説明

車両の上部車体構造

【課題】車体を効果的に軽量化してコストダウンを図りつつ、乗員用シートの支持剛性を効果的に向上できるようにする。
【解決手段】車室の底面を形成するフロアパネル2の上方に少なくとも運転席シート3と助手席シート4とが車幅方向に並設された車両の上部車体構造であって、上記フロアパネル2には、シートバックフレーム21等からなるシートフレーム部材が固定されるとともに、該シートフレーム部材には、助手席シート4のシートバック部19等からなるシート本体部が着脱可能に係止される係止部28,30が設けられ、該係止部28,30からシート本体部が取り外されることにより、上記助手席シート4の設置部が荷物の収容スペースとして利用可能に構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の上部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロアパネル上に運転席および助手席が設置された所謂ツーシータタイプで屋根が開放されるように構成されたオープンカー等において、上記運転席および助手席の後方に、開閉式屋根である幌の格納部を設けるとともに、その下方に位置するキックアップパネルおよびクロスメンバの後側に燃料タンクを設置することが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、フロアパネル上に運転席および助手席が設置された所謂ツーシータタイプのスポーツカーにおいて、ダッシュパネルの凹部内に駆動装置を配設し、該駆動装置の側方のダッシュパネルの前方にバッテリを配設し、バッテリ前端位置を駆動装置よりも前方に位置させることで、駆動装置とバッテリとの両者を後方配置し、これによりヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性および車両の運動性能の向上を図り、しかも衝突荷重をバッテリで受け止めて、衝突時に駆動装置の後退量を減少させて、安全性を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−21607号公報
【特許文献2】特開2005−28911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ツーシータタイプのスポーツカー等においては、車体をコンパクト化することが特に望まれ、車載バッテリ等からなる車両用補機や物品の収容スペース等を確保することが重要な課題である。上記特許文献1,2に開示された車両では、車両用補機の設置スペースや物品等の収容スペースを確保するために様々な工夫が凝らされているが、車体をコンパクト化しつつ、物品等の収容スペースをさらに効果的に確保することが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、物品等の収容スペースを充分に確保できる車両の下部車体構
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の上部車体構造であって、上記フロアパネルには、助手席シートのシート本体部を支持するシートフレーム部材が固定されるととともに、該シートフレーム部材には、助手席シートのシート本体部が着脱可能に係止される係止部が設けられ、上記シートフレーム部材からシート本体部が取り外されることにより、上記助手席シートの設置部が荷物の収容スペースとして利用可能に構成されたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の上部車体構造において、上記助手席シートが、シートクッション部およびシートバック部からなるシート本体部を有し、該シートクッション部またはシートバック部の少なくとも一方が係脱可能に係止される係止部が、上記シートフレーム部材に設けられたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の上部車体構造において、上記シートフレーム部材に、荷物を支持する支持部が設けられたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の上部車体構造において、シートフレーム部材に設けられた上記シート本体部の係止部が、荷物の支持部としての機能を兼ね備えたものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の上部車体構造において、上記助手席シートの設置部には、フロアパネルを上方に膨出させたフロア膨出部が形成され、該フロア膨出部に助手席シートのシートクッション部が着脱可能に取り付けられるとともに、該シートクッション部が取り外されることにより上記フロア膨出部が物品の収容部として利用可能に構成されたものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5に記載の車両の上部車体構造において、上記シートフレーム部材には、助手席シートに着座した乗員を保護するロールバー部材が設けられたものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6の何れか1項に記載の車両の上部車体構造において、上記車両が、車室上方にルーフ部材が開閉可能に設けられたオープンカーであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、助手席シートの不使用時に、そのシートフレーム部材に設けられた係止部によるシート本体部の係止状態を解除し、該シート本体部を上記シートフレーム部材から取り外すことにより、その設置スペースを物品等の収容スペースと利用することができるため、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、物品の収容スペースを充分に確保できるという利点がある。
