説明

車両の制御装置

【課題】パーキングロック手段が解除位置に作動されたときに、動力入力手段に駆動軸から衝撃が加わるのを抑制することができ、乗車している人に不快感を与えるのを防止することができる車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】坂道でハイブリッド車両を停車させるために、ブレーキ装置を"オン"にするとともに、シフトレバーをパーキングポジションPにシフトしてパーキングロック手段を解除位置に作動し、次いで、ブレーキ装置を"オフ"にしたときにドライブシャフトに捩じれトルクが発生した状態でブレーキ装置を"オン"にする場合に、間接的に検出されたドライブシャフトの捩じれ量に基づいてブレーキ装置のブレーキ力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、シフト選択位置に応じて駆動輪が回転しないように固定する固定位置および駆動輪の回転を許容する許容位置との間で作動するパーキングロック手段を有する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ギヤの噛み合いにより内燃機関から駆動輪に動力を伝達する動力伝達手段を備えた車両にあっては、ブレーキ装置によって駆動輪を停止させた後、シフトレバーがパーキングポジションに操作されたとき、機械的なパーキングロック手段のギヤが噛合することにより駆動輪をロックするようにしているものが知られている。
【0003】
従来のこの種のパーキングロック手段として、ハイブリッド車両にあっては、動力分配機構の3つの回転要素に、内燃機関と、第1モータジェネレータと、駆動輪に減速機を介して連結された第2モータジェネレータとがそれぞれ接続されており、減速機の回転軸に取付けられたパーキングロックギヤと、このパーキングロックギヤに噛合して駆動輪の回転を停止するパーキングロックポールとからなる機械的なパーキングロック手段を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、この種のパーキングロック手段を有する車両を勾配のある路面に停車させる操作をした場合に、以下の理由により、車両に揺れが生じてしまうことがある。
【0004】
図10(a)に示すように、勾配を有する路面において、ブレーキペダルが操作されて車両が停車しているときに、シフトレバーがパーキングポジションに移動されると、パーキングロックギヤ1にパーキングロックポール2が噛合してパーキングロック手段3が作動する。
【0005】
パーキングロック手段3が作動した後に、ブレーキペダルの操作が解除されると、路面に勾配があるため、車両には自重による下り方向の力が働く。このとき、パーキングロック手段3を支点として駆動輪4に連結されたドライブシャフト5に捩れが発生する。
【0006】
特に、この捩れトルクが大きいと、ドライブシャフト5の弾性力(復元力)による揺り返しが発生するため、自重によりドライブシャフト5に発生する捩れトルクとドライブシャフト5の弾性力(復元力)とが釣り合う位置に収束するまで車両が前後に揺れる場合がある。この揺れにより、乗車している人に不快感を与えてしまうことがある。
【0007】
このような不具合を解消するものとして、車両の停車状態において、シフトレバーがパーキングポジションに移動した後に、ブレーキ装置の操作が解除されると、制動力が漸減するようにブレーキ装置を制御するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
具体的には、車両が勾配を有する路面に停車しているときに、シフトレバーがパーキングポジションに移動されると、パーキングロック手段が作動する。パーキングロック手段の作動後に、ブレーキ装置の操作が解除されても、駆動輪における制動力が漸減するように制御されるため、車両の自重により生じる下り方向の力がドライブシャフトに緩やかに加わるようにすることができる。
【0009】
このため、自重によりドライブシャフトに加わる捩れトルクと、ドライブシャフトの弾性力とが緩やかに釣り合うため、ドライブシャフトの弾性力により生じる揺り返しが抑制される。このため、車両が前後に揺れることが抑制されるため、乗車している人に不快感を与えるのを抑制することができる。
【特許文献1】特開平10−278758号公報
【特許文献2】特開2007−55354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の車両の制御装置にあっては、車両の停車状態において、シフトレバーがパーキングポジションに移動した後に、ブレーキ装置の操作が解除されると、制動力が漸減するようにブレーキ装置を制御するようにしているだけであるため、ブレーキ装置の操作を解除した後に、シフトレバーをパーキングポジションから他のポジションに移動するためにパーキングロックギヤとパーキングロックポールとの噛合を解除するときに、ドライブシャフトの捩じれトルクが重量の大きい慣性体まで伝達されてしまうことがある。
【0011】
具体的には、図10(b)に示すように、パーキングロックギヤ1とパーキングロックポール2との噛合を解除するためにブレーキ装置を作動させると、駆動輪4に設けられたブレーキディスクがホイールシリンダ6によって固定されることから、駆動輪4が回転しないように固定される。
【0012】
この状態でパーキングロックギヤ1とパーキングロックポール2との噛合を解除すると、ドライブシャフト5に蓄積されていた捩じれエネルギーが急激に開放されるため、駆動輪4側が支点となってドライブシャフト5の捩じりエネルギーによってパーキングロックギヤ2を含めたギヤ機構が急激に回転しようとする。
【0013】
例えば、減速機にパーキングロック手段3が設けられているハイブリッド車両にあっては、減速機よりも上流側に重量の大きい慣性体であるモータジェネレータが設けられているため、慣性の法則によってモータジェネレータがドライブシャフト5の捩じれエネルギーを受けても直ちに回転することはないため、ドライブシャフト5に蓄積されている捩じれエネルギーがドライブシャフト5から減速機を介してモータジェネレータに伝達されることになる。
【0014】
したがって、動力入力手段がモータジェネレータのロータシャフトから構成される場合には、ロータシャフトやロータシャフトを支持する軸受等に大きな衝撃が加わってしまい、乗車している人に不快感を与えてしまうことがあった。
【0015】
これに対して、特許文献2に記載されたものは、車両の停車状態において、シフトレバーがパーキングポジションに移動した後にブレーキ装置の操作が中止されると、制動力が漸減するようにブレーキ装置を制御するようにしているだけであり、制動力の漸減後に制動力が完全に解除されたときには、車両の自重により生じる下り方向の力を完全に無くすことはできないため、結果的にドライブシャフトに捩じれトルクが発生してしまうことになる。すなわち、特許文献2に記載されたものは、パーキングロックギヤとパーキングロックポールとの噛合を解除するためにブレーキ装置を作動させたときの制動力に関しては一切考慮されていなかった。
【0016】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、パーキングロック手段を固定位置から解除位置に移動させるときに、駆動軸から動力入力手段に衝撃が加わるのを抑制して、乗車している人に不快感を与えるのを防止することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る車両の制御装置は、上記課題を解決するため、(1)駆動源に連結され、前記駆動源からの動力が入力される動力入力手段と、前記動力入力手段からの動力をギヤ機構を介して駆動軸に伝達することにより、駆動軸に設けられた駆動輪を回転させる動力伝達手段と、ブレーキペダルを有し、前記ブレーキペダルの操作量に応じた制動力を前記駆動輪に発生させるブレーキ手段と、前記ギヤ機構に設けられ、シフト選択位置が第1の選択位置とされたときに、前記駆動輪が回転しないように固定する固定位置および前記シフト選択位置が少なくとも1つ以上の第2の選択位置とされたときに、前記駆動輪の回転を許容する解除位置との間で作動されるパーキングロック手段とを備えた車両の制御装置であって、前記駆動軸の捩じれ量を判断する捩じれ量判断手段と、前記ブレーキ手段の作動状態を検出する作動状態検出手段と、車両が位置する路面の勾配を検出する勾配検出手段と、前記シフト選択位置が第1の選択位置とされるとともに前記ブレーキ手段が作動されたとき、路面の勾配が予め定められた勾配以上である場合に、前記捩じれ量判断手段の判断結果に基づいて前記ブレーキ手段の制動力を制御する制動力制御手段とを備えたものから構成されている。
