説明

車両の側部車体構造

【課題】ストライカの支持剛性を高めると共にドアラッチのストライカへの食い込みをより確実に抑制することが出来る車両の側部車体構造を提供する。
【解決手段】車体に形成されたドア用開口部(2)と、この開口部の端面(4)に設けられドアのロック部(52)と係合するストライカ(6)と、を備えた車両の側部車体構造であって、ドア用開口部の端面には、その周囲よりも窪んだ凹部(8)が形成され、この凹部内に、ストライカが取り付けられるストライカ取付面(10)が形成され、このストライカ取付面の裏側には、このストライカの支持剛性を高めるストライカレインフォースメント(30)が設けられ、このストライカレインフォースメントは、凹部から離間した位置(32,34)で車体に接合されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側部車体構造に係り、特に、車体に形成されたドア用開口部と、この開口部の端面に設けられドアのロック部と係合するストライカと、を備えた車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のドアは、ドアに設けたドアラッチを、車体のドア開口部に設けたストライカに係合させて、ドアを閉止位置に固定するようになっている。
近年、ドア開口部のストライカ取付面がその周囲より一段低く形成されたもの(特許文献1)、及び、ストライカの支持強度を高めるためにストライカ取付面の裏側に補強部材が設けられたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−001962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両の衝突などによりドアラッチがストライカに食い込んでしまい、外れなくなることがある。近年、自動車の衝突安全機能の向上が求められており、それに伴い、衝突後にドアをより確実に開けることが出来るようにすることも要望されている。
そのような要望に対し、ドア開口部に設けたストライカ取付面を周囲に対して窪ませた凹部に形成すれば、衝突時などにドアラッチが凹部の周囲部分に当接し易くなり、ドアラッチのストライカへの食い込みを抑制することが出来ると考えられる。
一方、このような凹部を形成した場合、その裏側に補強部材を取り付けることが困難になる。従来、補強部材を凹部自体に接合したものが知られているが、その場合、接合位置が制約を受けて接合面積を大きくとれず、支持剛性や耐久性が劣るという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ストライカの支持剛性を高めると共にドアラッチのストライカへの食い込みをより確実に抑制することが出来る車両の側部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明によれば、車体に形成されたドア用開口部と、この開口部の端面に設けられドアのロック部と係合するストライカと、を備えた車両の側部車体構造であって、ドア用開口部の端面には、その周囲よりも窪んだ凹部が形成され、この凹部内に、ストライカが取り付けられるストライカ取付面が形成され、このストライカ取付面の裏側には、このストライカの支持剛性を高めるストライカレインフォースメントが設けられ、このストライカレインフォースメントは、凹部から離間した位置で車体に接合されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ドアのロック部がストライカに大きく食い込む前に、ロック部が凹部の周辺部に当接するようになり、例えば車両の衝突後にもドアを開き易くなる。そして、そのような凹部を設けた場合、ストライカの支持剛性を高めるストライカレインフォースメントが、凹部から離間した位置で車体に接合されているので、凹部やストライカのレイアウトに影響されることなく十分な接合面積を確保することが出来、その結果、ストライカの支持剛性を確実に高めることが出来る。
【0007】
また、本発明において、好ましくは、ストライカレインフォースメントの接合位置は、ストライカ取付面よりも車体内方側に位置している。
このように構成された本発明においては、ドア閉時にストライカに大きな荷重が加わっても、接合部には圧縮方向の力が加わることになる。つまり、接合部が剥離するような方向の力が加わらないようにすることが出来るので、ストライカ及びストライカレインフォースメントの耐久性が向上する。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、ストライカ取付面は、車体内方側に向かってロック部側に傾斜している。
このように構成された本発明においては、より確実に、接合部に圧縮方向の力が加わるようにすることが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、車体は、アウタパネルとインナパネルとを有し、ストライカレインフォースメントは、ドア用開口部の端面の縁部まで延びると共にその縁部でアウタパネルとインナパネルとに挟持されている。
このように構成された本発明においては、ストライカレインフォースメントの接合部だけでなく、車体のアウタパネル及びインナパネルによっても荷重を支持することが出来るので、ストライカの支持剛性をより確実に高めることが出来ると共にストライカの耐久性を高めることが出来る。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、凹部は、ストライカ取付面を形成する平面部と、この平面部を少なくとも一部分で取り囲むように形成された傾斜部とを有し、ストライカレインフォースメントと凹部の傾斜面との間には閉断面が形成されている。