【0015】
請求項2に係る発明では、助手席シートを構成するシートクッション部およびシートバック部の少なくとも一方が係脱可能に係止される係止部を、上記シートフレーム部材に設けたため、例えば上記シートバック部をシートフレーム部材から取り外し、該シートバック部の設置部を荷物の収容スペースとして利用することにより、前後寸法の大きい荷物を上記シートクッション部に載置することができ、またシートクッション部をシートフレーム部材から取り外し、該シートクッション部の設置部を荷物の収容スペースとして利用することにより、上下寸法の大きい荷物をシートバック部に沿わせた状態で収容できる等の利点がある。
【0016】
請求項3に係る発明では、シートフレーム部材に、荷物を支持する支持部を設けたため、簡単な構成で上記自転車本体等からなる大型の荷物であっても、これを安定した収容状態に保持できるという利点がある。
【0017】
請求項4に係る発明では、シートフレーム部材に設けられた上記シート本体部の係止部に、荷物の支持部としての機能を兼ね備えさせたため、上記シートフレーム部材に荷物を支持させるための専用の支持部を、上記シート本体部の係止部とは別体に設けた場合に比べ、部品点数を少なくして構造を効果的に簡略化できるという利点がある。
【0018】
請求項5に係る発明では、助手席シートの設置部に、フロアパネルを上方に膨出させたフロア膨出部を形成し、該フロア膨出部に助手席シートのシートクッション部を着脱可能に取り付けるとともに、該シートクッション部を取り外すことにより上記フロア膨出部を物品の収容部として利用可能に構成したため、該フロア膨出部の上下両方を有効に活用することにより、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、物品の収容スペースをさらに拡大できるという利点がある。
【0019】
請求項6に係る発明では、上記シートフレーム部材に、助手席シートに着座した乗員を保護するロールバー部材を設けたため、簡単な構造で該ロールバー部材を適正位置に設置して、車両の横転時等に助手席シートに着座した乗員等を効果的に保護できるという利点がある。
【0020】
請求項7に係る発明では、車室の上方にルーフ部材が開閉可能に設けられたオープンカーからなる車両、つまりその走行性が重視されるスポーツカーに上記構成を採用したため、車体重量を軽量して走行性を効果的に向上させることができるとともに、物品等の収容スペースを充分に確保できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る車両の上部車体構造を備えた車両の概略構成を示す平面図である。
【図2】運転席シートおよび助手席シートの設置状態を示す正面断面図である。
【図3】運転席シートの設置状態を示す側面断面図である。
【図4】助手席シートの設置状態を示す側面断面図である。
【図5】運転席シートを前方に移動させた状態を示す平面図である。
【図6】シートフレーム部材等の具体的構成を示す斜視図である。
【図7】上部ストライカの具体的構成を示す平面図である。
【図8】ラッチ等の設置部の具体的構成を示す側面図である。
【図9】上記ストライカとラッチの係合状態を示す側面図である。
【図10】前部ストライカの具体的構成を示す正面断面図である。
【図11】自転車の収容状態を示す側面断面図である。
【図12】自転車の収容状態を示す正面断面図である。
【図13】自転車本体の支持状態を示す正面断面図である。
【図14】本発明に係る車両の上部車体構造の別の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜図6は、本発明に係る車両の上部車体構造の実施形態を示している。本実施形態に係る車両は、その車室1内のフロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4が左右に並設されるとともに、車室上方にルーフ部材(図示せず)が開閉可能に設置された所謂ツーシータタイプのオープンカーである。上記フロアパネル2の左右両側方部には、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシル5が設置されるとともに、上記フロアパネル2の車幅方向中央部には、車室内側(上方)に向けて突出するトンネル部6が車両の前後方向に延びるように設置されている。
【0023】
上記車室1内の左側部位(図2で示す正面視では右側部位)には、運転席シート3を移動可能に支持する左右一対のシートレール8が車両の前後方向に延びるように設置されている。また、車室1内の右側部位(図2で示す正面視では左側部位)には、フロアパネル2を上方に膨出させたフロア膨出部9が形成され、その上に助手席シート4が取り付けられている。上記運転席シート3および助手席シート4の設置部の後方側には、斜め上方に向けてキックアップしたキックアップ部10と、その上端部から車両の後方側に延びるリヤフロアパネル11とが連設されている。また、上記リヤフロアパネル11の前部下面には、車幅方向に延びる閉断面を形成するリヤクロスメンバ12が配設されている。