【0018】
この構成により、坂道で車両を停車させるために、ブレーキ手段を作動した後、シフト選択位置が第1の選択位置とされてパーキングロック手段を固定位置に作動し、次いで、ブレーキ手段の作動を停止したときに駆動軸に捩じれトルクが発生した状態でブレーキ手段を作動する場合に、駆動軸の捩じれ量に応じてブレーキ手段の制動力を制御するので、駆動軸の捩じれ量が大きい場合にブレーキ手段を作動させたときには、ブレーキ手段の制動力を小さく制御し、駆動軸の捩じれトルクが小さくなったときに駆動輪が停止するように制動力を発生させるようにすれば、駆動軸の捩じれエネルギーを小さくすることができる。
【0019】
この状態でパーキングロック手段を解除位置に操作すれば、動力入力手段の慣性力が大きい場合には、動力伝達手段のギヤ機構が急激に回転するのを抑制することができ、駆動軸からギヤ機構を介して動力入力手段に伝達される衝撃荷重を小さくすることができる。
【0020】
このため、例えば、動力入力手段がモータジェネレータのロータシャフト等から構成される場合には、ロータシャフトやロータシャフトを支持するベアリング等に衝撃が加わるのを抑制して、乗車している人に不快感を与えてしまうのを防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る車両の制御装置は、上記課題を解決するため、(1)に記載の車両の制御装置において、(2)前記捩じれ量判断手段が、前記シフト選択位置が第1の選択位置とされた後、前記ブレーキ手段の作動が解除されてから前記ブレーキ手段が作動するまでに要した時間に基づいて前記駆動軸の捩じれ量の大きさを判断するものから構成されている。
【0022】
この構成により、例えば、ブレーキ手段の作動を解除してからブレーキ手段を作動するまでに要した時間が第1の時間以下である場合には、車両の自重による下り方向への力が小さいことから、駆動輪の捩じれ量が小さくブレーキ手段の作動を解除したときの捩じれエネルギーが小さいものと判断し、また、ブレーキ手段の作動を解除してからブレーキ手段を作動するまでに要した時間が第2の時間以上である場合には、車両の自重により駆動軸に発生する捩れトルクと駆動軸の弾性力(復元力)とが釣り合う位置に収束するように駆動輪の捩じれトルクが小さくなり、ブレーキ手段の作動を解除したときの捩じれエネルギーが小さいものと判断し、何れも通常の制動力で駆動輪を固定する。
【0023】
また、ブレーキ手段の作動を解除してからブレーキ手段を作動するまでに要した時間が第1の時間と第2の時間の間にある場合には、駆動軸の捩じれエネルギーが大きいものと判断して制動力の制御を行う。このようにすれば、簡単な構成によって間接的に駆動軸の捩じれ量を判断することができ、安価な構成で制動力の制御を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る車両の制御装置は、上記課題を解決するため、(1)に記載の車両の制御装置において、(3)前記捩じれ量判断手段が、前記駆動軸の捩じれ量を検出する歪みセンサを有し、前記歪みセンサからの検出情報に基づいて前記駆動軸の捩じれ量の大きさを判断するものから構成されている。
【0025】
この構成により、歪みセンサからの検出情報に基づいて駆動軸の捩じれ量を直接に判断することができるため、駆動軸の捩じれ量に応じた最適な制動力の制御を行うことができる。
【0026】
また、本発明に係る車両の制御装置は、上記課題を解決するため、(1)に記載の車両の制御装置において、(4)前記捩じれ量判断手段が、前記ブレーキペダルの踏力の大きさを検出する踏力検出手段を有し、前記踏力検出手段からの検出情報に基づいて前記駆動軸の捩じれ量の大きさを判断するものから構成されている。
【0027】
この構成により、路面の勾配が大きければ駆動軸の捩じれ量も勾配に応じて大きくなるため、ブレーキペダルの踏力が大きくなる。このため、ブレーキペダルの踏力に応じて路面の勾配に応じた駆動軸の捩じれ量を間接的に判断することができ、駆動軸の捩じれ量に応じて制動力を制御することができる。
【0028】
また、本発明に係る車両の制御装置は、上記課題を解決するため、(1)〜(4)の何れかに記載の車両の制御装置において、(5)前記制動力制御手段が、前記シフト選択位置が第1の選択位置とされた状態で前記ブレーキ手段が作動されたときに、前記捩じれ量判断手段によって前記駆動軸の捩じれ量が大きいものと判断された場合には、前記ブレーキ手段によって制動を開始してから前記制動力を漸増させるものから構成されている。
【0029】
この構成により、シフト選択位置が第1の選択位置とされてパーキングロック手段を固定位置に作動した状態でブレーキ手段が作動されたときに、駆動軸の捩じれ量が大きい場合には、ブレーキ手段によって制動を開始してから制動力を漸増させるので、駆動軸の捩じれ量が大きい状態でブレーキ手段が作動されたときに大きな制動力が駆動輪に伝達されるのを抑制することができる。
そして、駆動軸の捩じれ量が小さくなったときに、制動力を大きくすることができるため、パーキングロック手段を解除位置に作動したときに、駆動軸から動力入力手段に大きな衝撃力が伝達されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、パーキングロック手段が解除位置に作動されたときに、動力入力手段に駆動軸から衝撃が加わるのを抑制することができ、乗車している人に不快感を与えるのを防止することができる車両の制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る車両の制御装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜図6は本発明に係る車両の制御装置の第1の実施の形態を示す図であり、本発明をハイブリッド車両に適用した例を示している。
【0032】
まず、構成を説明する。
図1において、ハイブリッド車両11は、内燃機関としてのエンジン12を含んで構成され、エンジン12からの動力を駆動軸としてのドライブシャフト13を介して駆動輪14L、14Rに伝達する動力伝達装置15と、駆動輪14L、14Rにブレーキ力(制動力)を発生させるブレーキ装置16と、ハイブリッド車両11全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット100とを含んで構成されている。
【0033】
動力伝達装置15は、モータジェネレータMG1と、モータジェネレータMG2と、モータジェネレータMG2のロータシャフト36に接続される減速機17と、減速機17、エンジン12およびモータジェネレータMG1の間で動力分配を行う動力分配機構18とを備えている。ここで、減速機17は、モータジェネレータMG2から動力分配機構18への減速比が、例えば、2倍以上に設定されている。
【0034】
エンジン12は、ガソリンまたは軽油等の炭化水素系の燃料により動力を出力するエンジンであり、エンジン12の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)101によって燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御等の運転制御が行われるようになっている。
【0035】
動力分配機構18は、エンジン12のクランクシャフト19に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸20に結合されたサンギヤ21と、クランクシャフト19と同軸上を回転可能に支持されているとともに、リングギヤ軸27を介して減速機17に連結されるリングギヤ22と、サンギヤ21とリングギヤ22との間に配置され、サンギヤ21の外周を自転しながら公転する複数のピニオンギヤ23と、クランクシャフト19の端部にダンパ24を介して結合された入力軸26を有し、各ピニオンギヤ23の回転軸を支持するキャリア25とを備えており、サンギヤ21、リングギヤ22およびキャリア25を回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構を構成している。
【0036】
