説明

車両のロールバー構造

【課題】車幅方向、車体前後方向のいずれの方向からの外力に対しても効果的に抗することができる車両のロールバー構造を提供する。
【解決手段】ロールバー16a(16b)の使用態様として、ロールバー16a(16b)の延び方向内方側を、該ロールバー16a(16b)の延び方向両端部に比して上方に向けて突出させた状態とし、そのロールバー16a(16b)の一端部を、車体の車幅方向外端部に配置し、そのロールバー16a(16b)の他端部を、ロールバー16a(16b)の一端部よりも車幅方向内方側において、ロールバー16a(16b)の一端部に対して車体前後方向にずらして配置する。これにより、車幅方向、車体前後方向のいずれの方向から外力がロールバー16a(16b)に作用しても、ロールバー16a(16b)の第1部分17aと第2部分18aとの間に効果的に支え合う関係を成立させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のロールバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンカー等においては、車両の転覆から乗員を保護する手段として、車両のロールバー構造が搭載されている。その車両のロールバー構造としては、ロールバーを車体に対して2点支持するものが一般的に知られている。例えば特許文献1には、ロールバーの基端部を車幅方向に並設される2つの支持点をもって車両後部に支持し(一方は直接車体支持、他方はアクチュエータを介して車体支持)、車両の転覆時に、ロールバーの先端部により、乗員の生存空間を確保するものが開示されている。また、特許文献2には、ロールバーの延び方向両端部を車両の側部に車体前後方向に並設させた状態で支持する一方、ロールバーの延び方向内方側を上方に向けて突出させて、その突出するロールバーの延び方向内方側部分をもって乗員の生存空間を確保するものが開示されている。
【特許文献1】特開平7−164985号公報
【特許文献2】特開平5−115574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1においては、ロールバーの2つの支持点が車幅方向に並設され、特許文献2においては、ロールバーの2つの支持点が車体前後方向に並設されており、いずれにおいても、2つの支持点の並設方向に直交する方向から外力がロールバーに作用したときには(特に、特許文献1の場合には車体前後方向の外力がロールバーに作用したとき、特許文献2の場合には車幅方向の外力がロールバーに作用したとき)、その外力により倒されようとするロールバー部分を支えようとする要素は存在しない。このため、2つの支持点の並設方向に直交する方向から外力がロールバーに作用する場合には、他の方向から外力が作用する場合に比べて、外力に対してロールバーが抗する力は低下する。
【0004】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、車幅方向、車体前後方向のいずれの方向からの外力に対しても、常に的確に抗することができる車両のロールバー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)においては、
ロールバーの延び方向両端部が車体に支持され、該ロールバーの延び方向内方側が、使用態様として、該ロールバーの延び方向両端部に比して上方に向けて突出されている車両のロールバー構造において、
前記ロールバーの一端部が、前記車体の車幅方向外端部に配置され、
前記ロールバーの他端部が、前記ロールバーの一端部よりも車幅方向内方側において、該ロールバーの一端部に対して車体前後方向にずらして配置されている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては請求項2以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載された発明によれば、車幅方向、車体前後方向のいずれかの方向から外力がロールバーに作用した場合、ロールバーの延び方向内方側の突出部を基準として、そのロールバーの一方側部分又は他方側部分の一方が、そのロールバーの一方側部分又は他方側部分の他方により必ず効果的姿勢をもって支えられる。このため、車幅方向、車体前後方向のいずれの方向からの外力に対しても、常に的確に抗することができる車両のロールバー構造を提供できる。
