説明

車両の上部構造

【課題】車両の側突時にセンタピラー、ルーフサイドレール部に入力する荷重がガセットからルーフレインに作用する際、ガセットの回動現象でルーフレインにかかる曲げモーメントに対し断面係数を簡便に高め、ルーフレインへの荷重分散を有効に行なう車両の上部構造を提供する。
【解決手段】ルーフサイドレール部4とルーフレイン15とを連結するガセット30を備え、ガセット30のルーフレイン15締結側の端部の形状が、平面視で車両前後方向の線L1に対して斜めになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の上部構造に関し、詳しくは、左右のセンタピラー上方において車両の前後方向に延びるルーフサイドレール部と、左右のルーフサイドレール部間を車幅方向に連結するルーフレインと、このルーフレインとルーフサイドレール部とを連結するガセットとを備え、ガセットが上記ルーフサイドレール部のルーフサイドレールインナパネルとルーフレイン下面とにそれぞれボルト締結されたような車両の上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示すように、上下方向に延びるセンタピラー80は、その上部においては、ルーフサイドレールアウタパネル81とルーフサイドレールインナパネル82とを有して、車両の前後方向に延びるルーフサイド閉断面83をもったルーフサイドレール部84に連結されており、その下部においては、サイドシルアウタパネル85とサイドシルレインフォースメント86とサイドシルインナパネル87とを有して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面88をもったサイドシル89に連結されている。
【0003】
図10に示すこの従来構造において、車両の側突時には、センタピラー80に対して図10に矢印で示す方向から側突荷重が入力し、この荷重をダイレクトに受けるセンタピラー80が同図に仮想線αで示すように内折れ変形し、変形することにより側突荷重を吸収している。
つまり、従来においては、センタピラー80の内折れを、ある程度許容して側突荷重を吸収すべく構成しているが、該センタピラー80の車幅方向内方への侵入量が否めない問題点があった。
【0004】
なお、図10に示す従来構造においては、センタピラー80の内折れにより側突荷重を吸収する構造であるから、左右のルーフサイドレール部相互間を車幅方向に連結する補強メンバとしてのルーフレインに対しては大きな荷重が入力されない。
【0005】
このような問題点を解消し、センタピラーの内折れを抑制した車両の上部構造が既に発明されている(図11参照)。
図11は車両下方から上方を見上げた状態で示す従来の車両の上部構造(底面図)であって、90は車両の前後方向に延びる閉断面構造のルーフサイドレール部、91は左右のルーフサイドレール部90,90間を車幅方向に連結する補強メンバとしてのルーフレイン、92は上下方向に延びる閉断面構造のセンタピラー、93はルーフレイン91とルーフサイドレール部90とを連結するガセットで、このガセット93は前後一対の締結ボルト94,94を用いてルーフサイドレール部90のインナパネル、つまり、ルーフサイドレールインナパネルに締結されると共に、前後一対の締結ボルト95,95を用いてルーフレイン91の下面に締結されている。
【0006】
図11の従来構造では、センタピラー92の内折れを抑制する関係上、該センタピラー92の剛性が高められている。
この構造においては、車両の側突時にセンタピラー92に入力された側突荷重は、センタピラー92上部のガセット93およびボルト95締結点を介してルーフレイン91に作用し、このルーフレイン91に作用する荷重が図10の構成と比較して極めて大きくなり、ルーフレイン91にかかる曲げモーメントが大きくなると、該ルーフレイン91が中折れし、延いては、センタピラー92全体が内倒れする問題点があった。
【0007】
このようなルーフレイン91の中折れを防止するために、ルーフレイン91の肉厚(つまり、板厚)を増加することや、ルーフレイン91の車両前後方向の幅Wを広くすることで、該ルーフレイン91の剛性増大を図ることが考えられるが、この場合には、重量軽減の観点から不利となる。
