説明

車両の下部車体構造

【課題】この発明は、車両衝突時等におけるトンネル部の変形と車両走行時のフロアパネルの振動を抑制でき、且つ車体の捩れに対する車体剛性を向上させることができる車両の下部車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車室1内の底面を形成するフロアパネル3と、該フロアパネル3から上方に立ち上がるように配設されたダッシュパネル2と、車幅方向略中央にてフロアパネル3から車室1内に突出するトンネル部10と、該トンネル部10を跨いで配設されたクロスメンバ13、14とを備えた車両の下部車体構造であって、トンネル部10の、クロスメンバ13、14と車両前後方向において対応する位置に、該クロスメンバ13、14を略直線状に接続するプレート部材26、30と、トンネル部内10の側面に沿って配設されると共にクロスメンバ13、14を接続するガセット24、25とを配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内の底面を形成するフロアパネルから車室内に突出するトンネル部を備えた車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の下部車体構造としては、フロアパネルの車幅方向中央に車体内方側に凸設されて車両の前後方向に延びるトンネル部を備えたものが知られている。
【0003】
しかしながら、このように車体下部にトンネル部を備えた場合、車体の剛性低下を招くという問題があった。トンネル部を備えたことによる車体剛性の低下は、車両走行時、トンネル部の左右に位置するフロアパネルの振動を増大させ、フロアパネル上の乗員に対して不快感を与える虞がある。また、車体剛性の低下は、車体の捩れに対する剛性低下を招いたり、車両走行時の振動や車両衝突に伴ってトンネル部の下部の開口側が車幅方向に開く等の変形を招いたりする。
【0004】
ところで、従来、フロアパネルの車幅方向中央にトンネル部を備えたものにおいて、車幅方向に延びるクロスメンバを、トンネル部を跨ぐようにして配設したものが提案されている(下記特許文献1参照)。この場合、車幅方向に延びるクロスメンバによって、トンネル部を含む車体下部の剛性を向上させることができるという効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−321139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来技術では、車体下部の剛性を確保するのに必ずしも十分とは言えなかった。
【0007】
この発明は、車両衝突時等におけるトンネル部の変形と車両走行時のフロアパネルの振動を抑制でき、且つ車体の捩れに対する車体剛性を向上させることができる車両の下部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両の下部車体構造は、車室内の底面を形成するフロアパネルと、該フロアパネルから上方に立ち上がるように配設されたダッシュパネルと、前記フロアパネル上において車室内に突出するトンネル部と、該トンネル部を跨いで配設されたクロスメンバとを備えた車両の下部車体構造であって、前記トンネル部の、前記クロスメンバと車両前後方向において対応する位置に、該クロスメンバを略直線状に接続する第1トンネルメンバと、前記トンネル部内の側面に沿って配設されると共に前記クロスメンバを接続する第2トンネルメンバとを配設したものである。
【0009】
この構成によれば、トンネル部と第1トンネルメンバとにより略環状の構造体が構成されることになる。このため、車両走行時のフロアパネルの振動や車両衝突等に伴うトンネル部の変形を抑制することができる。
さらに、クロスメンバを接続する第2トンネルメンバがトンネル部に沿って配設されることにより、第2トンネルメンバが、トンネル部において車幅方向に連続する補強部材となる。このため、車体の捩れに対する車体剛性を向上させることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、前記クロスメンバが、前記車室内の側部開口を形成するピラーと車両前後方向において対応する位置に配設されているものである。
【0011】
