説明

車両の側部構造

【課題】サイドドアの水抜き孔から排出された油成分等を含む汚水を車両外側面を伝って流下させないようにして車両外へ排水し、車両外側面に前記汚水による汚れが付着することを防止し、見栄えの悪化を防止することができる、車両の側部構造を提供する。
【解決手段】サイドガーニッシュ7の上壁7aの上面部にサイドドア4の複数のドア水抜き孔と対向する位置に、ドア水抜き孔から排出された水をサイドガーニッシュ7の外側面よりも車幅方向内側へ排出する排出路16を備え、この排水路16は、複数のドア水抜き孔15の直下に位置し、ドア水抜き孔15から排出された水をサイドガーニッシュ7の上壁7aの下方へ排出する排出孔17を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の側部構造に関し、特に、サイドドアのインナパネルとアウタパネルの間に侵入した水を車両外へ排水する為の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両の側部構造において、サイドドアのインナパネルとアウタパネルの間(サイドドアの内部)には、サイドドアの本体上部に形成されたウインドウ動作用のスリットから水(主に雨水)が侵入する。このサイドドアの内部に侵入した水はサイドドアの下端部に形成されたドア水抜き孔から排出されドア開口の下縁部上に滴下し、そこから車両外側面を伝って流下して車両外へ排水される。
【0003】
図19に示すように、車両の側部構造100 では、ドア開口101 の下縁側に閉断面構造のサイドシル102 が存在し、このサイドシル102 の保護、デザイン性の向上、空力性能の向上等を目的に、サイドシル102 を覆うサイドガーニッシュ103 が設けられている。このサイドガーニッシュ103 の上端部分でドア開口101 の下縁部の少なくとも一部が構成され、サイドドア104 の内部に侵入した水は、矢印で示すように、サイドドア104 のドア水抜き孔105 から排出されサイドガーニッシュ103 の上面に滴下し、このサイドガーニッシュ103 の上面から外側面を伝って流下して車両外へ排水される。
【0004】
尚、特許文献1には、雨水等の車室内への漏水を防止するために、サイドドアのインナパネルとドアトリムの間に高吸水性樹脂を配設した構造が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−234021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の側部構造において、サイドドアの内部に侵入した水は、そこを通過する間に汚れて油成分等を含む汚水になり、その汚水がサイドドアのドア水抜き孔から排出されドア開口の下縁部上に滴下して車両外側面を伝って流下すると車両外側面を筋状に汚し、この汚れは目立つため車両外側面の見栄えを悪化させ、しかも、車両外側面に一度付着した汚れは雨水等では自然に取除かれにくく、その汚れを取り除くのに手間がかかる。
【0006】
車両の側部構造において、サイドシルを覆うサイドガーニッシュを採用したものでは、前記課題の車両外側面をサイドガーニッシュの外側面とした同等の課題が生じ、更に近年は、デザイン上、サイドガーニッシュの上下幅を大きくする傾向にあり、そうした場合、サイドガーニッシュの外側面の前記汚水による筋状の汚れが長くなって非常に目立つ。
【0007】
本発明の目的は、サイドドアの水抜き孔から排出された油成分等を含む汚水を車両外側面(サイドガーニッシュの外側面)を伝って流下させないようにして車両外へ排水し、車両外側面に前記汚水による汚れが付着することを防止し、見栄えの悪化を防止することができる、車両の側部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、車両側部のドア開口を開閉するサイドドアのインナパネルとアウタパネルの間に侵入した水を、このサイドドアの下端部に形成されたドア水抜き孔から排出して車両外へ排水する為の車両の側部構造であって、前記ドア開口の下縁部に前記水抜き孔と対向する位置に設けられ、前記ドア水抜き孔から排出された水を車両外側面よりも車幅方向内側へ排出する排出路を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ドア開口の下縁部の少なくとも一部が、閉断面構造のサイドシルを覆うサイドガーニッシュの上端部分で構成され、前記排出路は、このサイドガーニッシュの上端部分にドア水抜き孔から排出された水をサイドガーニッシュの外側面よりも車幅方向内側へ排出するように形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項1又は2の発明において、前記排出路は、前記ドア水抜き孔の直下に位置し、ドア水抜き孔から排出された水をドア開口の下縁部の下方へ排出する排出孔を有する構成(請求項3の発明)としてもよい。