また、上述のセンタピラー92から側突荷重が入力した時、ガセット93のルーフレイン締結側の端部93aに荷重がかかるが、この端部93aの車両前後方向の幅は、ガセット93それ自体の車両前後方向の幅と同一であって、ルーフレイン91にかかる曲げモーメントに対して充分な断面係数の確保ができない問題点があった。
【0008】
ところで、特許文献1には、車幅方向に延びるルーフレインの下面を、L字状のガセットを介して、ルーフサイドレール部のルーフサイドレールインパネルにボルト締結した車両の上部構造が開示されている。
【0009】
該特許文献1に開示された従来構造のガセットにおけるルーフレイン締結側の端部は、車両前後方向の線と平行または略平行であるから、実質的に図11で示した従来構造と同等であって、ルーフレインにかかる曲げモーメントに対して充分な断面係数の確保ができない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−247189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、この発明は、ルーフサイドレール部とルーフレインとを連結するガセットのルーフレイン締結側の端部形状を、平面視で車両前後方向の線に対して斜めに成すことで、車両の側突時にセンタピラーおよびルーフサイドレール部に入力する側突荷重がガセットからルーフレインに作用する際、該ガセットの回動現象でルーフレインにかかる曲げモーメントに対し断面係数を簡便に高めることができ、ルーフレインへの荷重分散を有効に行なわせることができる車両の上部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による車両の上部構造は、センタピラー上方の左右のルーフサイドレール部と、該ルーフサイドレール部と車幅方向に延びるルーフレインとを連結するガセットとを備え、該ガセットが上記ルーフサイドレール部のルーフサイドレールインナパネルと上記ルーフレインの下面とにそれぞれボルト締結された車両の上部構造であって、上記ガセットのルーフレイン締結側の端部の形状が、平面視で車両前後方向の線に対して斜めになっていることを特徴とする。
上記構成によれば、ガセットのルーフレイン締結側の端部形状を、平面視で車両前後方向の線に対して斜めに成したので、車両の側突時にセンタピラーおよびルーフサイドレール部に入力する側突荷重がガセットから補強メンバとしてのルーフレインに作用する時、該ガセットの回動現象でルーフレインにかかる曲げモーメントに対して断面係数を簡便に高めることができ、ルーフレインへの荷重分散を有効に行なわせることができる。
【0013】
つまり、ガセット端部の上記傾斜構造により断面係数が増大し、この断面係数の増大により集中荷重に対する断面剛性、耐力が高まるので、側突に耐えることができ、この結果、ルーフレインの中折れを抑制して、該ルーフレインへの荷重分散を有効に行なわせることができるものである。
因に、断面係数(section modulus)は断面二次モーメントと同意であり、断面係数が大きくなることは、変形抵抗が大きくなることを意味する。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフレインが縦断側面視で複数の凹凸ビード部を有し、該凹凸ビード部が車幅方向に延びているものである。
上記構成によれば、ルーフレインに複数の凹凸ビード部を設けたので、軽量でありながらも剛性が高いルーフレインとすることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記ガセットのルーフレインとの締結が、車両前後方向の複数箇所で行なわれ、複数のボルト締結中心を結ぶ線が、平面視で車両前後方向の線に対して斜めになっているものである。
上記構成によれば、側突荷重入力時に、ガセットとルーフレインとのボルト締結点に応力がかかるが、ボルト締結中心を結ぶ線を傾斜配置とすることで、ガセットの断面係数を簡便に高めることができ、該応力に対する耐力の向上を図ることができる。
【0016】
つまり、センタピラーから側突荷重が入力した時、ガセット端部に荷重が作用し、ボルト締結点間に荷重がかかって、複数のボルト間を結ぶ斜めの線上に応力が集中するが、斜めになった分、断面係数が大きくなり、これにより変形抵抗が大となるので、有利となるものである。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記ガセット端部の傾斜と、ルーフレインの複数のボルト締結中心を結ぶ線の傾斜とが同じ方向であることを特徴とする。
