説明

車両の下部車体構造

【課題】
キックアップ部の下方に燃料タンクを配設し、該燃料タンクの下面部がフロアパネルの最下面高さより低位置に延出され、フロアパネルの燃料タンク前方には該タンク下面部よりもさらに低い位置に延びる燃料タンクガード部を設けることで、燃料タンクの容量拡大と燃料タンクの保護との両立を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【解決手段】
フロアパネル2と、フロアパネル2後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤフレームとを備え、一対のリヤフレーム間に燃料タンク13が配設された車両の下部車体構造であって、フロアパネル2には上方に段上げされたキックアップ部5が形成され、キックアップ部5の下方に燃料タンク13が配設され、燃料タンク13の下面部が上記フロアパネル2の最下面高さより低位置に延出され、フロアパネル2の燃料タンク13の前方には燃料タンク13の下面部より低い位置に延びる燃料タンクガード部14が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロアパネルの後方に左右一対で車幅方向に所定間隔を隔てて車両の前後方向に延びるリヤフレームを備え、左右一対のリヤフレーム間に燃料タンクが配設されたような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の下部車体構造としては図14に示す構造が一般的であった。
すなわち、フロアパネル100には、後方が上方に段上げされたキックアップ部101を介してリヤフロア102を連接し、キックアップ部101の上部背面と、リヤフロア102の前部下部との位置に車幅方向に延びるリヤクロスメンバ103を設け、このリヤクロスメンバ103の後方に燃料タンク104を配設する一方、リヤフロア102の上方にはリヤシート105を配設したものである。
【0003】
上述のリヤクロスメンバ103は車体の剛性向上と、側突荷重に対抗して燃料タンク104を保護する役目を奏するが、居住性および燃料タンク容量を考慮すると望ましくない位置にあった。
【0004】
つまり、車両にはリヤシート105およびキックアップ部101を可及的後方位置に設けて、リヤ席乗員の足元スペースを確保し、居住性の向上を図るという要請と、燃料タンク104の容量を可及的大きくしたいという要請とがあり、居住性を向上させるためにはキックアップ部101を後退させる必要があり、燃料タンク容量を大きくするためには該燃料タンクを前方に延ばす必要があり、上述の各要請を満たすための構成が相反する構造となり、加えてコンパクトな車両においてはリヤのオーバハングを小さく設定したいという要請が加わるが、リヤクロスメンバ103が図14に示すようにかキックアップ部101の上部背面に存在していると、上述の要請を満たすことが困難であった。
【0005】
一方、燃料タンク104の容量を大きくするために、該燃料タンク104の下面部をフロアパネル100の最下面部よりも低位置まで延出することが考えられるが、この場合には燃料タンク104が外部からの障害物等により衝撃を受ける恐れがあるため実現不可能となる。
【0006】
ところで、特許文献1には、キックアップ部の上部背面にリヤクロスメンバを設け、その後方において左右一対のリヤサイドフレーム間に燃料タンクを配設したものが、開示されているが、このように燃料タンクの前方にリヤクロスメンバが存在すると図14の構造と同様にして、居住性向上および燃料タンク容量拡大に対してリヤクロスメンバが邪魔になる問題点があった。
【0007】
また特許文献2には、キックアップ部に燃料タンクを配設したものが開示されているが、居住性向上と燃料タンク容量の拡大とを示唆するものではない。
さらに、特許文献3には、キックアップ部の背面形状に沿うように燃料タンクを加工して、該燃料タンクをキックアップ部背面に沿設したものが開示されているが、このように構成すると燃料タンクの構造が複雑化するので、実現性が低下する問題点があった。
【特許文献1】特開平5−50952号公報
【特許文献2】実開平5−71083号公報