また、ロールバーの他端部が、ロールバーの一端部よりも車幅方向内方側において、該ロールバーの一端部に対して車体前後方向にずらして配置されていても、ロールバーの延び方向内方側が、使用態様として、該ロールバーの延び方向両端部に比して上方に向けて突出されていることから、そのロールバーの延び方向内方側の下方に空間を確保することができ、このようなロールバーの配置であっても、乗員の配置を含めレイアウトの自由度が制約されることを極力抑えることができる。
【0007】
請求項2に記載された発明によれば、ロールバーが、該ロールバーの一端部から該ロールバーの延び方向内方側に向けて略真っ直ぐに延びる第1部分と、該第1部分に対して屈曲された状態で連なり該ロールバーの他端部まで略真っ直ぐに延びる第2部分と、を備え、そのロールバーが、格納態様として、第1部分が車体の車幅方向外端部において車体前後方向に延び且つ前記第2部分が座席位置よりも車体後方側において車幅方向に延びる姿勢をとるように設定されていることから、ロールバーの格納時に、乗員の乗車に支障を与えることなく、略水平な状態でロールバーを格納でき、ロールバーの格納使用空間の上下方向高さを極力短くできる。
【0008】
請求項3に記載された発明によれば、ロールバーの両端部が、車体後方に向うに従って車幅方向内方に向うように延びる同一の回動軸心をもって回動可能に車体に支持され、車体に、ロールバーの倒伏領域において、該ロールバーを格納するための格納溝が形成されていることから、ロールバーを倒伏させた状態の下で、そのロールバーを格納溝に格納しておくことができ、ロールバーの格納状態をすっきりした状態にできる。
【0009】
請求項4に記載された発明によれば、ロールバーが格納溝に格納状態にあるとき、該ロールバーの外面が車体表面に対して略面一になるように設定されていることから、見栄えを向上させることができると共に、そのロールバーを利用して、格納溝を覆うためのカバーを不要にできる。
【0010】
請求項5に記載された発明によれば、ロールバーの外面に、シール部材が取付けられ、そのシール部材が、ロールバーが格納溝に格納されている状態において、該格納溝を覆うように設定されていることから、ロールバーをシール部材の取付け部材として利用して、シール部材の組付け性を向上させることができると共に、シール性を、ロールバーの格納に伴い的確に得ることができる。
【0011】
請求項6に記載された発明によれば、ロールバーが、車体の左右両側にそれぞれ備えられ、各ロールバーの両端部が、車体後方に向うに従って車幅方向内方に向うように延びる同一の回動軸心をもって回動可能に車体にそれぞれ支持され、車体に対する左右の両ロールバーの他端部の支持に関しては、該両ロールバーの他端部が、共通の支持具を介して車体に支持されていることから、部品点数及び組付け工数を低減できる。
【0012】
請求項7に記載された発明によれば、車体表面に、左右の両ロールバーの倒伏領域を含むようにしつつ車室内後方側を区画する格納溝が形成され、その格納溝内に、共通の支治具が収納されていると共に、左右両ロールバーが、倒伏状態において格納可能となっていることから、左右のロールバー、共通の支持具を格納溝にすっきりと収納(格納)しておくことができる。
【0013】
請求項8に記載された発明によれば、ロールバーを、倒伏状態にある非作動姿勢から起立状態である作動姿勢に姿勢変更させる調整手段と、車両が転覆しそうな情報を検出する検出手段と、その検出手段からの情報に基づき、車両が転覆しそうであると判断したとき、調整手段を制御して、ロールバーを作動姿勢とする制御手段と、を備えることから、車両が転覆しそうな状態を捉えて、ロールバーを迅速且つ的確に作動姿勢にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1、図2において、符号1は、車両としてのオープンカー1であり、このオープンカー1の車体後部表面には、ベルトラインにおいて、格納溝2が設けられ、その格納溝2の上部開口はシール部材7a,7bにより覆われている。この格納溝2等は、左右座席3の側方からそれぞれ車体後方に一旦、延びた後、車幅方向内方に延びて互いに連なることになっており、この格納溝2等は車室内後方側を区画し、その車室内において、格納溝2等と座席3とは、平面視において、格納式屋根(幌)4を収納するための収納空間5を区画している。