【0024】
上記運転席シート3は、図3に示すように、車室1内のフロアパネル2上に設置された上記シートレール8に沿って車両の前後方向にスライド可能に支持されたシートクッション部13と、その後端部に立設されたシートバック部14と、上記シートクッション部13の後端部側面に取り付けられてシートバック部14を傾動可能に支持するリクライニング機構15とを備えている。そして、上記シートレール8に沿って運転席シート3のシートクッション部13をスライド変位させることにより、図5に示すように、運転席シート3を、ステアリングホイール16およびインストルメントパネル17に近接させた最前方位置から、図1および図3に示すように、上記フロアパネル2のキックアップ部10に近接させた最後方位置まで前後移動させることにより、運転席シート3に着座した運転者の着座位置を、その体格等に応じて調整できるように構成されている。
【0025】
一方、助手席シート4は、図4に示すように、上記フロア膨出部9上に支持されたシートクッション部18と、該シートクッション部18の後方部から上方に立設されたシートバック部19とを有し、該シートバック部19の上部にはヘッドレスト20が一体的に設けられている。そして、上記助手席シート4の設置位置は、運転席シート3の最前方位置よりも後方側、具体的には、上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最後方位置に対応した車室1の後方部位に設定されている。
【0026】
上記ように助手席シート4のシートクッション部18およびシートバック部19が、上記フロアパネル2の後端部に設けられたキックアップ部10に近接した位置に支持されることにより、上記シートクッション部18の前後移動が規制されるとともに、上記シートバック部19の傾動変位が規制された状態で、上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最前方位置よりも後方側において、上記助手席シート4がフロアパネル2に固定されている。
【0027】
また、上記助手席シート4の後方には、そのシートバック部19を支持する丸パイプ材等により形成されたシートバックフレーム21からなるシートフレーム部材が設けられている。該シートバックフレーム21は、シートバック部19の車幅方向外側辺部(正面視の左側辺部)に沿って上下方向に延びる外側方部材22と、シートバック部19の車幅方向内側辺部(正面視の右側辺部)に沿って上下方向に延びる内側方部材23と、上記外側方部材22および内側方部材23の上端部同士を連結するように車幅方向に延びる上方部材24とを有している。該上方部材24の設置高さは、上記ヘッドレスト20の上部に対応するように設定されている。
【0028】
上記上方部材24の下方には、外側方部材22と内側方部材23とを連結する下方部材25が車幅方向に延びるように設置されている。そして、上記外側方部材22および内側方部材23の下端部に設けられた取付フランジ26が上記リヤフロアパネル11の前部上面にボルト止めされる等により、上記シートバックフレーム21が助手席シート4の後方側においてフロアパネル2に固定されるようなっている。
【0029】
上記下方部材25の前面左右には、U字状部材からなる左右一対の下部ストライカ28が設けられ、該下部ストライカ28に、助手席シート4のシート本体部を構成するシートバック部19の背面に設置されたラッチ27を備えた左右一対のロック機構が係止されるようになっている。また、上記上方部材24の前面中央部には、図7に示すように、左右一対の脚部31と、その下端部に固定された水平バー32とを有する上部ストライカ30が設けられ、該上部ストライカ30に、上記助手席用ヘッドレスト20の上部背面に設置されたラッチ27を備えたロック機構が係止されるように構成されている。上記水平バー32の左右には、ナット33が螺着される雄ねじ部32aが形成され、該雄ねじ部32aは、後述するように自転車からなる荷物を支持する支持部として使用されるように構成されている。
【0030】
上記助手席シート4のヘッドレスト20には、図8に示すように、上記ラッチ27を揺動可能に支持するロックブラケット34が配設され、該ロックブラケット34には、上記シートバックフレーム21の上方部材24に設けられたストライカ30の水平バー32に外嵌される溝部35と、上記ラッチ27をロックすることにより該溝部35内に導入されたストライカ28,30を保持するロックアーム36とが設けられている。また、助手席シート4のシートバック部19に配設されたラッチ27は、上記ヘッドレスト20のラッチ27と同様に構成されているため、その説明を省略する。
【0031】
そして、上記シートバック部19を車体に取り付ける際には、該シートバック部19および上記ヘッドレスト20に設けられたロックブラケット34の溝部35を上部ストライカ30の水平バー32および下部ストライカ30にそれぞれ外嵌し、図9に示すように、該ストライカ28,30によりラッチ27を押動して上記保持位置に回動変位させるとともに、上記ロックアーム36によりラッチ27をストライカ28,30の保持位置にロックする。このようにして上記ストライカ28,30がロックブラケット34の溝部35内に導入された状態で拘束され、上記シートバック部19が起立状態に保持されるようになっている。