上記構成によれば、ガセット端部の傾斜と、上記ボルト締結中心を結ぶ線の傾斜とを、ともに同じ方向と成したので、ガセットは余分な材料を使わなくても上記各傾斜を形成することができ、これにより、ガセットの重量増加を抑制して、ルーフレインに対する荷重分散を行なうことができる。
【0018】
なお、ガセット端部の傾斜と、上述のボルト締結中心を結ぶ線の傾斜とは同じ方向であればよく、傾斜角度が一致しなくても、同様の方向に傾斜していればよい。つまり、「同じ方向」とは同一方向、または、略同一方向の意味で用いている。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフレインの車幅方向の端部が、上記ルーフサイドレール部のルーフサイドレールインナパネルとルーフサイドレールアウタパネルとの接合フランジに対向しており、該ルーフレインの車幅方向の端部には、側突時に上記接合フランジを呼び込むV字状のノッチ形状部が形成されたものである。
上記構成によれば、ルーフレインの車幅方向の端部に上述のノッチ形状部を設けたので、側突時に上記ルーフサイドレール部が内寄りに変位した際、該ルーフサイドレール部の接合フランジをノッチ形状部で確実に受け止めて、ルーフレインへの荷重伝達、荷重分散を確実に行なうことができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、ルーフサイドレール部とルーフレインとを連結するガセットのルーフレイン締結側の端部形状を、平面視で車両前後方向の線に対して斜めに成したので、車両の側突時にセンタピラーおよびルーフサイドレール部に入力する側突荷重がガセットからルーフレインに作用する際、該ガセットの回動現象でルーフレインにかかる曲げモーメントに対し断面係数を簡便に高めることができ、ルーフレインへの荷重分散を有効に行なわせることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の車両の上部構造を示す斜視図
【図2】図1とは異なる角度から目視した状態で示す車両の上部構造の斜視図
【図3】車両の上部構造を示す断面図
【図4】ルーフパネルを取外した状態で示す上部構造の平面図
【図5】車両の上部構造を示す底面図
【図6】ルーフレインとガセットとの連結構造を示す斜視図
【図7】図6とは異なる角度から目視した状態で示す連結構造の斜視図
【図8】ルーフレイン単独の斜視図
【図9】ガセット単独の斜視図
【図10】従来のセンタピラー支持構造を示す正面図
【図11】従来の車両の上部構造を示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
車両の側突時にセンタピラーおよびルーフサイドレール部に入力する側突荷重がガセットからルーフレインに作用する際、該ガセットの回動現象でルーフレインにかかる曲げモーメントに対し断面係数を簡便に高めることができ、ルーフレインへの荷重分散を有効に行なわせるという目的を、センタピラー上方の左右のルーフサイドレール部と、該ルーフサイドレール部と車幅方向に延びるルーフレインとを連結するガセットとを備え、該ガセットが上記ルーフサイドレール部のルーフサイドレールインナパネルと上記ルーフレインの下面とにそれぞれボルト締結された車両の上部構造において、上記ガセットのルーフレイン締結側の端部の形状を、平面視で車両前後方向の線に対して斜めに成すという構成にて実現した。
【実施例】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の上部構造を示し、図1は車両下方からルーフ側を見上げた状態で示す斜視図、図2は図1とは異なる角度から目視した状態の斜視図、図3はルーフサイドレール部を断面して示す上部構造の背面図である。
【0024】
図1、図2において、フロントピラーアウタパネル1とフロントピラーインナパネル2とを接合固定して、車両後方に向けて斜め上方に延びる閉断面構造のフロントピラー3を設けている。
【0025】
フロントピラー3の後端部には、該フロントピラー3に連続して車両の後方に延びるルーフサイドレール部としてのルーフサイドレール4を設けている。
