説明

車両の乗員保護手段を駆動する制御装置、および、車両の乗員保護手段の駆動方法

本発明は、車両バッテリ電圧に応じた振幅を有する少なくとも1つの信号の受信に用いられるインタフェースと、当該の少なくとも1つの信号に基づいて乗員保護手段を駆動する駆動回路とが設けられている、車両の乗員保護手段を駆動する制御装置、ならびに、車両の乗員保護手段の駆動方法に関する。本発明によれば、インタフェースは、信号検出のために、当該の制御装置内で形成される給電電圧(自給モード・電圧不足・接触不良の際にも維持される補助電圧)から少なくとも1つの切換閾値を導出する回路を含み、この切換閾値はバッテリ電圧から導出されるかまたはバス電圧の振幅から導出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載された、車両の乗員保護手段を駆動する制御装置および車両の乗員保護手段の駆動方法に関する。
【0002】
独国公開第10354602号明細書から、乗員保護手段を駆動する制御装置と車両シートに配置された重量測定のための接続素子とのあいだのデータ通信をLINバスによって実現することが公知である。LINバスは有利にはシングルワイヤバスとして構成される。接続素子からの信号により乗員の識別が行われ、その結果に応じて乗員保護手段が制御装置によって駆動される。
【0003】
本発明の制御装置および本発明の制御方法は、従来技術に比べて、いわゆる自給モード(オータルキーモード)でもインタフェースを介した通信が保証されるという利点を有する。自給モードとは、典型的には、事故によって車両バッテリが破壊されるような場合に発生する。また、車両バッテリ電圧の接触に問題が発生した場合にも本発明の手段は同様に役立つ。
【0004】
制御装置内で形成された給電電圧または受信信号(例えばバス電圧)そのものの振幅から切換閾値を導出することにより、到来する信号を簡単かつ安定に識別することができる。自給モード以外(非自給モード)では、切換閾値は車両バッテリ電圧から直接に導出される。
【0005】
本発明によれば、例えばLIN規格の仕様範囲が完全にカバーされる。本発明によれば、設計時にLIN規格の有効範囲を狭めることなく非常動作特性が達成される。本発明のインタフェースおよび方法によれば、困難な電圧特性のもとでローバストな信号識別が可能となる。
【0006】
当該の信号閾値の導出はバス電圧から直接に行うこともできる。このために、適切な時定数を有する通常のピーク電圧回路によって定常状態でのバス電圧が求められ、後置された分圧器によってデータ切換閾値が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車両の制御装置のブロック図である。
【図2】別の制御装置から本発明の制御装置が信号を受信する様子を示す図である。
【図3】本発明の回路の第1の実施例を示す図である。
【図4】本発明の回路の第2の実施例を示す図である。
【図5】本発明の回路の第3の実施例を示す図である。
【図6】本発明の方法のフローチャートを示す図である。
【0008】
本発明によれば、LIN規格以外の機能を可能にするためのインタフェースの付加的コストを節約できる。LIN規格では例えばバッテリ電圧8V〜18Vが挙げられている。
【0009】
自給モードまたは接触不良の際に欠落する車両バッテリ電圧は通常は切換閾値の定義に用いられ、固定の内部の切換閾値によってシミュレートされる。これにより、LINバスシステムにおける通信が可能となる。
【0010】
制御装置は、例えば評価アルゴリズムにしたがってセンサ信号を処理し、車両の乗員保護手段を駆動する制御信号を形成する電気装置である。本発明で云う"駆動"とは乗員保護手段を作動させることを意味する。この作動は例えば段階的に行うことができる。乗員保護手段としてはエアバッグやシートベルトテンショナーが挙げられるが、走行ダイナミクス制御装置または自動制動装置などのアクティブな乗員保護手段を含めることもできる。
【0011】
インタフェースとしてはハードウェアまたはソフトウェアが考えられる。またインタフェースはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせから形成されていてもよい。ハードウェアとして、集積回路、離散的回路またはこれらの組み合わせが挙げられる。なお、インタフェースは、マイクロコントローラなどのプロセッサ上のソフトウェアモジュールによって形成されていてもよい。
【0012】
