説明

車両の制御システム

【課題】車両停止条件成立時に内燃機関の吸気弁の開閉タイミングを変更することに伴う消費電力をカバーすることが可能な車両の制御システムを提供する。
【解決手段】制御システム1は、吸気弁の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構を有する内燃機関10と、内燃機関10に連結される第2モータジェネレータ102と、第2のモータジェネレータ102と電気的に接続されるバッテリ103と、内燃機関10及び第2のモータジェネレータ102を制御するECU80と、を備え、ECU80は、内燃機関10の停止条件成立時に、第2モータジェレータの第1の回生制御を実行した後に、内燃機関10における燃料噴射を停止し、続いて、第2モータジェネレータ102をモータとして駆動しつつ可変バルブタイミング機構を制御することによって、吸気弁の開閉タイミングを所定タイミングに変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される制御システムに関し、詳細には、内燃機関の吸気弁の開閉タイミングの変更及び回生制御が可能な車両に搭載される制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において、アイドリングストップ時に、内燃機関の吸気弁の開閉タイミングを変更することによって、再始動時における内燃機関の速やかな作動を実現する技術が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された技術では、可変バルブタイミング機構の制御性を向上させるため、アイドリングストップ時の内燃機関停止後にモータジェネレータによって内燃機関を回転させつつ、可変バルブタイミング機構を作動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−190495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる技術では、吸気弁の開閉タイミングを変更する際にモータジェネレータをモータとして使用するため、バッテリに蓄えられた電力を消費してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、車両停止条件成立時に内燃機関の吸気弁の開閉タイミングを変更することに伴う消費電力をカバーすることが可能な車両の制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、吸気弁又は排気弁の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構を有する内燃機関と、前記内燃機関に連結されるモータジェネレータと、前記モータジェネレータと電気的に接続されるバッテリと、前記内燃機関及び前記モータジェネレータを制御する制御装置と、を備える車両の制御システムであって、前記制御装置は、前記内燃機関の停止条件成立時に、前記モータジェレータの第1の回生制御を実行した後に、前記内燃機関における燃料噴射を停止し、続いて、前記モータジェネレータをモータとして駆動しつつ前記可変バルブタイミング機構を制御することによって、前記吸気弁又は前記排気弁の開閉タイミングを所定タイミングに変更することを特徴とする。
【0007】
かかる構成によると、内燃機関停止に先立って回生制御を実行するので、内燃機関停止時におけるモータジェネレータの作動による電力消費をカバーすることができる。
【0008】
前記制御装置は、前記第1の回生制御によって前記バッテリに蓄電された電力量が所定電力量以上となった場合に、前記内燃機関における燃料噴射を停止することが好ましい。
【0009】
かかる構成によると、第1の回生制御においてバッテリに蓄電される電力量を好適に確保することができる。
【0010】
前記制御装置は、前記吸気弁又は前記排気弁の開閉タイミングを所定タイミングに変更する際に、前記内燃機関が所定回転速度以上となるように前記モータジェネレータを駆動し、前記吸気弁の開閉タイミングが所定タイミングに変更された後に前記モータジェネレータの第2の回生制御を実行することが好ましい。
【0011】
かかる構成によると、可変バルブタイミング機構の作動後に第2の回生制御を実行するので、内燃機関の回転速度を速やかに低下させ、車体の共振を低減することができる。また、モータジェネレータによって内燃機関を所定回転速度以上で回転させた状態から第2の回生制御を実行するので、より多くの電力量を回生することができる。
【0012】