このルーフサイドレール4は車体の上部かつサイド部(つまり、ルーフサイド部)において車両の前後方向に延びる車体剛性部材であって、このルーフサイドレール4は、ルーフサイドレールアウタパネル5と、ルーフサイドレールレインフォースメント6と、ルーフサイドレールインナパネル7とを備え、ルーフサイドレールアウタパネル5とルーフサイドレールインナパネル7との間には、車両の前後方向に延びるルーフサイド閉断面8が形成されている。
【0026】
図3に断面図で示すように、上述のルーフサイドレール4は上下に接合フランジ4a,4bを有し、上側の接合フランジ4aは、ルーフサイドレールアウタパネル5と、ルーフサイドレールレインフォースメント6と、ルーフサイドレールインナパネル7とを接合して車幅方向内方に略水平に延びるように形成されている。
下側の接合フランジ4bは、ルーフサイドレールアウタパネル5と、ルーフサイドレールレインフォースメント6と、ルーフサイドレールインナパネル7とを接合して斜め下方に延びるように形成されている。
【0027】
車体上部のルーフサイドレール4の前後方向中間部と、これに対応する図示しない車体下部のサイドシルとを、上下方向に連結するセンタピラー9を設けている。
このセンタピラー9は、センタピラーアウタ10とセンタピラーインナ11とを接合固定して、車両の上下方向に延びるセンタピラー閉断面を有する車体剛性部材(車体強度部材)であって、該センタピラー9はその内折れ変形を防止する目的で剛性が高められている。
【0028】
左右のルーフサイドレール4(但し、図面では車両右側の構造のみを示す)はセンタピラー9の上方に連結固定されたものであって、図1、図2に示すように、上下方向に延びるセンタピラー9の前側には、前席乗員乗降用のフロントドア開口12が形成され、また後側には、後席乗員乗降用のリヤドア開口13が形成されている。
【0029】
図4にルーフパネルを取外した状態の平面図を示すように、左右のルーフサイドレール4,4間を車幅方向に延びる補強メンバとしての複数のルーフレイン14,15,16,17で連結している。
これら複数の各ルーフレイン14,15,16,17はそれぞれ車両の前後方向に離間するように互に平行に配設されている。ここで、ルーフレイン14,16,17は車両前後方向の長さが相対的に小さく設定され、センタピラー9と対応するルーフレイン15は車両前後方向の長さが相対的に大きく設定されている。
【0030】
これら各ルーフレイン14〜17のうち、ルーフレイン15はセンタピラー9と対応する部位に設けられており、ルーフレイン14は、センタピラー9と対応する部位のルーフレイン15と図1、図2に示すフロントヘッダ18との間に設けられており、ルーフレイン16はルーフレイン15の後方に所定間隔を隔てて設けられており、ルーフレイン17はルーフレイン16のさらに後方においてリヤフェンダパネル19と対応する部位に設けられている。
【0031】
また、上述の各ルーフレイン14〜17のうちのルーフレイン14,16,17は、ルーフ側から車室側へ下方に向けて突出して車幅方向の全幅にわたって延びるビード14a,16a,17aと、車幅方向の端部に一体形成された前後一対の接合片14b,14b、16b,16b、17b,17bと、を備えている。
そして、これらの各接合片14b,16b,17bは、ルーフサイドレール4の上側の接合フランジ4aにその上側から接合固定されている。図4では、各接合片14b,16b,17bのスポット溶接による接合点(溶接ポイント)を、図示の便宜上、黒丸で示している。
【0032】
さらに、上述の各ルーフレイン14〜17のうちのセンタピラー9と対応する部位のルーフレイン15は、図4〜図8に示すように構成している。
すなわち、このルーフレイン15は、縦断側面視で複数の凹凸ビード部15a,15aを有し、これら複数の凹凸ビード部15aが、図8に示すように車幅方向の全幅にわたって延びており、この構成により、該ルーフレイン15を、軽量でありつつ剛性が高いものと成している。
【0033】
この実施例では、上述のルーフレイン15は、図1、図2、図3に示すルーフパネル20下面と当接する複数のルーフパネル当接面15b,15c,15dを有し、これら複数のルーフパネル当接面15b,15c,15dも、図8に示すように車幅方向の全幅にわたって延びている。なお、ルーフパネル当接面15b,15c,15dとルーフパネル20とは、図示しない接着剤により接着されるものである。
【0034】