受信信号は前述したように例えばLINバス信号LINである。しかし他のバス信号であってもよい。ポイントツーポイントコネクションから例えば電流インタフェースを介して到来する信号が、本発明で云う信号として用いられる。当該の信号は複数の信号を多重化した信号であってもよい。当該の信号は通常は車両バッテリ電圧の振幅から導出されるため、電圧欠落の場合には変動が生じる。当該の信号の振幅により信号を検出するための切換閾値を導出することができる。
【0013】
駆動回路はハードウェアまたはソフトウェアのどちらから構成されていてもよい。駆動回路は受信信号を評価するのみならず、乗員保護手段に対する制御信号を形成する。ここで、駆動回路は、例えば、マイクロコントローラと乗員保護手段の点火電流をオンに切り換えるパワースイッチに作用する回路とを有する。
【0014】
本発明の回路はハードウェアから構成されていてもソフトウェアから構成されていてもよい。特に、当該の回路は、集積回路の一部として設けられる。信号検出部は信号の受信時に当該の信号を評価することのできる重要な動作部である。例えば、ディジタル信号では0と1とのあいだに確実な差を形成しなければならない。このために切換閾値が用いられる。こうした切換閾値は確実に導出しなければならない。このために、本発明によれば、制御装置内で形成される給電電圧またはその信号振幅が用いられる。制御装置内で形成される給電電圧はローバストであり、車両バッテリが破壊された場合の自給モードではエネルギリザーブ部から形成される。
【0015】
従属請求項に記載された手段および態様により、独立請求項に記載された車両の乗員保護手段の制御方法および車両の乗員保護手段の制御装置の有利な改善形態が得られる。
【0016】
有利には、給電電圧をディジタル値として形成する給電モジュールが設けられている。制御装置では、複数のディジタル値、例えば5Vおよび3.3Vが必要とされ、制御装置の各モジュールにエネルギが供給される。このことは給電モジュールにより達成される。給電モジュールは例えばアップコンバータ、ダウンコンバータおよびリニアレギュレータを有する。これらの変換器は例えばスイッチング変換器として構成される。乗員保護手段を駆動する制御装置内のエネルギリザーブ部はきわめてローバストに構成されているので、給電電圧から切換閾値を形成して信号検出に利用すると有利である。制御装置用の給電モジュールの形成したディジタルの電圧値は切換閾値を導出する確実な基礎である。
【0017】
有利には、インタフェースは回路および給電モジュールとともに集積回路ASICを形成する。これにより、こうした制御装置のための集積回路をきわめて低コストに、しかも信頼性高く製造することができる。給電モジュールおよび本発明の回路を備えたインタフェースのほか、他の機能部を集積回路に設けることもできる。例えばエアバッグなどにおいて、マイクロコントローラに対してセンサ信号の冗長検査を行うことが挙げられる。こうしていわゆるセーフティコントローラが実現され、センサ信号の冗長評価により制御装置に必要な安全性が達成される。ここで、点火回路は前述したいわゆる駆動状況が確認された場合にのみイネーブルされる。他のインタフェースおよび他の機能部が本発明の集積回路に含まれていてもよい。
【0018】
また、有利には、比較器により、切換閾値を用いた判別が行われる。例えば、第1の比較器の第1の入力側に少なくとも1つの第1の抵抗および少なくとも1つの第1のダイオードを介して給電電圧が印加され、さらに同じ入力側に車両バッテリ電圧が印加されることにより、高い値を有する少なくとも1つの切換閾値が第1の比較器で形成される。ダイオードを順方向で使用することにより、他より低い電圧を有する分岐が阻止される。これにより、自給モードでは、ダイオード、抵抗および給電電圧を有する分岐が支配的となる。少なくとも1つの抵抗および少なくとも1つのダイオードが使用される。これに代えて、複数のモジュールを使用することもできる。また、第1の比較器の第1の入力側は少なくとも1つの抵抗を介してアースに接続されている。適切なヒステリシスを形成するために、別の抵抗を用いてもよい。こうした別の抵抗は、アースに接続された抵抗に直列に接続される。
【0019】
これに代えて、2つの比較器を用い、第1の比較器によってバッテリ電圧から切換閾値を形成し、第2の比較器によって選択された給電電圧から切換閾値を形成することもできる。バッテリ電圧が破壊されると、バッテリ電圧から切換閾値を導出している第1の比較器はつねに論理1を出力し、自給モードでの第2の比較器の第2の出力信号による丸めを阻害しない。つまり、第2の比較器が論理1を出力していれば、判別結果は論理1となる。第2の比較器が給電電圧から切換閾値を導出する場合、論理0が出力され、判別結果は論理0となる。"給電電圧からの導出"とは、給電電圧を直接利用することは意味せず、給電電圧から導出された中間値または算出値が用いられる。ただし、実施形態によっては、給電電圧を直接利用することもできる。
