説明

車両の上部車体構造

【課題】ルーフ補強部材をピラーよりも車体前後方向にオフセット配置させつつ、前後席双方の乗員に対するエアバッグの展開安定性を確保することができる車両の上部車体構造を提供する。
【解決手段】左右1対のセンタピラーと、左右1対のルーフサイドレールと、ルーフサイドレールの車幅方向内側に設置され且つエアバッグ31にガス圧を供給可能なインフレータ32とを備え、左右1対のセンタピラーの上端近傍部後方に亙って車幅方向に延びるようにルーフレイン10が設けられ、ルーフレイン10と少なくとも一部が重複するようにインフレータ32が配設され、ルーフレイン10が下方へ凹入した前側凹入部11と後側凹入部12を備え、インフレータ10と重複する後側凹入部12の凹入深さは、センタピラー2側の前側凹入部11の凹入深さよりも浅く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフサイドレールの車幅方向内側に設置され且つエアバッグにガス圧を供給可能なインフレータとを備えた車両の上部車体構造に関し、特にピラーから前後方向へオフセットさせて配設されたルーフ補強部材を有する車両の上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーテンエアバッグを備えた車両では、カーテンエアバッグがルーフサイドレールの車幅方向内側面に沿って折畳んだ状態で収納され、その車室側がルーフトリムで覆われている。これにより、車両の側突時やロールオーバー時、インフレータからカーテンエアバッグへガス圧が供給されることによりカーテンエアバッグが膨張してルーフトリムの下端を開放し、サイドウインドガラスに沿うように車室側へ突出して乗員の側方に展開する。
【0003】
特許文献1に記載された車両のルーフ構造は、左右1対のルーフサイドレール間に亙って延設されたセンタフレーム(ルーフレインフォースメント)と、ルーフサイドレールとセンタフレームとに連結され、車両の側突時、センタフレームに生じる曲げ応力を調節可能な荷重伝達部材(ガセット)とを備え、収納状態のカーテンエアバッグがセンタフレームの下方で且つルーフサイドレールの車幅方向内側面とセンタフレームの車幅方向外側端との間に配置されている。
【0004】
通常、収納状態のカーテンエアバッグは、前席用エアバッグと後席用エアバッグとが共通化されることが多いため、前席と後席との間に位置するセンタピラーを跨いで前後方向に長く配設されている。それ故、前席用エアバッグと後席用エアバッグに対してガス圧を略均等に供給して前席乗員と後席乗員に対するカーテンエアバッグの展開性を安定化するため、インフレータをカーテンエアバッグの前後方向略中間位置に相当するセンタピラーの直上位置付近に配置している。
【0005】
特許文献2に記載された車両の上部車体構造では、左右1対のセンタピラーと、車体前後方向に延びる左右1対のルーフサイドレールと、左右1対のセンタピラーに亙って車幅方向に延びるルーフレインフォースメントと、ルーフサイドレールの車幅方向内側に設置されたカーテンエアバッグと、このカーテンエアバッグにガス圧を供給可能なインフレータとを備え、このインフレータがルーフレインフォースメントの後方且つルーフサイドレールの車幅方向内側面に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−262662号公報
【特許文献2】特開2009−78695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両の空力抵抗の改善やデザイン上の観点から車高を低くしたいという要求や乗員の乗降性改善の観点から乗降口を広くしたいという要求があるため、ルーフサイドレールの上下方向幅を小さく抑えることが望まれている。しかし、特許文献1の車両のルーフ構造では、インフレータがセンタフレームの下方、つまり、ルーフサイドレールに形成された収納凹部に配置されているため、ルーフサイドレールはインフレータとセンタフレームとを上下配置して収容できる配置スペースを確保する必要があり、カーテンエアバッグの車体装着性を確保しつつ、ルーフサイドレールの上下方向幅を小さくすることは容易ではない。
【0008】