前記制御装置は、前記吸気弁又は前記排気弁の開閉タイミングを所定タイミングに変更する際に、前記内燃機関が前記所定回転速度となるように前記モータジェネレータを駆動することが好ましい。
【0013】
かかる構成によると、モータジェネレータによって内燃機関を所定回転速度で回転させた状態から第2の回生制御を実行するので、モータジェネレータによる消費電力を抑制しつつ、多くの電力量を回生することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両停止条件成立時に内燃機関の吸気弁の開閉タイミングを変更することに伴う消費電力をカバーすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る車両の制御システムの構成図である。
【図2】内燃機関の内部構造を示す断面図である。
【図3】内燃機関の電動バルブタイミング調整装置の構造を示す側面図である。
【図4】電動バルブタイミング調整装置における進角及び遅角を説明するための模式図である。
【図5】電動バルブタイミング調整装置による吸気弁の位相の変化を説明するための図である。
【図6】ECUによる吸気弁の位相、内燃機関の回転速度及び燃料噴射の基本的な制御を説明するための図であり、(a)はアイドリングストップ→再始動の場合を示す図、(b)はアイドリングストップ→イグニッションオフ→イグニッションオン→再始動の場合を示す図である。
【図7】ECUの動作例を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートによる吸気弁の位相、内燃機関の回転速度及び燃料噴射の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0017】
≪駆動システムの構成≫
図1に示す本実施形態に係る車両の制御システム(以下、単に「制御システム」と記載する)1は、図示しない車両(移動体)に搭載されており、車両の駆動力を発生するシステムである。
制御システム1は、内燃機関10と、トランスミッション30と、車両の前進時に一体となって正方向(一方向)で回転する出力軸71と、システムを電子制御するECU80(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
なお、「正方向」は車両の前進方向に対応する方向であり、「逆方向」は車両の後退方向に対応する方向である。
【0018】
<内燃機関>
本実施形態において、内燃機関10は、シリンダブロック(図示せず)に4つのシリンダ13a〜13dを有する直列4気筒型で構成されたレシプロエンジンである。ただし、シリンダの数はこれに限定されず、適宜に変更自由である。本実施形態において、4つのシリンダ13a〜13dに連結されたシャフトは、各シリンダ13a〜13dのエンジントルクの位相が180度ずつずれるように(図11参照)、クランク軸12に連結されている。
内燃機関10では、混合ガスをシリンダ11内に吸気する吸気行程、ピストン13a〜13dの上昇により混合ガスをシリンダ11内で圧縮する圧縮行程、プラグ(図示せず)に通電して混合ガスを燃焼させる燃焼行程、シリンダ11内の燃焼ガスを排気する排気行程、が各シリンダ11内で繰り返される。エンジン10においてプラグの通電や混合ガスの供給などの各種制御は、車両に搭載されたECU80によって制御されている。
【0019】
<トランスミッション>
図1に示すように、トランスミッション30は、クランク軸12の回転運動を無限無段階で変速する機構である。
【0020】
<その他構成>
制御システム1は、クラッチ91と、デフ装置92(ディファレンシャル装置)と、を備えている。
さらに説明すると、出力軸71は、ECU80により制御されるクラッチ91を介して、デフ装置92を構成するデフケース93(被回転駆動部材)に連結されている。
クラッチ91は、出力軸71とデフケース93との間において動力を伝達/遮断するものである。
デフ装置92は、デフケース93内にサイドギヤやピニオンギヤを備えている。そして、右側のサイドギヤは、右側の駆動輪94Aと一体である第1駆動シャフト95Aと連結されており、左側のサイドギヤは、左側の駆動輪94Bと一体である第2駆動シャフト95Bと連結されている。これにより、第1駆動シャフト95A(駆動輪94A)と第2駆動シャフト95B(駆動輪94B)とは、デフ装置92を介して差動回転するようになっている。
【0021】
なお、車両の前進時、通常、クラッチ91は出力軸71とデフケース93とを連結するように制御される。これにより、車両の前進時、通常、出力軸71は、正方向(車両が前進する方向)で回転するようになっている。
【0022】
制御システム1は、第1モータジェネレータ101と、第2モータジェネレータ102と、バッテリ103と、を備えている。
