説明

車両の制動装置

【課題】 車両の制動装置を改良することで、ステアリングシャフト周りにスペースを確保したときに、ブレーキ配管が容易に行え、車体フレーム内のスペースを有効に利用しつつ、ブレーキ配管を保護する。
【解決手段】 ステアリングシャフト38の下端にステアリング系部材としてのアクチュエータユニット77を配置し、ブレーキ管230、詳しくは、上部ブレーキ管191、左ブレーキ管193、右ブレーキ管194を、右ブレーキレバー241側からハンドル37及びステアリングシャフト38に沿って配管するとともに、アクチュエータユニット77の上方にて車体フレーム11のフロントフレーム33に沿って配管し、このフロントフレーム33の近傍から左右前輪18,18側に配管する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の制動装置として、ブレーキホースを、ハンドル側から1本で下方に延ばし、前輪用サスペンションアームの付根部近傍で左右の前輪側へ分岐させたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平7−102796号公報
【0003】
特許文献1の第3図及び第4図に示される通り、左右の前輪11を制動する制動装置に備えるブレーキ管は、操向ハンドル15に設けたマスタシリンダからメインホース35として下方に延び、車体フレーム1における上部アーム23のスイング軸の近傍に設けたジョイント34に接続され、このジョイント34からブレーキホース33として左右の上部アーム23に沿って車両側方に延び、前輪11側のキャリパユニット32に接続される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記のメインホース35を、操向ハンドル15の下方に設けられるステアリングシャフトに沿って配管した場合には、ステアリングシャフトにパワーステアリングユニットなどの別の装備を付加するためのスペースをステアリングシャフト周りに設けると、メインホース35の配管位置が制限され、下方までメインホース35を延出できないので、効率の良い配管ができなくなったり、他の部品の配置にも影響を及ぼし、また、車体フレーム1内のスペースを有効に利用できなくなることがある。
また、不整地等を走行する場合は、飛び石等に対してブレーキ管を保護することも必要になる。
【0005】
本発明の目的は、車両の制動装置を改良することで、ステアリングシャフト周りにスペースを確保したときに、ブレーキ配管が容易に行え、車体フレーム内のスペースを有効に利用しつつ、ブレーキ配管を保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレームの前部にステアリングシャフトを設け、このステアリングシャフトの上部にハンドルを取付け、車体フレームの前部で左右前輪を支持し、ハンドルに左右前輪を制動する操作子を備え、この操作子側から左右前輪側までをブレーキ管で接続した車両の制動装置において、ステアリングシャフトの下端にステアリング系部材を配置し、ブレーキ管を、操作子側からハンドル及びステアリングシャフトに沿って配管するとともに、ステアリング系部材の上方にて車体フレームの左右のフレームに沿って配管し、これらの左右のフレームの近傍から左右前輪側に配管することを特徴とする。
ブレーキ管の途中を左右のフレームに沿って配管し、車体フレーム内の他の部品を配置するスペースを確保する。また、ブレーキ管をハンドル、ステアリングシャフト、フレームで保護する。
【0007】
請求項2に係る発明は、左右前輪から車体側へ伝わる衝撃を吸収するクッションユニットの一端を支持するクロス部材に、ブレーキ管を左右に分岐させる分岐部材を取付けたことを特徴とする。
クロス部材で、左右前輪用クッションユニットの一端を支持する部材と、ブレーキ管を左右に分岐させる分岐部材の支持部材を兼ねる。
【0008】
請求項3に係る発明は、ブレーキ管を、フレームの内側に沿わせたことを特徴とする。
フレームの内側にブレーキ管を沿わせ、フレームの内側のスペースをより広くする。
【0009】
請求項4に係る発明は、ブレーキ管を、操作子側からステアリングシャフトに沿って下方に1本で延ばすとともに、ステアリング系部材の上方で左右に分岐させてそれぞれ下方に延ばすことを特徴とする。
ブレーキ管をステアリング系部材の上方で左右に分岐させることで、ステアリング系部材の組付自由度を大きく確保することが可能となる。
【0010】
請求項5に係る発明は、ステアリング系部材を、ステアリングシャフトの途中に設けた電動パワーステアリング装置用アクチュエータユニットとしたことを特徴とする。
