説明

車両の下部車体構造

【課題】簡単な構成で車体の剛性を効果的に向上させることにより、車両の衝突時に作用する衝突エネルギーを効果的に吸収できるようにする。
【解決手段】ダッシュパネル1の設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレーム2,2と、ダッシュパネル1の下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルの車幅方向中央部を車室内側に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを備えた車両の下部車体構造であって、上記フロントサイドフレーム2の後端部からフロアパネルに沿って車両の後方側へ延びるフロアフレーム5が設けられ、このフロアフレーム5は、その後方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置されるとともに、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム9の前端部に上記フロアフレーム5の後端部が接続された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のフロントサイドフレームおよびフロアパネルの車幅方向中央部に設置されたトンネル部を備えた車両の下部車体構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車体重量の増加を抑制しつつ、車体の剛性を大きくすることを目的として、車体前部で車幅方向中心線を挟んで左右に設けたフロントサイドフレームと、車体後部で車幅方向中心線を挟んで左右に設けたリヤサイドフレームと、車体を側面から見たときにフロントサイドフレームとリヤサイドフレームよりも低く車幅方向中心線を挟んで左右に設けたフロアフレームまたはサイドシルとをそれぞれ連結し、フロントサイドフレームとリヤサイドフレームとの間で車幅方向中心線に沿ってフロアフレーム又はサイドシルよりも上方に突出する下開放コ字状断面構造のフロアトンネルを設けた車体構造において、前記フロアトンネルの上部に閉断面構造の補助フレームを設け、この補助フレームを前記フロントサイドフレームと前記リヤサイドフレームとに閉断面構造の延長部により接合することが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、オープンカーにも対応できる程度に車体の曲げ剛性及び捩り剛性を向上させることを目的として、車室の床面を形成するように設けられたフロアパネルと、該フロアパネルの車両前後方向の前端上方位置に車幅方向に延びるように設けられたカウルボックスと、上記フロアパネル及びカウルボックスを互いに接続するように設けられ、上端フランジが該カウルボックスに接合されてなるダッシュパネルと、該ダッシュパネルの車幅方向中央から後方に向かって延びるようにフロアパネル上に設けられたトンネル部と、車両前後方向に延びかつ車幅方向に並ぶように設けられた左右一対のサイドフレームとを備えた自動車の下部車体構造において、上記ダッシュパネルに沿ってトンネル部を跨ぐように設けられ、上記両サイドフレームの車室前方に位置するフロント部同士を連結するとともに、該ダッシュパネルと協働して閉断面を形成するダッシュクロスメンバと、車幅方向に延びるように設けられ、上記両サイドフレームの車室後方に位置するリヤ部同士を連結するリヤクロスメンバと、上記トンネル部に沿って車両前後方向に延びるように設けられ、該トンネル部と協働して閉断面を形成するトンネルレインフォースメントとを備え、上記トンネルレインフォースメントの前端側を上記ダッシュクロスメンバの車幅方向中央に結合し、かつ後端側を上記リヤクロスメンバの車幅方向中央に連結した構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−238667号公報
【特許文献2】特開平09−118252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているように、フロアトンネルの上部に設けられた閉断面構造の補助フレームを閉断面構造の延長部によりフロントサイドフレームおよびリヤサイドフレームにそれぞれ接続するように構成した場合には、車両の前突時等に上記フロントサイドフレームに入力された衝突エネルギーを、このフロントサイドフレームと概ね同一高さにある補助フレームからリヤサイドフレームに伝達することにより、これらの各部材全体で上記衝突エネルギーを効率よく吸収できるという利点がある。