バッテリ103は、例えば、リチウムイオン型で充放電可能に構成され、第1モータジェネレータ101と、第2モータジェネレータ102との間で、電力を授受し、トランスミッション30を駆動するためのDCモータ31に電力を供給するようになっている。バッテリ103には、当該バッテリ103に蓄えられた電力量を検出する電力量センサ103Sが接続されており、検出された電力量は、ECU80へ出力される。
【0023】
第1モータジェネレータ101の出力軸には第1ギヤ104が固定されており、第1ギヤ104はデフケース93に固定された第2ギヤ105と噛合している。これにより、第1モータジェネレータ101とデフケース93との間で動力が授受されるように構成され、第1モータジェネレータ101がモータ又はジェネレータ(発電機)として機能するようになっている。
すなわち、モータとして機能する場合、第1モータジェネレータ101はバッテリ103を電源とし、ジェネレータとして機能する場合、第1モータジェネレータ101の発電電力はバッテリ103に充電されるようになっている。
【0024】
第2モータジェネレータ102の出力軸は内燃機関10のクランク軸12と連結されている。
なお、第2モータジェネレータ102をモータとして機能させる場合、つまり、バッテリ103を電源として駆動させモータとして機能させる場合は、例えば、クランク軸12の回転をアシストする場合や、内燃機関10のスタータとして機能させる場合である。
一方、第2モータジェネレータ102をジェネレータとして機能させる場合は、第2モータジェネレータ102の発電電力をバッテリ103に充電する場合である。
【0025】
図2に示すように、内燃機関10は、シリンダ13(13a〜13d)と、各シリンダ13に往復運動可能に嵌合するピストン204と、各ピストン204にコンロッド205を介して連結されるクランク軸12とを備える多気筒内燃機関であり、搭載対象としての車両に、クランク軸12の回転中心線が左右方向に指向する横置き配置で搭載される。
【0026】
内燃機関10は、4つのシリンダ13が直列に配列されて一体に設けられたシリンダブロック201と、シリンダブロック201の上側端部に結合されるシリンダヘッド202と、シリンダヘッド202の上側端部に結合されるヘッドカバー203とから構成される機関本体を備える。
シリンダ13毎に、該シリンダ13のシリンダ軸線Lcに平行な方向であるシリンダ軸線方向でピストン204とシリンダヘッド202との間には、シリンダ13とピストン204とシリンダヘッド202とにより燃焼室207が形成される。
【0027】
なお、この明細書において、軸方向は動弁装置220のカム軸221i,221eの回転中心線Li,Leに平行な方向であるとする。
また、実施形態において、直交方向は、軸方向から見たとき(以下、「軸方向視」という。)、シリンダ軸線Lcに直交する方向であるとし、前後方向は、車両の前後方向に一致するとする。そして、シリンダ軸線Lcに直交する平面であるシリンダ直交平面に対して、上方となる側を上側、下方となる側を下側という。
【0028】
シリンダ軸線方向でシリンダブロック201の上側に配置されたシリンダヘッド202には、シリンダ13(すなわち、燃焼室207毎)に、燃焼室207に開口する1対の吸気口を有する吸気ポート208および1対の排気口を有する排気ポート209と、前記1対の吸気口および前記1対の排気口をそれぞれ開閉する1対の第1機関弁としての吸気弁210および1対の第2機関弁としての排気弁211と、燃焼室207に臨む点火栓212とが設けられる。点火栓212は、点火コイルと共にシリンダヘッド202に設けられる円筒状の収容筒213内に配置される。収容筒213は、シリンダヘッド202に一体成形されると共に点火栓212が取り付けられる取付孔が設けられた円筒状の収容部に嵌合する。
【0029】
内燃機関10は、シリンダヘッド202およびヘッドカバー203により形成される動弁室215内に配置されると共に吸気弁210および排気弁211を開閉駆動する動弁装置220のほかに、さらに、シリンダヘッド202の吸気側に取り付けられると共に内燃機関10の外部から取り入れた吸入空気を吸気ポート208を経て燃焼室207に導く吸気装置216と、シリンダヘッド2の吸気側に取り付けられると共に吸入空気と混合して混合気を形成する燃料を噴射する燃料噴射弁(図示されず)と、シリンダヘッド202の排気側に取り付けられると共に燃焼室207内での混合気の燃焼により発生した燃焼ガスを排気ガスとして排気ポート209を経て内燃機関10の外部に導く排気装置217とを備える。また、この排気装置217は、排気ガス浄化装置としての触媒装置217aを備えている。