【0015】
前記格納溝2は、図1〜図4に示すように、一対の第1溝8a、8bと、その一対の第1溝8a、8bを跨ぐようにつなぐ第2溝9とを備え、各第1溝8a(8b)と第2溝9とは、滑らかな曲線をもって連続されている。第1溝8aは、車体右側部において、サイドドア10とリヤデッキ11付近との間を車体前後方向に延び、第1溝8bは、車体左側部において、サイドドア10とリヤデッキ11付近との間を車体前後方向に延びており、その各第1溝8a(8b)の溝幅は、具体的には、格納式屋根4(図3,図4においては展開した状態を図示)格納部の上部開口縁と左右各リヤフェンダ12とが区画している。この各第1溝8a(8b)の底部に関しては、本実施形態においては、左右各リヤフェンダ12に張り出し板13が留め具14を用いてそれぞれ取付けられて、それらが第1溝8a(8b)の底部(以下、符号13を用いる)を構成しており、その第1溝8a(8b)の底部13には、前記格納式屋根4の端部が取付けられている。
【0016】
前記第2溝9は、図5に示すように、リヤデッキ11の前側を車幅方向に延びており、第2溝9の溝幅は、具体的には、格納式屋根4の後部とリヤデッキ11とが区画している。この第2溝9の底部に関しては、本実施形態においては、リヤデッキ11に張り出し板33が取付けられて、それが第2溝9の底部(以下、符号33を用いる)を構成しており(図6参照)、その第2溝9の底部33には、前記第1溝8a(8b)の底部の場合と同様、前記格納式屋根4の端部が取付けられている。
【0017】
前記左右各リヤフェンダ12の内側側壁部(格納溝2の側部)には、図4に示すように、第1溝8a(8b)と第2溝9とが連なる付近において、進入孔15がそれぞれ形成されている。各進入孔15は、格納溝2の側部に位置されており、その進入孔15は、格納溝2内とリヤフェンダ12内とを連通させている。
【0018】
前記格納溝2内には、図2〜図6に示すように、前記第1溝8aから前記第2溝9にかけて右側ロールバー16aが収納されていると共に、前記第1溝8bから前記第2溝9にかけて左側ロールバー16bが収納されている。右側ロールバー16aと左側ロールバー16bとは、車体の車幅方向中央を中心として対称に配置され、その構成及びそれに関連した構成は同じとされている。このため、右側ロールバー16aに関して説明し、左側ロールバー16bに関しては、右側ロールバー16aの構成要素に用いられる付加符号「a」に代えて「b」を用い、その説明を省略する。
【0019】
前記右側ロールバー16aは、第1溝8a内において車体前後方向に延びる第1部分17aと、該第1部分17aに連続して第2溝9内において車幅方向中央部にまで延びる第2部分18aとを備えており、右側ロールバー16aの全体形状は、略L字状に屈曲した形状とされている。この右側ロールバー16aとしては、中空の角材(断面正方形状)が用いられており、その周面の平坦な4面は、格納溝2内において、上方、下方、両側方に向けられている。このうち、右側ロールバー16aの上壁部19aの上面(外面)は、リヤフェンダ12の外面に略面一にされ、その上壁部19aには、所定間隔毎にシール部材用取付け孔20aが形成されている。また、右側ロールバー16aの外側側壁部には、第1部分17aと第2部分18aとの連なる付近において、前記進入孔15に臨むようにして係合孔21aが形成されている(図4参照)。
【0020】
前記右側ロールバー16aは、その一端部がヒンジ(図示略)を介して第1溝8aの底部13に連結され、右側ロールバー16aの他端部は、図6に示すように、共通の支持具としてのヒンジ22を介して第2溝9の底部33に連結されている。
【0021】
右側ロールバー16aの他端部に用いられるヒンジ22は、部品点数と組付け工数の低減を図るべく、図6に示すように、左側ロールバー16bの他端部に対しても用いる共通部品とされている。この共通のヒンジ22は、比較的長め共通のベース部24上において、右側ロールバー16aに用いられるヒンジ部23aと、左側ロールバー16bに用いられるヒンジ部23bとが備えられており、その共通のベース部24は、第2溝9内の底部33に車幅方向中央部において留め具25を用いて固定されている。勿論、両ヒンジ部23a,23bは、同じ構成となっている。
【0022】