【特許文献3】特開平5−155258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、キックアップ部の下方に燃料タンクを配設し、該燃料タンクの下面部がフロアパネルの最下面高さより低位置に延出され、フロアパネルの燃料タンク前方には該タンク下面部よりもさらに低い位置に延びる燃料タンクガード部を設けることで、燃料タンクの容量拡大と燃料タンクの保護との両立を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、この発明による車両の下部車体構造は、フロアパネルと、該フロアパネル後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤフレームとを備え、上記一対のリヤフレーム間に燃料タンクが配設された車両の下部車体構造であって、上記フロアパネルには上方に段上げされたキックアップ部が形成され、上記キックアップ部の下方に燃料タンクが配設され、該燃料タンクの下面部が上記フロアパネルの最下面高さより低位置に延出され、上記フロアパネルの燃料タンクの前方には該燃料タンクの下面部より低い位置に延びる燃料タンクガード部が設けられたものである。
【0010】
上記構成によれば、燃料タンクの容量拡大と燃料タンクの保護との両立を図ることができる。
すなわち、キックアップ部に燃料タンクを配設するが、この場合、燃料タンクの下面部をフロアパネルの最下面の高さより低位置まで下げると、タンク容量の拡大を図ることができるが、単にタンク下面部を下げるのみであると外部障害物から衝撃を受ける恐れがある。このため、燃料タンク前方に、該燃料タンクの下面部よりもさらに低い位置まで下方に延びる燃料タンクガード部を設けたので、燃料タンクの保護を図りつつ、該燃料タンクの容量拡大を達成することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記一対のリヤフレームの前端部間を車幅方向に延びて両者を接続するクロスメンバを設け、該クロスメンバを上記を燃料タンクの下面部より低い位置に延長し、該クロスメンバにて上記燃料タンクガード部を形成したものである。
【0012】
上記構成によれば、車体剛性部材としてのクロスメンバで燃料タンクガード部を構成し、このクロスメンバで燃料タンクをガード(保護)するので、車体の剛性向上と、燃料タンクの保護との両立を図ることができ、しかも燃料タンクガード部それ自体の剛性も高くなり、燃料タンクを確実に保護することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記クロスメンバはフロアパネルの下面に配設して接合されたものである。
【0014】
上記構成によれば、クロスメンバは燃料タンクの前方におけるフロアパネル下面に位置するので、クロスメンバがキックアップ部の上部背面に存在する従来構造と比較して、燃料タンクのさらなる容量拡大を図ることができると共に、キックアップ部の後退設定が可能となるため、車室内の拡大を図って、居住性の向上を達成することができ、さらにクロスメンバがフロアパネル下面に位置することで、このクロスメンバが車室内に影響を与えることもない。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記燃料タンクの側方のフロアパネルの下方には車両の前後方向に延びる排気管が配設され、該排気管とフロアパネルとの間には上記燃料タンクの一部を延長して配設したものである。
【0016】
上記構成によれば、排気管のレイアウトを確保しつつ、上述の燃料タンクの一部延長構造により、該燃料タンクの容量をさらに拡大することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記クロスメンバの車幅方向中間部は、フロアパネルに沿って車両の前後方向に延びるフロアフレームの後端部と接続されたものである。
【0018】
上記構成によれば、クロスメンバとフロアフレームとの接続構造により、その相乗効果にてフロアフレームの剛性向上と、クロスメンバの剛性向上とを図ることができ、しかも燃料タンクガード部としての高い剛性を確保することができるうえ、車両衝突時の荷重の分散も図れ、耐衝突性能の向上をも図ることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記クロスメンバには排気管の配設部に対応して凹部が形成されたものである。
【0020】
上記構成によれば、車体の剛性確保と、燃料タンクの容量拡大との両立を図ることに加えて、上記凹部の形成により排気管レイアウトの容易化を達成することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、キックアップ部の下方に燃料タンクを配設し、該燃料タンクの下面部がフロアパネルの最下面高さより低位置に延出され、フロアパネルの燃料タンク前方には該タンク下面部よりもさらに低い位置に延びる燃料タンクガード部を設けたので、燃料タンクの容量拡大と燃料タンクの保護との両立を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