【0032】
一方、上記シートバック部19を車体から取り外す際には、該シートバック部19に設けられたロック解除レバー(図示せず)を操作して、図外のケーブルを介して上記ロックアーム36をラッチ27のロック解除位置に駆動することにより、該ロックアーム36によるラッチ27の拘束状態を解除する。この状態で、上記下部ストライカ28および上部ストライカ30をロックブラケット34の溝部35外に引き出すことにより、上記シートバックフレーム21によるシートバック部19の支持状態を解除し、該シートバック部19を車体から取り外すことが可能となる。
【0033】
上記助手席シート4のシートクッション部18が設置されたフロア膨出部9の上面には、図6に示すように、T字状プレート材37からなるシートフレーム部材が固定されている。該T字状プレート材37の前部および後部左右には、助手席シート4のシート本体部を構成するシートクッション部18の下面に設けられたラッチ38(図4参照)を備えたロック機構がそれぞれ係止される前部ストライカ39と、U字状部材からなる左右一対の後部ストライカ40とが取り付けられている。
【0034】
上記前部ストライカ39は、図10に示すように、T字状プレート材37から上方に突設された左右一対の脚部41と、その上端部に固定された水平バー42とを有し、該水平バー42の左右には、ナット43が螺着される雄ねじ部42aが形成され、該雄ねじ部42aが、後述するように自転車からなる荷物支持する支持部として使用されるように構成されている。また、上記シートクッション部18用のラッチ38を備えたロック機構は、上記シートバック部19に設けられたロック機構と同様の構成を有しているので、その具体的説明を省略する。
【0035】
そして、上記シートクッション部18に設けられたラッチ38が、T字状プレート材37に取り付けられた上記前部ストライカ39および後部ストライカ40にそれぞれ係止されることにより、助手席シート4のシートクッション部18が乗員の着座可能状態に保持されるようになっている。また、上記シートクッション部18に設けられたロック解除レバー(図示せず)を操作し、図外のケーブルを介して上記ラッチ38による各ストライカ39,40の保持状態を解除することにより、助手席シート4のシートクッション部18を車体から取り外すことができるように構成されている。
【0036】
上記のように車室1の底面を形成するフロアパネル2の上方に少なくとも運転席シート3と助手席シート4とが車幅方向に並設された車両の上部車体構造において、上記フロアパネル2のフロア膨出部9に、助手席シート4のシートクッション部18およびシートバック部19からなるシート本体部を支持するシートバックフレーム21およびT字状プレート材37からなるシートフレーム部材を固定するととともに、該シートフレーム部材に、上記助手席シート4のシート本体部を着脱可能に係止する各ストライカ28,30,39,40からなる係止部を設け、該係止部から上記シート本体部を取り外すことにより、助手席シート4の設置部を荷物の収容スペースとして利用可能に構成したため、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、物品等の収容スペースを充分に確保できるという利点がある。
【0037】
すなわち、上記実施形態では、助手席シート4の後方にシートバックフレーム21を設置するとともに、該助手席シート4のシートバック部19およびヘッドレスト20に設けられたラッチ27が係止される上部ストライカ30および下部ストライカ28を上記シートバックフレーム21に設置したため、助手席シート4の使用時には、上記シートバック部19を起立状態に安定して保持することができる。また、上記シートクッション部18に設けられたラッチ38を、上記フロア膨出部9に固定された前部ストライカ39および後部ストライカ40にそれぞれ係止することにより、上記シートクッション部18を水平状態に安定して保持することができる。
【0038】
そして、上記助手席シート4の不使用時には、そのシートクッション部18およびシートバック部19に設けられたロック解除レバーを操作することにより、上記各ストライカ28,30とラッチ27との係合状態を解除して、上記シートバックフレーム21からシートバック部19を離脱させるとともに、上記各ストライカ39,40とラッチ38との係合状態を解除して、上記シートクッション部18をフロア膨出部9上のT字状プレート材37から離脱させることにより、大型荷物の収容スペースとして上記助手席シート4の設置部を利用できるという利点がある。
【0039】
例えば、図11〜図13に示すように、自転車本体50から前輪51および後輪52を取り外した状態で、自転車本体50の前部に設けられた前輪用フォーク53の先端部を、上記シートバックフレーム21に設けられた上部ストライカ30の水平バー32の左右両端部に係合した状態で、該水平バー32の左右に形成された雄ねじ部32aにナット33を螺着することにより、自転車本体50の前輪用フォーク53をシートバックフレーム21に固定する。また、上記自転車本体50の後部に設けられたチェーンステー54の後端部を、上記T字状プレート材37に設けられた前部ストライカ39の水平バー42の左右両端部に係合した状態で、該水平バー42の左右に形成された雄ねじ部42aにナット43を螺着することにより、自転車本体50のチェーンステー54をフロア膨出部9上のT字状プレート材37に固定する。