アクチュエータユニットのような大きな部材でも、その上方にてブレーキ管を車体フレームの左右のフレームに沿って容易に配管することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、ブレーキ管をステアリング系部材の上方にて車体フレームの左右のフレームに沿って配管するため、ステアリングシャフト周りに必要スペースを確保したときでも、ブレーキ管の配管が容易になり、また、車体フレーム内のスペースを有効に利用することができ、車体フレーム内への各部品の配置が楽になる。また、ブレーキ管をハンドル、ステアリングシャフト、左右のフレームで飛び石等から保護することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、クッションユニットの一端を支持するクロス部材に分岐部材を取付けたので、クロス部材でブレーキ管の分岐部材の支持部材を兼ねることができ、特別に分岐部材を支持する部材が必要なく、部品数を減らすことができ、コスト及び重量を減らすことができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、ブレーキ管をフレームの内側に沿わせたので、フレームの内側のスペースをより大きくすることができ、部品等の配置にスペースを有効に利用することができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、ブレーキ管をステアリング系部材の上方で左右に分岐させてそれぞれ下方に延ばしたので、ステアリング系部材を車体フレームに組付けるときに、ブレーキ管がステアリング系部材の組付時の邪魔にならず、組付性を向上させることができる。
【0015】
請求項5に係る発明では、ステアリング系部材を電動パワーステアリング装置用アクチュエータユニットとしたので、アクチュエータユニットのように大きな部材であっても、ブレーキ管を良好に配管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る制動装置を備える不整地走行車両の側面図であり、不整地走行車両10は、車体フレーム11の中央部にエンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14を搭載し、変速機13の前部にフロントプロペラシャフト16を介してフロント終減速装置17を連結し、このフロント終減速装置17に図示せぬドライブシャフトを介して左右の前輪18,18に連結し、変速機13の後部にリヤプロペラシャフト21を介してリヤ終減速装置22を連結し、このリヤ終減速装置22に図示せぬドライブシャフトを介して左右の後輪23,23を連結し、前輪18,18を操舵する操舵力を軽減する電動パワーステアリング装置24を備えた四輪駆動車である。
【0017】
車体フレーム11は、前後に延ばした左右一対のアッパメインフレーム31,32(手前側の符号31のみ示す。)と、これらのアッパメインフレーム31,32の前端にそれぞれ連結した正面視逆U字形状のフロントフレーム33と、このフロントフレーム33の下端及びアッパメインフレーム31,32の中間部のそれぞれに連結した左右一対のロアメインフレーム34,36(手前側の符号34のみ示す。)と、上端にハンドル37を取付けたステアリングシャフト38の上部を回転自在に支持するためにフロントフレーム33の上端及びアッパメインフレーム31,32のそれぞれに連結した左右一対のくの字形状のフロントアッパフレーム41,42(手前側の符号41のみ示す。)と、アッパメインフレーム31,32の前端から後下がりにロアメインフレーム34,36に連結した左右一対の傾斜フレーム43,44(手前側の符号43のみ示す。)と、これらの傾斜フレーム43,44の中間部及びフロントフレーム33のそれぞれに渡して連結することで電動パワーステアリング装置24の下部を支持する左右一対のサブ傾斜フレーム46,47(手前側の符号46のみ示す。)とを備える。
【0018】
ここで、55はフロントキャリア、56は前輪18の上方及び後方を覆うフロントフェンダ、57は燃料タンク、58はシート、61はリヤキャリア、62はエンジン12のシリンダヘッド63の後部側に連結したキャブレタ、66はキャブレタ62にコネクティングチューブ67を介して連結したエアクリーナ、68はシリンダヘッド63の前部から車両後方に延ばした排気管、69は排気管68の後端に接続した消音器、71はロアメインフレーム34,36側に対して後輪23,23をスイング自在に支持するスイングアーム、72,72(手前側の符号72のみ示す。)はスイングアーム71とアッパメインフレーム31,32側とに渡して取付けた左右一対のリヤクッションユニット、73はパワーユニット14の側方に配置したボディサイドカバー、74は後輪23の前方及び上方を覆うリヤフェンダ、75はステップフロアである。
【0019】
図2は本発明に係る不整地走行車両の要部側面図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。以下同じ。)であり、電動パワーステアリング装置24は、前輪を操舵するためのステアリング装置81と、このステアリング装置81を構成するステアリングシャフト38の途中に設けたアクチュエータユニット77と、図示せぬ制御部とからなり、アクチュエータユニット77は、アクチュエータケース78に、操舵トルクを検出するトルクセンサ部(不図示)と、操舵力を補助する動力を発生させるパワーアシスト部83とを設けたものである。制御部は、トルクセンサ部によって検出した操舵トルク等に基づいてパワーアシスト部83を制御する。
【0020】