特許文献2の車両の上部車体構造では、インフレータがルーフレインフォースメントから後方にオフセットされた位置に配置されているため、ルーフレインフォースメントとインフレータとを同じ高さ位置に配置でき、ルーフサイドレールの上下方向幅を小さく抑えることが可能である。しかし、前席用エアバッグと後席用エアバッグとが共通化されたカーテンエアバッグでは、インフレータの設置位置がカーテンエアバッグの前後方向略中間位置から前後方向にオフセットされた場合、前席用エアバッグと後席用エアバッグに供給されるガス圧の供給時間に時間差が生じるため、前席用エアバッグと後席用エアバッグの膨張特性に違いを生じ、前後席双方の乗員に対するカーテンエアバッグの展開安定性を確保できない虞がある。
【0009】
しかも、近年、サンルーフ等の開口部を備えた車両において開口部の大型化やフロントウインドガラスの傾斜角の増加等車両のデザインが多様化する傾向がある。これら車両デザインの多様化を満足させるためには、車体構造上、左右のセンタピラー間を連結していたルーフレインフォースメントをセンタピラーよりも車体後方に配置せざるを得ず、インフレータはカーテンエアバッグの前後方向略中間位置から更に後方へオフセットされることから、インフレータの設置可能位置とカーテンエアバッグの展開安定性に対して最適な設置位置(センタピラーの直上付近位置)とのオフセット量が一層拡大する虞がある。
【0010】
本発明の目的は、ルーフ補強部材をピラーよりも車体前後方向にオフセット配置させつつ、前後席双方の乗員に対するエアバッグの展開安定性を確保できる車両の上部車体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の車両の上部車体構造は、車両の左右側部に設けられ上下方向に延びる左右1対のピラーと、これらピラーの上端に連結され車体前後方向に延びる左右1対のルーフサイドレールと、これら左右1対のルーフサイドレールの車幅方向内側に設置され且つエアバッグにガス圧を供給可能なインフレータとを備えた車両の上部車体構造において、前記左右1対のピラーの上端部又は上端近傍部に亙って車幅方向に延びるようにルーフ補強部材が設けられ、前記ルーフ補強部材と少なくとも一部が車体前後方向に重複するように前記インフレータが配設され、前記ルーフ補強部材が下方へ凹入した凹入部を備え、前記インフレータと重複する部位の凹入部の凹入深さは、前記重複する部位よりもピラー側の凹入部の凹入深さよりも浅く形成されたことを特徴としている。
【0012】
この車両の上部車体構造では、インフレータの少なくとも一部がルーフ補強部材と車体前後方向に重複するように配設されるため、インフレータを、エアバッグの展開安定性に対して最適な設置位置であるピラーの直上付近位置に接近させて配置することができる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ルーフ補強部材は、前記ピラーから後方へオフセットさせて配設され、前記ルーフ補強部材の車幅方向端部に車幅方向外側程下方へ傾斜した傾斜部が設けられ、前記凹入部は前記ルーフ補強部材の端部から車幅方向内側へ延設され、前記凹入部の少なくとも一部が前記傾斜部に沿って車幅方向外側程前記ピラーに接近するように構成されたことを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記凹入部の車幅方向外側部分と前記ルーフサイドレールの車幅方向内側部分とが対向した状態で離隔配置されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記ルーフにはサンルーフが設けられ、このサンルーフの外周枠に前記ルーフ補強部材と前記ピラーとの連結部を補強する外周枠補強部材を設け、この外周枠補強部材と前記ルーフ補強部材の凹入部とで閉断面を形成したことを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記ピラーから前記ルーフ補強部材よりも車体前後方向に離隔した前記ルーフサイドレールの車幅方向内側部分に車室内へ突出したアシストグリップ取付座部を設け、前記インフレータとエアバックとが前記アシストグリップ取付座部を挟んで夫々上下に配置され、前記インフレータは、前記ピラーに接近する程前記ルーフサイドレールの下縁部に近づくように配置され、前記エアバックは、前記ピラー側の前記インフレータの端部とガス導通状に連結された連結部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、インフレータを、エアバッグの展開安定性に対して最適な設置位置であるピラーの直上付近位置に接近させて配置することができるから、前後席双方の乗員に対するエアバッグの展開安定性を確保することができる。
