチック(接着剤)等の接合手段によって接合されることにより、ルーフリインフォースメント44とルーフパネル18とで閉断面構造(閉断面部)を形成するようになっている。そして更に、このルーフリインフォースメント44は、車幅方向中央部の閉断面部の断面積が最小となるように構成されている。
【0022】
また、ルーフサイドレール20のレールインナパネル22の車幅方向内側には、ルーフサイドレール20に沿って車体前後方向に設けられるカーテンエアバッグ装置56を保持する保持部材としてのブラケット50が、所定の間隔を隔てて複数取り付けられている(図1参照)。このブラケット50は、レールインナパネル22にボルト52及びウエルドナット53等の取付手段によって取り付けられており、カーテンエアバッグ装置56の内部には、カーテンエアバッグ袋体(図示省略)が折り畳まれた状態で収納されている。
【0023】
なお、ブラケット50は、図1で示したように、ルーフサイドレール20に沿って複数設けられるが、図2で示すように、ルーフサイドレール20におけるルーフリインフォースメント44と車体前後方向がラップする部分(ルーフリインフォースメント44の車幅方向両外側への延長線上)には、少なくとも配設されるようになっている。
【0024】
そして、そのルーフリインフォースメント44と車体前後方向がラップする部分(ルーフリインフォースメント44の車幅方向両外側への延長線上)に設けられたブラケット50と、そのルーフリインフォースメント44とを、そのルーフリインフォースメント44の長手方向(上記延長線上)に沿って連結する連結部材60が設けられている。
【0025】
すなわち、この連結部材60の一端部である車幅方向内側端部(以下「内端部」という)62の車体前後方向両側の辺縁部には、車体上方側へ向かって屈曲された側壁部62Aが形成されており、その側壁部62Aの内面側における間隔が、ルーフリインフォースメント44の側壁部46の外面側における間隔と同等とされている。
【0026】
したがって、この連結部材60の内端部62は、車体下方側からルーフリインフォースメント44の車幅方向外側端部に嵌合し、各側壁部46の外面に各側壁部62Aの内面が、スポット溶接等の接合手段68によって車幅方向に離隔した複数箇所で接合される(図示のものは車幅方向に離隔した2点ずつの計4点で接合される)ことにより、ルーフリインフォースメント44の車幅方向外側端部に連結される構成である。
【0027】
また、連結部材60の他端部である車幅方向外側端部(以下「外端部」という)64は、ブラケット50の車幅方向内側へ延設された平板状の取付部58に厚み方向(車体上下方向)に重ねられ、ボルト52及びナット54によって接合されている。つまり、連結部材60の外端部64は、ブラケット50を介して、ルーフサイドレール20(レールインナパネル22)に連結されるようになっている。
【0028】
また、図4で示すように、この連結部材60の中途部には、内端部62(ルーフリインフォースメント44との接合部位)の高さを外端部64(ブラケット50との締結部位)の高さよりも高くする(高位とする)ような段差部(屈曲部)66が形成されている。この段差部66は、ルーフリインフォースメント44にもルーフサイドレール20にも固定されないようになっており、少なくとも車体上下方向に弾性変形可能に構成されている。
【0029】
以上のような構成のルーフ構造10において、次にその作用について主に図5を基に説明する。バランスシャフトが設定されていない直列4気筒エンジンを搭載した車両12では、走行中にルーフパネル18が振動することにより、中高速こもり音(エンジン系こもり音)が発生することがある。特に、エンジン回転数が3600rpm〜4200rpm付近では、ルーフサイドレール20が振動し、ルーフパネル18の発音寄与が大きい。
【0030】
走行中に左右のルーフサイドレール20が振動し、それに伴って各ルーフサイドレール20が車体下方向へ変位すると、各フロントピラー38と各ルーフサイドレール20のジオメトリー(位置関係)から、各ルーフサイドレール20は車幅方向内側に捩れ、左右の接合部28(溝部G)間の距離を縮小させる方向へ変位する。
【0031】
ここで、ルーフサイドレール20とルーフリインフォースメント44とは、連結部材60によって連結されている。そして、その連結部材60の中途部には、ルーフサイドレール20側である外端部64(ブラケット50との締結部位)よりも、ルーフリインフォースメント44側である内端部62(ルーフリインフォースメント44との接合部位)の方を高位とする段差部66が形成されている。
【0032】
したがって、左右のルーフサイドレール20が車幅方向内側に同時に捩れ、左右の接合部28(溝部G)間の距離を縮小させる方向へ変位すると、その段差部66付近が車体上下方向に弾性変形し、その段差部66を支点として、左右の内端部62(ルーフリインフォースメント44との接合部位)に車体上方向へ向かう力が発生する。
【0033】
ここで、そのルーフリインフォースメント44は、車幅方向中央部における閉断面部の断面積が最小となる構成とされている。そのため、ルーフリインフォースメント44との接合部位である各内端部62に車体上方向へ向かう力が作用すると、ルーフリインフォースメント44は車体上方向へ変位する。