しかし、この特許文献1に開示された車両の車体構造では、車体の下方部に伝達された衝突エネルギーを効果的に吸収することができず、上記トンネル部(フロアトンネル)をフロアパネルに設けることによる車体剛性の向上効果が充分に得られないという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献2においても、フロアパル上に設置されたセンタクロスメンバを介して左右のサイドシル、サイドフレームおよびフロアトンネル部の上面に設置されたトンネルトップレインフォースメントを連結することにより、フロアトンネル部の上方部分を補強するようにした構成が開示されているが、この構成においても、車体の下方部に伝達された衝突エネルギーを効果的に吸収することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で車体の剛性を効果的に向上させることにより、車両の衝突時に作用する衝突エネルギーを効果的に吸収できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車室前部とエンジンルームとを仕切るように設置されたダッシュパネルと、このダッシュパネルの設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記ダッシュパネルの下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルの車幅方向中央部を車室内側に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部とを備えた車両の下部車体構造であって、上記フロントサイドフレームの後端部からフロアパネルに沿って車両の後方側へ延びるフロアフレームが設けられ、このフロアフレームは、その後方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置されるとともに、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレームの前端部に上記フロアフレームの後端部が接続されたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の下部車体構造において、上記フロアパネルの車幅方向両側方部には、車両の前後方向に延びる閉断面形状のサイドシルが設けられるとともに、このサイドシルの後端部近傍に、上記フロアフレームの後端部が接続されたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の下部車体構造において、上記フロアフレームの前後方向中間部から、上記トンネル部に向かって車幅方向内方側に傾斜しつつ車両の後方側へ延びるフロアサブフレームが設けられたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の下部車体構造において、上記フロアパネル上に乗員用シートが配設され、この乗員用シートに着座した乗員の足置き部が、上記フロアフレームとフロアサブフレームとの間に設けられたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、上記サイドシルの前部とフロントサイドフレームの後端部とを連結する閉断面形状のトルクボックスが設けられたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両の下部車体構造において、上記トルクボックスの後辺部が、サイドシルに近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜して設置されたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、上記フロントサイドフレームの後端部に連設されたフロアフレームの後方部を車幅方向外方側に向けて傾斜させ、かつその後端部を、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレームの前端部に接続するように構成したため、車両の前突時に、上記フロントサイドフレームからフロアフレームに入力された衝突エネルギーをリヤサイドフレームに伝達することにより安定して支持することができる。したがって、車両の前突時に、フロントサイドフレームからフロアフレームを介して車体の下方部に伝達された衝突エネルギーを車体の後方側に分散させて支持することが可能であり、車両の前突荷重に対する車体の剛性を簡単な構成で効果的に向上できるという利点がある。
【0015】
請求項2に係る発明では、フロアパネルの車幅方向両側方部に配設された閉断面形状のサイドシルの後端部近傍に、上記フロアフレームの後端部を接続するように構成したため、フロントサイドフレームからフロアフレームに入力された衝突エネルギーを支持する支持部材として上記サイドシルを利用することにより、車両の前突荷重に対する車体の剛性を、簡単な構成でより効果的に向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、上記フロアフレームの前後方向中間部から、トンネル部に向かって車幅方向内方側に傾斜しつつ車両の後方側へ延びるように上記フロアサブフレームを配設したため、車両の前突時に上記フロアフレームに入力された衝突エネルギーを、フロアサブフレームを介してトンネル部側に伝達することにより、これを安定して支持することが可能であり、ルーフのないオープンカー等においても、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保し、車両の衝突時における車体の変形を効果的に防止できるという利点がある。