前記右側ロールバー16aに用いられるヒンジ部23aは、図6に示すように、共通のベース部24の他に、支持部26aと、回動部27aと、連結部28aとを備えている。支持部26aは、ベース部24上において該ベース部24を横切るように起立されており、その際、支持部26aは、車体後方に向うに従って車幅方向内方に向うように傾斜配置されている。
【0023】
回動部27aは、支持部26aの先端部に設けられており、その回動部27aを介して支持部26a先端部に連結部28aが回動可能に連結されている。この回動部27aの回動軸心29aは、前記支持部26aの配置に伴って、車体後方に向うに従って車幅方向内方に向うように傾斜されており、この回動軸心29aの延長線上には、前記右側ロールバー16aの一端部に対して用いられるヒンジ(図示略)の回動軸心29aが存在することになっている(図2参照)。勿論、この右側ロールバー16aの一端部に対して用いられるヒンジ部は、基本的に、右側ロールバー16aの他端部において用いられるヒンジ23aと同じものとなっており、右側ロールバー16aの両端部は、その両ヒンジ部に基づき、同一回動軸心29aをもって回動することになる。また、回動部27aには、ワンウェイクラッチ(図示略)が組み込まれている。そのワンウェイクラッチは、連結部28a(右側ロールバー16a)の起立方向の回動を、連結部28aが水平方向に対して垂直状態になるまで許容する一方、連結部28aが一旦、起立した後は、その倒伏方向の回動を規制することになっている。
【0024】
連結部28aは、右側ロールバー16aの他端部に連結されており、その連結を支持部26aの傾斜配置にかかわらず的確に行うべく、回動部27aから右側ロールバー16aの他端部に向って延びる連結部28aの長さは、車体後方側に向うほど長くなっている。また、この連結部28aには、その上部において、右側ロールバー16aの他端開口に臨む挿通孔30が形成されており、その挿通孔30は、右側ロールバー16aの内外を連通させている。
【0025】
前記ヒンジ部23aと前記右側ロールバー16a(第2部分18a)との間には、棒状のばね部材31aが介在されている。ばね部材31aは、線材とされており、その一端部が共通のベース部24に保持されている一方、他端側は、支持部26aに形成される開口32aを通って回動部27aを回り込むように曲げられた後、連結部28aの挿通孔30を通って右側ロールバー16aの端部内に入り込んでいる。このため、第1溝8a及び第2溝9内に収納される右側ロールバー16aは、このばね部材31aに基づき、常に起立方向に付勢されている。
【0026】
前記右側リヤフェンダ12内には、図2、図4、図5に示すように、第1溝8aと第2溝9とが連なる付近において、アクチュエータ34a(調整手段)が配設されている。このアクチュエータ34aは、伸縮可能な出力軸35aを有しており、その出力軸35aは、通常(非作動時)は、格納溝2の側部における前記進入孔15を介して右側ロールバー16aの係合孔21aに入り込んでいる。このため、出力軸35aと係合孔21aとは係合することになり、右側ロールバー16aは、ばね部材31aの付勢力にかかわらず、第1溝8a及び第2溝9内に格納された状態(倒伏状態)が維持される。このアクチュエータ34aは、制御手段としての制御ユニットUにより制御されることになっている。通常は、上述の如く、出力軸35aがロールバーの係合孔21aに進入して、ばね部材31aの付勢力にかかわらずロールバーの倒伏状態が維持される一方、車両が転覆しそうな情報、すなわち、車両の傾斜角状態、傾斜角速度が所定状態になったことを検出手段としてのセンサ36から入力されたときには、制御ユニットUは、アクチュエータ34aの出力軸35aを右側ロールバー16aの係合孔21aから退出させて、右側ロールバー16aをばね部材31aの付勢力に基づき起立動させることになっている。
【0027】