この動力分配機構18は、モータジェネレータMG1が発電機として機能するときには、キャリア25から入力されるエンジン12からの動力をサンギヤ21側とリングギヤ22側にそのギヤ比に応じて分配し、モータジェネレータMG1が電動機として機能するときには、キャリア25から入力されるエンジン12からの動力とサンギヤ21から入力されるモータジェネレータMG1からの動力を統合してリングギヤ22側に出力するようになっている。
【0037】
一方、モータジェネレータMG1は、回転磁界を形成するステータ28と、ステータ28の内部に配置され、複数個の永久磁石が埋め込まれているロータ29とを備えており、ステータ28は、ステータコアおよびステータコアに巻回される三相コイルを備えている。
【0038】
ロータ29は、動力分配機構18のサンギヤ21と一体的に回転するサンギヤ軸20に結合されており、ステータ28のステータコアは、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、本体ケースの内周部に固定されている。
【0039】
このように構成されるモータジェネレータMG1は、ロータ29に埋め込まれた永久磁石による磁界と三相コイルによって形成される磁界との相互作用によりロータ29を回転駆動する電動機として動作する。またモータジェネレータMG1は、永久磁石による磁界とロータ29の回転との相互作用により三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。
【0040】
また、モータジェネレータMG2は、回転磁界を形成するステータ32と、ステータ32の内部に配置され複数個の永久磁石が埋め込まれたロータ33とを備えており、ステータ32は、ステータコアおよびステータコアに巻回される三相コイルとを備えている。
【0041】
ロータ33のロータシャフト36は、減速機17のサンギヤ37にスプライン嵌合されており、ステータ32のステータコアは、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、本体ケースの内周部に固定されている。
【0042】
モータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界とロータ33の回転との相互作用によって三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作するようになっており、モータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界と三相コイルによって形成される磁界との相互作用によりロータ33を回転駆動する電動機として動作する。
【0043】
一方、減速機17は、プラネタリギヤの回転要素の一つであるキャリア38が動力伝達装置15の本体ケースに固定された構造により減速を行う。具体的には、図2、図3に示すように、減速機17は、ロータシャフト36に結合されたサンギヤ37と、動力分配機構18のリングギヤ22と一体的に回転するリングギヤ39と、リングギヤ39およびサンギヤ37に噛合し、サンギヤ37の回転をリングギヤ39に伝達するピニオンギヤ40と、ピニオンギヤ40を回転自在に支持する支持軸38aを有するキャリア38とを備えている。
この減速機17では、例えば、サンギヤ37の歯数に対しリングギヤ39の歯数を2倍以上にすることにより、減速比を2倍以上にすることができる。また、ロータシャフト36はベアリング41を介して本体ケース51に回転自在に支持されている。
【0044】
また、図3、図4に示すように、動力伝達装置15の本体ケース51には、円周方向に亘って複数の嵌合溝51aが形成されており、キャリア38の外周部には嵌合溝51aに嵌合可能な突出部38bが設けられている。なお、図3、図4では、本体ケース51の一部のみを図示しているが、本体ケース51には、動力分配装置15、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2および後述する動力伝達手段が収納されている。
【0045】
減速機17は、キャリア38の突出部38bが嵌合溝51aにスプライン嵌合するようにして本体ケース51に装着されるようになっており、減速機17が本体ケース51に装着されると、突出部38bがキャリア38の円周方向において嵌合溝51aに嵌合するため、キャリア38の回転が禁止されるようになっている。
【0046】
図1において、リングギヤ軸27にはカウンタドライブギヤ52が一体的に設けられており、このカウンタドライブギヤ52は、リングギヤ軸27と一体的に回転するようになっている。カウンタドライブギヤ52は、アイドルドライブギヤ53に噛合しており、このアイドルドライブギヤ53は、アイドルドリブンギヤ54を介してカウンタドリブンギヤ55に連結されている。
【0047】
このカウンタドリブンギヤ55は、ファイナルギヤ56を介してデファレンシャルギヤ57に連結されており、デファレンシャルギヤ57は、ドライブシャフト13を介して駆動輪14L、14Rに駆動トルクを伝達する。
【0048】
また、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は、インバータ61およびインバータ62を介してバッテリ63との間で電力の遣り取りを行うようになっている。
【0049】
インバータ61およびインバータ62とバッテリ63とを接続する電力ライン64は、インバータ61およびインバータ62が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータジェネレータMG1、MG2の何れかで発電される電力を他のモータジェネレータで消費することができるようになっている。
【0050】
したがって、バッテリ63は、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の何れかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ63は充放電されない。
【0051】
また、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は、何れもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)102により駆動制御されるようになっている。
【0052】
モータECU102には、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2を駆動制御するために必要な信号、例えば、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ111および回転位置検出センサ112からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU102からは、インバータ61およびインバータ62へのスイッチング制御信号が出力されている。
【0053】
モータECU102は、ハイブリッド用電子制御ユニット100と通信するようになっており、ハイブリッド用電子制御ユニット100からの制御信号によってモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2を駆動制御するとともに、必要に応じてモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット100に出力する。
【0054】
バッテリ63は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)103によって管理されており、バッテリECU103には、バッテリ63を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ63の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、 バッテリ63の出力端子に接続された電力ライン64に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流、 バッテリ63に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度等が入力されており、必要に応じてバッテリ63の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット100に出力する。なお、バッテリECU103にあっては、バッテリ63を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC(State of charge))も演算している。
【0055】
一方、ブレーキ装置16は、ブレーキペダル71と、ブレーキブースタ72と、マスタシリンダ73と、ブレーキアクチュエータ74と、油圧回路75と、ブレーキ機構76と、ブレーキディスク77とを備えており、ブレーキ手段を構成している。
【0056】
ブレーキディスク77は、ドライブシャフト13の駆動輪14R側の一方端に設けられており、ブレーキ機構76は、ブレーキディスク77に設けられている。ブレーキ機構76は、ホイールシリンダを備えており、このホイールシリンダは、ブレーキパッドを介してブレーキディスク77を挟み込むように設けられている。
【0057】
また、油圧回路75は、ブレーキ機構76の一方端に接続されており、油圧回路75内の油圧が上昇すると、ホイールシリンダにかかる油圧が上昇するようになっている。そして、油圧の上昇に応じて、ホイールシリンダがブレーキパッドを介してブレーキディスク77を挟み込む力が増加し、ブレーキパッドとブレーキディスク77との間に生じる摩擦力が増加すると、駆動輪14L、14Rの回転が制限される。
【0058】
したがって、ブレーキ機構76における油圧が上昇すると、ハイブリッド車両11には、上昇した油圧に応じたブレーキ力が発生する。なお、図示していないが、ブレーキ機構76およびブレーキディスク77は、駆動輪14L側や従動輪側にもそれぞれ設けられている。また、ブレーキ機構76は、ディスクブレーキではなく、駆動輪14L、14Rや従動輪に直接設けられたドラムブレーキであってもよい。
【0059】
マスタシリンダ73は、油圧回路75の他方端に接続されており、マスタシリンダ73は、内部に図示しないピストンが設けられている。マスタシリンダ73は、ピストンが移動することにより、マスタシリンダ73内の油圧が上昇し、油圧の上昇に応じて油圧回路75内の油圧を上昇させるようになっている。
【0060】
ブレーキブースタ72は、エンジン12の運転時の吸気側の負圧を利用して、ブレーキペダル71に入力された踏力を倍力させることにより、マスタシリンダ73にブレーキペダル71の操作力を伝達するようになっている。
【0061】
また、ブレーキアクチュエータ74は、マスタシリンダ73と油圧回路75の間に設けられており、電磁弁と電動ポンプとを備えている。このブレーキアクチュエータ74は、ハイブリッド用電子制御ユニット100からの制御信号を受けて、電磁弁と電動ポンプとを作動させることにより、油圧回路75内の油圧を上昇させたり下降させたりすることにより、ブレーキ機構76に供給される油圧を制御して駆動輪14L、14Rのブレーキ力を制御するようになっている。また、油圧回路75は、ブレーキアクチュエータ74からブレーキ機構76に接続されており、内部にブレーキ液が充填される液体通路から構成されている。
【0062】
また、減速機17には、図3に示すようにパーキングロック手段81が設けられている。リングギヤ39は、パーキングロック手段81のパーキングロックギヤを構成しており、このリングギヤ39の歯部39aにはパーキングロックポール82が噛合するようになっている。パーキングロックポール82の一端部には、本体ケース51に回動自在に支持された回動支持部83が設けられており、パーキングロックポール82は、回動支持部83を支点にして図3中、上下方向に揺動自在になっている。
【0063】
また、パーキングロックポール82の他端部にはパーキングロックポールカム84に接触しており、パーキングロックポール82は、パーキングロックポールカム84が回動するのに伴って回動支持部83を支点にして図3中、上下方向に揺動する。また、パーキングロックポール82の長手方向中央部には、嵌合突起86が設けられており、この嵌合突起86は歯部39aに噛合するようになっている。
【0064】
パーキングロックポールカム84は、後述するシフトレバーがパーキングポジション(P)に対応する位置、すなわち、第1の選択位置に移動することに応じてパーキングロックポール82の他端部を押し上げる位置に回動し、シフトレバーがリバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)またはドライブポジション(D)に対応する位置、すなわち、第2の選択位置に移動することに応じてパーキングロックポール82の他端部を押し下げる位置に回動するようになっている。
なお、パーキングロックポールカム84は、シフトレバーと機械的に連動するような機構により駆動してもよいし、電動モータにより駆動してもよい。
【0065】
そして、パーキングロックポールカム84の駆動によりパーキングロックポール82の嵌合突起86がリングギヤ39の歯部39aに噛合する固定位置に移動すると、リングギヤ39の回転が規制される。このため、リングギヤ39からドライブシャフト13までの動力伝達経路の回転が規制され、駆動輪14L、14Rが回転しないように固定される。
【0066】
そして、パーキングロックポールカム84の駆動によりパーキングロックポール82の嵌合突起86がリングギヤ39の歯部39aから離隔する解除位置に移動すると、リングギヤ39の回転が許容されるため、リングギヤ39からドライブシャフト13までの動力伝達経路の回転が許容され、駆動輪14L、14Rが回転可能となる。
【0067】
なお、本実施の形態では、モータジェネレータMG2が駆動源を構成するとともに、ロータシャフト36が動力入力手段を構成している。また、減速機17、カウンタドライブギヤ52、アイドルドライブギヤ53、アイドルドリブンギヤ54、カウンタドリブンギヤ55、ファイナルギヤ56およびデファレンシャルギヤ57が動力伝達手段を構成している。
【0068】
また、本実施の形態では、減速機17、カウンタドライブギヤ52、アイドルドライブギヤ53、アイドルドリブンギヤ54、カウンタドリブンギヤ55、ファイナルギヤ56およびデファレンシャルギヤ57がギヤ機構を構成している。
【0069】
一方、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、タイマが内蔵されたCPU(Central processing unit)100aを中心とするマイクロプロセッサから構成されており、CPU100aの他に処理プログラムを記憶するROM(Read only memory)100bと、データを一時的に記憶するRAM(Random access memory)100cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備えている。
【0070】
ハイブリッド用電子制御ユニット100には、イグニッションスイッチ(IG)113からのイグニッション信号Ig、 運転手により手動操作されるシフトレバー91の選択位置を検出するシフトポジションセンサ114からのシフトポジション信号SP、運転手により踏み込まれるアクセルペダル92の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ115からのアクセル開度信号Acc、ブレーキペダル71の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ116からのブレーキペダルポジション信号BP、車速センサ117からの車速信号V、ハイブリッド車両11が位置する路面の勾配を検出する勾配センサ118からの傾斜角信号Gxがそれぞれ入力ポートを介して入力されている。
【0071】
勾配センサ118は、例えば、Gセンサから構成されており、勾配センサ118は、車両の前後方向に揺動可能に支持された錘を備え、車両の停車時に錘が路面と垂直方向の基準軸に対して、車両の前後方向の傾斜に応じて移動した変位を表す傾斜角信号Gxを出力するようになっている。
【0072】
ハイブリッド用電子制御ユニット100は、傾斜角信号Gxに基づいて路面の勾配、すなわち、路面の傾斜角を算出するようになっている。本実施の形態の勾配センサ118は、ハイブリッド車両11が位置する路面の勾配を検出する勾配検出手段を構成している。
【0073】
ブレーキペダルポジションセンサ116は、ブレーキペダル71のストローク量(踏み込み量)を検出して、踏み込み量に応じたブレーキペダルポジション信号BPをハイブリッド用電子制御ユニット100に出力するようになっており、ハイブリッド用電子制御ユニット100は、ブレーキペダルポジション信号BPに基づいてブレーキ装置16のオン/オフ状態やブレーキペダル71の踏み込み量を検出することにより、ブレーキ装置16の作動状態を判断するようになっている。本実施の形態では、ブレーキペダルポジションセンサ116が作動状態検出手段を構成している。