ルーフ補強部材のインフレータと重複する部位の凹入部の凹入深さは、この重複する部位よりもピラー側の凹入部の凹入深さよりも浅く形成されるため、ルーフ補強部材をピラーよりも車体前後方向にオフセット配置した構造であっても、エアバッグの車体装着性を確保しつつ、ルーフサイドレールの上下方向幅を小さくすることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、ピラーに作用した衝撃荷重をルーフサイドレールを介してルーフ補強部材に効率よく伝達することができ、車体剛性を高くすることができる。
請求項3の発明によれば、側突時、ピラーに作用した衝撃荷重をルーフ補強部材の離隔部位で吸収でき、ルーフサイドレールとルーフ補強部材とが当接した後、衝撃荷重をルーフ補強部材を介して他の車体構成部材に伝達できるため、インフレータとの干渉を防止しつつ、衝撃吸収性と衝撃伝達性とを両立することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、サンルーフの外周枠補強部材を利用して、ピラーとルーフ補強部材との連結を強化でき、ピラーに作用した衝撃荷重をルーフサイドレールを介してルーフ補強部材に効率よく伝達することができる。
請求項5の発明によれば、アシストグリップ取付座部を避けてインフレータとエアバッグとをコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る車両の全体斜視図である。
【図2】車両の上部車体構造を車室内側から視た斜視図である。
【図3】図2の要部拡大平面図である。
【図4】図3の状態からサンルーフの外枠部材とエアバッグとを取外した状態を示す図である。
【図5】図4の状態からルーフレインを取外した状態を示す図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図3のIX−IX線断面図である。
【図10】図3のX−X線断面図である。
【図11】実施例2に係る図10相当図である。
【図12】ルーフレインの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。尚、本実施例では、説明の便宜上、車室内部を覆うルーフトリムやピラートリムを省略し、車両の進行方向に対して前後方向を前後方向とし、左右方向を左右方向として説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1について図1〜図10に基づいて説明する。
図1,図2に示すように、本実施例の車両Vは、左右1対のフロントピラー1と、左右1対のセンタピラー2と、左右1対のリヤピラー3と、前側部分にサンルーフニット20が装備されたルーフ4と、左右1対のカーテンエアバックユニット30等を備えている。
図1に示すように、左右1対のフロントピラー1の上端部には、車幅方向に延びるフロンドヘッダ5が設けられ、フロントウインドガラス6の上部が装着されている。
【0022】
図1,図2に示すように、左右1対のセンタピラー2は、前側シート(図示略)と後側シート(図示略)との略中間位置に夫々設けられている。図6に示すように、右側のセンタピラー2は、センタピラーアウタ2aと、センタピラーインナ2bとにより上下方向に延びる閉断面を形成し、この閉断面を内外に2分割するピラーレインフォースメント2cが上下方向に延びるように設けられている。
【0023】
次に、ルーフ4について説明する。
図1〜10に示すように、ルーフ4は、中央部が上方に位置するようにアーチ状に前後方向へ延びる左右1対のルーフサイドレール7と、ルーフパネル8と、ルーフパネル8の左右端部に形成され前後方向に延びる左右1対の溝部9と、左右1対のセンタピラー2の上端近傍部に亙って車幅方向に延びるルーフレインフォースメント10(ルーフ補強部材)と、ルーフ4の前側部分に設けられたサンルーフニット20等を備えている。尚、ルーフ4は、左右対象の構成であるため、以下、主に右側のルーフ4の構成について説明を行う。
【0024】
図6〜図9に示すように、右側のルーフサイドレール7は、ルーフサイドレールアウタ7aと、ルーフサイドレールインナ7bとにより前後方向に延びる閉断面を形成し、この閉断面を内外に2分割するルーフサイドレールレインフォースメント7cが前後方向に延びるように設置されている。図6に示すように、このルーフサイドレール7の閉断面は、前後方向途中部においてセンタピラー2の閉断面と連なるように構成され、ピラーレインフォースメント2cの上部がルーフサイドレールレインフォースメント7cに接合されている。
【0025】