前記第1溝8a及び第2溝9内に格納される右側ロールバー16aの上壁部19aには、図1〜図4、図7に示すように、前記シール部材7aが取付けられている。このシール部材7aは、偏平状の頂部37aと、その頂部37aの裏面から下方に延びる脚部38aとを有している。頂部37aは、右側ロールバー16aに対応して、略L字状の延び形状とされていると共に、その延び方向長さとして、右側ロールバー16aの相当分の長さを有しており、その頂部37aの裏面には係合突起39aが、その延び方向において所定間隔毎に設けられている。この各係合突起39aは、右側ロールバー16aの各取付け孔20aに押し込むことにより係合されており、これにより、頂部37aは右側ロールバー16aの上壁部19aに全長に亘って取付けられている。この頂部37aは、第1,第2溝9の溝幅よりも十分に広い幅を有しており、その頂部37aの幅方向一方側はリヤフェンダ12の表面に覆い被さり、その頂部37aの幅方向他方側は、展開状態の格納式屋根4の側部に当接することになっている。
【0028】
脚部38aは、頂部37aの裏面において、その頂部37aの延び方向全長に亘って設けられている。脚部38aは、頂部37aの幅方向他方側部分から下方に向うに従って頂部37aの幅方向一方側に向うように垂下しており、この脚部38aは、シール性を確保すべく、その先端部(垂下先端部)が格納溝2の底部に当接されている。
これにより、右側ロールバー16aをシール部材7の取付け部材として利用しつつ(組付け性を向上)、シール性を確保できることになる。
【0029】
このような右側ロールバー16aに関する一連の構成は、左側ロールバー16bにおいても施されている。
【0030】
前記リヤデッキ11には、図1、図5、図6に示すように、ハイマウントストップランプ40が台座ラバー41を介して設置されている。この台座ラバー41は、車体前方に延びる延長部分42を有しており、その延長部分42は、見栄えを向上させるべく、車幅方向中央部付近において、左右両側ののロールバー16a,16bの他端部、ヒンジ22及びシール部材7a,7bを覆い隠すようにしつつ第2溝9内に入り込んでいる。
【0031】
このようなロールバー構造においては、通常時(非作動時)においては、図1に示すように、左右両側のロールバー16a,16bが格納溝2内に収納された状態にあるが、車両が転覆しそうな情報を検出したときには、制御ユニットUの制御に基づき両アクチュエータ34a、34bの出力軸35a、35bが左右両側のロールバーの係合孔21a、21bから退出し、左右両側のロールバー16a,16bは、図5、図7に示すように、起立する。
【0032】
この左右両側のロールバー16a,16bの作動状態においては、各ロールバー16a(16b)の一端部が、車体の側部に配置され、各ロールバー16a(16b)の他端部が、各ロールバー16a(16b)の一端部よりも車幅方向内方側において、該各ロールバー16a(16b)の一端部に対して車体前後方向にずらして配置されていることから、車幅方向、車体前後方向のいずれかの方向からの外力がロールバー16a(16b)に作用しても、ロールバー16a(16b)の第1部分17aと第2部分18aとの間に効果的に支え合う関係が成立することになり、車幅方向、車体前後方向のいずれの方向からの外力に対しても、常に的確に抗することができる。
【0033】
具体的に説明する。例えば、ロールバーの延び方向両端部を車両の側部に車体前後方向に並設させた状態で支持した場合において、そのロールバーに車体前後方向から外力が作用したときには、ロールバーの一方側部分(第1部分17a又は第2部分18aの一方に相当)に倒されようとするが、そのロールバーの一方側部分をその他方側部分(第1部分17a又は第2部分18aの他方に相当)が支えることになり、外力に対して的確に抗することができる。しかし、そのロールバーに車幅方向から外力が作用したときには、ロールバーの一方側部分及び他方側部分が同時に倒されようとするが、それらを支えるものが存在せず、外力に対して十分に抗することができない。このことは、ロールバーの延び方向両端部を車両の後部に車幅方向に並設させた状態で支持した場合においても、車体前後方向からの外力がロールバーに作用するときに起こり得る。
【0034】
これに対して、本実施形態を、右側ロールバー16aを例にとって説明すれば、車両の転覆時に、車幅方向外方側から右側ロールバー16aに外力が作用したときには、その外力が第1部分17aに作用しても、その第1部分17aは、第2部分18aによりその効果的姿勢(突っ張る姿勢)をもって支えられる。このため、車幅方向外側からの外力に対して右側ロールバー16aは的確に抗することになる。
【0035】