【0017】
請求項4に係る発明では、車室の後部に配設された乗員用シートに着座した乗員の足置き部を、上記フロアフレームの後部とフロアサブフレームとの間に設けた構造としたため、上記フロアパネルの上面に補強部材が突出した状態となることに起因して足置きスペースが狭められることを防止しつつ、上記フロアフレームおよびフロアサブフレームにより補強されたフロアパネルの上面部を上記乗員用シートに着座した乗員の足を安定して載置できるという利点がある。
【0018】
請求項5に係る発明では、上記サイドシルの前部とフロントサイドフレームの後端部とを連結する閉断面形状のトルクボックスを設けたため、車両の衝突時に上記フロアフレームおよびトルクボックスを介して上記サイドシルに衝突エネルギーを効率よく伝達して支持することが可能であり、車両の前突荷重に対する車体の剛性を、簡単な構成でより効果的に向上させることができる。
【0019】
請求項6に係る発明では、上記トルクボックスの後辺部を、サイドシルに近づくに従って車体の後方側に位置させるように傾斜させて設置したため、上記フロントサイドフレームからトルクボックスに入力された衝突エネルギーの伝達方向を、トルクボックスから後部外方側へ変換することにより、上記衝突エネルギーをサイドシルに対してスムーズに伝達することが可能であり、このサイドシルにより上記衝突エネルギーを安定して支持できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示す平面図である。
【図2】下部車体フレームの具体的構造を示す平面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】乗員用シートの設置状態を示す平面図である。
【図7】乗員用シートの設置状態を示す側面図である。
【図8】シートスライドレールの取付状態を示す正面断面図である。
【図9】後席シートに着座した乗員の足置部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図4は、本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示している。この下部車体構造は、車室前部とエンジンルームとを仕切るように設置されたダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレーム2,2と、上記ダッシュパネル1の下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネル3と、このフロアパネル3の車幅方向中央部を車室内側(上方)に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを有し、このトンネル部4の上面左右には、閉断面形状のトンネルレインフォースメント4a,4aが車体の前後方向に延びるように設置されている(図4参照)。
【0022】
また、上記フロアパネル3の下面には、フロントサイドフレーム2,2の後端部に連続して車体の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム5,5が設けられるとともに、このフロアフレーム5の前後方向中間部から、上記トンネル部4に向かって車幅方向内方側に傾斜しつつ車両の後方側へ延びるフロアサブフレーム6が配設されている。また、上記フロアパネル3の車幅方向両側方部には、アウタパネル7aとインナパネル7bとを備えた閉断面形状のサイドシル7,7が配設され、上記インナパネル7bの上下方向中間部にフロアパネル3の側端フランジ部3aがスポット溶接される等により固定されている。
【0023】
上記ダッシュパネル1は、図3に示すように、カウルボックス(図示せず)の下面から真鍮下方に延びるように設置されたダッシュアッパ部1aと、その下端部に連設されたダッシュロア部1bとを有している。このダッシュロア部1bは、前上がりの傾斜状態で車両の前後方向に延びるように設置されるとともに、その後端部にフロアパネル3の前端フランジ部3bが接続されている。
【0024】
上記フロントサイドフレーム2は、前輪用サスペンション部材(図示せず)等の設置スペースを確保するために、車両の側壁面から所定距離だけ車幅方向内方側に位置する部位において、車両の前方側へ略直線状に延びるように設置された前方部2aと、その後端部から後下がりに傾斜しつつ車体の後方側へ延びるように設置された後方部2bとを備えている。また、左右のフロントサイドフレーム2,2の前端部には、フロントクロスメンバ8が車幅方向に延びるように設置されている。
【0025】