ルーフサイドレールアウタ7aは、車幅方向外側上方に向けて膨出されると共に前後方向途中部において下方に延設されセンタピラーアウタ2aと一体形成されている。
ルーフサイドレールアウタ7aの車幅方向内側端部には、車体前後方向に延びる段下げ部が形成され、この段下げ部とルーフパネル8の車幅方向外側端部に形成された段下げ部とが接合されて溝部9が構成されている。
【0026】
図6〜図9に示すように、ルーフサイドレールインナ7bは、車幅方向内側部分に上下方向に延びる鉛直部を備え、この鉛直部の車幅方向内側端部は溝部9まで略水平状に伸びると共に溝部9において、ルーフパネル8の車幅方向外側端部に形成された段下げ部と、ルーフサイドレールアウタ7aの車幅方向内側端部に形成された段下げ部と、ルーフサイドレールレインフォースメント7cの車幅方向内側端部と4重接合されている。
ルーフサイドレールインナ7bの下端部は、センタピラー2に連結される部分(前後方向途中部)ではセンタピラーインナ2bの上端部と接合され、それ以外の部分においてルーフサイドレールアウタ7aの下端部とルーフサイドレールレインフォースメント7cの下端部と3重接合されている。
【0027】
図2〜図4,図10に示すように、ルーフレインフォースメント(以下、ルーフレインと略す)10は、左右1対のセンタピラー2から車体前後方向後方に所定距離離隔(オフセット)するように設けられている。ルーフレイン10は、車幅方向全幅に亙って延びる断面略U字状の前側凹入部11と、この前側凹入部11よりも後側で且つ前側凹入部11と略平行状に車幅方向全幅に亙って延びる断面略U字状の後側凹入部12と、車幅方向端部に車幅方向外側程下方に傾斜した左右1対の傾斜部13とを備えている。
【0028】
図2〜図4,図7に示すように、前側凹入部11は、下方へ凹入する凹入深さがLaに形成され、傾斜部13に沿って車幅方向外側程センタピラー2に対して接近するように構成されている。前側凹入部11の前端部には、車幅方向に延びる前側フランジ14が設けられ、溝部9の底部と略同じ高さ位置に設置された後述する後側外周枠補強部材23の裏面に接合されている。それ故、前側凹入部11と後側外周枠補強部材23との間には車幅方向に延びる閉断面が形成され、前側凹入部11の車幅方向外側端部は、ルーフサイドレールインナ7bの鉛直部と溝部9を間に介して対向した状態で離隔配置されている。
【0029】
図8に示すように、後側凹入部12は、下方へ凹入する凹入深さがLaよりも小さなLbに形成されている。後側凹入部12の後端部には、車幅方向に延びる後側フランジ15が設けられ、溝部9の底部と略同じ高さ位置に設置された後側外周枠補強部材23の裏面に接合されている。それ故、後側凹入部12と後側外周枠補強部材23との間には車幅方向に延びる閉断面が形成され、後側凹入部12の車幅方向外側端部は、ルーフサイドレールインナ7bの鉛直部と溝部9を間に介して対向した状態で離隔配置されている。
【0030】
図2〜図5,図9に示すように、ルーフサイドレールインナ7bの車幅方向内側部分には、後席用乗降口の前後方向中間部分に前後1対のアシストグリッブ取付座部16が車室側へ向かって斜め下方へ突出した姿勢で設置されている。前後1対のアシストグリッブ取付座部16は、夫々、グリップ取付座16aと、このグリップ取付座16aの前後端部から車幅方向外側へ延びる前後1対の脚部16bとを備え、脚部16bの車幅方向外側端部がルーフサイドレールインナ7bに接合されている。前後1対のアシストグリッブ取付座部16のうち前側のアシストグリッブ取付座部16は、ルーフレイン10よりも車体後方に設けられている。
【0031】
次に、サンルーフニット20について説明する。
図1〜図6,図10に示すように、サンルーフニット20は、フロンドヘッダ5とルーフレイン10との間に設けられ、ルーフパネル8の略矩形の開口部8aを開閉するスライドルーフ等のサンシェード(図示略)と、開口部8aを形成する略矩形の外枠部材21(外周枠)と、外枠部材21の前側角部を補強する左右1対の前側外周枠補強部材22と、外枠部材21の後側角部を補強する左右1対の後側外周枠補強部材23と、サンシェードをスライド可能に支持する左右1対のガイドレール(図示略)等を備えている。
【0032】
外枠部材21の外周部分は、ルーフパネル8とルーフレイン10の前側フランジ14とに連結され、外枠部材21の内周左右縁部には、左右1対のガイドレールが設けられている。左右1対の前側外周枠補強部材22は、夫々略L字状の鋼板で形成され、外枠部材21の上部に固着されている。これら前側外周枠補強部材22は、ルーフパネル8と溝部9に複数箇所で溶接されている。