【0020】
有利には、ヒステリシス回路により切換閾値が形成される。切換閾値としてのヒステリシスは固定の切換閾値に対して大きなローバスト性を有する。ヒステリシスを実現するために、当分野の技術者に知られた回路を用いることもできる。
【0021】
有利には、インタフェースが修正され、自給モードでデータを送信できるように構成される。このためにいわゆるプルアップ回路が用いられる。プルアップ回路は、有利には、給電電圧ないしそこから導出された電圧を、少なくとも1つの抵抗およびダイオードを介して、伝送線路すなわちLINバスへ伝達する。この電圧は情報内容によって変調される。
【0022】
本発明の実施例を図示し、以下に詳細に説明する。
【0023】
図1には本発明の制御装置SGが車両FZ内で他の複数のコンポーネントに接続されている様子が示されている。制御装置SGには座席重量センサ(応力センサ)IB1〜IB4がLINバスを介して集積回路ASICへ接続されており、集積回路ASICは本発明の回路を備えたインタフェースを有する。集積回路ASICはデータ入出力側を介してマイクロコントローラμCすなわち駆動回路へ接続されており、例えばLINバスを介して検出したデータをさらなる評価のためにマイクロコントローラμCへ転送することができる。マイクロコントローラμCはこれらのデータに基づいて、乗員保護手段を駆動すべきか否かを判別する。マイクロコントローラμCは判別結果から駆動命令を形成し、いわゆるSPIバスを介してこの駆動命令を点火スイッチを含む回路FLICへ伝送する。また、集積回路ASICも、衝突に関連する信号を並列に評価する評価部を有しており、ここで、いわゆる駆動状況が識別された場合にのみ、回路FLICがイネーブルされる。駆動状況とは乗員保護手段PSを作動しなくてはならないケースである。
【0024】
図1には本発明に必要なコンポーネントのみが示されている。制御装置SGは、本発明の理解にとってはさほど重要ではないが、動作を確実にするためのさらなる構成素子群を有していてよい。また、クラッシュセンサなどの外部のコンポーネントを当該の制御装置SGに接続することもできる。これらも簡単化のために図1には示していない。
【0025】
本発明によれば、集積回路ASICはいわゆる自給モードまたは車両バッテリ電圧の接触不良の際に、LINバスのデータを確実な切換閾値を用いて検出することができる。当該の切換閾値は、有利には、集積回路ASIC内で形成されたディジタル値の給電電圧から導出される。これに代えて、LINバスを介して得られた信号の信号振幅から切換閾値を導出してもよい。自給モードでは或る程度の時間にわたってLINバスを介して得られた信号のさらなる評価が行われる。自給モードでは図1には示されていないエネルギリザーブ部である1つまたは複数のキャパシタによってエネルギが供給される。
【0026】
図2には、本発明の制御装置SG2がLINバスを介して別の制御装置SG1と通信する様子が示されている。別の制御装置SG1は例えばセンサデータを処理するマイクロコントローラμC1を有している。処理されたセンサデータはマイクロコントローラμC1からトランシーバTX1へ伝送される。このトランシーバTX1は処理されたセンサデータをLINバスへ送出する。伝送およびトランシーバTX1の動作のための電圧はバッテリ電圧UBから形成される。ここでは第1のダイオードD1は誤接続防止ダイオードとして用いられている。また、送信のための電圧はダイオードD11および抵抗R1を介してLINバスへ印加される。2つのダイオードD1,D11はどちらも順方向で接続されている。
【0027】