燃料タンクの容量拡大と、燃料タンクの保護との両立を図るという目的を、キックアップ部の下方に燃料タンクを配設し、該燃料タンクの下面部がフロアパネルの最下面高さより低位置に延出され、フロアパネルの燃料タンク前方には該燃料タンク下面部よりもさらに低い位置に延びる燃料タンクガード部を設けるという構成にて実現した。
【実施例】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の下部車体構造を示し、図1は車体構造を示す斜視図、図2はその平面図、図3は要部の拡大側面図、図4は底面図であって、図1〜図4において、エンジンルームと車室とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル(ダッシュパネル)1を設け、このダッシュロアパネル1の下部後端には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル2を連設し、このフロアパネル2の中央部には車室内方へ突出し、かつ車両の前後方向に延びるトンネル部3を形成している。
【0024】
また上述のフロアパネル2の左右両側部には、車両の前後方向に延びる車体剛性部材としてのサイドシル4,4を接合固定している。このサイドシル4はサイドシルインナと、サイドシルアウタとサイドシルレインフォースメントとを接合して構成され、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えたものである。
【0025】
さらに、上述のフロアパネル2には、その後方が上方に段上げされたキックアップ部5を形成し、このキックアップ部5の上端部には、該上端部から後方に向けて延びるリヤフロア6(フロアパネル2の一部)が連設され、このリヤフロア6の後部略中間には下方に段下げ形成されたスペアタイヤパンク7を設けている。
【0026】
ところで、フロアパネル2の上部には図1、図2に示すように、トンネル部3を跨いで左右のサイドシル4,4まで車幅方向に延びる車体剛性部材としてのクロスメンバ(いわゆるNo.2クロスメンバ)8を設けると共に、このクロスメンバ8に対して車両後方に離間した位置には、トンネル部3と直交して該トンネル部3とサイドシル4との間を車幅方向に連結する左右一対のクロスメンバ9,9(いわゆるNo.2.5クロスメンバで、車体剛性部材)を設け、フロアパネル2と各クロスメンバ8,9との間には車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0027】
一方、図4に示すように、フロアパネル2の下部において、側部のサイドシル4と中央部のトンネル部3との中間には、車両の前後方向に延びる車体剛性部材としての左右一対のフロアフレーム10,10を設けている。このフロアフレーム10はフロアパネル2の下面に接合固定されたもので、フロアパネル2とフロアフレーム10との間には車両の前後方向に延びる閉断面が形成されている。このフロアフレーム10の後端はキックアップ部5の近傍まで延設されている。また、このフロアフレーム10の前端部には車体剛性部材としてのフロントサイドフレーム11(フロントフレーム)が連続して設けられている。
【0028】
また上述のリヤフロア6には、図4に示すように、左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びる車体剛性部材としてのリヤサイドフレーム12,12(リヤフレーム)が設けられている。このリヤサイドフレーム12はリヤフロア6の下面に接合固定されたもので、リヤフロア6とリヤサイドフレーム12との間には車両の前後方向に延びる閉断面が形成されている。
【0029】
そして、図3に示すように、キックアップ部5の背面側下方(後方)とリヤフロア6の前部下方とに位置し、かつ左右一対のリヤサイドフレーム12,12間に位置するように燃料タンク13が配設されている。
【0030】
図5に要部を拡大平面図にて示すように、フロアパネル2の下面に接合され、かつフロアパネル2に沿って車両の前後方向に延びるフロアフレーム10の後端部10aと、リヤフロア6の下面に接合され、かつ所定間隔を保って車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム12の前端部12aとは、車幅方向にオフセットすると共に、車両の前後方向にオーバラップするように構成されている。
【0031】