【0033】
左右1対の後側外周枠補強部材23は、夫々略L字状の鋼板で形成され、外枠部材21の上部に固着されている。これら後側外周枠補強部材23は、ルーフパネル8と溝部9とルーフレイン10の前側フランジ14とに複数箇所で溶接され、ルーフレイン10とセンタピラー2との連結部を補強するように形成されている。これにより、センタピラー2に入力した荷重を後側外周枠補強部材23を介してルーフレイン10に伝達している。
図2〜図6,図10に示すように、左右1対の後側外周枠補強部材23の車幅方向外側の下方部分には、夫々に対応した左右1対のガセット24が連結されている。
【0034】
これらのガセット24は、鋼板により形成され、車幅方向内側程高さ位置が高くなるようにセンタピラーインナ2bと後側外周枠補強部材23に亙って設けられている。ガセット24の下端部は、車体前後方向途中部において、ルーフサイドレールインナ7bの下端部と、センタピラーインナ2bの上端部と3重接合され、ガセット24の上端部は、後側外周枠補強部材23の上部に固着され前後に設置された2つのウエルドナット24aに対して夫々対応するボルト24bにより締結固定されている。
【0035】
次に、左右1対のカーテンエアバックユニット30について説明する。
左右1対のカーテンエアバックユニット30は、左右1対のルーフサイドレールインナ7bの車幅方向内側に夫々配設されている。尚、カーテンエアバックユニット30は、左右対象の構成であるため、以下、主に右側のカーテンエアバックユニット30の構成について説明を行う。
【0036】
図2〜図10に示すように、カーテンエアバックユニット30は、車室側壁に沿ってカーテン状に膨張展開するエアバック31と、エアバック31にガス圧を供給可能なインフレータ32等を備えている。エアバック31は、前席用膨張部と、この前席用膨張部に一体的に連なる後席用膨張部と、両膨張部の中間部分から後方上がり傾斜状に延びる連結部31a等から構成されている。
【0037】
エアバック31は、蛇腹折り又はロール状に折畳まれた収納状態で破断可能な結束部材33によって保持されている。収納状態のエアバック31は、センタピラー2を跨いで中央部が上方に位置するようにアーチ状に延び、ルーフサイドレールインナ7bに沿って前席用と後席用の乗降口の上縁部全長に亙って配置されている。収納状態のエアバック31は、ルーフサイドレールインナ7bから車室側へ向かって斜め下方へ突出した前側のアシストグリッブ取付座部16の下方位置においてルーフサイドレールインナ7bに複数箇所で固定されている。
【0038】
インフレータ32は、車両Vの側突時やロールオーバー時にガス圧をエアバック31に向けて噴出供給するものである。図2〜図5,図10に示すように、インフレータ32は、筒状の本体部32aと、本体部32aの前側先端に設けられ連結部31aとガス導通状に連結されるガス圧供給口32bとを備え、センタピラー2と後側のアシストグリッブ取付座部16との間において、その軸心が車体前後方向に向かう状態でルーフサイドレールインナ7bの車幅方向内側部分に装着されている。
【0039】
図10に示すように、インフレータ32は、前側のアシストグリッブ取付座部16の上方且つルーフレイン10の車幅方向端部下方において、ガス圧供給口32bが後側凹入部12の下方に所定隙間離隔して位置し、本体部32aの前端部が後側フランジ15の下方に所定隙間離隔して位置することにより、少なくともセンタピラー2側の一部分がルーフレイン10と重複するように配置されている。
【0040】
図9に示すように、インフレータ32は、前側のアシストグリッブ取付座部16を間に介して収納状態のエアバック31よりも車幅方向内側上方位置に配置され、図2に示すように、センタピラー2へ接近する程ルーフサイドレール7の下縁部に近づくようにルーフサイドレール7に対して後方上がり傾斜状に設置されている。
【0041】
次に、実施例1に係る車両Vの上部車体構造の作用・効果について説明する。
この車両Vの上部車体構造では、インフレータ32の少なくとも一部がルーフレイン10と車体前後方向に重複するように配設されるため、インフレータ32を、カーテンエアバッグユニット30の展開安定性に対して最適な設置位置であるセンタピラー2の直上付近位置に接近させて配置することができ、これにより、前後席双方の乗員に対するカーテンエアバッグユニット30の展開安定性を確保することができる。
