説明

車両の下部車体構造

【課題】車高が高くなること等を防止しつつ、フロアパネルの下方に車両用補機を設置するためのスペースを充分に確保する。
【解決手段】フロアパネルの左右両側部にリヤサイドフレーム6が設置された車両において、上記フロアパネル2の車幅方向中央部に設置されたトンネル部8の車幅方向の一方側には、第1後列シート5の設置部となる第1フロアパネル側部9が配設されるとともに、他方側には、第2後列シート6の設置部となる第2フロアパネル側部10が配設され、かつ上記第1フロアパネル側部10の底面がリヤサイドフレーム7の底面7aよりも上方に位置するとともに、上記第2フロアパネル側部10の底面がリヤサイドフレーム7の底面7aよりも下方に位置するように配設され、上記第1後列シート5は、第2後列シート6よりも小型に形成され、少なくとも上記第1フロアパネル側部10の下方に車両用補機11が配設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室のフロアパネル上に運転席および助手席からなる左右一対の前列シートが並設されるとともに、この前列シートの後方に左右一対の後列シートが並設された車両の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、リヤシート設置用のリヤフロアパネルの後方部を上方へ持ち上げ形成するとともに、後部が前部よりも高い位置にある形状の燃料タンクを上記リヤフロアの下面に沿って取り付けた自動車の後部車体構造において、上記リヤフロアパネルとその後方のラゲッジフロアパネルとの間に縦面部を形成するとともに、フロアパネルの前側に第1クロスメンバを配し、上記縦面部の燃料タンクとスペアタイヤとの間に第2クロスメンバを配するとともに、燃料タンクの下側にサスペンションメンバを配設することが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2には、自動車の車体後部のフロアパネルの下側に配設される燃料タンクにおいて、リヤシートの下方に位置する略水平なタンク前部と、上記フロアの傾斜状のリアキックアップ部の下方に位置するタンク傾斜部と、上記フロアのリヤキックアップフロア部の上端に連なるリヤフロア前部とを一体に形成してなる側面視略クランク形状に形成された燃料タンクが開示されている。
【特許文献1】特開平6−211169号公報
【特許文献2】特開平5−627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に開示されているように、後列シート(リヤシート)の設置部に位置するフロアパネルの下方に燃料タンク等からなる車両用補機を配設した場合には、車体の前後寸法をコンパクト化しつつ、上記後列シートの設置部をキックアップさせることによりその下方に形成された空間部を有効に利用して所定の容量を有する上記燃料タンク等を設置できるという利点がある。
【0005】
しかし、上記後列シートの下方に大容量の車両用補機を設置するためにフロアパネルを上方に位置させると、これに応じて車高が高くなったり、後列シートに高身長者が着座した場合にその頭部とルーフ部との間隔が狭くなったりする等の問題がある。一方、車高が高くなること等を防止するために、上記後列シートの設置部に位置するフロアパネルを下方に位置させた場合には、上記車両用補機を設置するためのスペースを充分に確保することが困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車高が高くなること等を防止しつつ、フロアパネルの下方に車両用補機を設置するためのスペースを充分に確保することができる車両の下部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車室のフロアパネル上に運転席および助手席からなる左右一対の前列シートが並設されるとともに、この前列シートの後方に左右一対の後列シートが並設され、かつフロアパネルの左右両側部には、車体の前後方向に延びるリヤサイドフレームが設置された車両において、上記フロアパネルの車幅方向中央部には、車室内側に向けて突出するトンネル部が車両の前後方向に延びるように設置され、このトンネル部の車幅方向の一方側には、第1後列シートの設置部となる第1フロアパネル側部が配設されるとともに、上記トンネル部の車幅方向の他方側には、第2後列シートの設置部となる第2フロアパネル側部が配設され、かつ上記第1フロアパネル側部の底面がリヤサイドフレームの底面よりも上方に位置するとともに、上記第2フロアパネル側部の底面がリヤサイドフレームの底面よりも下方に位置するように配設され、上記第1後列シートは、第2後列シートよりも小型に形成され、少なくとも上記第1フロアパネル側部の下方に車両用補機が配設されたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の下部車体構造において、上記運転席の後方側に第1フロアパネル側部が配設され、上記助手席の後方側に第2フロアパネル側部が配設されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の下部車体構造において、上記第2フロアパネル側部の下方に、上記第1フロアパネル側部下方の車両用補機よりも小型の車両用補機が配設されたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の下部車体構造において、上記第1,第2フロアパネル側部の下方に燃料タンクからなる車両補機が配設されたものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の車両の下部車体構造において、上記燃料タンクが、第1フロアパネル側部の下方に配設された第1タンク部と、上記第2フロアパネル側部の下方に配設された第2タンク部とを備え、上記第1タンク部が第2タンク部よりも大きな容量を有するとともに、上記第1タンクに連通されたものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両の下部車体構造において、上記燃料タンクは、上記第1タンク部および第2タンク部と、トンネル部内に配設されて連通タンク部とにより鞍型形状に形成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、上記第1フロアパネル側部の底面をリヤサイドフレームの底面よりも上方に位置させるとともに、上記第2フロアパネル側部の底面をリヤサイドフレームの底面よりも下方に位置させることにより、上記第1フロアパネル側部よりも下方に位置させた第2フロアパネル側部上に、相対的に大型の第2後列シートを設置したため、車高が高くなったり、第2後列シートに着座した乗員の頭部とルーフ部との間隔が狭くなりすぎたりすること等を防止しつつ、上記第2後列シートに高身長者が安楽姿勢で着座することを可能として乗員の居住環境を効果的に向上させるとともに、車体デザインの自由度を増大させて車体を効果的にコンパクト化することができる。しかも、上記第2フロアパネル側部よりも上方に位置する第1フロアパネル側部上に、第2後列シートよりも小型に形成されて子供または小柄の女性等用に使用される第1後列シートを配設したため、その下方に上記車両用補機を設置するためのスペースを充分に確保しつつ、上記車両を四人乗りとすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、相対的に小型の第1後列シートが設置される第1フロアパネル側部を運転席の後方側に配設するとともに、通常の大きさを有する第2後列シートが設置される上記第2フロアパネル側部を助手席の後方側に配設したため、上記助手席を運転席よりも前方に位置させることにより、上記第2後列シート上に着座した高身長等からなる乗員の前方に充分なスペースを確保して、その居住性を効果的に向上できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、上記第2フロアパネル側部の下方に、上記第1フロアパネル側部下方の車両用補機よりも小型の車両用補機を配設したため、上記第2フロアパネル側部の下方部に設けられたスペースを有効に利用できるという利点がある。
【0016】
請求項4に係る発明では、上記第1,第2フロアパネル側部の下方空間を有効に利用して所定の容量を有する燃料タンクを効率よく設置できるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明では、第1フロアパネル側部の下方に燃料タンクの第1タンク部を配設するとともに、上記第2フロアパネル側部の下方に第2タンク部を配設し、上記第1タンク部を第2タンク部よりも大きな容量に形成するとともに、上記第1タンク部に連通させた構造としたため、上記のように底面の高さが異なる位置に設定された第1,第2フロアパネル側部の下方空間を有効に利用して充分な容量を有する燃料タンクを設置できるとともに、上記第1,第2タンク部の下面を略同一高さに設定することにより、上記第1,第2タンク部の下面の一方が下方に位置することに起因して損傷し易くなる等の弊害を生じることなく、上記燃料タンクの容量を充分に確保できるという利点がある。
【0018】