上記フロアフレーム5は、図4に示すように、左右一対の側壁5a,5aと、その下端部間に設置された底壁部5bと、上記側壁5a,5aの上端部に連設された左右一対の接合フランジ部5c,5cとにより断面ハット型に形成されている。そして、フロアフレーム5は、上記フロントサイドフレーム2の後端部から車体の後方側へ延びるように設置された状態で、上記接合フランジ部5c,5cがフロアパネル3の下面にスポット溶接される等により固定されている。また、上記フロアフレーム5は、図2に示す平面視において、その後方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置されるとともに、その後端部が、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム9,9の前端部および上記サイドシル7の後端部近傍に接続されている。
【0026】
上記リヤサイドフレーム9は、後輪(図示せず)用の設置スペースを確保するために、車両の側壁面から所定距離だけ車幅方向内方側に位置する部位において、車体の後端部から車両の前方側へ略直線状に延びるように設置された後方部9aと、その前端部から側面視で前下がりに傾斜しつつ、平面視で前方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置された前方部9bとからなり、この前方部9bの前端部に上記フロアフレーム5およびサイドシル7の後端部が接続されている。また、上記左右のリヤサイドフレーム9,9を互いに連結する前後一対のリヤクロスメンバ11,12が車幅方向に延びるように設置されている。
【0027】
上記フロアサブフレーム6は、フロアフレーム5の前後方向中間部からフロアパネル3の下面に沿って平面視で後方内向きに傾斜しつつ、トンネル部4の下方側へ延びる傾斜部6aと、この傾斜部6aの後端部から上記トンネル部4に沿って車体の後方側へ延びる後方部6bとからなり、このフロアサブフレーム6の後方部6bによりトンネル部4の下方部分が補強されるようになっている。そして、上記フロアフレーム5と、フロアサブフレーム6の傾斜部6aとにより平面視で略Y字形の分岐フレームが構成され、かつ上記フロアサブフレーム6の後方部6bと上記フロアフレーム5とが、図5に示すように、フロアパネル3の下方に配設された強度部材13により接続されている。
【0028】
上記強度部材13は、フロアパネル3の下方においてフロアフレーム5とフロアサブフレーム6とを連結する連結パイプ14と、その左右両端部に挿入されて固着されたナット15と、上記フロアフレーム5およびフロアサブフレーム6に形成された挿通孔をそれぞれ貫通して設置される左右一対のねじ軸16と、各ねじ軸16にそれぞれ螺着された3個のナット17〜19とを有している。そして、上記ねじ軸16の一端部が、フロアフレーム5またはフロアサブフレーム6の内側壁部に形成された挿通孔を貫通して上記連結パイプ14のナット15に螺着されるとともに、上記フロアフレーム5またはフロアサブフレーム6の内側壁部が、上記ナット15,17を介して内外から挟持されることにより、上記ねじ軸16の一端部が連結パイプ14の側端部に固定されている。
【0029】
また、上記ねじ軸16の他端端部がフロアフレーム5またはフロアサブフレーム6の外側壁部に形成された挿通孔を貫通し、この外側壁部が、ねじ軸16に螺着されたナット18,19を介して内外から挟持されることにより、上記ねじ軸16の他端部がフロアフレーム5またはフロアサブフレーム6の外側壁部に固定されている。このようにしてフロアサブフレーム6の後方部6bと上記フロアフレーム5とが強度部材13を介して連結されることにより、上記フロアフレーム5およびフロアサブフレーム6の設置間隔が拡開変形すること等が効果的に防止されるとともに、車両の側突時に、上記フロアフレーム5に入力された衝突エネルギーが、上記強度部材13およびフロアサブフレーム6を介してトンネル部4に伝達されるようになっている。
【0030】
上記フロアパネル3上には、図6および図7に示すように、フロアフレーム5の設置部とフロアサブフレーム6の設置部とに跨るように運転席または助手席等からなる前列の乗員用シート20が設置され、この乗員用シート20がシートスライドレール21を介してスライド自在に支持されている。このシートスライドレール21は、フロアフレーム5に対するフロアサブフレーム6の接続部に対応した前後位置においてフロアパネル3上に設置された前部ブラケット22と、上記フロアフレーム5の後方部およびフロアサブフレーム6の後方部6bの前端部に対応する位置において上記フロアパネル3上に設置された後部ブラケット23と、上記前部ブラケット22,22および後部ブラケット23,23上に設置された左右一対のロアレール24,24と、左右のロアレール24,24を連結する前後一対の連結フレーム25,25とを有している。また、上記乗員用シート20の底部に固定された図外のアッパレールが、上記ロアレール24,24に沿ってスライド可能に支持されている。