そして、ピストン204は、燃焼室7内の混合気が点火栓212により点火されて燃焼して発生する燃焼ガスの圧力により駆動されて往復運動し、コンロッド205を介してクランク軸12を回転駆動する。
【0030】
なお、吸気側とは、シリンダ1aのシリンダ軸線Lcを含むと共に回転中心線Li,Leに平行な平面であるシリンダ中心平面に対して、吸気弁210の全体または大部分が位置する側を意味し、排気側とは、該シリンダ中心平面に対して、排気弁211の全体または大部分が位置する側を意味する。
また、この実施形態では、内燃機関10は、シリンダ軸線Lcが鉛直方向に対して所定の傾斜角で前傾するように、車体に傾斜して搭載される。そして、前記機関本体においては、後側となる吸気側が前側となる排気側に対して上方寄りに位置する。
【0031】
動弁装置220は、第1動弁カムとしての吸気カム222iを有する第1カム軸としての吸気カム軸221iおよび第2動弁カムとしての排気カム222eを有する第2カム軸としての排気カム軸221eから構成されるカム軸と、吸気弁210および排気弁211にそれぞれ当接すると共に吸気カム222iおよび排気カム222eによりそれぞれ駆動されて吸気弁210および排気弁211を開閉する吸気ロッカアーム225iおよび排気ロッカアーム225eと、吸気弁210および排気弁211を閉弁方向に常時付勢する弁バネ226と、クランク軸12の回転と同期して各カム軸221i,221e(したがって各カム222i,222e)を回転駆動する回転駆動部材(図示せず)と、吸気弁210の開閉タイミングを変更可能とするためにECU80(図1参照)により制御される電動式の可変バルブタイミング機構301とを備える。
各ロッカアーム225i,225eは、シリンダヘッド202に設けられる支持部材としてのラッシュアジャスタ227に揺動可能に支持される。そして、吸気カム222iおよび排気カム222eは、吸気ロッカアーム225iおよび排気ロッカアーム225eを介して、吸気弁210および排気弁211をそれぞれ開閉駆動する。
【0032】
電動式の可変バルブタイミング機構301は、内燃機関10に設けられて吸気弁210の開閉タイミングすなわち位相を変更可能な機構であり、図3に示すように、出力軸311を有するモータ310と、出力軸311およびカム軸221iに連結された回動部材を有する位相変換機構部320と、を備えている。
モータ310は、ECU80によって出力軸311の回動が制御されている。そして、出力軸311を進角側または遅角側に回動させることで、タイミングギヤに対して、カム軸221iを進角側又は遅角側に相対回動させることができる。
【0033】
図4に示すように、位相変換機構部320は、駆動側回転体321と、従動側回転体322と、外歯車323と、を備えている。駆動側回転体321は、内燃機関10のクランク軸12との間にタイミングチェーンが巻き掛けられるタイミングスプロケットである。クランク軸12の出力トルクが駆動側回転体321へ入力されるときには、駆動側回転体321はクランク軸12と連動して、当該クランク軸12に対する相対位相を保ちつつ図4の時計方向へ回転する。従動側回転体322は内燃機関10のカム軸221iに同軸上に連結されており、カム軸221iと一体に図4の時計方向へ回転する。また、従動側回転体322は、内歯車であって、前記した出力軸311に連結された外歯車323と歯合している。
【0034】
また、駆動側回転体321の内周にはストッパ321aが形成されており、従動側回転体322の外周には突起322aが形成されている。モータ310によって従動側回転体322が駆動側回転体321に対し進角方向へ相対回転した場合には、突起322aの時計回り側縁部がストッパ321aの反時計回り側縁部に当接して回転が規制され、モータ310によって従動側回転体322が駆動側回転体321に対し遅角方向へ相対回転した場合には、突起322aの反時計回り側縁部がストッパ321aの時計回り側縁部に当接して回転が規制される。
【0035】
ECU80は、車両の状態を検出する車両状態検出手段によって検出された車両の状態が所定条件(内燃機関10の停止条件)を満たした場合に、内燃機関10を停止させ、アイドルストップを開始する。一例として、ECU80は、内燃機関10の駆動状態において、車速センサによって検出された車体速度が、所定値(例えば、1km/h)未満であり、クラッチペダル操作量センサ(又は、クラッチペダルスイッチ)によって検出されたクラッチペダルの操作量が、運転手による操作がなされてないことを示すものであり、かつ、ニュートラルセンサによって検出されたトランスミッション30の状態が、ニュートラルであることを示すものである場合に、アイドルストップを実行すると判定し、内燃機関10の燃料噴射を停止させる。
