説明

車両の側部構造

【課題】車幅の増大を抑制しながら、固定部分におけるカバー剛性を確保すること。
【解決手段】車体1の側部1aに形成された乗降口12と、車両の前後方向に移動して乗降口12を開閉するスライドドア22と、乗降口12の、前後方向の端部12aから前後方向に延設され、スライドドア22の移動を案内するレール部材31と、車体1の側部1aにおいて前後方向に形成され、レール部材31が収納される凹部41と、レール部材31を覆うカバーユニット50と、を備えた車両Aの側部構造100において、カバーユニット50が、レール部材31の上部に固定された、中空の上部固定部53を有し、上部固定部53が、凹部41内におけるレール部材31の上方空間Sにおいて、レール部材31の車幅方向外側の端部31aよりも車室側に進入していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のスライドドアレールの周辺構造として、特許文献1には、カバーの突起部が係合する穴をレールと協同して形成するように、ブラケットをレールに設けた構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002−12034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1で開示されている技術では、カバーの突起部が係合する孔を車幅方向に一定の幅を有して設けるため、凹部を車幅方向内方に大きく確保しなければならず、車幅の増大を招いてしまう。一方、車幅の増大を避けるために、カバーの突起部が係合する穴を車幅方向に薄くした場合には、突起部も薄くする必要があるため、突起部の剛性が低下してしまう。このため、突起部が破損してカバーが脱落してしまう可能性がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、車幅の増大を抑制しながら、固定部分におけるカバー剛性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、車体の側部に形成された乗降口と、車両の前後方向に移動して乗降口を開閉するスライドドアと、乗降口の、前後方向の端部から前後方向に延設され、スライドドアの移動を案内するレール部材と、車体の側部において前後方向に形成され、レール部材が収納される凹部と、レール部材を覆うカバーユニットと、を備えた車両の側部構造において、カバーユニットが、レール部材の上部に固定された、中空の上部固定部を有し、前記上部固定部が、前記凹部内における前記レール部材の上方空間において、前記レール部材の車幅方向外側端部よりも車室側に進入していることを特徴とする車両の側部構造が提供される。
【0006】
本発明によれば、前記上部固定部が、前記凹部内における前記レール部材の上方空間において、前記レール部材の車幅方向外側端部よりも車室側に進入しているため、車幅の増大を抑制しながら、固定部分におけるカバー剛性を確保することができる。
【0007】
また、本発明においては、前記凹部の周囲において、前記車体の側部表面が、車幅方向外方下方に向かって傾斜しており、前記凹部は、その上下端を結ぶ前記側部表面に沿う仮想傾斜面からの車幅方向における深さが、その上部において浅く、下部において深い構成であってもよい。この構成によれば、前記凹部の前記仮想傾斜面からの車幅方向における深さが浅い前記上方空間を有効に用いることができる。
【0008】
また、本発明においては、前記カバーユニットが、カバー部材と、該カバー部材を前記レール部材に固定する固定部材と、を備え、前記上部固定部において、前記カバー部材、前記固定部材及び前記レール部材の上部の断面が、略閉断面を形成している構成であってもよい。この構成によれば、前記上部固定部において、前記カバー部材、前記固定部材及び前記レール部材の上部の断面が、略閉断面を形成しているため、前記上部固定部の剛性を向上することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記カバーユニットが、カバー部材と、該カバー部材を前記レール部材に固定する固定部材と、を備え、前記上部固定部において、前記カバー部材及び前記固定部材の断面が、略閉断面を形成している構成であってもよい。この構成によれば、前記上部固定部において、前記カバー部材及び前記固定部材の断面が、略閉断面を形成しているため、前記上部固定部の剛性を向上することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記カバーユニットが、前記上部固定部よりも下方に形成された、中空の下部中空部と、前記上部固定部と前記下部中空部との間に形成され、前記上部固定部及び前記下部中空部よりも車幅方向の厚みが薄い中間部と、を備え、前記カバーユニットが、カバー部材と、該カバー部材を前記レール部材に固定する固定部材と、を有し、前記カバー部材は、前記上部固定部、前記下部中空部及び前記中間部においてそれぞれ前記固定部材に支持されている構成であってもよい。