請求項6に係る発明では、第1,第2フロアパネル側部の下方に配設された第1,第2タンク部と、トンネル部内に配設された連通タンク部とにより、上記燃料タンクを鞍型形状に形成したため、上記第1,第2フロアパネル側部およびトンネル部の下方に位置するスペースを有効に利用して燃料タンクの容量を充分に確保できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る下部車体構造を備えた車両の概略構成を示している。この車両の車室1内には、フロアパネル2上に運転席3および助手席4からなる左右一対の前列シートが並設されるとともに、その後方側に左右一対の後列シート5,6が並設され、かつ上記フロアパネル2の下面左右両側辺部には、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム7が設置されている。また、上記フロアパネル2の車幅方向中央部には、車室1内側(上方)に向けて突出するトンネル部8が車両の前後方向に延びるように設置されている。
【0020】
上記トンネル部8の車幅方向の一方側には、図3および図4に示すように、第1後列シート5の設置部となる第1フロアパネル側部9が配設されるとともに、上記トンネル部8の車幅方向の他方側には、図3および図5に示すように、第2後列シート6の設置部となる第2フロアパネル側部10が配設されている。上記左右のリヤサイドフレーム7間に位置する上記第1フロアパネル側部9および第2フロアパネル側部10の下方には、燃料タンク11からなる車両用補機が配設されている。
【0021】
また、上記トンネル部8の下方には、プロペラシャフト12、排気管13およびクランク型の断面形状を有する補強フレーム14等が車体の前後方向に延びるように設置されている。さらに、上記第1フロアパネル側部9および第2フロアパネル側部10の後方側には、キックアップ部15を介してリヤフロアパネル16が接続され、このリヤフロアパネル16の前部下方には、上記プロペラシャフト12の駆動力を左右後輪に伝達するディファレンシャル17および図示を省略した後輪用サスペンション部材等が配設されている。
【0022】
上記第1フロアパネル側部9は、その前端部に設けられた第1キックアップ部18を介して前方のフロアパネル2に接続されることにより、第1フロアパネル側部9の底面が前方のフロアパネル2よりも上方で、上記リヤサイドフレーム7の底面7aよりも上方に位置するように配設されている。一方、上記第2フロアパネル側部10は、その前端部に設けられた第2キックアップ部19を介して前方のフロアパネル2に接続されることにより、第2フロアパネル側部10の底面が、上記フロアパネル2よりも上方で、リヤサイドフレーム7の底面7aよりも下方に位置するように配設されている。すなわち、上記第1キックアップ部18のキックアブ量が第2キックアップ部19よりも大きく形成されることにより、上記第1フロアパネル側部9が第2フロアパネル側部10よりも上方に配設されている。
【0023】
この実施形態では、車室1の左側に位置する運転席3の後方側に、第1フロアパネル側部9が配設されるとともに、車室1の右側に位置する助手席4の後方側に上記第2フロアパネル側部10が配設されている。また、上記運転席3および助手席4の前方には、図2に示すように、車両の後方側に向けて凹入する中央凹部20と、左右両端部から車幅方向に外方側に延びる左右一対のダッシュ側部21,22とを有するダッシュパネル23が配設されている。上記両ダッシュ側部21,22の一方、具体的には上記助手席4の前方側に位置する右側のダッシュ側部21が、上記運転席3の前方に位置する左側のダッシュ側部22よりも車両の前方側にオフセットして配設されることにより、助手席4を運転席3よりも前方に移動させ得るようになっている。
【0024】
上記運転席3および助手席4は、フロアパネル2上に設置されたスライドレール(図示せず)に沿って車体の前後方向にスライド可能に支持されたシートクッション25と、その後端部に立設されたシートバック26と、このシートバック26を傾動可能に支持するリクライニング機構27とを備えている。このリクライニング機構27は、少なくとも上記シートバック26を起立させた使用状態と、これを車体の前方側に傾動させた格納状態とに変位可能に支持するように構成されている。
【0025】
上記運転席3の後方側に位置する上記第1フロアパネル側部9上に配設された第1後列シート5は、子供または小柄の女性等用に使用される比較的に小型のシートであり、そのシートクッション28は、高反発ウレタンフォーム材等からなる比較的に硬質な素材を主体に構成されるとともに、上記第1フロアパネル側部9上に設置されている。また、上記第1後列シート5のシートバック29は、通常の乗員用シートと同様に、その下端部に設けられた水平軸からなる第1支持軸30を支点として揺動可能に支持されている。
【0026】