本発明の制御装置SG2ではLINバスが集積回路ASICに接続されており、LINバスに対するトランシーバとしてインタフェースTX2が構成されている。トランシーバTX2は集積回路ASICの一部となっている。集積回路ASICは上述したセーフティコントローラのようなエアバッグ機能部ABFを有している。さらに、制御装置SG2は自身の給電電圧を形成する構成素子群を有する。このために、例えば、アップコンバータSUC,ダウンコンバータSDCおよびリニアレギュレータLRが設けられている。ダウンコンバータSDCは本発明にとって重要な切換閾値を導出するための給電電圧VASを形成する。アップコンバータSUCへは、通常時はバッテリ電圧UBが誤接続防止ダイオードD2を介して印加され、自給モードではエネルギリザーブ部CERから電圧が印加される。このことは図2では簡単にしか示されていない。エネルギリザーブ部CERとアップコンバータSUCとのあいだに切換素子を設けることもできる。また、順方向に接続されたダイオードD2の後方に、バッテリ電圧UBをトランシーバTX2へ供給する分岐路が設けられており、この分岐路は同様に順方向に接続されたダイオードD21と抵抗R2とを含む。これは別の制御装置SG1にダイオードD11および抵抗R1を含む分岐路が存在していることに相応する。トランシーバTX2は自給モード以外(非自給モード)では当該の分岐路から直接に電圧を印加され、これにより切換閾値をバッテリ電圧から導出することができる。当該の分岐路の抵抗R1によって送信のための電圧が設定される。抵抗R1およびダイオードD11と同様のプルアップ構造は、定常状態でのハイレベルのバス電圧を安定に形成することに寄与する。プルアップ抵抗はスレーブノードで約30kΩになるのに対してマスタノードでは最大で1kΩほどになる。制御装置SG2がマスタノードであるとき、自給モード以外(非自給モード)では、トランシーバTX2は抵抗R1およびダイオードD11を介してバス送信電圧を設定する。バッテリ電圧はダイオードD2によって誤接続防止されており、この場合、LINバスを介したデータの受信に適した切換閾値が導出される。
【0028】
図2にも本発明に必要なコンポーネントしか示されていない。制御装置SG2,SG1の有する他の構成素子は簡単化のために省略されている。制御装置SG1は例えば複数の重量センサのデータを処理し、座席の占有状態に関する情報をエアバッグ制御装置SG2へ伝送する制御装置である。当該のデータに基づいて乗員のクラシフィケーションが行われ、乗員保護手段が駆動される。
【0029】
図3には、本発明の切換閾値を形成する回路を備えたインタフェースが示されている。ここでは、比較器として、第1の比較器V1が設けられている。第1の比較器V1の正の入力側には、LINバスで伝送されたLINバス信号LINが端子300および抵抗R33を介して入力される。当該のLINバス信号LINは、第1の比較器V1の負の入力側に印加される切換閾値と比較される。切換閾値は、ここでは、誤接続防止ダイオードD3、抵抗R30および分圧器R34,R35を介して印加されるバッテリ電圧UBから形成されるか、あるいは、ダイオードD4、抵抗R32および分圧器R34,R35を介して印加され、制御装置内でバッテリ電圧およびエネルギリザーブ部の電圧の双方によって形成された内部電圧VASから形成される。順方向に接続されたダイオードD3,D4により、バッテリ電圧UBおよび内部電圧VASのいずれか高いほうの電圧が導通され、切換閾値の形成に用いられる。LINバス信号LINが形成された切換閾値よりも大きい場合には、第1の比較器V1は論理1を出力し、そうでない場合には論理0を出力する。これにより、バッテリ電圧の不足時または接触不良時(マイクロレベルの破損時)の自給モードにおいても、切換閾値が確実に形成される。当該の利点は、いわゆるアナログ電圧に代えて、別の電圧制御回路によって形成されたディジタル電圧を用いることにより、達成される。なぜなら、ディジタル電圧は自給モードにおいても確実に得られるからである。
【0030】
順方向に接続されたダイオードD3と端子300とのあいだにはさらにダイオードD31および抵抗R31が直列に接続されている。こうしたプルアップ構造は、規格に相応に、データのやり取りを行わない定常状態でのバスハイレベル、すなわち、抵抗R31で見て、スレーブに対して1kΩ、マスタに対して30kΩを形成する。データ伝送の際には、トランスミッタ‐トランジスタまたは制御可能電流源が、アースへ通じるダイオードを介して端子300へ供給されるデータ内容の周期でT×Dで制御されて有効となり、バス電圧が支配的なローレベルへ引かれる。このことはバスに接続された各装置がトランスミッタ構造を有する場合に生じうる。
【0031】
キャパシタC3はバスから受信機(トランシーバ)へ入力される高周波数障害を除去し、さらに、トランスミッタ‐トランジスタまたは制御可能電流源あるいはプルアップ抵抗R31の特性に応じて、送信パルスの立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの傾きを定め、放射を低減するために用いられる。
【0032】