【0011】
請求項1又は2の発明において、前記排出路は、前記ドア開口の下縁部の上面部にドア水抜き孔の直下又はドア水抜き孔の直下よりも車幅方向外側を通るように車両前後方向へ延び且つその一端から他端へ向かって高さが徐々に低くなる傾斜状に形成された傾斜凹部と、この傾斜凹部の前記他端側からドア開口の下縁部の下方へ水を排出する排出孔とを有する構成(請求項4の発明)とし、この場合、前記ドア水抜き孔として複数のドア水抜き孔が車両前後方向に間隔を空けて形成され、前記傾斜凹部は複数のドア水抜き孔の全てと対向する構成(請求項5の発明)とし、更にこの場合、前記傾斜凹部は後端から前端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜する構成(請求項6の発明)としてもよい。
【0012】
請求項1又は2の発明において、前記サイドドアの下端部のドア内部側底部が、車両前後方向の一端から他端へ向かって高さが徐々に低くなるように傾斜し、前記ドア水抜き孔はドア内部側底部の前記他端側から水を排出するように形成され、前記排出路は、前記ドア水抜き孔の直下に位置し、ドア水抜き孔から排出された水をドア開口の下縁部の下方へ排出する排出孔を有する構成(請求項7の発明)とし、この場合、前記ドア内部側底部は後端から前端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜する構成(請求項8の発明)としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の車両の側部構造によれば、車両側部のドア開口を開閉するサイドドアのインナパネルとアウタパネルの間に侵入した水を、このサイドドアの下端部に形成されたドア水抜き孔から排出して車両外へ排水するために、ドア開口の下縁部にドア水抜き孔と対向する位置に排出路を設け、この排出路によりドア水抜き孔から排出された水を車両外側面よりも車幅方向内側へ排出するので、サイドドアの水抜き孔から排出され滴下した油成分等を含む汚水を、車両外側面を伝って流下させないようにして、車両外側面に前記汚水による汚れが付着して見栄えが悪化するのを防止でき、更に、サイドドアを閉じた状態では、そのサイドドアによって排出路を覆い隠すことができるので、この排出路を設けたことによる見栄えの悪化も防止できる。
【0014】
請求項2の車両の側部構造によれば、閉断面構造のサイドシルを覆うサイドガーニッシュを設けたことで、サイドシルの保護、デザイン性の向上、空力性能の向上等を図るとともに、ドア開口の下縁部の少なくとも一部をサイドガーニッシュの上端部分で構成し、このサイドガーニッシュの上端部分にドア水抜き孔から排出された水をサイドガーニッシュの外側面よりも車幅方向内側へ排出するように排出路を形成したので、この排出路をサイドガーニッシュに簡単に設けることができてコスト的に有利になり(即ち、サイドガーニッシュの商品性の向上を図り)、しかも、サイドドアの水抜き孔から排出され滴下した汚水を、サイドガーニッシュの外側面を伝って流下させないようにして、サイドガーニッシュの外側面に前記汚水による汚れが付着して見栄えが悪化するのを防止できる。
【0015】
請求項3の車両の側部構造によれば、排出路はドア水抜き孔の直下に位置する排出孔を有し、この排出孔によりドア水抜き孔から排出された水をドア開口の下縁部の下方へ排出するので、ドア水抜き孔から排出され滴下した汚水を、車両外側面を伝って流下させないように、しかも、ドア開口の下縁部の上面に殆ど付着させないように、ドア開口の下縁部の下方へ確実に排出でき、サイドドアを開けたときに露出するドドア開口の下縁部上面に前記汚水による汚れが付着して見栄えが悪化することも抑制できる。
【0016】