上述の左右一対のリヤサイドフレーム12,12の前端部12a,12a相互間を車幅方向に延びて両者12,12を接続する車体剛性部材としてのリヤクロスメンバ14を設け、図3、図4に示すように、このリヤクロスメンバ14を上述の燃料タンク13前方のフロアパネル2の下方に配設している。詳しくは、該リヤクロスメンバ14は図3に示すようにキックアップ部5の直前部においてフロアパネル2の下方に配設されたものである。
【0032】
このリヤクロスメンバ14は燃料タンクガード部を構成するものである。つまり、図3に示すように燃料タンク13の下面部がフロアパネル2の最下面高さよりも距離L1だけで低位置に延出され、燃料タンクガード部を構成するところのリヤクロスメンバ14は、燃料タンク13の下面部よりも距離L2だけ低い位置に延びるように設けられていて、この構造により、燃料タンク13の容量拡大と、燃料タンク13の保護との両立を図るように構成している。
【0033】
図6はリヤクロスメンバ14の斜視図、図7は図6のA-A線に沿う矢視断面図であって、図5〜図7に示すように、このリヤクロスメンバ14は該メンバ14それ自体の剛性向上を図る目的で車幅方向に連続する凹凸形状を有するように形成されると共に、トンネル部3側部のフロアパネル2下面に対する前後一対かつ左右一対の取付け座14a,14b,14c,14dと、フロアフレーム10の後端部10a下面に対する前後一対かつ左右一対の取付け座14e・・・と、リヤサイドフレーム12の前端部12a下面に対する前後一対かつ左右一対の取付け座14f・・・とを備え、これらの各取付座14a〜14fにはそれぞれ取付け孔15,16,17が形成されている。
【0034】
図6、図7に示すようにトンネル部3側部のフロアパネル2下面に対する左右一対の取付け座14a,14b間、14c,14d間には、リヤクロスメンバ14のトップデッキ面に対して下方に窪む凹部18が形成され、この凹部18に対応して排気管19が配設されている。
【0035】
つまり、リヤクロスメンバ14の排気管19の配設部に対応して上述の凹部18が形成されたものである。
またフロアフレーム10の後端部10a下面に対する上述の取付け座14eは、リヤクロスメンバ14のトップデッキ面に対して凹設された低位置に形成されると共に、左右の取付け座14e,14e間におけるリヤクロスメンバ14のボトムデッキは凹凸を有さない略フラットな形状に構成されている。
【0036】
さらに、リヤサイドフレーム12の前端部12a下面に対する取付け座14fは、リヤクロスメンバ14の主体部に対して若干後方に後退した位置に形成されている。
図8は図5のB-B線に相当す部位の断面図であって、リヤクロスメンバ14の取付け孔15に対応して、トンネル部3側部のフロアパネル2上面には予め複数のナット20が溶接固定され、このナット20に下方から締付け固定する取付け部材としてのボルト21を用いて、取付け座14a,14b,14c,14dがフロアパネル2に着脱可能に取付けられる。
【0037】
図9は図5のC−C線に相当する部位の断面図であって、リヤクロスメンバ14の取付け孔16に対応して、フロアフレーム10の後端部10aには予め複数のナット22が溶接固定され、このナット22に下方から締付け固定する取付け部材としてのボルト23を用いて、取付け座14eがフロアフレーム10の後端部10aに着脱可能に取付けられる。
【0038】
図10は図5のD−D線に相当する部位の断面図であって、リヤクロスメンバ14の取付け孔17に対応して、リヤサイドフレーム12の前端部12aには予め複数のナット24が溶接固定され、このナット24に下方から締付け固定する取付け部材としてのボルト25を用いて、取付け座14fがリヤサイドフレーム12の前端部12aに着脱可能に取付けられる。
【0039】
要するに、上述のリヤクロスメンバ14は、メンテナンス性を考慮して、トンネル部3側部のフロアパネル2と、フロアフレーム10の後端部10aと、リヤサイドフレーム12の前端部12aとに複数のボルト21,23,25(この実施例では合計12本のボルト)を用いて着脱可能に取付けられるものである。
【0040】
ところで、図4、図11に示すように、前述の燃料タンク13の側方のリヤフロア6の下方には、車両の前後方向に延びる排気管19が配設され、この排気管19とリヤフロア6との間には燃料タンク13の一部を延長して配設している。
つまり、図11、図12に示すように、燃料タンク13には、略L字状に屈曲して配設される排気管19の上部と、リヤフロア6の下部との間に位置するように延長部13aが一体形成され、この延長部13aの形成により、燃料タンク13の容量をさらにの拡大するように構成している。