図3においても本発明に必要な素子しか示されていない。例えば、いっそうのローバスト性のために切換閾値をヒステリシスに追従させるヒステリシス回路は省略されている。当分野の技術者であれば、こうしたヒステリシス回路が複数のトランジスタおよび複数のオペアンプによって実現されることが理解できるはずである。
【0033】
第1の比較器V1の出力は受信機信号(トランシーバ信号)R×Dの形成の基礎となる。最も簡単なケースでは第1の比較器の出力と受信機信号とは同一であり、よりローバストにすべきケースでは信号の障害除去がディジタルフィルタを介して行われる。
【0034】
図4には選択的な実施例が示されている。キャパシタC4,端子400,抵抗R41およびダイオードD41の機能は図3のキャパシタC3,端子300,抵抗R31およびダイオードD31に相応する。図4の抵抗R43は図3の抵抗R33に相応する。
【0035】
図4の実施例では、2つの比較器V2,V3が設けられている。第1の比較器V2の負の入力側には分圧器R40,R42,R44を介してバッテリ電圧UBが接続される。このバッテリ電圧とLINバスを介して第1の比較器V1の正の入力側へ入力されるLINバス信号LINとが比較され、信号が検出される。また、LINバス信号LINは第2の比較器V3の正の入力側へも供給される。第2の比較器V3の負の入力側にはダイオードD42および抵抗R45を介して自給モードにおいても存在するアナログの給電電圧VASが印加され、切換閾値が形成される。
【0036】
給電電圧VASから形成された切換閾値はバッテリ電圧UBから導出された切換閾値より小さいので、非自給モードでは第2の比較器V3はつねに論理1を出力する。第1の比較器V2と第2の比較器V3とをいわゆるワイヤードOR結合で結合することにより、自給モード以外(非自給モード)では第1の比較器V2の信号が求めるべき信号として出力される。自給モードではこの動作が逆転する。つまり、第1の比較器V2がつねに論理1を出力し、第2の比較器V3が給電電圧VASから形成された切換閾値によって信号を正しく検出するのである。
【0037】
比較器V2,V3の出力はワイヤードOR結合により受信機信号R×Dの形成の基礎となる。最も簡単なケースでは第1の比較器の出力と受信機信号とは同一であり、よりローバストにすべきケースでは信号の障害除去がディジタルフィルタを介して行われる。
【0038】
図5には本発明の回路の別の実施例が示されている。この実施例では第1の比較器V1のみが設けられている。当該の第1の比較器V1には、バッテリ電圧UBがダイオードD53および抵抗R53を介して供給され、ディジタルの給電電圧VASがダイオードD54および抵抗R55を介して図3の実施例と同様に供給される。LINバスはインタフェース500および抵抗R54を介して第1の比較器V1の正の入力側へ接続されている。第1の比較器V1の負の入力側には抵抗R56,R57の分圧器が前述した実施例と同様に接続されている。バッテリ電圧はダイオードD53,D52および抵抗R52を介して端子500へ印加される。端子500にはLINバスが接続されている。LINバスとは前述したようにシングルワイヤバスである。さらに、端子500には給電電圧VASが順方向に接続されたダイオードD51および抵抗R51を介して接続されている。この場合にも、いずれか高いほうの電圧が順方向に接続されたダイオードを介して導通される。給電電圧VASがダイオードD51および抵抗R51を介して印加される回路はいわゆるプルアップ回路であり、これによりLINバスはエアバッグ制御装置の自給モードにおいても定常状態のバス電圧、例えばマスタプルアップ回路の電圧によって給電される。エアバッグ制御装置および重量センサシステムのコンフィグレーションにおいて、自給モードで重量センサシステムにも同様にエアバッグ制御装置からの給電が行われる場合には、マスタであるエアバッグからデータを送信する際にもスレーブである重量センサからデータを送信する際にもインタフェースに適切なバス電圧を供給することが必要である。
【0039】
図6には本発明の方法のフローチャートが示されている。ステップ600でLINバス信号LINが受信される。ステップ601で、自給モードが生じているか否かが問い合わされる。自給モードが生じていない場合には、ステップ602で切換閾値がバッテリ電圧によって形成され、続いてステップ603でLINバス信号LINが当該の切換閾値によって検出される。ついで、ステップ604で、例えばマイクロコントローラμCが検出された信号を処理する。さらに、ステップ605で、当該の処理に応じて、乗員保護手段の駆動が行われる。