逆に、車両の転覆時に、車幅方向内方側から右側ロールバー16aに外力が作用したときには、その外力が第2部分18aに作用しても、その第2部分18aは、第1部分17aによりその効果的姿勢をもって支えられる。このため、車幅方向内方側からの外力に対して右側ロールバー16aは的確に抗することになる。
【0036】
一方、車両の転覆時に、車体後方側から右側ロールバー16aに外力が作用したときには、その外力が第2部分18aに作用しても、その第2部分18aは、第1部分17aによりその効果的姿勢をもって支えられる。このため、車体後方側からの外力に対して右側ロールバー16aは的確に抗することになる。
【0037】
逆に、車両の転覆時に、車体前方側から右側ロールバー16aに外力が作用したときには、その外力が第1部分17aに作用しても、その第1部分17aは、第2部分18aによりその効果的姿勢をもって支えられる。このため、車体前方側からの外力に対して右側ロールバー16aは的確に抗することになる。
【0038】
また、この左右両側のロールバー16a(16b)は、作動時に、その最上部(延び方向中央部)が乗員位置(座席3位置)より車体後方側に離れて位置することから、乗員位置の直ぐ後位置に、車幅方向に延びるロールバー16’を高さを同じ状態にして設ける場合に比べて、生存空間を増大させることができる。図8は、転覆時に、フロントヘッダー42とロールバー16a(16b)とが路面に接触する場合を想定したものであり、この場合には、車幅方向に延びるロールバー16’を用いたときにおける生存空間境界線がB1となるのに対して、ロールバー16a(16b)を用いることにより、生存空間境界線がB2となり、生存空間Sが増大することになる。また、図9は、転覆時に、トランク後端部43とロールバー16a(16b)とが路面に接触する場合を想定したものであり、この場合には、車幅方向に延びるロールバー16’を用いたときにおける生存空間境界線がC1となるのに対して、ロールバー16a(16b)を用いることにより、生存空間境界線がC2となり、この場合にも生存空間Sは増大することになる。尚、図8,図9において、符号Lは、ロールバー16a(16b)と16’の高さライン(同じ高さ)を示す。
【0039】
さらに、このようなロールバー構造においては、ロールバー16a(16b)の他端部が、ロールバー16a(16b)の一端部よりも車幅方向内方側において、該ロールバーの一端部に対して車体前後方向にずらして配置されていても、ロールバー16a(16b)の延び方向内方側が、作動時に、該ロールバーの延び方向両端部に比して上方に向けて突出され、その下方に空間が確保されることになり、このようなロールバー16a(16b)の配置であっても、乗員の配置を含めレイアウトの自由度が制約されることを極力抑えることができる。
【0040】
さらにまた、左右両側のロールバーが、非作動時(格納時)に倒伏状態になるようにしていることから、ロールバーを格納するために必要な車体内の格納空間の上下高さを極めて少なくできる。
【0041】
以上実施形態について説明したが、本発明にあっては次のような態様を包含する。
(1)ロールバー16a(16b)を、作動状態で予め車体に取付けること(固定式)。
(2)取り外した(固定式)ロールバー16a(16b)を格納溝にしまい込むこと。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ロールバーが格納された状態(非作動状態)のオープンカーを示す斜視図。
【図2】ロールバーが格納された状態(非作動状態)のオープンカーを示す平面図。
【図3】図2のA−A線拡大断面図。
【図4】図2のB−B線拡大断面図。
【図5】実施形態に係るロールバー構造を説明する説明図。
【図6】車体に対するロールバーの支持を説明する説明図。
【図7】ロールバーが作動状態にあるオープンカーを示す斜視図。
【図8】ロールバーに基づく生存空間の増大を説明する説明図。
【図9】別の転覆態様でのロールバーに基づく生存空間の増大を説明する説明図。
【符号の説明】
【0043】
1 オープンカー
2 格納溝
7a シール部材
7b シール部材
12 リヤフェンダ
16a 右側ロールバー
16b 左側ロールバー
17a 右側ロールバーの第1部分
17b 左側ロールバーの第1部分
18a 右側ロールバーの第2部分
18b 左側ロールバーの第2部分
19a 右側ロールバーの上壁部
19b 左側ロールバーの上壁部
22 ヒンジ(共通の支持具)
29a 回動軸心(右側ロールバー)