ルーフレイン10のインフレータ32と重複する部位の後側凹入部12の凹入深さLbは、この重複する部位よりもセンタピラー2側の前側凹入部11の凹入深さLaよりも浅く形成されるため、ルーフレイン10をセンタピラー2よりも車体前後方向後方にオフセット配置した構造であっても、カーテンエアバッグユニット30の車体装着性を確保しつつ、ルーフサイドレール7の上下方向幅を小さくすることができる。
【0042】
ルーフレイン10は、センタピラー2から後方へオフセットさせて配設され、ルーフレイン10の車幅方向端部に車幅方向外側程下方へ傾斜した傾斜部13が設けられ、凹入部11はルーフレイン10の端部から車幅方向内側へ延設され、凹入部11の少なくとも一部が傾斜部13に沿って車幅方向外側程センタピラー2に接近するように構成されたため、センタピラー2に作用した衝撃荷重をルーフサイドレール7を介してルーフレイン10に効率よく伝達することができ、車体剛性を高くすることができる。
【0043】
凹入部11,12の車幅方向外側部分とルーフサイドレール7の車幅方向内側部分とが溝部9を介して対向した状態で離隔配置されているため、側突時、センタピラー2に作用した衝撃荷重をルーフレイン10の離隔部位で吸収でき、ルーフサイドレール7とルーフレイン10とが当接した後、衝撃荷重をルーフレイン10を介して他の車体構成部材に伝達でき、インフレータ32との干渉を防止しつつ、衝撃吸収性と衝撃伝達性とを両立することができる。
【0044】
ルーフ4にはサンルーフ20が設けられ、このサンルーフ20の外枠部材21にルーフレイン10とセンタピラー2との連結部を補強する後側外周枠補強部材23を設け、この後側外周枠補強部材23とルーフレイン10の凹入部11,12とで閉断面を形成したため、サンルーフ30の後側外周枠補強部材23を利用して、センタピラー2とルーフレイン10との連結を強化でき、センタピラー2に作用した衝撃荷重をルーフサイドレール7を介してルーフレイン10に効率よく伝達することができる。
【0045】
センタピラー2からルーフレイン10よりも車体前後方向後方に離隔したルーフサイドレール7の車幅方向内側部分に車室内へ突出したアシストグリップ取付座部16を設け、インフレータ32とエアバック31とがアシストグリップ取付座部16を挟んで夫々上下に配置され、インフレータ32は、センタピラー2に接近する程ルーフサイドレール7の下縁部に近づくように配置され、エアバック31は、センタピラー2側のインフレータ32のガス圧供給口32bとガス導通状に連結された連結部31aを備えている。これにより、アシストグリップ取付座部16を避けてインフレータ32とカーテンエアバッグユニット30とをコンパクトに配置することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、実施例2に係る車両Vの上部車体構造について図11に基づいて説明する。 尚、前記実施例1と異なる構成についてのみ説明し、実施例1と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
ルーフレイン10Aは、左右1対のセンタピラー2から車体前後方向後方にオフセットするように設けられ、車幅方向全幅に亙って延びる断面略楔状の楔状凹入部17を備えている。楔状凹入部17は、底部が後方上がり傾斜状、つまり、凹入深さが車体後側程浅くなるように形成されている。楔状凹入部17の前端部と後端部には、前側フランジ14Aと後側フランジ15Aとが設けられ、後側外周枠補強部材23の裏面に接合されている。それ故、楔状凹入部17と後側外周枠補強部材23との間に車幅方向に延びる閉断面が形成され、楔状凹入部17の車幅方向外側端部は、ルーフサイドレールインナ7bの鉛直部と溝部9を間に介して対向した状態で離隔配置されている。これにより、ルーフレイン10Aを簡単化しつつ、実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0048】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例1,2においては、センタピラーよりも車体前後方向後方にオフセットされたルーフレインの例を説明したが、3列シートを備えた車両等では車両仕様に応じてセンタピラー以外のピラーからオフセットされたルーフレインに適用しても良い。
また、ピラーから車体後方にオフセットされたルーフレインに限られず、ピラーから車体前方にオフセットされたルーフレインに適用することも可能である。更に、ピラーの上端部を含みピラーの上端部から車体前方又は後方へ形成されたルーフレインに用いることもできる。
【0049】