ステアリング装置81は、ハンドル37(図1参照)と、このハンドル37を支持するインプットシャフト85と、このインプットシャフト85にトルクセンサ部を介して連結したアウトプットシャフト86と、このアウトプットシャフト86の下端部に取付けたステアリングアーム87と、このステアリングアーム87に取付けた左右一対のボールジョイント88,88(手前側の符号88のみ示す。)と、これらのボールジョイント88,88にそれぞれ一端を連結するとともに他端を前輪18(図1参照)側のナックル(不図示)に連結する左右一対のタイロッド(不図示)とからなり、上記のインプットシャフト85とアウトプットシャフト86とは、ステアリングシャフト38を構成する部材である。
【0021】
インプットシャフト85は、2箇所で支持した部材であり、一方の支持は上部軸受部90で行い、他方の支持は、上部軸受部90の下方に位置する中間軸受部91で行う。
上部軸受部90は、左右のフロントアッパフレーム41,42(手前側の符号41のみ示す。)に渡した支持ブラケット92に2本のカラー95,95を介してボルト98,98で取付けたものであり、インプットシャフト85を回転自在に支持するラジアルベアリング(滑り軸受)90aと、このラジアルベアリング90aを挟んで保持する一対のベアリング保持部材90b,90cとからなる。
【0022】
中間軸受部91は、サブアッパフレーム89,89(手前側の符号89のみ示す。)に取付けた中間ベアリング支持ブラケット(不図示。詳細は後述する。)で支持したものである。
【0023】
サブアッパフレーム89,89は、フロントアッパフレーム41,42とアッパメインフレーム31,32(手前側の符号31のみ示す。)とにそれぞれ渡した部材である。
アウトプットシャフト86は、左右のサブ傾斜フレーム46,47(手前側の符号46のみ示す。)に下部ベアリング支持ブラケット101を介して下部軸受部102で支持したものである。
【0024】
トルクセンサ部は、インプットシャフト85側とアウトプットシャフト86側との間にトーションバー(不図示)を設けたものである。
ハンドル37(図1参照)の操作によりインプットシャフト85を回転させると、インプットシャフト85とアウトプットシャフト86との間に相対回転角が生じ、トーションバーが捩られる。この捩れ量をトルクに変換することで操舵トルクが求まる。
【0025】
パワーアシスト部83は、電動モータ96と、この電動モータ96の出力軸及びアウトプットシャフト86のそれぞれの間に介在させたクラッチ(不図示)及び減速機(不図示。ウォームギヤ及びウォームホイールからなる。)とで構成した部分である。
【0026】
電動モータ96は、前端部側(アウトプットシャフト86側)をサブ傾斜フレーム46,47に設けたモータブラケット97,97(手前側の符号97のみ示す。)に取付けたものである。
【0027】
制御部は、トルクセンサ部により検出された操舵トルク、舵角センサにより検出された舵角、不整地走行車両10(図1参照)の車速等に基づいてパワーアシスト部83を制御する。
【0028】
アクチュエータユニット77の下方には、フロント終減速装置17が位置するため、本発明では、電動パワーステアリング装置24のステアリングシャフト38の全長を短くして小さなスペースに電動パワーステアリング装置24を配置した。
【0029】
図3は本発明に係る不整地走行車両の要部平面図であり、アクチュエータユニット77に備える電動モータ96を車両後方に延びるように配置し、強制空冷ファン101を、電動モータ96の後方に配置するとともにエンジン12及び排気管68の前方に配置したことを示す。なお、103は前輪18,18(図1参照)用の左右のフロントクッションユニットのそれぞれの上端を支持するためにフロントフレーム33の上部に車幅方向に延びるように取付けたクロス部材である。
【0030】
電動モータ96は、エンジン12及び排気管68との間を強制空冷ファン101によって完全に遮蔽されるから、電動モータ96を車両後方に延びるように配置して電動モータ96とエンジン12、排気管68との距離が小さくなっても、エンジン12及び排気管68からの直接の放射熱が電動モータ96に当たる心配がない。
【0031】
図4は本発明に係る車両の電動パワーステアリング装置支持構造を示す断面図(一部側面図)であり、インプットシャフト85は、アクチュエータ77から突出させたロアシャフト104と、中間軸受部91に支持されるとともにロアシャフト104に連結したアッパシャフト105とからなる。アッパシャフト105は、ハンドルを支持するアッパパイプ107と、このアッパパイプ107の下端部に取付けた下端連結部材108とからなる。
【0032】
中間軸受部91は、中間ベアリング支持ブラケット111にボルト(不図示)で着脱自在に取付けたアッパベアリングホルダ112と、下端連結部材108を回転自在に支持するためにアッパベアリングホルダ112に取付けた自動調心式のボールベアリング113と、このボールベアリング113をダスト等から保護するためのシール部材114,116とからなる。なお、118はアッパベアリングホルダ112からのボールベアリング113の抜け止めを行う止め輪である。