また、該ルーフパネル当接面15b,15c,15dの車幅方向端部には接合片15e,15f,15gが一体形成されており、これらの各接合片15e,15f,15gは、ルーフサイドレール4の上側の接合フランジ4aにその上側から接合固定されている。図4では、各接合片15e,15f,15gのスポット溶接による接合点(溶接ポイント)を、図示の便宜上、黒丸で示している。
【0035】
さらに、図3に示すように、上述のルーフレイン15の車幅方向の端部は、ルーフサイドレール4の上側の接合フランジ4aと対向しており、ルーフレイン15の車幅方向の端部には、側突時に上述の接合フランジ4aを呼び込むV字状のノッチ形状部としてのV字凹部15hが形成されている。
【0036】
該V字凹部15hは、図3に示すように、車外側が開放した横向きV字状に形成されると共に、複数の凹凸ビード部15a…に対応して複数(この実施例では4つ)形成されるものである(図7参照)。
そして、該V字凹部15hの形成により、側突時にルーフサイドレール4が内寄りに変位した時、該ルーフサイドレール4の接合フランジ4aを該V字凹部15hで確実に受け止めて、ルーフレイン15への荷重伝達、荷重分散を確実に行なうように構成したものである。
【0037】
図4に平面図で示すように、ルーフサイドレール4の上側の接合フランジ4aに対して、ルーフレイン14の接合片14b,14b、ルーフレイン15の接合片15e,15f,15g、ルーフレイン16の接合片16b,16b、ルーフレイン17の接合片17b,17bがそれぞれ接合固定された後に、上述の接合フランジ4a上には、ルーフパネル20の段下げ凹部20a(いわゆるモヒカン溝部形成片)が後付け固定される(図1、図3参照)。
【0038】
図1、図2に示すフロントヘッダ18は、左右のフロントピラー3,3の上端部相互間を車幅方向に連結する車体剛性部材である。
【0039】
図1、図2、図3、図5、図6、図7の各図に示すように、センタピラー9の対応部位においてルーフサイドレール4とルーフレイン15とを連結するガセット30を設けている。
【0040】
図3に示すように、ガセット30はルーフサイドレール4のルーフサイドレールインナパネル7にボルト31、ナット32を用いて締結されると共に、ルーフレイン15の下面にボルト33、ナット34を用いて締結されている。つまり、該ガセット30はルーフサイドレール4とルーフレイン15とにそれぞれボルト締結されたものである。
ここで、上述のナット32は、図3に示すように、ルーフサイドレールインナパネル7の閉断面8側の面に予め溶接固定されており、同様に、上述のナット34も、図3に示すように、ルーフレイン15のルーフパネル20側の面に予め溶接固定されたものである。
【0041】
図9にガセット30を単品図で示すように、該ガセット30はベース部30aの前後両部に、ルーフサイドレールインナパネル7およびルーフレール15側へ突出する複数条、たとえば、2条のビード部30b,30bを一体形成しており、この複数ビード構造によりガセット30それ自体の剛性向上を図るように構成している。
【0042】
また、図3に示すように、上述のガセット30は2条のビード部30b,30bの上面をルーフサイドレールインナパネル7の下面と、ルーフレール15の下面とに当接して、それぞれ前後方向に離間する位置において複数のボルト31,31、33,33を用いてボルト締結したものである。
しかも、上述のガセット30のルーフレイン締結側の端部の形状は、該ガセット30の断面係数を簡便に高めるべく、図5に底面図で、図6に斜視図でそれぞれ示すように、平面視で車両前後方向の線L1に対して斜めになっている。図5では、ガセット30のルーフレイン締結側の端部の傾斜を、その延長線上のラインL2として仮想線で示すように、線L1とラインL2との開角θが8度〜12度(この実施例では10度)になるように設定している。
【0043】
また、上述のガセット30のルーフレイン15との締結は、車両前後方向の複数箇所で行なわれており、複数のボルト33,33の締結中心を結ぶ線L3が、図5、図6に示すように、平面視で車両前後方向の線L1に対して斜めになっている。
さらに、ガセット30のルーフレイン締結側の端部の傾斜(ラインL2参照)と、ルーフレイン15の複数のボルト33,33締結中心を結ぶ線L3の傾斜とが同じ方向になるように形成されている。
【0044】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。また、図示実施例においては車両右側の構造について説明したが、車両左側は右側のそれと左右対称または左右略対称に構成されるものである。
【0045】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
図5、図6で示したように、ガセット30のルーフレイン15締結側の端部形状を、平面から見て車両前後方向の線L1に対して斜めに成したものであり、このガセット30端部の傾斜構造により断面係数が増大し、この断面係数の増大により集中荷重に対する断面剛性、耐力が高まる。
【0046】
この結果、車両の側突時には、センタピラー9およびルーフサイドレール4に側突荷重が入力し、この側突荷重が上述のガセット30からルーフレイン15に作用する時、該ガセット30の回動現象でルーフレイン15にかかる曲げモーメントに対して断面係数を簡便に高めることができ、ルーフレイン15の中折れを抑制して、該ルーフレイン15への荷重分散を有効に行なわせることができる。
【0047】
このように上記実施例の車両の上部構造は、センタピラー9上方の左右のルーフサイドレール4と、該ルーフサイドレール4と車幅方向に延びるルーフレイン15とを連結するガセット30とを備え、該ガセット30が上記ルーフサイドレール4のルーフサイドインナパネル7と上記ルーフレイン15の下面とにそれぞれボルト締結された車両の上部構造であって、上記ガセット30のルーフレイン15締結側の端部の形状が、平面視で車両前後方向の線L1に対して斜めになっているものである(図3、図5参照)。
【0048】
この構成によれば、ガセット30のルーフレイン15締結側の端部形状を、平面視で車両前後方向の線L1に対して斜めに成したので(ラインL2参照)、車両の側突時にセンタピラー9およびルーフサイドレール4に入力する側突荷重がガセット30からルーフレイン15に作用する時、該ガセット30の回動現象でルーフレイン15にかかる曲げモーメントに対して断面係数を簡便に高めることができ、ルーフレイン15への荷重分散を有効に行なわせることができる。
【0049】
つまり、ガセット30端部の上記傾斜構造(ラインL2参照)により断面係数が増大し、この断面係数の増大により集中荷重に対する断面剛性、耐力が高まるので、側突に耐えることができ、この結果、ルーフレイン15の中折れを抑制して、該ルーフレイン15への荷重分散を有効に行なわせることができるものである。
【0050】
また、上記ルーフレイン15が縦断側面視で複数の凹凸ビード部15a,15aを有し、該凹凸ビード部15aが車幅方向に延びているものである(図6、図8参照)。
この構成によれば、ルーフレイン15に複数の凹凸ビード部15a,15aを設けたので、軽量でありながらも剛性が高いルーフレイン15とすることができる。
【0051】
さらに、上記ガセット30のルーフレイン15との締結が、車両前後方向の複数箇所で行なわれ、複数のボルト33,33の締結中心を結ぶ線L3が、平面視で車両前後方向の線L1に対して斜めになっているものである(図1、図2、図5参照)。
この構成によれば、側突荷重入力時に、ガセット30とルーフレイン15とのボルト締結点に応力がかかるが、ボルト締結中心を結ぶ線L3を傾斜配置とすることで、ガセット30の断面係数を簡便に高めることができ、該応力に対する耐力の向上を図ることができる。
【0052】
つまり、センタピラー9から側突荷重が入力した時、ガセット30端部に荷重が作用し、ボルト締結点間に荷重がかかって、複数のボルト33,33間を結ぶ斜めの線L3上に応力が集中するが、斜めになった分、断面係数が大きくなり、これにより変形抵抗が大となるので、有利となるものである。
【0053】
また、上記ガセット30端部の傾斜(ラインL2参照)と、ルーフレイン15の複数のボルト締結中心を結ぶ線L3の傾斜とが同じ方向であることを特徴とする(図5参照)。
この構成によれば、ガセット30端部の傾斜(ラインL2参照)と、上記ボルト締結中心を結ぶ線L3の傾斜とを、ともに同じ方向と成したので、ガセット30は余分な材料を使わなくても上記各傾斜を形成することができ、これにより、ガセット30の重量増加を抑制して、ルーフレイン15に対する荷重分散を行なうことができる。
ここで、ガセット30端部の傾斜としてのラインL2と、ボルト締結中心を結ぶ線L3とは互いに平行であってもよく、ほぼ平行であってもよい。
【0054】