この構成によれば、ピラーと、クロスメンバと、第1、第2トンネルメンバ等により、略環状の構造体が構成されることになる。このため、車両の側突時には、一方のピラーからクロスメンバ、第1、第2トンネルメンバ等を介して側突荷重を車幅方向の反対側に効率的に分散することができる。さらに、車両走行時のフロアパネルの振動を効率よくピラーに分散することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、前記ピラーと対応するクロスメンバの前方に、前クロスメンバが配設され、前記クロスメンバ及び前記前クロスメンバには、座席を支持する支持部が設定されたものである。
【0013】
この構成によれば、第1、第2トンネルメンバによって補強された位置で座席を支持することができ、その支持剛性を向上させることができる。このため、車両走行時のフロアパネル振動によって該フロアパネル上の座席に着座した乗員に与える不快感を低減でき、換言すれば、上記座席に着座した乗員に車体の剛性感を直接的に体感させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記フロアパネルと前記ダッシュパネルとが接続される接続部と対応する位置に、前記トンネル部を略直線状に接続する補助メンバが配設されたものである。
【0015】
この構成によれば、フロアパネルとダッシュパネルとの継ぎ目となる接続部の剛性を確保することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記補助メンバと前記第1トンネルメンバとを、前記トンネル部を塞ぐように接続したものである。
【0017】
この構成によれば、車体剛性をより向上させることができる。そして、トンネル部の前部を通って外側へと向かう流速の遅い空気と、流速の速い車両前方からの走行風とが干渉することを抑制でき、トンネル部の前部で渦が発生することを防止できる。従って、車両の下部における空気の乱れを抑制でき、車両の空力性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、トンネル部と第1トンネルメンバとにより略環状の構造体が構成されることになる。このため、車両走行時のフロアパネルの振動や車両衝突等に伴うトンネル部の変形を抑制することができる。
さらに、クロスメンバを接続する第2トンネルメンバがトンネル部に沿って配設されることにより、第2トンネルメンバが、トンネル部において車幅方向に連続する補強部材となる。このため、車体の捩れに対する車体剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施形態に係る車両の下部車体構造を示す後方斜視図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1の底面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】図4のB−B線矢視断面図。
【図6】図4のC−C線矢視断面図。
【図7】図4のD−D線矢視断面図。
【図8】本発明の作用効果を説明するための後方斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1〜図7に示すように、本実施形態に係る車両Vは、その前部において、エンジンルームEと車室1と仕切るダッシュパネル2と、車室1の底面を形成するフロアパネル3とを備え、ダッシュパネル2は、フロアパネル3から立ち上がるように配設されている。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。また、車両Vの側部構造は略左右対称であるため、図1では、図示の便宜上左側の側部のみを示している。
【0021】
また、車両Vは、フロアパネル3の左右に、車両前後方向に延設された一対のサイドシル4と、サイドシル4の前端部から上方に延びるフロントドア(不図示)用のヒンジピラー5と、サイドシル4の車両前後方向中間部から上方に延びるセンターピラー6と、ピンジピラー5の上端から後方かつ上方に延びるフロントピラー7と、該フロントピラー7の後端部に接続されて車両前後方向に延び、一部がセンターピラー6の上端部と接続されたルーフサイドレール8を備えている。
【0022】
本実施形態では、上述したサイドシル4と、ヒンジピラー5と、センターピラー6と、フロントピラー7と、ルーフサイドレール8とにより、側部開口部9を形成している。
【0023】
また、ダッシュパネル2及びフロアパネル3の車幅方向中央には、前端部がダッシュパネル2に接続されると共に、フロアパネル3から車体内方側の車室1に向かって凸設されたトンネル部10を備えている。トンネル部10は、その車幅方向中央が上述したように車体内方側に向かって凸設された形状をなす一方、その両側には断面が略ハット状に成形されたトンネルフレーム部10aを有しており、このトンネルフレーム部10aとフロアパネル3との接合により、両者間で車両前後方向に延びる閉断面部10Aを形成している。