【0036】
また、ECU80は、アイドルストップ実行時において内燃機関10の停止から所定のアイドルストップ時間が経過したときに、スタータを駆動することによって、内燃機関10を再始動させる。また、ECU80は、アイドルストップ実行時において内燃機関10の停止からアイドルストップ時間が経過する前であっても、クラッチペダル操作量センサによって検出されたクラッチペダルの操作量が、運転手による操作がなされていることを示すものである場合には、アイドルストップを終了すると判定し、スタータを駆動することによって、内燃機関10を再始動させることができる。
【0037】
<電動バルブタイミング調整装置の基本的な制御>
ここで、電動バルブタイミング調整装置301の基本的な制御について説明する。図5に示すグラフは、吸気弁210及び排気弁211の開閉タイミング(位相)を示しており、吸気弁210及び排気弁211は、グラフが立ち上がる時刻で開弁し、グラフの頂点で最大開度となり、グラフが下がりきった時刻で閉弁する。図5(a)に示すように、ECU80は、クランキング前(例えば、アイドリングストップ時)に、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して機関位相を第1の所定位相に遅角させる(点線→実線)。続いて、図5(b)に示すように、ECU80は、クランキング途中(例えば、アイドリングストップ後の内燃機関10再始動時)で、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して機関位相を第2の所定位相まで進角させる(点線→実線)。続いて、図5(c)に示すように、ECU80は、内燃機関10の完爆後に、電動バルブタイミング調整装置を駆動して機関位相をさらに第3の所定位相まで進角させ、排気弁211の開弁末期と吸気弁210の開弁初期とが重なるようにする(点線→実線)。
【0038】
<位相変更制御>
図6(a)に示すように、車両が停車し、内燃機関10の停止条件が満たされると(時刻t11)、ECU80は、内燃機関10の燃料噴射を停止するとともに、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して所定位相に変更させる。すなわち、モータ310の駆動力によって位相調整ユニット320が作動し、時刻t12において、吸気弁210の開閉タイミング、すなわち、吸気カム222iの位相が第1の所定位相に遅角され(図5(a)参照)、時刻t13において、内燃機関10の回転速度はゼロとなる。
【0039】
アイドリングストップ後の内燃機関10再始動時(時刻t14〜)において、内燃機関10の回転速度が所定回転数に達すると(時刻t15)、ECU80は、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して所定位相に変更させる。すなわち、モータ310の駆動力によって位相調整ユニット320が作動し、時刻t16において、吸気弁210の開閉タイミング、すなわち、吸気カム222iの位相が第2の所定位相まで進角され(図5(b)参照)、ECU80は、モータ310を停止するとともに内燃機関10に燃料を噴射させる。
【0040】
また、図6(b)に示すように、車両が停車し、内燃機関10の停止条件が満たされると(時刻t21)、ECU80は、内燃機関10の燃料噴射を停止するとともに、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して所定位相に変更させる。すなわち、モータ310の駆動力によって位相調整ユニット320が作動し、時刻t22において、吸気弁210の開閉タイミング、すなわち、吸気カム222iの位相が第1の所定位相に遅角され(図5(a)参照)、時刻t23において、内燃機関10の回転速度はゼロとなる。
【0041】
さらに、イグニッションがオフにされると(時刻t24)、ECU80は、ECU80は、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して所定位相に変更させる。すなわち、モータ310の駆動力によって位相調整ユニット320が作動し、時刻t25において、吸気弁210の開閉タイミング、すなわち、吸気カム222iの位相が第2の所定位相に進角される(図5(b)参照)。
【0042】
続いて、イグニッションがオンにされると、(時刻t26)、ECU80は、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して所定位相に変更させる。すなわち、時刻t27において、吸気弁210の開閉タイミング、すなわち、吸気カム222iの位相が第1の所定位相に遅角される。
続いて、内燃機関10の回転速度が所定回転数に達すると(時刻t28)、ECU80は、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して所定位相に変更させる。すなわち、モータ310の駆動力によって位相調整ユニット320が作動し、時刻t29において、吸気弁210の開閉タイミング、すなわち、吸気カム222iの位相が第2の所定位相まで進角され(図5(b)参照)、ECU80は内燃機関10に燃料を噴射させる。
【0043】
続いて、内燃機関10が完爆すると(時刻t30)、ECU80は、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して所定位相に変更させる。すなわち、モータ310の駆動力によって位相調整ユニット320が作動し、時刻t31において、吸気弁210の開閉タイミング、すなわち、吸気カム222iの位相が第3の所定位相までさらに進角される(図5(c)参照)。
【0044】
<電動バルブタイミング調整装置の本実施形態の制御>
続いて、電動バルブタイミング調整装置301の本実施形態の制御について、図7及び図8を参照して説明する。かかる制御は、前記した時刻t11〜t13,t21〜t23における制御に代えて実行される。
【0045】
まず、ECU80は、内燃機関10の停止条件が成立しているか否かを判定する(ステップS1)。
内燃機関10の停止条件が成立している場合(アイドリングストップ可)には(ステップS1でYes)、ECU80は、内燃機関10の回転速度を所定回転速度まで上昇させる(時刻t41→t42)とともに、第2モータジェネレータ102による第1の回生制御を開始する(時刻t41)(ステップS2)。
【0046】
続いて、ECU80は、第1の回生制御によってバッテリ103に充電された電力量が所定電力量以上となったか否かを判定する(ステップS3)。
第1の回生制御によってバッテリ103に充電された電力量が所定電力量以上となった場合には(ステップS3でYes)、ECU80は、内燃機関10の燃料噴射を停止するとともに、第2モータジェネレータ102を所定トルクで回転させつつ、電動バルブタイミング調整装置301を駆動して所定位相に変更させる(時刻t43→t44)(ステップS4)。すなわち、モータ310の駆動力によって位相調整ユニット320が作動し、時刻t44において、吸気弁210の開閉タイミング、すなわち、吸気カム222iの位相が第1の所定位相に遅角される(図5(a)参照)。回生制御によってバッテリに充電された電力量は、電力量センサ103Sの検出結果に基づいて算出される。ここで、ステップS3は、バッテリ103に充電された電力量が所定電力量以上となるまで繰り返される(ステップS3でNoの場合)。なお、ステップS4において、第2モータジェレータ102をモータとして所定トルクで回転させるのは、燃料噴射が停止された内燃機関10の回転速度を所定回転速度以上とし、吸気弁210の開閉タイミングの変更を容易にするためである。ここで、所定回転速度は、テスト等によって適宜設定される値であり、例えば、内燃機関10の駆動時においてアクセルペダルが操作されていないときの回転速度よりも大きい値に設定可能である。
【0047】
吸気弁210の位相が第1の所定位相に変更されると(ステップS5でYes)、続いて、ECU80は、第2モータジェネレータ102による第2の回生制御を開始し(時刻t44)、内燃機関10の回転速度がゼロとなるまで第2の回生制御を実行する(時刻t44→時刻t45)(ステップS6)。ここで、ステップS5は、吸気弁210の位相が第1の所定位相となるまで繰り返される(ステップS5でNoの場合)。また、ECU80は、カム軸221iに設けられたパルスセンサ(図示せず)によって検出されたカム軸221iの回転角度を吸気カム222iの位相として取得することができる。
【0048】
なお、時刻t41〜t43の回生制御によってバッテリ103に充電される電力量W1、時刻t43〜t44のトルク発生によってバッテリ103から放電される電力量W2、及び、時刻t44〜t45の回生制御によってバッテリ103に充電される電力量W3は、テストによって、
1+W3≧W2
となるように設定されている。前記した所定電力量は、かかる式を満たすようなW1に基づいて設定されており、例えば、所定電力量=W2とすることができる。
【0049】
本発明の実施形態に係る制御システム1は、アイドリングストップ実行に先立って第1の回生制御を実行するので、アイドリングストップ時における第2のモータジェネレータ102及び可変バルブタイミング機構301の作動による電力消費をカバーすることができる。