【0041】
ここで、上述の排気管19の下流側は図4、図11に示すように、サイレンサ26を介してテールパイプ27に接続される一方、排気管19の上流側は図1、図4に示すように、トンネル部3の車外側に位置するキャタリスト28,29を介して、エンジンのエキゾーストマニボルトに接続されている。
【0042】
なお、図3において燃料タンク13の上部には凹部13bが形成され、これに対応してリヤフロア6にも凹部6bが形成されているが、図13に示すように、これらの各凹部13b,6bを省略して、この分、燃料タンク13の容量拡大を図るように構成してもよい。
【0043】
また、図4においてクロスメンバ8(いわゆるNo.2クロスメンバ)と対応する部位のトンネル部3の開放下端部には下部トンネルメンバ30が設けられている。さらに、キックアップ部5に近接するリヤフロア6上方にはリヤシート31が設けられている。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
【0044】
このように、上記実施例の車両の下部車体構造は、フロアパネル2と、該フロアパネル2後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム12,12とを備え、上記一対のリヤサイドフレーム12,12間に燃料タンク13が配設された車両の下部車体構造であって、上記フロアパネル2には上方に段上げされたキックアップ部5が形成され、上記キックアップ部5の下方に燃料タンク13が配設され、該燃料タンク13の下面部が上記フロアパネル2の最下面高さより低位置に延出され、上記フロアパネル2の燃料タンク13の前方には該燃料タンク13の下面部より低い位置に延びる
燃料タンクガード部(リヤクロスメンバ14参照)が設けられたものである。
【0045】
この構成によれば、燃料タンク13の容量拡大と燃料タンク13の保護との両立を図ることができる。
【0046】
すなわち、キックアップ部5に燃料タンク13を配設するが、この場合、燃料タンク13の下面部をフロアパネル2の最下面の高さより低位置まで下げると、タンク容量の拡大を図ることができるが、単にタンク下面部を下げるのみであると外部障害物から衝撃を受ける恐れがある。このため、燃料タンク13前方に、該燃料タンク13の下面部よりもさらに低い位置まで下方に延びる燃料タンクガード部(リヤクロスメンバ14参照)を設けたので、燃料タンク13の保護を図りつつ、該燃料タンク13の容量拡大を達成することができる。
【0047】
また、上記一対のリヤサイドフレーム12,12の前端部相互間を車幅方向に延びて両者12,12を接続するリヤクロスメンバ14を設け、このリヤクロスメンバ14を上記を燃料タンク13の下面部より低い位置に延長し、該リヤクロスメンバ14にて上記燃料タンクガード部を形成したものである。
【0048】
この構成によれば、車体剛性部材としてのリヤクロスメンバ14で燃料タンクガード部を構成し、このリヤクロスメンバ14で燃料タンク13をガード(保護)するので、車体の剛性向上と、燃料タンク13の保護との両立を図ることができ、しかも燃料タンクガード部(リヤクロスメンバ14参照)それ自体の剛性も高くなり、燃料タンク13を確実に保護することができる。
【0049】
さらに、上記リヤクロスメンバ14はフロアパネル2の下面に配設して接合(この実施例では着脱可能に接合)されたものである。
この構成によれば、リヤクロスメンバ14は燃料タンク13の前方におけるフロアパネル2下面(詳しくはキックアップ部5の直前部分におけるフロアパネル2の下面)に位置するので、リヤクロスメンバ14がキックアップ部5の上部背面に存在する従来構造と比較して、燃料タンク13のさらなる容量拡大を図ることができると共に、キックアップ部5の後退設定が可能となるため、車室内の拡大を図って、居住性の向上を達成することができ、さらにリヤクロスメンバ14がフロアパネル2下面に位置することで、このリヤクロスメンバ14が車室内に影響を与えることもない。
【0050】
加えて、上記燃料タンク13の側方のフロアパネル(リヤフロア6参照)の下方には車両の前後方向に延びる排気管19が配設され、該排気管19とフロアパネル(リヤフロア6参照)との間には上記燃料タンク13の一部を延長(延長部13a参照)して配設したものである。
【0051】
この構成によれば、排気管19のレイアウトを確保しつつ、上述の燃料タンク13の一部延長構造により、該燃料タンク13の容量をさらに拡大することができる。
また、上記リヤクロスメンバ14の車幅方向中間部は、フロアパネル2に沿って車両の前後方向に延びるフロアフレーム10の後端部10aと接続されたものである。