一方、上記助手席4の後方側に位置する第2フロアパネル側部10上に設置された第2後列シート6は、高身長者が着座可能な通常の大きさ、つまり高身長者の上半身を適正に支持し得る程度の上下寸法を有し、そのシートクッション31は、例えば低反発ウレタンフォーム材等からなる比較的に軟質な素材を主体に構成されることにより、上記第1後列シート5のシートクッション28よりも柔軟に形成されている。
【0027】
そして、上記第2後列シート6のシートクッション31は、図3および図5の破線で示すように、その内部に角パイプ材等からなるシートクッションフレーム32が配設されている。また、上記第2後列シート6のシートクッション31は、その厚みが、上記第1フロアパネル側部9および第2フロアパネル側部10の高低差に対応する距離だけ、第1後列シート5のシートクッション28よりも大きく設定されることにより、乗員の非着座状態では、第2後列シート6のシートクッション31の上面と、上記第1後列シート5のシートクッション28の上面とが略同一高さとなるように設置されている。
【0028】
図5および図6に示すように、上記第2後列シート6のシートバック36は、その上下方向中間部に位置するリクライニング機構37を介して揺動可能に支持されることにより、その設置角度を好みに応じて変更可能に構成されている。上記リクライニング機構37は、上記リヤフロアパネル16の前部上面に設置された上部クロスメンバ38の上端面に支持される車体側筒状部39と、この車体側筒状部39に中央部分が挿入されて保持される水平軸からなる第2支持軸40と、上記シートバック36の背面部に固定されるとともに第2支持軸40の左右両側部分が挿入される左右一対のシートバック側筒状部41とを有している。
【0029】
そして、上記第1後列シート5のシートバック29の下端部に設けられた第1支持軸30よりも上方、つまり上記シートバック36の上下方向中間部に配設された上記第2支持軸40を支点にシートバック側筒状部41を回動変位させることにより、図5の実線で示すように、上記シートバック36の下端部をシートクッション31の後端部近傍に位置させて、その傾斜角度を小さくした標準位置から、図5の仮想線で示すように、シートバック36の下端部をシートクッション31の後端部よりもやや前方に位置させて、その傾斜角度を大きくしたリクライニング位置に上記シートバック36を変位させ得るように構成されている。また、上記第2後列シート6のシートバック36は、図外のロック機構を介して上記標準位置およびリクライニング位置に係止されるようになっている。
【0030】
上記燃料タンク11は、第1フロアパネル側部9の下方に配設された第1タンク部42と、第2フロアパネル側部10の下方に配設された第2タンク部43と、上記トンネル部8内に配設された逆U字状の連通タンク部44とにより鞍型形状に形成されている。上記第1タンク部42は、その厚みが、上記第1フロアパネル側部9および第2フロアパネル側部10の高低差に対応する距離だけ、第2タンク部43に比べて小さく設定されている。これにより、上記第1,第2タンク部42,43の上面を、それぞれ第1,第2フロアパネル側部9,10の下面に沿って設置した場合に、上記第1,第2タンク部42,43の下面が略同一高さとなるように構成されている。
【0031】
また、図3、図4および図7に示すように、上記第1フロアパネル側部9の下面には、その前後方向中間部に沿ってリヤサイドフレーム7の側壁面から上記トンネル部8に向けて車幅方向に延びる中間クロスメンバ45が設置されている。また、上記第1タンク部42の上面には、上記中間クロスメンバ45に対応した凹部46が車幅方向に延びるように形成されている。そして、上記キックアップ部15の背面には、車幅方向に延びる後部クロスメンバ47が設置されるとともに、上記燃料タンク11の前方に位置するフロアパネル2の下面には、車幅方向に延びる前部クロスメンバ48が設置され、かつこの前部クロスメンバ48に前端部がボルト止めされるとともに、上記後部クロスメンバ47に後端部がボルト止めされたタンクバンド49により上記燃料タンク11が車体に固定されるようになっている。
【0032】
上記のように車室1のフロアパネル2上に運転席3および助手席4からなる左右一対の前列シートが並設されるとともに、この前列シートの後方に左右一対の後列シート5,6が並設され、かつフロアパネル2の左右両側部には、車体の前後方向に延びるリヤサイドフレーム7が設置された車両において、上記フロアパネル2の車幅方向中央部には、車室1内側に向けて突出するトンネル部8を車両の前後方向に延びるように設置し、このトンネル部8の車幅方向の一方側に、第1後列シート5の設置部となる第1フロアパネル側部9を配設するとともに、上記トンネル部8の車幅方向の他方側に、第2後列シート6の設置部となる第2フロアパネル側部10を配設し、かつ上記第1フロアパネル側部9の底面をリヤサイドフレーム7の底面よりも上方に位置させるとともに、上記第2フロアパネル側部10の底面をリヤサイドフレーム7の底面よりも下方に位置させ、上記第1後列シート5を、第2後列シート6よりも小型に形成し、少なくとも上記第1フロアパネル側部9の下方に燃料タンク11からなる車両用補機を配設するように構成したため、車高が高くなること等を防止しつつ、フロアパネルの下方に車両用補機を設置するためのスペースを充分に確保することができる。