請求項4の車両の側部構造によれば、排出路は、ドア開口の下縁部の上面部にドア水抜き孔の直下又はドア水抜き孔の直下よりも車幅方向外側を通るように車両前後方向へ延び且つその一端から他端へ向かって高さが徐々に低くなる傾斜状に形成された傾斜凹部と、この傾斜凹部の他端側からドア開口の下縁部の下方へ水を排出する排出孔とを有するので、ドア水抜き孔から排出されドア開口の下縁部の上面に滴下した汚水を、この下縁部上面から車両外側面を伝って流下させないように、傾斜凹部で前記他端側へ案内して、排出孔からドア開口部の下縁部の下方へ確実に排出できる。
【0017】
請求項5の車両の側部構造によれば、ドア水抜き孔として複数のドア水抜き孔を車両前後方向に間隔を空けて形成し、傾斜凹部は複数のドア水抜き孔の全てと対向するので、複数のドア水抜き孔に対して共通に設けられた傾斜凹部で、ドア水抜き孔から排出されドア開口の下縁部の上面に滴下した汚水を前記他端側へ案内して、排出孔からドア開口部の下縁部の下方へ確実に排出でき、しかも、排出孔を1つとして、その排出孔を形成したことによりドドア開口の下縁部の見栄えが悪化することを抑制できる。
【0018】
請求項6の車両の側部構造によれば、傾斜凹部は後端から前端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜するので、近年はサイドドア下端のパーティングラインがその前端から後方斜め上方へ延びるようにする傾向があり、そうした場合、ドア開口の下縁部上端がその前端から後方斜め上方へ延びるようにした場合でも、ドア開口の下縁部の上面部に傾斜凹部を前記傾斜にて容易に設けることが可能になる。また、傾斜凹部の前端側の排出孔は、サイドドアを開けた場合に、そのサイドドアの前奥側の車体本体との開き幅が小さい位置に設けられ、つまり、この排出孔を目立たないようにすることができる。
【0019】
請求項7の車両の側部構造によれば、サイドドアの下端部のドア内部側底部が、車両前後方向の一端から他端へ向かって高さが徐々に低くなるように傾斜し、ドア水抜き孔をドア内部側底部の他端側から水を排出するように形成し、排出路は、ドア水抜き孔の直下に位置し、ドア水抜き孔から排出された水をドア開口の下縁部の下方へ排出する排出孔を有するので、サイドドアの内部の汚水をドア内部側底部で前記他端側へ案内して、ドア水抜き孔から排出し、そのドア水抜き孔から滴下した汚水を、車両外側面を伝って流下させないように、しかも、ドア開口の下縁部上面に殆ど付着させないように、ドア開口の下縁部の下方へ確実に排出でき、サイドドアを開けたときに露出するドドア開口の下縁部上面に前記汚水による汚れが付着して見栄えが悪化することも抑制でき、更に、排出孔を1つとして、その排出孔を形成したことによりドドア開口の下縁部の見栄えが悪化することを抑制できる。
【0020】
請求項8の車両の側部構造によれば、ドア内部側底部は後端から前端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜するので、近年はサイドドア下端のパーティングラインがその前端から後方斜め上方へ延びるようにする傾向があり、そうした場合でも、サイドドアの下端部にドア内部側底部を前記傾斜にて容易に設けることが可能になる。また、ドア内部側底部の前端側のドア水抜き孔の直下に位置する排出孔は、サイドドアを開けた場合に、そのサイドドアの前奥側の車体本体との開き幅が小さい位置に設けられ、つまり、この排出孔を目立たないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の車両の側部構造は、車両側部のドア開口を開閉するサイドドアのインナパネルとアウタパネルの間(サイドドアの内部)に侵入した水を、このサイドドアの下端部に形成されたドア水抜き孔から排出して車両外へ排水する為の構造であり、ドア水抜き孔から排出された水を車両外側面よりも車幅方向内側へ排出する排出路がドア開口の下縁部にドア水抜き孔と対向する位置に設けられている。
【実施例1】
【0022】
図1〜図5に示すように、車両の側部構造1は、フロント及びリヤのドア開口2,3、このドア開口2,3を開閉するフロント及びリヤのサイドドア4,5を備え、ドア開口2,3の下縁側に閉断面構造のサイドシル6が存在している。サイドドア4は、その前端部が車体本体にドアヒンジ9により連結されている。
【0023】
また、車両の側部構造1は、サイドシル6を覆う合成樹脂製のサイドガーニッシュ7を備え、サイドシル6及びサイドガーニッシュ7の上端部分でドア開口2,3の下縁部が形成されるとともに、サイドドア4,5の内部に侵入した水を車両外へ排水する為のフロント及びリヤの排水構造10,11を備えている。
【0024】
サイドシル6は、インナパネル6a、アウタパネル6b、レインフォーメント6cを互いに結合して構成されている。サイドシル6の前後方向中央部分には、ドア開口2,3の境界となるセンタピラー8の下端部が結合され、サイドシル6のアウタパネル6bは、センタピラー8のアウタパネル8aと一体的に形成されている。
【0025】
サイドガーニッシュ7は、ドア開口2,3の下縁部の一部を形成する上壁7a、サイドシル6の外側面を覆う外側壁7b、サイドシル7の底面を覆う底壁7cを有し、底壁7cは車幅方向内方へ向かって下方へ少し傾斜している。
【0026】
上壁7aはサイドシル6の上端部に対して車幅方向外側に段下り状に、その車幅方向内端部がサイドシル6の外側面に近接するように配置され、外側壁7bは車輪の外側面と略同じ車幅方向位置にあり、外側壁7bと底壁7cが、夫々、この外側壁7bと底壁7cの内側に一体的に設けられ複数の取付膨出部7b1,7c1と複数のファスナ等の固定具7b2,7c2を介してサイドシル6に取付けられている。
【0027】
サイドドア4は、インナパネル4aとアウタパネル4bを有し、インナパネル4aはその下側部分においてアウタパネル4bの方へ曲げられ、両パネル4a,4bの下端同士がヘミング結合されている。サイドドア4のインナパネル4aの下端部でドア内部側底部4cが形成され、このドア内部側底部4cの下方にサイドガーニッシュ7の上壁7aが位置している。サイドドア4はその本体上部にウインドウ開閉動作用のスリット(図示略)が形成され、そこから水(主に雨水)がインナパネル4aとアウタパネル4bの間に侵入する。尚、サイドドア4(5)を説明する場合、サイドドア4(5)を閉じた状態における車両前後方向と車幅方向を車両前後方向と車幅方向として説明する。
【0028】
排水構造10は、サイドドア4のインナパネル4aとアウタパネル4bの間(サイドドア4の内部)に侵入した水を、このサイドドア4の下端部に形成されたドア水抜き孔15から排出して車両外へ排水する為の構造である。
【0029】
排水構造10は、サイドドア4のインナパネル4aの前記ドア内部側底部4cを形成する下端部に車両前後方向に間隔を空けて形成された複数(例えば、3つ)のドア水抜き孔15と、サイドガーニッシュ7の上壁7aに複数のドア水抜き孔15と対向する位置に設けられ、複数のドア水抜き孔15から排出された水をサイドガーニッシュ7の外側面よりも車幅方向内側へ排出する排出路16を備えている。
【0030】
サイドドア4のインナパネル4aに形成された各ドア水抜き孔15にはワンウェイバルブ15aが装着され、このワンウェイバルブ15aは、サイドドア4の内部の水をドア水抜き孔15から排出して下方へ滴下させ、サイドドア4の内部にドア水抜き孔15から埃等が侵入するのを防止するように、ドア水抜き孔15を覆っている。
【0031】
排出路16は、複数のドア水抜き孔15の直下に位置し、複数のドア水抜き孔15から排出された水をサイドガーニッシュ7の上壁7aの下方へ排出する複数(例えば、3つの)排出孔17を有する。各排出孔17は、サイドガーニッシュ7の上壁7aに上下貫通状に形成され、その上側に上方へ開口する部分球面部17aが形成され、この部分球面部17aによってドア水抜き孔15から滴下した水が排出孔17に確実に導入される。
【0032】
各排出孔17からサイドガーニッシュ7の上壁7aの下方へ排出された水は、サイドガーニッシュ7の外側壁7bの内側面や底壁7cの上面を伝って車幅方向内側へ流れ、底壁7cの車幅方向内端から下方へ落下し車両外へ排水される。
【0033】
この車両の側部構造1によれば次の効果を奏する。
サイドドア4のインナパネル4aとアウタパネル4bの間に侵入した水は、そこを通過する間に汚れて油成分等を含む汚水になり、その汚水がサイドガーニッシュ7の外側面を伝って流下すると筋状に汚し、この筋状の汚れは目立つため見栄えを悪化させ、一度付着した汚れは雨水等では自然に取除かれにくく、その汚れを取り除くのに手間がかかる。
【0034】
そこで、ドア開口2の下縁部の一部を形成するサイドガーニッシュ7の上壁7aにサイドドア4の複数のドア水抜き孔15と対向する位置に排出路16を設け、この排出路16により複数のドア水抜き孔15から排出された水をサイドガーニッシュ7の外側面よりも車幅方向内側へ排出するので、複数の水抜き孔15から排出され滴下した油成分等を含む汚水を、サイドガーニッシュ7の外側面を伝って流下させないようにして、サイドガーニッシュ7の外側面に前記汚水による汚れが付着して見栄えが悪化するのを防止でき、更に、サイドドア4を閉じた状態では、そのサイドドア4によって排出路16を覆い隠すことができるので、この排出路16を設けたことによる見栄えの悪化も防止できる。
【0035】
しかも、排出路16は複数のドア水抜き孔15の直下に位置する複数の排出孔17を有し、この複数の排出孔17により複数のドア水抜き孔15から排出された水をサイドガーニッシュ7の上壁7aの下方へ排出するので、複数のドア水抜き孔15から排出され滴下した汚水を、サイドガーニッシュ7の外側面を伝って流下させないように、しかも、サイドガーニッシュ7の上壁7aの上面に殆ど付着させないように、上壁7aの下方へ確実に排出でき、サイドドア4を開けたときに露出する上壁7aの上面に前記汚水による汚れが付着して見栄えが悪化することも抑制できる。
【0036】
更に、サイドシル6を覆うサイドガーニッシュ7を設けたことで、サイドシル7の保護、デザイン性の向上、空力性能の向上等を図ることができるとともに、排出路16をサイドガーニッシュ7に簡単に設けることができてコスト的に有利になり、即ち、サイドガーニッシュ7の商品性の向上を図ることができる。
【0037】
尚、リヤのサイドドア5と排水構造11は、詳細な説明を省略するが、フロントのサイドドア4と排水構造10と基本的に同様の構造で同様の作用・効果を奏する。
【実施例2】
【0038】
実施例2の車両の側部構造1Aは、実施例1の車両の側部構造1において、サイドガーニッシュ7、排水構造10,11を変更したものである。但し、実施例1と同一又は類似するものには、同一符号又は類似符号を付し、適宜説明を省略する。
【0039】
図7〜図11に示すように、この車両の側部構造1Aにおいて、排水構造10Aは、前記のワンウェイバルブ15aを夫々装着した複数のドア水抜き孔15を有するとともに、排水構造10Aの排出路16Aは、サイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの上面部にドア水抜き孔15の直下を通るように車両前後方向へ延び且つその後端から前端へ向かって高さが徐々に低くなる傾斜状に形成された傾斜凹部20と、この傾斜凹部20の前端側からサイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの下方へ水を排出する排出孔21とを有する。
【0040】
傾斜凹部20は、その底部の高さ位置が、図9〜図11に示すA1,A2,A3の関係からも明らかなように、後端から前端へ向かって徐々に低くなるように、サイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの車幅方向中央部分を全体的に凹ませて、複数のドア水抜き孔15の全てと対向するように形成され、ドア水抜き孔15から落下した水を受止め可能な十分な幅(例えば、の車幅方向幅の1/2以上の幅)を有する。排出孔21は、その上端が傾斜凹部20の底部に連なるように、サイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaに上下貫通状に形成されている。
【0041】
この車両の側部構造1Aによれば、排出路16Aは、サイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの上面部に複数のドア水抜き孔15の直下を通るように車両前後方向へ延び且つその後端から前端へ向かって高さが徐々に低くなる傾斜状に形成された傾斜凹部20と、この傾斜凹部20の他端側からサイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの下方へ水を排出する排出孔21とを有するので、複数のドア水抜き孔15から排出されサイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの上面に滴下した汚水を、このサイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの上面から車両外側面を伝って流下させないように、傾斜凹部20で受止めて前端側へ案内して、排出孔21からサイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの下方へ確実に排出できる。