この構成によれば、前記カバー部材は、前記上部固定部、前記下部中空部及び前記中間部においてそれぞれ前記固定部材に支持されているため、前記カバー部材の前記固定部材への固定強度を向上することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記中間部において、前記カバー部材と前記固定部材との間に弾性部材を介在させた構成であってもよい。この構成によれば、簡易な構成により、前記カバー部材を前記固定部材に支持させることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記上部固定部において、前記カバー部材と前記固定部材とを係合する係合部材を備え、前記凹部は、前記係合部材と前記凹部の側壁との干渉を回避する係合部材用凹部を有する構成であってもよい。この構成によれば、中空の前記上部固定部で前記カバー部材と前記固定部材とを係合し、また、前記凹部は、前記係合部材と前記凹部の側壁との干渉を回避する係合部材用凹部を有するため、前記係合部材の前記凹部の側壁との干渉を回避しながら、固定部分における前記カバー部材の強度を向上することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記車体の側部には、前記凹部の上方においてウインドウ部材が設けられている構成であってもよい。この構成によれば、前記凹部の上方にウインドウ部材を設けるデザインが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車幅の増大を抑制しながら、固定部分におけるカバー剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で以下の実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両Aの全体構造を示す側面図であり、図2は、一実施形態に係るレール部材31の配設構造を示す拡大斜視図である。また、図3は、ローラユニット7の構造を示す斜視図である。
【0017】
車両Aは、本実施形態では、車室内において、車両Aの前後方向に3列のシート(前方から順にシート2、3、4とする)が配設される。また、車体1の側部1aには、車両Aの前後方向に並んで、乗降口11、12が配設される。
【0018】
乗降口11は、運転席であるシート2に着座する乗員が乗降するために用いられる。また、乗降口11には、ヒンジ21aを中心に円弧状に回転して開閉するヒンジドア21が配設される。
【0019】
乗降口12は、2列目のシート3及び3列目のシート4に着座する乗員が乗降するために用いられる。また、乗降口12には、車両Aの前後方向に移動して乗降口12を開閉するスライドドア22が配設される。
【0020】
スライドドア22の後端部22aには、ローラユニット7がボルト7cによって締結固定されている。ローラユニット7は、レール部材31の内壁に対して摺動するローラ7a、7bと、ローラ7a、7bを回動可能に支持するローラ支持部7dと、ローラ支持部7dにスプリング7fによる弾性力を付勢しながらローラ支持部7dを揺動可能に支持し、スライドドア22の後端部22aに取り付ける取付部7eとを有する。ローラ7a、7bは、弾性力に反して、ローラ支持部7dを回転軸7g回りに90度回転させた状態でレール部材31内に挿入される。従って、ローラ7a、7bがレール部材31内を摺動することによって、スライドドア22は、レール部材31に沿って、車両Aの前後方向への移動が案内される。
【0021】
レール部材31は、乗降口12の、車両Aの前後方向の端部12aから前後方向に延設されており、車体1の側部1aにおいて車両Aの前後方向に形成された凹部41に収納される。また、レール部材31は、カバーユニット50によって覆われ、アーム6は、カバーユニット50の下縁に沿って前後方向に延びたスリット8を通過して移動することになる。スリット8は、本実施形態では、車体1の側部1a(例えば、フェンダーパネル)、ヒンジドア21及びスライドドア22にそれぞれ設けられるキャラクターラインL1、L2、L3やテールランプRと連続した一連のラインを形成する位置に配設される。なお、カバーユニット50の詳細については後述する。
【0022】
車体1の側部1aの表面は、凹部41の周囲において、車幅方向外方下方に向かって傾斜している。また、凹部41の上方には、ウインドウ部材5が設けられている。これにより、凹部41の上方に近接してウインドウ部材5を設けるデザインが可能となる。
【0023】
図4は、カバーユニット50の固定構造を示す概略的な斜視図である。図5は、車両Aの側部構造100を示す図1のB−B線に沿った断面図である。
【0024】
カバーユニット50は、カバー部材51と、カバー部材51をレール部材31に固定する固定部材52(いわゆるブラケット)と、を備える。
【0025】
カバー部材51は、インナパネル51aとアウタパネル51bとで形成される。固定部材52は、その一方の端部52aがレール部材31より上下方向上方に延伸する上方延伸部52cと、その他方の端部52bがレール部材31より上下方向下方に延伸する下方延伸部52dと、上方延伸部52cと下方延伸部52dとの間において、レール部材31に接合される接合部52eと、を有する。