また、本発明の実施形態に係る制御システム1は、アイドリングストップ時において吸気弁210の開閉タイミングを変更する際の内燃機関10の回転速度の低下を緩やかにすることによって、可変バルブタイミング機構301の制御性を向上させることができる。
また、本発明の実施形態に係る制御システム1は、アイドリングストップ時における可変バルブタイミング機構301の作動後に第2の回生制御を実行するので、アイドリングストップ時における位相調整ユニット320の作動による電力消費をカバーすることができる。
また、本発明の実施形態に係る制御システム1は、可変バルブタイミング機構301の作動後に第2の回生制御を実行するので、内燃機関10の回転速度を速やかに低下させ、車体の共振を低減することができる。
また、本発明の実施形態に係る制御システム1は、第2モータジェネレータ102によって内燃機関10を所定回転速度で回転させた状態から第2の回生制御を実行するので、より多くの電力量を回生することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、吸気弁210及び排気弁211の開閉タイミングの相対関係を変更すればよいため、本発明の制御システムは、吸気弁210ではなく排気弁211の位相(開閉タイミング)を変更する可変バルブタイミング機構を備えていてもよく、吸気弁210及び排気弁211に対してそれぞれの開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構を備える構成であってもよい。また、ステップS4において、燃料噴射が停止された内燃機関10の回転速度が所定回転速度となるように第2モータジェネレータ102を制御する構成であってもよい。また、ステップS3に代えて、第1の回生制御が所定時間実行された場合にステップS4へと進む構成であってもよい。また、可変バルブタイミング機構は、前記した電動式に限定されず、油圧式であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 制御システム(車両の制御システム)
10 内燃機関
80 ECU(制御装置)
102 第2モータジェネレータ(モータジェネレータ)
103 バッテリ
210 吸気弁
211 排気弁
301 可変バルブタイミング機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁又は排気弁の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構を有する内燃機関と、
前記内燃機関に連結されるモータジェネレータと、
前記モータジェネレータと電気的に接続されるバッテリと、
前記内燃機関及び前記モータジェネレータを制御する制御装置と、
を備える車両の制御システムであって、
前記制御装置は、前記内燃機関の停止条件成立時に、前記モータジェレータの第1の回生制御を実行した後に、前記内燃機関における燃料噴射を停止し、続いて、前記モータジェネレータをモータとして駆動しつつ前記可変バルブタイミング機構を制御することによって、前記吸気弁又は前記排気弁の開閉タイミングを所定タイミングに変更する
ことを特徴とする車両の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1の回生制御によって前記バッテリに蓄電された電力量が所定電力量以上となった場合に、前記内燃機関における燃料噴射を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記吸気弁又は前記排気弁の開閉タイミングを所定タイミングに変更する際に、前記内燃機関が所定回転速度以上となるように前記モータジェネレータを駆動し、前記吸気弁の開閉タイミングが所定タイミングに変更された後に前記モータジェネレータの第2の回生制御を実行する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記吸気弁又は前記排気弁の開閉タイミングを所定タイミングに変更する際に、前記内燃機関が前記所定回転速度となるように前記モータジェネレータを駆動する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113141(P2013−113141A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257761(P2011−257761)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】