【0040】
さらに、上記自転車本体50から取り外された前輪51および後輪52を、フロア膨出部9に載置した状態で締結バンドまたはロック部材等からなる係止具55を介してシートバックフレーム21に設けられた下部ストライカ28およびフロア膨出部9上の後部ストライカ40に係止させることにより、上記自転車本体50、前輪51および後輪52の全てを、上記運転席の側方、つまり上記助手席シート4の設置部に収容して固定することができる。したがって、車体をコンパクト化したツーシータタイプのスポーツカー等においても、荷物の収容スペースを充分に確保し、必要に応じて自転車等からなる大型の荷物を効果的に収容できるとともに、その収容状態を安定して保持できるという利点がある。
【0041】
なお、助手席シート4を構成するシートクッション部18およびシートバック部19の両方を係止する係止部を、上記T字状プレート材37およびシートバックフレーム21からなるシートフレーム部材にそれぞれ設けてなる上記実施形態に代え、上記シートフレーム部材にシートクッション部18またはシートバック部19の一方のみを着脱可能に構成することも可能である。例えば、上記シートバック部19のみをシートバックフレーム21から取り外し、該シートバック部19の設置部を荷物の収容スペースとして利用することにより、前後寸法の大きい荷物を上記シートクッション部18上に載置するように構成してもよい。
【0042】
また、上記シートクッション部18のみをT字状プレート材37から取り外し、該シートクッション部18の設置部を荷物の収容スペースとして利用することにより、上下寸法の大きい荷物をシートバック部19に沿わせた状態で、上記フロア膨出部9上に載置するように構成してもよい。さらに、上記T字状プレート材37を省略し、上記前部ストライカ39および後部ストライカ40をフロア膨出部9に設けた構造としてもよい。
【0043】
上記実施形態では、自転車本体50から前輪51および後輪52を取り外した状態で、これらを助手席シート4の設置部に設けられたT字状プレート材37およびシートバックフレーム21からなるシートフレーム部材にそれぞれ支持させるように構成した例について説明したが、この構成に代え、前輪51および後輪52の一方または両方を自転車本体50に取り付けた状態で、これらを上記T字状プレート材37およびシートバックフレーム21からなるシートフレーム部材に支持させるように構成してもよい。
【0044】
さらに、上記自転車に代えて、大型の旅行用ボストンバッグ、ベビーカーまたは買い物用キャリーバック等からなる種々の荷物を上記助手席シート4の設置部に収容するとともに、シートバックフレーム21およびT字状プレート材37からなる設けられた上部ストライカ30および前部ストライカ39等を支持部に、上記旅行用ボストンバッグの取手等を支持させるよう構成してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、シートバックフレーム21およびT字状プレート材37からなる設けられた上部ストライカ30および前部ストライカ39等を支持部として利用することにより、簡単な構成で上記自転車本体50等からなる荷物を安定した収容状態に保持できるという利点がある。すなわち、上記シートフレーム部材に自転車本体50等からなる荷物を支持させるための専用の支持部を上記上部ストライカ30および前部ストライカ39等とは別体に設けた構造とすることも可能であるが、この場合には、部品点数が多くなって構造が複雑になるため、上記実施形態に示すように、シートバックフレーム21およびT字状プレート材37からなるシートフレーム部材に設けられた上記上部ストライカ30および前部ストライカ39等からなるシート本体部用の係止部に、上記荷物の支持部としての機能を兼ね備えるように構成することが好ましい。
【0046】
さらに、上記実施形態に示すように運転席シート3の下方に、該運転席シート3を車両の前後方向に移動可能に支持するシートレール8をフロアパネル2上に設置し、かつ助手席シート4の下方に、フロアパネル2を上方に膨出させたフロア膨出部9を形成するとともに、該フロア膨出部9に上記助手席シート4を固定した場合には、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、図4に示すように、車載バッテリ等58等からなる車両用補機を配設して固定具59で固定することにより、上記フロア膨出部9の下方スペースを有効に利用して車両用補機等を効率よく設置することができる。
【0047】
すなわち、上記実施形態では、助手席シート4を車室1の後方部において固定したため、該助手席シート4用のシートレールを省略してその分だけ車体を軽量化することができるとともに、材料費を節約して製造コストを安価に抑制することができる。また、上記助手席シート4をシートレールにより前後移動可能に支持した場合のように、助手席シート4を前後移動させる際に車体との干渉を回避するために助手席シート4のレイアウトを工夫する必要がないという利点がある。しかも、上記フロア膨出部9の下方部を有効に活用することにより、車体をコンパクト化したツーシータタイプのスポーツカー等においても、上記車載バッテリ58等からなる車両用補機を上記フロア膨出部9の下方に収容できるという利点がある。