【0052】
この構成によれば、リヤクロスメンバ14とフロアフレーム10との接続構造により、その相乗効果にてフロアフレーム10の剛性向上と、リヤクロスメンバ14の剛性向上とを図ることができ、しかも燃料タンクガード部(リヤクロスメンバ14参照)としての高い剛性を確保することができるうえ、車両衝突時の荷重の分散も図れ、耐衝突性能の向上をも図ることができる。
【0053】
さらに、上記リヤクロスメンバ14には排気管19の配設部に対応して凹部18が形成されたものである。
この構成によれば、車体の剛性確保と、燃料タンク13の容量拡大との両立を図ることに加えて、上記凹部18の形成により排気管レイアウトの容易化を達成することができる。
【0054】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロアパネルは、実施例のフロアパネル2、リヤフロア6に対応し、
以下同様に、
燃料タンクガード部は、リヤクロスメンバ14に対応し、
リヤフレームは、リヤサイドフレーム12に対応し、
クロスメンバは、リヤクロスメンバ14に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の車両の下部車体構造を示す斜視図。
【図2】図1の平面図。
【図3】要部の拡大側面図。
【図4】車両の下部車体構造を示す底面図。
【図5】リヤクロスメンバの平面図。
【図6】リヤクロスメンバの斜視図。
【図7】図6のA−A線矢視断面図。
【図8】図5のB−B線に相当する部位の断面図。
【図9】図5のC−C線に相当する部位の断面図。
【図10】図5のD−D線に相当する部位の断面図。
【図11】燃料タンクおよび排気管の斜視図。
【図12】燃料タンクの正面図。
【図13】下部車体構造の他の実施例を示す側面図。
【図14】従来の車両の下部車体構造を示す側面図。
【符号の説明】
【0056】
2…フロアパネル
5…キックアップ部
6…リヤフロア(フロアパネル)
10…フロアフレーム
12…リヤサイドフレーム(リヤフレーム)
13…燃料タンク
14…リヤクロスメンバ(燃料タンクガード部)
18…凹部
19…排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルと、該フロアパネル後方に左右一対で車幅方向において所定間隔を保持して車両の前後方向に延びるリヤフレームとを備え、
上記一対のリヤフレーム間に燃料タンクが配設された車両の下部車体構造であって、
上記フロアパネルには上方に段上げされたキックアップ部が形成され、
上記キックアップ部の下方に燃料タンクが配設され、
該燃料タンクの下面部が上記フロアパネルの最下面高さより低位置に延出され、
上記フロアパネルの燃料タンクの前方には該燃料タンクの下面部より低い位置に延びる燃料タンクガード部が設けられた
車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記一対のリヤフレームの前端部間を車幅方向に延びて両者を接続するクロスメンバを設け、
該クロスメンバを上記を燃料タンクの下面部より低い位置に延長し、該クロスメンバにて上記燃料タンクガード部を形成した
請求項1記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記クロスメンバはフロアパネルの下面に配設して接合された
請求項2記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記燃料タンクの側方のフロアパネルの下方には車両の前後方向に延びる排気管が配設され、
該排気管とフロアパネルとの間には上記燃料タンクの一部を延長して配設した
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記クロスメンバの車幅方向中間部は、フロアパネルに沿って車両の前後方向に延びるフロアフレームの後端部と接続された
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記クロスメンバには排気管の配設部に対応して凹部が形成された
請求項4記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−15769(P2006−15769A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192476(P2004−192476)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】