【0024】
また、フロアパネル3において、サイドシル4とトンネル部10との間には、車両前後方向に延びるフロアフレーム11、11が配設され、その前端部が、図2〜図4に示すようにエンジンルームEにおいて車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム12の後端部に接続されている。
【0025】
フロアフレーム11、11は、フロアパネル3の上面側において車室1側、すなわち車体内方側に凸設された断面ハット状の上側フレーム11aと、フロアパネル3の下面側において車体外方側に凸設された断面ハット状の下側フレーム11bとにより構成されている。そして、これら上側フレーム11a、及び下側フレーム11bとフロアパネル3とにより、車両Vの下部では、車両前後方向に延びる閉断面部11A、11B(図1、図5〜図7参照)が形成されている。
【0026】
また、図1、図2、図6、図7に示すように、フロアパネル3には、トンネル部10を跨ぐようにして車幅方向に延びるクロスメンバ13、14が備えられ、該クロスメンバ13、14によってトンネル部10がサイドシル4に接続されている。ここで、上述したフロアフレーム11のうち、上側フレーム11aは、ダッシュパネル2から車両前側のクロスメンバ13の前端部の位置まで延びる一方、下側フレーム11bは、クロスメンバ13の後方に位置するクロスメンバ14よりさらに後方まで延びている。
【0027】
クロスメンバ13、14は、いずれもフロアパネル3の上面側において車体内方側に凸設された断面ハット状のフレーム部材であり、クロスメンバ13は、トンネル部10の側面に接合するためのフランジ部13aと、フロアパネル3に接合するためのフランジ部13bと、サイドシル4に接合するためのフランジ部13cとを有する一方、クロスメンバ14は、フロアパネル3に接合するためのフランジ部14aを備えている。そして、これらクロスメンバ13、14とフロアパネル3との間には、トンネル部10からサイドシル4に亘って車幅方向に延びる閉断面部13A、14A(図6、図7参照)が形成されている。
【0028】
また、クロスメンバ13は、車両前後方向において側部開口部9と対応する位置に配設される一方、クロスメンバ14は、センターピラー6と対応する位置に配設されている。
【0029】
また、クロスメンバ14では、その上面部の車幅方向両端部に、略箱型をなすシートブラケット15A、15Bが配設されている。シートブラケット15A、15Bは、それぞれフランジ部15a、15bを有しており、トンネル部10、サイドシル4に接合されている。
【0030】
また、車室1には、図2に示すように、二点鎖線で示す前席(座席)16、16を車両前後方向に移動可能に支持するシートレール部材17が配設され、クロスメンバ13、14の間には、シートレール部材17のロアレール17aが配設されている。ロアレール17aは、前席16の車幅方向両側にて車両前後方向に延びるように平行に2本配設されており、クロスメンバ13では、ロアレール17aの前端部をボルト、ナット等の締結部材18によって上面部に直接固定している。一方、クロスメンバ14では、ロアレール17aの後端部を締結部材19によってシートブラケット15A、15Bに固定している。
【0031】
ところで、図1、図2では、便宜上図示を省略したが、車両Vの下部では、その前側において、図3、図4に示すように、エンジンルームEと対応する位置に前輪用のサスペンション(不図示)を支持するためのサスペンションクロスメンバ(以下、サスクロス)20が配設されている。このサスクロス20は、主に車両前後方向に延びる左右一対の縦メンバ20A、20Aと、車幅方向に延びて縦メンバ20A、20A同士を接続する横メンバ20Bとを有している。
【0032】
このようにサスクロス20を構成する各メンバ20A、20Bは、いずれも、図4に示す横メンバ20Bのように、上下のパネル20a、20bを接合することによって閉断面部20Cが形成された管状のフレーム部材とされている。
【0033】
また、図3、図4に示すように、ダッシュパネル2の後端部とフロアパネル3の前端部との接続部Xには、トンネル部10とフロアフレーム11との間にレインフォースメント21が配設され、レインフォースメント21とダッシュパネル2またはフロアパネル3との間で閉断面部を形成している。また、接続部Xには、フロアフレーム11とサイドシル4との間にトルクボックス22が配設されている。