【0048】
なお、上記実施形態では、助手席シート4のシートバック部19を支持するシートバックフレーム21の上方部材24を、上記ヘッドレスト20の上部に対応した上下位置に設定した例について説明したが、図14に示すように、上方部材24の設置高さを、シートバック部19の上部に対応した位置に設定するともに、助手席シート4の上方に延びるように設置されて助手席シート4に着座した乗員を保護するロールバー部材60を上記シートバックフレーム21に設けた構造としてもよい。当該実施形態では、上記上方部材24の前面に左右一対の上部ストライカ61を設けるとともに、上記キックアップ部10の前面に下部ストライカ62を設けている。
【0049】
上記ロールバー部材60は、内側方部材23の上端部から上方に延設されてヘッドレスト20の上方に延びる延設部材63と、その上端部から上記上方部材24の車幅方向中央部に向けて斜め下方に延びる斜め部材64とを有し、該斜め部材64の下部が上記上方部材24の車幅方向中央部上面に溶接される等の手段で固定されている。このように助手席シート4に着座した乗員を保護するロールバー部材60を上記シートバック部19等からなるシートフレーム部材に設けた場合には、簡単な構造で上記ロールバー部材60を適正位置に設置して、車両の横転時等に助手席シート4に着座した乗員等を効果的に保護できるという利点がある。
【0050】
また、上記各実施形態では、車室1内のフロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4だけが設置されたツーシータタイプで、ルーフパネルおよびこれを支持するピラーのないオープンカーに本発明を適用した例について説明したが、これに限られず、後列シートを備えた車両についても本発明を適用可能である。しかし、上記オープンカーは、車体重量を軽量して走行性を効果的に向上させることが望まれるため、上記構成を採用することの優れた効果が得られるという利点がある。
【符号の説明】
【0051】
1 車室
2 フロアパネル
3 運転席シート
4 助手席シート
9 フロア膨出部
18 シートクッション部(シート本体部)
19 シートバック部(シート本体部)
21 シートバックフレーム(シートフレーム部材)
28,30,39,40 ストライカ(係止部)
60 ロールバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の上部車体構造であって、上記フロアパネルには、助手席シートのシート本体部を支持するシートフレーム部材が固定されるととともに、該シートフレーム部材には、助手席シートのシート本体部が着脱可能に係止される係止部が設けられ、上記シートフレーム部材からシート本体部が取り外されることにより、上記助手席シートの設置部が荷物の収容スペースとして利用可能に構成されたことを特徴とする車両の上部車体構造。
【請求項2】
上記助手席シートは、シートクッション部およびシートバック部からなるシート本体部を有し、該シートクッション部またはシートバック部の少なくとも一方が係脱可能に係止される係止部が、上記シートフレーム部材に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両の上部車体構造。
【請求項3】
上記シートフレーム部材に、荷物を支持する支持部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の上部車体構造。
【請求項4】
シートフレーム部材に設けられた上記シート本体部の係止部が、荷物の支持部としての機能を兼ね備えたことを特徴とする請求項3に記載の車両の上部車体構造。
【請求項5】
上記助手席シートの設置部には、フロアパネルを上方に膨出させたフロア膨出部が形成され、該フロア膨出部に助手席シートのシートクッション部が着脱可能に取り付けられるとともに、該シートクッション部が取り外されることにより上記フロア膨出部が物品の収容部として利用可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の上部車体構造。
【請求項6】
上記シートフレーム部材には、助手席シートに着座した乗員を保護するロールバー部材が設けられたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の車両の上部車体構造。
【請求項7】
上記車両が、車室上方にルーフ部材が開閉可能に設けられたオープンカーであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の車両の上部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−162048(P2011−162048A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26691(P2010−26691)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】