【0042】
傾斜凹部20は複数のドア水抜き孔15の全てと対向するので、複数のドア水抜き孔15に対して共通に設けられた傾斜凹部20で、ドア水抜き孔15から排出されサイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの上面に滴下した汚水を前端側へ案内して、排出孔21から上壁7Aaの下方へ確実に排出でき、しかも、排出孔21を1つとして、その排出孔21を形成したことにより上壁7Aaの見栄えが悪化することを抑制できる。
【0043】
傾斜凹部20は後端から前端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜するので、近年はサイドドア4の下端部のパーティングラインがその前端から後方斜め上方へ延びるようにする傾向があり、そうした場合、サイドガーニッシュ7の上壁7aがその前端から後方斜め上方へ延びるようにした場合でも、サイドガーニッシュ7の上壁7aに傾斜凹部20を前記傾斜にて容易に設けることが可能になる。また、傾斜凹部20の前端側の排出孔21は、サイドドア4を開けた場合に、そのサイドドア4の前奥側の車体本体との開き幅が小さい位置に、しかも、サイドドア4の前端部を車体本体に連結するドアヒンジ9の下側近くに設けられ、つまり、この排出孔21を目立たないようにすることができる。
【0044】
実施例2の排水構造10Aにおいては、傾斜凹部20が、サイドガーニッシュ7Aの上壁7Aaの上面部に複数のドア水抜き孔15の直下よりも車幅方向外側を通るように車両前後方向へ延び且つその後端から前端へ向かって高さが徐々に低くなる傾斜状に形成されてもよい。また、傾斜凹部20は前端から後端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜するように形成されてもよい。
【0045】
尚、リヤの排水構造11Aは、詳細な説明を省略するが、フロントの排水構造10Aと基本的に同様の構造で同様の作用・効果を奏する。尚、フロント排水構造10Aの傾斜凹部20をリヤの排水構造11Aの同様の傾斜凹部と連続させ、リヤの排水構造11Aの排水孔として、フロント排水構造10Aの排水孔21を使用してもよい。
【実施例3】
【0046】
実施例3の車両の側部構造1Bは、実施例1の車両の側部構造1において、サイドドア4,5、サイドガーニッシュ7、排水構造10,11を変更したものである。但し、実施例1と同一又は類似するものには、同一符号又は類似符号を付し、適宜説明を省略する。
【0047】
図12〜図16に示すように、この車両の側部構造1Bにおいて、サイドドア4Bは、実施例1のサイドドア4と同様のインナパネル4aとアウタパネル4bを有するとともに、このサイドドア4Bのインナパネル4aの下端部で形成されたドア内部側底部4Bcが、図15、図16に示す高さB1,B2の関係からも明らかなように、後端から前端へ向かって高さが徐々に低くなるように傾斜している。
【0048】
また、車両の側部構造1Bにおいて、排水構造10Bは、サイドドア4Bのドア内部側底部4Bcの前端側から水を排出するように形成されワンウェイバルブ15aを装着したドア水抜き孔15Bを有するとともに、排水構造10Bの排出路16Bは、ドア水抜き孔15Bの直下に位置し、ドア水抜き孔15Bから排出された水をサイドガーニッシュ7Bの上壁7Baの下方へ排出する排出孔30を有する。
【0049】
排出孔30は、サイドガーニッシュ7Bの上壁7Baに上下貫通状に形成され、その上側に上方へ開口する部分球面部30aが形成され、この部分球面部30aによってドア水抜き孔15Bから滴下した水が排出孔30に確実に導入される。
【0050】
この車両の側部構造1Bによれば、サイドドア4Bの下端部のドア内部側底部4Bcが、後端から前端へ向かって高さが徐々に低くなるように傾斜し、ドア水抜き孔15Bをドア内部側底部4Bcの前端側から水を排出するように形成し、排出路16Bは、ドア水抜き孔15Bの直下に位置し、ドア水抜き孔15Bから排出された水をサイドガーニッシュ7Bの上壁7Baの下方へ排出する排出孔30を有するので、サイドドア4Bの内部の汚水をドア内部側底部4Bcで前端側へ案内して、ドア水抜き孔15Bから排出し、そのドア水抜き孔15Bから滴下した汚水を、サイドガーニッシュ7Bの外側面を伝って流下させないように、しかも、サイドガーニッシュ7Bの上壁7Baの上面に殆ど付着させないように、上壁7Baの下方へ確実に排出でき、サイドドア4Bを開けたときに露出する上壁7Baの上面に前記汚水による汚れが付着して見栄えが悪化することも抑制でき、更に、排出孔30を1つとして、その排出孔30を形成したことにより上壁7Baの見栄えが悪化することを抑制できる。