このように構成された本発明においては、閉断面により、ストライカの支持剛性をより確実に高めることが出来ると共にストライカの耐久性を高めることが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ストライカの支持剛性を高めると共にドアラッチのストライカへの食い込みをより確実に抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両の車幅方向の側部を示す側面図であり、この図1では、ドアの図示が省略されている。図2は、図1に示すドア用開口部の端面に設けられたストライカの部分を右方斜め前方から見た斜視図であり、図3は、図1に示すドア用開口部の端面に設けられたストライカの部分を車体前後方向の前方側から見た正面図である。
【0013】
図1に示すように、車両1には、ドア用開口部2が形成されている。図1乃至図3に示すように、この開口部2には、端面4が形成され、この端面4にストライカ6が設けられている。ストライカ6は、ストライカ係合部6aと、基部6bとを有している。
図2及び図3に示すように、このストライカ6は、端面4に形成された凹部8に設けられている。より詳細には、凹部8は、平らに形成された底面(ストライカ取付面)10と傾斜面12を有しており、ストライカ6の基部6bが、底面10に取り付けられている。この凹部8は、後述するドア50のラッチ部52の後端面よりも小さく形成されている。
【0014】
次に、図4は、図2のIV-IV線に沿って見たドア開口部の断面図であり、この図4では、ドア及びドアに設けられたラッチ部材も図示されている。また、図5は、図2のV-V線に沿って見た断面図である。
先ず、図4に示すように、ドア開口部2は、車体のアウタパネル14とインナパネル16とで形成されており、上述した端面4は、アウタパネル14に形成されている。
図5に示すように、ストライカ6は、その基部6bが、ストライカの上方部分及び下方部分の2箇所で、それぞれ、ボルト18、ナットプレート20及びナット22により端面4に固定されている。
また、図4に示すように、底面10は、車体内方に向かってドア側(ロック部52側)に傾斜している。即ち、この本実施形態の例で言えば車体前方側に傾斜しており、その角度を図4中でαとして示す。
【0015】
さらに、端面4のストライカ6に対し裏側、即ち、アウタパネル14の内方側には、ストライカ6の取付剛性を高めるためのストライカレインフォースメント30が設けられている。
図2及び図4に示すように、このストライカレインフォースメント30は、ストライカ6の裏側の部分では、平面状に形成され、その平面状の部分から車体内方側に向けて湾曲して延びている。このストライカレインフォースメント30の取付構造を説明する。
【0016】
先ず、ストライカレインフォースメント30は、上述した2箇所のボルト18、ナットプレート20及びナット22と共に共締めされて、端面4の裏側に固定されている。
さらに、図2乃至図4に示すように、ストライカレインフォースメント30は、上述したストライカ6が設けられた凹部8の上方側及び下方側の2箇所で、且つ、凹部8から離間した位置で、且つ、ストライカ6の取付ボルト18よりの車体内方側の部分でスポット溶接部34により、アウタパネル14の内方側(裏側)に固定されている。
【0017】
さらに、ストライカレインフォースメント30は、その車体内方側の端縁部30aが、上述したアウタパネル14の端縁部とインナパネル16の端縁部とに挟まれると共に、2箇所のスポット溶接部32によりアウタパネル14及びインナパネル16に固定されている。このように、ストライカレインフォースメント30は、ドア開口部2の端縁部によっても支持されている。
【0018】
次に、図5に示すように、このように取り付けられたストライカレインフォースメント30は、端面4の凹部8に形成された傾斜面12及び底面10の一部と共に閉断面を形成する形状に形成されている。即ち、図5に示すように、閉断面空間40が形成されるようになっている。
以上説明したように、ストライカレインフォースメント30の取付構造により、ストライカ6の取付剛性が高められている。
【0019】
次に、図4に示すように、このストライカ6には、ドア閉時に、ドア50に設けられたラッチ部(ロック部)52のラッチ54が係合するようになっている。図4に示すドアは、ラッチ部52と反対側の位置、本実施形態では車体前後方向前方側にヒンジ(図示せず)が設けられており、図4中、矢印Aの方向に閉じられるようになっている。
【0020】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
先ず、本発明の実施形態においては、ストライカ6の取付面10が、凹部8の底部に形成されており、ストライカ基部6bが凹部8内に配置されている。また、凹部8は、ラッチ部52の後端面よりも小さく形成されている。このような場合、例えば車両が他車両や障害物に衝突し、ドア50に車体後方側に向かう荷重が加わったとき、ラッチ部52がストライカ6に大きく食い込む前に、ラッチ部52が凹部8の周辺部9(図4及び図5参照)に当接する。従って、そのような衝突後にも、ドアを開き易くなる。
【0021】
また、このような凹部8を形成すると、ストライカ6の取付剛性を高めるストライカレインフォースメント30を取り付けるための平面状の部分が少なくなってしまうが、本実施形態では、凹部8から離間した位置でスポット溶接部32、34を設けている。さらに、そのような固定位置32、34は、ストライカ6よりも車体内方側に位置しているので、スポット溶接の耐久性が向上すると共にストライカ6の支持剛性を確実に高めることが出来る。
【0022】
この作用を図6で説明する。図6は、図4に相当する模式図であり、図6(a)は、本実施形態によりストライカ6及び溶接部34(或いは32)に作用する荷重を模式的に示す図であり、図6(b)は、比較例(従来技術)によるストライカ106及び溶接部134に作用する荷重を模式的に示す図である。
図6(a)に示すように、本実施形態では、ドアを閉じたとき、ストライカ6には、車体内方に向く荷重Fが加わる。この荷重によりストライカ6には、その基部6bを中心とするようなモーメント力Mが発生する。このとき、本実施形態では、溶接部34(32)がドアラッチより車体内方側にあるので、そのようなモーメント力Mは、溶接部34(32)には圧縮力F1として加わる。