【0034】
また、トンネル部10では、図1、図3〜図7に示すように、トンネル部10の車体外方側において、トンネル部10の形状に沿って車体外方側に凸設された3つのガセット23、24、25が配設されている。
【0035】
このうち、トンネル部10の前端部、すなわち接続部Xと略対応する位置には、図1、図3〜図5に示すように、前ガセット23が配設されている。
【0036】
前ガセット23は、トンネル部10の車体外方側の側面及び上面に亘ってトンネル部10に沿うように配設されている。また、前ガセット23は、トンネル部10の側面及び上面から離間して車体外方側に凸設された突出部23aと、縁部を形成するフランジ部23bとを有している。そして、前ガセット23は、フランジ部23bによってトンネル部10の側面及び上面に接合され、これによって、トンネル部10と突出部23aとの間には車幅方向に沿って閉断面部23Aが形成されている。
【0037】
また、車両前後方向においてクロスメンバ13と対応する位置には、図1、図3、図4、図6に示すように、左右のクロスメンバ13を接続する中間ガセット24が配設されている。中間ガセット24は、前ガセット23と同様、トンネル部10の車体外方側の側面及び上面に亘ってトンネル部10に沿うように配設されており、中間ガセット24が設けられる位置では、その車体内方側にクロスメンバ13が配設されている。このような構成により、中間ガセット24はクロスメンバ13を介してサイドシル4に接続されている。
【0038】
また、中間ガセット24は、トンネル部10の側面及び上面から離間して車体外方側に凸設された突出部24aと、縁部を形成するフランジ部24bとを有している。そして、中間ガセット24は、フランジ部24bによってトンネル部10の側面、上面、及びトンネルフレーム部10aの底面部に接合され、トンネル部10と突出部24aとの間には車幅方向に沿って閉断面部24Aが形成されている。
【0039】
そして、前ガセット23と中間ガセット24との間では、トンネル部10の前部を塞ぐように平板状のプレート部材26が配設されている。プレート部材26は、車幅方向両端部がトンネル部10のトンネルフレーム部10aの底面部に接合されており、これによって、プレート部材26の前端部では、接続部Xと対応する位置でトンネル部10の下部同士を略直線状に接続すると共に、プレート部材26の後端部では、クロスメンバ13を略直線状に接続している。
【0040】
また、プレート部材26には、複数の孔部26aが形成されており、孔部26aによって、部品の軽量化を図りつつ、トンネル部10の内部に配設される排気系(不図示)等との干渉を回避すると共に、エンジンルームEからトンネル部10の内部に入り込んだ空気(熱気)によるトンネル部10内の温度上昇を抑制しており、トンネル部10を冷却することが可能になっている。一方、プレート部材26には、その車両前後方向両端に車幅方向に延びるビード26b、26cが形成され、これによって剛性が確保されている。
【0041】
また、プレート部材26の前端部、すなわち接続部Xと車両前後方向において対応する位置であって、且つ前ガセット23と対応する位置には、図3〜図5に示すように車幅方向に延びてトンネル部10の下部同士を接続する補助メンバ27が配設されている。補助メンバ27は、車体外方側に凸設された断面ハット状の部材であり、その前後のフランジ部27aにおいてプレート部材26の前端部に接合されると共に、車幅方向両側では、ボルト、ナット等の締結部材28によって、プレート部材26と併せてトンネルフレーム部10aに締結されている。
【0042】
また、補助メンバ27の前側のフランジ部27aには、ガイド部材29の後端部が接合されている。ガイド部材29は、図3、図4に示すように略平板状をなしており、その前端部がサスクロス20を構成する横メンバ20Bの下パネル20bに接合されている。これにより、横メンバ20Bは、ガイド部材29及び補助メンバ27を介してプレート部材26に接続されている。そして、ガイド部材29は、図4に示すようにプレート部材26とによって略連続した平面を形成しており、車両走行時には、ガイド部材29やプレート部材26のガイドによって、走行風が、図4中実線の矢印αで示すように車体の下方を車両前方から後方に向かって略真っ直ぐ流れるようになっている。
【0043】
さらに、ガイド部材29には、車幅方向に延びるスリット29aが車両前後方向に整列するように複数形成されている。ここで、トンネル部10内には、エンジンにより熱せられた熱気が、図4中破線の矢印βで示すように、エンジンルームEから流れ込み、トンネル部10が温められることになるが、ガイド部材29の孔部29aによってトンネル部10内やエンジンルームE内を冷却することが可能になっている。