【0051】
ドア内部側底部4Bcは後端から前端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜するので、近年はサイドドア4Bの下端部のパーティングラインがその前端から後方斜め上方へ延びるようにする傾向があり、そうした場合でも、サイドドア4Bの下端部にドア内部側底部4Bcを前記傾斜にて容易に設けることが可能になる。また、ドア内部側底部4Bcの前端側のドア水抜き孔15Bの直下に位置する排出孔30は、サイドドア4Bを開けた場合に、そのサイドドア4Bの前奥側の車体本体との開き幅が小さい位置に、しかも、サイドドア4Bの前端部を車体本体に連結するドアヒンジ9の下側近くに設けられ、つまり、この排出孔30を目立たないようにすることができる。
【0052】
尚、リヤのサイドドア5Bと排水構造11Bは、詳細な説明を省略するが、フロントのサイドドア4Bと排水構造10Bと基本的に同様の構造で同様の作用・効果を奏する。
【実施例4】
【0053】
実施例4の車両の側部構造1Cは、実施例1の排水構造10を部分的に変更したものである。図17、図18に示すように、この排水構造10Cの排水路16Cは、サイドガーニッシュ7の各排出孔17に装着されたゴム製の水抜きクリップ40を備えている。この水抜きクリップ40は、鍔部40aと鍔部40aから下方へ延びる筒部40bとを有し、この鍔部40aと筒部40bに水抜き通路40cが上下貫通状に形成されている。
【0054】
水抜きクリップ40は、鍔部40aがサイドガーニッシュ7の上壁7aに上側から係止され、筒部40bが排出孔17を貫通してサイドガーニッシュ7の上壁7aよりも下方へ突出した状態で、筒部40bの排出孔17への圧入により固定されている。この水抜きクリップ40を設けたことにより、排出孔17の前記機能を損なうことなく、排出孔17を覆うことができるので、また、排出孔17からサイドガーニッシュ7の内部を見えにくくすることができるため、排出孔17を形成したことによる見栄えの悪化を抑制できる。
【0055】
尚、水抜きクリップ40において、筒部40bの下端部に、水抜き通路40c内の水は下方へ排出するが、サイドガーニッシュ7内の埃等を水抜き通路40c内に侵入させないようにするバルブ構造を設けてもよい。尚、この水抜きクリップ40については、実施例2において排出孔21に装着して、また、実施例3において排出孔30に装着して、夫々採用することが可能である。
【0056】
尚、本発明については、サイドシルを覆うサイドガーニッシュを設けていない車両の側部構造にも適用可能であり、この場合、ドア開口の下縁部を形成するサイドシル等の車体部材に、実施例1〜4のような排水路を設けることで、サイドドアの水抜き孔から排出され滴下した油成分等を含む汚水を、車両外側面を伝って流下させないようにして、車両外側面に前記汚水による汚れが付着して見栄えが悪化するのを防止できる。
【0057】
その他、本発明については、前記実施例で開示した事項以外の種々の変更を付加して実施可能であり、また、車両の各側部にドア開口が1つしかないもの、また、サイドドアの開閉をヒンジ以外にスライドで行うもの等の種々の車両の側部構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1の車両の側部構造の側面図である。
【図2】図1の車両の側部構造のサイドドアを省略した斜視図である。
【図3】図1の車両の側部構造のサイドガーニッシュの斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV −V 線断面図である。
【図6】実施例2の車両の側部構造の側面図である。
【図7】図6の車両の側部構造のサイドドアを省略した斜視図である。
【図8】図6の車両の側部構造のサイドガーニッシュの斜視図である。
【図9】図6のIX−IX線断面図である。
【図10】図6のX −X 線断面図である。