【0033】
下端連結部材108は、上部に車両後方に突出する後方突出部121を一体に設け、下部に、ナット部材122にねじ結合するためのおねじ123と、ロアシャフト104の外周面に設けたおすセレーション124に結合するめすセレーション126と、先端部に設けたスリット127とを形成した部材である。
【0034】
後方突出部121は、ハンドルを介して下端連結部材108を回転させたときに、アッパベアリングホルダ112に設けたストッパ(不図示)に当たる部分であり、ハンドルの切れ角を所定角度範囲に規制するものである。
【0035】
ナット部材122は、そのめねじ128をおねじ123にねじ込むことで先端122aをボールベアリング113に押し当てたものである。
スリット127は、ロアシャフト104と下端連結部材108とをセレーションにて結合した状態で、下端連結部材108の外周面を締付け部材131で締め付けたときに、そのスリット127の幅が狭くなるようにして締め付け力が有効に作用するようにした部分である。なお、133,134は締付け部材131に設けた締め付け用のボルト及びナットである。
【0036】
下部軸受部102は、サブ傾斜フレーム46,47で支持した下部ベアリング支持ブラケット101の中央部に取付けたロアベアリングホルダ136と、アウトプットシャフト86を回転自在に支持するためにロアベアリングホルダ136にカラー137を介して取付けたボールベアリング138と、このボールベアリング138をダスト等から保護するためのシール部材141,142とからなる。なお、144はロアベアリングホルダ136からボールベアリング138及びカラー137の抜け止めを行う止め輪である。
【0037】
ロアベアリングホルダ136は、前部にアウトプットシャフト86にほぼ沿って下側に突出する下方突出部136aを形成したものであり、ハンドルを切ってアウトプットシャフト86を所定角度回転させたときに、下方突出部136aにステアリングアーム87に設けた側方突出部(不図示)が当たり、アウトプットシャフト86の回転角度範囲が規制される。即ち、下方突出部136aは、アウトプットシャフト86の回転角度範囲を規制するストッパとなる。
【0038】
ステアリングアーム87は、アウトプットシャフト86の端部にナット146で取付けた部材であり、このステアリングアーム87の内周面に形成しためすセレーション147をアウトプットシャフト86の下端部に形成したおすセレーション148に結合し、ステアリングアーム87に一体的に設けたナット部151にボールジョイント(不図示)を取付け、このボールジョイントを前輪側とタイロッド(不図示)で連結する。なお、153はモータブラケット97にボルト(不図示)で電動モータを取付けるときに、そのボルトをねじ込むめねじである。
【0039】
図5は本発明に係る車両の制動装置のブレーキ管を説明する斜視図であり、前輪の制動装置を構成する上部ブレーキ管191をハンドル側からステアリングシャフト38に沿ってステアリングシャフト38の前方を下方へ延ばし、アクチュエータユニット77の上方でクロス部材103の背面に取付けたジョイント部材192により左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194に分岐させ、フロントフレーム33に沿って下方へ延ばし、ステアリングシャフト38の下部を支持するための下部ベアリング支持ブラケット101に取付けたジョイント部材196,197にそれぞれ接続したことを示す。
【0040】
図6は本発明に係るブレーキ管の分岐部を示す背面図であり、クロス部材103の背面103aにボルト201でジョイント部材192を取付け、このジョイント部材192の上部に設けた上部接続口203に上部ブレーキ管191を管接続用ナット部材204で接続し、ジョイント部材192の左右に設けた左接続口206及び右接続口207に左ブレーキ管193と右ブレーキ管194とをそれぞれ管接続用ナット部材208で接続したことを示す。
【0041】
ここで、192aは管接続用部材204のおねじ204aをねじ込むめねじ、192b,192cは管接続用部材208,208のおねじ208aをそれぞれねじ込むめねじ、192eは上部ブレーキ管191側と、左ブレーキ管193、右ブレーキ管194側とを連通させるT字油路である。
【0042】
図7は本発明に係る車両のブレーキ管を説明する不整地走行車両の正面図であり、左右の前輪18,18を懸架するフロントサスペンション210は、フロントアッパアーム支持部材211及びリヤアッパアーム支持部材212,212(図2参照)に上下スイング自在に取付けた左右一対のアッパアーム213,214と、フロントロアアーム支持部材216及びリヤロアアーム支持部材217に上下スイング自在に取付けた左右一対のロアアーム221,222と、フロントフレーム33の上部に取付けたクロス部材103及びアッパアーム213,214のそれぞれに渡した左右一対のフロントクッションユニット223,224とを備えるダブルウィッシュボーン式懸架装置であり、アッパアーム213とロアアーム221とのそれぞれの先端に取付けたナックル(不図示)にブレーキキャリパ227を取付け、アッパアーム214とロアアーム222とのそれぞれの先端に取付けたナックル(不図示)にブレーキキャリパ228を取付ける。
【0043】
前輪用ブレーキ管230は、ハンドル37に設けたマスタシリンダ231からハンドル37及びステアリングシャフト38に沿って下方へ延ばしてジョイント部材192に接続した上部ブレーキ管191と、ジョイント部材192から左右に分岐させてフロントフレーム33に沿うようにフロントフレーム33の内側を下方に延ばしてそれぞれジョイント部材196,197に接続した左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194と、左側のジョイント部材196からアッパアーム213に沿って車両側方に延ばすとともに先端をブレーキキャリパ227に接続した左ブレーキホース233と、右側のジョイント部材197からアッパアーム214に沿って車両側方に延ばすとともに先端をブレーキキャリパ228に接続した右ブレーキホース234とからなる。なお、236,237はブレーキキャリパ227,228とでそれぞれフロントディスクブレーキ238を構成するブレーキディスクである。
【0044】
制動装置240は、ハンドル37に設けた右ブレーキレバー241と、マスタシリンダ231と、前輪用ブレーキ管230と、ジョイント部材192,196,197と、フロントディスクブレーキ238とからなる。
【0045】
以上の図7で説明したように、本発明は第1に、車体フレーム11(図1参照)の前部にステアリングシャフト38を設け、このステアリングシャフト38の上部にハンドル37を取付け、車体フレーム11の前部で左右前輪18,18を支持し、ハンドル37に左右前輪18,18を制動する操作子としての右ブレーキレバー241を備え、この右ブレーキレバー241側から左右前輪18,18側までをブレーキ管230で接続した車両としての不整地走行車両10(図1参照)の制動装置240において、ステアリングシャフト38の下端にステアリング系部材としてのアクチュエータユニット77を配置し、ブレーキ管230、詳しくは、上部ブレーキ管191、左ブレーキ管193、右ブレーキ管194を、右ブレーキレバー241側からハンドル37及びステアリングシャフト38に沿って配管するとともに、アクチュエータユニット77の上方にて車体フレーム11の左右のフレームとしてのフロントフレーム33に沿って配管し、このフロントフレーム33の近傍から左右前輪18,18側に配管することを特徴とする。
【0046】
左ブレーキ管193、右ブレーキ管194をアクチュエータユニット77の上方にて車体フレーム11のフロントフレーム33に沿って配管するため、ステアリングシャフト38周りに必要スペースを確保したときでも、上記の左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194の配管が容易になり、また、車体フレーム11内のスペースを有効に利用することができ、車体フレーム11内への各部品の配置が楽になる。また、左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194をハンドル37、ステアリングシャフト38、フロントフレーム33で飛び石等から保護することができる。
【0047】
本発明は第2に、左右の前輪18,18のためのフロントクッションユニット223,224の一端を支持するクロス部材103に、ブレーキ管230を左右に分岐させる、即ち、上部ブレーキ管191を左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194に分岐させる分岐部材としてのジョイント部材192を取付けたことを特徴とする。
【0048】
フロントクッションユニット223,224の一端を支持するクロス部材103にジョイント部材192を取付けたので、クロス部材103でジョイント部材192の支持部材を兼ねることができ、特別に分岐部材を支持する部材が必要なく、部品数を減らすことができ、コスト、重量を減らすことができる。
【0049】
本発明は第3に、左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194を、フロントフレーム33の内側に沿わせたことを特徴とする。
左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194を正面視を逆U字形状としたフロントフレーム33の内側に沿わせたので、フロントフレーム33の内側のスペースをより大きくすることができ、部品等の配置にスペースを有効に利用することができる。
【0050】
本発明は第4に、上部ブレーキ管191、左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194を、ハンドル37側からステアリングシャフト38に沿って下方に1本で延ばすとともに、電動パワーステアリング装置24用のアクチュエータユニット77の上方で左右に分岐させてそれぞれ下方に延ばしたことを特徴とする。
【0051】