【0040】
ステップ601で自給モードが生じていることが検出された場合、ステップ606で切換閾値が制御装置内の独立したアナログの給電電圧から形成される。当該の給電電圧はこの実施例では電圧VASである。当該の電圧は約6.3V〜8Vであり、LIN規格でのバスの電圧レベルの下方限界値8Vにほぼ等しく、規格で最低限要求されるSiダイオードのほかに、図3のダイオードD4,図4のダイオードD42,図5のダイオードD54,D51としてショットキーダイオードまたはバックツーバックで接続されたMOSFETが用いられるかどうかに応じて定められる。続いて、ステップ607で形成された切換閾値による信号検出が行われ、ステップ604で検出された信号の処理が行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両バッテリ電圧(UB)に応じた振幅を有する少なくとも1つの信号を受信するインタフェース(TX2)と、該少なくとも1つの信号に基づいて乗員保護手段(PS)を駆動する駆動回路(μC)とが設けられている、
車両(FZ)の乗員保護手段を駆動する制御装置(SG)において、
前記インタフェースは、前記少なくとも1つの信号を検出するために当該の制御装置内で形成された給電電圧(VAS)または前記信号の振幅から少なくとも1つの切換閾値を導出する回路を有する
ことを特徴とする車両の乗員保護手段を駆動する制御装置。
【請求項2】
前記給電電圧をディジタル値として形成する給電モジュールが設けられている、請求項1記載の車両の乗員保護手段を駆動する制御装置。
【請求項3】
前記インタフェースは前記回路および前記給電モジュールとともに集積回路(ASIC)を形成する、請求項2記載の車両の乗員保護手段を駆動する制御装置。
【請求項4】
第1の比較器(V1)が設けられており、該第1の比較器の第1の入力側に少なくとも1つの第1のダイオード(D4)および少なくとも1つの第1の抵抗(R32)を介して前記給電電圧を印加し、さらに前記第1の入力側に前記車両バッテリ電圧を印加することにより、少なくとも1つの切換閾値が前記第1の比較器で形成される、請求項1から3までのいずれか1項記載の車両の乗員保護手段を駆動する制御装置。
【請求項5】
第1の比較器(V2)および第2の比較器(V3)が設けられており、前記第2の比較器の第1の入力側に前記給電電圧から形成された少なくとも1つの切換閾値が印加され、前記第1の比較器の第1の入力側に少なくとも1つの切換閾値を形成するための前記車両バッテリ電圧が印加される、請求項1から3までのいずれか1項記載の車両の乗員保護手段を駆動する制御装置。
【請求項6】
少なくとも1つの閾値を形成するためにヒステリシス回路が設けられている、請求項1から5までのいずれか1項記載の車両の乗員保護手段を駆動する制御装置。
【請求項7】
前記インタフェースはデータを送信するためにプルアップ回路(D51,R51)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の車両の乗員保護手段を駆動する制御装置。
【請求項8】
前記プルアップ回路は少なくとも1つの第2の抵抗および少なくとも1つの第2のダイオードを介して前記給電電圧を伝送線路へ供給する、請求項7記載の車両の乗員保護手段を駆動する制御装置。
【請求項9】
インタフェース(TX2)により車両バッテリ電圧(UB)に応じた振幅を有する少なくとも1つの信号を受信し、該少なくとも1つの信号に基づいて乗員保護手段(PS)を駆動する、
車両(FZ)の乗員保護手段の駆動方法において、
前記少なくとも1つの信号を検出するために、当該の制御装置内で形成された給電電圧(VAS)または前記信号の振幅から少なくとも1つの切換閾値を導出する
ことを特徴とする車両の乗員保護手段の駆動方法。
【請求項10】
ヒステリシスとしての少なくとも1つの切換閾値を用いる、請求項9記載の車両の乗員保護手段の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−536639(P2010−536639A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521370(P2010−521370)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058764
【国際公開番号】WO2009/024394
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany