説明

車両の冷却風導入装置

【課題】導風口から導入される冷却風を上下に仕切る仕切部材が、軽衝突時に後退して熱交換器に損傷を与えないようにする。
【解決手段】フロントバンパ3のバンパフェース11とフロントグリル4とに形成されている導風口3a,4aに連通する間隙Hを上下仕切部材16で仕切り、各導風口3a,4aから導入される冷却風を互いに干渉させることなく熱交換器7,8に導く。仕切部材16の後端は、熱交換器7,8を支持するラジエータパネル9に固定され、前端がバンパビーム13の上部にオーバハングされている。そのため軽衝突時にバンパビーム13が後退しても、上下仕切部材16はバンパビーム13と接触せず、上下仕切部材16によって熱交換器7,8が押圧されることがなく、これらを損傷から有効に保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパビームと熱交換器を固設する枠体との間の空隙を仕切部材を用いて上下に仕切ることで、バンビビームの下方から導入される冷却風と上方から導入される冷却風との干渉を回避するようにした車両の冷却風導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車等の車両の前部にはフロントバンパが設けられ、このフロントバンパの上方にフロントグリルが設けられている。フロントバンパは、外表面を形成するバンパフェースとその内面に配設されたバンパビームとを有し、バンパフェースとフロントグリルには、下部導風口と上部導風口とが各々開口されており、この両導風口から導入された冷却風が、エンジンルームの前部に配設されている熱交換器(エンジン冷却用ラジエータ、エアコン用コンデンサ等)に導かれて冷却される。
【0003】
バンパフェースの背面に配設されているバンパビームは車幅方向に延在されており、このバンパビームと熱交換器と間には、少なくとも前面軽衝突時におけるクラッシュストロークを確保するための間隙部が設けられている。
【0004】
バンパビームの両側背面は、車幅方向左右に配設されているフロントサイドフレームの先端に固設されており、このフロントサイドフレームの先端部にクラッシュボックスが設けられている。車両が前面衝突すると、その衝撃荷重がパンパビームを介してフロントサイドフレームに伝達され、先ず、このクラッシュボックスが蛇腹状に軸圧潰されて衝撃エネルギーの一部が吸収される。バンパビームと熱交換器との間に、クラッシュストローク分の間隙を確保することで、軽衝突時にクラッシュボックスが軸圧潰されてバンパビームが後退しても、熱交換器との接触が回避され、熱交換器を損傷から保護することができる。
【0005】
ところで、上述したように、バンパビームと熱交換器との間には間隙部が設けられているため、走行時に、バンパフェースに開口されている下部導風口から取り入れられた冷却風は、バンパビームと熱交換器との間に形成されている間隙部にて上方へ巻き上げられ、フロントグリルに開口されている上部導風口から取り入れられる冷却風と干渉して、渦状の乱流が発生する。そして、この乱流が冷却風の通風抵抗となり、熱交換器の冷却性能が低下してしまう不具合がある。
【0006】
これに対処するに、例えば特許文献1(特開平11−11163号公報)には、バンパと熱交換器との間に形成されている間隙を、板状の制御部材(仕切部材)で上下に遮断し、フロントバンパとフロントグリルとの双方に開口されている導風口から導入される冷却風を互いに干渉することなく熱交換器へ導くようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−11163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、板状の制御部材(仕切部材)の後端が熱交換器の前面に近接されているため、前面軽衝突時にバンパビームが後退すると、このバンパビームに固設されている制御部材が一体で後退し、その後端が熱交換器に接触して、熱交換器に損傷を与えてしまう可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、フロント部材に形成されている導風口から導入される冷却風を熱交換器側へ効率よく導くことができるばかりでなく、軽衝突時に仕切部材が後退しても熱交換器に損傷を与えることがなく、熱交換器を損傷から有効に保護することのできる車両の冷却風導入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による車両の冷却風導入装置は、車体前部に配設された熱交換器を固設する枠体と、前記枠体の前方に設定間隙を有して配設されているバンパビームと、前記バンパビームの上方と下方とに開口された冷却風を導入する導風口と、前記枠体に後端が固設され、前端が前記バンパビームの上部と下部との一方にオーバハングされて前記間隙を上下に分割する仕切部材とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱交換器とバンパビームとの間の間隙に仕切部材を介装したので、バンパビームの下方と上方に形成されている導風口から導入される冷却風は互いに干渉することなく熱交換器へ導くことができる。更に、この仕切部材を熱交換器を固設する枠体に固設すると共に、前端をバンパビームの上部と下部との一方にオーバハングさせたので、軽衝突時にバンパビームが後退しても、仕切部材の前端がバンパビームに接触することがなく、熱交換器を損傷から有効に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両の要部正面図
【図2】図1のII-II断面図
【図3】冷却風導入装置の平面図
【図4】ラジエータパネルと上下仕切部材との斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1、図2に示すように、車両の一例である自動車の車体前部1は、最前部にフロントバンパ3が設けられ、このフロントバンパ3の上方にフロントグリル4が設けられており、その後方にエンジンルームEが設けられている。更に、車体前部1の上部にフロントフード5が設けられ、このフロントフード5にて、エンジンルームEの上部が開閉自在に覆われている。尚、エンジンルームEには、図示しないエンジン等のパワーユニットが搭載されている。
【0014】
又、エンジンルームEの前部に、エンジンの冷却系を構成する熱交換器(以下、「ラジエータ」と称する)7が配設され、更に、このラジエータ7の前方に、エアコンの冷凍サイクルを構成する熱交換器(以下、「コンデンサ」と称する)8が配設されている。
【0015】
このラジエータ7とコンデンサ8とが枠体としてのラジエータパネル9(図2、図3参照)に固設されている。このラジエータパネル9は、車幅方向両側に縦フレーム9aが設けられ、下部にロアフレーム9b、上部にアッパフレーム9cが設けられた正面視で矩形枠状に形成されている。更に、このラジエータパネル9の車幅方向中央のロアフレーム9bとアッパフレーム9cとの間がステー9dで連結されている。又、縦フレーム9aが、車幅方向左右に配設されて車体の前後方向へ延出する一対のフロントサイドフレーム12に固設されている。
【0016】
一方、フロントバンパ3は、車体前面の造形の一部として機能するバンパフェース11と、このバンパフェース11の後面に、このバンパフェース11に沿って車幅方向に延在した状態で配設されているバンパビーム13とを有し、このバンパビーム13の両側背面にフロントサイドフレーム12の前面が固設されている。又、このバンパビーム13の下方にクラッシュブラケット14が配設されている。
【0017】
更に、バンパフェース11の内面とクラッシュブラケット14との間に下部衝撃吸収材15aが介装され、その背面がクラッシュブラケット14の前端面に貼設されている。又、バンパフェース11の内面とバンパビーム13との間に上部衝撃吸収材15bが介装され、その背面がバンパビーム13の前面に貼設されている。更に、フロントバンパ3に下部導風口3aが開口され、一方、フロントグリル4に上部導風口4aが形成されている。更に、下部導風口3aの車幅方向中央に、所定幅を有する縦支持部3bが形成され、この縦支持部3bにより下部導風口3aが左右に分割されている。
【0018】
クラッシュブラケット14は、バンパフェース11の下部とラジエータパネル9のロアフレーム9bとの間を閉塞する箱形に形成されており、その上面14aが下部導風口3aの下面とほぼ同一面に形成されて、冷却風を導入する際の整流板としての機能を有している。
【0019】
又、バンパビーム13とコンデンサ8との間には、正面軽衝突時のクラッシュストロークを吸収する間隙Hが設けられており、この間隙Hに上下仕切部材16が水平に配設されている。この上下仕切部材16は板金製、或いは樹脂製であり、図3、図4に示すように、後部に舌片状の座面16aが、三箇所に曲げ形成されている。この座面16aは、ラジエータパネル9の左右縦フレーム9aとステー9dとに取付けられるものであり、各座面16bの幅は、対応するラジエータパネル9の縦フレーム9aの幅、及びステー9dの幅と同じか、それよりも狭く形成されている。尚、ラジエータパネル9の左右縦フレーム9a、及びステー9dには、座面16aを取付けるねじ孔が螺設されており、一方、座面16aにはボルト挿通孔が穿設されている。
【0020】
又、図2に示すように、この上下仕切部材16の座面16aをラジエータパネル9に所定に取付けた状態では、この上下仕切部材16の前端が、バンパビーム13の上部にオーバハングされて、間隙Hが下部導風口3a側と上部導風口4a側とに仕切られる。又、この上下仕切部材16の上面16bが平坦に形成されており、上部導風口4aから導入される冷却風をコンデンサ8側へ導く整流板として機能する。
【0021】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。車両が走行すると、車体前方から冷却風が、フロントバンパ3に開口されている下部導風口3aとフロントグリル4に開口されている上部導風口4aとから取入れられ、車体前部1内に導入される。
【0022】
バンパビーム13とコンデンサ8との間に介装されている上下仕切部材16によって、下部導風口3aと上部導風口4aとに連通する間隙Hが上下に仕切られており、しかも上面16bが整流板として機能するため、上部導風口4aから導入された冷却風は、上下仕切部材16の上面16bに沿ってコンデンサ8、及び、その背後に対峙されているラジエータ7の方向へ導かれる。
【0023】
一方、下部導風口3aから導入された冷却風は、その一部が、下部導風口3aの底面に配設されているクラッシュブラケット14の上面14aに沿ってコンデンサ8、及びその背後に対峙されているラジエータ7の方向へ導かれる。更に、下部導風口3aから導入された冷却風の他の一部は上方へ巻き上げられ、上下仕切部材16の下面16cに沿ってコンデンサ8、及びその背後に対峙されているラジエータ7の方向へ導かれる。
【0024】
その際、図2、図3に示すように、上下仕切部材16の前端がバンパビーム13の上部にオーバハングされており、後部がラジエータパネル9に固設されて、上下が仕切られているため、この上下仕切部材16の上面16bに沿って流れる冷却風と下面に沿って流れる冷却風とが互いに干渉することなく、従って、渦状の乱流を発生させることなく、コンデンサ8の方向へ導かれる。その結果、コンデンサ8、及びラジエータ7を効率よく冷却することができる。
【0025】
又、本実施形態による上下仕切部材16は、ラジエータパネル9にねじ孔を螺設するだけで取付けることができるため、既存の車両に対しても簡単に取付けることができ、高い汎用性を得ることができる。更に、上下仕切部材16に形成されている座面16aがラジエータパネル9の縦フレーム9aとステー9dとに当接する部位にのみ形成されており、しかも、その幅が対応する縦フレーム9aとステー9dの幅と同一か、それよりも狭く形成されているため、コンデンサ8の前面が座面16aによって塞がれることがない。従って、上下仕切部材16を間隙Hに配設しても、大きな通気抵抗は発生せず熱交換器(コンデンサ8,ラジエータ7)に対する冷却効率が低下することはない。
【0026】
更に、この上下仕切部材16の前端がバンパビーム13の上部にオーバハングされているため、軽衝突時にバンパビーム13が後退した場合であっても、上下仕切部材16がバンパビーム13と接触することがなく、従って、上下仕切部材16によってラジエータパネル9、及びコンデンサ8が押圧されることがない。その結果、ラジエータパネル9、コンデンサ8、ラジエータ7を損傷から有効に保護することができ、修理費の負担を軽減することができる。
【0027】
ところで、図2に示すように、上下仕切部材16の前端とバンパフェース11の内面との間に空隙部H’が形成されており、上部導風口4aから冷却風が導入される際に、この空隙部H’に渦状の乱流が発生する場合には、この空隙部H’を、ウレタン等の発泡体で閉塞するようにしても良い。
【0028】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば上下仕切部材16を下部導風口3a側に設け、その前段をバンパビーム13の下部にオーバハングさせるようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1…車体前部、
3…フロントバンパ、
3a…下部導風口、
4…フロントグリル、
4a…上部導風口、
7…ラジエータ、
8…コンデンサ、
9…ラジエータパネル、
9a…縦フレーム、
9d…ステー、
11…バンパフェース、
13…バンパビーム、
16…上下仕切部材、
16a…取付部、
16b…上面、
16c…下面、
H…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配設された熱交換器を固設する枠体と、
前記枠体の前方に設定間隙を有して配設されているバンパビームと、
前記バンパビームの上方と下方とに開口された冷却風を導入する導風口と、
前記枠体に後端が固設され、前端が前記バンパビームの上部と下部との一方にオーバハングされて前記間隙を上下に分割する仕切部材と
を備えることを特徴とする車両の冷却風導入装置。
【請求項2】
前記仕切部材の前記枠体に取付ける座面の幅が、該座面を取付ける前記枠体の幅と同じか、それよりも狭く形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両の冷却風導入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−210894(P2012−210894A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78292(P2011−78292)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】