【0026】
インナパネル51aは、係合部材58によって固定部材52の上方延伸部52cに固定される。係合部材58には、例えば、ファスナと呼ばれる樹脂性のピンが用いられる。アウタパネル51bは、凹部41の上端部41aと下端部41bとを結ぶ側部1aの表面に仮想傾斜面1bとほぼ一致するように、車体1の側部1aの傾斜に沿った形状を有する。
【0027】
凹部41は、その上端部41aと下端部41bとを結ぶ側部1aの表面に沿う仮想傾斜面1bからの車幅方向における深さが、その上部において浅く、下部において深く形成されている。また、凹部41は、係合部材58と凹部41の側壁との干渉を回避する係合部材用凹部41cを有する。これにより、係合部材58との干渉が防止されている。
【0028】
また、インナパネル51aは、弾性部材56を介在して、固定部材52の下方延伸部52dに当接支持される。また、インナパネル51aには、カバー部材51内に連通するスリット51cが設けられている。固定部材52は、端部52bがそのスリット51cを通過して延びており、端部52bに設けられた弾性部材57を介在して、インナパネル51bに当接支持される。弾性部材56、57には、例えば、ウレタンやゴム等が用いられる。これにより、カバーに更に張力を与えて見栄えを良くすることができ、また、インナパネル51aと固定部材52の下方延伸部52dとの摩耗や騒音を防止することができる。
【0029】
固定部材52は、接合部52eにおいて、レール部材31の上部に×印で示す溶接点(図4参照)で接合されている。レール部材31には、その内壁に車幅方向内側に延びるボルト61が溶接されており、ボルト61は、車体1の側部1aに設けられた孔部1f(図2参照)に挿入され、車幅方向内側からナット62で締結される。なお、凹部41は、車体の側部1a(例えば、サイドボディアウタパネル)に設けられ、また、レール部材31は、凹部41に設けられる。このため、その側部1aより車幅方向内側に近接するパネル1a’(すなわち、サイドボディインナパネル)には孔部Hが設けられている。これにより、車室内側からナット62を締結したり、緩めたりする作業が可能となり、レール部材31の取付性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0030】
図6は、カバーユニット50の構造を示す概略断面図である。レール部材31の上部には、カバー部材51のアウタパネル51bと固定部材52の上方延伸部52c及び接合部52eとの間で中空状態となる上部固定部53が形成される。また、上部固定部53よりも下方には、カバー部材51のインナパネル51aとアウタパネル51bとの間で中空状態となる下部中空部54が形成される。さらに、上部固定部53と下部中空部54との間には、車幅方向の厚みが薄い中間部55が形成される。
【0031】
また、弾性部材56は、中間部55に設けられており、弾性部材57は、下部中空部54に設けられていることとなる。つまり、カバー部材51は、上部固定部53、下部中空部54及び中間部55の3点でそれぞれ固定部材52に支持されていることとなる。これにより、カバー部材51の剛性を向上することができる。
【0032】
また、カバーユニット50は、上部固定部53において、カバー部材51及び固定部材52の断面が、略閉断面を形成している。また、上部固定部53は、凹部41内におけるレール部材31の上方空間Sにおいて、レール部材31の車幅方向外側の端部31aよりも車室側に進入している。
【0033】
以上述べた通り、本実施形態によれば、カバー部材51を車体の傾斜に沿わせながら、デッドスペースである上方空間Sを用いて、レール部材31上方に略閉断面を形成することができる。このため、凹部41を車幅方向に拡大することなく、カバー部材51の剛性を確保することができる。従って、車幅の増大を抑制しながら、固定部分におけるカバー剛性を確保することが可能となる。また、ウインドウ部材5の下方に近接してカバー部材51によってキャラクターラインを設けたり、テールランプRとスリット8とを連続させたりすることにより、車体デザインの自由度を拡大して車両Aの見栄えを向上することができる。
【0034】
なお、固定部材52は、上述の実施形態では、上方延伸部52c、下方延伸部52d、接合部52eを有するものとしたが、少なくとも上方延伸部52c及び接合部52eを有するものであればよい。すなわち、中空の上部固定部53を形成するものであれば、中空の下部中空部54や中間部55を形成することは必須ではない。
【0035】
また、図7で示すように、上方延伸部52cと下方延伸部52dとが別部品で形成されていてもよい。図7は、変形例に係るカバーユニット50の構造を示す概略断面図である。この場合には、上方延伸部52c及び下方延伸部52dは、接合部52e’、52e”をそれぞれ有する。つまり、接合部52e’と接合部52e”との間には、隙間Dが生じるため、略閉断面を形成しないが、レール部材31に接合された状態では、略閉断面を形成することとなる。従って、カバー部材51、固定部材52及びレール部材31の上部の断面では、略閉断面を形成することとなる。これにより、上述の実施形態と同様に車幅の増大を抑制しながら、固定部分におけるカバー剛性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両Aの全体構造を示す側面図である。
【図2】一実施形態に係るレール部材31の配設構造を示す拡大斜視図である。
【図3】ローラユニット7の構造を示す斜視図である。
【図4】カバーユニット50の固定構造を示す概略的な斜視図である。
【図5】車両Aの側部構造100を示す図1のB−B線に沿った断面図である。
【図6】カバーユニット50の構造を示す概略断面図である。
【図7】変形例に係るカバーユニット50の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0037】
A 車両
S 上方空間
1 車体
1a 車体1の側部
2、3、4 シート
5 ウインドウ部材
11、12 乗降口
12a 乗降口12の端部
21 ヒンジドア
22 スライドドア
31 レール部材
31a レール部材31の端部
41 凹部
50 カバーユニット
51 カバー部材
52 固定部材
53 上部固定部
54 下部中空部
55 中間部
56、57 弾性部材
58 係合部材
100 車両Aの側部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側部に形成された乗降口と、
車両の前後方向に移動して前記乗降口を開閉するスライドドアと、
前記乗降口の、前記前後方向の端部から前記前後方向に延設され、前記スライドドアの移動を案内するレール部材と、
前記車体の側部において前記前後方向に形成され、前記レール部材が収納される凹部と、
前記レール部材を覆うカバーユニットと、
を備えた車両の側部構造において、
前記カバーユニットが、
前記レール部材の上部に固定された、中空の上部固定部を有し、
前記上部固定部が、前記凹部内における前記レール部材の上方空間において、前記レール部材の車幅方向外側端部よりも車室側に進入していることを特徴とする車両の側部構造。
【請求項2】
前記凹部の周囲において、前記車体の側部表面が、車幅方向外方下方に向かって傾斜しており、
前記凹部は、その上下端を結ぶ前記側部表面に沿う仮想傾斜面からの車幅方向における深さが、その上部において浅く、下部において深いことを特徴とする請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項3】
前記カバーユニットが、
カバー部材と、該カバー部材を前記レール部材に固定する固定部材と、を備え、
前記上部固定部において、前記カバー部材、前記固定部材及び前記レール部材の上部の断面が、略閉断面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項4】
前記カバーユニットが、
カバー部材と、該カバー部材を前記レール部材に固定する固定部材と、を備え、
前記上部固定部において、前記カバー部材及び前記固定部材の断面が、略閉断面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項5】
前記カバーユニットが、
前記上部固定部よりも下方に形成された、中空の下部中空部と、
前記上部固定部と前記下部中空部との間に形成され、前記上部固定部及び前記下部中空部よりも車幅方向の厚みが薄い中間部と、を備え、
前記カバーユニットが、
カバー部材と、
該カバー部材を前記レール部材に固定する固定部材と、を有し、
前記カバー部材は、
前記上部固定部、前記下部中空部及び前記中間部においてそれぞれ前記固定部材に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の側部構造。
【請求項6】
前記中間部において、前記カバー部材と前記固定部材との間に弾性部材を介在させたことを特徴とする請求項5に記載の車両の側部構造。
【請求項7】
前記上部固定部において、前記カバー部材と前記固定部材とを係合する係合部材を備え、
前記凹部は、前記係合部材と前記凹部の側壁との干渉を回避する係合部材用凹部を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の車両の側部構造。
【請求項8】
前記車体の側部には、前記凹部の上方においてウインドウ部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両の側部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−208643(P2009−208643A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54013(P2008−54013)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】