【0031】
そして、図8に示すように、上記ロアレール24,24の後端部をフロアパネル3に固定する取付ボルト26が、上記後部ブラケット23、フロアパネル3およびフロアフレーム5またはフロアサブフレーム6の挿通孔を貫通してその下方に導出され、この導出部に上下一対のナット27,27が螺着されることにより、上記フロアフレーム5またはフロアサブフレーム6の底壁部が挟持された状態で、上記ロアレール24,24の後端部がフロアフレーム5およびフロアサブフレーム6の設置部に固定されている。また、同様にして、上記ロアレール24,24の前端部をフロアパネル3に固定する取付ボルトが、上記前部ブラケット22およびフロアパネル3等に形成された挿通孔を貫通してフロアパネル3の下方に導出され、この導出部にナットが螺着されることにより、上記ロアレール24,24の前端部がフロアフレーム5およびフロアサブフレーム6の設置部近傍に固定されている。
【0032】
上記前列の乗員用シート20の後方部に位置するフロアパネル3上には、図7に示すように、後列の乗員用シート30が配設されるとともに、図9に示すように、この乗員用シート30に着座した乗員の足置き部31が、上記フロアフレーム5の後部およびフロアサブフレーム6の設置部に形成されている。具体的には、上記フロアフレーム5の後方部がサイドシル7に近接した位置に配設されるとともに、上記フロアサブフレーム6の後方部6bがトンネル部4に沿って設置されることにより、下面部が補強された上記フロアパネル3の所定の範囲が、上記乗員用シート30に着座した乗員の足置き部31として利用されるようになっている。
【0033】
上記フロントサイドフレーム2の後端部外側面には、図2〜図4に示すように、ダッシュロア部1bの下面に沿って車体の車幅方向外方側に延びるトルクボックス32が設けられ、このトルクボックス32を介して上記サイドシル7の前部とフロントサイドフレーム2の後端部とが連結されている。上記トルクボックス32は、ダッシュロア部1bに沿ってその下方側へ延びる前壁33と、その下端部から上記ダッシュロア部1bの下面との間に所定の間隔を隔てて車両の後方側へ延びる底壁34と、その後端部から上方側へ延びるように設置されて上記ダッシュロア部1bないしフロアパネル3の下面に接続される後壁35とを有するボックス状部材からなっている。そして、上記トルクボックス32の後壁35からなる後辺部が、上記サイドシル7に近づくに従い、つまり車幅方向外方側に至るに従って車体の後方側に位置するように傾斜して設置され、かつ上記後壁35の外端部35aがダッシュロア部1bの後端を超える位置まで延設されている。
【0034】
上記構成において、車両に前突事故が発生して上記フロントサイドフレーム2に衝撃エネルギーが入力されると、この衝突エネルギーは、図3の矢印P1に示すように、フロントサイドフレーム2の傾斜部2aを介して上記ダッシュパネル1に伝達され、その一部が、図2の矢印P2に示すように、上記トルクボックス32を介してサイドシル7に伝達されるとともに、ダッシュパネル1に固着された図略のダッシュクロスメンバを介してトンネル部4に伝達され、かつ上記衝突エネルギーの残りが、図2の矢印P3に示すように、上記フロントサイドフレーム2の後端部からフロアフレーム5に伝達される。
【0035】
上記トルクボックス32の後壁35からなる後辺部は、サイドシル7に近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜して設置されている。このため、上記フロントサイドフレーム2からトルクボックス32に入力された衝突エネルギーの伝達方向P2が、トルクボックス32を介して後部外方側へと変換されることにより、上記衝突エネルギーがサイドシル7に対してスムーズに伝達される。そして、このサイドシル7からリヤサイドフレーム9に上記衝突エネルギーが伝達されることにより安定して支持されることになる。
【0036】
また、車両の前突時に、図2の矢印P3に示すように、上記フロントサイドフレーム2からフロアフレーム5に入力された衝突エネルギーは、その一部が矢印P4に示すように、上記フロアサブフレーム6からトンネル部4の下方側へと伝達されて支持されるとともに、残りの衝突エネルギーが、フロアパネル3の下面に沿って設置された上記フロアフレーム5を介してサイドシル7の後端部側およびリヤサイドフレーム9の前端部に伝達されることにより、安定して支持されるようになっている。
【0037】
さらに、車両の側面に他車が衝突する側突時には、上記サイドシル7およびフロアパネル3等を介して上記フロアフレーム5の前後方向中間部を車幅方向に押動する衝突エネルギーが作用し(図2の矢印Q参照)、この衝突エネルギーが、フロアパネル3の下方側に配設された上記強度部材13により支持されつつ、フロアサブフレーム6およびトンネル部4に伝達されることなる。したがって、上記フロアサブフレーム6とフロアフレーム5とを連結する上記強度部材13を設けることにより、車両の側突時に入力された衝撃エネルギーに応じて車室の底面部等が変形するのを効果的に防止できるとともに、側突荷重に対する車体の剛性を効果的に向上させることができる。