【0044】
また、クロスメンバ14と車両前後方向において対応する位置には、図1、図3、図4、図7に示すように、後ガセット25が配設されている。後ガセット25は、前ガセット23等と同様、トンネル部10の車体外方側の側面及び上面に亘ってトンネル部10に沿うように配設されており、後ガセット25が設けられる位置では、その車体内方側にクロスメンバ14が配設されている。このような構成により、後ガセット25はクロスメンバ14を介してサイドシル4に接続されている。
【0045】
また、後ガセット25は、トンネル部10の側面及び上面から離間して車体外方側に凸設された突出部25aと、縁部を形成するフランジ部25bとを有している。そして、後ガセット25は、フランジ部25bによってトンネル部10の側面、上面、及びトンネルフレーム部10aの底面部に接合され、トンネル部10と突出部25aとの間には車幅方向に沿って閉断面部25Aが形成されている。
【0046】
そして、後ガセット25の下方には、その車両前後方向の位置に対応して、平板状のプレート部材30が配設されている。プレート部材30は、車幅方向両端部がトンネル部10のトンネルフレーム部10aの底面部に接合されており、これにより、トンネル部10の下部同士を接続すると共に、クロスメンバ14を略直線状に接続している。
【0047】
ところで、前席16、16は、図2、図6、図7に示すように、シートクッション16aと、シートバック16bとヘッドレスト16cとを有しており、そのうちシートクッション16aの底面部には、シートレール部材17のアッパレール17bが取付けられている。
【0048】
シートレール部材17のうち、ロアレール17aは、図6、図7に示すように上方が開放された断面コ字状の部材であり、ロアレール17aの溝部にアッパレール17bが嵌合している。そして、アッパレール17bは、ロアレール17aによって車両前後方向にスライド可能に支持されており、アッパレール17aを前後にスライドさせることで、シートクッション16aを含む前席16を車両前後方向に移動させることが可能になっている。
【0049】
本実施形態では、クロスメンバ13、14が、シートレール部材17を介して前席16を支持しており、ロアレール17aの前端部を固定するクロスメンバ13の上面部、及びロアレール17aの後端部を固定するシートブラケット15A、15Bが、前席16を支持する支持部に設定されている。
【0050】
なお、図5〜図7に示す部材41、42は、サイドシル4を構成するサイドシルインナ、サイドシルアウタであり、これらサイドシルインナ41、サイドシルアウタ42の接合により、車両前後方向に延びる閉断面部4Aを形成している。
【0051】
このように、本実施形態では、車両前後方向においてクロスメンバ13、14と対応する位置に、クロスメンバ13、13を略直線状に接続するプレート部材26、及び左右のクロスメンバ14、14を略直線状に接続するプレート部材30を設けることにより、トンネル部10と各プレート部材26、30によって略環状の構造体が構成されることになる。このため、車両走行時のフロアパネル3の振動や車両衝突等に伴うトンネル部10の変形を抑制することができる。
【0052】
さらに、クロスメンバ13、13を接続する中間ガセット24、クロスメンバ14、14を接続する後ガセット25がトンネル部10に沿って配設されることにより、これら各ガセット24、25が、トンネル部10において車幅方向に連続する補強部材となる。このため、車体の捩れに対する車体剛性を向上させることができる。
【0053】
また、後ガセット25に関し、これを車両前後方向においてセンターピラー6と対応する位置に配設されたクロスメンバ14に接続したことで、センターピラー6と、クロスメンバ14と、後ガセット25と、プレート部材26と、図8中二点鎖線で示すように車両Vの上部でルーフサイドレール8、8を接続するルーフパネル31とにより、略環状の構造体が構成されることになる。
【0054】
このため、車両の側突時には、図8中太矢印γで示すように、一方のセンターピラー6からクロスメンバ14、後ガセット25、プレート部材30等を介して側突荷重を車幅方向の反対側に効率的に分散することができる。さらに、車両走行時のフロアパネル3の振動を効率よくセンターピラー6に分散することができる。
【0055】
また、クロスメンバ13、14において、前席16を支持するための支持部が設定されることにより、中間ガセット24、後ガセット25、及びプレート部材26、30によって補強された位置(図8中丸印δで示す位置)で前席16を支持することができ、その支持剛性を向上させることができる。このため、車両走行時のフロアパネル3の振動によって該フロアパネル3上の前席16に着座した乗員に与える不快感を低減することができ、換言すれば、前席16に着座した乗員に車体の剛性感を直接的に体感させることができる。
【0056】
また、ダッシュパネル2とフロアパネル3との接続部Xと対応する位置で、トンネル部10の下部を略直線状に接続する補助メンバ27を配設したことにより、両パネル2、3の継ぎ目となる接続部Xの剛性を確保することができる。ここで、前席16に乗員が着座した時、その足は、一般的に図8中足形の印εで示す位置に置かれることが多く、その位置は接続部Xの近傍の位置となる。従って、上述したように接続部Xの剛性を確保することで、乗員に車体の剛性感を足先で直接的に体感させることができる。
【0057】
そして、トンネル部10の下部を略直線状に接続する補助メンバ27を配設したことで、補助メンバ27と、フロアパネル3(ダッシュパネル2)と、ヒンジピラー5と、フロントピラー7と、ルーフサイドレール8とルーフパネル31とにより、略環状の構造体が構成されることになる。
【0058】
このため、車両の側突時には、図8中太矢印ζで示すように、一方のヒンジピラー5からフロアパネル3、補助メンバ27等を介して側突荷重を車幅方向の反対側に効率的に分散することができる。
【0059】
また、補助メンバ27とプレート部材26とを、トンネル部10の前部においてその下部を塞ぐように接続したことで、車体剛性をより向上させることができる。そして、本実施形態では、エンジンルームEからトンネル部10内に流れ込んだ流速の遅い熱気が、トンネル部10の前部において、その下方の外側に流れようとするが、図示のように、ガイド部材29やプレート部材26によってガイドされることで熱気が下方へ移動することを阻止される。このため、上記熱気は、トンネル部10の下方の外側へ流れることなく、該トンネル部10の下部を後方に向かって略真っ直ぐ流れる。
【0060】
この結果、車体下方を流れる流速の速い走行風と、エンジンルームEからトンネル部10に流れ込む熱気との干渉が抑制され、略平行に後方へと流れることになる。
【0061】
このように、本実施形態では、トンネル部10の前部にプレート部材26やガイド部材29を設けることにより、エンジンルームEからトンネル部10の前部を通って外側へと向かう熱気と、車両前方からの走行風とが干渉することを抑制できるため、両者の干渉に起因してトンネル部10の前部で渦が発生することを防止できる。従って、車両Vの下部における空気の乱れを抑制でき、車両Vの空力性能の向上を図ることができる。
【0062】
なお、上述したガイド部材29は、主に車両Vの下方の走行風をガイドする役割を果たす一方で、プレート部材26は、上記走行風をガイドする役割の他、上述したようにフロアパネル3の振動抑制、トンネル部10の変形抑制、及び車体の捩れに対する車体剛性向上の役割も果たしている。このため、プレート部材26自身の剛性(板厚)は、ガイド部材29の剛性(板厚)よりも大きく(厚く)設定されている。
【0063】
また、本実施形態では、特に補助メンバ27が前ガセット23と対応する位置に配設されると共に、プレート部材26が、前後のガセット23、24の間において、トンネル部10の下部を接続するように構成されることで、トンネル部10の補強が確実に行え、車体剛性を簡素な構成にて向上させることができる。
【0064】
また、補助メンバ27を、トンネル部10の下部のトンネルフレーム部10aに接合することで、車体剛性向上の効果をより高めることができる。
【0065】
また、中間ガセット24に関し、これをクロスメンバ13を介してサイドシル4に接続することで、前ガセット23、中間ガセット24、補助メンバ27、及びプレート部材26によるトンネル部10の補強を相乗的に行うことができる。
【0066】
そして、この場合、車両の側突時には、図8中太矢印ηで示すように、一方のサイドシル4からフロアパネル3、クロスメンバ13、中間ガセット24、プレート部材26等を介して側突荷重を車幅方向の反対側に効率的に分散することができる。
【0067】