【0074】
なお、ブレーキペダル71のオン/オフ状態を検出するものであれば、ブレーキペダルポジションセンサ116に代えて、ストップランプスイッチを設け、ストップランプスイッチによってブレーキペダル71のオン/オフ状態を検出するようにしてもよい。
【0075】
また、本実施の形態のハイブリッド用電子制御ユニット100は、シフトレバー91がパーキングポジションに操作された状態でブレーキ装置16が作動されたことを検出したときに、勾配センサ118が検出した路面の勾配が予め定められた勾配以上である場合には、ブレーキ装置16の作動が解除されてからブレーキ装置16が作動するまでに要した時間をタイマで計時し、このタイマの計時結果に基づいてドライブシャフト13の捩じれ量を間接的に判断し、ブレーキアクチュエータ74の電磁弁と電動ポンプとを作動させることにより、ブレーキペダル71の踏み込み量に関係なくブレーキ装置16のブレーキ力を制御するようになっている。本実施の形態では、ハイブリッド用電子制御ユニット100が捩じれ量判断手段および制動力制御手段を構成している。
【0076】
次に、図5のフローチャートに基づいてハイブリッド車両11の制御方法を説明する。図5のフローチャートは、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aによって実行されるブレーキ力制御処理のプログラムであり、このブレーキ力制御処理のプログラムは、ROM100bに記憶されている。
【0077】
図5において、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、勾配センサ118からの傾斜角信号Gxに基づいてハイブリッド車両11が位置する路面の傾斜角が所定角度(例えば、10°)以上であるか否かを判別する(ステップS1)。
【0078】
CPU100aは、路面の傾斜角度が所定角度未満であるものと判断した場合には、今回の処理を終了し、路面の傾斜角度が所定角度以上であるものと判断した場合には、シフトレバー91がパーキングポジションPにシフトされたか否かを判別する(ステップS2)。
【0079】
ステップS2においては、CPU100aは、シフトポジションセンサ114からシフトレバー91がパーキングポジションにシフトされたことを示すシフトポジション信号SPが入力されたときに、シフトレバー91がパーキングポジションPにシフトされたものと判断する。
次いで、CPU100aは、ブレーキ装置16が"オン"されたか否かを判別する(ステップS3)。ステップS3では、ブレーキペダルポジションセンサ116からブレーキ装置16が"オン"したことを示すブレーキペダルポジション信号BPが入力したときに、ブレーキが"オン"したものと判断する。
【0080】
ここで、ブレーキ装置16の操作が行われてシフトレバー91がパーキングポジションにシフトされると、パーキングロックポールカム84がパーキングロックポール82の他端部を押し上げる位置に回動するため、パーキングロックポール82の嵌合突起86がリングギヤ39の歯部39aに噛合し、リングギヤ39の回転が規制される。このため、リングギヤ39からドライブシャフト13までの動力伝達経路の回転が規制され、駆動輪14L、14Rが回転しないように固定される。
【0081】
次いで、CPU100aは、ブレーキ装置16が一旦"オフ"となってからブレーキ装置16が再度"オン"になったか否かを判別する(ステップS4)。ここでは、運転手がハイブリッド車両11を停止してシフトレバー91をパーキングポジションPにシフトした後、ブレーキペダル71の操作を解除して再びブレーキペダル71を踏み込んだか否かを判別することになる。
【0082】
次いで、CPU100aは、ブレーキ装置16を"オフ"から"オン"にするまでに要した時間が、第1の時間と第1の時間よりも長い第2の時間の間にあるか否かを判別する(ステップS5)。
【0083】
ステップS5では、CPU100aは、運転手がハイブリッド車両11を停止してシフトレバー91をパーキングポジションPにシフトした後に、ブレーキペダル71の操作を解除して再びブレーキペダル71を踏み込むまでの時間を判断することになる。
【0084】
ここで、勾配を有する路面においてハイブリッド車両11を停止するときに、シフトレバー91をパーキングポジションに移動してパーキングロック手段81を固定位置に作動してブレーキペダル71の操作を解除すると、路面の勾配によってハイブリッド車両11には自重による下り方向の力が働き、嵌合突起86と歯部39aの噛合部を支点としてドライブシャフト13に捩れが発生する。
【0085】
そして、ドライブシャフト13の捩れ量が大きいと、ドライブシャフト13の弾性力(復元力)による揺り返しが発生するため、自重によりドライブシャフト13に発生する捩れトルクとドライブシャフト13の弾性力(復元力)とが釣り合う位置に収束するまで車両が前後に揺れる場合がある。
【0086】
このとき、シフトレバー91をパーキングポジションから抜くために、ブレーキ装置16を"オン"にすると、駆動輪14L、14Rに設けられたブレーキディスク77がブレーキ機構76のホイールシリンダによって固定されて駆動輪14L、14Rが回転しないように固定される。
【0087】
この状態でリングギヤ39の歯部39aとパーキングロックポール82の嵌合突起86との噛合を解除すると、ドライブシャフト13に蓄積されていた捩じれエネルギーが急激に開放されるため、駆動輪14L、14R側が支点となってドライブシャフト13の捩じれエネルギーによって、ドライブシャフト13の上流側に設けられたデファレンシャルギヤ57、ファイナルギヤ56、カウンタドリブンギヤ55、アイドルドリブンギヤ54、アイドルドライブギヤ53、カウンタドライブギヤ52、減速機17のリングギヤ39、ピニオンギヤ40およびサンギヤ37が急激に回転しようとする。
【0088】
ここで、上流側および下流側とは、ドライブシャフト13とエンジン12の間にある各ギヤの位置から見てエンジン12側が上流側であり、ドライブシャフト13側が下流側である。
【0089】
ハイブリッド車両11では、減速機17よりも上流側に重量の大きい慣性体であるモータジェネレータMG2が設けられているため、慣性の法則によってモータジェネレータMG2がドライブシャフト13の捩じれエネルギーを受けても直ちに回転することはないため、ドライブシャフト13に蓄積されている捩じれエネルギーがドライブシャフト13からデファレンシャルギヤ57、ファイナルギヤ56、カウンタドリブンギヤ55、アイドルドリブンギヤ54、アイドルドライブギヤ53、カウンタドライブギヤ52、減速機17のリングギヤ39、ピニオンギヤ40およびサンギヤ37を介してモータジェネレータMG2に伝達されることになる。
【0090】
したがって、モータジェネレータMG2のロータシャフト36や減速機17のリングギヤ39、ピニオンギヤ40およびサンギヤ37にドライブシャフト13から大きな捩じれエネルギーによる大きな衝撃が加わってしまう。
【0091】
ステップS5において、CPU100aは、ブレーキ装置16を"オフ"から"オン"にするまでに要した時間が、第1の時間と第1の時間よりも長い第2の時間の間にあるか否かを判別し、ブレーキ装置16を"オフ"から"オン"にするまでに要した時間が、第1の時間と第1の時間よりも長い第2の時間の間にある場合には、ブレーキ装置16のブレーキ力を制御する(ステップS6)。
【0092】
図6に基づいてブレーキ装置16のブレーキ力を制御する方法を説明する。図6は、ドライブシャフト13の捩じれ量とブレーキ力の関係を示す図である。
図6に示すように、ブレーキペダル71の操作を解除した後、Aで示すようにドライブシャフト13の捩じれ量が大きいときにブレーキペダル71を大きく踏み込むと、ドライブシャフト13の捩じれエネルギーが大きくなってしまう。
【0093】
一方、ブレーキペダル71の操作を解除した後、Bで示すようにドライブシャフト13の捩じれ量が小さいときにブレーキペダル71を大きく踏み込むと、ドライブシャフト13の捩じれエネルギーが小さくなる。
【0094】