【0033】
すなわち、上記実施形態では、運転席3の後方側に配設された第1フロアパネル側部9の底面をリヤサイドフレーム7の底面7aよりも上方に位置させるとともに、上記助手席4の後方側に配設された上記第2フロアパネル側部10の底面をリヤサイドフレーム7の底面7aよりも下方に位置させることにより、上記第1フロアパネル側部9を第2フロア側部10よりも相対的に上方に位置させるように構成したため、その下方に上記車両用補機を設置するためのスペースを充分に確保することができる。
【0034】
そして、上記のように相対的に下方に位置させた第2フロアパネル側部10上に、高身長者が着座可能な通常の大きさを有する第2後列シート6を設置したため、車高が高くなったり、第2後列シート6に着座した乗員の頭部とルーフ部との間隔が狭くなりすぎたりすること等を防止しつつ、上記後列シート6に高身長者が安楽姿勢で着座することを可能として乗員の居住環境を効果的に向上させるとともに、車体デザインの自由度を増大させて車体を効果的にコンパクト化できる等の利点がある。しかも、上記第2フロアパネル側部10よりも上方に位置する第1フロアパネル側部9上に、第2後列シート6よりも小型に形成されて子供または小柄の女性等用に使用される第1後列シート5を配設したため、その下方に上記車両用補機の設置スペースを確保しつつ、上記車両を四人乗りとすることができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、第2後列シート6のシートクッション31を、例えば低反発ウレタンフォーム材等からなる比較的に軟質な素材を主体に構成するとともに、上記第1後列シート5のシートクッション28を、例えば高反発ウレタンフォーム材等からなる比較的に硬質な素材を主体に構成してその厚みを上記第2後列シート6のシートクッション31よりも小さくすることにより、第1後列シート5を、第2後列シート6に比べて相対的に小型に構成している。この構成に代え、両シートクッション28,31を同じ素材で同じ厚みに形成し、かつ第1後列シート5のシートクッション28の上面を第2後列シート6のシートクッション31よりも上方に位置させるとともに、そのシートバック29の上下寸法を第2後列シート6のシートバック36より小さく設定することにより、上記第1後列シート5を、第2後列シート6よりも相対的に小型に形成して子供または小柄の女性等用としてもよい。
【0036】
しかし、上記実施形態に示すように、第2後列シート6のシートクッション31を相対的に柔軟に構成し、かつ第2後列シート6のシートクッション31の厚みを、上記第1フロアパネル側部9および第2フロアパネル側部10の高低差に対応する距離だけ、第1後列シート5のシートクッション28よりも大きく設定することにより、通常時に、第2後列シート6のシートクッション31の上面と、第1後列シート5のシートクッション28の上面とが略同一高さとなるように構成した場合には、上記第2後列シート6上に高身長の乗員が着座する際に、図8に示すように、上記シートクッション31を大きく変形させてその上面の高さを第2後列シート6のシートクッション31よりも下方に位置させることにより、上記乗員の頭部とルーフ部との間隔を充分に確保することができる。しかも、後列シート5,6の設置部を荷物置きとして利用する際には、図3の仮想線で示すように、上記両シートクッション28,31上に長尺の荷物Mを水平状態で載置できるという利点がある。
【0037】
また、上記実施形態に示すように、運転席3の後方側に相対的に小型の第1後列シート5が設置される第1フロアパネル側部9を配設するとともに、上記助手席4の後方側に通常の大きさを有する第2後列シート6が設置される上記第2フロアパネル側部10を配設した場合には、上記助手席4が運転席3よりも前方に位置させることが可能であるので、上記第2後列シート6上に着座した高身長等からなる乗員の前方に充分なスペースを確保して、その居住性を効果的に向上させることができるという利点がある。
【0038】
特に、上記実施形態では、助手席4の前方側に位置する右側のダッシュ側部21を、上記運転席3の前方に位置する左側のダッシュ側部22よりも車両の前方側にオフセットさせて配設することにより、上記助手席4を運転席3よりもさらに前方へ移動させ得るように構成したため、上記第2後列シート6上に着座した乗員のその居住性を、より効果的に向上させることができる。