【0038】
上記のように車室前部とエンジンルームとを仕切るように設置されたダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレーム2,2と、上記ダッシュパネル1の下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネル3と、このフロアパネル3の車幅方向中央部を車室内側に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部4とを備えた車両の下部車体構造において、上記フロントサイドフレーム2の後端部からフロアパネル3に沿って車両の後方側へ延びる左右一対のフロアフレーム5,5を設け、このフロアフレーム5の後方部を、車幅方向外方側に傾斜させて設置するとともに、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム7の前端部に上記フロアフレーム5の後端部を接続したため、簡単な構成で車体の剛性を効果的に向上させることができ、車両の衝突時に作用する衝突エネルギーを効果的に吸収できるという利点がある。
【0039】
すなわち、上記フロントサイドフレーム2の後端部に連設されたフロアフレーム5の後方部を車幅方向外方側に向けて傾斜させ、かつその後端部を、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレーム9の前端部に接続するように構成したため、車両の前突時に、上記フロントサイドフレーム2からフロアフレーム5に入力された衝突エネルギーをリヤサイドフレーム9に伝達することにより安定して支持することができる。したがって、車両の前突時に、フロントサイドフレーム2からフロアフレーム5を介して車体の下方部に伝達された衝突エネルギーを車体の後方側に分散させて支持することが可能であり、車両の前突荷重に対する車体の剛性を簡単な構成で効果的に向上できるという利点がある。
【0040】
また、上記実施形態に示すように、フロアパネル3の車幅方向両側方部に配設された閉断面形状のサイドシル7の後端部近傍に、上記フロアフレーム5の後端部を接続するように構成した場合には、フロントサイドフレーム2からフロアフレーム5に入力された衝突エネルギーを支持する支持部材として上記サイドシル7を利用できるため、車両の前突荷重に対する車体の剛性を、簡単な構成でより効果的に向上させることができる。
【0041】
さらに、上記実施形態では、フロアフレーム5の前後方向中間部から、上記トンネル部4に向かって車幅方向内方側に傾斜しつつ車両の後方側へ延びるフロアサブフレーム6を配設したため、車両の前突時に上記フロアフレーム5に入力された衝突エネルギーを、フロアサブフレーム6を介してトンネル部4側に伝達することにより、これを安定して支持することができる。したがって、ルーフのないオープンカー等においても、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保し、車両の衝突時における車体の変形を効果的に防止できるという利点がある。
【0042】
特に、上記実施形態に示すように、フロアパネル3の下方側に配設された強度部材13により上記フロアサブフレーム6とフロアフレーム5とを連結するように構成した場合には、車両の側突時に、車体側部から入力された衝突エネルギーを、上記強度部材13によりフロアサブフレーム6およびトンネル部4に効率よく伝達して、これを安定して支持することができる。しかも、車両の前突時に車体前部から入力された衝突エネルギーを、フロアパネル3の下面に沿って設置された上記フロアフレーム5により車両の後方側へ伝達するとともに、フロアサブフレーム6を介して上記衝突エネルギーの一部をトンネル部4側に伝達する際に、上記フロアフレーム5およびフロアサブフレーム6の設置間隔が拡開変形すること等を効果的に防止した状態で、上記衝突エネルギーを安定して支持できるという利点がある。
【0043】
さらに、上記実施形態では、フロアサブフレーム6の後方部6bをトンネル部4に沿って車体の前後方向に延びるように設置することにより、上記フロアサブフレーム6の後方部6bを介してトンネル部4を補強するように構成したため、フロアパネル3の車幅方向中央部近傍における車体の剛性を効果的に向上させることができる。したがって、車両の前突時または側突時に、上記トンネル部4の設置部に伝達された衝突エネルギーを効果的に支持して車体の変形を確実に抑制できるという利点がある。
【0044】
また、図9に示すように、車室の後部に配設された後列の乗員用シート30に着座した乗員の足置き部31を、フロアパネル3の下方に配設された上記フロアフレーム5の後部とフロアサブフレーム6との間に設けた構造とした場合には、上記フロアパネル3の上面に補強部材が突出した状態となることに起因して足置きスペースが狭められることを防止しつつ、上記フロアフレーム5およびフロアサブフレーム6により補強されたフロアパネル3の上面部を上記乗員用シート30に着座した乗員の足を安定して載置できるという利点がある。