したがって、ブレーキ装置16を"オフ"から"オン"にするまでに要した時間が第1の時間以下であれば、ハイブリッド車両11の自重による下り方向への力が小さく、ドライブシャフト13の捩じれ量が小さいことから、ブレーキ装置16を"オン"にしたときの捩じれエネルギーが小さいものと判断し、また、ブレーキ装置16を"オフ"から"オン"にするまでに要した時間が第2の時間以上であれば、ドライブシャフト13に発生する捩れトルクとドライブシャフト13の弾性力(復元力)とが釣り合う位置に収束し、ドライブシャフト13の捩じれトルクが小さいことから、ブレーキ装置16を"オン"にしたときの捩じれエネルギーが小さいものと判断し、何れもブレーキペダル71を踏み込んだときにブレーキ装置16のブレーキアクチュエータ74の電磁弁と電動ポンプとを作動させることにより、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力を発生させる(ステップS7)。
【0095】
そして、ブレーキ装置16を"オフ"から"オン"にするまでに要した時間が第1の時間と第2の時間の間にある場合には、ドライブシャフト13の捩じれ量がAで示すように大きいものと判断して、ブレーキペダル71が強く踏み込まれた場合であっても、ブレーキ装置16のブレーキアクチュエータ74の電磁弁と電動ポンプとを作動させ、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力よりも小さいブレーキ力にして、破線で示すようにブレーキ装置16による制動が開始されてからブレーキ力を漸増させる。
【0096】
なお、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力よりも小さいブレーキ力を漸増させるためには、油圧回路75からブレーキ機構76のホイールシリンダに供給される油圧量を"0"から漸増させるようにすればよい。
【0097】
そして、CPU100aは、第1の時間から第2の時間の間にブレーキペダル71が踏み込まれたときには、ドライブシャフト13の捩じれ量が十分に小さくなったとき、例えば、第2の時間以上になったときに、ブレーキ装置16によってブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力を発生させることにより、ハイブリッド車両11を停止させる(ステップS7)。
【0098】
その後、運転手がシフトレバー91をパーキングポジションPから他のポジションにシフトすると、パーキングロックポール82の嵌合突起86がリングギヤ39の歯部39aから離隔し、リングギヤ39の回転が許容されてリングギヤ39からドライブシャフト13までの動力伝達経路の回転が許容されるため、駆動輪14L、14Rが回転可能となる。
【0099】
このように本実施の形態では、坂道でハイブリッド車両11を停車させるために、ブレーキ装置16を"オン"にするとともに、シフトレバー91をパーキングポジションPにシフトしてパーキングロック手段81を解除位置に作動し、次いで、ブレーキ装置16を"オフ"にしたときにドライブシャフト13に捩じれトルクが発生した状態でブレーキ装置16を"オン"にする場合に、ドライブシャフト13の捩じれ量に基づいてブレーキ装置16のブレーキ力を制御するようにしたので、ドライブシャフト13の捩じれ量が大きい場合にブレーキ装置16を作動させたときには、ブレーキ装置16のブレーキ力を小さく制御し、ドライブシャフト13の捩じれ量が小さくなったときに駆動輪14L、14Rが停止するようにブレーキ力を発生させるようにすれば、ドライブシャフト13の捩じれエネルギーを小さくすることができる。
【0100】
この状態でパーキングロック手段81を解除位置に操作すれば、リングギヤ39、ピニオンギヤ40およびサンギヤ37が急激に回転して、ドライブシャフト13から減速機17を介してモータジェネレータMG2のロータシャフト36に衝撃が加わるのを抑制することができる。
【0101】
このため、ロータシャフト36、ロータシャフト36を支持するベアリング41に衝撃が加わるのを抑制することができ、乗車している人に不快感を与えてしまうのを防止することができる。
【0102】
特に、本実施の形態では、シフトレバー91がパーキングポジションPにシフトされた状態でブレーキ装置16を作動したときに、ブレーキ装置16を"オフ"から"オン"にするまでに要した時間が、第1の時間と第2の時間の間にある場合には、ドライブシャフト13の捩じれ量が大きいものと判断してブレーキ装置16のブレーキ力を漸増させるようにしたので、ブレーキ装置16が作動されたときに大きなブレーキ力が駆動輪14L、14Rに伝達されるのを防止することができる。
そして、ドライブシャフト13の捩じれ量が小さくなったときに、ブレーキ力を大きくすることができるため、パーキングロック手段81を解除位置に作動したときに、ドライブシャフト13から減速機17を介してモータジェネレータMG2のロータシャフト36に大きな衝撃荷重が伝達されるのを抑制することができる。
(第2の実施の形態)
図7、図8は、本発明に係る車両の制御装置の第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同様の構成には同一番号を付して説明を省略する。
図7に示すように、ドライブシャフト13には捩じれ量判断手段としての歪みセンサ121が設けられており、この歪みセンサ121は、ドライブシャフト13の捩じれ量を直接検出して、捩じれ量信号τをハイブリッド用電子制御ユニット100に出力するようになっている。ハイブリッド用電子制御ユニット100は、この捩じれ量信号τに基づいてブレーキ装置16のブレーキ力を制御するようになっている。
【0103】
次に、図8のフローチャートに基づいてハイブリッド車両11の制御方法を説明する。図8のフローチャートは、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aによって実行されるブレーキ力制御処理のプログラムであり、このブレーキ力制御処理のプログラムは、ROM100bに記憶されている。
【0104】
図8において、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、勾配センサ118からの傾斜角信号Gxに基づいてハイブリッド車両11が位置する路面の傾斜角が所定角度(例えば、10°)以上であるか否かを判別する(ステップS11)。
【0105】
CPU100aは、路面の傾斜角度が所定角度未満であるものと判断した場合には、今回の処理を終了し、路面の傾斜角度が所定角度以上であるものと判断した場合には、シフトレバー91がパーキングポジションPにシフトされたか否かを判別する(ステップS12)。
【0106】
ステップS12においては、CPU100aは、シフトポジションセンサ114からシフトレバー91がパーキングポジションにシフトされたことを示すシフトポジション信号SPが入力されたときに、シフトレバー91がパーキングポジションPにシフトされたものと判断する。
次いで、CPU100aは、ブレーキ装置16が"オン"されたか否かを判別する(ステップS13)。ステップS13では、ブレーキペダルポジションセンサ116からブレーキ装置16が"オン"したことを示すブレーキペダルポジション信号BPが入力したときに、ブレーキが"オン"したものと判断する。
【0107】
ここで、ブレーキ装置16の操作が行われてシフトレバー91がパーキングポジションにシフトされると、パーキングロックポールカム84がパーキングロックポール82の他端部を押し上げる位置に回動し、パーキングロックポール82の嵌合突起86がリングギヤ39の歯部39aに噛合し、リングギヤ39の回転が規制される。このため、リングギヤ39からドライブシャフト13までの動力伝達経路の回転が規制され、駆動輪14L、14Rが回転しないように固定される。
【0108】
次いで、CPU100aは、ブレーキ装置16が一旦"オフ"となってからブレーキ装置16が再度"オン"になったか否かを判別する(ステップS14)。ここでは、運転手がハイブリッド車両11を停止してシフトレバー91をパーキングポジションPにシフトした後、ブレーキペダル71の操作を解除して再びブレーキペダル71を踏み込んだか否かを判別することになる。
【0109】
次いで、CPU100aは、歪みセンサ121から入力された捩じれ量信号τの大きさに基づいてドライブシャフト13の捩じれ量が一定値以上であるか否かを判別し(ステップS15)、捩じれ量信号τの大きさが一定値以上でないものと判断した場合には、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力で駆動輪14L、14Rを固定する(ステップS18)。
【0110】