29b 回動軸心(左側ロールバー)
34a アクチュエータ(右側ロールバーに対する調整手段)
34b アクチュエータ(左側ロールバーに対する調整手段)
36 センサ(検出手段)
U 制御ユニット(制御手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールバーの延び方向両端部が車体に支持され、該ロールバーの延び方向内方側が、使用態様として、該ロールバーの延び方向両端部に比して上方に向けて突出されている車両のロールバー構造において、
前記ロールバーの一端部が、前記車体の車幅方向外端部に配置され、
前記ロールバーの他端部が、前記ロールバーの一端部よりも車幅方向内方側において、該ロールバーの一端部に対して車体前後方向にずらして配置されている、
ことを特徴とする車両のロールバー構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記ロールバーが、該ロールバーの一端部から該ロールバーの延び方向内方側に向けて略真っ直ぐに延びる第1部分と、該第1部分に対して屈曲された状態で連なり該ロールバーの他端部まで略真っ直ぐに延びる第2部分と、を備え、
前記ロールバーが、格納態様として、前記第1部分が前記車体の車幅方向外端部において車体前後方向に延び且つ前記第2部分が座席位置よりも車体後方側において車幅方向に延びる姿勢をとるように設定されている、
ことを特徴とする車両のロールバー構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記ロールバーの両端部が、車体後方に向うに従って車幅方向内方に向うように延びる同一の回動軸心をもって回動可能に車体に支持され、
前記車体に、前記ロールバーの倒伏領域において、該ロールバーを格納するための格納溝が形成されている、
ことを特徴とする車両のロールバー構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記ロールバーが前記格納溝に格納状態にあるとき、該ロールバーの外面が前記車体表面に対して略面一になるように設定されている、
ことを特徴とする車両のロールバー構造。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記ロールバーの外面に、シール部材が取付けられ、
前記シール部材が、前記ロールバーが前記格納溝に格納されている状態において、該格納溝を覆うように設定されている、
ことを特徴とする車両のロールバー構造。
【請求項6】
請求項2において、
前記ロールバーが、車体の左右両側にそれぞれ備えられ、
前記各ロールバーの両端部が、車体後方に向うに従って車幅方向内方に向うように延びる同一の回動軸心をもって回動可能に車体にそれぞれ支持され、
前記車体に対する前記左右の両ロールバーの他端部の支持に関しては、該両ロールバーの他端部が、共通の支持具を介して車体に支持されている、
ことを特徴とする車両のロールバー構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記車体表面に、前記左右の両ロールバーの倒伏領域を含むようにしつつ、車室内後方側を区画する格納溝が形成され、
前記格納溝内に、前記共通の支持具が収納されていると共に、前記左右両ロールバーが、倒伏状態において格納可能となっている、
ことを特徴とする車両のロールバー構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記ロールバーを、倒伏状態にある非作動姿勢から起立状態である作動姿勢に姿勢変更させる調整手段と、
車両が転覆しそうな情報を検出する検出手段と、
前記検出手段からの情報に基づき、車両が転覆しそうであると判断したとき、前記調整手段を制御して、前記ロールバーを作動姿勢とする制御手段と、を備える、
ことを特徴とする車両のロールバー構造。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−62686(P2007−62686A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254880(P2005−254880)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】