【0045】
上記実施形態では、サイドシル7の前部と上記フロントサイドフレーム2の後端部とを連結する閉断面形状のトルクボックス32を設けた構造としたため、車両に前突時に、上記フロントサイドフレーム2に入力された衝撃エネルギーの一部を、上記トルクボックス32からサイドシル7の前部に伝達することにより、安定して支持することができる(図2の矢印P2参照)。したがって、車両の前突荷重に対する車体の剛性を、簡単な構成でさらに効果的に向上させることができる。
【0046】
特に、上記実施形態に示すように、トルクボックス32の後壁35からなる後辺部をサイドシル7に近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜させた構造とした場合には、上記フロントサイドフレーム2からトルクボックス32に入力された衝突エネルギーの伝達方向を、トルクボックス32を介して後部外方側へ変換することにより、上記衝突エネルギーをサイドシル7に対してスムーズに伝達することができるため、このサイドシル7により上記衝突エネルギーを安定して支持できるという利点がある。
【0047】
また、上記実施形態では、トルクボックス32をダッシュパネル1の下面、具体的には、上記ダッシュロア部1bの下面に沿って設置されたボックス状部材により構成したため、上記トルクボックス32が車室内に突出した状態で設置されることに起因して車室内スペースが狭められる等の弊害を生じることなく、車両の前突荷重に対する車体の剛性を効果的に向上させることができる。
【0048】
さらに、上記実施形態では、ダッシュパネル1の下端部に前上がりの傾斜状態で車両の前後方向に延びるダッシュロア部1bを設け、その後端部に上記フロアパネル3の前端部を接続した車両の下部車体構造において、上記トルクボックス32の後壁外端部35aをダッシュロア部1bの後端を超える位置まで延設したため、車両の前突時に入力される衝撃エネルギーに応じてダッシュロア部1bの近傍部が変形すること等を上記トルクボックス32により効果的に防止できるとともに、このトルクボックス32を介して上記衝突エネルギーをサイドシル7に効率よく伝達できるという利点がある。
【0049】
特に、上記実施形態に示すように、フロントサイドフレーム2の後端部からフロアパネル3に沿って車両の後方側へ延びるように設置されたフロアフレーム5の前部に上記トルクボックス32を接続した構造とした場合には、車両の前突時に、フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを、上記トルクボックス32からサイドシル7およびフロアフレーム5に分散させて効率よく伝達することができるため、上記衝突エネルギーを、さらに効果的に支持できるという利点がある。
【0050】
上記実施形態では、上記フロアパネル3の車幅方向両側方部に、車両の前後方向に延びる閉断面形状のサイドシル7を設けるとともに、このサイドシル7の前部と上記フロントサイドフレーム2の後端部とを連結するように上記ダッシュパネル1に沿って延びる閉断面形状のトルクボックス32を設け、このトルクボックス32の後辺部を、上記サイドシル7に近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜させた形状としたため、簡単な構成で車体の剛性を効果的に向上させることができ、車両の衝突時に作用する衝突エネルギーを効果的に吸収できるという利点がある。
【0051】
すなわち、上記ダッシュパネル1に沿って延びるように設けられた閉断面形状のトルクボックス32により、サイドシル7の前部と上記フロントサイドフレーム2の後端部とを連結するとともに、上記トルクボックス32の後壁35からなる後辺部をサイドシル7に近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜させた構造としたため、車両の前突時に、上記フロントサイドフレーム2からトルクボックス32に入力された衝突エネルギーの伝達方向を、トルクボックス32から後部外方側へ変換することにより、上記衝突エネルギーをサイドシル7に対してスムーズに伝達することができる。したがって、車両前突時に、上記フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを車体の全体に分散して、これを効果的に支持できるという利点がある。
【0052】
また、上記実施形態では、後辺部をサイドシル7に近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜させてなる上記トルクボックス32を、ダッシュパネル1の下面、具体的には、上記ダッシュロア部1bの下面に沿って設置されたボックス状部材により構成したため、上記トルクボックス32が車室内に突出した状態で設置されることに起因して車室内スペースが狭められる等の弊害を生じることなく、上記形状のトルクボックス32を配設して車両の前突荷重に対する車体の剛性を効果的に向上させることができる。