また、CPU100aは、捩じれ量信号τの大きさが一定値以上であるものと判断した場合には、図6のAで示すように、ドライブシャフト13の捩じれ量が大きく、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力を発生させたときにドライブシャフト13の捩じれエネルギーが大きくなるものと判断する。
【0111】
このとき、ブレーキペダル71が強く踏み込まれた場合であっても、CPU100aは、ブレーキ装置16のブレーキアクチュエータ74の電磁弁と電動ポンプとを作動し、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力よりも小さいブレーキ力にして図6の破線で示すようにブレーキ力を漸増させるようにブレーキ力を制御する(ステップS16)。
【0112】
次いで、CPU100aは、歪みセンサ121から入力された捩じれ量信号τの大きさに基づいてドライブシャフト13の捩じれ量が一定値未満であるか否かを判別し、(ステップS17)、捩じれ量信号τの大きさが一定値未満であるものと判断した場合には、自重によりドライブシャフト13に発生する捩れトルクとドライブシャフト13の弾性力(復元力)とが釣り合う位置に収束したものと判断して、ブレーキ力の制御を解除して、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力で駆動輪14L、14Rを固定する(ステップS18)。
【0113】
このように本実施の形態では、坂道でハイブリッド車両11を停車させるために、ブレーキ装置16を"オン"にするとともに、シフトレバー91をパーキングポジションPに操作してパーキングロック手段81を解除位置に作動し、次いで、ブレーキ装置16を"オフ"にしたときにドライブシャフト13に捩じれトルクが発生した状態でブレーキ装置16を"オン"にする場合に、歪みセンサ121によって直接的に検出されたドライブシャフト13の捩じれ量に基づいてブレーキ装置16のブレーキ力を制御するようにしたので、第1の実施の形態の効果に加えて、ドライブシャフト13の捩じれ量に応じた最適なブレーキ力の制御を行うことができる。
(第3の実施の形態)
図9は、本発明に係る車両の制御装置の第3の実施の形態を示す図であり、第3の実施の形態で実行されるブレーキ力制御処理のフローチャートである。なお、基本的な構成は図1と同様であるため、図1に基づいて説明を行う。
【0114】
本実施の形態のハイブリッド用電子制御ユニット100は、ブレーキペダル71の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ116からのブレーキペダルポジション信号BPに基づいて、ドライブシャフト13の捩じれ量を間接的に検出してブレーキ装置16のブレーキ力を制御するようになっている。
【0115】
ハイブリッド用電子制御ユニット100は、ブレーキペダルポジションセンサ116から入力されたブレーキペダルポジション信号BPが大きい程、ブレーキペダル71の踏力が大きいものと判断し、ブレーキペダル71の踏力が大きい程、ドライブシャフト13の捩じれ量が大きいものと判断するようになっている。本実施の形態では、ブレーキペダルポジションセンサ116が踏力検出手段を構成している。
【0116】
次に、図9のブレーキ力制御処理のフローチャートに基づいてハイブリッド車両11の制御方法を説明する。なお、ブレーキ力制御処理のプログラムは、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aによって実行されるものであり、このブレーキ力制御処理のプログラムは、ROM100bに記憶されている。
【0117】
図9において、ハイブリッド用電子制御ユニット100のCPU100aは、勾配センサ118からの傾斜角信号Gxに基づいてハイブリッド車両11が位置する路面の傾斜角が所定角度(例えば、10°)以上であるか否かを判別する(ステップS21)。
【0118】
CPU100aは、路面の傾斜角度が所定角度未満であるものと判断した場合には、今回の処理を終了し、路面の傾斜角度が所定角度以上であるものと判断した場合には、シフトレバー91がパーキングポジションPにシフトされたか否かを判別する(ステップS22)。
【0119】
ステップS22においては、CPU100aは、シフトポジションセンサ114からシフトレバー91がパーキングポジションにシフトされたことを示すシフトポジション信号SPが入力されたときに、シフトレバー91がパーキングポジションPにシフトされたものと判断する。
次いで、CPU100aは、ブレーキ装置16が"オン"されたか否かを判別する(ステップS23)。ステップS23では、ブレーキペダルポジションセンサ116からブレーキ装置16が"オン"したことを示すブレーキペダルポジション信号BPが入力したときに、ブレーキが"オン"したものと判断する。
【0120】
ここで、ブレーキペダル72が踏み込まれた後にシフトレバー91がパーキングポジションにシフトされると、パーキングロックポールカム84がパーキングロックポール82の他端部を押し上げる位置に回動し、パーキングロックポール82の嵌合突起86がリングギヤ39の歯部39aに噛合し、リングギヤ39の回転が規制される。このため、リングギヤ39からドライブシャフト13までの動力伝達経路の回転が規制され、駆動輪14L、14Rが回転しないように固定される。
【0121】
次いで、CPU100aは、ブレーキ装置16が一旦"オフ"となってからブレーキ装置16が再度"オン"になったか否かを判別する(ステップS24)。ここでは、運転手がハイブリッド車両11を停止してシフトレバー91をパーキングポジションPにシフトした後、ブレーキペダル71の操作を解除して再びブレーキペダル71を踏み込んだか否かを判別することになる。
【0122】
次いで、CPU100aは、ブレーキペダルポジションセンサ116から入力されたブレーキペダルポジション信号BPの大きさに基づいてブレーキペダル71の踏み込み量が一定値以上であるか否かを判別し(ステップS25)、ブレーキペダル71の踏み込み量が一定値以上でないものと判断した場合には、ブレーキペダル71の踏力が小さいものと判断してブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力で駆動輪14L、14Rを固定する(ステップS28)。
【0123】
また、CPU100aは、ブレーキペダル71の踏力が一定値以上であるものと判断した場合には、図6のAで示すように、路面の勾配によりドライブシャフト13の捩じれ量が大きいことから、大きいブレーキ力を発生させる必要がある、すなわち、ドライブシャフト13の捩じれ量が大きく、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力を発生させたときにドライブシャフト13の捩じれエネルギーが大きくなるものと判断する。
【0124】
このとき、CPU100aは、ブレーキペダル71を強く踏み込まれた場合であっても、ブレーキ装置16のブレーキアクチュエータ74の電磁弁と電動ポンプとを作動し、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力よりも小さいブレーキ力にして図6の破線で示すようにブレーキ力を漸増させるようにブレーキ力を制御する(ステップS26)。
【0125】
次いで、CPU100aは、ブレーキペダルポジション信号BPの大きさが一定値未満であるか否かを判別し、(ステップS27)、ブレーキペダルポジション信号BPの大きさが一定値未満であるものと判断した場合には、自重によりドライブシャフト13に発生する捩れトルクとドライブシャフト13の弾性力(復元力)とが釣り合う位置に収束したものと判断して、ブレーキ力の制御を解除して(ステップS28)、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた通常のブレーキ力で駆動輪14L、14Rを固定する。
【0126】
このように本実施の形態では、坂道でハイブリッド車両11を停車させるために、ブレーキ装置16を"オン"にするとともに、シフトレバー91をパーキングポジションPに操作してパーキングロック手段81を解除位置に作動し、次いで、ブレーキ装置16を"オフ"にしたときにドライブシャフト13に捩じれトルクが発生した状態でブレーキ装置16を"オン"にする場合に、ブレーキペダルポジション信号BPからの出力信号によって間接的に検出されたドライブシャフト13の捩じれ量に基づいてブレーキ装置16のブレーキ力を制御するようにしたので、第1の実施の形態の効果に加えて、路面の勾配に応じたドライブシャフト13の捩じれ量をブレーキペダル71の踏力から間接的に判断することができ、ドライブシャフト13の捩じれ量に応じてブレーキ力を制御することができる。