【0023】
ここで、ストライカ6の支持剛性を高めるためには、ストライカレインフォースメント30を、ストライカ6の近傍で溶接するのが好ましいとも考えられる。しかし、上述したように、車両の衝突時のドアの開放を容易にするために凹部8を設けているので、そのような近傍に溶接に必要十分な面積を持つ溶接部を設けるのが難しくなる。一方、図2及び図3に示すように、凹部8の底部10は、車体外方側に延びるように形成することは可能である。そこで、図6(b)に示すような比較例のように、従来、ストライカレインフォースメント130のストライカ106の支持剛性を高めるために、車体外方側の平面部110に溶接部134を設けることが考えられている。
【0024】
しかしながら、この図6(b)にしめすような場合、ストライカ106に荷重Fが加わると共にモーメント力Mが発生すると、溶接部134には、引張力F2が加わる。溶接部134は、圧縮力にはその接合強度を保つのに有効であるが、引張力には非常に弱く、剥離してしまう可能性が高まる。従って、本実施形態(図6(a))によれば、比較例(図6(b))よりも、ストライカ6、ストライカレインフォースメント30の耐久性を向上させると共にストライカ6の支持剛性を確実に高めることが出来るのである。
【0025】
さらに、ストライカ6の取付面(底面)10は、車体内方に向かってドア側(ロック部52側)に傾斜(角度αで示す)しているので、溶接部34(32)に、より確実に圧縮力が加わり易くなり、さらに耐久性が向上する。
【0026】
さらに、ストライカレインフォースメント30の端縁部30aは、アウタパネル14とインナパネル16とに挟持されると共に溶接されているので、ドア閉時にストライカ6に加わる荷重が、溶接部32などだけでなく、ストライカレインフォースメント30を介してドア開口部2の端縁部においても受け止められるので、荷重を有効に分散させることが出来る。
また、ストライカレインフォースメント30とアウタパネル14との間に、上述したような閉断面空間40が形成されているので、凹部8の周辺部の剛性が向上して、さらにストライカ支持剛性を高めることが出来る。
【0027】
なお、本実施形態はリアドアへ適用したものであるが、フロントドア或いは車両の後方の側部、即ち、バックドア等に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態による車両の車幅方向の側部を示す側面図である。
【図2】図1に示すドア用開口部の端面に設けられたストライカの部分を右方斜め前方から見た斜視図である。
【図3】図1に示すドア用開口部の端面に設けられたストライカの部分を車体前後方向の前方側から見た正面図である。
【図4】図2のIV-IV線に沿って見たドア開口部の断面図である。
【図5】図2のV-V線に沿って見た断面図である。
【図6】図4に相当する模式図であり、本実施形態によりストライカ及び溶接部34に作用する荷重を模式的に示す図(図6(a))、及び、比較例(従来技術)によるストライカ及び溶接部に作用する荷重を模式的に示す図(図6(b))である。
【符号の説明】
【0029】
1 車両
2 ドア用開口部
4 ドア開口部の端面
6 ストライカ
8 ストライカ用凹部
9 凹部の周辺部
10 凹部の底面(ストライカ取付面)
12 傾斜面
14 車体のアウタパネル
16 車体のインナパネル
30 ストライカレインフォースメント
32、34 スポット溶接部
40 閉断面空間
50 ドア
52、54 ラッチ部(ロック部)、ラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成されたドア用開口部と、この開口部の端面に設けられドアのロック部と係合するストライカと、を備えた車両の側部車体構造であって、
上記ドア用開口部の端面には、その周囲よりも窪んだ凹部が形成され、
この凹部内に、上記ストライカが取り付けられるストライカ取付面が形成され、
このストライカ取付面の裏側には、この上記ストライカの支持剛性を高めるストライカレインフォースメントが設けられ、
このストライカレインフォースメントは、上記凹部から離間した位置で上記車体に接合されていることを特徴とする車両の側部車体構造。
【請求項2】
上記ストライカレインフォースメントの接合位置は、上記ストライカ取付面よりも車体内方側に位置している請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
上記ストライカ取付面は、車体内方側に向かって上記ロック部側に傾斜している請求項2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
上記車体は、アウタパネルとインナパネルとを有し、
上記ストライカレインフォースメントは、上記ドア用開口部の端面の縁部まで延びると共にその縁部で上記アウタパネルと上記インナパネルとに挟持されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
上記凹部は、上記ストライカ取付面を形成する平面部と、この平面部を少なくとも一部分で取り囲むように形成された傾斜部とを有し、
上記ストライカレインフォースメントと上記凹部の傾斜面との間には閉断面が形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の側部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−326462(P2007−326462A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158837(P2006−158837)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】