【0053】
しかも、上記実施形態では、ダッシュパネル1の下端部に前上がりの傾斜状態で車両の前後方向に延びるダッシュロア部1bを設け、その後端部に上記フロアパネル3の前端部が接続されてなる車両の下部車体構造において、上記トルクボックス32の後壁外端部35aをダッシュロア部1bの後端を超える位置まで延設したため、車両の前突時に入力される衝突エネルギーに応じてダッシュロア部1bの近傍部が変形すること等を上記トルクボックス32により効果的に防止できるとともに、このトルクボックス32を介して上記衝突エネルギーをサイドシル7に効率よく伝達できるという利点がある。
【0054】
さらに、上記実施形態に示すように、フロアパネルの車幅方向両側方部に配設された閉断面形状のサイドシル7の後端部近傍に、上記フロアフレーム5の後端部を接続するように構成した場合には、フロントサイドフレーム2からフロアフレーム5に入力された衝突エネルギーを支持する支持部材として上記サイドシル7を利用できるため、車両の前突荷重に対する車体の剛性を、簡単な構成でより効果的に向上させることができるという利点がある。
【0055】
上記実施形態に示すように、フロントサイドフレーム2の後端部からフロアパネル3に沿って車両の後方側へ延びるように設置されたフロアフレーム5の前部に上記トルクボックス32を接続した構造とした場合には、車両の前突時に、フロントサイドフレーム2に入力された衝突エネルギーを、上記トルクボックス32からサイドシル7およびフロアフレーム5に分散させて効率よく伝達することができるため、上記衝突エネルギーを、さらに効果的に支持できるという利点がある。
【符号の説明】
【0056】
1 ダッシュパネル
2 フロントサイドフレーム
3 フロアパネル
4 トンネル部
5 フロアフレーム
6 フロアサブフレーム
7 サイドシル
9 リヤサイドフレーム
32 トルクボックス
35 後壁(後辺部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部とエンジンルームとを仕切るように設置されたダッシュパネルと、このダッシュパネルの設置部から車両の前方側へ延びる左右一対のフロントサイドフレームと、上記ダッシュパネルの下端部に連続して車室の底面部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルの車幅方向中央部を車室内側に膨出させることにより車体の前後方向に延びるように設置されたトンネル部とを備えた車両の下部車体構造であって、上記フロントサイドフレームの後端部からフロアパネルに沿って車両の後方側へ延びるフロアフレームが設けられ、このフロアフレームは、その後方部が車幅方向外方側を指向するように傾斜して設置されるとともに、車両の後部左右に配設されたリヤサイドフレームの前端部に上記フロアフレームの後端部が接続されたことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記フロアパネルの車幅方向両側方部には、車両の前後方向に延びる閉断面形状のサイドシルが設けられるとともに、このサイドシルの後端部近傍に、上記フロアフレームの後端部が接続されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記フロアフレームの前後方向中間部から、上記トンネル部に向かって車幅方向内方側に傾斜しつつ車両の後方側へ延びるフロアサブフレームが設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記フロアパネル上に乗員用シートが配設され、この乗員用シートに着座した乗員の足置き部が、上記フロアフレームとフロアサブフレームとの間に設けられたことを特徴とする請求項3に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記サイドシルの前部とフロントサイドフレームの後端部とを連結する閉断面形状のトルクボックスが設けられたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記トルクボックスは、その後辺部が上記サイドシルに近づくに従って車体の後方側に位置するように傾斜して設置されたことを特徴とする請求項5に記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−167819(P2010−167819A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9870(P2009−9870)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】