【0039】
さらに、上記実施形態では、第1フロアパネル側部9の下面に、その前後方向中間部に沿ってリヤサイドフレーム7の側壁面から上記トンネル部8に向けて車幅方向に延びるように中間クロスメンバ45を設置したため、この中間クロスメンバ45によって上記第1フロアパネル側部9を補強することにより、上記第1後列シート5の設置部を効果的に補強して、第2後列シート6の設置部と同等の剛性を確保できるという利点がある。
【0040】
すなわち、上記第1フロアパネル側部9に比べて下方に配設された上記第2フロアパネル側部10上に設置されることにより厚みを充分に確保することが可能な第2後列シート6のシートクッション31には、所定の強度を有するシートクッションフレーム32を配設することにより、車両の側突時に入力される荷重等に対する上記第2フロアパネル側部10の強度を充分に確保することができる。これに対して上記シートクッションフレームを配設することが困難な第1後列シート5の設置部に位置する上記第1フロアパネル側部9には、その下方に上記中間クロスメンバ45を設けることにより、上記第2フロアパネル側部10に比べて上方に位置する第1フロアパネル側部9の下方に形成された空間部を有効に利用して第2フロアパネル側部10を効果的に補強することができる。したがって、上記のように第1,第2フロアパネル側部9,10が左右非対称に形成されている場合においても、簡単な構成でその剛性を左右均等に確保できるという利点がある。
【0041】
上記第1フロアパネル側部9の下方に燃料タンク11の第1タンク部42を配設するとともに、上記第2フロアパネル側部10の下方に第2タンク部43を配設し、この第2タンク部43を上記第1タンク部42よりも大きな容量に形成するとともに、上記第1タンク部42に連通させてなる上記実施形態の構成によれば、上記のように底面の高さが異なる位置に設定された第1,第2フロアパネル側部9,10の下方空間を有効に利用して充分な容量を有する燃料タンク11を設置できるとともに、上記第1,第2タンク部42,43の下面を略同一高さに設定することができる。したがって、上記第1,第2タンク部42,43の下面の一方が下方に位置することに起因して損傷し易くなる等の弊害を生じることなく、上記燃料タンク11の容量を充分に確保できるという利点がある。
【0042】
また、上記実施形態では、図3に示すように、第1,第2フロアパネル側部9,10の下方に配設された第1,第2タンク部42,43と、トンネル部8内に配設された連通タンク部44とにより、上記燃料タンク11を鞍型形状に形成したため、上記第1,第2フロアパネル側部9,10およびトンネル部8の下方に位置するスペースを有効に利用して上記燃料タンク11の容量を充分に確保できるという利点がある。特に、上記連通タンク部44を逆U字状に形成した場合には、上記トンネル部8内に配設されたプロペラシャフト12、排気管13および補強フレーム14と上記燃料タンク11とが干渉するのを防止しつつ、この燃料タンク11の容量を効果的に増大できるという利点がある。
【0043】
なお、上記第1,第2フロアパネル側部9,10の下方に燃料タンク11の第1,第2タンク部42,43を配設してなる上記実施形態に代え、上記第1フロアパネル側部9の下方にリチウムイオンバッテリ等からなる車両用補機を配設するとともに、必要に応じて上記第1フロアパネル側部9の下方に配設された車両用補機よりも小型の車両用補機、例えば車両用制御ユニットボックス等を第2フロアパネル側部10の下方に配設することにより、第1,第2フロアパネル側部9,10の下方空間を有効に利用するように構成してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、第2後列シート6のシートバック36を、図5に示すように、その上下方向中間部に配設されたリクライニング機構37を介して揺動可能に支持されることにより、その設置角度を変更可能に構成したため、第1フロアパネル側部9および第2フロアパネル側部10の後方側に形成されたリヤフロアパネル16に上記シートバック36が干渉するのを防止しつつ、安楽姿勢が得られるように上記シートバック36の設置角度を変化させることにより、上記第2後列シートに乗員が長時間に亘って着座した場合においても疲れが生じるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0045】
上記第2フロアパネル側部10等の後方側に配設されたリヤフロアパネル16は、その前部下方にディファレンシャル17を設置するために上方へキックアップした状態で設置されているため、通常の乗員用シートと同様に下端部を支点としてそのシートバックを揺動変位させようとすれば、上記リヤフロアパネル16の前端部に設けられたキックアップ部15にシートバック36の下方部が干渉して、このシートバック36を大きく後傾させることができない。