2〕前記実施例1,2においては、ルーフレインの車幅方向全幅に亙って延びる凹入部の例を説明したが、図12に示すように、ルーフレイン10Bの左右端部分にビード状凹入部18a,18bを部分的に形成することも可能である。この場合、インフレータと重複するビード状凹入部18bの凹入深さは、インフレータと重複しないビード状凹入部18aの凹入深さよりも浅く形成されている。
【0050】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ルーフサイドレールに設置されたエアバックとピラーから前後方向へオフセットさせて配設されたルーフ補強部材とを有する車両の上部車体構造において、インフレータと重複するルーフ補強部材の凹入部の凹入深さを、この重複する部位よりもピラー側のルーフ補強部材の凹入部の凹入深さよりも浅く形成することにより、ルーフ補強部材をピラーよりも車体前後方向にオフセット配置させつつ、前後席双方の乗員に対するエアバッグの展開安定性を確保することができる。
【符号の説明】
【0052】
2 センタピラー
7 ルーフサイドレール
10 ルーフレイン
11 前側凹入部
12 後側凹入部
16 アシストグリップ取付座部
17 楔状凹入部
18a,18b ビード状凹入部
20 サンルーフユニット
21 外枠部材
23 後側外周枠補強部材
30 カーテンエアバッグユニット
31 エアバッグ
32 インフレータ
La,Lb 凹入深さ
V 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右側部に設けられ上下方向に延びる左右1対のピラーと、これらピラーの上端に連結され車体前後方向に延びる左右1対のルーフサイドレールと、これら左右1対のルーフサイドレールの車幅方向内側に設置され且つエアバッグにガス圧を供給可能なインフレータとを備えた車両の上部車体構造において、
前記左右1対のピラーの上端部又は上端近傍部に亙って車幅方向に延びるようにルーフ補強部材が設けられ、
前記ルーフ補強部材と少なくとも一部が車体前後方向に重複するように前記インフレータが配設され、
前記ルーフ補強部材が下方へ凹入した凹入部を備え、
前記インフレータと重複する部位の凹入部の凹入深さは、前記重複する部位よりもピラー側の凹入部の凹入深さよりも浅く形成されたことを特徴とする車両の上部車体構造。
【請求項2】
前記ルーフ補強部材は、前記ピラーから後方へオフセットさせて配設され、
前記ルーフ補強部材の車幅方向端部に車幅方向外側程下方へ傾斜した傾斜部が設けられ、
前記凹入部は前記ルーフ補強部材の端部から車幅方向内側へ延設され、
前記凹入部の少なくとも一部が前記傾斜部に沿って車幅方向外側程前記ピラーに接近するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の上部車体構造。
【請求項3】
前記凹入部の車幅方向外側端部と前記ルーフサイドレールの車幅方向内側部分とが対向した状態で離隔配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の上部車体構造。
【請求項4】
前記ルーフにはサンルーフが設けられ、このサンルーフの外周枠に前記ルーフ補強部材と前記ピラーとの連結部を補強する外周枠補強部材を設け、
この外周枠補強部材と前記ルーフ補強部材の凹入部とで閉断面を形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の上部車体構造。
【請求項5】
前記ピラーから前記ルーフ補強部材よりも車体前後方向に離隔した前記ルーフサイドレールの車幅方向内側部分に車室内へ突出したアシストグリップ取付座部を設け、
前記インフレータとエアバックとが前記アシストグリップ取付座部を挟んで夫々上下に配置され、
前記インフレータは、前記ピラーに接近する程前記ルーフサイドレールの下縁部に近づくように配置され、
前記エアバックは、前記ピラー側の前記インフレータの端部とガス導通状に連結された連結部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の上部車体構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−103542(P2013−103542A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247106(P2011−247106)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】