さらに、上記ルーフレイン15の車幅方向の端部が、上記ルーフサイドレール4のルーフサイドレールインナパネル7とルーフサイドレールアウタパネル5との接合フランジ4aに対向しており、該ルーフレイン15の車幅方向の端部には、側突時に上記接合フランジ4aを呼び込むV字状のノッチ形状部(V字凹部15h参照)が形成されたものである(図3参照)。
この構成によれば、ルーフレイン15の車幅方向の端部に上述のノッチ形状部(V字凹部15h参照)を設けたので、側突時に上記ルーフサイドレール4が内寄りに変位した際、該ルーフサイドレール4の接合フランジ4aをノッチ形状部(V字凹部15h参照)で確実に受け止めて、ルーフレイン15への荷重伝達、荷重分散を確実に行なうことができる。
【0055】
なお、図3に示すルーフパネル20の段下げ凹部20a、ルーフレイン15の接合片15e,15f,15g、ルーフレールアウタパネル5、ルーフレールレインフォースメント6、ルーフレールインナパネル7の接合箇所は、3枚重ねでのスポット溶接が可能になるように、上下方向に重なる何れかの部材に切欠き、または開口部が形成されるものである。
【0056】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のルーフサイドレール部は、実施例のルーフサイドレール4に対応し、
以下同様に、
V字状のノッチ形状部は、V字凹部15hに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記ガセット30のルーフレイン15締結側の端部の傾斜形状は、上記実施例では、そのフロント側が相対的に車幅方向の外方に位置し、リヤ側が相対的に車幅方向の内方に位置する傾斜と成したが、この逆の傾斜、すなわち、フロント側が相対的に車幅方向の内方に位置し、リヤ側が相対的に車幅方向の外方に位置する傾斜であってもよく、また、ガセット端部の傾斜と、ルーフレインの複数のボルト締結中心を結ぶ線の傾斜とは、必ずしも同一方向でなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
4…ルーフサイドレール(ルーフサイドレール部)
4a…接合フランジ
5…ルーフサイドレールアウタパネル
7…ルーフサイドレールインナパネル
9…センタピラー
15…ルーフレイン
15a…凹凸ビード部
15h…V字凹部(V字状のノッチ形状部)
30…ガセット
33…ボルト
L1…車両前後方向の線
L3…ボルト締結中心を結ぶ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタピラー上方の左右のルーフサイドレール部と、
該ルーフサイドレール部と車幅方向に延びるルーフレインとを連結するガセットとを備え、
該ガセットが上記ルーフサイドレール部のルーフサイドレールインナパネルと上記ルーフレインの下面とにそれぞれボルト締結された車両の上部構造であって、
上記ガセットのルーフレイン締結側の端部の形状が、平面視で車両前後方向の線に対して斜めになっている
車両の上部構造。
【請求項2】
上記ルーフレインが縦断側面視で複数の凹凸ビード部を有し、
該凹凸ビード部が車幅方向に延びている
請求項1記載の車両の上部構造。
【請求項3】
上記ガセットのルーフレインとの締結が、車両前後方向の複数箇所で行なわれ、
複数のボルト締結中心を結ぶ線が、平面視で車両前後方向の線に対して斜めになっている
請求項1または2記載の車両の上部構造。
【請求項4】
上記ガセット端部の傾斜と、ルーフレインの複数のボルト締結中心を結ぶ線の傾斜とが同じ方向である
請求項3記載の車両の上部構造。
【請求項5】
上記ルーフレインの車幅方向の端部が、上記ルーフサイドレール部のルーフサイドレールインナパネルとルーフサイドレールアウタパネルとの接合フランジに対向しており、
該ルーフレインの車幅方向の端部には、側突時に上記接合フランジを呼び込むV字状のノッチ形状部が形成された
請求項2〜4の何れか1項に記載の車両の上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−176635(P2012−176635A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39237(P2011−39237)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】