上部ブレーキ管191をアクチュエータユニット77の上方で左右に分岐させて、左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194としてそれぞれ下方に延ばしたので、アクチュエータユニット77を車体フレーム11に組付けるときに、左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194管がアクチュエータ77の組付時の邪魔にならず、組付性を向上させることができる。
【0052】
本発明は第5に、ステアリング系部材を、ステアリングシャフト38の途中に設けた電動パワーステアリング装置24用のアクチュエータユニット77としたことを特徴とする。
【0053】
ステアリング系部材を電動パワーステアリング装置24用のアクチュエータユニット77としたので、アクチュエータユニット77のように大きな部材であっても、左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194を良好に配管することができる。
【0054】
尚、本実施形態では、図7に示したように、左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194をフロントフレーム33に沿って且つフロントフレーム33の内側に配置したが、これに限らず、左ブレーキ管193及び右ブレーキ管194の一部をフロントフレーム33に沿って且つフロントフレーム33の近傍の後方に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の制動装置は、不整地走行車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る制動装置を備える不整地走行車両の側面図である。
【図2】本発明に係る不整地走行車両の要部側面図である。
【図3】本発明に係る不整地走行車両の要部平面図である。
【図4】本発明に係る車両の電動パワーステアリング装置支持構造を示す断面図である。
【図5】本発明に係る車両の制動装置のブレーキ管を説明する斜視図である。
【図6】本発明に係るブレーキ管の分岐部を示す背面図である。
【図7】本発明に係る車両のブレーキ管を説明する不整地走行車両の正面図である。
【符号の説明】
【0057】
10…車両(不整地走行車両)、11…車体フレーム、18…前輪、24…電動パワーステアリング装置、33…フレーム(フロントフレーム)、37…ハンドル、38…ステアリングシャフト、77…ステアリング系部材(アクチュエータユニット)、103…クロス部材、192…分岐部材(ジョイント部材)、223,224…クッションユニット(フロントクッションユニット)、230…ブレーキ管(前輪用ブレーキ管)、240…制動装置、241…操作子(右ブレーキレバー)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの前部にステアリングシャフトを設け、このステアリングシャフトの上部にハンドルを取付け、前記車体フレームの前部で左右前輪を支持し、前記ハンドルに前記左右前輪を制動する操作子を備え、この操作子側から前記左右前輪側までをブレーキ管で接続した車両の制動装置において、
前記ステアリングシャフトの下端にステアリング系部材を配置し、
前記ブレーキ管は、前記操作子側から前記ハンドル及び前記ステアリングシャフトに沿って配管されるとともに、前記ステアリング系部材の上方にて前記車体フレームの左右のフレームに沿って配管され、
これらの左右のフレームの近傍から前記左右前輪側に配管されることを特徴とする車両の制動装置。
【請求項2】
前記左右前輪から車体側へ伝わる衝撃を吸収するクッションユニットの一端を支持するクロス部材に、前記ブレーキ管を左右に分岐させる分岐部材を取付けたことを特徴とする請求項1記載の車両の制動装置。
【請求項3】
前記ブレーキ管は、前記フレームの内側に沿うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の制動装置。
【請求項4】
前記車両は不整地走行車両であり、前記ブレーキ管は、前記操作子側から前記ステアリングシャフトに沿って下方に1本で延びるとともに、前記ステアリング系部材の上方で左右に分岐してそれぞれ下方に延びることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の車両の制動装置。
【請求項5】
前記ステアリング系部材は、前記ステアリングシャフトの途中に設けた電動パワーステアリング装置用アクチュエータユニットであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両の制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−281853(P2006−281853A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101367(P2005−101367)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】