【0034】
つまり、ルーフサイドレール20が車体下方向へ変位すると、ルーフリインフォースメント44は車体上方向へ(逆位相側へ)変位することになる。したがって、ルーフパネル18の振動を抑えることができ、ルーフパネル18の振動による車室14内の中高速こもり音を低減することができる。
【0035】
また、このルーフ構造10では、既存のブラケット50を用いて連結部材60をルーフサイドレール20に連結するので、別途、連結部材60をルーフサイドレール20に固定するための部品が必要とならない。つまり、比較的小さい部品である連結部材60以外に部品点数が増加することがない。したがって、車両12の重量増加も殆どなく、かつ製造コストの増加も殆どない。
【0036】
すなわち、ルーフパネル18の振動特性は、基本的にルーフパネル18の意匠形状によって、ほぼ決定されるため、従来では、その意匠形状の制約(小さい自由度)の中で、ルーフリインフォースメントを追加したり、ダンプシートを貼付したりして、その振動特性をチューニングしていた(振動を低減するようにしていた)。そのため、車両12の重量が増加したり、製造コストが増加したりしていたが、本実施形態に係るルーフ構造10では、そのような問題が生じない。
【0037】
また、従来のように、ルーフリインフォースメントを追加したり、ダンプシートを貼付したりして、ルーフパネル18の振動特性をチューニングする構成では、ルーフパネル18の形状ばらつきにより、車室14内の中高速こもり音を充分に低減できない懸念もあった。つまり、中高速こもり音を低減する上記チューニング手段は、ルーフパネル18の形状ばらつきの影響を受けやすかった。
【0038】
しかし、本実施形態に係るルーフ構造10は、上記した通り、各構成部品のジオメトリーにより、ルーフサイドレール20とルーフリインフォースメント44の振動の位相を、少なくとも問題となる周波数域においては、強制的に逆にすることができるため(ルーフパネル18のモードを適切にコントロールすることができるため)、ルーフパネル18の形状ばらつきによる振動特性変化の影響を受けることがない。よって、車室14内の中高速こもり音を充分に低減することができる。
【0039】
以上、本実施形態に係るルーフ構造10について、図面に示す実施例を基に説明したが、本実施形態に係るルーフ構造10は、図示の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、ブラケット50の形状は、図示の形状に限定されるものではなく、また、連結部材60の形状も、内端部62が外端部64よりも高位となる段差部66を有する形状であれば、ブラケット50の形状に合わせて適宜変更しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】カーテンエアバッグ装置が取り付けられた車両の概略斜視図
【図2】ルーフ構造を示す概略斜視図
【図3】ルーフ構造を示す概略断面図
【図4】ルーフ構造の一部を拡大して示す概略断面図
【図5】ルーフ構造の作用を示す概略断面図
【符号の説明】
【0041】
10 ルーフ構造
12 車両
14 車室
16 ルーフ部
18 ルーフパネル
20 ルーフサイドレール
22 レールインナパネル
24 レールアウタパネル
28 接合部
30 センターピラー
32 ピラーインナパネル
34 ピラーアウタパネル
36 ピラーリインフォースメント
38 フロントピラー
40 フロントルーフクロスメンバ
42 センタールーフクロスメンバ
44 ルーフリインフォースメント
50 ブラケット(保持部材)
56 カーテンエアバッグ装置
58 取付部
60 連結部材
62 内端部(一端部)
64 外端部(他端部)
66 段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフ部に設けられたルーフパネルと、
前記ルーフパネルの車幅方向両端部に車体前後方向に沿って設けられた左右一対のルーフサイドレールと、
前記ルーフサイドレール間に車幅方向に沿って設けられ、前記ルーフパネルとで形成する閉断面部の断面積が車幅方向中央部において最小となるルーフリインフォースメントと、
少なくとも前記ルーフサイドレールにおける前記ルーフリインフォースメントと車体前後方向がラップする部分に設けられ、カーテンエアバッグ装置を保持する保持部材と、
一端部が前記ルーフリインフォースメントに車幅方向に離隔した複数箇所で連結され、他端部が前記保持部材を介して前記ルーフサイドレールに連結されるとともに、中途部に前記他端部側よりも前記一端部側を高位とする段差部が形成された連結部材と、
を備えたことを特徴とする車両のルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−111257(P2010−111257A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285237(P2008−285237)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】