【0127】
なお、上記実施の形態では、本発明の制御装置をモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2を備えた動力伝達装置15を有するハイブリッド車両11に適用しているが、これに限るものではない。
【0128】
例えば、無段変速機(Continuously Variable Transmission)を搭載した車両に適用することもできる。この場合には、駆動源であるエンジンからの動力が入力される動力入力手段を、重量の大きな慣性体であるプライマリプーリおよびプライマリプーリにベルトを介して接続されたセカンダリプーリから構成し、セカンダリプーリからドライブシャフトまでの間のギヤ機構にパーキングロック手段を設け、坂道で車両を停車してパーキングロック手段を解除するまでに本発明と同様のブレーキ力の制御を行うようにすれば、ドライブシャフトからギヤ機構を介してセカンダリプーリに衝撃が加わるのを抑制することができる。
【0129】
また、手動変速機を搭載した車両に本発明を適用する場合には、駆動源であるエンジンからの動力が入力される動力入力手段を、重量の大きな慣性体である乾式クラッチから構成し、この乾式クラッチとドライブシャフトとの間に設けられたギヤ機構にパーキングロック手段を設け、本発明と同様のブレーキ力の制御を行うようにすればよい。
【0130】
さらに、自動変速機を搭載した車両に本発明を適用する場合には、駆動源であるエンジンからの動力が入力される動力入力手段を、流体継手から構成し、流体継手とドライブシャフトとの間に設けられたギヤ機構にパーキングロック手段を設け、本発明と同様のブレーキ力の制御を行うようにすればよい。
また、本実施の形態では、変速機のシフト選択装置に機械的に連結されたシフトレバーを操作することによってシフト選択位置を切換えるようにしているが、これに代えて、変速機のシフト選択装置に電気的に連結されたスイッチやレバー等を操作することにより、シフト選択位置を切換えるものであってもよい。
【0131】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0132】
以上のように、本発明に係る車両の制御装置は、パーキングロック手段が解除位置に作動されたときに、動力入力手段に駆動軸から衝撃が加わるのを抑制することができ、乗車している人に不快感を与えるのを防止することができるという効果を有し、シフト選択位置に応じて駆動輪が回転しないように固定する固定位置および駆動輪の回転を許容する許容位置との間で作動するパーキングロック手段を有する車両の制御装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明に係る車両の制御装置の第1の実施の形態を示す図であり、ハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】本発明に係る車両の制御装置の第1の実施の形態を示す図であり、減速機の要部断面図である。
【図3】図2のA−A方向矢視断面図である。
【図4】本発明に係る車両の制御装置の第1の実施の形態を示す図であり、本体ケースの要部構成図である。
【図5】本発明に係る車両の制御装置の第1の実施の形態を示す図であり、ブレーキ力制御処理のフローチャートである。
【図6】本発明に係る車両の制御装置の第1の実施の形態を示す図であり、ドライブシャフトの捩じれ量とブレーキ力の関係を示す図である。
【図7】本発明に係る車両の制御装置の第2の実施の形態を示す図であり、ハイブリッド車両の概略構成図である。
【図8】本発明に係る車両の制御装置の第2の実施の形態を示す図であり、ブレーキ力制御処理のフローチャートである。
【図9】本発明に係る車両の制御装置の第3の実施の形態を示す図であり、ブレーキ力制御処理のフローチャートである。
【図10】(a)は、パーキングロック手段を固定位置に作動した後にブレーキ手段を解除したときの動力入力手段に入力されるドライブシャフトの捩じれトルクを説明する図であり、(b)は、パーキングロック手段を固定位置に作動した後にブレーキ手段を作動したときの動力入力手段に入力されるドライブシャフトの捩じれトルクを説明する図である。
【符号の説明】
【0134】
11 ハイブリッド車両
12 エンジン(内燃機関)
13 ドライブシャフト(駆動軸)
14L、14R 駆動輪
16 ブレーキ装置(ブレーキ機構)
17 減速機(動力伝達手段、ギヤ機構)
36 ロータシャフト(動力入力手段)
52 カウンタドライブギヤ(動力伝達手段、ギヤ機構)
53 アイドルドライブギヤ(動力伝達手段、ギヤ機構)
54 アイドルドリブンギヤ(動力伝達手段、ギヤ機構)
55 カウンタドリブンギヤ(動力伝達手段、ギヤ機構)
56 ファイナルギヤ(動力伝達手段、ギヤ機構)
57 デファレンシャルギヤ(動力伝達手段、ギヤ機構)
71 ブレーキペダル
81 パーキングロック手段
100 ハイブリッド用電子制御ユニット(捩じれ量判断手段、制動力制御手段)
116 ブレーキペダルポジションセンサ(作動状態検出手段、踏力検出手段)
118 勾配センサ(勾配検出手段)
121 歪みセンサ(捩じれ量判断手段)
MG2 モータジェネレータ(駆動源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に連結され、前記駆動源からの動力が入力される動力入力手段と、
前記動力入力手段からの動力をギヤ機構を介して駆動軸に伝達することにより、駆動軸に設けられた駆動輪を回転させる動力伝達手段と、
ブレーキペダルを有し、前記ブレーキペダルの操作量に応じた制動力を前記駆動輪に発生させるブレーキ手段と、
前記ギヤ機構に設けられ、シフト選択位置が第1の選択位置とされたときに、前記駆動輪が回転しないように固定する固定位置および前記シフト選択位置が少なくとも1つ以上の第2の選択位置とされたときに、前記駆動輪の回転を許容する解除位置との間で作動されるパーキングロック手段とを備えた車両の制御装置であって、
前記駆動軸の捩じれ量を判断する捩じれ量判断手段と、
前記ブレーキ手段の作動状態を検出する作動状態検出手段と、
車両が位置する路面の勾配を検出する勾配検出手段と、
前記シフト選択位置が第1の選択位置とされるとともに前記ブレーキ手段が作動されたとき、路面の勾配が予め定められた勾配以上である場合に、前記捩じれ量判断手段の判断結果に基づいて前記ブレーキ手段の制動力を制御する制動力制御手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記捩じれ量判断手段が、前記シフト選択位置が第1の選択位置とされた後、前記ブレーキ手段の作動が解除されてから前記ブレーキ手段が作動するまでに要した時間に基づいて前記駆動軸の捩じれ量の大きさを判断することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記捩じれ量判断手段が、前記駆動軸の捩じれ量を検出する歪みセンサを有し、前記歪みセンサからの検出情報に基づいて前記駆動軸の捩じれ量の大きさを判断することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記捩じれ量判断手段が、前記ブレーキペダルの踏力の大きさを検出する踏力検出手段を有し、前記踏力検出手段からの検出情報に基づいて前記駆動軸の捩じれ量の大きさを判断することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制動力制御手段が、前記シフト選択位置が第1の選択位置とされた状態で前記ブレーキ手段が作動されたときに、前記捩じれ量判断手段によって前記駆動軸の捩じれ量が大きいものと判断された場合には、前記ブレーキ手段によって制動を開始してから前記制動力を漸増させることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1の請求項に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−40295(P2009−40295A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208969(P2007−208969)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】