【図11】図6のXI−XI線断面図である。
【図12】実施例3の車両の側部構造の側面図である。
【図13】図12の車両の側部構造のサイドドアを省略した斜視図である。
【図14】図12のサイドガーニッシュの斜視図である。
【図15】図12のXV−XV線断面図である。
【図16】図12のXVI −XVI 線断面図である。
【図17】実施例4の車両の側部構造の要部の断面図である。
【図18】図17の車両の側部構造の筒部材の斜視図である。
【図19】従来技術の車両の側部構造の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1,1A,1B,1C 車両の側部構造
2,3 ドア開口
4,5,4B,5B サイドドア
4a インナパネル
4b アウタパネル
4Bc ドア内部側底部
6 サイドシル
7,7A,7B サイドガーニッシュ
7a,7Aa,7Ba 上壁
10,11,10 A,11A,10B,11B,10C 排水構造
15,15B ドア水抜き孔
16,16A,16B,16C 排出路
17 排出孔
20 傾斜凹部
21 排出孔
30 排出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部のドア開口を開閉するサイドドアのインナパネルとアウタパネルの間に侵入した水を、このサイドドアの下端部に形成されたドア水抜き孔から排出して車両外へ排水する為の車両の側部構造であって、
前記ドア開口の下縁部に前記ドア水抜き孔と対向する位置に設けられ、前記ドア水抜き孔から排出された水を車両外側面よりも車幅方向内側へ排出する排出路を備えたことを特徴とする車両の側部構造。
【請求項2】
前記ドア開口の下縁部の少なくとも一部が、閉断面構造のサイドシルを覆うサイドガーニッシュの上端部分で構成され、前記排出路は、このサイドガーニッシュの上端部分にドア水抜き孔から排出された水をサイドガーニッシュの外側面よりも車幅方向内側へ排出するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項3】
前記排出路は、前記ドア水抜き孔の直下に位置し、ドア水抜き孔から排出された水をドア開口の下縁部の下方へ排出する排出孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の側部構造。
【請求項4】
前記排出路は、前記ドア開口の下縁部の上面部にドア水抜き孔の直下又はドア水抜き孔の直下よりも車幅方向外側を通るように車両前後方向へ延び且つその一端から他端へ向かって高さが徐々に低くなる傾斜状に形成された傾斜凹部と、この傾斜凹部の前記他端側からドア開口の下縁部の下方へ水を排出する排出孔とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の側部構造。
【請求項5】
前記ドア水抜き孔として複数のドア水抜き孔が車両前後方向に間隔を空けて形成され、前記傾斜凹部は複数のドア水抜き孔の全てと対向することを特徴とする請求項4に記載の車両の側部構造。
【請求項6】
前記傾斜凹部は後端から前端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜することを特徴とする請求項5に記載の車両の側部構造。
【請求項7】
前記サイドドアの下端部のドア内部側底部が、車両前後方向の一端から他端へ向かって高さが徐々に低くなるように傾斜し、前記ドア水抜き孔はドア内部側底部の前記他端側から水を排出するように形成され、
前記排出路は、前記ドア水抜き孔の直下に位置し、ドア水抜き孔から排出された水をドア開口の下縁部の下方へ排出する排出孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の側部構造。
【請求項8】
前記ドア内部側底部は後端から前端に向かって高さが徐々に低くなるように傾斜することを特徴とする請求項7に記載の車両の側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−12886(P2010−12886A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173691(P2008−173691)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】