また、本実施形態では、ダッシュパネル2に接続されるトンネル部10の前端部と、前側のクロスメンバ13との間の略中間部に接続部Xが位置している。ここで、仮に、前ガセット23が配設されていない構成を想定すると、この場合、車両走行時には、トンネル部10の前端部及びクロスメンバ13に対応する中間ガセット24が振動の節となり、接続部Xが振動の腹となって、乗員は自身の足先で振動を感じ易くなってしまう。そこで、本実施形態のように、接続部Xに対応する位置で前ガセット23を配設することにより、乗員に車体の剛性感を直接的に体感させることができる。
【0068】
なお、上述した実施形態では、センターピラー6と対応する位置に配設されたクロスメンバ14にガセット25を設けることとしたが、例えば、ワゴンやミニバン等、3列以上の座席が車室内に配設される車両の場合には、いわゆるBピラーやCピラーに対応する位置に配設されるクロスメンバにガセットを設けてもよい。
【0069】
また、補助メンバ27は、必ずしも前ガセット23と対応する位置に配設する必要はなく、前ガセット23、中間ガセット24の少なくとも一つに対応して配設されていればよい。従って、中間ガセット24と対応する位置に配設してもよいし、前ガセット23、中間ガセット24の両者に対応して補助メンバを配設してもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、前ガセット23とフロアフレーム11とが接続されていない構成となっているが、例えば、レインフォーシメント21と前ガセット23とを接続する等にして前ガセット23とフロアフレーム11とを接続してもよい。
【0071】
また、トンネル部10において、トンネルフレーム部10aを一体的に形成することに必ずしも限定されず、別部材でトンネルフレームを設けてもよい。
【0072】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、第1トンネルメンバは、プレート部材26、30に対応し、
以下同様に、
第2トンネルメンバは、中間ガセット24、後ガセット25に対応し、
ピラーは、センターピラー6に対応し、
前クロスメンバは、クロスメンバ13に対応し、
支持部は、クロスメンバ13の上面部、シートブラケット15A、15Bに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
2…ダッシュパネル
3…フロアパネル
6…センターピラー
10…トンネル部
13、14…クロスメンバ
15A、15B…シートブラケット
24…中間ガセット
25…後ガセット
26、30…プレート部材
27…補助メンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の底面を形成するフロアパネルと、
該フロアパネルから上方に立ち上がるように配設されたダッシュパネルと、
車幅方向略中央にて前記フロアパネルから車室内に突出するトンネル部と、
該トンネル部を跨いで配設されたクロスメンバとを備えた車両の下部車体構造であって、
前記トンネル部の、前記クロスメンバと車両前後方向において対応する位置に、該クロスメンバを略直線状に接続する第1トンネルメンバと、
前記トンネル部内の側面に沿って配設されると共に、前記クロスメンバを接続する第2トンネルメンバとを配設した
車両の下部車体構造。
【請求項2】
前記クロスメンバは、前記車室内の側部開口を形成するピラーと車両前後方向において対応する位置に配設されている
請求項1記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
前記ピラーと対応する位置に配設されたクロスメンバの前方に、前クロスメンバが配設され、
前記クロスメンバ及び前記前クロスメンバには、座席を支持する支持部が設定された
請求項2記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
前記フロアパネルと前記ダッシュパネルとが接続される接続部と対応する位置に、前記トンネル部を略直線状に接続する補助メンバが配設された
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
前記補助メンバと前記第1トンネルメンバとを、前記トンネル部を塞ぐように接続した
請求項4記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−11856(P2012−11856A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148949(P2010−148949)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】