【0046】
しかし、上記実施形態に示すように、上記シートバック36の上下方向中間部に配設されたリクライニング機構37の第2支持軸40を支点に上記シートバック36を揺動変位させるように構成した場合には、その下端部をシートクッション31の後端部近傍に位置させて、シートバック36の傾斜角度を比較的に小さくした通常の着座位置から、図5の仮想線で示すように、シートバック36の下端部をシートクッション31の後端部よりもやや前方に位置させて、シートバック36を大きく後傾させたリクライニング位置に変位させたとしても、上記シートバック36を、キックアップ部15との干渉を防止しつつ、大きく後傾させることが可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示す側面図である。
【図2】上記下部車体構造の実施形態を示す平面図である。
【図3】後列シートの設置状態を示す正面断面図である。
【図4】第1後列シートの具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】第2後列シートの具体的構成を示す側面断面図である。
【図6】リクライニング機構の具体的構成を示す分解斜視図である。
【図7】燃料タンクの設置部を上面から見た状態を示す説明図ある。
【図8】後部シートに乗員が着座した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車室
2 フロアパネル
3 運転席
4 助手席
5 第1後列シート
6 第2後列シート
7 リヤサイドフレーム
8 トンネル部
9 第1フロアパネル側部
10 第2フロアパネル側部
11 燃料タンク
42 第1タンク部
43 第2タンク部
44 連通タンク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室のフロアパネル上に運転席および助手席からなる左右一対の前列シートが並設されるとともに、この前列シートの後方に左右一対の後列シートが並設され、かつフロアパネルの左右両側部には、車体の前後方向に延びるリヤサイドフレームが設置された車両において、上記フロアパネルの車幅方向中央部には、車室内側に向けて突出するトンネル部が車両の前後方向に延びるように設置され、このトンネル部の車幅方向の一方側には、第1後列シートの設置部となる第1フロアパネル側部が配設されるとともに、上記トンネル部の車幅方向の他方側には、第2後列シートの設置部となる第2フロアパネル側部が配設され、かつ上記第1フロアパネル側部の底面がリヤサイドフレームの底面よりも上方に位置するとともに、上記第2フロアパネル側部の底面がリヤサイドフレームの底面よりも下方に位置するように配設され、上記第1後列シートは、第2後列シートよりも小型に形成され、少なくとも上記第1フロアパネル側部の下方に車両用補機が配設されたことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記運転席の後方側に第1フロアパネル側部が配設され、上記助手席の後方側に第2フロアパネル側部が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記第2フロアパネル側部の下方に、上記第1フロアパネル側部下方の車両用補機よりも小型の車両用補機が配設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記車両補機が燃料タンクであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記燃料タンクは、第1フロアパネル側部の下方に配設された第1タンク部と、上記第2フロアパネル側部の下方に配設された第2タンク部とを備え、上記第1タンク部が第2タンク部よりも大きな容量を有するとともに、上記第1タンクに連通されたことを特徴とする請求項4に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記燃料タンクは、上記第1タンク部および第2タンク部と、トンネル部内に配設されて連通タンク部とにより鞍型形状に形成されたことを特徴とする請求項5に記載の車両の下部車体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−76671(P2010−76671A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249083(P2008−249083)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】